2010年度の文献一覧(40件)

熊坂 侑三
インサイト

今月のトピックス(2011年3月)

[ コメンタリー ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2011-03-18

Abstract/Keywords

日米超短期予測(月次)

このたびの東北地方太平洋沖地震による被災者の皆様には、心よりお見舞申し上げます。一刻も早い復興と皆様のご健康を心よりお祈り申し上げます。 3月11日に起きた東北地方太平洋沖地震、津波、原発事故の日本経済に与える影響について本格的に答えるのは時期尚早である。しかし、過去の自然 災害や破壊的な事件(先進国の事例では、1995年の阪神淡路大震災、2001年の米国同時多発テロ、2005年ハリケーンカタリナ等)についての歴史的 知識の蓄積は、今回の大地震の起こりうる影響について示唆を与えてくれる。これらの典型的なパターンとしては、発生後1ないし2四半期に大きな影響が発生 し、しかも被害は被災地域に集中することである。ただ国民経済全体のレベルで見ると、経済成長率への影響は目立つものの通常はそう大きくはない場合が多 い。 しかし、今回、日本経済は短期的にも長期的にも大きなショックを受けることとなった。というのも、地震だけでなく、津波、原発事故も伴っており、影響は複雑であり損失は甚大である。日本経済・関西経済における影響を考える際に、以下のような論点が挙げられる。 (1) インフラ、家屋、工場等の直接的被害 (2) 労働力の喪失、工場等の操業停止、電力供給不足による生産の停滞とその影響の波及、パニック行動(風評被害・不要な買い溜め等)による物流の混乱等の間接的影響 (3) 急激な円高と株安の進行 (4) 関西経済への影響(関西に求められることを短期的・中長期的に考える) (5) 復興時における財政出動の規模と手法 今回は、レポートの第一弾として、(2)と(4)を中心に検討する。今回の地震で、直接的な経済損失が特に見られるのは岩手県、宮城県、福島県、茨城県 の4県である。4県の県内総生産額(名目)は32.3兆円であり、全国の6.2%を占める。下表では東北4県の各産業のシェアと特化係数を示している。特 化係数は、各県の産業シェアを全国の同産業シェアで除して求められ、産業構造の特徴を他地域と比較することができる。特化係数が1を越えていると全国より シェアが高いことになる(表では1.5以上の産業を網掛けしている)。4県とも農林水産業の係数が高く、宮城県を除く3県では食料品製造業の特化係数も高 い。 また下表は、特に被害の大きい市町村(以下では被災地域と呼ぶ)での生産規模を推計した結果である。ここでは、被災地域における従業者数の県全体に対す るシェアを算出し、これに各県各産業の生産額を乗じて、これを被害規模として推計した。被災地域の生産規模は総額8兆9,039億円となる。この金額は、 4県GRPの27.6%、全国GDPの1.7%に相当する規模である。これはすべての産業活動が1年間停止した場合に起こりうる被害規模である。先に見た ように、通常は発生後1ないし2四半期に大きな影響が発生するから、実際、その影響は全国GDPを0.5%〜0.8%程度削減することになろう。 震災の地域間への影響としては、地域間産業連関表による分析が有力である。実 際、地域間産業連関表(2005年ベース)によると、関西・東北間の経済取引額は約1.6〜1.9兆円である(地域間産業連関表での東北は青森、岩手、宮 城、秋田、山形、福島が含まれる。茨城県は関東に含まれる)。関西経済における東北経済のウェイトおよび東北経済における関西経済のウェイトは1〜3%程 度と、依存関係はさほど大きくない。東北における直接的な経済損失が各地域にどのような影響をもたらすか、地域間産業連関表の簡易分析ツールを用いた推計 結果を示す。ここでは簡単のために、茨城県の被害も東北地域に組み入れ、上述した被災地域の生産規模が全て東北地域で失われると考える。具体的には、東北 地域での消費・投資・輸出、および東北以外の地域での消費・投資における東北からの移入分について、それぞれ20%が喪失されると仮定する。なお20% は、東北6県と茨城県の生産額に対する被災地域の生産規模の比率である。 このとき生産額ベースでは全国で11兆7,200億円(全国生産額の1.2%)、関西で5,854億円(関西生産額の0.4%)の損失、付加価値ベースでは全国で6兆0,198億円(GDPの1.2%)、関西で2,698億円(関西GRPの0.3%)の損失となる。 以上われわれは、今回の東北地方太平洋沖地震の経済の与える影響を、インフラなどへの直接の被害を推計するというよりも、生産活動が停滞することからの生ずる滅失所得を2つの方法で推計した。直接の被害推計については不確実性が高く、今後の課題とする。 得られた結論を再掲すると、(1)被災地域の滅失所得の直接推計規模は8.9兆円となる。この金額は、4県GRPの27.6%、全国GDPの1.7%に 相当する規模である。