国際経済統合とベトナムの銀行部門:健全なシステムへの道

リサーチリーダー

研究員 CAO Thi Khanh NGUYET

 

研究目的

経済改革と国際経済への統合はベトナムの銀行部門に市場の多様化、国内銀行の効率性向上、経営ノウハウの習得、法制度の整備等、様々なメリットをもたらしている。例えば、外資保有の国内銀行では、重要なポストを海外の専門家が担当することがあり、国内銀行に外資銀行のノウハウが数多く移転されている。また、近代的な技術のベトナムへの普及という点でも、ベトナム経済に外資銀行が果たした役割は大きいだろう。しかし一方で、資本と経験の豊富な外資系銀行は、国内銀行に激しい競争を強いるという点も重要である。その結果、2006年~2013年において、外資系銀行が31行から53行まで増加したのに対し、ベトナム商業銀行は37行から33行に減少してきた。 

以上の背景を踏まえ、国際経済統合により、ベトナム銀行へもたらされるインパクトは議論、研究されるべきと考える。また、新時代に入り、健全な銀行システムに向かい、国内銀行は外資系銀行の資本、技術、経験を活用し、国内銀行の再編成、財政力の向上、銀行サービスの提供体制の強化が求められており、これに資する政策の提案も重要な課題である。

 

研究内容

文献研究及び実証分析(データ資源:ベトナム政府が公表したデータセット、金融機関の公開年間レポート等)。 

ベトナムの銀行システムの発展を評価するために、様々な資料に基づいて、設立された時から現在までの成長段階を分け、文献研究の他、各銀行のデータに基づく実証分析も行う。その他、ベトナムと同様、移行期経済を経験した中国と比較することで、共通点や相違点を明らかにする。

 

統括

林 敏彦 APIR研究統括

研究アドバイザー

藤原賢哉 神戸大学教授

家森信善 神戸大学教授

地主敏樹 神戸大学教授

森 純一 京都大学名誉教授・ダナン大学経済大学客員教授

 

期待される成果と社会還元のイメージ

研究成果として、論文を執筆する。ホームページでの公表、学会報告、ジャーナル投稿、ベトナム語翻をベトナム国内ジャーナルに投稿することを通じて、関心のある研究者等にベトナム金融市場について理解した上で、ベトナム金融市場が健全性を向上する取り組むべき政策を議論してもらう。

研究成果

  • 2016年度報告書が完成しました。

関連論文

稲田 義久
経済予測

Kansai Economic Insight Quarterly No.40 <2つの輸出により足下景気は堅調も先行きに黄信号>

[ Quarterly Report(関西) ] AUTHOR稲田 義久 / 入江 啓彰 / 木下 祐輔 / CAO THI KHANH NGUYET / 生田 祐介 / 馬 騰 DATE2018-11-26

