2015年度報告書が完成しました。
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本報告書は、近年発生した大規模自然災害のケーススタディを行い、これらの復興過程を比較することで、各ケースの課題について把握するとともに、復興を推進する上での共通の課題やそれらが発生する構造について明らかにすることを目的とする。ケースとして、ここでは東日本大震災、2011年タイ大洪水、2013年フィリピン台風「ハイアン」を取り上げる。
大災害後の政策研究については、被災者個人への緊急人道支援の観点から多くの研究がなされている(Telford (2007)、Tafti and Tomlinson (2015))。また、近年では、被災地の社会・経済的復興についての研究も行われるようになってきた(Aldrich (2012)、Cavallo et al. (2010)、Hsiao and Fujiki (2013))しかし、被災地の経済・社会的復興と復興政策の関連性についての研究は多くない。
そこで、本報告書では、主として被災地の経済的復興に関心を払いつつ、各ケースの復興政策と復興状況の関係について、ケーススタディやサーベイを元に分析し、その結果を比較する。特にフィリピンについては被災地にて聞き取り調査を行う。
分析の結果、東北、フィリピン、タイの被災地における復興の課題は、被災地の人口減少・高齢化、貧困、都市と農村の格差拡大等、災害前からの条件が影響していることが分かった。また、今後、東北、フィリピンの被災地の復興を進めていく上では、被災前からの社会的課題の解決を復興政策の中に位置づけつつ、政府主導の復興推進ではなく、被災地の人々が中心となった地域開発戦略の計画と実施が必要となる。