2009年度の文献一覧(51件)

熊坂 侑三
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今月のトピックス(2009年12月)

[ コメンタリー ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2009-12

Abstract/Keywords

日米超短期予測(月次)

<GDP統計にもっと資金と人材を投入すべし> 12月9日発表の日本のGDP2次速報値によれば、7-9月期の実質GDP成長率は前期比年率+1.3%となり、1次速報値(同+4.8%)から3.5%ポイントの大幅下方修正となった。 実質GDP成長率下方修正の主な要因は、実質民間企業設備が1次速報値の同+6.6%から同-10.6%に大幅下方修正されたことにある。これは、民間 企業設備の2次速報値推計の基礎データである法人企業統計調査(需要統計)の低調な結果を反映したものである。一方、1次速報値推計の基礎データ(供給統 計)である資本財出荷指数が7-9月期に前期比+8.1%と7四半期ぶりのプラスとなったことからすれば、企業設備投資の大幅下方修正はネガティブサプラ イズであった。 2次速報値は、供給統計と需要統計の加重平均で決まる。異なる変化の方向を示すデータを平均したため、大幅な下方修正となったといえよう。7-9月期の 民間企業設備の供給側の動きが需要側に反映されなかったため、これが10-12月期の需要データに後ずれして現れる可能性が高い。いずれにせよ、これを契 機にGDP統計の信頼性をめぐる議論が再び高まっている。 GDP統計の信頼性をめぐる議論を高めたもう一つのポイントは、速報値が過去にさかのぼって大幅に改定されたことである。実質GDP成長率の四半期パ ターンを過去に遡及し比較してみれば、2008年4-6月期は-5.2%ポイント(前期比年率-2.9%→同-8.1%)の下方修正となった。一方、 2008年1-3月期は1.6%ポイント(同+4.0%→同+5.6%)、7-9月期は2.5%ポイント(同-6.5%→同-4.0%)、10-12月期 は1.3%ポイント(同-11.5%→同-10.2%)、2009年1-3月期は0.3%ポイント(同-12.2%→同-11.9%)と、いずれも1次速 報値から上方修正された。2008年1-3月期が上方修正されたことから、2008年度から2009年度にかけての成長率のゲタは1次速報値の-4.2% から-3.8%に引き上げられた。 ちなみに、12月2日に公表された2008年度国民経済計算確報値では同年度の実質GDPが速報値の-3.2%から-3.5%に改定されて、戦後最大の 落ち込みとなったことが判明した。悪いことには、12月7日に内閣府は確報値に間違いがあることを報告し、さらに-3.7%へと下方修正した。 このように推計ミスやこれまでにない速報値の大幅下方修正が目立っており、GDP統計に対する信頼が今回大きく揺らいでしまった。根本的な原因ははっき りしている。GDP統計推計のために資源があまり投入されていないからである。適切な経済政策のためには正確な景気診断が必要条件である。このために政府 はもっと資金と人材を投入すべきであろう。GDP統計に対する不信感は、投資家の”Japan Passing”を加速するであろう。(稲田義久) 日本 <10-12月期は高めの成長を予測、悲観的な見方のマーケットコンセンサスとは対照的> 12月14日の予測では、10月の大部分の月次統計と7-9月期のGDP2次速報値が更新された(GDPの改定については今月のトピックスを参照)。支 出サイドモデルは、10-12月期の実質GDP成長率を、内需が反転拡大し純輸出も引き続き拡大するため、前期比+1.6%、同年率+6.6%とマーケッ トコンセンサスとは異なり高く予測する。ちなみに、マーケットコンセンサスは、ドバイショックによる株価の下落や円高を反映して、年率+1.27%と前月 の+1.50%から下方修正されている(12月ESPフォーキャスト調査)。 1-3月期は、純輸出は引き続き拡大するが、内需、純輸出とも拡大のペースが減速するため、前期比+0.4%、同年率+1.7%と予測している。この結 果、2009暦年及び年度の実質GDP成長率はそれぞれ-5.0%と-2.0%となろう。GDPデータの大幅改定により、2008年度から2009年度に かけての成長率のゲタは1次速報値の-4.2%から-3.8%に引き上げられたものの、2009年7-9月期が3.5%ポイント引き下げられた。データ改 定を反映した超短期予測は2009年度の成長率については前回より0.1%ポイント下方修正している(-1.9%→-2.0%)。 10-12月期の国内需要を見れば、実質民間最終消費支出は前期比+0.7%となる。実質民間住宅は同+5.7%となるが、実質民間企業設備は同 -0.4%減少する。実質政府最終消費支出は同+0.5%、実質公的固定資本形成は同+2.6%となる。このため、国内需要の実質GDP成長率(前期 比+1.6%)に対する寄与度は+0.6%ポイントとなる。 財貨・サービスの実質輸出は同+6.1%増加し、実質輸入は同-2.2%減少する。このため、実質純輸出の実質GDP成長率に対する寄与度は+1.0%ポイントとなる。 主成分分析モデルも、10-12月期の成長率を前期比年率+8.0%と予測している。また1-3月期を同+3.7%とみている。この結果、支出サイド・ 主成分分析モデルの実質GDP平均成長率(前期比年率)は、10-12月期が+7.3%、1-3月期が+2.8%となる。 マーケットでは日本経済に対する悲観的な見方が強まっている。しかし、超短期予測は、これとは異なり、日本経済は年度末にかけては減速するものの、世界 経済回復の影響を受け、純輸出に牽引されて比較的堅調な成長パスを辿るものと予測している。ただ、政策効果が剥落する2010年度前半の経済政策が極めて 重要となるという点ではマーケットと同じである。 [[稲田義久 KISERマクロ経済分析プロジェクト主査 甲南大学]] 米国 12月11日の超短期予測では10月の貿易収支、11月の小売販売、輸出入物価指数までを更新している。その結果、実質GDP成長率は需要サイドでは純 輸出の改善、個人消費支出の上方修正から、所得サイドでは企業収益の上方修正から、それぞれ前期比年率+3.1%、同+0.9%へと大幅に上方修正され た。しかし、超短期モデルによる2009年の実質最終需要の伸び率は+0.5%程度と予測されている。更に、懸念されるのは実質国内需要、実質最終需要 (GDP−在庫)が過去4週間の超短期予測では下降トレンドを形成していることである。 バーナンキFRB議長が12月7日、ワシントンD.C.において”Frequently Asked Questions”という講演を行い、そのうちの一つのトピックスが”今後の米経済の行方”であった。彼の講演要旨は次のようなものであった。 ・これまでの在庫調整によって生産が拡大する様子が見えてきたが、持続的な景気回復には最終需要の復活が不可避である。 ・企業の新しい設備・ソフトウエアへの支出が一時的にも安定してきた。 ・ 住宅市場、個人消費支出、設備投資、グローバル経済において改善傾向が見られる。 ・しかし、米経済は今もって低調な労働市場、慎重な消費支出、厳しい資金市場など“手に負えない逆風”をうけて  いる。 ・インフレに関してはかなりの需給ギャップから賃金・物価トレンドの上昇が抑えられており、長期のインフレ期待  は安定している。 超短期予測はバーナンキFRB議長の景気の見方とほぼ一致する。超短期予測は現在の実質GDP成長率(需要サイドと所得サイドの平均)を+2.0%、イ ンフレ率を2%〜3%とみている。実際に今の景気回復が持続的であると宣言するには早すぎるし、インフレに楽観的すぎるのも良くない。バーナンキFRB議 長の言うように、最終需要の復活が景気回復の鍵をにぎっていることは確かである。 [ [熊坂侑三 ITエコノミー]]
著者不明
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第2号 子ども手当等に関する調査研究(2009.12.01)

