インサイト:コメンタリー

コメンタリーでは最新の社会経済や政策動向等についての考察を行い、特定のトピックスに注目したトレンド・ウォッチを月一回程度発行。ディスカッションペーパーでは分析的・実証的に学術研究を行い、時事テーマに焦点を当てた分析レポートも発行します。

熊坂 侑三

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今月のトピックス(2010年6月)

[ コメンタリー ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2010-06-23

Abstract/Keywords

日米超短期予測(月次)

6月18日に政府から「新成長戦略」(副題:「元気な日本」復活のシナリオ)が発表された。あわせて戦略実行の工程表も示された。新成長戦略の基本哲学 は、いわゆる「第三の道」による日本経済の建て直しである。すなわち、これまでの公共事業中心の経済政策(第一の道)や、行き過ぎた市場原理に基づき、供 給サイドに偏った生産性重視の経済政策(第二の道)から、経済社会が抱える課題の解決のため、新たな需要や雇用の創出をはかり、それを成長につなげる政策 (第三の道)に転換することを意味している。また新成長戦略は「強い経済」、「強い財政」、「強い社会保障」の一体的実現に主眼を置いているのが特徴であ る。 具体的なイメージとしては、新成長戦略で「強い経済」の実現を図り、2020年度までに年平均で、名目3%、実質2%を上回る経済成長を目指している。すなわち、1%程度のインフレ率(GDPデフレータ)を想定していることになる。 同時に民主党から参議院選挙向けのマニフェスト(Manifesto 2010)が発表された。2009年度版と比較すると、以下の3点が新しいところである。まず、(1)歳出面において、短期的な所得補償型政策から中期的 な雇用創出型政策に転換したことである。(2)歳入面では、早期増税の可能性が視野に入ってきたことである。(3)その結果、長期的(10年後)には国と 地方の基礎的財政収支を黒字化するという点が新たに追加された。 (1)に関して言えば、2010年度の予算編成過程では効果的な歳出抑制機能が働かなかったという反省から、需要・雇用創出基準で優先順位をつけること にした。この点から、子ども手当の満額支給断念と一部現物支給の可能性、農家戸別所得補償の縮小、高速道路料金無料化断念等を決定する一方で、大都市イン フラ整備のための投資に注目した。(2)に関しては、法人税減税や消費税増税の必要性に触れているが、具体的にスケジュール化したわけでもなくインパクト に欠ける。第三の道の政策とは、増税(例えば消費税)と特定分野への重点的な資源投入の組み合わせによる雇用創出と考えられるが、この政策効果は早期には 期待できない。 以上から、2010-11年度に限ってみれば、財政状況は景気回復の影響で財政収入が幾分改善し、歳出削減については幾分進行することから、国債新規発 行は当初予算の44兆円以下に収まるとみている。要は、残された3年間で「強い経済」、「強い財政」、「強い社会保障」の一体的実現ができるような政策メ カニズムを構築できるかである。(稲田義久) 日本 <4-6月期、成長率は減速するが堅調な伸びが続く> 今週(6月21日)の支出サイドモデルは、4-6月期の実質GDP成長率を、純輸出は引き続き拡大するが内需が減速するため前期比+0.6%、同年 率+2.5%と予測する。また7-9月期の実質GDP成長率を、内需・純輸出ともに緩やかに拡大するため、前期比+0.8%、同年率+3.1%と予測して いる。いずれも1-3月期の同年率+5.0%の高成長率からは減速するものの堅調な伸びとなろう。 4-6月期の国内需要を見れば、実質民間最終消費支出は前期比+0.1%となる。実質民間住宅は同-3.8%減少するが、実質民間企業設備は 同+3.7%増加する。実質政府最終消費支出は同+0.7%増加するが、実質公的固定資本形成は同-19.9%と大幅な減少となる。このため、国内需要の 実質GDP成長率(前期比+0.6%)に対する寄与度は+0.1%ポイントにとどまる。 内需が減速するのは公的需要(公的固定資本形成)の減少が民間需要の伸びをほぼ相殺するためである。月次データをみると、4月の公共工事は前年同月比 -17.4%減少し、17ヵ月ぶりのマイナス。季節調整値ベースでみれば、前月比-15.4%と大幅減少し、3ヵ月連続のマイナスとなった。公共工事の先 行指標である公共工事請負金額も5月に前年同月比-5.9%となった。5ヵ月連続のマイナス。季節調整値は前月比-15.8%減少し、2ヵ月ぶりのマイナ ス。このように、公共工事は明瞭な減少トレンドを示している。 外需をみると、財貨・サービスの実質輸出は前期比+4.9%増加し、実質輸入は同+2.2%減少する。このため、実質純輸出の実質GDP成長率に対する寄与度は+0.5%ポイントとなる。景気は依然として外需に支えられている。 1-3月期の実質GDP成長率への寄与度をみれば、実質純輸出は4四半期連続で、実質内需は2四半期連続で成長率を引上げている。今後純輸出に大崩れがなければ、日本経済は堅調な伸びとなろう。 [[稲田義久 KISERマクロ経済分析プロジェクト主査 甲南大学]] 米国 グラフにみるように、5月の雇用統計を更新した時点で超短期予測(6月4日)は4-6月期実質GDP成長率を4%程度と予測した。その後、地区連銀が発 表した製造業指数の減速と一致するように、超短期予測で示される景気拡大もスローダウンしてきた。しかし、懸念した景気の下降トレンドは形成される様子は なく、6月18日の予測では、同期の経済成長率は悪くとも2.5%を維持するものとみている。このことは、超短期予測は市場ないし連銀が考えているより、 景気の見方が楽観的であることを意味している。 米経済は堅調に回復をしてきている。にもかかわらず、これまでホーニング・カンザスシティー地区連銀総裁を除いて政策金利の引上げを主張する連銀エコノ ミストはいなかった。確かに、ギリシャ債務危機の米経済への影響に不確実性があったことから政策金利引上げに対して慎重になる連銀の態度も理解できる。し かし、6月に入るや、フィッシャー・ダラス地区連銀総裁とロックハート地区連銀総裁がホーニング総裁と同じような見解を示すにいたった。 ホーニング総裁は夏の終わり頃までに政策金利を1%に引上げることを主張している。フィッシャー総裁は米経済は今すぐに利上げを求める状況ではないが、 利上げへの準備の必要性を説いている。そして、米景気の回復が確実なものになるなかで、利上げの時期が近いことを示唆している。ロックハート総裁は経済が 引き続き回復し、金融市場が安定していく中で、今の異常な低金利政策は景気回復の目的としては必要でなくなり、むしろ物価安定維持の目的と一致しなくなる と言う。 このように、これらの3人の総裁は超短期予測が示すような米経済の堅調な回復に気付き始めた。ヨーロッパの債務危機のグローバル経済への懸念が薄らいで くれば、景気の減速も収まるであろう。今後、超短期予測は経済成長が下降トレンドを形成するより、上昇トレンドに戻る可能性が高いと思われる。したがっ て、政策金利引き上げ機会が意外に早く来るかもしれない。 [[熊坂有三 ITエコノミー]]
熊坂 侑三

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今月のトピックス(2010年5月).

[ コメンタリー ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2010-05-24

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日米超短期予測(月次)

4月頃よりギリシャの債務問題が世界の金融市場に悪影響を及ぼし始め、デフォルト(債務不履行)必至論まで出た。金融市場で影響力のある Mesirow Financial社(シカゴに拠点を持つ金融サービス会社)のエコノミスト達は“前例のないEU/ECB/IMFによる巨額な1,100億ユーロの救済 パッケージもギリシャのデフォルトを避けることはできない”と言う。債務問題がギリシャ一国のデフォルトで済めば全く問題はない。怖いのは、H1N1ウイ ルスの伝染のように、債務危機がギリシャ国境を越えて他国へ“伝染”することである。既に、伝染可能性の高い国として“PIIGS”という言葉もできでい る。すなわち、ポルトガルPortugal(74.9%)、Ireland (61.3%), Italy(114.8%)、 Greece(111.5%), Spain(52.0%)である。括弧内の数字はOECD, 世銀などの資料を参考にした各国の2009年末の公的債務 残高の対GDP比率である。 ギリシャがデフォルトに陥れば“伝染”は確実になるだろう。そこでIMFでシニア・エコノミストをしているギリシャ人の友人に2つの質問をしてみた。最 初の質問はギリシャのデフォルトは本当に起こるのか? 2つ目の質問は、どのようにしてギリシャはこの債務問題を解決するのかである。彼は最初の質問に対 して、“絶対にデフォルトはない。再建プログラムは3年間の融資(1,100億ユーロ)を約束している。何故、デフォルトが考えられる! デフォルトは問 題解決よりももっと多くの問題を引き起こす。例えば、EUや債券所有者との関係、銀行との関係、民間部門のファイナンシングなどにおいてである。デフォル トによって上手く行くものは何もない。ただ、ファイナンシャル・パイレート(強欲な金融市場関係者)たちがギリシャ政府のCDS契約から利益を上げるだけ だろう”と答えた。2番目の質問に対しては“ギリシャがこの問題を解決する方法は一つしかない。合意されたEU/ECB/IMFの再建プログラムをきちん と実行して、市場の信頼を回復することだ”と答えた。 おそらく彼の答えが正しいであろう。フランスとドイツの間の協調には不協和音もあるが、最終的にはギリシャ債務危機の“伝染”は防げるであろう。 懸念されるのは公的債務残高の対GDP比率が200%程度とギリシャの2倍近くもある日本である。ギリシャが国債消化の70%を海外投資家に頼っている のに対して、日本の場合は国債保有の94%が日本人であるという奇妙な安心感がある。これは、海外投資家にとって利回りの低い日本の国債に魅力がないだけ のことである。ギリシャよりも更に悪いかもしれない。日本政府にしても、いつまでも国債の売却を日本人に任せておくわけにはいかない。数年内に債務残高が 現在1,400兆円の個人資産を上回れば、国債を外国人に買ってもらわなければならない。そうなれば、国債金利は跳ね上がり、その日本経済への影響を大き いだろう。菅財務大臣がバンクーバーオリンピックの時期に開かれたG20ミーティングで“債務残高競争ならば日本は確実に金メダル”と冗談(?)を言って いたことには驚いた。債務問題に対する危機意識の完全な欠如である。“5年以内に日本は債務危機に襲われる”というエコノミストもいる。かつては“アジア のアルゼンチン”とも言われ、今度は“アジアのギリシャ”とも言われかねない。日本政府は“債務危機”を真剣に考える必要がある。“危機はある日突然に訪 れる”ことを忘れてはならない。(熊坂有三 ITエコノミー) 日本 <4-6月期、成長率急落の可能性は低い> 5月20日発表のGDP1次速報値によれば、1-3月期の実質GDP成長率は前期比年率+4.9%となり、4四半期連続のプラス。前年同期比で も+4.6%となり、8期(2年)ぶりにプラスに転じた。これにより、日本経済は着実な回復経路を辿っていることが確認できた。この結果、2009年度の 実質成長率は-1.9%と2年連続のマイナス成長(2008年度:-3.7%)となった。ただ2010年度への成長率の下駄は+1.5%となっており、成 長率の上振れが期待できる。 過去の数値をみると、直近の3四半期連続で上方修正された。このため、GDPの水準自体は改訂前の水準をベースにした推計値(前回の10-12月期実績に今回の成長率を乗じた)を上回っていることに注意。すなわち、1-3月期の実勢は数値以上に強いものといえよう。 公表値は市場コンセンサス(ESPフォーキャスト:+4.7%)に近い結果となった。超短期モデルの最終週での予測では、支出サイドモデルが 同+9.8%を予測していていた。今回の超短期予測は、市場コンセンサスや実績から大きく外れる結果となったが、すでに見たように1-3月期の実勢は数値 以上のものであるから、その差は大きくはないと見ている。また3月の中旬にはすでに実績に近い予測を示しており、市場コンセンサスが1%台前半にとどまっ ていたのとは好対照である。 1-3月期のGDP1次速報値を追加した5月24日の支出サイドモデルは、4-6月期の実質GDP成長率を、純輸出は引き続き拡大するが内需の伸びが減 速するため前期比+0.8%、同年率+3.3%と予測する。7-9月期の実質GDP成長率を、内需の伸びは拡大するが純輸出の拡大ペースが減速するため、 前期比+0.5%、同年率+2.2%と予測している。 4-6月期の国内需要を見れば、実質民間最終消費支出は前期比+0.1%へと減速する。実質民間住宅は同-2.9%と減少し、一方、実質民間企業設備は 同+1.8%と増加する。実質政府最終消費支出は同+0.7%、実質公的固定資本形成は同-8.3%となる。このため、国内需要の実質GDP成長率(前期 比+0.8%)に対する寄与度は+0.2%ポイントとなる。内需の成長率寄与度は前期より低下する。 一方、財貨・サービスの実質輸出は同+3.8%増加し、実質輸入は同-0.2%減少する。このため、実質純輸出の実質GDP成長率に対する貢献度は+0.6%ポイントとなる。引き続き成長率に対して高い寄与度をとなる。 ちなみに、マーケットコンセンサス(5月ESPフォーキャスト)は、実質GDP成長率(前期比年率)を4-6月期+1.44%、7-9月期+1.62% とみている。一方、超短期予測は2%以上の比較的堅調な伸びが持続するものとみており、成長率の急落はないものと予測している。 [[稲田義久 KISERマクロ経済分析プロジェクト主査 甲南大学]] 米国 グラフにみるように、5月21日の超短期予測において支出・所得サイドの平均実質GDP伸び率(前期比年率)は1ヵ月前の2%〜3%の範囲から更に 3%〜4%の範囲へと上方に修正された。通常ならば、これまでの異常な低金利を正常に戻す“出口戦略”を開始すべきである。しかし、そのような意見を述べ るFOMCメンバーはカンザスシティー連銀のトーマス・ホーニング総裁一人である。他の連銀総裁達はシカゴ連銀のチャールズ・エバンス総裁のように“緩や かな米経済成長や比較的安定なインフq2レを背景に、現在連銀が超低金利を維持していることは適切”と考えている。 市場(おそらく連銀も)は超短期モデルが予測しているような3%〜4%の範囲の高い経済成長率を予想していないかも知れないが、少なくとも2%〜3%の 経済成長率を現在予想していると思われる。しかし、株価の動きに見るように、市場は堅調な景気回復を信頼するよりもギリシャの債務問題の欧州諸国への伝染 による再度の金融危機を恐れている。例えば、5月10日にEUは1兆ドル規模の金融支援を発表したが、それも1日株価を上げただけである。スペイン政府、 ポルトガル政府が財政赤字削減に対する緊縮財政措置を発表したが、市場は一時的に好感したものの、市場心理がネガティブな今、両国の緊縮財政措置がEUの 経済成長への足かせになると捉えるようになった。 米国経済が非常に堅調に回復をしているにも関わらず、欧州発の金融危機以外の懸念材料はEU諸国経済の停滞から米国の輸出が落ちることである。更に重要 なのは、株式市場の停滞・下落から消費者センチメントが再び悪化し、せっかくの消費者リードの経済回復が崩れることである。 [[熊坂有三 ITエコノミー]]
熊坂 侑三

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今月のトピックス(2010年4月).

[ コメンタリー ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2010-04

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日米超短期予測(月次)

2007年9月の本コラムで、中国成長のカギを握る農業についてレポートした。当時としての中国経済に対する判断は、「10%を超える成長のモメンタム を維持しており、この傾向は少なくとも上海万博が開催される2010年まで持続する」というものであった。この間、リーマン・ショックというかつてない世 界的な景気の落ち込みを経験したが、中国経済は足下でみれば当時の診断がさほど外れていないようである。「経済成長の牽引役は工業であり、当面、何らかの 措置を講じなくても高成長を持続しそうな勢いである」と成長の強さを強調する一方で、農業の停滞は全体の成長にとって大きなリスクとなっていることを強調 した。実際、農業生産性の停滞は食料価格の上昇や食料輸入の増加をもたらしていることを指摘した。 中国農業は三農(農村、農業、農民)問題を抱えており、中国農民は貧しく、一向に豊かになれないのである。中国政府は都市住民との所得格差を是正するた め農業税を廃止したが、あまり効果は上がっていないようである。現地の農業問題専門家の指摘によれば、(1)低い社会保障制度、(2)低い農村の教育水 準、(3)貧弱な農村技術指導が大きな問題である。 これまで筆者が参画する東アジアの発展と環境に関する調査プロジェクトは、農家向けの戸別メタン発酵装置(有機性廃棄物からメタンを発酵させ高率よくメ タンガス等のバイオガスを回収)導入による農村地域の貧困及び環境改善の可能性を調査してきた。この政策は、(1)貧困地域には経済・環境改善の効果があ るが、都市周辺地域ではほとんど効果がなく、(2)立地条件が重要な要素である。これが、複数の調査結果から得た結論であった。 そこで、都市周辺の農村地域の発展モデルの1つとして、6次産業化(1次産業、2次産業、3次産業を同時に実現するという意味で)を実現し、国家モデル となっている留民営村(北京市郊外第6環状線の外の大興区長子営)を3月初旬に調査した。同村は人口860人、戸数260戸、面積2,212ムー (148ha)の規模である。農地面積は1,800ムーで小麦、トウモロコシ、野菜が中心である。特に、北京市内向けに低農薬・無農薬の緑色食品を販売し ている。安全で高品質な農産物を供給する「生態農業」としてつとに有名なのである。同村には、小規模な工業団地があり工業生産もある。また「グリーンツー リズム」も内包しており、農業を中心に多様な付加価値を生み出す農村となっている。 留民営村が成功・機能している要因としては、(1)北京市、天津市の近郊という立地特性を生かした緑色製品の生産販売(農商連携)、(2)輸出用農産物 も生産(立地の優位性)、(3)農産物の加工販売(農工連携)、(4)生態農業による家畜糞尿等の循環利用(畜産連携)、(5)主流の農家個別ではなく、 村単位として発展に取り組んだこと、(6)キーマン(村長)のリーダーシップを挙げることができる。日本でも鳩山政権の政策の一つとして農業の高付加価値 化が謳われているが、留民営村は非常に参考になるモデルである。 最後に、このモデルの課題を指摘しておこう。一見素晴らしいモデルを留民営村は確立してきたのであるが、後継者問題が最大の課題となっている。若年労働 者が北京市や天津市などの高所得を生み出す地域に流出する傾向を反転することはできない。現地の農業労働者の高齢化が進んでいるのである。(稲田義久) 日本 <成長率の加速を予測:1-3月期の日本経済。しかし、大幅な需給ギャップが足枷> 4月19日の予測では、1-3月期のGDPを説明する一部の3月のデータ(金融物価関連)と2月のほとんどの月次指標が更新された。 超短期予測(支出サイドモデル)は、1-3月期の実質GDP成長率を、内需が大幅拡大し純輸出も引き続き拡大するため前期比+1.9%、同年 率+7.8%と予測する。先月の予測(+5.0%)から大幅上方修正されている。この強気な見方は、マーケットコンセンサス(+2.42%:4月ESP フォーキャスト)とは対照的である。 超短期予測が強気である理由は、内需が前期比大幅拡大するという見方が、コンセンサス予測とは異なる点であると思われる。 1-3月期の国内需要をみると、実質民間最終消費支出は前期比+0.9%と堅調な伸びを予測している。実質民間住宅は同-1.0%減少するが、実質民間 企業設備は同+5.9%大幅増加するとみている。実質民間企業在庫品も4,450億円増加する。実質政府最終消費支出は同+0.8%、実質公的固定資本形 成は同-4.6%となる。このため、国内需要の実質GDP成長率(前期比+1.9%)に対する寄与度は+1.6%ポイントとなる。 内需のうち、民間最終消費支出と民間企業設備の強めの予測が特徴的である。1-2月期の平均消費総合指数は10-12月期比+0.9%上昇した。1-2 月の小売業販売額の好調も1-3月期の民間消費が堅調であることを示唆している。政策効果の表れといえよう。一方、民間企業設備についてみると、2月の資 本財出荷指数(確報値)は前月比+7.2%増加し、3ヵ月連続のプラス。同指数の1-2月平均は10-12月期比+15.4%と大幅な上昇となった。この ため、1-3月期の実質民間企業設備の予測値は大幅に上方修正されている。その他のGDP項目では、実質民間企業在庫品増加の予測値が上方修正されてい る。 1-3月期の財貨・サービスの実質輸出は前期比+4.9%増加し、実質輸入は同+3.7%増加する。このため、実質純輸出の実質GDP成長率に対する寄与度は+0.3%ポイントとなる。 このように、1-3月期経済は、政策要因と海外市場の回復に支えられ非常に高い成長を実現しそうであるが、問題は持続性である。高い成長にもかかわら ず、GDPデフレータは、1-3月期に前期比-0.8%、4-6月期に同-0.5%となる。民間最終消費支出デフレータも、1-3月期に同-0.2%、 4-6月期に同-0.4%と予測しており、大幅な需給ギャップの存在が持続的成長の足枷となっている。 [[稲田義久 KISERマクロ経済分析プロジェクト主査 甲南大学]] 米国 グラフにみるように、4月16日の超短期予測では、支出・所得サイドの平均実質GDP成長率(前期比年率)が3%となった。それまでの緩やかな上昇トレ ンドが急な上向きに変わった。1-3月期の支出サイドの成長要因は個人消費支出で、おそらく3.5%程度の伸び率となり成長率には2.5%ポイント程度の 寄与となろう。在庫は前期ほどではないが1%ポイント程度成長に寄与するだろう。純輸出は輸出入共に大きく伸びるため、成長にはそれほど大きく寄与しない だろう。しかし、輸出入の大きな伸び率は米国の貿易相手国、米国自体の景気回復を意味している。構築物投資、住宅投資の低迷は、成長にとって大きなマイナ ス要因となる。 今回最も予測が難しく不確実性が残るのが、景気刺激策・金融危機対策を含む政府支出である。3月の政府支出は大きく減少しているため、成長へのマイナス要因となることも考えられる。一方、所得サイドでの成長要因は個人所得と法人所得の増加である。 成長率が3%(前期比年率)程度になる一方で、インフレ率(前期比年率)は0.5%〜1.5%と落ち着いている。このことから、景気の本格的回復(例え ば、雇用増)を確認するまでFRBは出口戦略を急ぐ必要はないとの見方もあるが、4月30日発表の2010年1-3月期実質GDPの成長率が3%を超えれ ば、やはりFRBは政策金利引き上げに動きたくなるだろう。異常な低金利の期間が長すぎることは誰もが認めており、その潜在的な弊害が大きいことも知って いる。今の米国の景気回復をみると、製造業が本格的に回復しており、25ベーシスポイント(0.25%)程度の政策金利引き上げで景気の腰が折れるような ことはない。 このように考えると、1-3月期の実質GDP成長率が3%を超えた時点で、FRBは政策金利を徐々に引き上げる態勢に入るだろう。これは、市場コンセン サスとは異なる見方だが、6月22日、23日のFOMCにおける25ベーシスポイントの政策金利引き上げのシナリオを描いてもよいだろう。 [[熊坂有三 ITエコノミー]]
熊坂 侑三

