今月のトピックス(2009年4月)

2009-04-20

<中国の財政刺激策は関西経済にとって救世主となるか?>

関西経済予測のアウトライン:2009-2010年度
関西社会経済研究所(KISER)は2月22日、10-12月期GDP1次速報値を織り込んだ第77回景気予測を発表した(HP参照)。今回われわれは、日本経済予測と整合的な形で、関西経済についても予測を行った。ベースラインを要約すれば、以下の様である。
関西の実質GRP成長率は2009年度▲3.2%、2010年度+0.7%と予測する。第77回景気予測では、日本経済の実質GDP成長率について 2009年度▲3.7%、2010年度+1.5%と予測されていることから、関西経済は、日本経済と比較して落ち込み幅は緩やかに留まるが、回復局面では スピード感に欠く、といった予測のストーリーである。
需要項目の中で、特徴的な予測結果となっているのは企業設備投資である。2009年度▲13.6%、2010年度▲0.8%と予測している。ただし、大阪湾ベイエリア地域での環境関連投資が進めば、上ぶれする可能性があることに注意しておこう。
関西経済にとっての中国の役割
また、輸移出については、2009年度▲2.6%、2010年度+1.6%と予測している。関西の輸出においては、アジア、特に中国が大きな役割を担っ ている。ここで、関西における輸出構造を中国を中心に確認しておこう。下図は2008年における関西の輸出相手地域のシェアを示したものである。関西の輸 出16.5兆円のうち、アジアは約10兆円で6割を占めており、特に中国はその3分の1(3.3兆円)を占めている。中国に対する輸出を品目別にみると、 電気機器や原料別製品といった品目の割合が高い(それぞれ32.1%、19.4%)。一方、輸送用機器はあまり輸出されておらず、ウェイトが低い (1.0%)。

中国の財政刺激策の大きさ
最近、中国の財政刺激策にスポットライトが当っている。ただし、財政規模4兆元が一人歩きをしている感がある。この規模の財政刺激策が実現した場合、ど の程度の経済拡張効果があるか見てみよう。2008年の名目GDPが30.067兆元であるから、4兆元は13.3%に相当する規模である。仮に乗数(国 民所得の拡大額÷有効需要の増加額)を1.5とした場合、6兆元の追加的な需要となり、名目GDPを約20%引き上げるという計算になる。
ここで注意が必要である。意外と看過されているのは、この財政支出期間が2年を目処にしており、一部は昨年末から前倒しされていることである。なかには 単年度で4兆元が支出されてその効果を計算していると読める分析もある。それにしても、4兆元が仮にすべて真水として支出された場合、1年間で名目GDP を最大約10%押し上げる効果をもつと考えてよい。
中国の財政刺激策は関西経済にとって救世主となるか
われわれは関西経済の予測とともに、中国経済の実質成長率がベースラインから加速した場合、関西経済に与える効果(中国経済高成長ケース:シミュレー ション1)を計算している。ベースラインでは中国の実質GDP成長率を2009年+6.2%、2010年+8.3%と想定しているが、これが両年にわたっ て8.5%にシフトアップするケースをシミュレーションしている。
シミュレーション結果によれば、中国経済が政府の目標に近い成長率(ここでは8.5%)を実現できた場合、関西経済の輸出を2009年度0.3%、 2010年度0.42%拡大するにとどまる。金額(2000年実質価格ベース)にして、それぞれ、336億円、479億円である。実質GRPは、2009 年度0.03%、2010年度0.05%の増加にとどまる。金額にしてそれぞれ283億円、411億円である。意外と効果は小さいのである。
KISERの関西経済モデルでは実質輸出関数が推計されている。所得弾力性は0.864、価格弾力性は-0.651となっている。所得変数としては、中 国、米国、EUの実質GDPを2005年の3ヵ国の輸出シェアで加重平均したものを用いている。中国経済の成長率2.3%ポイントの上昇(6.2%から 8.5%へ)は、関西の実質輸出を0.3%押し上げることになる。
中国経済に加えて、米国とEUの成長率がベースラインより2%ポイント上昇した場合、関西の実質輸出はベースラインから1.8%拡大することになる(シ ミュレーション2)。これらのシミュレーションが示唆するものは、関西経済にとって確かに中国経済の回復はそれなりの効果を持つが、決して大きくない。大 事なのは世界経済が一致して拡張的な財政・金融政策をとらない限り、大不況から脱出できないのである。16日に中国の1-3月期経済成長率が発表された が、前年同期比+6.1%に減速した。4半期ベースでは統計がさかのぼれる1992年以来の低い伸びにとどまった。この現実からも、中国経済の財政刺激策 の効果に過度の期待をかけないほうが無難である。(稲田義久・入江啓彰)

