今月のトピックス(2008年1月)

2008-01-10

<何故日本株は売られるのか?—成長戦略を示せない政治状況が課題>

今月の日本経済見通しで示したように、超短期モデルは10-12月期の日本経済について4%を超える高い成長率を予測している。一方、マーケット の見方は、例えば、1月10日に発表されたESPフォーキャスト1月調査では10-12月期の実質成長率を前期比年率+1.01%と見ている。8月〜10 月までは+2%程度の予測が11月には+1.7%となり、12月〜1月は更に+1%まで低下してきたのである。
多くの11月のデータが発表されており、10-12月期のデータの2/3が発表されている現状で詳細に月次データを検証すれば、過去の15年を超える超 短期予測の経験からは、+1%というような数字は出てこない。確かに、2008年1-3月期はゼロ成長となり、景気減速を十分示唆していると思われるが、 リセッション(米国の定義では2四半期連続でマイナス成長)に陥るとは考えていない。今日のように、サービス産業のウェイトが高くなっている経済では、成 長率はマイナスになりにくい。実際、超短期予測は第3次産業活動指数を10-12月期、1-3月期とも連続で堅調なプラス成長を予測している。
筆者の見方では、マーケットの予測は下方にオーバーシュートしていると思われる。おそらく、サブプライムローン問題に起因する日本株の低迷に大きく影響 されているといえよう。2007年1月4日に17,353.67で始まった日経平均(225)は、7月9日に一旦18,261.98まで買われたが、年末 は15,307.78で終了し、結局、年初比12.8%も下落した。先進国で株価が値下がりしたのは日本だけである。日本株は2008年に入っても 15,000を割り込み低迷を続けている。

何故日本株は売られるのであろうか(Japan passing)。日本の金融市場が魅力に欠けるといった制度的な問題やemerging marketの成長率が非常に高いといった要因もある。しかし、基本的には日本経済の成長戦略が見えてこない点がきわめて重要と考える。日本の株価市場へ の投資主体の60%を超える外国人投資家にとって、人口減少下で成長戦略を示すことのできない日本経済などにはまったく興味がないといえよう。重要なの は、生産性の向上を最優先課題とする成長戦略である。安倍政権の発足時に喧伝されたあの新成長戦略(いわゆる、上げ潮路線)は一体どうなったのであろう か。混迷する政治が、内向きで成長戦略に背を向けるような状況をつくり出しているとするならば、由々しき事である。

日本
<10-12月期は高成長を予測、マーケットは悲観的過ぎる>

今回の超短期モデル予測(支出サイド)では、ほぼ11月の月次データを更新している。10-12月期の経済を説明するデータの2/3が出揃ったこ とになる。同期の実質GDP成長率は、内需が拡大に転じ純輸出も大幅に伸びるため、前期比+1.1%、同年率+4.6%と予測される。先月(+4.0%) から小幅の上方修正である。マーケットコンセンサスの同年率1.01%(ESPフォーキャスト1月調査)に比べ非常に高い予測である。以下、超短期モデル 予測の特徴を説明しよう。
10-12月期の国内需要を見れば、実質民間最終消費支出は前期比+0.4%となる。実質民間住宅は同-9.8%となり、実質民間企業設備は 同+1.4%となる。実質政府最終消費支出は同+0.3%となり、実質公的固定資本形成も同+0.9%となる。この結果、国内需要の実質GDP成長率(前 期比+1.1%)に対する寄与度は+0.6%ポイントとなる。
民間住宅は大幅な落ち込みを予測しているが、民間最終消費支出は意外と高い伸びとなっている。10-11月の消費総合指数は7-9月期平均より0.2% 高く、民間消費の堅調な伸びを予測しているのである。民間企業設備、公的固定資本形成もプラスの伸びを示しており、民間住宅は確かに大幅なマイナスとなろ うが、経済に占めるウェイトは10%以下で大きくないから、国内需要の伸びは意外と高いと見込んでいる。
加えて、外需が貢献しそうである。財貨・サービスの実質輸出は同3.2%増加し、実質輸入が同0.6%減少する。このため、純輸出の実質GDP成長率に 対する貢献度は+0.6%ポイントとなる。注意すべきは、通関ベース貿易収支(季節調整値)の10-11月平均は7-9月期平均を2.5%下回っている が、輸入価格が大幅に上昇し、輸出価格は低下していることから、実質の純輸出は相当経済成長率を引き上げているのである。この結果、2007暦年の実質 GDP成長率は+2.2%と予測する。
1-3月期の実質GDP成長率については、純輸出が小幅拡大するが内需の縮小が相殺するため、前期比-0.0%、同年率-0.0%と予測している。先月の予測(0.0%)と横ばいである。2007年度の実質GDP成長率は+1.8%と予測する。
物価トレンドを見れば、GDPデフレータは、10-12月期に前期比-0.2%、1-3月期も同-0.3%と引続きデフレを予測している。民間最終消費支出デフレータは、10-12月期に同+0.1%、1-3月期に同-0.2%となる。
主成分分析モデルは、10-12月期の実質GDP成長率を前期比年率+2.8%と予測している。また1-3月期を同+1.6%とみている。GDPデフレータは10-12月期に前期比-0.1%、1-3月期に同-0.2%とみている。
この結果、支出サイドと主成分分析モデルの実質GDP成長率(前期比年率)の平均は、10-12月期が+3.7%、1-3月期が+0.8%となる。 GDPデフレータは10-12月期が前期比-0.2%、1-3月期も同-0.3%である。両モデルの平均で見れば、日本経済は10-12月期に比較的高成 長を示すものの、1-3月期は停滞局面に入ると予測している。10-12月期の高成長は景気減速前の最後の輝きかもしれない。