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Abstract/Keywords

関西経済, 四半期予測, 早期推計, 2つの輸出, インバウンド, 自然災害

2つの輸出により足下景気は堅調も先行きに黄信号自然災害と米中貿易摩擦高進で高まる景気減速リスク 1.2018年7-9月期実質GDP成長率は前期比-0.3%(年率換算-1.2%)と2四半期ぶりのマイナス成長となった。実質GDP成長率に対する寄与度は国内需要-0.8%ポイント、純輸出-0.3%ポイントとともにマイナスとなった。国内需要は相次ぐ自然災害の影響で伸び悩み、民間最終消費支出が-0.3%ポイント、民間企業設備が-0.1%ポイントと成長を押し下げた。また輸出は関空の一時閉鎖の影響もあり、-1.3%ポイントと5四半期ぶりのマイナスとなった。 2.2018年7-9月期の関西経済は、一部で自然災害の影響が見られたが、おおむね堅調を維持した。家計部門では、所得や雇用は改善が続いているが、センチメントや大型小売店販売は低調だった。企業部門では、景況感は堅調に推移し、設備投資計画は旺盛である一方、生産は弱い動きとなった。対外部門は、関空一時閉鎖により輸出入や外国人客数は一時的に前年割れとなったが、インバウンド需要は前年を上回る拡大を維持した。公的部門は弱い動きである。 3.関西の実質GRP成長率を2018年度+1.8%、19年度+0.7%、20年度+0.5%と予測する。前回予測と比較すると、18年度は修正なし、19年度・20年度ともに-0.3%ポイントの下方修正である。 4.全国の成長率と比較すると、18年度は、所得環境の全国を上回る高い伸びやインバウンド需要の加速により、全国より高い成長率で推移する。19年度以降は、消費増税の影響から日本経済予測と同様に関西でも成長率は減速し、全国並みの成長率となる。2020年度には、全国に比して関西では内需の貢献が小幅となり、日本予測の成長率が関西を若干上回る。 5.標準予測に対して、海外・国内とも様々なリスクが懸念される。海外リスクとしては、世界経済全体の鈍化が指摘できる。特に中国経済にスローダウンの兆しが見えつつある中で、米中間の貿易戦争の高進は、関西経済にも影響が波及するおそれがある。国内リスクとしては、消費増税後の民間需要の停滞がある。一方で、2025年の万博開催が大阪・関西に決定したことは、先行きの明るい材料となろう。 6.トピックスとして、自然災害の中でも、9月の台風21号による影響について検討した。9月の関空一時閉鎖によりインバウンド関連では317億円、財輸出関連では281億円となり、合計では約598億円の経済的損失が発生した見込み。これは輸出の0.3%、関西GRPの0.1%に相当する。関西に対する風評被害が履歴効果として蓄積しないよう、迅速かつ適切な情報発信が必要である。また、関西2府4県のGDP早期推計の改定結果および超短期予測の結果が示されている。   ※英語版はこちら
稲田 義久
経済予測

Kansai Economic Insight Monthly Vol.67 – 景気は足下悪化が続くも先行きは改善の兆しか -

[ Monthly Report(関西) ] AUTHOR稲田 義久 / 豊原 法彦 / 木下 祐輔 / 生田 祐介 / CAO THI KHANH NGUYET / 馬 騰 DATE2018-11-22

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Abstract/Keywords

関西経済, 月次レポート, KEIM

-景気は足下悪化が続くも先行きは改善の兆しか- ・9月の鉱工業生産指数は2カ月ぶりの前月比マイナスとなり、結果7-9月期は2四半期ぶりの前期比低下。近畿経産局は生産の基調判断を「緩やかな持ち直しの動きに一服感」と下方修正した。 ・10月の貿易収支は9カ月連続の黒字となったが、黒字幅は前年比縮小した。9月の台風の影響で一時閉鎖した関空の物流機能が回復しつつあり、輸出と輸入はともに増加した。 ・10月の景気ウォッチャー現状判断DIは、2カ月ぶりの前月比改善。関空の機能が平常に戻り、インバウンド需要や百貨店の売上が回復傾向にあることなどが改善に寄与した。 ・8月の関西2府4県の現金給与総額は18カ月連続の前年比増加だが、伸びは1%未満にとどまった。また、実質現金給与総額はガソリン等エネルギー価格の上昇から6カ月ぶりに減少した。 ・9月の大型小売店販売額は3カ月連続の前年比マイナス。百貨店は台風の影響もあり2カ月ぶりの同マイナス。スーパーは農産品価格の高騰が続いており2カ月ぶりの同プラスとなった。 ・9月の新設住宅着工戸数は貸家と分譲の急増により4カ月ぶりの前年比増加。結果、7-9月期は2四半期連続の前年比プラスとなった。 ・9月の有効求人倍率は4カ月連続の前月比改善。依然として労働需給は引き締まった状態が続く。完全失業率は3カ月ぶりに小幅悪化したが、雇用情勢は引き続き堅調である。 ・10月の公共工事請負金額は3カ月連続の前年比マイナスだが、前月比(季節調整値)では3カ月ぶりのプラスであった。 ・9月の建設工事出来高は7カ月連続の前年比増加。結果、7-9月期は2四半期連続のプラスと持ち直しの動きがみられる。 ・10月関空の訪日外客数は2カ月ぶりに前年比増加したが、小幅にとどまった。国籍別では、8月は韓国・台湾・香港からの入国者数が3カ月連続で減少した。 ・中国10月の製造業購買担当者景況指数(PMI)は2カ月連続で前月比下落。うち、生産指数も2カ月連続、輸出新規受注指数も3カ月連続といずれも悪化が続いている。   ※英語版はこちら
稲田 義久
経済予測

