2013年度の「アジアの自然災害」研究会報告書が完成しました。
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本研究では、Hsiao et al. (2010)の手法により、東日本大震災の被災三県(岩手県、宮城県、福島県)の、同震災が発生しなかった場合に実現されていたであろう名目及び実質GRPの推計を行いました。これと、速報的に発表されている被災三県GRPとの比較を行い、同震災が被災地の経済活動に与えた影響の定量把握を試みました。
阪神・淡路大震災以降、復興計画の重要な目的の一つとして、間接経済被害の極小化が挙げられます。そのため、産業連関分析や一般均衡分析を駆使した先行研究の蓄積は多くあります。しかし、全体として復興政策や被災地の回復過程が間接被害の軽減にどの程度貢献しているか知るためには、それらの影響を含んだ被災地GRPの実測値と、大規模自然災害が発生しなかった場合に達成されていたであろう被災地GRP(カウンターファクチュアル値)の比較を行う必要があります。
近年、そのようなアプローチにより災害の間接被害を計測する手法が提案されてきています。Dupont and Noy (2012)は、Abadie et al. (2010)が提案しているSynthetic Control Methodを用いて阪神・淡路大震災の間接経済被害の推計を行いました。その結果、先行研究の主張に反して、被災後15年が経過しても、兵庫県GRPには負の影響があることを発見しています。
本年度は、Hsiao et al. (2010)の手法に基づき東日本大震災の2011年GRPのカウンターファクチュアル値を推計し、実測値との差分を計測しました。なお、同手法により2010年以前の被災三県GRPのシミュレーションも行いましたが、名目及び実質GRPの両方において実測値との誤差が少ない良好な結果が得られました。分析の結果、岩手県、宮城県では、カウンターファクチュアルGRPと実測値の差分は小さいことが分かりました。被災後の復旧活動や需要増等による効果が大震災によるストック滅失や取引機会の逸失等による効果が相殺しあっている様子がうかがえます。しかし、福島県においては、GRP実測値がカウンターファクチュアル値を大きく下回り、原発事故等による復興政策の遅れが間接経済被害を拡大させていることが分かりました。
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