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今月のトピックス(2010年3月)

[ コメンタリー ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2010-03-18

Abstract/Keywords

日米超短期予測(月次)

関西経済にとって益々アジア経済、特に中国経済の重要性が高まりつつある。リーマンショック以降、2四半期連続の2桁マイナス成長の後、日本経済は外需 (海外市場)の回復に支えられて緩やかな回復局面にある。輸出市場として、新興国市場、特に中国を中心とするアジア経済の役割は非常に大きい。当研究所が 四半期ごとに発表する「関西エコノミックインサイト」において、関西予測モデルに基づいて関西地域の総生産(GRP)やその構成項目の短期予測を公表して いる。同時期に公表される日本経済の予測と比較して、民間企業設備や輸出が全国に比して強く出るというのが最近の特徴であった。今月のトピックスでは、関 西予測モデルの輸出関数に注目して、関西の輸出構造の特徴を見てみよう。 まず地域別の輸出のシェアを全国と関西とで比較しよう。2008年度の通関輸出をみると、全国ベースで、アジア、中国、米国、その他地域のシェアは、そ れぞれ50.0%、16.5%、17.0%、33.0%となっている。関西ベースでは、それぞれ60.6%、20.5%、12.6%、26.8%となって いる。関西では輸出市場としてアジアのウェイトが全国に比して10%ポイント程度大きいのである。2009年度ではさらに拡大していることが予想される。 また中国市場のウェイトは全国に比して4%ポイント大きくなっている。 関西予測モデルの輸出関数(GRPベース)では、所得変数としては中国、米国、EUの実質GDPの加重値を採用してきたが、輸出関数は地域別に分割して いなかった。今回、アジア、中国の重要性を考慮して、輸出関数を地域別に推計した。推計期間は1980-2006年度である。輸出関数は、通常、所得弾性 値と価格弾性値によって特徴づけられる。所得変数は輸出相手国の実質GDP、価格変数は世界輸出価格と日本の輸出価格の相対比である。なお、対アジア輸出 関数(中国以外)の所得変数として米国の実質GDPを採用しているのは、アジアで部品を組み立て、最終財を米国に輸出するという経路を考慮しているためで ある。また、その他地域では、所得変数として米国とEUの実質GDP加重値を採用している。 下表が推計結果の要約である。これまで使用してきた関西の輸出関数(対世界)では、所得弾力性が1.196、価格弾力性が-0.298となっている。輸 出関数を中国、中国以外のアジア、その他地域(アジア以外)に分割すると、所得弾性値は、1.964、1.101、0.380とそれぞれの国や地域の成長 率の高さに対応した値となっている。また、価格弾性値も中国(-0.783)と中国以外のアジア(-0.869)ではよく似た値をとるが、その他地域では 低い弾性値(-0.190)となる。このように、輸出関数を関西にとって重要な地域に分割することにより、中国財政政策の関西経済に与える影響といった、 より現実に即したシミュレーションが可能となる。(稲田義久) 日本 <1-3月期の予測は対照的:超短期vs.コンセンサス予測> 3月15日の予測では、3月の第2週までの月次データと2009年10-12月期GDP統計(2次速報値)を更新している。この結果、2010年1-3 月期の実質GDP成長率を支出サイドモデルは前期比+1.2%、同年率+5.0%と予測している。内需と純輸出がともに拡大するバランスのとれた成長と なっている。また4-6月期を同年率+2.9%と見ている。 3月11日に発表されたGDP2次速報値によれば、10-12月期の実質GDP成長率は同年率+3.8%となり、1次速報値の+4.6%から0.8%ポ イント下方修正された。下方修正の主要因は民間在庫品増加の下方修正である。1次速報値では民間在庫品増加の実質GDP成長率に対する寄与度(年率) は+0.3%ポイントであったが、2次速報値では-0.6%ポイントへと下方に修正された。すなわち、民間在庫品増加の変化(-0.9%ポイント)が実質 GDP成長率の下方修正を説明していることになる。たしかに成長率は下方修正されたものの、一段と在庫調整が進んだという意味では、先行き見通しにとって は明るい材料である。 さて、問題の先行きの見通しである。2次速報値発表前の3月9日に発表されたマーケットコンセンサス(3月ESPフォーキャスト調査)によれば、1-3 月期の実質GDP成長率は前期比年率+1.17%となっており、超短期予測に比べ非常に悲観的な見方となっている。グラフからわかるように3月8日以降、 超短期予測は+2%から+4%〜+5%にシフトしてきている。 上方シフトの主要因は、実質民間最終消費支出の予測が上方修正されたことによる。実質民間最終消費支出をよく説明する消費総合指数は、1月に前月比 1.0%増加している。一方、消費総合指数よりカバレッジの狭い全世帯実質消費支出は同-1.3%減少している。反対の結果となっている。マーケットコン センサスは全世帯実質消費支出の結果に影響されているようである。カバレッジの広いデータでみる限り、依然として実質民間消費は政策効果に支えられて堅調 なようである。2-3月の動向次第であるが、現時点では、日本経済に対して悲 [[稲田義久 KISERマクロ経済分析プロジェクト主査 甲南大学]] 米国 3月12日の予測では、3月の第2週に発表された2月の小売業、1月の貿易収支、企業在庫などを更新している。超短期予測モデルは2010年1-3月期の米国実質GDP成長率を前期比年率+1.7%、4-6月期を同+1.6%と予測している。 米景気は緩やかに回復しているが、その成長率はせいぜい2%程度である。1-3月期の景気回復をもたらす主な要素は個人消費支出である。賃金・俸給が伸 び始めたものの2%程度(同)であり、一方、実質個人消費支出の伸び率は3%程度(同)が予想されている。このように、給与の伸びを上回って、個人消費支 出が伸びる背景には家計の純資産の回復がある。 家計の純資産は今回のリセッション前のピークには65.9兆ドルにまで拡大したが、2009年1-3月期には株価・住宅価格の下落から48.5兆ドルに まで減少した。しかし、昨年の3月以来の株式市場が上げ相場(bull market)に転じることにより、純資産は2009年4-6月期、7-9月期、10-12月期とそれぞれ前期比4.5%、5.5%、1.3%増加し、 10-12月期末には54.2兆ドルにまで回復した。ピーク時の純資産の水準に戻るまでまだ21%上昇しなければならないが、このような純資産の回復が個 人消費支出の3%程度の伸び率に寄与しているといえよう。 個人消費支出が今後も堅調に伸びるかの一つの鍵は、株式市場の上げ相場がどのくらい長く続くかである。上げ相場の始まった2009年3月9日より1年間 で、ナスダック、SP500、ダウの株価指標はそれぞれ85%、69%、61%上昇した。過去15回の上げ相場の平均継続年数は約4年と長く、2年以下で 終わった時は3回しかない。幸いにも、株価の上昇にとって最もネックとなる”インフレの加速化”、”金利の上昇”は当分みられそうもない。このことから、 上げ相場の継続には幾分楽観的になれる。しかし、なんといっても、景気回復が本格的な軌道に乗るためには、”雇用増−所得増”の好循環が始まることであ る。すなわち、米国経済は未だ自律的な景気回復には至っていない。 [[熊坂侑三 ITエコノミー]]
熊坂 侑三

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今月のトピックス(2010年2月)

[ コメンタリー ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2010-02-18

Abstract/Keywords

日米超短期予測(月次)

当研究所では、先行き2年程度の経済予測を四半期ごとに発表しているが、同時に、このホームページで、毎月足元を含め2四半期先の予測(超短期モデルに よる月次予測)を発表している。四半期ごとの予測では超短期予測の情報を加味して、特に足元の予測精度の向上も図っている。各四半期の予測時点において は、足元に限られてはいるものの月次情報があり、それを有効に予測に利用しようというのが、超短期予測の発想である。 超短期予測のメリットの一例を示そう。2月15日に10-12月期のGDP1次速報値が発表された。同期の実質GDP成長率は前期比+1.1%、同年 率+4.6%となり、3四半期連続のプラスとなった。1次速報値発表前の超短期予測(支出サイドモデル)は+4.8%と実績値にほぼ等しくなっている。ち なみに直前のコンセンサス予測(ESPフォーキャスト調査、2月9日発表)は+3.46%となっている。超短期予測は週次ベースでコンセンサス予測は月次 ベースで景気見通し(実質GDP成長率)を発表しているため、四半期毎ではなく、より頻繁に景気を見直すことができるといメリットがある。また超短期予測 は予測の精度が高く、速報値が発表される2-3ヵ月前でも十分精度の高い予測が提供できるという特徴がある。 図は超短期モデルの予測の動態を示しており、予測パフォーマンスをコンセンサス予測と比較している。10-12月期の実質GDPの予測は速報値が発表さ れる6ヵ月前からスタートする。10-12月期の最初の月次データが予測に利用可能となる11月初旬に超短期モデル予測は3%台半ば(支出サイド、主成分 分析モデル平均)となり、12月には6-7%台まで上昇した。1月には予測は5%台半ばで推移し、最終週での支出サイドモデル予測は4.8%とほぼ公表値 に近い値となった。 一方、コンセンサス予測は速報値発表直前において急速に実績値に収束するが、それまではほとんど変化しない。2009年4−6月期GDP速報値発表後の 8月から1月までの予測の幅は1.3%から1.8%の0.5%ポイントである。過去の予測データを比較しても同じ傾向が見られる。このことは、コンセンサ ス予測では、当該期のGDP推計の基礎データが揃う速報値発表直前とそれ以前とでは予測の手法が異なるということ示唆するものである。 また興味深いのは、コンセンサス予測がマーケットのムードに左右され易いことだ。例えば、ドバイショック後の12月では、コンセンサス予測はマーケット の悲観的なムードに影響を受け下方修正(1.5%→1.3%)されたが、1月は株価が持ち直し円高が修正されるのを受けて上方修正(1.3%→1.8%) された。 このように超短期予測もコンセンサス予測も1次速報値発表前には精度の高い予測を提供できることが分かったが、超短期予測は1次速報値発表の2-3ヵ月前でも十分精度の高い予測を提供できることが確認された。(稲田義久) 日本 <1-3月期はコンセンサスとは異なり高めの成長率を予測> 2月15日に2009年10-12月期のGDP統計1次速報値が発表された。同期の実質GDP成長率は前期比+1.1%、同年率+4.6%となり、3四 半期連続のプラスとなった。前回1月の超短期モデルの予測値+4.6%であり実績値にピンポイントであった。また9日発表のESPフォーキャスト調査によ れば、同期の成長率コンセンサスは+3.46%であった(超短期予測とコンセンサス予測のパフォーマンスについては、今月のトピックスを参照)。 10-12月期の実質GDP成長率(前期比年率)への寄与度を見ると、国内需要は+2.4%ポイントと7四半期ぶりに成長率を引き上げた。また純輸出 は+2.2%ポイントと3四半期連続のプラス寄与となった。内需が回復し始めたものの、依然として外需と政策に支えられた回復であり、景気回復の持続性に は不確実性が伴う。 2月16日の予測では、10-12月期のGDP統計に加え、1月の国内企業物価指数、輸出入物価指数、投入産出物価指数、12月の鉱工業生産指数(確報値)、民間機械受注、情報サービス業売上高までが更新されている。 超短期モデルは1-3月期の実質GDP成長率を前期比+0.7%、同年率+2.6%と予測している。また4-6月期の成長率を前期比+0.6%、同年率+2.5%とみている。この結果、2009年度の実質GDP成長率は-2.1%となろう。 1-3月期の実質成長率(前期比年率)への寄与度をみれば、実質国内需要は+1.2%ポイント、実質純輸出は+1.4%ポイントと比較的バランスのとれた回復となっている。 国内需要を見れば、実質民間最終消費支出は前期比+0.3%、実質民間住宅は同+0.9%とプラス成長となるが、実質民間企業設備は同-0.7%と小幅の マイナスを予測している。実質政府最終消費支出は同+0.7%、実質公的固定資本形成は同+0.6%となっている。一方、純輸出では、財貨・サービスの実 質輸出は同+3.8%、同実質輸入は同+1.2%と引き続き輸出の伸びが輸入を上回っている。 一方、コンセンサス予測(ESPフォーキャスト調査)によれば、実質GDP成長率は1-3月期+0.80%、4-6月期+0.75%と低めの予測となっ ている。超短期予測が2%半ばと比較的高めの成長を予測しているのに比して、コンセンサスはゼロ成長に近く景気は踊り場局面に入るとみているようである。 超短期予測は、内需がマイナスに落ち込むことなく、また外需が引き続き拡大するとみている。 [[稲田義久 KISERマクロ経済分析プロジェクト主査 甲南大学]] 米国 1月29日に発表された2009年10-12月期の実質GDP成長率(速報値)は前期比年率+5.7%と最終の超短期予測の同+5%、市場のコンセンサ スの同+4.5%を上回った。しかし、持続的な景気回復となると、在庫増が成長率に+3.6%ポイントも寄与していることから慎重にならざるを得ない。1 月27日の連邦公開市場委員会(FOMCミーティング)においても、FRBは在庫による10-12月期の高い経済成長率を予想しており、政策金利は据え置 かれた。このFOMCミーティング後のステートメントでFRBは“economic activity has continued to strengthen… inflation is likely to be subdued for some time”との景気判断を行っている。 図に示すとおり、確かに景気(実質経済成長率)は1%程度から2%程度にまで徐々に上向くと思われる。FRBは、景気は引き続き強くなっていると言う が、おそらくこの程度のことであろう。インフレに関して、超短期モデルはGDP価格デフレーター、個人消費支出(PCE)価格デフレーター、コアPCE価 格デフレーターのすべてが1-3月期、4-6月期において同+1.5%程度の伸び率を予測しており、FRBの言うようにしばらくの間インフレは抑制されて いるだろう。 10-12月期のGDP統計と1月の雇用統計、12月の建設支出を更新した2月5日の超短期予測でのサプライズは2つある。良いニュースは製造業の賃 金・俸給の伸び率が2010年1-3月期に2007年10-12月期以来始めて前期比プラスになる可能性がでてきたことだ。サービス業の賃金・俸給も 同+5%程度とかなり高い伸び率が予測されている。このように、賃金・俸給が増加してくれば、今後の個人消費支出の増加にも期待が持てる。一方、悪い ニュースもある。それは2009年7-9月期、10-12月期とせっかくプラスの伸び率となった実質住宅投資が、2010年1-3月期に再びマイナス成長 になる可能性がでてきた。しかし、住宅投資のダブルディップを十分に補うほどに、米国の情報処理投資が堅調に伸び始めていることから、今の景気回復の腰が 折れるようなことはないだろう。 [[熊坂侑三 ITエコノミー]]
熊坂 侑三

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今月のトピックス(2010年1月)

[ コメンタリー ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2010-01-21

Abstract/Keywords

日米超短期予測(月次)

民主党政権が誕生して4ヵ月が経過した。この間、政権支持率は低下しているが、今後の政策、特に経済対策について依然として国民の期待は高い。今月のト ピックスでは、民主党政権の政策(マニフェスト)効果について、マクロ計量モデルを用いたシミュレーションの結果を紹介しよう。 新政権誕生後の経済政策上の重要事項は、(1)2009年度1次補正予算の事業見直し、(2)同2次補正予算および(3)2010年度予算案や税制改正 大綱の公表である。2010年度予算では、個々の政策の規模について、当初のマニフェストベースよりも実現可能性の高い金額が明らかになってきた。現時点 の最新情報と7-9月期GDP2次速報値を織り込み、民主党政権の政策効果を2009-2011年度にわたってシミュレーションした。 考慮した民主党政策(マニフェスト)のメニューは、(1)子ども手当・出産支援、(2)高校無償化、(3)暫定税率の廃止、(4)高速道路無料化、 (5)農業の戸別所得補償、(6)雇用対策、である。2010年度については予算案、11年度はマニフェストに記載されている金額を想定している。このほ か(7)家電エコポイント、(8)エコカー減税、(9)生活の安心確保、(10)地方支援といった2009年度2次補正予算において予算が割り当てられた 政策も考慮されている。次に、財源捻出のための政策としては、(11)公共投資・人件費等の削減及び家計に関する事業見直しなどの歳出削減であり、 (12)たばこ増税、(13)扶養控除の廃止といった税制改正による家計に対する負担増である。以上の想定に基づき、鳩山内閣の政策効果を推計した。 シミュレーション結果によれば、その政策は、2010年度に実質GDPを0.09%、2011年度に0.12%、それぞれ引き上げることになる。このよ うに、政策の成長貢献の程度は大きくないことがわかる。しかし、成長の中身をみると、民間消費は拡大するが、公共投資や政府の人件費(政府最終消費)が削 減されて、結果として経済を拡大させる純効果は非常に小さくなっているのである。たしかに、「コンクリートから人」という意味での政策効果は出ていると言 えるが、重要な問題は、民主党がどのような成長戦略を国民に示すかである。このままでは、結局、日本経済の行く末は輸出の動向によって決まるパターンに なっているのである。筆者は、日本の成長戦略の柱として環境部門を中心に国内外を問わず全面的に展開していくこと以外にないのではないかと考えている。 (稲田義久) 注:本シミュレーションの詳細は、http://www.kiser.or.jp/ja/index.htmlの「第81回景気分析と予測」に掲載。 日本 <10-12月期は持続性に欠けるが、引き続き高めの成長率を予測> 1月18日の予測では、12月の国内企業物価指数、輸出入物価指数、11月の民間機械受注、情報サービス業売上高、国際収支統計が更新されている。支出 サイドモデルは、10-12月期の実質GDP成長率を前期比年率+4.6%と12月の見通しより下方修正されたものの、依然として高めの成長を予測してい る。超短期予測はGDP統計の推計基礎となる月次統計の変化を忠実に反映する、”Go by the Numbers”ともいえるテクニカルな予測手法である。 一方、マーケットコンセンサスは、超短期予測に比べ低めの成長予測となっており、対照的である。1月14日に発表されたESPフォーキャスト1月調査で は、10-12月期の実質GDP成長率予測は同+1.82%と前月調査の+1.27%から上方修正されている。過去の経験からみて成長率予測のマーケット コンセンサスは金融市場の動向に比較的大きな影響を受ける。前回の12月調査ではドバイショックによる株価の下落や円高を反映して低めの予測となったが、 1月調査では株価の回復、円高の修正等の好条件により上方修正となったと考えられる。 超短期予測によると、10-12月期の国内需要について、実質民間最終消費支出は景気対策の影響により前期比+0.6%と引き続き堅調な伸びとなる。実 質民間住宅は同+5.2%と4期ぶりのプラスなるが、実質民間企業設備は同-0.8%と低調である。実質政府最終消費支出は同+0.5%、実質公的固定資 本形成は同+2.4%となる。このため、国内需要の実質GDP成長率(前期比+1.1%)に対する寄与度は+0.5%ポイントとなる。 財貨・サービスの実質輸出は同+4.3%増加し、実質輸入は同-0.8%減少する。このため、実質純輸出の実質GDP成長率に対する寄与度は+0.6% ポイントとなる。このように、内需が前期から反転拡大し、純輸出も引き続き拡大するため、4%程度の高い成長を予測している。一方、主成分分析モデルも、 10-12月期の成長率を前期比年率+7.1%と予測している。 1-3月期は、純輸出は引き続き拡大するが、内需、純輸出とも拡大のペースが減速するため、前期比+0.1%、同年率+0.3%と予測している。この結果、2009暦年及び年度の実質GDP成長率はそれぞれ-5.1%と-2.3%となろう。 [[稲田義久 KISERマクロ経済分析プロジェクト主査 甲南大学]] 米国 1月15日の超短期予測は12月の鉱工業生産指数、小売販売額、消費者物価指数、輸出入物価指数、11月の企業在庫、貿易収支までを更新している。グラ フに見るように、10月の経済指標を更新し始めるや景気はスローダウンを始め11月25日の超短期予測は0%の経済成長率を示し、ダブルディップリセッ ションの可能性を一時的に示した。しかし、12月4日以降になり、11月の経済統計を更新し始めるとそれまでの実質GDPの下降トレンドは上昇トレンドに 転換し、1月15日の超短期予測では、2009年10-12月期の実質GDP成長率は前期比年率+3.6%(支出サイドと所得サイドの平均)を示してい る。コア個人消費支出(PCE)価格デフレーター、GDP価格デフレーターでみた同期のインフレ率は約1.5%と落ち着いており、FRBのインフレ許容範 囲内(1%〜2%)にある。しかし、PCE価格デフレーターはエネルギー価格の高騰により3.5%にまで上昇している。 10-12月期の支出サイドの実質GDP成長率は4%を超える可能性が出てきた。これは在庫が少しずつ増え始めたことによる。在庫の成長率寄与度が3 %〜4%になると予想されるのは、7-3月期の在庫調整が-1,410億ドルと大きいからである。しかし、景気回復が持続的に堅調とは言い難い。在庫を除 いた経済成長率を見れば、マイナス成長も考えられる。すなわち、実質最終需要の伸び率は下降トレンドを示しており、超短期予測は-1.0%の伸びとなって いる。2010年1-3月期も1%以下である。10-12月期の実質GDPの高い伸びにもかかわらず、米国経済の回復は緩やかであり、いまもって脆弱と見 るのがよいであろう。 1月13日に発表されたFRBのベージュブックでは、12のうち10の地域連銀は景気の改善を報告している。輸出の伸び率の改善からもわかるように、多 くの地域で製造業が改善している。労働市場はいまもってほとんどの地域で悪いが、ニューヨーク連銀とセントルイス連銀は改善の様子を報告している。 [[熊坂侑三 ITエコノミー]]
熊坂 侑三