(2)地域間産業連関表を用いた分析では、全国GDPでは6兆円(GDPの1.2%)、関西GRPでは2,698億円(関西GRPの 0.3%)の損失となる。所得が失われる期間が半年としても日本経済(GDP)に与える影響は、0.6%〜0.8%程度と推計できよう。 [稲田義久、入江啓彰] 日本 <1-3月期の日本経済は震災の影響もあるが高成長を維持> 今週の予測では、10-12月期のGDP(2次速報値)とほぼすべての1月のデータが更新されている。日本経済超短期モデルは、1-3月期の実質GDP成 長率を前期比+1.2%、同年率+5.1%と前回に引き続き高い成長率を予測している。また4-6月期については前期比+0.8%、同年率+3.4%と予 測している。 これら予測についての最大のリスクは、3月11日に起こった東北地方太平洋沖地震の影響である(暫定的な日本経済や関西経済に与える影響試算については、 今月のトピックスを参照)。3月の月次データには影響が出てくるが、本格的な影響は4-6月期に表れる。現時点では4-6月期はプラス成長を予測している が、データが更新されるにつれて、マイナス成長の可能性は高まってくるであろう。 1-3月期の国内需要を見れば、実質民間最終消費支出は前期比+0.4%と好調である。1月の消費総合指数は前月比+0.6%、10-12月期平均 比+1.2%と大幅に伸びており、この影響を反映している。実質民間住宅は同+0.3%増加し、実質民間企業設備は同+2.9%増加する。実質民間企業在 庫品は1.481兆円と成長を押し上げている。在庫は情報通信機械、輸送機械、一般機械工業で上昇している。実質政府最終消費支出は同+0.5%、実質公 的固定資本形成は同-0.2%となる。このため、国内需要の実質GDP成長率(前期比+1.2%)に対する寄与度は+1.0%ポイントとなる。 一方、純輸出をみれば、財貨・サービスの実質輸出は同+3.8%増加し、実質輸入も同+3.3%増加する。このため、実質純輸出の実質GDP成長率に対する貢献度は+0.2%ポイントとなる。 主成分分析モデルは、1-3月期の実質GDP成長率を前期比年率+4.5%と予測している。また4-6月期を同+2.9%とみている。この結果、支出サイ ド・主成分分析モデルの実質GDP平均成長率(前期比年率)は、1-3月期が+4.5%、4-6月期が+2.9%と堅調な回復を予測する。 超短期モデルは予測に関して個人的な恣意性を完全に排除している。東北地方太平洋沖地震のような突発的な影響を予測では捉えることはできない。月次データ にその影響が反映されて初めて予測の変化として実現する。ただ、先行指標であるサーベイデータなどにおける変化を用いて家計消費などのへの影響を推計する こともできる。今後は、超短期予測と併用して予測を行いたい。 [[稲田義久 KISERマクロ経済分析プロジェクト主査 甲南大学]] 米国 グラフにみるように、支出サイドと所得サイドの平均実質GDP伸び率は上昇トレンドを形成しており、米景気が堅調に拡大していることを示している。支出サ イドにおける実質GDPの伸び率が低いのは米景気拡大に伴い輸入が大きく伸びているためである。GDP以外の実質総需要、国内需要、最終需要でみても同じ ような上昇トレンドが形成されており、3月11日時点でこれらのアグリゲート指標からみた1-3月期の経済成長率は3%〜5%と堅調である。 このような景気拡大にもかかわらず、バーナンキ連銀議長は現在の非常に高い失業率からOutput Gap(需給ギャップ)が大きいと考え、これまでの異常なゼロ金利政策、QE2を継続していくように思われる。実際にそのように考えているいわゆる"ハト 派"の連銀エコノミストが多い。原油価格の高騰に対しても、大きな需給ギャップから、バーナンキ連銀議長はインフレ懸念を示していない。しかし、原油価格 による物価上昇はコストプッシュ型のインフレであり、デマンドプル型ではなく、需給ギャップとはあまり関係ない。バーナンキ連銀議長の言うとおり、連銀の 金融政策が原油価格に直接に影響を与えることはできないが、異常な低金利政策、ドル安がコモディティー価格の上昇に一部寄与していることは確かである。消 費者にとって、コストプッシュ型、デマンドプル型のどちらにせよ、インフレはインフレであり、彼らは物価上昇がおこればインフレ期待を生じさせる。このこ とは3月のミシガン大学の消費者センチメント調査で1年後のインフレ期待が2月の3.4%から4.6%へと大きく上昇したことからも理解できる。連銀のす べきことの一つはいかにインフレ期待の上昇を抑制するかである。3月15日のFOMCミーティングにおいて何らかの出口戦略がとられるべきであろう。 確かに、需給ギャップの考え方は受け入れやすい。しかし、需給ギャップを計算するための潜在成長率の求め方がいろいろあることを考えれば、需給ギャップの 考え方が現実的かどうかの問題が残る。連銀が需給ギャップ理論に執着して金融政策を決定していけばインフレ抑制に手遅れになるだろう。 [[熊坂有三 ITエコノミー]]
入江 啓彰
経済予測

