研究成果

research

小泉内閣に望む景気政策・提言 (2003年12月)

Abstract

持続的景気回復をビッグプッシュする(後押しする)ために?
「デフレ下のマクロ政策研究会」
主査:北坂真一(同志社大学経済学部教授)
(主査: 齊藤 愼・大阪大学大学院経済学研究科教授)

当研究所では国家的重要課題の研究に取り組んでいる。その一環として平成15年度、「デフレ下のマクロ政策研究会(主査:北坂真一同志社大学経済学部教 授)」を設け、金融不安、財政窮迫のなかで、いかにして、金融・財政政策などマクロ政策が景気の持続的拡大に貢献できるかについて研究を続けてきた。以下 は本研究会にて平成15年12月3日に記者発表した「小泉内閣に望む景気政策・提言」の要点である。

提言のポイント

来秋の米国大統領選挙をひかえ再び米国の円高圧力によって、輸出の先行きが懸念されるなど不安も多い。景気の持続的な回復は日本再生の抜本策である構造改 革を成功させるためにも必要不可欠である。このため財政金融等マクロ政策的には金融不安、厳しい財政難の中でも、せっかく芽の出てきた景気回復の腰を折ら ない持続的回復に最大限配慮した政策が望まれる。そこで私どもは持続的回復をビッグプッシュする提案を下記の通りとりまとめた。

1. 為替・金融政策
1)当面、急激な円高に対しては、積極的に為替介入を実施する。
2)将来的には、人民元などドルに連動しているアジア諸国の通貨制度の変更を促す。
3)金融政策については、現在の量的緩和政策を維持し、合わせて積極的なデフレの解消や円高の悪影響を取り除くために「インフレ率がプラス2%になるまで量的緩和を継続する」とのコミットメントを行う。
4)量的緩和政策の安定的な終了を目指して、将来の出口政策を今から検討する。
2. 財政政策
1)税制改正について、競争力強化のために次の法人課税改革を実施する。
(ⅰ)減価償却制度における現在10%の残存価格をゼロにする。
(ⅱ)欠損金の繰越期間を5年から7年にする。
(ⅲ)固定資産税において償却資産に課税することを止める。
2)財政支出の配分の重点を、従来型公共投資からセーフティネット、バリアフリーの促進、子育て支援策などに移す。
3)16年度予算で導入されるモデル事業、政策群の手法を大胆に拡充する。
3. 金融システム・資金循環
個人や海外部門の国債保有を増すために、個人向け国債の満期について2年や5年ものなど多様化し、発行頻度も年4回から毎月にする。また、外貨建ての国債を発行する。
2)証券投資の魅力を高めるために、「株式投資版マル優(少額貯蓄非課税制度)」を創設する。また、個人が保有する複数の株式投資信託や株式の譲渡損益や配当金を通算して申告できるようにする。