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今月のトピックス(2009年12月)

[ コメンタリー ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2009-12

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日米超短期予測(月次)

<GDP統計にもっと資金と人材を投入すべし> 12月9日発表の日本のGDP2次速報値によれば、7-9月期の実質GDP成長率は前期比年率+1.3%となり、1次速報値(同+4.8%)から3.5%ポイントの大幅下方修正となった。 実質GDP成長率下方修正の主な要因は、実質民間企業設備が1次速報値の同+6.6%から同-10.6%に大幅下方修正されたことにある。これは、民間 企業設備の2次速報値推計の基礎データである法人企業統計調査(需要統計)の低調な結果を反映したものである。一方、1次速報値推計の基礎データ(供給統 計)である資本財出荷指数が7-9月期に前期比+8.1%と7四半期ぶりのプラスとなったことからすれば、企業設備投資の大幅下方修正はネガティブサプラ イズであった。 2次速報値は、供給統計と需要統計の加重平均で決まる。異なる変化の方向を示すデータを平均したため、大幅な下方修正となったといえよう。7-9月期の 民間企業設備の供給側の動きが需要側に反映されなかったため、これが10-12月期の需要データに後ずれして現れる可能性が高い。いずれにせよ、これを契 機にGDP統計の信頼性をめぐる議論が再び高まっている。 GDP統計の信頼性をめぐる議論を高めたもう一つのポイントは、速報値が過去にさかのぼって大幅に改定されたことである。実質GDP成長率の四半期パ ターンを過去に遡及し比較してみれば、2008年4-6月期は-5.2%ポイント(前期比年率-2.9%→同-8.1%)の下方修正となった。一方、 2008年1-3月期は1.6%ポイント(同+4.0%→同+5.6%)、7-9月期は2.5%ポイント(同-6.5%→同-4.0%)、10-12月期 は1.3%ポイント(同-11.5%→同-10.2%)、2009年1-3月期は0.3%ポイント(同-12.2%→同-11.9%)と、いずれも1次速 報値から上方修正された。2008年1-3月期が上方修正されたことから、2008年度から2009年度にかけての成長率のゲタは1次速報値の-4.2% から-3.8%に引き上げられた。 ちなみに、12月2日に公表された2008年度国民経済計算確報値では同年度の実質GDPが速報値の-3.2%から-3.5%に改定されて、戦後最大の 落ち込みとなったことが判明した。悪いことには、12月7日に内閣府は確報値に間違いがあることを報告し、さらに-3.7%へと下方修正した。 このように推計ミスやこれまでにない速報値の大幅下方修正が目立っており、GDP統計に対する信頼が今回大きく揺らいでしまった。根本的な原因ははっき りしている。GDP統計推計のために資源があまり投入されていないからである。適切な経済政策のためには正確な景気診断が必要条件である。このために政府 はもっと資金と人材を投入すべきであろう。GDP統計に対する不信感は、投資家の”Japan Passing”を加速するであろう。(稲田義久) 日本 <10-12月期は高めの成長を予測、悲観的な見方のマーケットコンセンサスとは対照的> 12月14日の予測では、10月の大部分の月次統計と7-9月期のGDP2次速報値が更新された(GDPの改定については今月のトピックスを参照)。支 出サイドモデルは、10-12月期の実質GDP成長率を、内需が反転拡大し純輸出も引き続き拡大するため、前期比+1.6%、同年率+6.6%とマーケッ トコンセンサスとは異なり高く予測する。ちなみに、マーケットコンセンサスは、ドバイショックによる株価の下落や円高を反映して、年率+1.27%と前月 の+1.50%から下方修正されている(12月ESPフォーキャスト調査)。 1-3月期は、純輸出は引き続き拡大するが、内需、純輸出とも拡大のペースが減速するため、前期比+0.4%、同年率+1.7%と予測している。この結 果、2009暦年及び年度の実質GDP成長率はそれぞれ-5.0%と-2.0%となろう。GDPデータの大幅改定により、2008年度から2009年度に かけての成長率のゲタは1次速報値の-4.2%から-3.8%に引き上げられたものの、2009年7-9月期が3.5%ポイント引き下げられた。データ改 定を反映した超短期予測は2009年度の成長率については前回より0.1%ポイント下方修正している(-1.9%→-2.0%)。 10-12月期の国内需要を見れば、実質民間最終消費支出は前期比+0.7%となる。実質民間住宅は同+5.7%となるが、実質民間企業設備は同 -0.4%減少する。実質政府最終消費支出は同+0.5%、実質公的固定資本形成は同+2.6%となる。このため、国内需要の実質GDP成長率(前期 比+1.6%)に対する寄与度は+0.6%ポイントとなる。 財貨・サービスの実質輸出は同+6.1%増加し、実質輸入は同-2.2%減少する。このため、実質純輸出の実質GDP成長率に対する寄与度は+1.0%ポイントとなる。 主成分分析モデルも、10-12月期の成長率を前期比年率+8.0%と予測している。また1-3月期を同+3.7%とみている。この結果、支出サイド・ 主成分分析モデルの実質GDP平均成長率(前期比年率)は、10-12月期が+7.3%、1-3月期が+2.8%となる。 マーケットでは日本経済に対する悲観的な見方が強まっている。しかし、超短期予測は、これとは異なり、日本経済は年度末にかけては減速するものの、世界 経済回復の影響を受け、純輸出に牽引されて比較的堅調な成長パスを辿るものと予測している。ただ、政策効果が剥落する2010年度前半の経済政策が極めて 重要となるという点ではマーケットと同じである。 [[稲田義久 KISERマクロ経済分析プロジェクト主査 甲南大学]] 米国 12月11日の超短期予測では10月の貿易収支、11月の小売販売、輸出入物価指数までを更新している。その結果、実質GDP成長率は需要サイドでは純 輸出の改善、個人消費支出の上方修正から、所得サイドでは企業収益の上方修正から、それぞれ前期比年率+3.1%、同+0.9%へと大幅に上方修正され た。しかし、超短期モデルによる2009年の実質最終需要の伸び率は+0.5%程度と予測されている。更に、懸念されるのは実質国内需要、実質最終需要 (GDP−在庫)が過去4週間の超短期予測では下降トレンドを形成していることである。 バーナンキFRB議長が12月7日、ワシントンD.C.において”Frequently Asked Questions”という講演を行い、そのうちの一つのトピックスが”今後の米経済の行方”であった。彼の講演要旨は次のようなものであった。 ・これまでの在庫調整によって生産が拡大する様子が見えてきたが、持続的な景気回復には最終需要の復活が不可避である。 ・企業の新しい設備・ソフトウエアへの支出が一時的にも安定してきた。 ・ 住宅市場、個人消費支出、設備投資、グローバル経済において改善傾向が見られる。 ・しかし、米経済は今もって低調な労働市場、慎重な消費支出、厳しい資金市場など“手に負えない逆風”をうけて  いる。 ・インフレに関してはかなりの需給ギャップから賃金・物価トレンドの上昇が抑えられており、長期のインフレ期待  は安定している。 超短期予測はバーナンキFRB議長の景気の見方とほぼ一致する。超短期予測は現在の実質GDP成長率(需要サイドと所得サイドの平均)を+2.0%、イ ンフレ率を2%〜3%とみている。実際に今の景気回復が持続的であると宣言するには早すぎるし、インフレに楽観的すぎるのも良くない。バーナンキFRB議 長の言うように、最終需要の復活が景気回復の鍵をにぎっていることは確かである。 [ [熊坂侑三 ITエコノミー]]
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今月のトピックス(2009年11月)

[ コメンタリー ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2009-11-10

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日米超短期予測(月次)

11月12日発表のESPフォーキャスト調査(7-9月期実質GDP1次速報値は反映されていない)によれば、今後の四半期成長パターンとして、 10-12月期前期比年率+1.5%から2010年1-3月期同+0.89%、4-6月期同+0.71%へと緩やかに減速するというのがマーケットではコ ンセンサスとなっている。 また、マーケットの一部では、日本経済は2010年前半にマイナス成長に陥り、08年10-12月期と09年1-3月期の2期連続の二桁マイナス成長と併せて考えれば、W字型、ダブルディップ型不況に陥る可能性が高いとみている。 一方、11月17日の超短期予測(支出サイドモデル)は、10-12月期の実質GDP成長率を、内需と純輸出は引き続き拡大するため、前期比年 率+4.2%と予測する。また1-3月期の実質GDP成長率を、純輸出は引き続き拡大するが内需が息切れするため、同+0.3%と予測している。 超短期予測もマーケットコンセンサスも、景気のパターンとしては2010年前半にかけて経済は減速するという点では一致している。その理由は、内需が再び縮小する可能性が高いとみているためである。特に、民間最終消費支出と公的需要の動向がポイントとなる。 民間最終消費支出の先行きついては、所得環境が悪化しており、加えて財政政策の効果が年度越しには剥落するため、追加的な政策なしには減速ないしはマイナス成長が避けられない。 7-9月期の雇用者報酬は前期比年率-0.7%と6期連続のマイナスとなり、前年同期比では-3.7%と5期連続のマイナスを記録した。加えて冬のボー ナスもマイナスが必至で、先行き所得環境は厳しい状況が続こう。2期連続の二桁のマイナス成長により急拡大した需給ギャップはなかなか縮小せずデフレ圧力 が強まっている。デフレスパイラルに陥るリスク確率も上昇してきており、民間消費の先行きは明るくない。 もう一つのポイントは公的需要である。人口高齢化に伴う政府最終消費支出の増加トレンドは避けられないが、「コンクリート」から「人」へという現政権の 政策スタンスで、公共投資の削減は必至である。現状では先行き公的需要の経済成長への貢献は期待できないということになる。 とすれば、ダブルディップ不況を避けるためには、さらに外需依存を強めるか新たな内需の創出が必要となる。外需の今後の動向については、海外欧米市場の 回復に大きな期待は持てない。活発なアジア市場はこれまで景気回復の一翼を担ってきたが、欧米市場の回復なくして外需の持続可能性に問題がある。とすれ ば、新たな内需創出がカギとなる。民主党政権は、「コンクリート」から「人」へというスローガンで公共投資を削減するが、その努力を環境投資拡大促進に向 けるべきであろう。実際その方向に進んでいるが、それを加速させる必要がある。日本経済がダブルリセッションに陥らないためにもタイミングの良い政策発動 が重要である。(稲田義久) 日本 <政策効果大きく7-9月期は高成長となったが、年度末にかけては減速か?> 11月16日(月)発表のGDP1次速報値によれば、7-9月期の実質GDP成長率は前期比+1.2%、同年率+4.8%となり、2四半期連続のプラス となった。景気対策効果と輸出の増加がその背景にある。7-9月期の実績は4-6月期の同+2.7%を上回り、2007年1-3月期(同+5.7%)以来 の高い成長率となった。 実績は超短期予測の平均値(+3.9%)や市場コンセンサス(ESPフォーキャスト:+2.5%)を上回った。超短期予測最終週での予測では、支出サイ ドモデルが同+2.9%、主成分分析モデルが同+5.0%を予測していていた。主成分分析モデルの予測は実績により近いものとなった。超短期モデルの予測 動態からわかるように、7-9月期の月次データが利用可能となる8月後半から2%台後半、9月に入り3%台後半の成長率を予測していた。 7-9月期の実質GDP成長率(前期比年率)への寄与度を見ると、内需は3.4%ポイント成長率を引き上げた。内需が成長率引き上げに貢献したのは1年半ぶりである。また純輸出も成長率を+1.5%ポイント引き上げたことがわかる。 実質民間最終消費支出は同+2.8%と2期連続のプラスとなり、実質GDP成長率を1.7%ポイント引き上げた。所得環境が悪い中、民間最終消費支出が 伸びたのは、政策効果(エコポイント制度、自動車取得促進税制、補助金)による影響が大きい。実際、耐久消費財は同+31.4%と大幅に伸びた。 実質民間企業設備は同+6.6%と6四半期ぶりのプラスとなり、実質GDP成長率を0.9%ポイント引き上げた。実質民間企業在庫品増加は実質GDP成長率に+1.6%ポイント貢献した。3期ぶりのプラス貢献で在庫調整に一段落がついたと思われる。 アジアからの輸出需要の高まりで、財貨・サービスの実質輸出は同+28.0%増加し、2期連続のプラス(寄与度+3.5%ポイント)となった。一方、同実質輸入は同+14.1%(寄与度+3.3%)増加した。3期ぶりのプラス成長である。 実質民間住宅は同-27.5%と3期連続のマイナスである。マンションを中心に大幅なストック調整が起きている。民間住宅は実質GDP成長率を0.9%ポイント引き下げた。 公的需要は同+0.3%の増加にとどまり、実質GDP成長率にはほとんど貢献しなかった。うち、実質公的固定資本形成は同-4.9%減少し、実質GDP成 長率を0.1%ポイント引き下げた。一方、実質政府最終消費支出は同+1.5%増加し、寄与度は+0.1%ポイントとなった。 所得環境は悪化しており、雇用者報酬は同-0.7%と6期連続のマイナスとなった。前年同期比では-3.7%と、5期連続のマイナスを記録した。冬のボーナスもマイナスとなり、先行き厳しい状況が続こう。 デフレータを見ると、GDPデフレータは前期比-1.2%と2期連続の下落となった。急激に拡大した需給ギャップはなかなか縮小せずデフレ圧力が強い。 前年同期比では+0.2%と4期連続のプラスとなったがプラス幅は縮小している。一方で、国内需要デフレータは同-2.6%と3期連続のマイナスで下落幅 が拡大している。日本経済はしばらくデフレから抜け出せないようである。 11月17日の支出サイドモデル予測は、10-12月期の実質GDP成長率を、内需と純輸出は引き続き拡大するため、前期比+1.0%、同年 率+4.2%と予測する。1-3月期は、純輸出は引き続き拡大するが内需が息切れするため、前期比+0.1%、同年率+0.3%と予測している。この結 果、2009暦年及び年度の実質GDP成長率はそれぞれ-5.0%と-2.2%となろう。 超短期予測は2009年度末にかけて景気減速を示唆しており、マーケットの一部ではダブルディップ不況を懸念している。持続的な成長に向けて新政権の政策舵取りに注目が集まっている。 [[稲田義久 KISERマクロ経済分析プロジェクト主査 甲南大学]] 米国 11月13日の超短期予測は10月の雇用統計や9月の貿易統計までを更新した予測である。グラフ1に見るように今期(2009年10-12月期)の実質 GDP伸び率を支出・所得サイドからそれぞれ-0.4%、+1.5%と予測している。これはウォールストリート紙による48人のエコノミストへの10月調 査の平均値(2.5%)よりかなり低い。超短期予測は米経済が7-9月期の+3.5%(前期比年率)成長の後、1%程度の成長率にまでスローダウンしてい るとみている。主な理由は景気刺激策による自動車購入等が終わり、企業も簡単に生産増加、在庫積み増しをしないと考えられるためである。 しかし、市場には前期の実質GDP成長率が市場の予想(3.2%)を上回ったことから景気への楽観的な見方が広がっている。最も良い例は10月の雇用統計 に対する株価の反応である。10月の失業率は1983年6月以来26年振りに始めて10%を超えた。また、非農業雇用者数も9月の219,000人減から 190,000人減へと改善したものの、市場の予想(175,000人減)をかなり下回った。しかし、ダウ株価はその日も上昇し、結局その週のダウは3% 上昇し1万ドル台を確保した。 通常ならば、市場の予想通りに改善していない労働市場に対して投資家はネガティブに反応するが、経済回復に楽観的になりつつある投資家は10月の雇用統計 が好ましくなかったことから、連邦準備理事会(FRB)がこれまでの低金利政策をかなりの間維持せざるをえないと考えるようになった。実際、11月3日 ‐4日に行われたFOMCミーティングのステートメントの中で、FRBは政策金利を0%〜0.25%の間に据え置く期間を延長、また、量的金融緩和策も継 続するとしている。 今週の超短期予測は10-12月期のインフレ率を1.5%程度と予測している。FRBの金融緩和政策の継続に疑問はないが、はたしてそれにより投資家が予 想しているような経済成長率が達成されるかは疑問であり、超短期予測は今のところ、投資家の景気への楽観的な見方がいずれは下方修正されるとみている。 [ [熊坂侑三 ITエコノミー]]
熊坂 侑三

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今月のトピックス(2009年10月)

[ コメンタリー ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2009-10-20

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日米超短期予測(月次)