第9号 関西エコノミックインサイト

[ Quarterly Report(関西) ] AUTHOR入江 啓彰 / 武者 加苗 DATE2011-03-02

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エコノミックインサイト

著者不明
経済予測

関西エコノミックインサイト 第9号(2011年3月2日)

[ Quarterly Report(関西) ] AUTHOR- DATE2011-03-02

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エコノミックインサイト

「日本経済のマクロ経済分析−関西経済の現況と予測−」研究成果報告 (主査: 稲田義久・甲南大学経済学部教授 高林喜久生・関西学院大学経済学部教授) 「関西エコノミックインサイト」は、関西経済の現況の解説と、計量モデルによる将来予測を行ったレポートです。関西社会経済研究所が公表する日本経済予測と連動しており、原則として四半期ごとに公表いたします。 第9号(2011年3月)の概要は以下の通りです。 1.関西2府5県の2008年度県民経済計算確報値によれば、関西の同年の実質GRP成長率は-3.2%であった。また大阪府民経済計算の早期推計 値によれば、大阪府の2009年度の実質GRP成長率は-4.2%と下落幅は大きかった。大阪経済は関西経済の約5割を占めており、2009年度の関西経 済の落ち込み幅は前年からの拡大が予想される。 2.関西経済は、一時的な足踏み状態から緩やかな回復に帰する見込みである。景況感、生産などの月次データはこれまで一進一退で推移してきたが、足下・先行きに関しては回復を示すシグナルが多く出てきている。 3.県民経済計算の最新データおよび日本経済の最新予測を織り込み、関西の実質GRP成長率見通しを2010年度+2.7%、2011年度+2.1%、2012年度+2.0%と改訂した。 4.成長率寄与度をみると、民需と外需が関西経済の成長の牽引役となる。2010年度は民需+1.7%pt、外需+1.0%pt、2011年度は民 需+1.3%pt、外需+0.8%pt、2012年度は民需+1.0%pt、外需+1.0%ptとなろう。公的需要は、経済成長にほとんど影響を与えな い。また2009年度の成長見通しは-3.6%に大幅下方修正されている。 5.予測のベースラインに対して、海外経済の変動リスク、財政運営リスクが想定される。とりわけ関西経済は中国の動向に左右される。
著者不明
研究プロジェクト

