今月のトピックス(2009年11月)

2009-11-10

11月12日発表のESPフォーキャスト調査(7-9月期実質GDP1次速報値は反映されていない)によれば、今後の四半期成長パターンとして、 10-12月期前期比年率+1.5%から2010年1-3月期同+0.89%、4-6月期同+0.71%へと緩やかに減速するというのがマーケットではコ ンセンサスとなっている。
また、マーケットの一部では、日本経済は2010年前半にマイナス成長に陥り、08年10-12月期と09年1-3月期の2期連続の二桁マイナス成長と併せて考えれば、W字型、ダブルディップ型不況に陥る可能性が高いとみている。
一方、11月17日の超短期予測(支出サイドモデル)は、10-12月期の実質GDP成長率を、内需と純輸出は引き続き拡大するため、前期比年 率+4.2%と予測する。また1-3月期の実質GDP成長率を、純輸出は引き続き拡大するが内需が息切れするため、同+0.3%と予測している。
超短期予測もマーケットコンセンサスも、景気のパターンとしては2010年前半にかけて経済は減速するという点では一致している。その理由は、内需が再び縮小する可能性が高いとみているためである。特に、民間最終消費支出と公的需要の動向がポイントとなる。
民間最終消費支出の先行きついては、所得環境が悪化しており、加えて財政政策の効果が年度越しには剥落するため、追加的な政策なしには減速ないしはマイナス成長が避けられない。
7-9月期の雇用者報酬は前期比年率-0.7%と6期連続のマイナスとなり、前年同期比では-3.7%と5期連続のマイナスを記録した。加えて冬のボー ナスもマイナスが必至で、先行き所得環境は厳しい状況が続こう。2期連続の二桁のマイナス成長により急拡大した需給ギャップはなかなか縮小せずデフレ圧力 が強まっている。デフレスパイラルに陥るリスク確率も上昇してきており、民間消費の先行きは明るくない。

もう一つのポイントは公的需要である。人口高齢化に伴う政府最終消費支出の増加トレンドは避けられないが、「コンクリート」から「人」へという現政権の 政策スタンスで、公共投資の削減は必至である。現状では先行き公的需要の経済成長への貢献は期待できないということになる。
とすれば、ダブルディップ不況を避けるためには、さらに外需依存を強めるか新たな内需の創出が必要となる。外需の今後の動向については、海外欧米市場の 回復に大きな期待は持てない。活発なアジア市場はこれまで景気回復の一翼を担ってきたが、欧米市場の回復なくして外需の持続可能性に問題がある。とすれ ば、新たな内需創出がカギとなる。民主党政権は、「コンクリート」から「人」へというスローガンで公共投資を削減するが、その努力を環境投資拡大促進に向 けるべきであろう。実際その方向に進んでいるが、それを加速させる必要がある。日本経済がダブルリセッションに陥らないためにもタイミングの良い政策発動 が重要である。(稲田義久)

日本
<政策効果大きく7-9月期は高成長となったが、年度末にかけては減速か?>

11月16日(月)発表のGDP1次速報値によれば、7-9月期の実質GDP成長率は前期比+1.2%、同年率+4.8%となり、2四半期連続のプラス となった。景気対策効果と輸出の増加がその背景にある。7-9月期の実績は4-6月期の同+2.7%を上回り、2007年1-3月期(同+5.7%)以来 の高い成長率となった。
実績は超短期予測の平均値(+3.9%)や市場コンセンサス(ESPフォーキャスト:+2.5%)を上回った。超短期予測最終週での予測では、支出サイ ドモデルが同+2.9%、主成分分析モデルが同+5.0%を予測していていた。主成分分析モデルの予測は実績により近いものとなった。超短期モデルの予測 動態からわかるように、7-9月期の月次データが利用可能となる8月後半から2%台後半、9月に入り3%台後半の成長率を予測していた。