鳩山新政権は、世界に向けて2020年までに二酸化炭素(CO2)排出量を1990年比25%削減することを宣言した。もちろん、日本単独の努力ではな く、世界が協調・努力してとの条件付きであるが。この宣言のインパクトは大きく、特に大きな影響を受けることが予想される産業界からは大きな反対が表明さ れている。今月のトピックスでは、この宣言の実現可能性を議論するのではなく、議論に向けての新たな見方を提供したい。 前政権のこの問題をめぐる議論のスタンスは、CO2削減率に応じて、そのコストを明示するというものであった。ところが今回は、まず25%削減という目標を設定し、それを実現するためにあらゆる政策を総動員し、日本を環境立国へ導くというスタンスに変わったのである。 さて2007年度のCO2排出量は12億1,270万トンであり、1990年度=100とすると115.5となり、基準年から15%も高い水準である。 図1は日本のCO2排出量の部門別シェアの推移をみたものである。直近の2007年度では、最大の排出部門は産業部門であり、排出量全体の40.3%を占 める。次に、運輸部門(20.6%)、家計部門(15.6%)、業務部門(13.6%)、発電部門(10.0%)の順になる。 図1から、産業部門のシェアはこの間20%ポイント程度低下しているが、依然としてCO2排出の最大のセクターとなっていることがわかる。一方、運輸、 家計、業務部門はそのシェアを拡大させているが、産業部門には及ばないことがわかる。当然この図からすれば、産業部門には最大の削減努力が求められる。た だし、図1は発電部門で発生するCO2を電力の使用量で各部門に按分したものであって、電力部門は登場しないことに注意が必要である。 図2は、エネルギー供給部門と最終消費部門に分けてCO2排出量のシェアを見たものである。この図ではCO2排出の最大の貢献者は発電部門であることが わかる。1990-2007年度のCO2の年平均伸び率は0.9%である。発電部門の伸び率は2.2%であり、全体の伸びへの寄与度は0.8%ポイントと なっている。すなわち、CO2排出の最大の寄与は発電部門ということになる。実は図2による説明がグローバルスタンダードであり、図1による説明は日本独 自のものである。図1による説明では、発電部門の寄与(責任といってもよい)を見えにくくしているといえる。 今後、CO2排出量25%削減を国民的課題として議論する場合は、まず発電部門の役割に十分な注意が向けられなければならない。例えば、再生可能エネル ギーやLNG火力発電のシェアを高める一方で、石炭火力のシェアを低下させることは重要な課題となる。当然、原子力発電のシェアも問題となろう。図2は、 エネルギー供給部門と同時に最終消費部門の役割の議論することの重要性を意味している。すなわち、25%削減の国民的課題はあらゆる政策の動員で解決され ねばならない。 (稲田義久) 日本 <7-9月期は2%台のプラス成長だが、持続性には公的需要の動向が鍵> 10月19日の予測では、7-9月期経済を説明する月次データの約2/3、すなわち、8月のデータがほぼ更新された。支出サイドモデルは、7-9月期の 実質GDP成長率は、純輸出が引き続き拡大し、内需も小幅拡大するため、前期比+0.6%、同年率+2.5%と予測する。10-12月期の実質GDP成長 率は、純輸出が引き続き拡大するが、内需が横ばいとなるため、前期比+0.3%、同年率+1.1%と予測している。この結果、2009暦年の実質GDP成 長率は-5.7%となろう。新政権移行後の日本経済の先行きについて注目が集まっているところであるが、超短期予測は経済成長率は年内緩やかに減速すると みている。ちなみに、実質GDP成長率の市場コンセンサス(ESPフォーキャスト10月調査)は、7-9月期は前期比年率+2.3%、10-12月期は 同+1.3%となっている。超短期予測の見方とほぼ一致している。 7-9月期の国内需要を見れば、実質民間最終消費支出は前期比+0.5%となる。実質民間住宅は同-2.2%、実質民間企業設備も同-2.8%と、民間 投資関連指標はいずれもマイナスながら減少幅は縮小してきている。実質政府最終消費支出は同+0.7%、実質公的固定資本形成は同-2.1%となる。この ため、国内需要の実質GDP成長率(前期比+0.6%)に対する寄与度は+0.2%ポイントとなる。久方ぶりに内需が景気を引き上げる。 気になるのは、これまで景気を下支えしていた公共投資の勢いに陰りが見られることである。建設総合統計によれば、8月の公共工事は前年同月比4.1%増 加し9ヵ月連続のプラスとなったが、伸び率は3ヵ月連続で縮小した。先行指標である公共工事請負金額も7-9月期に前年同期比+11.2%となったが、伸 び率は前期(同+13.0%)からペースが落ちている。新政権での公共工事の縮小は必至であるから、2010年初にかけて景気の二番底の可能性は否定でき ない。 財貨・サービスの実質輸出は同+4.8%増加するが、実質輸入は同+2.1%にとどまる。このため、実質純輸出の実質GDP成長率に対する寄与度は+0.4%ポイントとなる。 主成分分析モデルは、7-9月期の実質GDP成長率を前期比年率+4.5%と支出サイドモデルより高めに予測している。また10-12月期を同+3.7%とみている。 この結果、支出サイド・主成分分析モデルの実質GDP平均成長率(前期比年率)は、7-9月期が+3.5%、10-12月期が+2.4%となり、減速傾向に変化はない。 [[稲田義久 KISERマクロ経済分析プロジェクト主査 甲南大学]] 米国 米国の景気回復に対してかなり楽観的な見方をするエコノミストがでてきた。例えば、エンジェル元FRB理事は2009年7-9月期の実質GDP成長率が 前期比年率4%を超える可能性も示唆している。一方、超短期モデルはグラフに見るように支出・所得両サイドから2%程度の成長率を予想している。 両者の見方の差異は在庫にある。在庫調整が同年4-6月期で完了し、7-9月期の在庫増は実質GDP成長率を1%以上押し上げていると市場は予想してい るようである。一方、超短期予測は、8月までの製造業、卸売業、自動車の在庫統計を更新したが、大幅な在庫調整が7-9月期も行われたと予測している。 7-9月期(4-6月期)の製造業、卸売業、小売業の実質在庫を、それぞれ、-270億ドル(-400億ドル)、-890億ドル(-730億ドル)、 -810億ドル(-510億ドル)と予測している。ただし、超短期モデルは7-9月期の名目財輸入の伸び率を40%超と予測している。しかしこれは、石油 の在庫増にもかかわらず卸売業の在庫減をかなり大きく予想しているというリスクもある。一方、Cash-for-Clunkersプログラムによる自動車 在庫の減少を考えると、小売業における大幅な在庫調整(7-9月期)の可能性は十分にある。 7-9月期の予測を強気にする2つの要因は、実質個人消費支出が前期比年率4%程度伸び、実質住宅投資が同10%程度伸びたことである。一方、4-6月 期においてそれぞれ下落した実質輸出、輸入も7-9月期にはそれぞれ同20%程度の大幅な伸び率となったと思われる。このように、在庫、輸出入の予測に関 して大きな不確実性が残るとき、景気判断にはその他の集計指標を同時にみるのがよい。 10月9日の超短期モデルによる7-9月期の(10-12月期)の経済成長率は以下の通りである。実質GDP:前期比年率+2.0%(同+1.7%)、 実質総需要:同+4.3%(同+1.3%)、実質国内需要:同+2.9%(同+1.6%)、最終需要タイプ1(=GDP-在庫):同+2.5% (同+2.1%)、最終需要タイプ2(GDP-在庫-純輸出):同+3.4%(同+1.9%)。このように、複数の集計指標から景気を判断すれば、 2009年7-9月期、10-12月期の実質GDP成長率をそれぞれ3%、2%程度と想定するのが適切と思われる。 [ [熊坂侑三 ITエコノミー]]
熊坂 侑三

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今月のトピックス(2009年9月)

[ コメンタリー ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2009-09-30

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日米超短期予測(月次)

8月30日に行われた衆議院総選挙で、民主党を中心とする野党勢力が議席の3分の2を確保した。この結果、今後の経済に対する政策アプローチが大きく変 わることになる。今後の民主党の政策運営については、同党のマニフェストを除いて具体的な金額などを盛り込んだ形での発表はまだ行われていない。ここで は、民主党マニフェストの「工程表」から政策運営が経済にもたらす影響を推計しよう。 表1は、民主党のマニュフェストの工程表をベースに、景気対策支出額を見たものである。マニフェストでは2009年度に対して最終(2013)年度にな るほど支出金額は明確になるが、それ以外の年では一部支出金額の支出状況は不明確である。そのため、2010年度から12年度の金額については、工程表を ベースに実現可能性を考慮して推計した。 主な項目は、①子ども手当・出産支援 (同1.3(2013年度時点の所要額5.5兆円)、②暫定税率の廃止(同2.5兆円)、③医療・介護の再生(同1.6兆円)、④高速道路の無料化兆 円)、⑤農業の戸別所得補償(同1.0兆円)などである。要するに家計に対する所得補償型政策が中心となっていることがわかる。 一方、これらの財政支出の財源は、①予算の組み替えによる無駄な歳出の削減(2013年度時点で9.1兆円)、②「埋蔵金」や資産の活用(同5.0兆 円)、③税制見直し(同2.7兆円)によってファイナンスされることになっている(表2参照)。しかし、2010年度からの早急な実施が困難なものもあ る。特に、公共事業のスリム化や税制改革などである。支出財源が確保できない場合は国債発行によって賄われることになる。 以上のような支出と財源の見通しから財政バランスの見通しをまとめると、2010年度、2011年度は支出が拡大する一方で、財源の手当てが間に合わないため、財政赤字が拡大することになる(表3上段)。 GDPに与える影響では、純支出額に着目する必要がある。純支出額の計算には、支出である「埋蔵金」や資産の活用はコストがかからないから考慮しない。 したがって、純支出額は支出措置額から歳出削減額(予算の効率化)・増税額(税制改革)を減じた額となる(表3中段)。またGDP成長率には、この純支出 額の年度間増減幅が影響する(表3下段)。この増減幅が拡大する2010年度、2011年度にはGDP成長率が押し上げられることになる。2012年度、 2013年度には、増税や歳出削減が進み、増減幅が縮小するため、GDP成長率を押し下げることになる。 最後に、この純支出増減幅を基に、関西経済に対する影響を試算しよう(表4)。試算では、GRP成長率に直接寄与する政策として、子ども手当・医療介護 の再生・農業の戸別所得補償・暫定税率の廃止の4つの政策を取り上げて計算した。また工程表の支出額は日本全国を対象とした額であるため、これに関西の世 帯数割合17.1%を乗じて、関西への影響額としている。さらに、関西経済予測モデルの消費関数の長期消費性向0.464を乗じて追加的消費支出金額を計 算している。これを関西のGRP(89.4兆円、2010年度の予測値)と比較する。この結果、2010年度には0.4%程度、2011年度には0.3% 程度のGRP押し上げ効果となる。しかし、2012年度、2013年度には-0.3%、-0.5%とGRPにマイナス効果をもたらすことになる。 以上、経済効果を示した。より詳細な分析のためには、家計調査報告に基づいた所得階層別の分析が必要となろう。民主党政権が考える内需、特に、家計消費 の刺激を起点とする経済成長シナリオにより、どのような成長パスが実現されるのか、今後の政策運営動向に注視しなければならない。  (稲田義久・入江啓彰) 日本 <7-9月期、内需は久方ぶりにプラス成長に転じるも、持続性に疑問> 9月11日発表のGDP2次速報値によれば、4-6月期の実質GDP成長率は前期年率+2.3%となり、1次速報値(同+3.7%)から下方修正となった。 実質GDP成長率下方修正の主要因は、民間企業在庫品増加である。実質民間企業在庫品増加は1次速報値の前期比-2.0%ポイント(寄与度年率ベース) から同-3.1%ポイントへと下方修正された。在庫調整が想像以上に進展していることを確認した。今後は在庫投資の積み上げが期待され、先行きにとっては 悪くない結果である。 9月14日の予測では、8月の一部のデータと7月のデータがほぼ更新され、また4-6月期のGDP統計2次速報値が追加されている。支出サイドモデル は、7-9月期の実質GDP成長率を、純輸出は引き続き拡大し、内需も小幅拡大するため、前期比+0.9%、同年率+3.6%と予測する。 10-12月期の実質GDP成長率を、純輸出は引き続き拡大するが、内需が横ばいとなるため、前期比+0.5%、同年率+1.9%と予測している。この結果、2009暦年の実質GDP成長率は-5.5%となろう。 7-9月期の国内需要を見れば、実質民間最終消費支出は前期比+0.5%となる。実質民間住宅は同-0.8%、実質民間企業設備も同-2.1%といずれも マイナスながら小幅の減少にとどまる。7月の工事費予定額(居住用)と資本財出荷指数は前月比ともにプラスになっており、7-9月期の民間住宅や企業設備 が前期比で安定化する可能性が出てきた。実質政府最終消費支出は同+0.5%、実質公的固定資本形成は同-1.0%となる。このため、国内需要の実質 GDP成長率(前期比+0.9%)に対する寄与度は+0.3%ポイントとなり、久方ぶりに内需が景気を引き上げる。 財貨・サービスの実質輸出は同+5.7%と増加するが、実質輸入は同+1.9%にとどまる。このため、実質純輸出の実質GDP成長率に対する寄与度は+0.5%ポイントとなる。 一方、主成分分析モデルは、7-9月期の実質GDP成長率を前期比年率+3.6%と予測しており、支出サイドからの予測と一致している。また10-12月期を同+3.4%とみている。 この結果、支出サイド・主成分分析モデルの実質GDP平均成長率(前期比年率)は、7-9月期が+3.6%、10-12月期が+2.6%となる。 日本経済は4-6月期以降、内需が小幅ながら緩やかなプラス成長に転じている。しかし、今後は、民主党による補正予算の見直しも含め補正予算の政策効果 が剥落してくるため、経済のプラス成長の持続性には疑問が出ている。2010年度の民主党の消費拡大効果が出る前に一時的にマイナス成長に陥る可能性があ ることを指摘しておく。 [[稲田義久 KISERマクロ経済分析プロジェクト主査 甲南大学]] 米国 グラフに見るように、8月の雇用統計を更新した時点で超短期モデルは2009年7-9月期の実質GDP成長率を+1.3%と予測している。これは2008年4-6月期以来1年振りのプラス成長である。 支出サイドから実質GDP成長率が急速に上昇した主な理由の一つには”Cash-For-Clunkers Program” (エコカー購入促進システム)により、自動車購入が増え実質個人消費支出が増えたことが上げられる。超短期モデルは実質耐久財の個人消費支出が2009年 7-9月期に11.9%(前期比年率)伸びると予測し、個人消費支出全体の伸び率を同+2.0%と予測している。エコカー購入促進システムによる購入が自 動車の在庫減になればその分GDP成長率の増加は相殺されるが、新車の生産につながればGDP成長率は高まる。支出サイドからの経済成長率上昇のもう一つ の大きな理由は実質住宅投資が7-9月期に同9.1%伸びると予想されていることによる。これは7月の民間住宅建設支出が2.3%(前月比)と大幅に上昇 したことによる。実質住宅投資の伸び率がプラスに転じるのは2005年10-12月期以来14四半期振りのことである。 一方、所得サイドからの実質GDP成長率プラス転換の主な理由は2009年4-6月期の統計上の誤差が2,250億ドルと大きくなり、その結果7-9月 期の統計上の誤差も2,280億ドルになると超短期モデルが予測していることである。この統計上の誤差はGDP比率でみると1.6%に相当する。もう一つ の理由は、1-3月期、4-6月期とそれぞれ前期比-14%、同-5%と大きく落ち込んだ賃金・俸給が7-9月期には0%にまで持ち直すと予想されている ことが挙げられる。 しかし、7-9月期経済のプラス成長の持続性には問題が残る。エコカー購入促進システムが8月24日で終了し、今後の個人消費支出の落ち込みが予想され る。また、住宅市場に回復の兆しが見えたものの今度は商業用不動産市場が悪化していることがある。所得サイドにおいても失業率が8月には9.7%と 1983年以来の高い水準になり、遅行指数とはいいながら労働市場の回復にはまだかなりの時間がかかるとみられ、個人消費支出の鍵をにぎる賃金・俸給の堅 調な伸びが今もって期待できない。このように、米国経済は7-9月期に一旦プラス成長に戻るものの、その持続性には多くの懸念が残る。 [ [熊坂侑三 ITエコノミー]]
熊坂 侑三

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今月のトピックス(2009年8月)

[ コメンタリー ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2009-08-19

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日米超短期予測(月次)

関西社会経済研究所は7月30日、岩田一政氏(内閣府経済社会総合研究所所長)と櫨浩一氏(ニッセイ基礎研究所経済調査部部長)をパネリストとして招 き、「世界同時不況からの回復−夜明けは見えたか?」というテーマで景気討論会を行った。政権交代の可能性が高まる中、短期的には政策や景気の見通しにつ いて不確実性が高まるという状況での討論会であった。 各パネリストの議論は、それぞれが得意とする中期、短期、超短期をカバーした非常に内容の充実したものとなった。以下、景気討論会での重要と思われる議 論を紹介する。8月30日には総選挙結果の如何を問わず、今後の景気見通しや経済運営の議論にとって重要と考えられるからである。 内閣府の中期経済見通し 岩田氏は、内閣府試算の最新の中期経済の見通しから3つのシナリオを提示された。3つのシナリオとは、2011年度から毎年消費税率を1%ポイント、累 計で3%、5%、7%の引上げを行った場合の、それぞれの経済成長率と財政の基礎収支(プライマリーバランス)のパスを示したものである。プライマリーバ ランスは、成長戦略と景気回復で2007年度に-1%台まで改善したが、2008年度の大不況と大規模な財政出動で大幅に悪化し、2009年度には -8.1%まで低下すると見込まれるため、2011年度黒字化の目標はすでに放棄された。 今後この3つのシナリオが実現された場合、プライマリーバランスが黒字化する時期は、消費税率引き上げが7%ポイントのケースは2018年度、5%ポイ ント引き上げのケースは2021年度となる。それ以外のケース(3%ないしはゼロ%)では2023年度までに黒字は実現できないようである。図からわかる ように、今回の大不況は、日本のプライマリーバランスの改善を10年程度先送りにしたことになる。 内閣府の試算では、日本経済の成長率のパスは2008-09年度に2年連続の-3%台のマイナス成長の後、2010年度は+0.6%となり、2012年度までは大幅な需給ギャップを埋めるため3%程度の比較的高い成長を経たのち、以降潜在成長率に戻るというものである。 最終目的としての政府債務/名目GDP比が2010年代半ばに安定化し、2020年代に低下するためにも、長期実質金利が低位安定的でなければならな い。岩田氏の指摘によれば、長期金利は生産年齢人口の変化と関係しており、日米とも生産年齢人口がピークアウトする時期にバブルが発生したことから、今後 の日本の生産年齢人口比率が低下することは長期金利安定化の一助となるが、逆に、中国は生産年齢人口が上昇することから、今後バブル発生の可能性は高くな るという。これは、重要なポイントと考えられる。 中国は米国市場に替わる役割を完全に担うことはできない 短期的な視点に戻せば、2009年4-6月期の日本経済の実質成長率は純輸出のリバウンドで前期比プラス成長に転じ、景気の底打ちは確認できそうだが、 年後半は加速ではなく緩やかな回復にとどまる可能性が高い。米国の超短期予測が示すように、マーケットが期待するような回復には所得サイドから疑問が投げ かけられている。日本経済にとって重要な貿易パートナーである米国経済の急回復が期待できないとすれば、年後半の日本経済の回復は緩やかなものにとどまろ う。一方、新興諸国の代表である中国は、足下政策効果があらわれ経済成長率を加速させており、日本の中国向け輸出も前期比で増加している。しかし、公共投 資を中心とする財政政策では民間消費をけん引役とする内需拡大型成長は実現できない。結局、輸出の回復が戻らなければ、中国の高成長は持続可能でないであ ろう。その意味で、日本にとって、中国は米国市場に替わる役割を完全に担うことはできない。 日本経済が、内閣府試算が示す3つのシナリオないしはそれ以外のシナリオをとろうとも、中期成長パスの初期条件として、2010年度の経済パフォーマン スないし景気回復の中身は今後にとって非常に重要な鍵となろう。その意味で、2010年度に効果が剥落する政策の存否については、その効果についての十分 な精査が必要である。(稲田義久) 日本 <4-6月期は5期ぶりのプラス成長に転じるも、年後半は勢いに欠ける> 4-6月期の実質GDP成長率(1次速報値)は前期比年率+3.7%となり、5期ぶりのプラスに転じた。成長率への寄与度(年率)を見ると、国内需要は-2.8%ポイントと成長率を引き下げ、純輸出は+6.5%ポイント引き上げた。 今回の回復の特徴は、景気対策効果と純輸出の大きな寄与である。実質民間最終消費支出は前期比年率+3.1%と3期ぶりのプラスとなり、実質GDP成長 率を1.9%ポイント引き上げた。もっとも所得環境は悪く、実質雇用者報酬は同-6.7%と2期連続のマイナス。にもかかわらず民間最終消費支出が伸びた のは、政策効果(エコポイント制度、自動車取得促進税制や補助金)による消費性向の一時的な高まりが影響している。 一方、投資は住宅、企業設備ともに不調である。実質民間住宅は同-33.0%と2期連続のマイナスである。実質民間企業設備も同-16.1%と5期連続 で減少した。この結果、民間住宅と民間企業設備で実質GDP成長率を3.7%ポイント引き下げたことになる。また、実質民間在庫品増加は-2.1%ポイン ト成長率を押し下げた。大幅に在庫調整が進んだといえよう。 公的需要は同4.7%増加し、実質GDP成長率を1.1%ポイント引き上げた。うち、実質公的固定資本形成は同36.3%増加し、寄与度は+1.4%ポイントである。 外需をみると、実質純輸出は大きく経済成長率に貢献した。財貨・サービスの実質輸出は同+27.9%増加する(寄与度+3.2%ポイント)一方で、同実質輸入は同-18.9%(寄与度+3.3%)減少したためである。 デフレータをみると、GDPデフレータは前期比-1.1%と3期ぶりの下落となった。需給ギャップの急激な拡大を背景にデフレ圧力が強まっている。 今週の支出サイドモデル予測は、7-9月期の実質GDP成長率を、純輸出は拡大するが、民需(特に、民間住宅、民間企業設備)が不調となるため、前期比 年率+1.6%と予測している。10-12月期の実質GDP成長率も、純輸出は引き続き拡大するが、内需が引き続き悪化するため、同+0.6%と予測して いる。このように2009年後半の経済は、4-6月期のプラス転換にもかかわらず、勢いに欠ける。この結果、2009暦年の実質GDP成長率は-5.4% となろう。 7-9月期の国内需要を見れば、実質民間最終消費支出は前期比+0.3%となる。実質民間住宅は同-3.7%と3期連続のマイナスとなる。実質民間企業 設備も同-5.3%と6期連続のマイナスとなる。実質政府最終消費支出は同+0.5%、実質公的固定資本形成は同+0.2%となる。このため、国内需要の 実質GDP成長率(前期比+0.4%)に対する寄与度は-0.3%ポイントとなる。 財貨・サービスの実質輸出は同5.4%増加するが、実質輸入は同横ばいとなる。このため、実質純輸出の実質GDP成長率に対する貢献度は+0.7%ポイントとなる。 [[稲田義久 KISERマクロ経済分析プロジェクト主査 甲南大学]] 米国 <所得サイドから懸念される米国経済への楽観的見方 > 6月の始め頃から米国景気の減速が緩やかになってきたことがわかってきた。このため、超短期予測は、6月から7月の始めにかけて米国景気に対して楽観的 な見方をするようになった。しかし、その後、超短期予測の改善は進まず、支出・所得サイドから4-6月期の実質GDP経済成長率を最終的には前期比年率 -1.1%と予測した。7月31日に発表された4-6月期の実質GDP速報値によれば、成長率は同-1.0%となった。実績は、超短期予測に近かったもの の、市場コンセンサスの同-1.5%よりマイナス幅が小さかった。このため、市場・エコノミスト達の間ではリセッションが2009年1-3月期に底を打 ち、これから景気が回復に向かうであろうという楽観的な見方が広まった。実際、多くのエコノミスト達は2009年7-9月期の経済成長率を+2%近くに上 方修正をしている。 発表された経済統計が良くなくとも、それが市場のコンセンサスより良かった場合、市場・エコノミストにある種の楽観的な見方が生まれることがある。今 回、このことが雇用統計においても生じた。市場は7月の失業率が前月より0.1%ポイント上昇し9.6%になると予想していたが、結果は前月より0.1% ポイント低い9.4%となった。7月の雇用減も市場のコンセンサスをかなり下回る数字となった。このため、株価の高騰にみるように、市場、エコノミストの 間に景気回復に対する楽観的な見方が急速に広まってきた。更に、消費者が政府の補助を得てエネルギー効率のよい自動車に買い換え る”Cash−for−Clunkers Program(エコカー購入促進システム)" が予想以上に好調なこともエコノミスト達の楽観論を支えることになっている。 8月10日の超短期予測では7月の自動車の小売販売統計が更新されていない。すなわち、”Cash−for−Clunkers Program"の経済への影響を考慮できていないことから、7-9月期の成長率予測は過小推計の可能性があるが、問題はグラフに見るように、所得サイド からのGDP予測が下降トレンドを示していることにある。所得サイドから景気回復がみられなければ、持続的・堅調な米景気の回復・拡大は難しい。その結 果、今の景気回復への楽観的な見方は期待はずれに終わることになるであろう。 [[熊坂侑三 ITエコノミー]]
熊坂 侑三