日本
<先行指標に一部明るさがみられるが1-3月期は前期を上回る2桁のマイナス>

4月20日の予測では、3月の一部と2月のほぼすべての月次データが更新された。3月のデータで特徴的なのは、一部の先行指標に改善が見られたことであ る。3月の消費者態度指数は3ヵ月連続の前月比プラスを記録し、同月の景気ウォッチャー調査の現状判断DIも3ヵ月連続で改善した。このように企業や消費 者の心理は2008年12月に底を打ち改善傾向を示しているが、水準は昨年秋口の値に等しく依然として低い。すなわち、前年同月では引き続き低下している が、悪化幅が縮小し始めたのであり、秋口以降の急速な落ち込みが減速しているのである。このように先行きに明るさが見られるものの、現状は非常に厳しいと いえる。
支出サイドモデル予測によれば、1-3月期の実質GDP成長率は、内需が大幅縮小し純輸出も引き続き縮小するため、前期比-4.7%、同年率 -17.5%と予測される。10-12月期を上回るマイナス成長が予想され、この結果、2008年度の実質GDP成長率は-3.2%となろう。ちなみに4 月14日に発表された4月のESPフォーキャスト調査によれば、1-3月期実質GDP成長率予測のコンセンサスは前期比年率-12.76%となっている。 われわれの超短期予測はコンセンサスから5%ポイント程度低いといえよう。
1-3月期の国内需要を見れば、実質民間最終消費支出は前期比-0.8%となり、2期連続のマイナス。実質民間住宅は同-8.6%と3期ぶりのマイナス となる。実質民間企業設備は同-12.2%と5期連続のマイナスとなる。実質民間企業在庫品増加は2兆8,400億円となる。実質政府最終消費支出は同 0.4%増加し、実質公的固定資本形成は同0.6%増加する。国内需要の実質GDP成長率(前期比-4.7%)に対する寄与度は-2.8%ポイントとな る。
財貨・サービスの実質輸出は同22.1%減少し、実質輸入は同11.4%減少にとどまる。このため、純輸出の実質GDP成長率に対する貢献度は-1.9%ポイントとなる。
4-6月期の実質GDP成長率については、内需は停滞し、純輸出も引き続き縮小するため、前期比-1.5%、同年率-5.7%と予測している。
一方、主成分分析モデルは、1-3月期の実質GDP成長率を前期比年率-16.0%と予測している。また4-6月期を同-9.5%とみている。
この結果、支出サイド・主成分分析モデルの実質GDP平均成長率(前期比年率)は、1-3月期が-16.7%、4-6月期が-7.6%となる。両モデルの平均で見れば、2009年後半は引き続きマイナス成長となり、当面景気回復の糸口が見つからないようである。

[[稲田義久 KISERマクロ経済分析プロジェクト主査 甲南大学]]

米国

4月29日に2009年1-3月期のGDP速報値が発表される。その2週間前における同期の実質GDP伸び率(前期比年率)に対する市場のコンセンサス は-4%〜-5%である。一方、超短期モデルは実質GDP伸び率を、支出サイドから-0.2%、所得サイドから-1.7%、そしてその平均値(最もありえ る値として)を-0.9%と予測している。
この超短期予測が正しいとすれば、2008年10-12月期(実質GDP成長率:-6.3%)を米国経済の景気の底と見ることができる。実際に、バーナ ンキFRB議長のように、景気をそのようにみるエコノミストもいる。しかし、世界的なリセッションによる大幅な輸出入の減少が2009年1-3月期の数字 上の景気判断を難しくしている。
名目輸出入に関しては2009年の1月、2月の実績値が既に発表されている。従って、この2ヵ月の平均値を10-12月期の月平均値と比べることができ る。名目財輸出、同サービス輸出、同財輸入、同サービス輸入の減少率は、前期比年率でそれぞれ-45%、-16%、-57%、-17%となる。超短期予測 は時系列モデル(ARIMA)で3月以降を予測している。財とサービスを合わせた名目輸出、同輸入の下落率はそれぞれ-37%、-51%となる。すなわ ち、輸出入が共に3月に減少すると予測している。一方、輸出入価格は季節調整前だが、3月までの実績値がそろっており、前期比年率でそれぞれ-9%、 -24%である。
その結果、超短期予測は1-3月期の実質輸出、同輸入の下落率を前期比年率でそれぞれ-32%、-51%と予測している。すなわち、世界的なリセッショ ンの結果このような実質輸出入の大幅な減少が生じており、米国では更に実質輸入の落ち込みが実質輸出の落ち込みを大きく超えることから、数値上実質GDP の伸び率が高くなる。実質輸出入がこのようにそれぞれ大幅に減少するとき、純輸出の予測には多くの不確実性が伴う。
そのため、正しい景気判断をするにはGDPから純輸出を除いた実質国内需要で景気を判断するのが良い。超短期予測は1-3月期の実質国内需要の伸び率を -5.7%と予測しており、これは2008年10-12月期-5.9%とほとんど変化はない。すなわち、1-3月期の実質GDPの伸び率が市場のコンセン サスよりも高くなっても、同期の経済状況は前期と同じように悪かったと判断すべきであり、米国経済の底は2008年10-12月期から更に深くなっている と見るべきである。超短期予測が1-3月期の実質GDPが市場のコンセンサスに近くなるのは、季節調整後の輸入価格と3月の輸入を超短期予測が共に過小評 価している場合である。

[[熊坂侑三 ITエコノミー]]

著者