第119回景気分析と予測<成長牽引の2つの輸出に先行きリスク>

2018-11-26

成長牽引の2つの輸出に先行きリスク自然災害と貿易摩擦の高進が景気下押し

1.CPB World Trade Monitorによれば、2018年4-6月期の世界輸出(数量ベース)は前期比+0.1%と1-3月期の同+1.0%から減速した。7-9月期は前期比+1.3%増加し、回復したように見える。地域別に見れば、先進国は引き続き低下トレンドを示している。一方、新興国は増加に転じたが米中貿易摩擦高進の影響を受け、駆け込み輸出が出ているようである。このため18年後半から19年にかけて世界貿易減速リスクが高まる可能性が高い。

2.11月14日発表のGDP1次速報値によれば、7-9月期実質GDPは前期比年率-1.2%と2四半期ぶりのマイナス成長。実績は、市場コンセンサス(ESPフォーキャスト11月調査)の同-0.72%とCQM最終予測(支出サイド)の同-1.8%のほぼ間に収まった。CQM最終予測は幾分ペシミスティックであったが、3カ月前からマイナス成長を予測し続けた。一方、市場コンセンサスは最終予測を除きプラス成長を予測し続けた。

3.7-9月期は自然災害(7月の豪雨、9月の台風21号、北海道胆振東部地震)の影響が供給制約として色濃く出た。実質GDP成長率への寄与度を見ると、国内需要は前期比年率-0.8%ポイントと2四半期ぶり、純輸出は同-0.3%ポイントと2四半期連続、ともにマイナスとなった。特に民間最終消費支出と輸出は影響を強く受けた。

4.7-9月期GDP1次速報値を織り込み、2018年度の実質GDP成長率を+1.0%、19年度を+0.6%、20年度を+0.8%と予測した。前回(第118回)予測に比して、18年度を-0.1%ポイント、19年度-0.3%ポイント下方修正、20年度を+0.2%ポイント上方修正した。緩やかな回復を維持するという予測シナリオに大きな変化はないが、18-19年度については自然災害と貿易摩擦高進の影響を強く見た。

5.自然災害と貿易摩擦の高進は、これまで日本経済が享受してきた2つの輸出による景気回復への下押し圧力となろう。緩やかな回復シナリオが海外状況に大きな影響を受けるようになってきた。

6.標準予測では、消費増税が予定通り実施されると想定。この影響で19年度後半の景気落ち込みは避けられない。前回から税率引き上げ幅が小幅で軽減税率が適用されること、実施時期が年度の真ん中であること、政府の経済対策、オリンピック需要の影響もあり19年度はマイナス成長を避けられよう。ただ前年同期比でみると、19年10-12月期と20年の最初の3四半期はゼロないし小幅のマイナス成長が続く。

7.先行き世界経済にとっての課題は米中貿易摩擦の高進である。11月米国中間選挙の結果はこの傾向に影響を及ぼさない。むしろ長期化の様相を呈し、今後影響は2019年以降に発現してくる。多くのシミュレーション結果が示すように、関税報復合戦の影響は当事者国のみならず世界にとって、誰も勝者たりえないマイナスの結果をもたらす。

関連論文

稲田 義久
経済予測

Kansai Economic Insight Monthly Vol.73 – 景気は足下悪化、先行きも悪化の兆しか –

[ Monthly Report(関西) ] AUTHOR稲田 義久 / 豊原 法彦 / 野村 亮輔 / 馬 騰 / KARAVASILEV, Yani / CAO THI KHANH NGUYET DATE2019-05-24

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Abstract/Keywords

・3月の生産は2カ月ぶりの前月比マイナス。結果、1-3月期は前期比-3.1%下落し、2四半期ぶりのマイナス。なお、近経局は生産の基調判断を「足踏みをしている」と前月から据え置いた。 ・4月の貿易収支は3カ月連続の黒字だが、前年比縮小した。米中貿易摩擦の影響を受け、対中貿易収支が10カ月連続の赤字で赤字幅は前年比大幅拡大した。 ・4月の景気ウォッチャー現状判断DIは、2カ月ぶりに前月比改善だが、4カ月連続で50を下回った。好調なインバウンド需要に加え、レジャー関連を中心に改元に伴う消費者心理が影響した。 ・2月の関西実質現金給与総額は2カ月連続の前年比プラスだが、伸びは小幅にとどまった。 ・3月の大型小売店販売額は5カ月連続の前年比プラス。百貨店はインバウンド需要の影響でプラスに寄与したが、スーパーは、気温の影響もあり、季節品の不調によりマイナスに寄与した。 ・3月の新設住宅着工戸数は2カ月ぶりに前年比増加した。結果、1-3月期は4四半期連続のプラス。うち、貸家は減少したものの、持家と分譲は増加した。 ・3月の有効求人倍率は前月比横ばい、新規求人倍率は4カ月ぶりに同悪化。完全失業率も4カ月ぶりに悪化し、雇用情勢に一服感がみられる。 ・3月の建設工事出来高は13カ月連続の前年比増加となった。結果、1-3月期は4四半期連続で前年から増加した。また、4月の公共工事請負金額は2カ月ぶりの前年比増加。 ・4月の関空の外国人入国者数は7カ月連続で前年比増加だが、一桁台の伸びが続いている。国籍別にみると、2月の台湾からの入国者は2カ月ぶりに前年比減少し、韓国・香港は9カ月連続で同減少しており、依然伸びは低調である。 ・4月の製造業購買担当者景況指数は2カ月ぶりの悪化だが、2カ月連続で景気分岐点を上回っている。米中貿易摩擦の影響を受け、中国の工業生産は低調な伸びにとどまっている。また、社会消費品小売総額は3カ月ぶりに下落し、16年ぶりの低水準となった。 APIR_KEIM_Vol73
稲田 義久
経済予測