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今月のトピックス(2009年7月)

[ コメンタリー ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2009-07-16

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日米超短期予測(月次)

<続:本当に1-3月期が景気の底か?> 【センチメントは回復したが・・・】 7月1日発表の日銀6月短観によると、最も注目される業況判断指数(DI)は、大企業製造業で-48となり、前回調査から10ポイント改善した。前期比 での改善は2006年12月調査以来2年半ぶりである。6月短観の業況判断DIは景気の底打ちを示唆するものであるが、その水準が極めて低く、大幅な需給 ギャップが存在しており、自律的な回復に疑問を抱かせる結果といえよう。 6月調査の年度計画を見ると、2009年度の売上高計画は全規模・全産業ベースで前年比-9.5%と3月調査(-5.7%)から下方修正された。一方、2009年度経常利益計画は前年比-16.4%の減益が見込まれており、前回調査(-9%)から大幅下方修正された。 生産設備の過剰感の拡大と企業業績の悪化で、設備投資計画は大きく下方修正された。2009年度の投資計画(全規模・全産業、ソフトウェアを除き土地投 資額を含む)では、前年比-17.1%と3月調査から4.2%ポイント下方修正された。2009年度前期は前年比-15.7%、後期は同-18.4%と後 半に減少幅の改善は見られない。 また、6月の景気ウォッチャー調査によると、街角の景況感を示す現状判断DIは42.2となり、前月より5.5ポイント上昇した。6ヵ月連続の改善。前年比では12.7ポイント上昇し、2ヵ月連続の改善となった。 景気ウォッチャー調査では、景気は、「良くなっている」から「悪くなっている」の5段階で評価される。また判断DIは5つの評価点と評価区分のウェイトの加重平均で計算される。 6月は、「やや良くなっている(15.5%)」と「変わらない(49.4%)」と答えた割合は、前月からそれぞれ3.3%ポイント、7.9%ポイント上 昇しており、一方、「やや悪くなっている(20.9%)」と「悪くなっている(13.5%)」と答えた割合は、それぞれ3.6%ポイント、7.7%ポイン ト低下している。「やや悪くなっている」と「悪くなっている」の合計が前月から11.3%ポイント低下しており、その大部分は「変わらない」に流れてお り、景気ウォッチャー達は景気が最悪期を脱したが大きく改善したわけではないとみている。 【4-6月期成長率予測、支出サイドモデルと生産サイドモデルのギャップは鉱工業生産の好調が原因】 今月の日本経済見通しで述べているように、支出サイドモデルによれば、4-6月期の実質GDP成長率は、純輸出は拡大するが、民需(特に、民間住宅、民 間企業設備)が不調となるため、前期比年率-4.2%と予測される。一方、主成分分析(生産サイド)モデルは、4-6月期の実質GDP成長率を 同+2.0%と予測している。なぜ両モデルの予測が乖離するのであろうか。 支出サイドモデルでは、GDP支出各項目を予測し、それを積み上げて成長率を予測する。そこで、4-6月期のGDP項目の予測を詳細に見てみよう。 まず民間需要。実質民間最終消費支出は前期比+0.9%と、1-3月期の-1.1%から大きく回復する。5月の消費総合指数は、前月比0.6%上昇し 3ヵ月連続のプラス。補正予算による民間消費の底上げ効果が徐々に出てきているようである。家計調査報告によれば、勤労者世帯のうち定額給付金を受け取っ た割合は、4-5月累計で32.5%となっており、実収入を一時的に押し上げていることがわかる。もっとも、先行きについては家計の所得制約が強まるた め、民間消費の持続的拡大は期待できないであろう。実質民間住宅は同-8.7%と2期連続のマイナスとなる。実質民間企業設備も同-8.5%と5期連続の マイナスとなる。このように、民需では民間家計消費支出は好調であるが、民間投資が極めて弱いため、実質GDP成長率(前期比-1.1%)に対する寄与度 は-1.4%ポイントとなる。 一方、公的需要は成長に貢献している。実質政府最終消費支出は同+0.4%、実質公的固定資本形成は同+5.3%となるため、成長率への寄与度は+0.3%となる。 純輸出は景気回復に貢献している。財貨・サービスの実質輸出は同1.3%減少するが、実質輸入も同2.1%減少する。このため、実質純輸出の実質GDP成長率に対する寄与度は+0.1%ポイントとなる。 生産サイドモデルでは、15の変数からなる主成分を用いて実質GDP成長率を予測する。すなわち、鉱工業生産指数、家計消費支出、小売業売上高、工事費 予定額(居住専用)、民間機械受注、公共工事請負金額、給与総額、交易条件、イールドカーブ、国内企業物価指数、消費者物価指数等である。このうち、5月 の鉱工業生産指数(前月比+5.9%)は3ヵ月連続のプラスと好調で、これが大きく成長率予測を引き上げている。支出サイドモデルで使用される資本財出荷 指数は5月に前月比7.5%下落し、8ヵ月連続のマイナスとなったのとは好対照である。 以上が、両モデルの予測値が乖離する主たる理由である。今後支出サイドモデルがプラス成長に転じるきっかけは、6月の貿易統計と公共投資の結果となろう。(稲田義久) 日本 <回復力が弱い日本経済:鉱工業生産は3ヵ月連続プラスだが、見方は依然慎重> 7月13日の予測では6月の一部と、5月のほぼすべてのデータが更新された。4-6月期のGDPを説明する3分の2の月次指標が出揃ったことになる。 支出サイドモデルは、4-6月期の実質GDP成長率を、純輸出は拡大するが、民需(特に、民間住宅、民間企業設備)が不調となるため、前期比 -1.1%、同年率-4.2%と予測している。7-9月期の実質GDP成長率は、内需の減少幅が縮小するが、純輸出が悪化するため、前期比-1.6%、同 年率-6.1%と予測している。 一方、主成分分析(生産サイド)モデルは、4-6月期の実質GDP成長率を前期比年率+2.0%、7-9月期を同-2.6%と予測している。 この結果、支出サイド・主成分分析モデルの実質GDP成長率(前期比年率)の平均は、4-6月期が-1.1%、7-9月期が-4.3%となる。1-3月 期の-14.2%の大幅マイナスから、4-6月期はマイナス幅が大きく縮小するが、7-9月期に再び拡大するというパターンである。この2四半期いずれも 回復力が弱いのが我々の予測の特徴である。 前月の予測と異なる点は、支出サイド、生産サイドいずれも実質GDP成長率が上方に修正されたことである。特に、生産サイドからの成長率予測 は+2.0%と前月からプラスに転じた。主成分分析モデルでは15の変数が使用されているが、うち鉱工業生産指数の好調がその要因となっている。実際、5 月の鉱工業生産指数は前月比5.9%上昇し、3ヵ月連続のプラスとなった。輸送機械工業、電子部品・デバイス工業等が上昇し、経済対策の効果が表れてきた ようである。たしかに経済は大幅なマイナス成長からのリバウンドで最悪期を脱したといえよう。しかし、問題は回復の持続力である。 7月9日に発表されたESPフォーキャスト調査によると、4-6月期のコンセンサス予測は前期比年率+1.98%となっている。これは主成分分析モデル と同じ予測結果である。いずれも、好調な鉱工業生産指数の影響を受けているようである。しかし、経済全体で見た場合、景気回復にはまだまだ時間がかかり、 その判断には慎重にならざるを得ない。 [[稲田義久 KISERマクロ経済分析プロジェクト主査 甲南大学]] 米国 7月3日の超短期予測は、6月の雇用統計までを更新した結果、グラフに見るように6月に入り緩やかではあるが上昇トレンドを形成し始めた実質GDP経済 成長率を僅かに下方に修正した。成長率だけでなく、実質総需要、実質国内需要、実質最終需要のようなアグリゲート指標においても同じようにわずかながら下 方修正となった。しかし、グラフに見るように4-6月期の経済成長率は2008年10-12月期、2009年1-3月期の前期比年率-5%を下回る大きな マイナス成長から同-1%程度にまで回復していることが分かる。アグリゲート指標で2009年4-6月期の経済成長率をみても-2%〜0%となっており、 前2四半期のような大きな落ち込みにはなっていない。 成長率はいまだマイナスであるが、改善の様子は、製造業により明確に現れている。フィラデルフィア、リッチモンド、カンザス・シティー、ダラス、シカゴ の各連銀はそれぞれの地域の製造業のデフュージョンインデックスを毎月発表するが、それらの全てが2008年末までに底をうち、その後改善の傾向を示して いる。6月の時点で製造業の活動が拡大を示しているのはリッチモンド、カンザス・シティーの両連銀地域だけであるが、他の連銀地域では製造業活動のこれま での大きな縮小が急速に小さくなっている。シカゴ連銀の全米活動指数、ISM製造業指数をみても、2009年に入り製造業活動の縮小が急速に改善している ことがわかる。このように、米国経済においては製造業が最悪期から改善し始めた状況にあるといえる。 しかし、6月の雇用統計で懸念されるのは景気先行指標としての平均週労働時間が0.3%減少したことである。この指数は3月に-0.6%と大きく下落し た後、4月、5月は横ばいとなったが、その後の景気回復により上昇することが予想されていた。7月3日の超短期予測では7-9月期のアグリゲート指標を含 む成長率を-2%〜0%と4-6月期と同じ範囲に予想しており、米景気の回復(プラス成長)にはまだまだ時間がかかると思われる。 [[熊坂侑三 ITエコノミー]]
熊坂 侑三

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今月のトピックス(2009年6月)

[ コメンタリー ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2009-06-15

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日米超短期予測(月次)

<本当に1-3月期が景気の底か?> 【景気は1-3月期に底打ち?】 この数週間、日本経済は1-3月期に底打ちしたのではないかという意見が民間エコノミストの間で主流となりつつある。政府や日銀からもそのようなコメン トがなされ、株価も1万円台をつけ先行きの明るさを示唆しているかのようである。今月の日本経済の見通しで示したように、現時点でわれわれの超短期予測は この見方に対して慎重になっている。以下、その理由を示そう。 【月次データの結果はミックス】 最近の経済指標を一瞥すれば、”景気底打ち”との見方を支持できそうである。鉱工業生産指数は3月、4月と2ヵ月月連続して前月比プラスを記録した。ま た好調な生産、出荷の影響で、4月の一致指数(CI)は前月比1.0ポイント上昇し、11ヵ月ぶりの改善となった。単月では判断しがたいが、これらは景気 の底打ちを示唆するデータといえよう。4月の輸出数量指数は前月比+10.3%と2ヵ月連続で上昇した。輸出は3月、4月に底打ちしたようである。 またセンチメントが大きく改善している。5月の消費者態度指数は、5ヵ月連続で前月比プラスとなり、前年比でも30ヵ月ぶりの改善となった。5月の景気ウォッチャー調査でも、現状判断DIは5ヵ月連続の前月比改善となり、前年比でも2ヵ月連続のプラスとなった。 このように、全体的にみると生産や出荷指数は2ヵ月連続で改善している。しかし、財別に見ると違う姿がうかがわれる。4月の資本財出荷指数は前月比 -10.1%低下し、7ヵ月連続のマイナスとなった。民間企業設備の基調は非常に弱い。また4月のコア機械受注は前月比-5.4%と減少し、2ヵ月連続の マイナスとなった。民間企業設備の先行きも明るくない。 たしかに、消費者センチメントの悪化は止まり改善の方向に進んでいるが、最終需要の勢いは極めて弱い。またデフレ圧力の高まりで、今後1年の物価につい て、横ばいないし下落と見る消費者の割合は、初めて50%を超えた。景気ウォッチャーの見方でも、景気を「やや悪くなっている」と「悪くなっている」と評 価する割合は全体の5割弱もあることに注意しなければならない。これらはいずれも民間消費を押し上げるにはインパクトに欠ける。 月次データの結果には良いものと悪いものとが入り交ざっており、同じデータでも両面が垣間見られる。景気回復期のデータの特徴といえよう。たしかに、この時期、景気診断は非常に難しいが、具体的でなければならない。 【超短期予測の見方】 われわれの超短期モデル予測の特徴を一言でいえば、”Go by the Numbers”である。予測において、月次データと四半期GDPを統計的にリンクしているのである。したがって、毎週、具体的に数字で示すことができ る。現時点では、4月の実績と5月、6月の月次データの予測値からGDPを予測している。今月の日本経済の見通しで示したように、4-6月期予測の特徴 は、純輸出の前期からの減少幅が縮小傾向にあるが、民間需要、特に、民間住宅と民間企業設備が弱い点である。今後2ヵ月で、公的需要と純輸出の回復が、ど こまで民間需要の弱さを相殺できるかが、実質GDP成長がプラスに転換できるかのポイントになる。たしかに、景気は改善の方向にあるが、経済がプラス成長 に転換しているかの判断は難しい。現時点での民間エコノミストの見方は、好調な鉱工業生産統計の影響を大きく受けていると思われる。鉱工業生産の経済全体 に占めるシェアは高々20%であることに注意しなければならない。〔稲田義久] 日本 <マーケットは1-3月期が景気の底、超短期予測は慎重> 6月11日発表のGDP2次速報値によれば、1-3月期の実質GDP成長率は前期比年率-14.2%となり、1次速報値(同-15.2%)から1%ポイ ントの上方修正となった。この結果、2008年度の実質GDP成長率は1次速報値の-3.5%から-3.3%へと上方修正された。 実質GDP成長率上方修正の主要因は、民間企業設備及び民間在庫品増加である。実質民間企業設備は1次速報値の前期比-10.4%から同-8.9%へと 上方修正され、実質GDP成長率に対する寄与度は、-1.6%ポイントから-1.3%ポイントへと0.3%ポイント上昇した。また民間在庫品増加も1次速 報値の-0.3%ポイント(寄与度ベース)から-0.2%ポイントへ上方修正された。 6月15日の予測では、1-3月期GDP2次速報値と12日までの月次データが更新された。支出サイドモデル予測によれば、4-6月期の実質GDP成長 率は、純輸出の減少幅は縮小するが、民需(特に、民間住宅、民間企業設備)が不調となるため、前期比-1.4%、同年率-5.5%となる。 7-9月期の実質GDP成長率は、前期比-2.5%、同年率-9.7%と予測している。実質GDP成長率のマイナス幅が7-9月期に拡大するのは、内需 の減少幅は縮小するが、実質輸入の大幅増加により純輸出が再び悪化するためである。足下の輸入物価の大幅下落の影響を受け、7-9月期の輸入物価予測値が 大幅下落するため、実質輸入の予測値が上振れする。 主成分分析モデルは、4-6月期の実質GDP成長率を前期比年率-2.6%と予測している。また7-9月期を同-6.2%とみている。 支出サイド・主成分分析モデルの実質GDP平均成長率(前期比年率)は、4-6月期が-4.1%、7-9月期が-7.8%となる。図から明らかなように、この4週間、4-6月期の予測は上昇トレンドにあるが、依然としてマイナス成長にとどまっている。 一方、別のアグリゲート指標である実質総需要(国内需要+輸出)の動きをみれば、4-6月期は前期比年率-4.5%、7-9月期同-3.8%と減少幅は緩やかに縮小している。このように成長率のマイナス幅は縮小の傾向にあるが、依然としてマイナス領域にある。 マーケットでは、1-3月期が景気の底(したがって、4-6月期がプラス成長)という見方が広まっているが、超短期予測はそれほど楽観的ではない。 [[稲田義久 KISERマクロ経済分析プロジェクト主査 甲南大学]] 米国 6月5日の超短期予測では、同日に発表された5月の雇用統計までを更新している。グラフからわかるように、4月22日以来の実質GDP成長率の下降トレ ンドが止まり、上昇トレンドへの反転の可能性を示した。これはGDPのみならず、総需要、国内需要、最終需要などの他のアグリゲート指標についても同様に 見られた。6月5日の超短期予測の1回だけの予測結果によって景気の転換点を判断するには無理があるが、これまでの深刻な景気後退が緩やかになってきたこ とは認めてよいだろう。マーケットでは、5月の雇用減がコンセンサスの525,000人よりかなり低い345,000人となったことから、リセッションが 終結に向かいつつあるとの楽観的な見方がでてきた。 しかし、景気先行指標としての平均週労働時間は、4月の33.2時間から5月には33.1時間へと減少した。もちろん、景気の遅行指標としての失業率は 今もって上昇を続けており5月には9.4%にまでなった。これは1983年8月以来の高さである。さらに、雇用減少は18ヵ月連続して続いている。これは 1981-82年のリセッション時と同じ記録である。 このように労働市場の停滞を反映して、超短期モデルによる賃金・俸給の予測は、今期・来期とそれぞれマイナスの伸びを予想しており、個人消費支出の増加 に期待がもてない。しかし、6月5日の超短期予測では、4月の所得サイドの統計を更新することによって、政府から個人への移転所得の急増、個人の税支払い の減少が予測され、個人所得が今期、来期にそれぞれ1.9%、1.7%伸びると予測している。すなわち、景気刺激策の個人所得への効果がでてくる。一方、 最近の消費者センチメント・コンフィデンスの急速な高まりを考えると、個人所得の増加が個人消費の増加に結びつく可能性も高い。そうなれば、今回の超短期 予測で示された景気の転換点がより現実的となるだろう。 [[熊坂侑三 ITエコノミー]]
熊坂 侑三