『ズームイン奈良』(2011年6月)

[ 2010年度 ] AUTHOR- DATE2011-06-27

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奈良

(主査:稲田義久・甲南大学経済学部教授、高林喜久生・関西学院大学経済学部教授) 当研究所のマクロ経済分析プロジェクトチームでは、在阪の大手企業・団体の若手スタッフの参加による研究会を組織し、稲田主査指導のもとマクロ計 量モデルによる景気予測を行なうとともに、高林主査指導のもと時宜に適ったテーマを取り上げ、特別研究を実施している。2010年度の特別研究は、遷都 1300年記念事業で当初計画の約1.7倍の集客があり全国的に注目が集まった奈良県に着目した。その強みと弱みについて分析した結果を、『ズームイン奈 良』と題した報告書にとりまとめ2011年6月に公表した。 <要旨> (1)本研究では、関西経済に占めるシェアは5%程度と小さいものの、 わが国最古の文化・歴史遺産を誇る奈良県の経済を分析対象として取り上げ、 アンケート調査、ヒアリング調査、公的データ等の活用により、奈良経済の強みと弱みを分析した。 (2)アンケート調査は2010年11月下旬、奈良県に居住する18歳〜69歳の男女500名に対しウエブ方式で実施。 消費や交通利用の実態、奈良県の強みと弱みに関する意識等の結果をとりまとめた。 (3)これらアンケートやヒアリング等から導き出された奈良の強みと弱みは 以下の通り。 (奈良の強み) ・歴史と自然が調和した独自の観光資源を有する。 ・優れた住環境(昼間人口比率は88.5%と関西で最も低い)で ゆとりある生活を享受している(1人当たり県民雇用者報酬は全国4位)。 (奈良の弱み) ・需要を満たすだけの宿泊施設や飲食施設が不足し、集客の経済効果を 享受できていない。 ・交通の便が悪い。交通渋滞を引き起こしているほか、県南北間のアクセスを遮断し 中部・南部の経済発展にマイナスの影響を及ぼしている。 ・奈良県民の所得が大阪府など近隣へ流出。 ・産業が脆弱(大規模立地可能な工場用地が不足、など) (4)アンケート結果を中心とする分析から、奈良県経済の抱える課題を克服し、強みを活かして関西全体の発展に役立てていくためには、(1)ブランド化と発信力の強化、 (2)関西広域連携の視点、の2点が重要と指摘している。
稲田 義久
経済予測

第86回 景気分析と予測(2011年2月23日)

[ Quarterly Report(日本) ] AUTHOR稲田 義久 / 高林 喜久生 DATE2011-02-23

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景気分析,景気予測

「日本経済のマクロ経済分析」研究成果報告 (主査: 稲田義久・甲南大学経済学部教授 高林喜久生・関西学院大学経済学部教授) 当研究所のマクロ経済分析プロジェクトチームでは、在阪の大手企業・団体の若手スタッフの参加の下で研究会を組織し、予測に必要な景気の現状分析、外生変数の想定について共同で作業を行っている。 「景気分析と予測」については、四半期ごとに年4回(2003年度までは年2回)発表している。 2005年度より四半期予測作業において、日本経済超短期予測モデル(CQM)による、直近2四半期のより正確な予測値を取り入れている。 ポイントは以下の通り。 *10-12月期GDP1次速報値を織り込み、2010年度実質GDP成長率を+3.2%、2011年度+2.0%、2012年度+1.7%と予測する。前回から0.2%ポイント、0.4%ポイント、0.1%ポイント、それぞれ上方に修正された。 2011年度が0.4%ポイント上方修正された理由は、いったん途切れた外需の再加速が今回予測に反映されたためである。 *2010年10-12月期の一時的な踊り場局面から、日本経済は持ち直しに転じ比較的高い成長が2011年前半に実現しよう。 前回予測では2011年前半の調整を経て海外経済の回復とともに、後半から日本経済は順調な拡張経路に復するとみていたが、景気回復は前倒しとなろう。
熊坂 侑三
インサイト

今月のトピックス(2011年2月)

[ コメンタリー ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2011-02-21

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日米超短期予測(月次)