Kansai Economic Insight Monthly Vol.66 – 景気は足下先行きともに悪化傾向が続く -

[ Monthly Report(関西) ] AUTHOR稲田 義久 / 豊原 法彦 / 木下 祐輔 / 生田 祐介 / CAO THI KHANH NGUYET / 馬 騰 DATE2018-10-26

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Abstract/Keywords

関西経済, 月次レポート, KEIM

-景気は足下先行きともに悪化傾向が続く- ・8月の鉱工業生産指数は2カ月ぶりの前月比プラスとなったが、7-8月平均は4-6月平均比で低下した。近畿経産局は3カ月連続で生産の基調判断を前月から据え置いた。 ・9月は台風21号と24号で関空が一時閉鎖された影響もあり、輸出入ともに減少した。結果、同月の貿易収支は8カ月連続の黒字となったが、黒字幅は前年比縮小した。 ・9月の景気ウォッチャー現状判断DIは、2カ月ぶりの前月比悪化した。台風21号による影響を受けたが、その後迅速に復旧が進んだため、落ち込みは比較的軽微であった。 ・7月の関西2府4県の現金給与総額は17カ月連続の前年比増加。実質現金給与総額は5カ月連続で増加したものの、1%未満の伸びにとどまった。 ・8月の大型小売店販売額は2カ月連続の前年比マイナス。百貨店ではブランド品を中心に国内消費が好調であったが、スーパーでは季節性の衣料品が不調であったため。 ・8月の新設住宅着工戸数は貸家着工の減少が影響し、3カ月連続の前年比減少となった。弱含みの動きが見られる。 ・8月の有効求人倍率は3カ月連続の前月比改善。依然として労働需給は引き締まった状態が続いている。完全失業率は2カ月連続で改善しており、雇用情勢は引き続き堅調である。 ・9月の公共工事請負金額は2カ月連続で前年比マイナス。結果、7-9月期は2四半期ぶりのマイナス。公共工事の低迷もあり、建設工事の伸びは減速している。 ・9月関空の訪日外客数は2度の台風の影響が大きく、19カ月ぶりの前年比マイナス。国籍別では、7月は韓国・台湾・香港からの入国者数が2カ月連続で同減少した。 ・中国7-9月期の実質GDPは前年同期比+6.5%となり、2四半期連続で低下し、2009年1-3月期以来の低水準。米中の貿易を見れば、9月の対米輸出額は駆け込み需要により6カ月連続の増加だが10月以降の反動減が懸念される。 ※英語版はこちら
稲田 義久
経済予測

Kansai Economic Insight Monthly Vol.65 – 景気は足下先行きともに悪化傾向が続く -

[ Monthly Report(関西) ] AUTHOR稲田 義久 / 豊原 法彦 / 木下 祐輔 / 生田 祐介 / CAO THI KHANH NGUYET / 馬 騰 DATE2018-09-25

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Abstract/Keywords

関西経済, 月次レポート, KEIM

- 景気は足下先行きともに悪化傾向が続く- ・7月の鉱工業生産指数は2カ月ぶりに前月比マイナス。4-6月平均比でも低下し、7-9月期の最初の月としては低調であったが、近畿経産局は生産の基調判断を前月から据え置いた。 ・8月の貿易収支は7カ月連続の黒字となり、黒字幅も前年比拡大した。エネルギー価格高騰により輸入が伸びたものの、好調な半導体関連の需要で輸出の伸びがそれを上回ったため。 ・8月の景気ウォッチャー現状判断DIは、2カ月ぶりの前月比改善。相次ぐ自然災害に加え、8月は連日の猛暑で様々な業種に悪影響が出た。しかし、落ち込んでいたインバウンド需要が戻ったことが好感され、DIは改善した。 ・6月の関西2府4県の現金給与総額は16カ月連続の前年比増加。実質現金給与総額は同横ばいで、4カ月連続で1%未満の伸びにとどまっている。 ・7月の大型小売店販売額は2カ月ぶりの前年比マイナス。スーパーでは猛暑で飲食関連商品が好調だったが、百貨店では豪雨や台風、バーゲン前倒しによる買い控えの影響が大きかったため。 ・7月の新設住宅着工戸数は2カ月連続の前年比マイナス。個人向けアパートローン融資額の減少による貸家の着工の減少が影響した。 ・7月の有効求人倍率は2カ月連続の前月比改善。労働需給は引き締まった状態にある。完全失業率も2カ月ぶりに改善しており、雇用情勢は引き続き堅調である。 ・8月の公共工事請負金額は3カ月ぶりに前年比マイナスに転じた。大阪府北部地震や台風21号からの復旧・復興関連作業で、関西の公共工事は増加すると見込まれる。 ・8月関空の訪日外客数は18カ月連続で前年比増加したものの、大阪北部地震や西日本豪雨等による影響で、2カ月連続で1桁の伸びにとどまった。 ・中国の8月の貿易収支は5カ月連続の黒字となった。なお、対米貿易収支は、駆け込み輸出増の影響もあり黒字が拡大。米中貿易戦争の影響は年後半にかけて顕在化すると見られる。
稲田 義久
経済予測