[ 分析レポート ] AUTHOR- DATE2009-12-01

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子ども手当

◎財団法人関西社会経済研究所(所在地:大阪市北区中之島6−2−27)では抜本的税制改革研究会(主査:関西大学経済学部教授 橋本恭之氏)を中心に子 ども手当などの新政策の影響や子ども手当が生涯所得に与える影響に関する調査研究を実施しましたので、成果を発表いたします。 1. アンケートによる子ども手当や定額給付金などの経済へのインパクト推計 (1)各論 ○子ども手当の賛否 ・「賛成」及び「どちらかといえば賛成」が53.4%で、国民の高い期待が伺える。 (アンケート結果3ページ参照) −前回調査(2009年8月)に比べて、7.5%ポイントの増加(45.9%→53.4%)で、国民の期待は高まっている。 ○子ども手当の経済効果 ・追加的消費の消費性向は平均12.6%程度であり、 通常の消費性向の約70%に比べると、経済効果は限定的と考えられる。(同上4ページ参照) ○子ども手当の使途 ・子ども手当の使途は、「将来に備えた貯蓄」が最多となった。(同上5ページ参照) これは支給の時期が適切でないため、実際の資金需要期への備えとするものと考えられる。 或いは貯蓄比率が高いのは資金需要を上回る手当てとなっている可能性が考えられる。 ・年収別にみた子ども手当の使途は、高所得層は教育向けの割合が高いのに対し、低所得はレジャー向けの割合が高く、支給の手段が適切でないと考えられる。(同上6ページ参照) −教育格差の拡大、そして階層の固定化も懸念され、教育クーポン等の検討も必要と考えられる。 ○子ども手当と出生率 ・合計特殊出生率に与える効果は+0.038程度(参考:H⑳1.37)である。(同上7ページ参照) 今回の子ども手当を少子化対策の一環ととらえる考え方があるので出生率上昇効果を推計したが、効果は限定的であり、少子化対策としては有効な施策とはいいがたいと考えられる。 (2)今後への示唆 ・子ども手当は国民の支持を得ている政策と考えられる。 ・しかし、効率的な施策とするために、支給金額、支給対象時期、支給方法の3つの観点から吟味を行うことが、国民経済的に求められているのではないか。 .子ども手当が生涯所得に与える影響 ・これから子育てを行う場合、全ての階層で生涯手取り所得は増加する。 *子ども手当による増収と配偶者控除及び扶養控除の廃止による増税を考慮。 ・子どもがいない大卒・大企業の既婚世帯の場合、生涯手取り所得は270万円減少。 ・現時点で42〜47歳に達している世帯では生涯手取り所得がマイナスになる。 2. 子ども手当が生涯所得に与える影響 ・これから子育てを行う場合、全ての階層で生涯手取り所得は増加する。 *子ども手当による増収と配偶者控除及び扶養控除の廃止による増税を考慮。 ・子どもがいない大卒・大企業の既婚世帯の場合、生涯手取り所得は270万円減少。 ・現時点で42〜47歳に達している世帯では生涯手取り所得がマイナスになる。
著者不明
経済予測

第80回 景気分析と予測(2009年11月26日)

[ Quarterly Report(日本) ] AUTHOR- DATE2009-11-26
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景気分析,景気予測

「日本経済のマクロ経済分析」研究成果報告 (主査: 稲田義久・甲南大学経済学部教授 高林喜久生・関西学院大学経済学部教授) 当研究所のマクロ経済分析プロジェクトチームでは、在阪の大手企業・団体の若手スタッフの参加の下で研究会を組織し、予測に必要な景気の現状分析、外生変数の想定について共同で作業を行っている。 「景気分析と予測」については、四半期ごとに年4回(2003年度までは年2回)発表している。 2005年度より四半期予測作業において、日本経済超短期予測モデル(CQM)による、直近2四半期のより正確な予測値を取り入れている。 11月16日の政府四半期別GDP一次速報の発表を受け、2009-2011年度の改訂経済見通しとなっている。 ポイントは以下の通り。 * 2009年度7-9月期実績の評価‥‥実質GDP成長率(一次速報)は、前期比+1.2%、同年率+4.8%と、2四半期連続のプラス成長となり、07年1-3月期以来の高い成長となった。堅固な成長の背景には景気対策効果と海外市場の回復がある。 * 2009年度の改訂見通し‥‥民需のマイナス寄与度は拡大するが、大型補正予算の効果による公的需要が成長引き上げ要因となる。また、世界経済の持ち直し により純輸出のマイナス寄与度が縮小する。この結果、実質GDP成長率は、2008年度の▲3.2%から2009年度は▲2.3%となるが、2年連続のマ イナス成長である(前回予測▲2.6%からは上方修正)。 * 2010年度の改訂見通しおよび2011年度の予測‥‥大型補正予算の効果が剥落するため、公的需要の貢献は縮小し、民間消費は緩やかな伸びになる。その 一方で、民間企業設備が底打ちし、世界経済の回復により純輸出の寄与がプラスに転じる。2010年度の実質GDP成長率は+1.4%(前回予測0.6%か ら上方修正)となり、3年ぶりにプラスに反転する。また、2011年度も+2.0%と2年連続のプラス成長となるであろう。 * 今回予測では、旧政権下で決定された2009年度補正予算の一部執行停止および2010年度以降本格的に影響の表れる鳩山新政権のマニフェストをベースと する新政策のシミュレーション結果を盛り込んだ。補正予算一部執行停止は、2009年度実質GDPを0.24%ポイント引き下げる。マニフェストの新政策 効果は、2010年度にはほとんどないが、2年目の2011年には実質GDPを0.22%ポイント拡大する。
熊坂 侑三
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今月のトピックス(2009年11月)