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今月のトピックス(2009年5月)

[ コメンタリー ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2009-05-22

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日米超短期予測(月次)

<2009年度補正予算のマクロ経済への効果とその含意: アンケート調査に基づく検討> 【はじめに】 関西社会経済研究所(KISER)では、麻生内閣による経済危機対策についてアンケート調査(ウェブベース)を行い、5月13日に速報結果を報告した。一 方、5月20日発表された1-3月期の実質GDP(1次速報値)は前期比年率-15.2%と戦後最大の落ち込みとなった。これをうけて、KISERは26 日に日本経済の四半期見通しを発表する。これまで財政・金融政策の効果をマクロモデルのシミュレーションを通じて分析してきたが、より正確を期すために、 昨年以来、マクロ・ミクロの両アプローチから検討している。今回のアンケート結果のミクロ情報がマクロモデル分析に援用される。本コラムでは、先般発表し たアンケート調査結果を精査し再検討した結果から、その政策効果や含意に焦点を当ててみよう。 【アンケート結果の精査と政策効果の推計】 アンケート調査では、経済危機対策(補正予算)のうち、低炭素革命関連、(1)エコカー購入への補助、(2)グリーン家電普及促進、(3)太陽光発電システム購入への補助、(4)住宅などの購入にかかわる贈与税の減免などを取り扱った。 補正予算(財政政策)の効果により発生する需要の推計は、基本的にはアンケートによる回答率に母集団である世帯数(エコカーは保有台数)を乗じて計算し ている。1,000というサンプルから出来るだけ正確に母集団の行動を推計するため、速報発表後に回答率の精査を行うとともに母集団の選択にも注意を払っ た。さらに、政策に関係なく購入する予定者の割合から潜在的な需要を割り出し、それが業界の最近の販売量と大きく相違しないかチェックも行っている。 1.エコカー 今回の精査では、車を持っている人のうち(車歴13年以上90、13年未満631)、今後1年以内の車の購入予定がないと答え、さらに、新車購入の予定 はなかったがこの政策により新車を購入すると答えた人(車歴13年以上3、13年未満16)のみをカウントした。この比率を車歴13年以上、13年未満の それぞれの台数に乗じる。ちなみに、2008年3月末の乗用車登録台数は4,147万台(車歴13年以上817万台13年未満3,330万台)である。 スクラップ促進策とエコカー減税による追加的な需要創出効果は、合計、111.7万台となる。これに1台あたり200万円(インサイト、プリウスの最も安いランクの価格を参考とする)をかけると、約2兆2,334億円が政策効果となる。 2.グリーン家電 現在グリーン家電(テレビ、冷蔵庫、エアコン)のいずれも購入予定はないが、制度が実施されるならエコ家電を購入したいと答えた人の中で、それぞれのエ コ家電を購入すると答えた人のみが今回の政策による追加的購入の該当者とみなしている。全サンプルに対する割合は、テレビは8.5%、エアコンは 6.6%、冷蔵庫は7.0%である。この割合を2009年3月時点の世帯数(労働力調査)に乗じて追加需要を、さらに当該エコ家電の平均単価を乗じて金額 を推計している。エコ家電のうち、テレビとエアコンについては全世帯数を母集団としているが、冷蔵庫については2人以上の一般世帯を母集団としている。 グリーン家電普及促進策による追加的な需要創出効果は、合計、1,010.4万台となり、約1兆480億円が政策効果となる。 3.住宅用太陽光発電システム 2005年国勢調査によると、全世帯4,906万世帯のうち、持家一戸建の世帯は2,539万世帯である。全世帯数は、直近2009年3月時点には、 5,059万世帯になっている。全世帯数の伸び率から、直近の持家一戸建数は2,618万戸と推計できる(2,539×5,059/4906)。この世帯 数が補助金対象になる。補助金対象者のうち、アンケートで太陽光発電システムをぜひ設置したいと答えた人の割合(24/494=4.9%)をかけると、 128.3万戸となる。 これに実現可能性バイアスを考慮する。一戸建住宅を所有していると答えた人と太陽光発電システム補助金制度を利用したことがある、と答えた人の比率は 5.5%(=25/458)である。これに直近の持家一戸建推計数2,618万戸をかけると、142.9万戸となる。しかし実際には、1997-2005 年度の累積設置戸数は25.3万戸程度で利用実績は小さい(財団法人新エネルギー財団のデータ調べ)。すなわち、17.7%(=25.3/142.9)し か実際には設置されていないことになる。 これを修正係数とすると、アンケートベースの128.3万戸に17.7%をかけた22.7万戸が新しく太陽光発電設備を設置する戸数になる。結局、250万円/戸×22.7万戸=5,675億円が追加的な需要効果と推計できる。 最後に、贈与税制度の拡充による住宅投資創出効果をアンケートから推計しようとしたが、質問が正確に理解されていない可能性があり、今回は推計しなかっ た。グリーン家電や乗用車のような耐久消費財については、経済条件が多少変化しても購入意思が実現される可能性は高いが、住宅のような高額な買い物につい ては別物であると判断した。この政策の効果の推計には不確実性が付きまとうためである。 【アンケート結果の経済政策への含意】 以上の推計結果は、速報の段階よりはスケールダウンされたが、われわれは経験上確度の高い結果であると考えている。低炭素革命関連の補正予算により、民 間最終消費支出に3兆8,489億円の追加需要が2009年度に発生すると考えられる。2008年度の民間最終消費支出は290.6兆円であるから、民間 最終消費支出を1.3%引き上げることになる。経済全体では0.7%程度の引き上げとなろう。 もっともこのアンケートは4月時点での経済情勢にもとづく消費者の追加需要を推計していることに注意しなければならない。最近発表されている夏のボーナ スの予測を見れば、前年比20%程度の減少を避けられないようである。大型の耐久消費財(big ticket items)の購入にはボーナスが決定的に重要である。これからは所得制約が強まることがはっきりしているから、ここで示した推計には上方バイアスがか かっている可能性があることを指摘しておこう。 最後に、低炭素革命関連の補正予算の効果で2009年度に発生する追加需要は2010年度には消滅することを忘れてはいけない。ちょうど消費税引き上げ の駆け込み需要と同じである。その結果、2009年度には民間最終消費支出は成長促進要因となるが、2010年度には0.7%程度の抑制要因に転じるので ある。仮にその部分を世界経済の回復による外需が相殺してくれれば、日本経済は大不況からうまく脱出できることになる。結局、外需頼みの回復といえよう。 景気回復はダブルディップ型になる可能性が高いことを指摘しておこう。 (稲田義久・入江啓彰) 日本 <4-6月期日本経済、楽観は禁物> 5月20日に発表された1-3月期GDP1次速報値によれば、同期の実質GDPは前期比-4.0%、同年率-15.2%と前期(-14.4%)を上回る 大幅なマイナスとなった。下落率は戦後最悪となり、昨年4-6月期以来4四半期連続のマイナス成長を記録した。この結果、2008年度の成長率は -3.5%となった。実績は直近の超短期モデル予測(支出サイドモデル、主成分分析モデルの平均値:-17.4%)やマーケットコンセンサス予測(ESP フォーキャスト:-15.9%)を小幅下回る結果となった。超短期モデル予測の動態を見れば、2月の月次データが利用可能となった2月末の予測において は、すでに-14%程度の大幅な成長率予測へ下方シフトが起こっている。超短期予測は2ヵ月程度早く大幅落ち込みを予測できたことになる。 1-3月期の成長率が戦後最大の落ち込み幅となった主要因は、輸出の急激な落ち込みと低調な民間需要(民間最終消費支出と民間企業設備)である。日本の 景気の落ち込み幅は、他の先進国、米国(年率-6.1%)やEU(約年率-10%)のそれを大きく上回っている。これは、輸出に大きく依存した日本経済成 長モデルの脆弱性を引き続き示したことになる。 ただ、3月には生産や輸出が前月比でプラスに転じたことにより、マーッケトでは4-6月期は前期比でプラス成長になる可能性がささやかれている。 1-3月期のGDPを更新した今週の支出サイドモデル予測によれば、4-6月期の実質GDP成長率は、内需と純輸出が引き続き縮小するため、前期比-1.9%、同年率-7.5%と予測される。前期よりマイナス幅は縮小するものの依然としてマイナス成長が続くとみている。 4月の多くのデータが利用可能ではなく、予測モデルでは時系列モデルによる予測値を用いているため、今回のようにほとんどデータが急激な下方トレンドを 示している状況では転換点の予測は後ずれする。4月のデータが利用可能となれば、実質GDP成長率のマイナス幅が縮小することは予想できるが、プラスに転 じるかについては次回の予測を待ってみたい。プラス要因として補正予算の効果が期待できるが、新型インフルエンザ等マイナスの要因もあるからである。 [[稲田義久 KISERマクロ経済分析プロジェクト主査 甲南大学]] 米国 米景気に対して注意深いながらも楽観的な見方が広まってきた。最も良い例は5月5日のバーナンキFRB議長の議会両院経済委員会での証言である。彼は  ”昨年秋以降の急激な景気悪化のペースがかなり緩やかになってきた”とコメントをし、景気が2009年4-6月期において安定化することを示唆した。確 かに、最近の新規失業保険申請件数の増加はピークを打ち、雇用減少の緩和、製造業の平均週労働時間の上昇、NAHB(全米住宅建設業者協会)住宅市場指数 の1月以降の反転している。景気後退の象徴となっていた労働市場・住宅市場のこれ以上の悪化が止まる兆候をみて、マーケットは彼の証言を受け入れている。 市場エコノミストの4-6月期経済成長率の予測は-0.5%から-1.5%の範囲にある。これは今週の超短期モデルの予測値と近い(前期比年率-1.1%)。 景気判断するのにトレンドが重要である。ミシガン大学の消費者コンフィデンス指数、特に将来指数は2月の50.5から急速に上昇し始め、6月には 69.0にまでなっている。グラフが示すように、超短期モデル予測も3月6日の予測から4月24日の予測まで、4-6月期実質GDP伸び率の予測値が緩や かな上昇トレンドを示し、米景気の安定化を示していた。しかし、5月1日以降になるとこれまでの緩やかな上昇トレンドが急速に下降トレンドに転換し始め た。超短期モデルの予測が景気の転換点を示すのに少なくとも市場より1ヵ月早いことが理解できる。今後の超短期予測にもよるが、おそらく1ヵ月後には、" 第2四半期における景気安定化”という注意深い楽観的な見方が幾分悲観的な見方に変わる可能性が高い。 [[熊坂侑三 ITエコノミー]]
熊坂 侑三

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今月のトピックス(2009年4月)

[ コメンタリー ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2009-04-20

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日米超短期予測(月次)

<中国の財政刺激策は関西経済にとって救世主となるか?> 関西経済予測のアウトライン:2009-2010年度 関西社会経済研究所(KISER)は2月22日、10-12月期GDP1次速報値を織り込んだ第77回景気予測を発表した(HP参照)。今回われわれは、日本経済予測と整合的な形で、関西経済についても予測を行った。ベースラインを要約すれば、以下の様である。 関西の実質GRP成長率は2009年度▲3.2%、2010年度+0.7%と予測する。第77回景気予測では、日本経済の実質GDP成長率について 2009年度▲3.7%、2010年度+1.5%と予測されていることから、関西経済は、日本経済と比較して落ち込み幅は緩やかに留まるが、回復局面では スピード感に欠く、といった予測のストーリーである。 需要項目の中で、特徴的な予測結果となっているのは企業設備投資である。2009年度▲13.6%、2010年度▲0.8%と予測している。ただし、大阪湾ベイエリア地域での環境関連投資が進めば、上ぶれする可能性があることに注意しておこう。 関西経済にとっての中国の役割 また、輸移出については、2009年度▲2.6%、2010年度+1.6%と予測している。関西の輸出においては、アジア、特に中国が大きな役割を担っ ている。ここで、関西における輸出構造を中国を中心に確認しておこう。下図は2008年における関西の輸出相手地域のシェアを示したものである。関西の輸 出16.5兆円のうち、アジアは約10兆円で6割を占めており、特に中国はその3分の1(3.3兆円)を占めている。中国に対する輸出を品目別にみると、 電気機器や原料別製品といった品目の割合が高い(それぞれ32.1%、19.4%)。一方、輸送用機器はあまり輸出されておらず、ウェイトが低い (1.0%)。 中国の財政刺激策の大きさ 最近、中国の財政刺激策にスポットライトが当っている。ただし、財政規模4兆元が一人歩きをしている感がある。この規模の財政刺激策が実現した場合、ど の程度の経済拡張効果があるか見てみよう。2008年の名目GDPが30.067兆元であるから、4兆元は13.3%に相当する規模である。仮に乗数(国 民所得の拡大額÷有効需要の増加額)を1.5とした場合、6兆元の追加的な需要となり、名目GDPを約20%引き上げるという計算になる。 ここで注意が必要である。意外と看過されているのは、この財政支出期間が2年を目処にしており、一部は昨年末から前倒しされていることである。なかには 単年度で4兆元が支出されてその効果を計算していると読める分析もある。それにしても、4兆元が仮にすべて真水として支出された場合、1年間で名目GDP を最大約10%押し上げる効果をもつと考えてよい。 中国の財政刺激策は関西経済にとって救世主となるか われわれは関西経済の予測とともに、中国経済の実質成長率がベースラインから加速した場合、関西経済に与える効果(中国経済高成長ケース:シミュレー ション1)を計算している。ベースラインでは中国の実質GDP成長率を2009年+6.2%、2010年+8.3%と想定しているが、これが両年にわたっ て8.5%にシフトアップするケースをシミュレーションしている。 シミュレーション結果によれば、中国経済が政府の目標に近い成長率(ここでは8.5%)を実現できた場合、関西経済の輸出を2009年度0.3%、 2010年度0.42%拡大するにとどまる。金額(2000年実質価格ベース)にして、それぞれ、336億円、479億円である。実質GRPは、2009 年度0.03%、2010年度0.05%の増加にとどまる。金額にしてそれぞれ283億円、411億円である。意外と効果は小さいのである。 KISERの関西経済モデルでは実質輸出関数が推計されている。所得弾力性は0.864、価格弾力性は-0.651となっている。所得変数としては、中 国、米国、EUの実質GDPを2005年の3ヵ国の輸出シェアで加重平均したものを用いている。中国経済の成長率2.3%ポイントの上昇(6.2%から 8.5%へ)は、関西の実質輸出を0.3%押し上げることになる。 中国経済に加えて、米国とEUの成長率がベースラインより2%ポイント上昇した場合、関西の実質輸出はベースラインから1.8%拡大することになる(シ ミュレーション2)。これらのシミュレーションが示唆するものは、関西経済にとって確かに中国経済の回復はそれなりの効果を持つが、決して大きくない。大 事なのは世界経済が一致して拡張的な財政・金融政策をとらない限り、大不況から脱出できないのである。16日に中国の1-3月期経済成長率が発表された が、前年同期比+6.1%に減速した。4半期ベースでは統計がさかのぼれる1992年以来の低い伸びにとどまった。この現実からも、中国経済の財政刺激策 の効果に過度の期待をかけないほうが無難である。(稲田義久・入江啓彰) 日本 <先行指標に一部明るさがみられるが1-3月期は前期を上回る2桁のマイナス> 4月20日の予測では、3月の一部と2月のほぼすべての月次データが更新された。3月のデータで特徴的なのは、一部の先行指標に改善が見られたことであ る。3月の消費者態度指数は3ヵ月連続の前月比プラスを記録し、同月の景気ウォッチャー調査の現状判断DIも3ヵ月連続で改善した。このように企業や消費 者の心理は2008年12月に底を打ち改善傾向を示しているが、水準は昨年秋口の値に等しく依然として低い。すなわち、前年同月では引き続き低下している が、悪化幅が縮小し始めたのであり、秋口以降の急速な落ち込みが減速しているのである。このように先行きに明るさが見られるものの、現状は非常に厳しいと いえる。 支出サイドモデル予測によれば、1-3月期の実質GDP成長率は、内需が大幅縮小し純輸出も引き続き縮小するため、前期比-4.7%、同年率 -17.5%と予測される。10-12月期を上回るマイナス成長が予想され、この結果、2008年度の実質GDP成長率は-3.2%となろう。ちなみに4 月14日に発表された4月のESPフォーキャスト調査によれば、1-3月期実質GDP成長率予測のコンセンサスは前期比年率-12.76%となっている。 われわれの超短期予測はコンセンサスから5%ポイント程度低いといえよう。 1-3月期の国内需要を見れば、実質民間最終消費支出は前期比-0.8%となり、2期連続のマイナス。実質民間住宅は同-8.6%と3期ぶりのマイナス となる。実質民間企業設備は同-12.2%と5期連続のマイナスとなる。実質民間企業在庫品増加は2兆8,400億円となる。実質政府最終消費支出は同 0.4%増加し、実質公的固定資本形成は同0.6%増加する。国内需要の実質GDP成長率(前期比-4.7%)に対する寄与度は-2.8%ポイントとな る。 財貨・サービスの実質輸出は同22.1%減少し、実質輸入は同11.4%減少にとどまる。このため、純輸出の実質GDP成長率に対する貢献度は-1.9%ポイントとなる。 4-6月期の実質GDP成長率については、内需は停滞し、純輸出も引き続き縮小するため、前期比-1.5%、同年率-5.7%と予測している。 一方、主成分分析モデルは、1-3月期の実質GDP成長率を前期比年率-16.0%と予測している。また4-6月期を同-9.5%とみている。 この結果、支出サイド・主成分分析モデルの実質GDP平均成長率(前期比年率)は、1-3月期が-16.7%、4-6月期が-7.6%となる。両モデルの平均で見れば、2009年後半は引き続きマイナス成長となり、当面景気回復の糸口が見つからないようである。 [[稲田義久 KISERマクロ経済分析プロジェクト主査 甲南大学]] 米国 4月29日に2009年1-3月期のGDP速報値が発表される。その2週間前における同期の実質GDP伸び率(前期比年率)に対する市場のコンセンサス は-4%〜-5%である。一方、超短期モデルは実質GDP伸び率を、支出サイドから-0.2%、所得サイドから-1.7%、そしてその平均値(最もありえ る値として)を-0.9%と予測している。 この超短期予測が正しいとすれば、2008年10-12月期(実質GDP成長率:-6.3%)を米国経済の景気の底と見ることができる。実際に、バーナ ンキFRB議長のように、景気をそのようにみるエコノミストもいる。しかし、世界的なリセッションによる大幅な輸出入の減少が2009年1-3月期の数字 上の景気判断を難しくしている。 名目輸出入に関しては2009年の1月、2月の実績値が既に発表されている。従って、この2ヵ月の平均値を10-12月期の月平均値と比べることができ る。名目財輸出、同サービス輸出、同財輸入、同サービス輸入の減少率は、前期比年率でそれぞれ-45%、-16%、-57%、-17%となる。超短期予測 は時系列モデル(ARIMA)で3月以降を予測している。財とサービスを合わせた名目輸出、同輸入の下落率はそれぞれ-37%、-51%となる。すなわ ち、輸出入が共に3月に減少すると予測している。一方、輸出入価格は季節調整前だが、3月までの実績値がそろっており、前期比年率でそれぞれ-9%、 -24%である。 その結果、超短期予測は1-3月期の実質輸出、同輸入の下落率を前期比年率でそれぞれ-32%、-51%と予測している。すなわち、世界的なリセッショ ンの結果このような実質輸出入の大幅な減少が生じており、米国では更に実質輸入の落ち込みが実質輸出の落ち込みを大きく超えることから、数値上実質GDP の伸び率が高くなる。実質輸出入がこのようにそれぞれ大幅に減少するとき、純輸出の予測には多くの不確実性が伴う。 そのため、正しい景気判断をするにはGDPから純輸出を除いた実質国内需要で景気を判断するのが良い。超短期予測は1-3月期の実質国内需要の伸び率を -5.7%と予測しており、これは2008年10-12月期-5.9%とほとんど変化はない。すなわち、1-3月期の実質GDPの伸び率が市場のコンセン サスよりも高くなっても、同期の経済状況は前期と同じように悪かったと判断すべきであり、米国経済の底は2008年10-12月期から更に深くなっている と見るべきである。超短期予測が1-3月期の実質GDPが市場のコンセンサスに近くなるのは、季節調整後の輸入価格と3月の輸入を超短期予測が共に過小評 価している場合である。 [[熊坂侑三 ITエコノミー]]
熊坂 侑三

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今月のトピックス(2009年3月)

[ コメンタリー ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2009-03-23

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日米超短期予測(月次)