Kansai Economic Insight Quarterly No.39 <緩やかな改善を継続できるか、岐路に立つ関西>

[ Quarterly Report(関西) ] AUTHOR稲田 義久 / 入江 啓彰 / 木下 祐輔 / CAO THI KHANH NGUYET / 生田 祐介 / 馬 騰 DATE2018-08-28

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Abstract/Keywords

関西経済, 四半期予測, 早期推計

緩やかな改善を継続できるか、岐路に立つ関西-足下は踊り場、山積するリスクと課題 1.2018年4-6月期実質GDP成長率は前期比+0.5%(同年率+1.9%)と2四半期ぶりのプラス成長となった。実質GDP成長率への寄与度は、国内需要が前期比+0.6%ポイントと2四半期ぶりに成長を押し上げた。特に民間最終消費支出と民間企業設備の貢献が大きかった。一方純輸出は同-0.1%ポイントと2四半期ぶりのマイナス。結果、1-3月期の景気の落ち込みは一時的なものであることを確認した。 2.2018年4-6月期の関西経済は、おおむね緩やかに改善しているが、一部の指標には弱い動きも見られ、踊り場局面が続いている。家計部門は、所得環境や雇用環境など緩やかに改善しているが、消費者心理は悪化した。企業部門では景況感は改善が続き、今年度の設備投資計画は極めて旺盛であるが、生産は一進一退で足踏み状態。対外部門は輸出輸入とも拡大しており、インバウンド需要も堅調である。公的部門は、一進一退で停滞している。なお大阪北部地震の影響は限定的。 3.関西の実質GRP成長率を2018年度+1.8%、19年度+1.0%、新たに20年度+0.8%と予測する。前回予測と比較すると、18年度は+0.5%ポイント、19年度は+0.1%ポイントのそれぞれ上方修正。また過年度の実績見通しについて、16年度の成長率を+0.1%、17年度+2.5%とした。 4.実質GRP成長率に対する寄与度を見ると、2018年度は民間需要+1.1%ポイント、公的需要+0.1%ポイント、外需+0.6%ポイントと民需と外需がバランス良く成長を下支えする。19年度は民間需要+0.4%ポイント、公的需要+0.1%ポイント、外需+0.5%ポイントで、民需の寄与が小幅となる。20年度は民間需要+0.1%ポイント、公的需要+0.2%ポイント、外需+0.6%ポイントとなり、消費増税の影響が顕在化して、民需の寄与はさらに小さくなる。 5.全国と比較すると、18年度は、所得環境の回復やインバウンド需要の再加速により、全国を上回る成長率で推移する。19年度以降は、消費増税の影響から日本経済予測と同様に関西でも成長率は減速する。 6.2017年のインバウンド需要の経済波及効果を推計した。17年の関西インバウンド消費需要(直接効果)は前年比+16.4%増加し、その波及効果により関西のGRPに対して1%程度貢献できるようになった。急増するインバウンド需要に対応し、特に爆買いの2015年以降は、大規模で急速な宿泊施設への投資が進んでいる。稼働率等から見ていまのところ過剰投資の傾向はみられない。 ※英語版はこちら