研究成果

research

第75回 景気分析と予測(2008年11月25日)

Abstract

「日本経済のマクロ経済分析」研究成果報告
(主査: 稲田義久・甲南大学経済学部長・教授
高林喜久生・関西学院大学経済学部教授)

当研究所のマクロ経済分析プロジェクトチームでは、在阪の大手企業・団体の若手スタッフの参加の下で研究会を組織し、予測に必要な景気の現状分析、外生変数の想定について共同で作業を行っている。
「景気分析と予測」については、四半期ごとに年4回(2003年度までは年2回)発表している。
2005年度より四半期予測作業において、日本経済超短期予測モデル(CQM)による、直近2四半期のより正確な予測値を取り入れている。
11月17日の政府四半期別GDP一次速報の発表を受けた2008-2009年度の改訂経済見通しとなっている。
ポイントは以下の通り。

* 2008年度7-9月期実績の評価‥‥当期の実質GDP成長率(一次速報)は、前期比▲0.1%、同年率▲0.4%と2期連続のマイナス成長となった。 4-6月期も前年比▲0.1%(同年率▲3.7%)と下方修正され、2002年4-6月期以来のマイナスを記録した。家計部門は比較的堅調であったが、こ れまで景気の牽引役であった輸出が前期比でマイナスとなるなど、外的ショック型の景気後退が進行している。

* 2008年度の改訂見通し‥‥2008年度の実質GDP成長率は▲0.2%と7年ぶりのマイナス成長に転じよう(前回予測+1.0%から大幅下方修正)。 改正建築基準法による民間住宅の落ち込みの影響が剥落するものの、米国およびEU経済の減速により純輸出が大幅に減速、雇用環境の悪化により民間最終消費 支出が低迷するためである。

* 2009年度の改訂見通し‥‥民需の回復が期待できず、世界経済回復が2010年以降に後ずれすることにより純輸出の寄与も期待できないため、2009年 度の実質GDP成長率は+0.1%とほぼゼロ成長となる。また、2008年後半から原油価格や商品価格の下落によりデフレ圧力が強まり、2009年度のコ ア消費者物価指数は前年比+0.5%、国内企業物価指数は同+4.4%まで低下すると予測している。

* 以上の標準予測に対して、追加的経済対策を実施した場合の効果も検討したが、予測期間を通じて実質GDPを約0.1%拡大させる程度の効果に留まる。