Kansai Economic Insight Monthly Vol.72 – 景気は足下悪化傾向、先行きは改善の兆しか –

[ Monthly Report(関西) ] AUTHOR稲田 義久 / 豊原 法彦 / 木下 祐輔 / 野村 亮輔 / 馬 騰 / KARAVASILEV, Yani / CAO THI KHANH NGUYET DATE2019-04-23

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Abstract/Keywords

KEIM, 月次レポート, 関西経済

- 景気は足下悪化傾向、先行きは改善の兆しか - ・2月の生産は4カ月ぶりの前月比プラスだが、1-2月の生産は10-12月平均比-3.0%下落し、生産は依然低調である。近経局は生産の基調判断を「足踏みをしている」と前月から据え置いた。 ・3月の貿易収支は2カ月連続の黒字だが、前年比縮小した。輸出・輸入はともに減少しており、内容がよくない。世界経済減速の影響もあり、特に中国向けの科学光学機器、半導体等電子部品等が減少した。 ・3月の景気ウォッチャー現状判断DIは、2カ月ぶりに前月比悪化し、4カ月連続で50を下回った。月後半の気温の低下により春物商材の動きが芳しくなかったことがマイナスに寄与した。 ・1月の関西コア実質現金給与総額は2カ月ぶりの前年比改善だが、伸びは小幅にとどまった。 ・2月の大型小売店販売額は4カ月連続の前年比マイナス。百貨店はインバウンド需要の伸びがプラスに寄与したが、スーパーは野菜の相場安と冬物衣料の不調によりマイナスに寄与した。 ・2月の新設住宅着工戸数は4カ月ぶりの前年比減少。持家は増加したものの、貸家の減少の影響が大きい。 ・2月の有効求人倍率は5カ月ぶり、新規求人倍率は2カ月連続で前月比小幅改善した。完全失業率も3カ月連続で改善しており、引き続き雇用情勢は堅調である。 ・3月の公共工事請負金額は3カ月ぶりの前年比減少。結果、1-3月期は5四半期ぶりに前年比増加した。 ・3月の関空の外国人入国者数は6カ月連続で前年比増加したが、依然一桁台の伸びに留まっている。国籍別にみると、1月の台湾は8カ月ぶりに前年比増加したものの、韓国・香港からの入国者数は8カ月連続で同減少している。 ・中国1-3月期実質GDP成長率は好調な第2次産業に支えられ、前年同期比6.4%となった。また、3月の製造工業PMIは2カ月ぶりに改善し、4カ月ぶりに50を上回った。
稲田 義久
経済予測

Kansai Economic Insight Monthly Vol.71 – 景気は足下悪化傾向、先行きは改善の兆しか –

[ Monthly Report(関西) ] AUTHOR稲田 義久 / 豊原 法彦 / 木下 祐輔 / 生田 祐介 / CAO THI KHANH NGUYET / 馬 騰 DATE2019-03-26

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Abstract/Keywords

- 景気は足下悪化傾向、先行きは改善の兆しか - ・1月の生産は3カ月連続の前月比マイナス。10-12月平均比でも低下し、1-3月期の最初の月としては低調である。近畿経産局は生産の基調判断を前年9月以降始めて下方修正した。 ・2月の貿易収支は2カ月ぶりの黒字となり前年比拡大したが、輸出と輸入はともに減少。輸出については、中国を始めとする世界経済の減速には注意が必要である。 ・2月の景気ウォッチャー現状判断DIは、4カ月ぶりの前月比改善だが、3カ月連続で50を下回った。暖冬の影響や、生活防衛意識の高まりから消費の勢いは鈍い。中国EC法の影響は前月から緩和したものの、インバウンド需要の増勢は鈍化している。 ・12月の関西2府4県の実質現金給与総額は2カ月ぶりの前年比減少。結果、2018年の実質現金給与総額は3年ぶりに減少した。 ・1月の大型小売店販売額は3カ月連続の前年比マイナス。インバウンド需要減少の影響で百貨店は2カ月ぶりのマイナス、スーパーは野菜の相場安のため4カ月連続のマイナスであった。 ・1月の新設住宅着工戸数は3カ月連続の前年比増加。利用関係別に見れば、マンションの急増が全体を押し上げた。 ・1月の有効求人倍率は3カ月ぶりに前月比小幅悪化したが、完全失業率は2カ月連続の改善。引き続き雇用情勢は堅調である。 ・2月の公共工事請負金額(季節調整値)は前月比2カ月連続のプラスとなり、持ち直しつつある。 ・2月の関空の外国人入国者数は5カ月連続で前年比増加したが、一桁台の伸びが続いている。国籍別では、2018年は自然災害の影響もあり、台湾、香港では前年比減少し、韓国はほぼ同横ばいとなった。 ・中国2月の製造業PMIは3カ月連続で景気分岐点を下回った。うち、生産指数は2009年1月以来の低水準となった。また、米中貿易摩擦の影響を受け、中国の対米貿易黒字は前年同月比-29.8%と大幅縮小し、11カ月ぶりのマイナスであった。