研究成果

research

第80回 景気分析と予測(2009年11月26日)

Abstract

「日本経済のマクロ経済分析」研究成果報告
(主査: 稲田義久・甲南大学経済学部教授
高林喜久生・関西学院大学経済学部教授)

当研究所のマクロ経済分析プロジェクトチームでは、在阪の大手企業・団体の若手スタッフの参加の下で研究会を組織し、予測に必要な景気の現状分析、外生変数の想定について共同で作業を行っている。
「景気分析と予測」については、四半期ごとに年4回(2003年度までは年2回)発表している。
2005年度より四半期予測作業において、日本経済超短期予測モデル(CQM)による、直近2四半期のより正確な予測値を取り入れている。
11月16日の政府四半期別GDP一次速報の発表を受け、2009-2011年度の改訂経済見通しとなっている。
ポイントは以下の通り。

* 2009年度7-9月期実績の評価‥‥実質GDP成長率(一次速報)は、前期比+1.2%、同年率+4.8%と、2四半期連続のプラス成長となり、07年1-3月期以来の高い成長となった。堅固な成長の背景には景気対策効果と海外市場の回復がある。

* 2009年度の改訂見通し‥‥民需のマイナス寄与度は拡大するが、大型補正予算の効果による公的需要が成長引き上げ要因となる。また、世界経済の持ち直し により純輸出のマイナス寄与度が縮小する。この結果、実質GDP成長率は、2008年度の▲3.2%から2009年度は▲2.3%となるが、2年連続のマ イナス成長である(前回予測▲2.6%からは上方修正)。

* 2010年度の改訂見通しおよび2011年度の予測‥‥大型補正予算の効果が剥落するため、公的需要の貢献は縮小し、民間消費は緩やかな伸びになる。その 一方で、民間企業設備が底打ちし、世界経済の回復により純輸出の寄与がプラスに転じる。2010年度の実質GDP成長率は+1.4%(前回予測0.6%か ら上方修正)となり、3年ぶりにプラスに反転する。また、2011年度も+2.0%と2年連続のプラス成長となるであろう。

* 今回予測では、旧政権下で決定された2009年度補正予算の一部執行停止および2010年度以降本格的に影響の表れる鳩山新政権のマニフェストをベースと する新政策のシミュレーション結果を盛り込んだ。補正予算一部執行停止は、2009年度実質GDPを0.24%ポイント引き下げる。マニフェストの新政策 効果は、2010年度にはほとんどないが、2年目の2011年には実質GDPを0.22%ポイント拡大する。