[ コメンタリー ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2009-11-10

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日米超短期予測(月次)

11月12日発表のESPフォーキャスト調査(7-9月期実質GDP1次速報値は反映されていない)によれば、今後の四半期成長パターンとして、 10-12月期前期比年率+1.5%から2010年1-3月期同+0.89%、4-6月期同+0.71%へと緩やかに減速するというのがマーケットではコ ンセンサスとなっている。 また、マーケットの一部では、日本経済は2010年前半にマイナス成長に陥り、08年10-12月期と09年1-3月期の2期連続の二桁マイナス成長と併せて考えれば、W字型、ダブルディップ型不況に陥る可能性が高いとみている。 一方、11月17日の超短期予測(支出サイドモデル)は、10-12月期の実質GDP成長率を、内需と純輸出は引き続き拡大するため、前期比年 率+4.2%と予測する。また1-3月期の実質GDP成長率を、純輸出は引き続き拡大するが内需が息切れするため、同+0.3%と予測している。 超短期予測もマーケットコンセンサスも、景気のパターンとしては2010年前半にかけて経済は減速するという点では一致している。その理由は、内需が再び縮小する可能性が高いとみているためである。特に、民間最終消費支出と公的需要の動向がポイントとなる。 民間最終消費支出の先行きついては、所得環境が悪化しており、加えて財政政策の効果が年度越しには剥落するため、追加的な政策なしには減速ないしはマイナス成長が避けられない。 7-9月期の雇用者報酬は前期比年率-0.7%と6期連続のマイナスとなり、前年同期比では-3.7%と5期連続のマイナスを記録した。加えて冬のボー ナスもマイナスが必至で、先行き所得環境は厳しい状況が続こう。2期連続の二桁のマイナス成長により急拡大した需給ギャップはなかなか縮小せずデフレ圧力 が強まっている。デフレスパイラルに陥るリスク確率も上昇してきており、民間消費の先行きは明るくない。 もう一つのポイントは公的需要である。人口高齢化に伴う政府最終消費支出の増加トレンドは避けられないが、「コンクリート」から「人」へという現政権の 政策スタンスで、公共投資の削減は必至である。現状では先行き公的需要の経済成長への貢献は期待できないということになる。 とすれば、ダブルディップ不況を避けるためには、さらに外需依存を強めるか新たな内需の創出が必要となる。外需の今後の動向については、海外欧米市場の 回復に大きな期待は持てない。活発なアジア市場はこれまで景気回復の一翼を担ってきたが、欧米市場の回復なくして外需の持続可能性に問題がある。とすれ ば、新たな内需創出がカギとなる。民主党政権は、「コンクリート」から「人」へというスローガンで公共投資を削減するが、その努力を環境投資拡大促進に向 けるべきであろう。実際その方向に進んでいるが、それを加速させる必要がある。日本経済がダブルリセッションに陥らないためにもタイミングの良い政策発動 が重要である。(稲田義久) 日本 <政策効果大きく7-9月期は高成長となったが、年度末にかけては減速か?> 11月16日(月)発表のGDP1次速報値によれば、7-9月期の実質GDP成長率は前期比+1.2%、同年率+4.8%となり、2四半期連続のプラス となった。景気対策効果と輸出の増加がその背景にある。7-9月期の実績は4-6月期の同+2.7%を上回り、2007年1-3月期(同+5.7%)以来 の高い成長率となった。 実績は超短期予測の平均値(+3.9%)や市場コンセンサス(ESPフォーキャスト:+2.5%)を上回った。超短期予測最終週での予測では、支出サイ ドモデルが同+2.9%、主成分分析モデルが同+5.0%を予測していていた。主成分分析モデルの予測は実績により近いものとなった。超短期モデルの予測 動態からわかるように、7-9月期の月次データが利用可能となる8月後半から2%台後半、9月に入り3%台後半の成長率を予測していた。 7-9月期の実質GDP成長率(前期比年率)への寄与度を見ると、内需は3.4%ポイント成長率を引き上げた。内需が成長率引き上げに貢献したのは1年半ぶりである。また純輸出も成長率を+1.5%ポイント引き上げたことがわかる。 実質民間最終消費支出は同+2.8%と2期連続のプラスとなり、実質GDP成長率を1.7%ポイント引き上げた。所得環境が悪い中、民間最終消費支出が 伸びたのは、政策効果(エコポイント制度、自動車取得促進税制、補助金)による影響が大きい。実際、耐久消費財は同+31.4%と大幅に伸びた。 実質民間企業設備は同+6.6%と6四半期ぶりのプラスとなり、実質GDP成長率を0.9%ポイント引き上げた。実質民間企業在庫品増加は実質GDP成長率に+1.6%ポイント貢献した。3期ぶりのプラス貢献で在庫調整に一段落がついたと思われる。 アジアからの輸出需要の高まりで、財貨・サービスの実質輸出は同+28.0%増加し、2期連続のプラス(寄与度+3.5%ポイント)となった。一方、同実質輸入は同+14.1%(寄与度+3.3%)増加した。3期ぶりのプラス成長である。 実質民間住宅は同-27.5%と3期連続のマイナスである。マンションを中心に大幅なストック調整が起きている。民間住宅は実質GDP成長率を0.9%ポイント引き下げた。 公的需要は同+0.3%の増加にとどまり、実質GDP成長率にはほとんど貢献しなかった。うち、実質公的固定資本形成は同-4.9%減少し、実質GDP成 長率を0.1%ポイント引き下げた。一方、実質政府最終消費支出は同+1.5%増加し、寄与度は+0.1%ポイントとなった。 所得環境は悪化しており、雇用者報酬は同-0.7%と6期連続のマイナスとなった。前年同期比では-3.7%と、5期連続のマイナスを記録した。冬のボーナスもマイナスとなり、先行き厳しい状況が続こう。 デフレータを見ると、GDPデフレータは前期比-1.2%と2期連続の下落となった。急激に拡大した需給ギャップはなかなか縮小せずデフレ圧力が強い。 前年同期比では+0.2%と4期連続のプラスとなったがプラス幅は縮小している。一方で、国内需要デフレータは同-2.6%と3期連続のマイナスで下落幅 が拡大している。日本経済はしばらくデフレから抜け出せないようである。 11月17日の支出サイドモデル予測は、10-12月期の実質GDP成長率を、内需と純輸出は引き続き拡大するため、前期比+1.0%、同年 率+4.2%と予測する。1-3月期は、純輸出は引き続き拡大するが内需が息切れするため、前期比+0.1%、同年率+0.3%と予測している。この結 果、2009暦年及び年度の実質GDP成長率はそれぞれ-5.0%と-2.2%となろう。 超短期予測は2009年度末にかけて景気減速を示唆しており、マーケットの一部ではダブルディップ不況を懸念している。持続的な成長に向けて新政権の政策舵取りに注目が集まっている。 [[稲田義久 KISERマクロ経済分析プロジェクト主査 甲南大学]] 米国 11月13日の超短期予測は10月の雇用統計や9月の貿易統計までを更新した予測である。グラフ1に見るように今期(2009年10-12月期)の実質 GDP伸び率を支出・所得サイドからそれぞれ-0.4%、+1.5%と予測している。これはウォールストリート紙による48人のエコノミストへの10月調 査の平均値(2.5%)よりかなり低い。超短期予測は米経済が7-9月期の+3.5%(前期比年率)成長の後、1%程度の成長率にまでスローダウンしてい るとみている。主な理由は景気刺激策による自動車購入等が終わり、企業も簡単に生産増加、在庫積み増しをしないと考えられるためである。 しかし、市場には前期の実質GDP成長率が市場の予想(3.2%)を上回ったことから景気への楽観的な見方が広がっている。最も良い例は10月の雇用統計 に対する株価の反応である。10月の失業率は1983年6月以来26年振りに始めて10%を超えた。また、非農業雇用者数も9月の219,000人減から 190,000人減へと改善したものの、市場の予想(175,000人減)をかなり下回った。しかし、ダウ株価はその日も上昇し、結局その週のダウは3% 上昇し1万ドル台を確保した。 通常ならば、市場の予想通りに改善していない労働市場に対して投資家はネガティブに反応するが、経済回復に楽観的になりつつある投資家は10月の雇用統計 が好ましくなかったことから、連邦準備理事会(FRB)がこれまでの低金利政策をかなりの間維持せざるをえないと考えるようになった。実際、11月3日 ‐4日に行われたFOMCミーティングのステートメントの中で、FRBは政策金利を0%〜0.25%の間に据え置く期間を延長、また、量的金融緩和策も継 続するとしている。 今週の超短期予測は10-12月期のインフレ率を1.5%程度と予測している。FRBの金融緩和政策の継続に疑問はないが、はたしてそれにより投資家が予 想しているような経済成長率が達成されるかは疑問であり、超短期予測は今のところ、投資家の景気への楽観的な見方がいずれは下方修正されるとみている。 [ [熊坂侑三 ITエコノミー]]
著者不明
ディスカッションペーパー