今月の日本経済見通しで述べたように、10-12月期の実質GDP成長率(1次速報値)は前期比年率-1.1%となり、5四半期ぶりにマイナス成長に転 じ、市場の見方を確認する結果となった。すなわち、同期の実績は、日本経済が不況に陥ったのではなく景気対策効果の剥落による一時的な景気の踊り場であっ たことを意味している。というのも実質GDP成長率を最も引き下げたのは民間最終消費支出であり、同-2.9%減少し(7四半期ぶりマイナス)、実質 GDP成長率を-1.7%ポイント引き下げたからである。 しかし、多くにとってサプライズであったのは、実質耐久消費財が同+13.0%と前期(同+58.7%)に続き2桁増を記録したことである。おそらく薄型 テレビの販売増が乗用車の販売減を相殺したようである。一方、民間最終消費支出のうち、実質半耐久消費財、実質非耐久消費財、実質サービス消費はそれぞれ -1.7%、-13.7%、-0.8%減少した。半耐久財は3四半期連続、サービスは4四半期連続で前期から減少しているのに対し、非耐久財は5四半期ぶ りでかつ大幅な減少となっている。家計は非耐久財の消費を削減し、耐久財支出に多くをまわしたと考えられる。 デフレータを見ると、民間最終消費支出デフレータは前期比-0.2%と下落幅は前期(-0.6%)より縮小したが、3期連続のマイナスを記録した。超短期 予測では民間最終消費支出デフレータを主として消費者物価指数で説明しており、10-12月期は前期比+0.4%と予測しており、実績(同-0.2%)と は大きく乖離した。これまで比較的高い説明力があったが今回は過大予測となった。 実際、10-12月期の消費者物価指数は前期比横ばいであったが、民間最終消費デフレータが同マイナスとなった理由として、説明変数である消費者物価指数 は固定基準年ウェイト方式であるのに対して、被説明変数である民間最終消費支出デフレータは連鎖方式による指数であることが影響したものと考えられる。前 期のウェイトが用いられる連鎖方式では、政策効果による耐久消費財のウェイトの高まりと技術進歩のスピードが速い耐久消費財では価格下落が大きく、両者の 影響が今回特に大きく出たと思われる。 実際、民間最終消費支出デフレータのサブカテゴリ−である耐久消費財、半耐久消費財、非耐久消費財、サービスの伸びをみると、それぞれ前期比-6.1%、 -0.3%、+1.4%、+0.1%となっている(図参照)。ちなみに、非耐久財デフレータが上昇しているのはタバコの増税による。消費者物価指数と民間 最終消費支出デフレータの対応するカテゴリーの伸びを比較すると、耐久消費財デフレータの伸び(前期比-6.1%)と当該消費者物価指数の伸びには大きな 乖離が見られる。その他のカテゴリーでは大きな乖離はない。多くにとってサプライズであった実質耐久消費財が前期に続き2桁増となった理由の一部は、連鎖 指数である同デフレータが大幅に下落したことが考えられる。 ただ消費者物価指数は2011年8月に基準年が2005年から2010年に移行する予定である。移行時にウェイトが変更されるが、ウェイトの変更は指数全 体を押し下げる方向にはたらくと見られている。基準年が移行した新指数では民間最終消費支出デフレータと消費者物価指数の乖離は幾分縮小するであろう。 日本 <一時的な踊り場をへて1-3月期日本経済は急回復> 2月14日(月)発表の GDP1次速報値によれば、10-12月期の実質GDP成長率は前期比年率-1.1%となり、市場の見方をほぼ確認する結果となった。5四半期ぶりにマイ ナス成長に転じたが、2010暦年の実質GDPは前年比+3.9%となり、3年ぶりのプラス成長を記録した。 実質成長率は市場コンセンサス(ESPフォーキャスト2月調査:-2.13%)より幾分低かった。最終週における超短期モデル(支出サイドモデルと主成分 分析モデル)の平均成長率予測は-3.2%であった。支出サイドモデル予測は-2.3%とほぼ市場コンセンサスと同じ、一方、主成分分析モデル予測は -4.2%となった。 ただ季節調整の掛けなおしにより、過去の成長パターンが変化しており、過去3四半期の成長率は0.8%~1.2%ポイント下方修正されている。超短期モデ ル(支出サイドモデル)は、10-12月期の実質GDPを543.2兆円と予測したが、実績は542.2兆円であり1兆円程度下回っている。すなわち、成 長率の実績(-1.1%)は予測(-2.3%)を上回ったが、過去3四半期にわたって下方修正されたため水準の実績は逆に予測を下回ったのである。 足下の月次指標をみれば、10-12月期の実績は、日本経済が不況に陥ったのではなく景気対策効果の剥落による一時的な景気の踊り場であったことを支持している。 10-12月期の実質GDP成長を最も引き下げたのは民間最終消費支出であり、政府支出や純輸出も引き下げた。実質GDP成長率(-1.1%)への寄与度 (年率ベース)を見ると、国内需要は-0.7%ポイントとなり、5四半期ぶりのマイナス寄与となった。一方、純輸出は-0.4%ポイントと2四半期連続の マイナス寄与である。今回のデータは、輸出の減少とエコポイント制度変更前の駆け込み需要の反動の影響が大きく出たことを示している。 実質民間最終消費支出は同-2.9%となり、実質GDP成長率を-1.7%ポイント引き下げた。7四半期ぶりマイナスである。多くにとってサプライズで あったのは、実質耐久消費財が同+13.0%と前期に続き2桁増を記録したことである。このことは相当需要を先食いしたことを意味しており、1-3月期以 降の耐久消費財の反動減が危惧される。多くにとってサプライズであった、実質耐久消費財が前期に続き2桁増となった理由の一部は、同デフレータが大幅に下 落したことが考えられる(これについては今月のトピックス参照のこと)。 今週の支出サイドモデルは、1-3月期の実質GDP成長率を、内需と外需が反転拡大するため前期比年率+5.9%と予測する。また4-6月期の実質GDP 成長率を、内需及び純輸出がともに拡大するため、同+3.8%と予測している。日本経済は一時的な踊り場を経て2011年年前半は比較的高い成長率を実現 できよう。 [稲田義久 KISERマクロ経済分析プロジェクト主査 甲南大学] [[稲田義久 KISERマクロ経済分析プロジェクト主査 甲南大学]] 米国 2010年 10-12月期の実質GDP伸び率(前期比年率)が+3.2%となった。これは米国超短期モデルの最終予測の同+3.8%より幾分低い。しかし、大事なこ とはGDPから在庫増を除いた実質最終需要が同+7.1%と大きく伸びたことである。持続的な経済成長を考えるとき、在庫に頼らない最終需要を見ることは 大事なことである。実際に、米国経済が景気回復を示し始めた2009年10-12月期の実質GDP伸び率は5%を超えたにもかかわらず、実質最終需要の伸 び率が2.1%と低かったことから、連銀は経済成長の多くが在庫増によるものと言って、従来のゼロ金利政策を変更しなかった。米経済がリセッションを終了 した以降の2009年7-9月期〜2010年10-12月期の6四半期の実質GDPの平均伸び率は3.0%であり、実質最終需要の平均伸び率は2.1%で ある。この期間の個人消費支出価格デフレータとそのコア価格デフレータのそれぞれの平均伸び率は1.7%、1.1%である。このような状況の中で、連銀は まだ異常なゼロ金利政策を維持し、追加的数量緩和政策(QE2)の継続さえ考えている。 2月3日にバーナンキ連銀議長は全米記者クラブで経済見通しとマクロ経済政策"の講演を行い、次のように述べている。「我々は強い雇用増が持続的になるま で、景気回復が本格的になったとみなすことはできない。」「正常な失業率の水準に戻るまでにはあと数年はかかる。」「今のコモディティー価格の上昇は発展 途上国の需要増によるものである。」すなわち、連銀とは無関係というものである。確かに、石油価格の高騰は連銀とは無関係であるが、コモディティー価格の 上昇が、近い将来に一般物価に影響を与えることは確かである。都合の悪い最終需要が7.1%と伸びたことには触れてはいない。 今週の超短期モデルは、1-3月期の実質GDP成長率(需要サイド、所得サイド平均)を前期比年率+2.4%と予測している。順調な拡大を示している。さ て、連銀は一体いつまで異常なゼロ金利政策、効果のないQE2を継続したいのであろうか?あるいは、失業率が一体何%にまで低下したら、今の金融スタンス を変更するのだろうか?おそらく、バーナンキ連銀議長の望む失業率が達せられる前に、インフレーションの加速化が始まるだろう。彼の頑固さは、連銀が景気 のモメンタムを捉えることができなかったことからきているのかもしれない。彼の失業率低下への執着は異常としか思えない。 [[熊坂有三 ITエコノミー]]
熊坂 侑三
インサイト