<大不況脱出にはGDP比2%の財政規模で大丈夫か?> 予測のアウトライン 関西社会経済研究所(KISER)は2月22日、10-12月期GDP1次速報値を織り込んだ第77回景気予測を発表した(HP参照)。予測結果(ベー スライン)を要約すれば、2009-10年度の実質GDP成長率を-3.7%、+1.5%と見込んでいる。ここでいうベースラインは、予測期間において景 気対策が含まれないケースである。 ベースラインでは、日本経済は2008年4-6月期から2009年4-6月期まで5期連続のマイナス成長を経験して、7-9月期に小幅のプラス成長に転 じるものと予測している。この間、景気(実質GDP)のピークから底までの落ち込み幅は約8%である。ピークから約8%の需給ギャップが発生するとみてよ い。 麻生内閣の経済対策の内容 景気対策については不確実性が高いが、現時点での情報で麻生内閣の3次にわたる景気対策(いわゆる3段ロケット)の効果を推計してみよう。金額でみる と、(1)第1次補正予算は11.5兆円程度、(2)第2次補正予算案は27兆円程度、(3)12月19日閣議決定の「生活防衛のための緊急対策」は財政 上の対応10兆円程度と金融面の対応33兆円程度の計37兆円程度(「生活対策」のための財政措置6兆円除く)の規模である。総額75兆円(財政措置12 兆円程度、金融措置63兆円程度)が景気対策にあてられる。真水である財政措置は対GDP比では2%程度である。(下図参照。総理官邸HPより) 景気対策の効果を推計するために、KISERモデルでは二次補正、21年度予算のうち事業規模のはっきりする4つの経済政策の効果を検討した。具体的に は、(1)定額給付金(2兆円)、(2)住宅ローン減税(3,400億円)、(3)法人企業税制(4,300億円)、(4)その他財政支出(2.54兆 円)である。 いずれも住宅ローン減税を除き、2009年4-6月期から実施されるものとする。住宅ローン減税は1-3月期から遡及して実行されると想定している。モデ ルにおける操作は以下のようである。 政策変数の設定:景気対策シミュレーション  規模  時期 ①定額給付金  民間最終消費支出関数の定数項修正  3,200億円  2009年2Q ②住宅ローン減税  民間住宅投資関数における金利の引下げ  0.14%ポイント  2009年1Q以降 ③法人税減税  法人税率の引下げ  0.7262%ポイント  2009年2Q以降 ④その他の財政支出  政府最終消費と公的資本形成を増加  2.54兆円  2009年2Q、3Q ⑤景気対策  政策①から④の同時実施 景気対策の効果:2009年度への影響 現時点で想定される景気対策を反映したシミュレーションによると、2009-10年度の実質GDP成長率はそれぞれ-2.9%、+0.6%となる。すな わち景気対策(シミュレーション−ベースライン)は2009年度の成長率を0.8%ポイント引き上げる効果を持つことになる。2009年度経済に与える個 別対策の効果を見ると、(1)定額給付金は、実質GDPを6,450億円、0.12%押し上げる。 (2)住宅ローン減税は、実質GDPを2,120億円、0.04%引き上げる。(3) 法人税減税により、実質GDPを2,570億円、0.05%上昇させる。(4)その他財政支出(2.54兆円)は、実質GDPを4.191兆円、 0.80%の引き上げることになる。合計で実質GDPを4.7兆円、0.9%引き上げることになる。 財政措置GDP比2%の合理的根拠 現在までに想定できる麻生内閣の景気対策は、真水規模5.31兆円で2009年度の実質GDPを0.9%押し上げることになるが、問題は個別の政策効果 である 。われわれのシミュレーションから得られる含意は、政策をより効果的にするには、定額給付金のようなメニューではなく、より直接的な財政支出が必要である ことを示唆している。KISERの調査によれば、2兆円の定額給付金は3,200億円の追加的消費しか生み出さず、実質GDPを0.12%引き上げにとど まる。一方、2.54兆円がより直接的な支出に向かうと実質GDPを0.8%引き上げる。両者の政策効果の差は明瞭である。すなわち、高い乗数効果が期待 でき、中期的にも生産力効果を持つ環境インフラ、エネルギー関連に、より直接的な財政支出が振り向けられるべきということである。 最後に、簡単な試算を示そう。第1の試算は2009年度にマイナス成長から脱却するためにはどの程度の財政規模が必要か。もし財政がより直接的な支出に 振り向けられたならば、約11.7兆円[直接的な財政支出の規模(2.54兆円)×マイナス成長脱却に必要な成長率(3.7%)/景気対策による実質 GDP成長率上昇(0.8%)=必要な財政支出規模(11.7兆円)]の規模が必要となる。 第2の試算は2008年1-3月期のピークから2009年4-6月期の底まで8.0%の需給ギャップの解消には、同様に25.4兆円[2.54兆円×(8.0%/0.8%)]が必要となる。 日本経団連は25兆円の財政出動を提唱しているが、それなりの根拠があるといえよう。またG20では米国は各国にGDP比2%の財政支出を要請したとされているが最低限の線として十分な根拠を持つといえよう。 日本 <1-3月期実質GDP成長率は前期を上回る2桁のマイナス> 3月16日の超短期予測では、2月の物価関連の一部のデータと1月のほとんどの月次データが更新された。また10-12月期のGDP2次速報値が追加さ れた。2次速報値では、実質GDPの伸び率は、1次速報値の-12.7%(前期比年率)から-12.1%(同)へと小幅の上方修正にとどまった。成長率の 上方修正の主因は実質民間在庫品増加が上方修正されたことによる。決して明るいニュースではない。 データを更新した結果、支出サイドモデルは1-3月期の実質GDP成長率を前期比-4.1%、同年率換算-15.5%と予測している。この結果、2008年度成長率を-3.1%となろう。また4-6月期の成長率を前期比-1.3%、同年率-5.3%と見込んでいる。 実質成長率(前期比-4.1%)への寄与度は、内需は-2.0%ポイント、純輸出は-2.1%ポイントである。民間需要では、実質民間最終消費支出は前 期比-0.4%、実質民間住宅は同-6.8%、実質民間企業設備は同-10.1%と、いずれもマイナスの伸びを予測している。公的需要では、実質政府最終 消費支出は同+0.1%、実質公的固定資本形成も同+0.1%と小幅のプラスを見込んでいる。外需では、実質輸出は同-19.2%、実質輸入は同 -6.2%といずれも低調である。 一方、主成分分析モデルは、1-3月期の実質GDP成長率を同年率-13.2%と予測している。 4-6月期については同-7.4%と予測している。 この結果、支出サイド、主成分分析モデルの平均でみると、実質GDP成長率(前期比年率)は1-3月期-14.3%、4-6月期は-6.9%といずれも マイナス成長が予測されている。現時点では、1-3月期の経済は10-12月期を上回る2桁のマイナス成長になろう。4-6月期はマイナス幅が縮小する が、依然として厳しい状況にある。ただ1-3月期に大規模な在庫調整が進展すれば、年後半にはマイナス成長から脱却できる可能性がある。 [[稲田義久 KISERマクロ経済分析プロジェクト主査 甲南大学]] 米国 今の景気を判断するのに実質GDPのみに頼ると、現実の景気の深刻さをも見間違える。グラフに見るように、2009年1-3月期の実質GDP伸び率は2月 2日まで急速に悪化し、その後2月20日まで回復傾向にあった。しかし、2月20日以降、再び景気は下降し始めたものの、3月13日の超短期予測では実質 GDP伸び率を支出サイド、所得サイドからそれぞれ+0.1%、-1.8%と予測し、その平均値は-0.9%となっている。 確かに、1−3月期もマイナス成長を予測しているが、約-1%の落ち込みではそれほど深刻な経済状況とはいえないであろう。しかし、これは米国、そして 海外諸国の深刻なリセッションから米国の実質輸出が前期比年率で40%、実質輸入が50%と大幅に下落すると予想されているためである。景気を実質総需要 (=GDP+輸入)からみると、超短期モデルはその伸び率を-10%と予測している。また、実質国内需要(=GDP-純輸出)と国内購買者への実質最終需 要(GDP-在庫増-純輸出)の伸び率はそれぞれ-5.5%と予測されている。このように、経済をGDPとその他のアグリゲート指標で見ることによって、 今の景気状況は-1.0%から-10.0%と非常に幅広いものになることを理解しておくことが重要である。 [[熊坂侑三 ITエコノミー]]
熊坂 侑三

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今月のトピックス(2009年2月)

[ コメンタリー ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2009-02-17

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日米超短期予測(月次)

<日本経済は底割れするのか?-中国・米国のデータからは外需回復の兆しも‐> リーマン・ショック以降、鉱工業生産指数の落ち込みは未曾有のものである。2008年10-12月期の同指数の落ち込みは前期比-11.9%と戦後最悪を 記録した。図からわかるように、落ち込み幅は第1次石油危機の時期を大きく上回っている。かつてないスピードと下落幅である。まるで金融指標の変化(株価 のフリーフォール)を見ているようである。生産市場の急激な変化は労働市場に負荷を与え始めてきている。まずは非正規労働者の解雇から始まり、大幅な生産 調整が続けば、次に正規労働者の調整につながることは容易に想像できる。このような急激で大幅な落ち込みは何を意味しているのであろうか。 まず(1)今回の生産の落ち込みが、世界同時不況と関連していることである。次に(2)企業の売上減少に対する対応が過去に比べてすばやくなったことである。 内閣府によれば、最近の景気の山は2007年10月である。景気後退後1年も経て急激に落ち込むというのは世界経済の同時不況が大きく影響している。それ は輸出市場の大幅落ち込みを意味するから、成長を輸出に大きく依存している国にとってはその影響は大きい。韓国やシンガポールでは10-12月期の生産が 2桁の落ち込みを経験していることからもよくわかる。 企業の需要の変化に対する対応が早くなってきた点を見ていこう。出荷と生産のずれは在庫となって表れるが、その対応の変化の時系列、すなわち在庫循環図 (在庫指数と出荷指数の相関図)を見れば一目瞭然である。以下に、鉱工業、電子部品・デバイス工業、輸送機械工業(除く船舶・鉄道)の在庫循環図(四半期 ベース)を示してある。鉱工業全体で見れば2008年10-12月期は第4象限に、すなわち意図せざる在庫の積みあがり局面にあることがわかる。しかし業 種別に在庫調整を見ると、異なる局面が表れてくる。例えば、電子部品・デバイス工業は全体と同じ局面にあり、足元の需要(出荷)減が急激であり在庫が大幅 に積みあがっていることがわかる。一方、輸送機械工業では、足元は第3象限にあり出荷の大幅減に在庫調整が進んでいる局面にある。 急激な鉱工業生産の落ち込みを反映して、10-12月期の経済成長率は2桁のマイナスになった。このためマーケットは悲観的なムード一色である。近視眼的 な見方をすれば、日本経済は底割れするのではないかと。しかし、上で見たようにすべての業種で意図せざる在庫が積み上がっているわけではない。日本のリー ディング産業の中には、在庫調整がかなり進捗している業種もある。問題は全体としていつ在庫調整が進むかである。答は外需(海外市場)の回復の時期次第と いうことになるが、中国では4-6月期に在庫調整が終わるとも予測されているし、米国のISM新規受注も回復の兆しを見せている。これらはよいニュースで ある。自動車のような産業では、海外の需要が持ち直せば国内生産はすぐに回復することを示唆している。急激な経済の落ち込みは、急激な回復の可能性がある のである。16日に発表された10-12月期の実質GDP成長率は前期比年率-12.7%と悲惨な結果になったが、それは過去の経済パフォーマンスである から、悲観色をいっそう強める必要はない。 日本 <1-3月期実質GDP成長率は2期連続で2桁のマイナス?> 米国と中国の10-12月期実質GDP成長率の発表(1月)についで、2月13日にEU(27ヶ国)、16日に日本の実績が発表された。10-12月期の EUの実質GDP成長率は前期比-1.5%、日本のそれは同-3.3%と大幅なマイナス成長となった。日本の実質成長率は年率換算で-12.7%となり、 3四半期連続のマイナス成長。また減少率は第1次石油危機時の1974年1-3月期の年率-13.1%につぐ35年ぶりの大きさとなった。この結果、 2008暦年の実質成長率は-0.7%と9年ぶりのマイナス成長となった。 10-12月期の実質成長率(前期比-3.3%)への寄与度を見ると、内需が-0.3%ポイント、純輸出が-3.0%ポイントとなっている。世界同時不況 の影響で輸出が過去最大の落ち込みとなったことが影響している。たしかに第1次石油危機時には今回を上回るマイナス成長を記録したが、74年4-6月期に はプラス成長に戻っている。今回の問題は先行き回復の兆しが見えないことである 10-12月期GDP統計を更新した超短期(支出サイド)モデルによれば、2009年1-3月期の実質GDP成長率を前期比-2.4%、同年率換算 -9.4%と予測している。2期連続で2桁のマイナス成長となる可能性が高い。この結果、2008年度の成長率は-2.8%となろう。 1-3月期の実質成長率(-2.4%)のうち、内需が-0.5%ポイント、純輸出が-1.9%ポイントと輸出減が内需減につながる悪循環となっている。内 需のうち、実質民間最終消費支出は前期比+0.3%増加し、実質民間住宅は同5.3%減少する。実質民間企業設備も同3.0%減少する。実質政府最終消費 支出は同横ばい、実質公的固定資本形成は同1.3%減少する。財貨・サービスの純輸出は引き続き縮小する。実質輸出は同10.6%減少し、実質輸入は同 2.9%増加するためである。 4-6月期の実質GDP成長率についても、内需拡と純輸出は引き続き縮小するため、前期比-1.3%、同年率-5.1%と予測している。 内需のうち、実質民間最終消費支出は前期比+0.2%増加し、実質民間住宅は同2.2%減少する。実質民間企業設備は同1.0%減少する。実質政府最終消 費支出は同0.6%増加し、実質公的固定資本形成は同1.4%減少する。純輸出のうち、実質輸出は同4.9%減少し、実質輸入は同3.4%増加すると予測 している。 日本政府は先進国で一番早く不況から脱出すると宣言したが、逆に一番遅くなる可能性が高まっている。政治的混乱でタイムリーな財政政策は期待薄であり、結 局、海外市場の回復に依存せざるをえないからである。今こそ政治休戦をしてでも、成長戦略を意識した経済政策が望まれる。 [[稲田義久 KISERマクロ経済分析プロジェクト主査 甲南大学]] 米国 <最悪期を過ぎた米国経済?> 2008年10-12月期実質GDP成長率(速報値)は前期比年率-3.8%となり、マイナス幅は市場コンセンサス予測(-5.4%)や超短期モデル(支 出サイドモデル)の予測(-4.9%)より小幅となった。超短期モデル予測のマイナス成長が政府公表値より大きかった理由は、輸入を過大に予測したことに ある。実際、商務省経済分析局(BEA)は12月の名目輸入を前月比で5.4%減少すると仮定した一方、超短期モデルはARIMA(時系列モデル)から 6.9%の増加になると予想した。そのため、超短期モデルは実質輸入(NIPA(国民所得生産計算)ベース)を1,110億ドルも過大に推定した。 今回の超短期モデル予測ではBEAの仮定した12月の名目財輸出入を実績値として用いている。また、連邦政府の雇用者所得以外の消費支出を推定するのに、 超短期モデルでは、連邦政府支出をブリッジ方程式の説明変数として使用している。ところで、TARP(Troubled Asset Relief Program: 不良債権救済プログラム)からの2,430億ドルの資産購入(2008年10-12月期)は、GDP推計には計上されないことから、その分を10-12月 期の連邦政府支出から差し引いて、連邦政府の雇用者所得以外の消費支出を推定している。 その結果、今週の超短期予測では2009年1-3月期の実質GDP成長率(年率換算)を支出サイドから-1.0%、所得サイドから+0.4%と予測してお り、少なくとも現時点では米国経済の最悪期は過ぎたものと考えられる。しかし、今期の経済成長率も2008年7-9月期、10-12月期と同じようにマイ ナスになる可能性は十分に考えられる。オバマの景気刺激策が緊急に実施されることが望まれるが、減税政策が少なく景気刺激パッケージ(Stimulus Package)というよりも民主党議員に都合のよい支出パッケージ(Spending Package)の色合いが濃くなっている。そうなると、景気刺激策が十分でないにもかかわらず、政府の累積債務が膨張するだけとなる。 [[熊坂侑三 ITエコノミー]]
熊坂 侑三

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今月のトピックス(2009年1月)

[ コメンタリー ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2009-01-20

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日米超短期予測(月次)