消費税における益税の推計

[ ディスカッションペーパー ] AUTHOR- DATE2009

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Abstract/Keywords

消費税

熊坂 侑三
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今月のトピックス(2009年10月)

[ コメンタリー ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2009-10-20

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日米超短期予測(月次)

鳩山新政権は、世界に向けて2020年までに二酸化炭素(CO2)排出量を1990年比25%削減することを宣言した。もちろん、日本単独の努力ではな く、世界が協調・努力してとの条件付きであるが。この宣言のインパクトは大きく、特に大きな影響を受けることが予想される産業界からは大きな反対が表明さ れている。今月のトピックスでは、この宣言の実現可能性を議論するのではなく、議論に向けての新たな見方を提供したい。 前政権のこの問題をめぐる議論のスタンスは、CO2削減率に応じて、そのコストを明示するというものであった。ところが今回は、まず25%削減という目標を設定し、それを実現するためにあらゆる政策を総動員し、日本を環境立国へ導くというスタンスに変わったのである。 さて2007年度のCO2排出量は12億1,270万トンであり、1990年度=100とすると115.5となり、基準年から15%も高い水準である。 図1は日本のCO2排出量の部門別シェアの推移をみたものである。直近の2007年度では、最大の排出部門は産業部門であり、排出量全体の40.3%を占 める。次に、運輸部門(20.6%)、家計部門(15.6%)、業務部門(13.6%)、発電部門(10.0%)の順になる。 図1から、産業部門のシェアはこの間20%ポイント程度低下しているが、依然としてCO2排出の最大のセクターとなっていることがわかる。一方、運輸、 家計、業務部門はそのシェアを拡大させているが、産業部門には及ばないことがわかる。当然この図からすれば、産業部門には最大の削減努力が求められる。た だし、図1は発電部門で発生するCO2を電力の使用量で各部門に按分したものであって、電力部門は登場しないことに注意が必要である。 図2は、エネルギー供給部門と最終消費部門に分けてCO2排出量のシェアを見たものである。この図ではCO2排出の最大の貢献者は発電部門であることが わかる。1990-2007年度のCO2の年平均伸び率は0.9%である。発電部門の伸び率は2.2%であり、全体の伸びへの寄与度は0.8%ポイントと なっている。すなわち、CO2排出の最大の寄与は発電部門ということになる。実は図2による説明がグローバルスタンダードであり、図1による説明は日本独 自のものである。図1による説明では、発電部門の寄与(責任といってもよい)を見えにくくしているといえる。 今後、CO2排出量25%削減を国民的課題として議論する場合は、まず発電部門の役割に十分な注意が向けられなければならない。例えば、再生可能エネル ギーやLNG火力発電のシェアを高める一方で、石炭火力のシェアを低下させることは重要な課題となる。当然、原子力発電のシェアも問題となろう。図2は、 エネルギー供給部門と同時に最終消費部門の役割の議論することの重要性を意味している。すなわち、25%削減の国民的課題はあらゆる政策の動員で解決され ねばならない。 (稲田義久) 日本 <7-9月期は2%台のプラス成長だが、持続性には公的需要の動向が鍵> 10月19日の予測では、7-9月期経済を説明する月次データの約2/3、すなわち、8月のデータがほぼ更新された。支出サイドモデルは、7-9月期の 実質GDP成長率は、純輸出が引き続き拡大し、内需も小幅拡大するため、前期比+0.6%、同年率+2.5%と予測する。10-12月期の実質GDP成長 率は、純輸出が引き続き拡大するが、内需が横ばいとなるため、前期比+0.3%、同年率+1.1%と予測している。この結果、2009暦年の実質GDP成 長率は-5.7%となろう。新政権移行後の日本経済の先行きについて注目が集まっているところであるが、超短期予測は経済成長率は年内緩やかに減速すると みている。ちなみに、実質GDP成長率の市場コンセンサス(ESPフォーキャスト10月調査)は、7-9月期は前期比年率+2.3%、10-12月期は 同+1.3%となっている。超短期予測の見方とほぼ一致している。 7-9月期の国内需要を見れば、実質民間最終消費支出は前期比+0.5%となる。実質民間住宅は同-2.2%、実質民間企業設備も同-2.8%と、民間 投資関連指標はいずれもマイナスながら減少幅は縮小してきている。実質政府最終消費支出は同+0.7%、実質公的固定資本形成は同-2.1%となる。この ため、国内需要の実質GDP成長率(前期比+0.6%)に対する寄与度は+0.2%ポイントとなる。久方ぶりに内需が景気を引き上げる。 気になるのは、これまで景気を下支えしていた公共投資の勢いに陰りが見られることである。建設総合統計によれば、8月の公共工事は前年同月比4.1%増 加し9ヵ月連続のプラスとなったが、伸び率は3ヵ月連続で縮小した。先行指標である公共工事請負金額も7-9月期に前年同期比+11.2%となったが、伸 び率は前期(同+13.0%)からペースが落ちている。新政権での公共工事の縮小は必至であるから、2010年初にかけて景気の二番底の可能性は否定でき ない。 財貨・サービスの実質輸出は同+4.8%増加するが、実質輸入は同+2.1%にとどまる。このため、実質純輸出の実質GDP成長率に対する寄与度は+0.4%ポイントとなる。 主成分分析モデルは、7-9月期の実質GDP成長率を前期比年率+4.5%と支出サイドモデルより高めに予測している。また10-12月期を同+3.7%とみている。 この結果、支出サイド・主成分分析モデルの実質GDP平均成長率(前期比年率)は、7-9月期が+3.5%、10-12月期が+2.4%となり、減速傾向に変化はない。 [[稲田義久 KISERマクロ経済分析プロジェクト主査 甲南大学]] 米国 米国の景気回復に対してかなり楽観的な見方をするエコノミストがでてきた。例えば、エンジェル元FRB理事は2009年7-9月期の実質GDP成長率が 前期比年率4%を超える可能性も示唆している。一方、超短期モデルはグラフに見るように支出・所得両サイドから2%程度の成長率を予想している。 両者の見方の差異は在庫にある。在庫調整が同年4-6月期で完了し、7-9月期の在庫増は実質GDP成長率を1%以上押し上げていると市場は予想してい るようである。一方、超短期予測は、8月までの製造業、卸売業、自動車の在庫統計を更新したが、大幅な在庫調整が7-9月期も行われたと予測している。 7-9月期(4-6月期)の製造業、卸売業、小売業の実質在庫を、それぞれ、-270億ドル(-400億ドル)、-890億ドル(-730億ドル)、 -810億ドル(-510億ドル)と予測している。ただし、超短期モデルは7-9月期の名目財輸入の伸び率を40%超と予測している。しかしこれは、石油 の在庫増にもかかわらず卸売業の在庫減をかなり大きく予想しているというリスクもある。一方、Cash-for-Clunkersプログラムによる自動車 在庫の減少を考えると、小売業における大幅な在庫調整(7-9月期)の可能性は十分にある。 7-9月期の予測を強気にする2つの要因は、実質個人消費支出が前期比年率4%程度伸び、実質住宅投資が同10%程度伸びたことである。一方、4-6月 期においてそれぞれ下落した実質輸出、輸入も7-9月期にはそれぞれ同20%程度の大幅な伸び率となったと思われる。このように、在庫、輸出入の予測に関 して大きな不確実性が残るとき、景気判断にはその他の集計指標を同時にみるのがよい。 10月9日の超短期モデルによる7-9月期の(10-12月期)の経済成長率は以下の通りである。実質GDP:前期比年率+2.0%(同+1.7%)、 実質総需要:同+4.3%(同+1.3%)、実質国内需要:同+2.9%(同+1.6%)、最終需要タイプ1(=GDP-在庫):同+2.5% (同+2.1%)、最終需要タイプ2(GDP-在庫-純輸出):同+3.4%(同+1.9%)。このように、複数の集計指標から景気を判断すれば、 2009年7-9月期、10-12月期の実質GDP成長率をそれぞれ3%、2%程度と想定するのが適切と思われる。 [ [熊坂侑三 ITエコノミー]]
著者不明
研究プロジェクト