今月のトピックス(2011年1月)

[ コメンタリー ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2011-01-24

Abstract/Keywords

日米超短期予測(月次)

先月の本コラム『2011年の関西経済:「アジアの中の関西」を実感する元年』では、アジア経済、特に中国経済の関西経済にとっての重要性を強調した。そ れを裏付けるデータが1月20日に発表された。中国国家統計局によれば、2010年10-12月期の中国の実質GDPは前年同期比+9.8%となり、この 結果、2010暦年の実質成長率は+10.3%となった。3年ぶりの2桁成長であり、固定資産投資(特に公共投資)や輸出が高成長をけん引した。リーマン ショックの後遺症からなかなか抜け出せない日米欧経済とは対照的である。この高成長の結果、中国の名目GDP(39兆7983億元)のドル換算値は日本の それを追い越し世界第2位となるのは確実である。というのも、今月の日本経済超短期予測で示したように、10-12月期の実質成長率(実績は2月14日公 表予定)はマイナス成長が確実だからである。 さて歴史を振り返ると、名目GDPでみて日本経済が旧西ドイツを抜いて世界第2位になったのは1968年であった。その2年後に大阪万博が開催され、さら に4年前の1964年には東京オリンピックが開催された。加えて、1972年に田中首相の『日本列島改造論』を引けがねとして地価が急激に上昇したことも 高度成長期に特徴的な現象であった。状況はよく似ている。2008年には北京でオリンピックが、2010年には上海で万博が開催され、そして名目GDPが 世界2位となる。またこの間、中国では不動産バブル現象も同時におこっている。 中国の成長過程の状況は日本のそれと極めて似ているが、ただ異なるのは成長のスピードが日本の経験に比してはるかに急速であることだ。急速に所得が伸びる ため消費の伸びは追いつかない。貯蓄が増加し、それが投資に回り、成長の好循環を形成する。実際、中国のGDPに占める民間消費のシェアは極めて低い。米 国の7割、日本の5割強に比して3割強にとどまっていることから、今年からスタートする中国政府の第12次5ヵ年計画の最重要点は消費シェアの拡大におか れている。輸出主導から内需主導の持続可能な成長への移行を意図している。これは国内消費が伸び、海外からはマーケットとして重要性がますます高まる。 世界の「工場」(輸出)から今や世界の「市場」(消費)に成長のドライバーは徐々に移行する。中国の1人当たりのGDPは日本の1/10の水準である。所 得水準の拡大は消費市場の高度化を推し進める。消費構造が高度化し、これからは耐久消費財やサービス支出の拡大が期待される。実際、中国の消費者物価指数 のウェイトにおいて、食品のウェイトは非常に高く、サービス支出のウェイトは低いのはこのことを反映している。GDPが世界第2位となった中国経済とどう 付き合うのか。答えの一つは中国の旺盛な消費需要を日本がどのように取り込んでいくかであり、これが日本の新成長戦略の重要なポイントとなる。 日本 <米国とは対照的な10-12月期日本経済の不振は一時的> 予測動態のグラフの比較から明らかなように、10-12月期の米国と日本の成長パフォーマンスは対照的な結果となろう。今週の米国経済超短期予測によれ ば、実質GDP成長率は約4%(前期比年率)の高成長が見込まれている。一方、日本経済超短期予測(支出サイドモデル)は、同期の実質GDP成長率を、内 外需がともに縮小するため前期比-0.9%、同年率-3.4%と見込んでいる。もっとも、1-3月期の実質GDP成長率は、内需及び純輸出が反転拡大する ため、前期比+1.1%、同年率+4.3%と予測している。 10-12月期の日本経済の景気のモメンタム(支出サイド、主成分分析モデル予測値平均)は11月の半ばから減速傾向を示し始めた。実質GDP成長率は 11月の終わりからマイナスの領域に入った。12月には-2%に低下し、10-12月GDPの基礎データの2/3が利用可能な1月半ばにはさらに-3%に まで低下した。これから発表される12月の月次データはせいぜい底打ちを示唆するものが増えると予想されることから、10-12月期のマイナス成長は -3%を超える可能性は低くない。 10-12月期の低迷は、家電エコポイントの縮小やエコカー補助金の終了に伴う家計消費の反動減が主因である。同期の国内需要を見れば、実質民間最終消費 支出は前期比-0.6%のマイナス成長を予測している。実質民間住宅は同+2.3%と好調であるが、実質民間企業設備は同-0.3%と低調である。実質政 府最終消費支出は同+0.7%、実質公的固定資本形成は同-4.8%となる。この結果、国内需要の実質GDP成長率(前期比-0.9%)に対する寄与度は -0.8%ポイントとなろう。純輸出も景気押し下げ要因に転じる。財貨・サービスの実質輸出は同-2.8%、実質輸入は同-3.3%それぞれ減少する。こ のため、実質純輸出の実質GDP成長率に対する貢献度は-0.1%ポイントとなる。 主成分分析モデルは、10-12月期の実質GDP成長率を前期比年率-2.8%と支出サイドとほぼ同じ予測となっている。1-3月期は支出サイドモデルよ りは低いが同+1.7%とみている。この結果、支出サイド・主成分分析モデルの実質GDP平均成長率は、10-12月期が-3.1%、1-3月期 が+3.0%となる。今後海外経済が順調に回復すれば、10-12月期のマイナス成長は一時的な反動減にとどまり、2011年前半には日本経済は回復軌道 に戻るとみてよい。 [[稲田義久 KISERマクロ経済分析プロジェクト主査 甲南大学]] 米国 グラフに見るように、超短期予測は景気(実質GDP前期比年率:2010年10-12月期)が11月に入り上向き初め、11月後半には3%を超え景気回復 にモメンタムがついていることを示している。しかも、12月後半においてからは支出・所得両サイドからの平均実質GDP伸び率は5%を超えるようになっ た。しかし、企業の在庫積み増しがここにきて急速にスローダウンしてきたことから、10-12月期の実質GDP成長率は4%程度であろう。連銀は 11月2日、12月14日のFOMCコメントにおいても景気回復のモメンタムを認めようとはしていない、いや気づいていないのかも。やっと、1月7日の上 院の予算委員会の証言においてバーナンキ連銀議長が景気回復の強さを認めるような発言をした。しかし、いつものごとく高い失業率に言及し、失業率を十分に 下げるだけの景気回復ではないと主張し、未だ続けている異常な低金利政策を暗示的に正当化し、その出口政策へのヒントを与えてはいない。彼は失業率が8% 程度にまで下がるにはあと2年はかかると言い、正常な水準に戻るには5年以上かかると言っている。連銀は最大雇用と物価安定の2つの目的を常に課せられて いる。しかし、金融政策一つで2つの目標を同時に達成することは理論的にも不可能であり、課せられた目的のバランスをとりながら金融政策を適宜変更してい くことが重要である。失業率が9%を超えていようが、景気回復にモメンタムがつき、経済成長率が潜在成長率程度になったにもかかわらず、遅行指標の失業率 に執着し、将来のインフレ抑制への対策をないがしろにすれば、米国経済はインフレ加速という将来大きな損失をこうむる。 このことを従来から懸念していたカンザスシティー連銀のトーマス・ホーニング総裁に加え、今ではフィラデルフィア連銀のチャールズ・プロッシー総裁、 リッチモンド連銀のジェフリー・ラッカー総裁もこれまでの金融政策の見直しに言及し始めた。連銀エコノミストたちは一体経済成長率がどのくらいの高さにな り、失業率がどの程度にまで下がれば今の異常な低金利政策を変更し始めるのだろうか?バーナンキ議長をはじめ連銀エコノミストたちは、日本経済の長期停滞 をデフレが原因としてあまりにデフレ恐怖症に陥り、不必要なペシミズムに陥っている。不必要あるいは間違ったペシミズムは根拠なきオプティミズムより悪 い。後者は時間があまりたたずにその間違いが分かるが、前者はその間違いに気づくのに長い時間がかかる。たとえば、潜在成長率を高めに想定し、金融緩和策 をとればインフレの加速化がすぐに始まる。しかし、潜在成長率を実態より低めに捉え、金融引き締めを続ければその間違いは簡単にはみつからない。むしろ、 そのようなペシミズムに基づいた経済・金融政策は悲観的な心理を人々の間に生じさせ、景気回復を遅らすばかりか、その芽を摘み取ってしまう可能性もある。 米国経済が本格的景気回復に戻っている今、連銀は景気回復の良い面を強調し、いまや景気回復の腰を折ることなく正常な金利水準に戻る時期に来たことを市 場に告げるべきである。連銀は失業率に執着し過ぎたことから正常な金利水準に戻るための出口を見失っている。1月25日、26日のFOMCで金融政策の変 更が示唆されなければ、将来のインフレ懸念が市場に生じるだろう。 [[熊坂有三 ITエコノミー]]
著者不明
研究プロジェクト

資産課税についてのアンケート調査結果(2011年1月)

