APIR Commentary No.52<李克強指数と中国の経済成長率>

2015-10-12

 最近の中国の経済成長率は世界的に大きな関心事となり、その動向が世界の金融市場にも大きなインパクトを与えている。しかし、中国の国家統計局から公表されるGDP成長率は客観的に中国の経済情勢を反映しない場合が少なくないことが中国内外の研究者や市場関係者から古く指摘されてきている。その代表的な人物がほかならぬ中国の首相李克強氏である。李克強氏は、工業電力消費量、鉄道貨物輸送量、銀行貸出残高の3つのデータに基づく指標を用いて、中国経済の動きを判断しているとし、近年はこの李克強指数について言及される機会が増えてきた。
 しかし、この李克強指数が国家統計局公表のGDP成長率より実態に近いとする根拠はない。また、同指数が中国経済の実態をより正確に反映するためには幾つかの修正が必要と思われる。
 そこで、ここでは李克強指数の再推計を試みた。その結果、既存の同指数が、近年、成長率に比して大きく下方に乖離していたことに対し、本稿で推計した同指数は発表された成長率により近い水準となっていることが分かった。本稿の推計によれば、国家統計局の公表データが中国の経済成長率を過大に評価したとは言いがたい。
 また、中国経済はすでに量的拡大を追求する時代を終えており、日本が高度成長が終了してから平均で4%程度の経済成長を続けていたことを考えれば、中国の7%成長は依然として高い水準にあるといえる。さらに、近年の中国経済の規模は従来よりも大きくなっていることから、例えば2014年度のGDP増分はインドネシア一国のGDP総額に匹敵する。このことからも、中国が世界経済を牽引する力は依然として大きく、成長率の低下について過度に悲観的になる必要はないと考えられる。