新型インフルエンザの関西経済への影響調査(2009年10月)

[ 2009年度 ] AUTHOR- DATE2009-10-08
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新型インフルエンザ

「新型インフルエンザの関西経済への影響調査」報告 ((社)関西経済連合会委託調査) 監修: 跡田直澄  嘉悦大学経営経済学部 副学長・教授 高林喜久生 関西学院大学経済学部 教授 本年5月以降の新型インフルエンザの感染拡大により、関西では休校、イベントや旅行のキャンセル等により、観光分野を中心に風評被害ともあいまって大幅な影響が生じた。 そこで、(社)関西経済連合会が、新型インフルエンザが再び感染拡大した場合、あるいはさらに事態が深刻化した場合の対応について政府への提言活動等を行っていくための基礎調査(委託調査)として、今般の感染拡大による関西経済への影響を調査した。 1.調査概要 2.新型インフルエンザ感染状況 3.関西経済への影響 4.行政の対応に関する意見 <資料>新型インフルエンザ感染拡大の影響に関する消費者アンケート調査結果
熊坂 侑三
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今月のトピックス(2009年9月)

[ コメンタリー ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2009-09-30

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日米超短期予測(月次)

8月30日に行われた衆議院総選挙で、民主党を中心とする野党勢力が議席の3分の2を確保した。この結果、今後の経済に対する政策アプローチが大きく変 わることになる。今後の民主党の政策運営については、同党のマニフェストを除いて具体的な金額などを盛り込んだ形での発表はまだ行われていない。ここで は、民主党マニフェストの「工程表」から政策運営が経済にもたらす影響を推計しよう。 表1は、民主党のマニュフェストの工程表をベースに、景気対策支出額を見たものである。マニフェストでは2009年度に対して最終(2013)年度にな るほど支出金額は明確になるが、それ以外の年では一部支出金額の支出状況は不明確である。そのため、2010年度から12年度の金額については、工程表を ベースに実現可能性を考慮して推計した。 主な項目は、①子ども手当・出産支援 (同1.3(2013年度時点の所要額5.5兆円)、②暫定税率の廃止(同2.5兆円)、③医療・介護の再生(同1.6兆円)、④高速道路の無料化兆 円)、⑤農業の戸別所得補償(同1.0兆円)などである。要するに家計に対する所得補償型政策が中心となっていることがわかる。 一方、これらの財政支出の財源は、①予算の組み替えによる無駄な歳出の削減(2013年度時点で9.1兆円)、②「埋蔵金」や資産の活用(同5.0兆 円)、③税制見直し(同2.7兆円)によってファイナンスされることになっている(表2参照)。しかし、2010年度からの早急な実施が困難なものもあ る。特に、公共事業のスリム化や税制改革などである。支出財源が確保できない場合は国債発行によって賄われることになる。 以上のような支出と財源の見通しから財政バランスの見通しをまとめると、2010年度、2011年度は支出が拡大する一方で、財源の手当てが間に合わないため、財政赤字が拡大することになる(表3上段)。 GDPに与える影響では、純支出額に着目する必要がある。純支出額の計算には、支出である「埋蔵金」や資産の活用はコストがかからないから考慮しない。 したがって、純支出額は支出措置額から歳出削減額(予算の効率化)・増税額(税制改革)を減じた額となる(表3中段)。またGDP成長率には、この純支出 額の年度間増減幅が影響する(表3下段)。この増減幅が拡大する2010年度、2011年度にはGDP成長率が押し上げられることになる。2012年度、 2013年度には、増税や歳出削減が進み、増減幅が縮小するため、GDP成長率を押し下げることになる。 最後に、この純支出増減幅を基に、関西経済に対する影響を試算しよう(表4)。試算では、GRP成長率に直接寄与する政策として、子ども手当・医療介護 の再生・農業の戸別所得補償・暫定税率の廃止の4つの政策を取り上げて計算した。また工程表の支出額は日本全国を対象とした額であるため、これに関西の世 帯数割合17.1%を乗じて、関西への影響額としている。さらに、関西経済予測モデルの消費関数の長期消費性向0.464を乗じて追加的消費支出金額を計 算している。これを関西のGRP(89.4兆円、2010年度の予測値)と比較する。この結果、2010年度には0.4%程度、2011年度には0.3% 程度のGRP押し上げ効果となる。しかし、2012年度、2013年度には-0.3%、-0.5%とGRPにマイナス効果をもたらすことになる。 以上、経済効果を示した。より詳細な分析のためには、家計調査報告に基づいた所得階層別の分析が必要となろう。民主党政権が考える内需、特に、家計消費 の刺激を起点とする経済成長シナリオにより、どのような成長パスが実現されるのか、今後の政策運営動向に注視しなければならない。  (稲田義久・入江啓彰) 日本 <7-9月期、内需は久方ぶりにプラス成長に転じるも、持続性に疑問> 9月11日発表のGDP2次速報値によれば、4-6月期の実質GDP成長率は前期年率+2.3%となり、1次速報値(同+3.7%)から下方修正となった。 実質GDP成長率下方修正の主要因は、民間企業在庫品増加である。実質民間企業在庫品増加は1次速報値の前期比-2.0%ポイント(寄与度年率ベース) から同-3.1%ポイントへと下方修正された。在庫調整が想像以上に進展していることを確認した。今後は在庫投資の積み上げが期待され、先行きにとっては 悪くない結果である。 9月14日の予測では、8月の一部のデータと7月のデータがほぼ更新され、また4-6月期のGDP統計2次速報値が追加されている。支出サイドモデル は、7-9月期の実質GDP成長率を、純輸出は引き続き拡大し、内需も小幅拡大するため、前期比+0.9%、同年率+3.6%と予測する。 10-12月期の実質GDP成長率を、純輸出は引き続き拡大するが、内需が横ばいとなるため、前期比+0.5%、同年率+1.9%と予測している。この結果、2009暦年の実質GDP成長率は-5.5%となろう。 7-9月期の国内需要を見れば、実質民間最終消費支出は前期比+0.5%となる。実質民間住宅は同-0.8%、実質民間企業設備も同-2.1%といずれも マイナスながら小幅の減少にとどまる。7月の工事費予定額(居住用)と資本財出荷指数は前月比ともにプラスになっており、7-9月期の民間住宅や企業設備 が前期比で安定化する可能性が出てきた。実質政府最終消費支出は同+0.5%、実質公的固定資本形成は同-1.0%となる。このため、国内需要の実質 GDP成長率(前期比+0.9%)に対する寄与度は+0.3%ポイントとなり、久方ぶりに内需が景気を引き上げる。 財貨・サービスの実質輸出は同+5.7%と増加するが、実質輸入は同+1.9%にとどまる。このため、実質純輸出の実質GDP成長率に対する寄与度は+0.5%ポイントとなる。 一方、主成分分析モデルは、7-9月期の実質GDP成長率を前期比年率+3.6%と予測しており、支出サイドからの予測と一致している。また10-12月期を同+3.4%とみている。 この結果、支出サイド・主成分分析モデルの実質GDP平均成長率(前期比年率)は、7-9月期が+3.6%、10-12月期が+2.6%となる。 日本経済は4-6月期以降、内需が小幅ながら緩やかなプラス成長に転じている。しかし、今後は、民主党による補正予算の見直しも含め補正予算の政策効果 が剥落してくるため、経済のプラス成長の持続性には疑問が出ている。2010年度の民主党の消費拡大効果が出る前に一時的にマイナス成長に陥る可能性があ ることを指摘しておく。 [[稲田義久 KISERマクロ経済分析プロジェクト主査 甲南大学]] 米国 グラフに見るように、8月の雇用統計を更新した時点で超短期モデルは2009年7-9月期の実質GDP成長率を+1.3%と予測している。これは2008年4-6月期以来1年振りのプラス成長である。 支出サイドから実質GDP成長率が急速に上昇した主な理由の一つには”Cash-For-Clunkers Program” (エコカー購入促進システム)により、自動車購入が増え実質個人消費支出が増えたことが上げられる。超短期モデルは実質耐久財の個人消費支出が2009年 7-9月期に11.9%(前期比年率)伸びると予測し、個人消費支出全体の伸び率を同+2.0%と予測している。エコカー購入促進システムによる購入が自 動車の在庫減になればその分GDP成長率の増加は相殺されるが、新車の生産につながればGDP成長率は高まる。支出サイドからの経済成長率上昇のもう一つ の大きな理由は実質住宅投資が7-9月期に同9.1%伸びると予想されていることによる。これは7月の民間住宅建設支出が2.3%(前月比)と大幅に上昇 したことによる。実質住宅投資の伸び率がプラスに転じるのは2005年10-12月期以来14四半期振りのことである。 一方、所得サイドからの実質GDP成長率プラス転換の主な理由は2009年4-6月期の統計上の誤差が2,250億ドルと大きくなり、その結果7-9月 期の統計上の誤差も2,280億ドルになると超短期モデルが予測していることである。この統計上の誤差はGDP比率でみると1.6%に相当する。もう一つ の理由は、1-3月期、4-6月期とそれぞれ前期比-14%、同-5%と大きく落ち込んだ賃金・俸給が7-9月期には0%にまで持ち直すと予想されている ことが挙げられる。 しかし、7-9月期経済のプラス成長の持続性には問題が残る。エコカー購入促進システムが8月24日で終了し、今後の個人消費支出の落ち込みが予想され る。また、住宅市場に回復の兆しが見えたものの今度は商業用不動産市場が悪化していることがある。所得サイドにおいても失業率が8月には9.7%と 1983年以来の高い水準になり、遅行指数とはいいながら労働市場の回復にはまだかなりの時間がかかるとみられ、個人消費支出の鍵をにぎる賃金・俸給の堅 調な伸びが今もって期待できない。このように、米国経済は7-9月期に一旦プラス成長に戻るものの、その持続性には多くの懸念が残る。 [ [熊坂侑三 ITエコノミー]]
入江 啓彰
経済予測