[ 2010年度 ] AUTHOR- DATE2011-01

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Abstract/Keywords

資産課税

関西社会経済研究所では、平成23年度税制改正においての資産課税に関する効果を検討する為、「資産課税についての調査:18歳以上の子どもがいる世帯主1000人全国アンケート」を実施した。 本研究は、当研究所の抜本的税財政改革研究会(主査:橋本恭之教授(関西大学経済学部))が中心になって取りまとめたものである。 【アンケート調査結果のポイント】 ・所得上位層(8%)に多くの資産(24%)が集中しており、資産保有の偏りが明らかになった。 さらにこの資産形成は相続によるものが圧倒的に多いことが判明した。 ・相続資産階級別に相続税の実効税率を求めたところ、高額の資産保有者の実効税率は高くないことが分かった。 これは優遇が大きい土地の占める割合が大きいからであろうことが推測される。 ・高所得層ほど生前贈与や子供への高額な教育投資が行われている。さらに親と子の職業を調べたところ、その強い関連が見受けられた。 このことから所得階層の固定化が浮き彫りになった。 ・高額な教育投資により所得階層が高い家庭ほどレベルの高い大学に子供を進学させており、親の資産による教育格差が懸念される。
熊坂 侑三
インサイト

今月のトピックス(2010年12月)

[ コメンタリー ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2010-12-15

Abstract/Keywords

日米超短期予測(月次)

関西経済のGDP(域内総生産)の規模はオランダ一国並みのおよそ80兆円、日本の中では約17%経済である。2010年度の関西経済の実質成長率は+2.6%と前年度見込み-1.3%から3年ぶりのプラス成長と予測(最新予測についてはhttp://www.kiser.or.jp/ja/trend/forecast.htmlを 参照のこと)している。関西経済は、全国と同様、政策動向に大きく影響を受けた1年であったといえよう。住宅版エコポイントの効果は来年も期待できるが、 エコカー補助金は9月初旬に終わり、家電エコポイントも徐々に限定的となり2011年3月末には終了する。一方、家計消費を抑制するたばこ税増税が10月 から実施された。 先行きについては、このような政策変更に伴う複数の駆け込み需要とその反動減などで家計消費が乱高下し、景気の基調が読みづらい状況である。足下減速しつ つある海外経済は、2011年央にかけて拡大経路に復する。そのため、関西経済はその恩恵を受け景気後退を回避することができ、二番底には陥らないであろ う。 さて2011年の関西経済を一言でいえば、「アジアの中の関西」を実感する元年となるであろう。中小企業、学生・・・どんな関西人でもアジアを意識せざる をえない年となろう。本コラムで、何度も指摘しているように、IT化によるグローバライゼーションで“要素価格の均等化”が進行しつつある。例えば、簡単 なパンフレットやレストランのメニューを作る町の小さな印刷屋さえ、中国の印刷屋と競争をせざるを得なくなった。日本の印刷屋が中国の印刷屋と同じものを 作る限り、品物の価格は下がり、賃金も下がらざるをえない。これはデフレではなく、グローバライゼーションによるものである。その変化に適応した、ビジネ スモデルの導入とそれを促す経済政策が必要なのである。就活する学生もアジアの学生との競争を意識し、語学の重要性を感じ始めている。 特に関西はアジア向けの輸出の比重が全国の平均よりも抜きん出て高い。しかし、アジア向けの製品は、韓国や中国に競争されやすいものを輸出しており、これ からは、付加価値を強く意識したものを作っていかないと関西経済の未来はない。逆に成長著しいアジアマネーを取りこむことが重要である。関西の成長戦略の 一つとしてツーリズムが有望な候補の一つであることは周知の事柄であり、そのためには関西は魅力的でなくてはならない。 ミクロ的な例で言うと、大阪ではオフィスビルの大量供給が2010年にピークを迎える(図参照)。一方で、リーマンショックと重なったため空室率は大幅に 上昇している。2013年にはさらなる大量供給が控えているが、これを関西活性化につなげるためには、関西を魅せる戦略が決定的に重要となる。来年5月に JR大阪駅に高層のノースゲートビルが完成し、また北ヤードでは先行開発区が2013年春完成を目指して動き出す。この北ヤードの2期開発区域について は、橋下大阪府知事が森を、平松大阪市長はサッカー場を提言されているが、関西最大のターミナルに他地域から、海外ではアジア人がリピーターとしてきてく れるためには何が必要かという視点が決定的に重要と思われる。その意味で、2011年は関西人がアジアを強烈に意識する元年といえるのではないか。 日本 <マイナス成長に突入した10-12月期日本経済> 12月9日発表の7-9月期GDP2次速報値によれば、実質GDP成長率は前期比+1.1%、同年率+4.5%となった。1次速報値の同+3.9%からの 上方修正である。上方修正の主要因は民間企業設備と民間企業在庫品増加である。今回は、通常の1次速報値から2次速報値にかけての修正に加え、包括的な データ改訂が行われた。すなわち、2008年度のデータが確報値から確々報値に、2009年度のデータが速報値から確報値に改訂された。その結果、足下6 四半期が上方修正に、一方、リーマンショック後の2四半期(2008年10-12月期及び2009年1-3月期)が大幅に下方修正された。2008年度と 2009年度の実質GDP成長率は1次速報値の-3.8%と-1.8%から-4.1%と-2.4%にいずれも下方修正された。包括的なデータ改訂からわ かったことは、リーマンショックはいかに日本経済に大きな影響を与えたかである。 さて景気の足下はどうであろうか?今週の予測では、一部の11月のデータとほとんどの10月のデータが、また7-9月期の2次速報値が更新されている。支 出サイドモデルによれば、10-12月期の実質GDP成長率を前期比年率-1.1%、一方、2011年1-3月期の実質GDP成長率を同+4.0%と予測 している。10-12月期は11月の見通しから下方修正され、成長率はマイナスが避けられないようである。結果、2010年度の成長率は+3.6%となろ う。 10-12月期実質GDP成長率への寄与をみると、内需は成長を引き下げるが外需は小幅成長に寄与する。内需のうち、実質民間最終消費支出は政策の反動減 の影響で前期比-0.2%となる。実質民間住宅は同+2.7%増加するが、民間企業設備は-0.6%減少する。実質政府最終消費支出は同+0.7%増加す るが、実質公的資本形成は同-1.9%減少する。外需を見れば、実質財貨・サービスの輸出は同-4.2%低下し、実質輸入は同-6.6%減少する。いずれ も減少するが純輸出は小幅の成長貢献となる。 主成分分析モデルも、10-12月期の実質GDP成長率は同-3.0%、1-3月期は同+1.2%と予測している。この結果、両モデルの平均成長率予測は10-12月期が同-2.0%、1-3月期が同+2.6%となる。10-12月期の落ち込みは一時的となろう。 [[稲田義久 KISERマクロ経済分析プロジェクト主査 甲南大学]] 米国 11月後半から12月後半にかけて発表された経済指標から市場は景気回復に対してかなり楽観的になった。しかし、11月の雇用増(純)が市場の予想を大き く下回ったことから、せっかく高まってきた景気回復への楽観的な見方に水をさす形となった。特に、失業率が職を求める人々が増えたにせよ、10月の 9.6%から9.8%へと上昇したのがいけない。連銀は追加的数量緩和政策により積極的になり、バーナンキ連銀議長は米国債買い入れ額が6,000億ドル を超える可能性も示唆している。 連銀が異常な金融緩和を続けるロジックは次の通りである。(1)失望的に低い物価上昇率、デフレ懸念、(2)今の失業増加は構造的なものではなく、循環的 なもの(11月2−3日FOMCの議事録参照)。それゆえ、一層の金融緩和で景気を良くして、連銀に課せられた2つの目標(物価の安定と完全雇用)を達成 しようとするものである。残念ながら、連銀のロジックには(日銀と同じような)誤りがあるように思われる。PCE価格デフレーター、コアPCEデフレー ターでみた現在の物価上昇率は0%〜1.5%と失望的に低い水準ではない。むしろ、IT革新による生産性の向上、サーチコストの劇的な低下、グローバル化 による低価格製品の供給を考慮すれば、当然の低物価上昇率であり、デフレ・インフレ懸念のないパーフェクトな物価状況である。一方、失業の増加には構造的 な面が強い。すなわち、企業は一旦解雇した労働者を景気が回復してきても再び雇用せずに、IT化をすすめることでかなり対処することができるからである。 すなわち、連銀はプラス効果の少なく、将来のマイナス効果の大きい異常な低金利政策を維持している。おそらく、カンザス・シティー連銀のトーマス・ホーニ ング総裁の考え方が正しいと思われる。 グラフに見るように、今期の経済成長率は11月に入りかなり急速に改善をし始め、今では3%〜4%にまで達しており、米経済は堅調な景気回復状況にある。このような状況で異常な低金利政策を続けても、急速に失業率が低下するわけではない。 すなわち、今金融政策のできることは限られている。後は、財政政策などに任せ、今の安定した物価に重点をおいた金融政策を行うことが重要である。短期的に は、富裕層も含めたブッシュ減税政策の延長をできるだけ早く民主党が受け入れることである。長期的には、経済のITによるグローバル化に対処できるイノ ベーションを促進する経済政策が求められる。経済はITにより大きく変わっている。それに対応するスペシフィックなミクロ経済政策が求められているのであ り、異常な低金利政策をいつまでも続けても、将来への悪影響をもたらすだけである。 [[熊坂侑三 ITエコノミー]]
著者不明
経済予測