<2009年度の日本経済・関西経済> 年末年始にかけて、関西社会経済研究所では、リーマン・ショック以降の急激に変化する足下の状況を織り込み、昨年11月に発表した予測を改定するとともに、新たに関西経済の予測を行った。(予測改定の詳細は研究所HPに掲載) 2009年度の日本経済 今回の景気回復(2002年2月-07年10月)のメイン・エンジンは純輸出であり、かつ戦後の日本経済の景気回復局面でも最も寄与度が高い項目であっ た。今や成長のメイン・エンジンが逆回転し始めている。これを印象付ける象徴的なイベントは、2008年11月の貿易統計と鉱工業生産指数の落ち込みで あった。10-12月期の実質GDP成長率は2桁に届くほどのマイナスが予測されており、かつてない景気後退となりそうである。 7-9月期GDP2次速報値を織り込み予測を改訂し、実質GDP成長率を2008年度-1.3%、2009年度-1.4%とした。前回(11月)予測から 2008年度は1.1%ポイントの、2009年度は1.5%ポイントの大幅な下方修正である。前回予測では捉えきれなかった、リーマン・ショック以降の急 速な経済の悪化が反映されている。 2008年度の実質GDP成長率は前年の+1.9%から-1.3%へと7年ぶりのマイナス成長に転じる。民間需要の寄与度は-0.7%ポイントと、前年度 の+0.5%ポイントから大きく低下する。公的需要は-0.2%ポイントの寄与となり、純輸出の寄与度は前年の+1.2%ポイントから-0.4%ポイント へと大幅低下する。 日本の主要貿易相手国のうち米国とEU経済の成長率は2009年にはマイナス成長となり、新興諸国の成長率も減速する。このため2009年度には純輸出の寄与度のマイナス幅は拡大する。 2009年度の実質GDP成長率は-1.4%と2年連続のマイナス成長となる。民間需要の回復は期待できず、純輸出の寄与はさらに低下する。内外需の寄与 度を見ると、民間需要は前年の-0.7%ポイントから-0.8%ポイントと小幅悪化、公的需要は+0.1%ポイントとなる。純輸出の寄与度は前年の -0.4%ポイントから-0.7%ポイントへと更に低下する。 幸いなことに原油価格や商品価格が大幅に下落しており、これが徐々に最終財価格に波及するであろう。このため、2008年度のコア消費者物価指数前年 比+1.3%となるが、2009年度は-0.4%とデフレに転じる。国内企業物価指数は同+3.6%、同-3.7%、GDPデフレータは同-0.7%、 同+0.9%と予測している。物価上昇率がプラスに転じるのは2010年度に入ってからである。 景気回復は2010年度と見込んでいるが、景気回復が感じ取れるのは2010年後半からと予測している。2009年度の成長率の四半期パターンは一様な落 ち込みの後の回復の様相を呈さず、2008年末から2009年初にかけて経済は大がかりな生産調整が起こり、2009年央に一旦落ち着くものの、2009 年後半から2010年初にかけて再び落ち込むという、いわばダブルディップ型のリセッションを予測している。2009年度は非常にBumpy(荒っぽい) な経済となろう。 2009年度の関西経済 関西経済は、全国と比較して設備投資が相対的に底堅いことや、アジア向け輸出が緩やかな減速にとどまることから、昨年後半時点では、2009年度は緩やか な調整にとどまるとみていた。しかし、足下この想定には疑問符がつき始めた。2009年度の関西経済は前年度の-0.7%に続き、-0.8%と2年連続の マイナス成長となると見込まれる。 雇用・所得環境の悪化、金融危機の深刻化を背景とした株安などから、個人消費および住宅投資のマインドは低調に推移するとみられる。企業の収益環境が厳し さを増すなか、投資意欲の低下に伴い、鈍化傾向であるものの、既に確定している大型投資が下支えとなると考えられる。近畿地区の企業短期経済観測調査をみ ても関西の投資計画は全国と比べ底堅さを維持している。ただし、パナソニックの薄型テレビ用パネル投資の約1,300億円の削減(2009年1月9日発 表)にも見られるように、今後下振れする可能性もある。 これまで米国、EUの景気減速により、関西以外の地域では純輸出が減少し始めていたが、関西はアジア向けの割合が高く比較的持ちこたえていた。2009年 に入り、新興諸国および国内他地域の景気減速が顕著となり、タイムラグを持って関西に影響が出てきた。関西の地域別輸出動向をみると、2008年11月に は北米・EU向けよりもアジア向けの減少幅が大きい結果となっている。このような状況から、今後関西の輸出も減速していくとみられ、他地域よりも急激に悪 化するリスクがある。 日本 <10%近い下落が予想される10-12月期実質GDP成長率> 今回の日本経済超短期モデル予測では、一部の12月データと多くの11月データが更新されている。最新の(支出サイドモデル)予測によれば、10-12月 期の実質GDP成長率は、前期比-2.4%、同年率-9.3%と見込まれる。前月の予測(-4.3%)から大幅の下方修正となった。 今回の大幅下方修正を象徴的に示唆するデータは、2008年末に発表された11月の鉱工業生産と貿易収支である。11月の鉱工業生産指数は前月比8.1% 低下し、2ヵ月連続のマイナスとなった。下落幅は、政府が比較可能なデータを公表して(1953年2月)以来、最大となった。業種別に見ると、輸送機械工 業、一般機械工業、電子部品・デバイス工業等の輸出関連産業で落ち込みが大きかった。製造工業生産予測調査によると、12月の生産は前月比-8.0%、1 月は同-2.1%と予想されている。10-12月期の鉱工業生産指数は4期連続のマイナスになるのは確実で、かつてない景気後退になりそうである。 11月の貿易収支は2ヵ月連続の赤字を記録した。輸出額は2ヵ月連続で前年の水準を下回り、下げ幅は月次統計が比較可能な1980年以来の最大(前年同月 比-26.5%)となった。輸入額も前年比14ヵ月ぶりのマイナス(同-13.7%)となった。輸出入の大幅減少は内外の市場が急速に収縮していることを 意味する。 これらのデータを反映した12月末の超短期予測によれば、実質GDP成長率予測はそれまでの前期比年率-3%〜-4%程度から、一気に同-9%程度に低下 した(図参照)。5%ポイントという大幅な予測の修正は、1993年から開始した週次ベースの超短期予測で初めての経験である。かつてないスピードで景気 の減速が起こっているのである。 10-12月期の国内需要を見れば、実質民間最終消費支出は前期比-0.3%となる。実質民間住宅も同-5.5%と、ともに2期ぶりのマイナス。実質民間 企業設備も同-1.6%となる。一方、実質政府最終消費支出は同+0.6%、実質公的固定資本形成は同+0.5%、それぞれ増加する。このため、国内需要 の実質GDP成長率(前期比-2.4%)に対する寄与度は-0.4%ポイントとなる。 財貨・サービスの実質輸出は同6.1%減少し、実質輸入は同8.9%増加する。名目ベースの輸出入がそれぞれ同-15.1%、-12.1%と同程度の減少 にとどまっているが、円高の影響を受け輸出デフレータが同-9.6%と下落する以上に、輸入デフレータが円高に加え国際商品市況の急下落により同 -19.3%と輸出デフレータの下落幅を大きく上回るためである(交易条件の改善)。このため、実質純輸出の実質GDP成長率に対する貢献度は-2.0% ポイントとなる。 2009年1-3月期の実質GDP成長率については、内需拡大は小幅にとどまり、純輸出は引き続き縮小するため、前期比-1.6%、同年率-6.1%と予測している。この結果、2008年暦年の実質GDP成長率は-0.3%、2008年度は-2.0%となろう。 [[稲田義久 KISERマクロ経済分析プロジェクト主査 甲南大学]] 米国 <両刃の剣: 景気刺激策と財政赤字> 1月9日の超短期モデル予測は、2008年10-12月期の米国の実質GDP成長率を-5%〜-6%と予測している。これは市場のコンセンサスより約1% 低い。また2009年1-3月期もマイナス成長が見込まれている。このようななか、1月20日にワシントンに入る次期大統領のオバマは1月8日、できるだ け速やかに景気刺激対策を議会で通過させるために、“米経済の回復と再投資計画”を発表した。景気刺激策の主な内容は次の通りである; ・ 3年間に代替エネルギーの生産を2倍にする。 ・ 連邦政府の建物の75%を近代化する。 ・ 200万戸に対してエネルギーの効率化を促進する。 ・ 5年以内にすべての医療記録をコンピューター化する。 ・ 学校に新しいコンピューターと技術を供給する。 ・ 代替エネルギー供給のためのスマートグリッドの導入。 ・ 全米におけるブロードバンドの拡張。 オバマは更に労働者家計の95%に対して1,000ドルの減税を考えている。オバマはスピーチの中で景気刺激策の規模について明言はしていないが、約8,000億ドルと推定されている。 一方、連邦議会予算局(CBO)は1月7日、“2009、2010財政年度の予算と経済見通し”を発表した。CBOは現在決まっている政策にのっとって予 算・経済予測をすることから、オバマの景気刺激策によるコストは考慮されていない。にもかかわらず、その内容は以下のように市場にとってショッキングな内 容であった。 ・ 財政赤字は2009年度には1.2兆ドルにまで拡大する。GDP比率でみれば8.3%になる。 ・ 実質GDP成長率は2009年に2.2%の下落となる。 ・ 失業率は2009年、2010年度にはそれぞれ8.3%、9.0%にまで上昇する。 ・ 2008年Q3−2010年Q2の期間において住宅価格は更に14%低下するだろう。 オバマは景気刺激策による財政赤字拡大というジレンマを熟知しているため、景気刺激策を長期の経済成長の基盤に向けている。しかし、金融危機回避のために は、まだ住宅ローン貸し手のバランスシートの改善、住宅の抵当化の低減など課題が残っており、新大統領の船出は経済問題だけでも困難を極めている。 [[熊坂侑三 ITエコノミー]]
熊坂 侑三

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今月のトピックス(2008年12月)

[ コメンタリー ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2008-12-15

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日米超短期予測(月次)

<不況の深化とセンチメントの悪化> 9月のリーマンブラザースの破綻を契機とする世界金融危機の深化は、世界の実物経済に大きな影響をもたらしている。また、その影響が及ぶスピードはかつて ないほど急速である。日本経済にとって、主要な輸出市場である米国やEUの経済がマイナス成長に陥り、もう一つの柱である新興市場諸国の経済成長率も減速 傾向が目立ってきている。 今月の日本経済の見通しで述べているように、最近の経済動向を要約すれば、生産の大幅減少、純輸出の収縮と特徴付けられる。今回の不況は海外発の要因が大 きく影響している。世界経済はこの間急速に悪化し、同時不況となっている。これに抗するために、主要諸国は先進国も新興国も金融緩和と財政拡大にむけて協 調しているが、これが明確な効果を生み出し、世界経済が底打ち反転することが、日本経済の回復に決定的に重要である。 このような性格を持つ今回の不況に対して、政府の打つ経済政策はおのずと限定されてこよう。重要なのは景気の底割れを防ぐことであり、生産の大幅削減や雇 用の調整が家計の本格的な消費削減につながらないような工夫が必要となる。そこで最近の消費者や景気ウォッチャーたちのセンチメントの動向を見てみよう。 11月の消費動向調査によれば、一般世帯の消費者態度指数は28.4となり、2ヵ月連続で過去最低を更新した。前年同月比では11.4ポイント下落して 24ヵ月連続の悪化を記録した。11月は世界経済の急激な落ち込みと輸出の収縮を背景に、国内の雇用の先行きや所得減への懸念が強く表れた結果となった。 指数を構成する4項目の意識指標はすべて前年から悪化したが、インフレ期待の低下から暮らし向きや耐久消費財の買い時判断に関する意識指標では底打ちや改 善の傾向が見られた。しかし、雇用環境に関する意識指標は21.1(前年同月比-22.0ポイント)で、悪化幅の拡大が目立った。 また同月の景気ウォッチャー調査によれば、現状判断DIも過去最低を更新した。前年比では17.8ポイント低下し25ヵ月連続の悪化となった。指数構成指 標の1つである雇用関連DIは同26.2ポイント低下し、27ヵ月連続で悪化している。2001年10月の悪化幅40.7ポイントまで至っていないが、今 後急速な悪化幅の拡大が予想される。 このように消費者や景気ウォッチャーたちの雇用のセンチメントは夏以降急速に悪化している。年度末にかけては生産の大幅削減の確率が非常に高くなってい る。実際、15日に発表された日銀12月短観では大企業の業況判断DIは前回調査から21ポイント悪化した。これは1974年9月調査以来の悪化幅 (-26ポイント)となっている。これから生産削減、雇用削減は避けられないであろうが、この動きが消費減退に繋がる負の連鎖を断ち切らねばならない。す なわち、消費者のセンチメントの大幅悪化を防ぐ工夫が必要である。消費者には、今回は前回のように本格的なリストラにはならないという安心感を与えるよう な政策を準備し、また、生活の安心を取り戻すため一定の生活防衛のためのセーフティーネットを充実しなければならない。11月の「今月のトッピクス」で追 加経済対策(10月30日決定)の効果をあまり評価しなかったが、今回新たに出てきた政府の経済対策のうちで、職を失った人に対する住宅支援などは評価で きる。要は消費者のセンチメントの悪化を防ぎ、生産・雇用の削減から消費の本格的削減という負の連鎖を断ち切ることがもっとも重要で、世界景気が底打ちす るまでの政策課題となる。 日本 <不況感が強まる10-12月期経済> 今回の予測では一部の11月データと10月のほぼすべてのデータが更新されている。これらの動向を要約すれば、生産の大幅減産、純輸出の収縮と特徴付けられる。 今週の超短期モデル(支出サイド)は、10-12月期の実質GDP成長率を、内需は小幅拡大にとどまり純輸出が大幅に縮小するため、前期比-1.1%、同 年率-4.3%と予測している。予測は6週連続で下方修正が続いている。この結果、2008年暦年の成長率は+0.1%にとどまろう。 10-12月期の国内需要を見れば、実質民間最終消費支出は前期比+0.1%となる。実質民間住宅は同-4.4%と2期ぶりのマイナス、実質民間企業設備 は同+1.2%となる。実質政府最終消費支出は同+0.4%、実質公的固定資本形成は同2.0%減少する。このため、国内需要の実質GDP成長率(前期比 -1.3%)に対する寄与度は+0.2%ポイントとなる。 財貨・サービスの実質輸出は前期比2.3%増加し、実質輸入は同15.3%増加する。不況下の経済で実質輸入が大幅増加するのは不思議な気がするが、理由 は以下のとおりである。まず名目ベースの輸出入は輸出が同-6.2%、輸入が-5.7%と同程度の減少にとどまっている。一方、デフレータは急激な円高と 国際商品市況の大幅下落により異なった動きを見せている。輸出デフレータが同-8.3%下落するが、輸入デフレータは円高に加え国際商品市況の急下落によ り同-18.2%と輸出デフレータの下落幅を大きく上回っている。このため、実質純輸出は前期から大幅に縮小し、実質GDP成長率に対する寄与度は -1.3%ポイントと大きなマイナスの貢献となる。 2009年1-3月期の実質GDP成長率については、内需拡大は小幅にとどまり、純輸出は引き続き縮小するため、前期比-0.7%、同年率-2.9%と予測している。この結果、2008年度の実質GDP成長率は-1.1%となろう。 このように、2008年度の経済成長率は4-6月期の前期比年率-3.7%、7-9月期同-1.8%に続き、年度後半もマイナス成長が持続し、当面は回復の展望が描けない厳しい状況となっている。 [[稲田義久 KISERマクロ経済分析プロジェクト主査 甲南大学]] 米国 <NBERの苦しいリセッション宣言‐significant な落込みが a few months 続くこと‐> 12月1日に全米経済研究所(NBER)の景気基準日付け決定委員会は2001年3月から始まった今回の景気拡大が2007年12月に終わり、リセッショ ンに入ったことを宣言した。通常のリセッションの定義は2四半期連続しての実質GDPのマイナス成長であるが、NBERはリセッションを「経済全体におけ る景気活動のsignificant(?) な落ち込みが、a few months (2,3ヵ月?)以上続くこと」と定義し、それらは生産、雇用、実質所得、その他の経済指標に表れると付け加えている。リセッションを定義するときは、 significantなどと言う恣意的な言葉は使わないほうがいい。超短期モデル予測は2007年12月から2008年4月まで景気がスローダウンして きたことは認めるが、景気は2008年4月-6月に急速に拡大していたことを示している。実際に2008年4-6月期の経済成長率は超短期モデル予測とほ とんど同じ+2.8%と高いものであった。 また超短期モデルは2008年6月以降再び景気がスローダウンしていることをはっきりと認めている。特に2008年10-12月期において、9月12日以 降、支出サイドからの実質GDP成長率は-5%を下回っている。まさに、現在は大不況(グレート・リセッション)とも呼べる状況である。 NBERがリセッションの公式宣言を行った日に株価のダウ平均が700ドル近く下落したように、NBERの決定は市場に大きな影響を与える。もしも、リ セッションをNBERの定義に従うならば、米経済は2007年12月-2008年4月、2008年6月-現在 とダブル・ディップ・リセッションにあることをNBERは認めることである。むしろ、従来のリセッションの定義に矛盾することなく、リセッション入りを宣 言するならば2008年6月をリセッションの開始年月とすべきである。 [[熊坂侑三 ITエコノミー]]
熊坂 侑三

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今月のトピックス(2008年11月)

[ コメンタリー ] AUTHOR熊坂 侑三 DATE2008-11-18

Abstract/Keywords

日米超短期予測(月次)

<追加経済対策の評価> 日本経済にとって、今回の不況は国内発より海外発の要因が大きく影響していることに注意が必要である。すなわち、第一に原油価格の高騰、第二に世界的な信 用収縮が時差を伴いながら複合的に影響している。世界経済はこの2ヵ月急速に悪化し、同時不況の様相を呈している。これに抗するために、主要諸国は先進国 も新興国も金融緩和と財政拡大にむけて協調体制に入っている。 日本政府は10月30日に追加経済対策を決定した。8月末に決定した総合経済対策の事業規模を大幅に上回り、また1998年に小渕政権が取りまとめた緊急経済対策に並ぶ26.9兆円の事業規模となった。ただし、真水と呼ばれる実際の財政支出規模は5兆円程度である。 「生活対策」と名づけられた追加経済対策は3つの柱からなる。(1)総額2兆円の定額給付金を中心とする「生活者の暮らしの安心」対策(国費2.8兆円、 事業規模3兆円)、(2)中小企業向け保証・貸付枠の拡大や投資促進策といった企業支援と金融市場の安定化を目指す「金融・経済の安定化」対策(国費 0.6兆円)、(3)住宅ローン減税や高速道路料金引き下げによる「地方の底力の発揮」対策(国費1.6兆円、事業規模26.9兆円)である。 追加経済対策のマクロ及びミクロベースの効果分析は別の機会に譲るが、2点に絞って整理しておこう。第一に、定額給付金については効果と費用の関係が問題 になろう。KISERのインターネット調査によれば、限界消費性向は0.2を上回らないようである。この結果は、地域振興券の場合と矛盾しないし、米国の 場合も0.2程度とされていることから、あまり効果がなさそうである。加えて実施方法にコストがかさむ場合、その意義は大きく薄れるであろう。第二に、今 回の高速道路料金引き下げはガソリン価格が最高値をつけた7月時点の生活支援といった性格が強く、価格下落が著しい現時点では大いに意義が薄れる。料金引 き下げはむしろ交通渋滞を引き起こし低炭素社会実現の目的からも乖離する。中長期的にこの目的を実現するプロジェクトに使用されるべきである。 今後、年度末にかけてマイナスないしはゼロ成長が続くと予測される。ただ景気は急激に悪化していくというより、停滞色の濃い期間がしばらく続くと見てよ い。景気にとって唯一の明るい材料は、ガソリン価格が下落し始めていることである。ガソリン価格の下落は消費者心理の急激な悪化を反転させるであろう。加 えて、景気の悪化を防ぐためにも年度末にインパクトのある景気対策が実施されることが重要である。今回の不況は海外発の要因によって引き起こされたため、 小手先の政策より海外発の要因(原油価格、輸出)に影響されにくい経済構造実現に向けての政策が重要となる。例えば、新エネルギーの利用・促進(太陽電 池、電気自動車、風力発電等)という中期的な政策課題に財政資金が集中的に投じられることが、むしろ国民社会に安心と夢を与え理解される経済対策となろ う。 日本 <停滞色の濃い期間が続く—重要性を増す景気対策> 11月17日発表のGDP1次速報値によれば、7-9月期の実質GDP成長率は前期比-0.1%、同年率-0.4%となった。2001年7-9月期以来の 2期連続のマイナスとなり、日本経済はリセッションにあることを確認した。前年比でも、-0.1%となり2007年4-6月期以来のマイナスとなった。超 短期予測は9月まで1%台半ばの成長率を予測し続けたが、8月のデータが更新された10月以降予測はゼロ成長にシフトした。最終週の予測値は前期比 -0.1%(同年率-0.2%)とほぼ実績どおりになった。 7-9月期の実質GDP成長率(前期比-0.1%)への寄与度を見れば、国内需要は+0.1%ポイント、純輸出は-0.2%ポイントと、外的ショック型の リセッションが進行している。今回の特徴は、欧米経済の不況の深刻化により実質純輸出が2期連続でマイナス寄与となったことであり、名目ベースでも純輸出 は昨年10-12月期以来4期連続でマイナスの寄与となっている。交易条件の悪化による企業収益の大幅な悪化がこの背景にあり、結果として民間企業設備の 減少が鮮明となってきた。企業部門の低調に比して、民間部門が意外と堅調であったのがもう一つの特徴である。 今週の支出サイドモデル予測によれば、10-12月期の実質GDP成長率は、内需は拡大するが純輸出が大幅に縮小するため、前期比-0.2%、同年率-1.0%と予測される。この結果、2008年暦年の成長率は+0.4%となろう。 海外経済の不況の深刻化とともに外需は収縮し、小幅な内需の拡大では相殺しきれない。9-10月に入って景気指標は急速に悪化している。今後、設備投資関 連指標が落ち込む中で、民間最終消費支出の動きが重要なポイントとなろう。景気ウォッチャー調査や消費動向調査の結果が示すように消費者心理が急速に落ち 込んでいる。今後の民間消費がマイナスになる可能性が高まってきているのは要注意である。ただ唯一の明るい材料は、原油価格が年末50ドル(1バレル)に 向けて下落を示すなか、ガソリン価格が下落し始めていることである。ガソリン価格の下落は消費者心理の悪化を反転させるであろう。 景気は停滞色の濃い期間がしばらく続くと見てよい。景気を悪化させないためにも年度末にインパクトのある追加の景気対策が実施されることが重要である。 [[稲田義久 KISERマクロ経済分析プロジェクト主査 甲南大学]] 米国 <オバマの勝利と金融危機への取組み> 政権にある党が選挙に勝つためには経済繁栄と平和を社会にもたらしていることが不可欠である。2006年の中間選挙ではイラク戦争の混乱、ハリケーンカト リナへの対応の失敗から共和党は議会選挙で大敗を帰した。今回の選挙では金融危機によって共和党はホワイトハウスのみならず議会においても敗北を帰した。 金融危機が選挙の50日前に表面化したことはマケイン大統領候補にとって不運であった。さらに、彼はブッシュ大統領の不人気の下で戦わなければならなかっ た。雄弁なオバマ大統領候補は6億4,000万ドルもの資金を集め、初の黒人大統領の誕生という歴史的な快挙を成し遂げた。 しかし、金融危機の終わりが見えない今の状況において、オバマは来年1月20日の就任式前にも以下の3つのことを直ちに行わなければならない。 できるだけ早く財務大臣とそのチームの指名 就任後に実施する第2の景気刺激策の発表 7,000億ドルの金融危機救済プログラムへの参加 オバマは"変革”をスローガンに次期政権への移行チームを形成したが、それはクリントン政権の旧友の集まりのようであり、全く”変革”とは異なるものに見える。 オバマ候補の勝利は米国政治にとって転換点になりうる。それはあたかも1980年に共和党のロナルド・レーガンがカーター大統領を打ち破り、その後25年 間の保守的な方向に国民を導いたように。しかし、オバマ新大統領と民主党がキャンペーン中に公約した、経済の立て直し、米軍のイラクからの撤退、健康保険 の加入者の拡大などを実現しなければ、2008年の選挙結果は民主党にとっての長期政権への出発となるのではなく、単に金融危機から米国民が不人気な現共 和党大統領を嫌って一時的に民主党に動いたにすぎないことになる。 今週の超短期予測からは、今後の経済に対しては悲観的なシグナルが出ている。10-12月期は前期比年率-4.0%とマイナス幅が前期(同-0.3%)から拡大している。このため、2008年の米国の経済成長率は前年の+2.0%から1.3%に減速するであろう。 [ [熊坂侑三 ITエコノミー]]