第2号 関西エコノミックインサイト

[ Quarterly Report(関西) ] AUTHOR入江 啓彰 / 武者 加苗 DATE2009-09-10

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エコノミックインサイト

著者不明
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第1号 第45回衆議院総選挙を終えて (2009.9.10)

[ 分析レポート ] AUTHOR- DATE2009-09-10

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衆議院総選挙

財団法人 関西社会経済研究所 1.「新しい国のかたち」の模索  文責(浜藤豊) 今や、日本は外にあっても内にあっても大変な時期である。我々は安心と自信を回復するために政治を鍛え直さなければいけない。この国の統治の立て直しを 誰に託すかを判断し、「新しい国のかたち」の建設を始めるのがまさに8月30日であった。その建設を進めていくに当たって克服すべき課題は多いが、大きく 分けてみるならば次の3つに集約できる。 (1)経済構造の脆弱さ (2)政治、行政に対する不信感 (3)巨額の財政赤字 これらが複雑に絡み合って内外の環境激変に対応しきれなくなり、持続的な成長イメージが描けない状況に陥っている。 <3課題に対する対策> 第一に、構造的に弱い日本経済の足腰を強くするには、民間の活力を最大限に引き出す経済社会の確立を目指さなければならない。 そのためには、日本国内の成長力を強化するとともに、海外の成長力を取り込むことが肝要である。国内面では、 ①雇用機会の拡大や女性・高齢者の労働参加の促進 ②省エネ設備・製品の開発・普及に向けた対策 ③成長戦略のための技術開発促進による産業強化策 (例)新たなサービス産業(医療、介護分野等で)の創出 など 一方、海外成長力取り込みでは ①グローバル化に対応した法人税減税などの税制改革 ②WTO中心型とEPA,FTA締結促進型との併用による自由貿易体制の確立 ③競争力強化対策の拡充 (例)日本への直接投資の促進(秩序ある資本の流出入を実現する市場の形成) など 第二に、政治や行政に対する不信感を取り除いて国民が安心できる制度を構築するにはどうすればいいのかの問題である。行政の失敗が政治への不信につながっていることから ①無駄が生み出す財政赤字の排除の仕組みを取り入れた予算制度・公務員制度の改革 (例)民間経営手法(PDCAサイクルなど)の採用 ②住民選択を尊重する地域重視型社会の実現及び国・地方の役割分担を明確にした上での権限委譲 (例)地方税財源確保のための補助金、交付税、税源配分見直し。道州制導入 など ③グローバル化・高齢化にも対応可能な社会保障制度の再構築 (例)高齢者が安心して受けられる医療制度の再確立、派遣労働者へのセイフティーネット強化 など 第三に、財政の健全化の問題が重くのしかかっている。このまま赤字が膨らみ続けると、現下の景気悪化に伴う赤字財政の拡大も加わって、将来世代が受ける 公共サービスレベルの低下も心配される。しかも、2015年には団塊世代が65歳の年金受給年齢に達し、本格的な高齢社会に突入することになる。その時期 までに財政再建への道筋をつけておかなければならない。具体的には、 ①歳出削減と成長による、基礎的財政収支の赤字幅の削減、及び黒字化の時期 ②成長・増税・歳出削減による、国・地方の債務残高の対GDP比のピークアウトを図る目標時期 を明確化しておく必要がある。 今、日本に求められていることは、現実を正しく認識し、先に述べた3つの課題に対する構造改革を推し進め、国内外の変化に柔軟に対応できる「新し い国のかたち」を構築していくことである。そこで、以下では、現在示されている各党のマニフェストがこの国の将来を示し得るものになっているのかを検討し てみたい。 2.マニフェストに求めること  文責(島章弘) 8月30日に実施された総選挙の結果、民主党が衆議院の過半数以上の議席を占めた。総選挙では多くの事が議論されたが、当然、政策議論が主体であり、その中心に各党のマニフェストが存在したといえる。 近年、国政選挙におけるマニフェストの存在意義が高まっている。各党は従来以上にマニフェスト作成に努力し、国民そして各界も高い関心を払うようになって きた。マニフェストは各党の国民へのコミットメントであり、その内容を豊かにすることは日本の将来にインパクトがあると考える。 ここでは、各党の2009年衆議院選挙に向けたマニフェストを概観し、これまでの議論や各界からの期待を踏まえ、さらに求めたいことを列挙してみた。マニフェスト評価を出発点として、政策議論の一層の活発化を期待したい。 ■各党ともに多くの行政サービスの具体策を示しているが、その源泉となる国富の創出に関する記述が少ない。 厳しい国際競争下、各党のマクロ経済政策や産業振興施策には一層の充実が求められる。今、求められるものはいかに内需を喚起するか、いかに国際競争力を 有する産業を発展させるかである。この結果、過度に外需に依存しない持続可能な経済発展が可能となり、国の税収を増加させ、政策が豊かなものになる。 1990年代、米国経済は長期にわたる好況を謳歌し、「もはや景気循環はなくなった」とする「ニューエコノミー」論が活発に語られるほどであった。これ によって、巨額の財政赤字は解消され、クリントン政権を引き継いだ直後のブッシュ政権が実施した10年間で1.3兆ドルを超える減税プログラムが実現され た。 ■不況下のマニフェストであり、セイフティーネット充実の必要性から全体として政策が増加している感が否めない。 各党ともに行政の無駄排除を掲げているが、新政策の増加から結果として政府が関与する領域が広くなり大きな政府となる可能性がある。政府が関与する領域が広い社会経済システムを選択するのか、政府関与が少ないシステムを関与するのかの問題提起が欲しいところである。 ■金融危機そのものに対する政策が少ない。 現在の経済不況の発端となったのが金融危機である。株価は世界的に回復基調にあるが、根本的な問題は継続しており、国や地方の財政問題などこれから影響 が本格化する領域もある。こういったマイナス影響への対応策及び危機の再発防止への対応といった政策の提示が求められる。 ■環境問題目標の達成手段についての国の関与に関する記述が少ない。 原子力利用の充実を唱えている政党もあるが、これまでの原子力利用の実績を見ると、安全問題など克服すべき課題が大きく具体策に欠ける。また、日本の1 人当たり一次エネルギー消費は世界的にみて高いものであるが、個別産業のエネルギー効率でみると多くの産業で世界のトップ級になっている。