関西エコノミックインサイト 第8号(2010年12月3日)

[ Quarterly Report(関西) ] AUTHOR- DATE2010-12-03

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Abstract/Keywords

エコノミックインサイト

「日本経済のマクロ経済分析−関西経済の現況と予測−」研究成果報告 (主査: 稲田義久・甲南大学経済学部教授 高林喜久生・関西学院大学経済学部教授) 「関西エコノミックインサイト」は、関西経済の現況の解説と、計量モデルによる将来予測を行ったレポートです。関西社会経済研究所が公表する日本経済予測と連動しており、原則として四半期ごとに公表いたします。 第7号(2010年12月)の概要は以下の通りです。 1.足下の関西経済は、回復を支えてきた2つの外生要因が後退したため、足踏みの状態が続いている。すなわち、政策効果の縮小と海外経済の減速が景気押し下げ要因に転じている。 2.先行きについては、政策変更による複数の駆け込み需要と反動減などで家計消費が乱高下しており、基調が読みづらくなっている。足下減速しつつある海外 経済は、2011年央には拡大経路に復する。そのため、関西経済はその恩恵を受けて景気後退を回避することができ、二番底には陥らないであろう。。 3.日本経済の最新予測を織り込み、関西の実質GRP成長率を2010年度+2.6%、2011年度+1.6%、2012年度+1.4%と予測した。補正予算の効果を反映したため、前回予測より上方修正である。 4.2010年度の成長率寄与度をみると、民需が+1.3%ポイント、外需が+1.1%ポイントと、バランスよく関西経済の成長を支える。2011年度の 民需の寄与度は+0.8%ポイント、2012年度+0.9%ポイントと緩やかな伸びとなる。外需の寄与度は2011年度+0.5%ポイントと前年より減速 するが、2012年度+0.9%ポイントまで回復する。 5.補正予算が実施されることで、関西経済の実質GRPは2010年度0.45%、2011年度0.51%押し上げられる。しかし、補正予算の下支えが消滅する2012年度は0.03%押し上げにとどまる。