米国

2008年の初仕事日(1月2日)にダウ平均株価は1.67%と大幅に下落した。これは過去における新年の初仕事日のダウ下落において史上7番目 の落ち込み幅であり、1983年1月3日に1.9%下落して以来の大幅な下げとなった。この理由は市場にリセッション懸念が急速に広がったことである。同 日に発表された12月のISM(全米供給管理協会)の製造業指数が50を大きく下回る47.7となり、製造業リセッションを示唆し、また石油価格は取引中 に心理的な天井である100ドルを一度超えた。さらに、市場のリセッション懸念に追い討ちをかけたのが12月の雇用統計の結果である。雇用増が 18,000人と市場予想の70,000人を大幅に下回り、失業率も11月の4.7%から5.0%へと大きく上昇した。
1月4日の超短期モデル(需要サイド)は、2007年10-12月期の実質GDPの伸び率を前期比年率+5.3%と非常に高く予想している。これは10 月、11月と輸入価格がそれぞれ前月比で+1.4%、+2.7%と大きく伸びたことにより、NIPA(米国国民所得統計)の実質輸入が20%も低下すると 予測されていることによる。もっとも、11月の貿易収支と12月の輸出入価格の更新によって支出サイドからの実質GDP予測は大きく修正されると思われ る。このように輸出入部門の予測に大きな不確実性が残るとき、景気判断には実質総需要、実質国内需要、実質最終需要(GDP−在庫−純輸出)をみるのが良 い(グラフ参照)。
このグラフが示すように、実質総需要、実質国内需要や実質最終需要の伸びで見た景気は9月後半から減速してきており、12月14日の予測では経済 成長率はゼロとなり超短期予測はこの時点でリセッション懸念のシグナルを出している。しかし、その後景気はリバウンドし、最近では1.5% – 2.0%の経済成長率(2007年10-12月期)を示している。また、2008年1-3月期においても2%程度の経済成長率を予測している。超短期予測 からすれば、リセッション懸懸念のピークは12月半ばであり、すでに通りすぎたといえる。
(注:毎月の超短期予測は、通常、実質GDPの成長率予測の動態から景気を診断している。ただ実質GDPの構成項目である実質純輸出の予測には困難 が伴う場合が多い。名目純輸出の予測は大きく変動することはないが、原油価格の高騰などで輸入デフレータが毎月大きく変動する結果、実質純輸出の予測も大 きな変動をこうむる。このような困難を避けるために、GDPから純輸出を除いた総需要やさらに在庫品増加を除いた最終需要の伸びで経済の実力を測ることが ある。)

[熊坂有三 ITエコノミー]

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