技術開発の芽も 少ない状況では、削減目標数値先にありきでは、製造業の海外移転を促すだけになりかねない。さらに、排出権取引市場の設置も真の意味での環境問題進展への 寄与は期待できない。 エネルギー分野で信頼度が高いBP統計によれば、2008年の日本の人口1人当り一次エネルギー消費量は中国の2倍以上である。しかし、鉄鋼業でみると 中国の製鉄所のエネルギー原単位は日本に比べ10%から20%悪いなど、ほぼ全ての産業で日本は優れた効率を達成している。日本の産業界が今のレベルから 飛躍的にエネルギー効率を向上させるのは相当困難である。こうした情勢下で、より厳しい目標を設定するには、より具体的な政策が求められる。 ■税制改正に関する体系立った提案がない。 抜本的改革との表現を使っているところもあるが、メッセージはそれだけであり中身が不透明である。暫定税率など一部の税廃止と税控除措置見直しを提唱しているところもあるが、税体系全体に関するメッセージが欠けている。 逆進性がある消費税と累進性がある所得税とを中核として税負担をしている国民にとっては、負担構造のあり方についてむしろ受益と負担の関係から議論が行われて然るべきである。 また、多くの党は中小企業の法人税率引き下げを提唱しているが、これは緊急経済対策的な色彩が濃いものであり、法人税全体に関する議論こそが、グローバル経済下では重要である。 ■地方分権推進の考えは鮮明であるが、内容が説明不足。 道州制導入を明確にしている政党は三層型地方分権制度であるのに対し、現状より広域化させた基礎自治体をベースとする政党は二層型地方分権制度といえよう。 それぞれの違いが国民生活にいかなる違いをもたらすかのメッセージが伝えられていない。 個別分野ごとにマニフェストを概観し、これまでの議論や各界からの期待を踏まえ、求めることを列挙してみた。 更に、個別分野ごとの議論ではなく、マニフェスト全体にかかわるポイントを指摘してみたい。マニフェストは数値や時期が明示された政策目標と合理的に選 択された明確な手段が提示されるべきである。今回、多くの政党のマニフェストは政策目標は提示されているが、具体的で明確な政策手段が示されているとの評 価をするのは難しいといえる。 「政策形成能力」には、まだまだ問題があることを強く指摘しておきたい。また、この政策を実現・実行するのが「実現力」・「実行能力」といわれている が、前者は議院内閣制であれば政権をとるかとらないかの問題であり、後者は行政組織に対する管理能力の問題である。したがって、実現・実行の問題はマニ フェスト上の問題ではない。各党には、むしろ「政策形成能力」の向上を強く求めたい。 3.日本の未来を示し得る政策への期待を込めて          文責(浜藤豊) 前節では、現在までに公表されたマニフェストを前提に不充分な点を指摘してきた。日本は今、2つの大きなうねりに翻弄されている。すなわち、外にあって はグローバル化が急速に進むなかでの昨年来の経済危機、内にあっては高齢化・少子化の2つである。経済のグローバル化のうねりの象徴と対策としては、 ①背後から迫りくる中国(GDPで追い抜かれる) → 実効性のある産業育成戦略の立案 ②外国資金による国内金融資本市場の撹乱 → 新しい市場監視ルールの確立(投機資金の規正) などがあり、高齢化・少子化のうねりの象徴と対策としては ①人口減少の始まり → 外国人労働力・移民の受入体制の整備 ②出生率の長期的低迷 → 結婚・出産阻害要因の除去(高校編入制度の未整備、婚外子対応など) などが挙げられる。 グローバル化、高齢化・少子化が進展するなかでも持続的成長を図るためには、政府による体系的な実効性のある成長戦略が必要であると同時に、『民間企業 も成長していかなければ!』という覚悟をもって民間でも自らの成長戦略を構築することも重要である。官民共同による成長があってこそ社会は安定するので あって、子育てや雇用への安心もその延長線上に見えてくる。 直面している危機を一刻も早く脱出し、これからの「新しい国のかたち」を構築していかなければならない。各党のマニフェストは政策内容としてはまだまだ不 十分な部分もあり、我々国民も充分にその内容を理解できているとは言い難いが、民主党に政権がバトンタッチされることになった今、マニフェスト通り誠実に 政策実現されるかをよくウォッチしていくことが肝要である。 4.有権者意識調査                      文責(長尾正博) (財)関西社会経済研究所では、8月8日、9日の両日にわたって、楽天リサーチの全国サンプル1000人を対象に、インターネットを通じて、各党政策に対する有権者の意識調査を実施した。その3週間後(8月30日)衆議院選挙の投開票が行われ、獲得議席数が、多い順に、民主党308、自民党119、公明党21、共産党9、社民党7、みんなの党5、国民新党3、その他8議席という結果になった。前述の調査によれば、比例区の投票先政党については、民主党32.4%、自民党9.8%、公明党2.0%、共産党4.3%、社民党1.1%、国民新党0.5%であった(その時点で、まだ決めていない又は投票しないという方の合計は49.4%であった。)ので、実際の獲得議席数と同様の傾向を示していたことになる。例外は共産党であったが、同党に投票した有権者は比例区で7.0%であり、獲得票という意味では、これも、調査結果が反映されたと言える。 調査結果の詳細については、「No5 各党政策に対する有権者の意識」というタイトルで、(財)関西社会経済研究所ホームページのリサーチペーパー欄に掲載しているが、その一部は下記の通りである。 (1)支持の理由 自民党の場合、支持する政党だから(56.1%、複数回答、以下同様)と政権を委ねるのに信頼できるから(35.7%)が突出しており、具体的な政策を評価していることにはなっていない。一方、民主党の場合、国の無駄遣いを解消し(55.2%)、官僚主導体制を打破し(45.1%)、国の構造改革を積極的にすすめてくれそう(26.5%)だからというのが支持の理由である。 (2)個別のマニフェスト評価 個別政策(特に民主党)について、それぞれ賛成か反対かについて聞いた結果を、賛成比率の高いものから並べると下記のグラフの通りとなった。また、比例区投票先別(民主党と自民党)にもクロス分析したところ、「子ども手当て」と「高速道路無料化」では、意見が分かれた。とくに子ども手当てについて、中学生以下のこどもがいない家庭では、賛否が互角であった。 (3)経済・財政運営方針に対する有権者の賛否 経済並びに財政に関する運営方針についても、その支持度合を計測した。 この質問は難易度が高くなる為、「どちらともいえない。わからない。」という方が、経済運営で53%、財政運営で38%と多くなる。残りの明確に賛否を示された方の中で、どちらを支持するかについて聞いたところ下記の通りとなった。