7-9月期の実質GDP成長率(前期比年率)への寄与度を見ると、内需は3.4%ポイント成長率を引き上げた。内需が成長率引き上げに貢献したのは1年半ぶりである。また純輸出も成長率を+1.5%ポイント引き上げたことがわかる。
実質民間最終消費支出は同+2.8%と2期連続のプラスとなり、実質GDP成長率を1.7%ポイント引き上げた。所得環境が悪い中、民間最終消費支出が 伸びたのは、政策効果(エコポイント制度、自動車取得促進税制、補助金)による影響が大きい。実際、耐久消費財は同+31.4%と大幅に伸びた。
実質民間企業設備は同+6.6%と6四半期ぶりのプラスとなり、実質GDP成長率を0.9%ポイント引き上げた。実質民間企業在庫品増加は実質GDP成長率に+1.6%ポイント貢献した。3期ぶりのプラス貢献で在庫調整に一段落がついたと思われる。
アジアからの輸出需要の高まりで、財貨・サービスの実質輸出は同+28.0%増加し、2期連続のプラス(寄与度+3.5%ポイント)となった。一方、同実質輸入は同+14.1%(寄与度+3.3%)増加した。3期ぶりのプラス成長である。
実質民間住宅は同-27.5%と3期連続のマイナスである。マンションを中心に大幅なストック調整が起きている。民間住宅は実質GDP成長率を0.9%ポイント引き下げた。
公的需要は同+0.3%の増加にとどまり、実質GDP成長率にはほとんど貢献しなかった。うち、実質公的固定資本形成は同-4.9%減少し、実質GDP成 長率を0.1%ポイント引き下げた。一方、実質政府最終消費支出は同+1.5%増加し、寄与度は+0.1%ポイントとなった。
所得環境は悪化しており、雇用者報酬は同-0.7%と6期連続のマイナスとなった。前年同期比では-3.7%と、5期連続のマイナスを記録した。冬のボーナスもマイナスとなり、先行き厳しい状況が続こう。
デフレータを見ると、GDPデフレータは前期比-1.2%と2期連続の下落となった。急激に拡大した需給ギャップはなかなか縮小せずデフレ圧力が強い。 前年同期比では+0.2%と4期連続のプラスとなったがプラス幅は縮小している。一方で、国内需要デフレータは同-2.6%と3期連続のマイナスで下落幅 が拡大している。日本経済はしばらくデフレから抜け出せないようである。
11月17日の支出サイドモデル予測は、10-12月期の実質GDP成長率を、内需と純輸出は引き続き拡大するため、前期比+1.0%、同年 率+4.2%と予測する。1-3月期は、純輸出は引き続き拡大するが内需が息切れするため、前期比+0.1%、同年率+0.3%と予測している。この結 果、2009暦年及び年度の実質GDP成長率はそれぞれ-5.0%と-2.2%となろう。
超短期予測は2009年度末にかけて景気減速を示唆しており、マーケットの一部ではダブルディップ不況を懸念している。持続的な成長に向けて新政権の政策舵取りに注目が集まっている。

[[稲田義久 KISERマクロ経済分析プロジェクト主査 甲南大学]]

米国

11月13日の超短期予測は10月の雇用統計や9月の貿易統計までを更新した予測である。グラフ1に見るように今期(2009年10-12月期)の実質 GDP伸び率を支出・所得サイドからそれぞれ-0.4%、+1.5%と予測している。これはウォールストリート紙による48人のエコノミストへの10月調 査の平均値(2.5%)よりかなり低い。超短期予測は米経済が7-9月期の+3.5%(前期比年率)成長の後、1%程度の成長率にまでスローダウンしてい るとみている。主な理由は景気刺激策による自動車購入等が終わり、企業も簡単に生産増加、在庫積み増しをしないと考えられるためである。
しかし、市場には前期の実質GDP成長率が市場の予想(3.2%)を上回ったことから景気への楽観的な見方が広がっている。最も良い例は10月の雇用統計 に対する株価の反応である。10月の失業率は1983年6月以来26年振りに始めて10%を超えた。また、非農業雇用者数も9月の219,000人減から 190,000人減へと改善したものの、市場の予想(175,000人減)をかなり下回った。しかし、ダウ株価はその日も上昇し、結局その週のダウは3% 上昇し1万ドル台を確保した。
通常ならば、市場の予想通りに改善していない労働市場に対して投資家はネガティブに反応するが、経済回復に楽観的になりつつある投資家は10月の雇用統計 が好ましくなかったことから、連邦準備理事会(FRB)がこれまでの低金利政策をかなりの間維持せざるをえないと考えるようになった。実際、11月3日 ‐4日に行われたFOMCミーティングのステートメントの中で、FRBは政策金利を0%〜0.25%の間に据え置く期間を延長、また、量的金融緩和策も継 続するとしている。
今週の超短期予測は10-12月期のインフレ率を1.5%程度と予測している。FRBの金融緩和政策の継続に疑問はないが、はたしてそれにより投資家が予 想しているような経済成長率が達成されるかは疑問であり、超短期予測は今のところ、投資家の景気への楽観的な見方がいずれは下方修正されるとみている。

[ [熊坂侑三 ITエコノミー]]

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