APIR Commentary No.50<オーストラリアのAIIB参加表明の背景とは>
Abstract
今年3月29日、日米が中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)の運営方針に対する懸念を示す中、オーストラリアのアボット首相はAIIBに参加する意向を正式に表明した。アボット政権は当初、AIIBの参加に関してためらいを見せていた。例えば、昨年11月の閣議では、日本とアメリカとの同盟を重視する外務省がAIIBに対する反対の意向を示し、経済成長のためにアジア諸国へのインフラ投資の重要性を訴えた財務相と対立した。議論を重ねた結果、政府は参加を見合わせる方針を新聞等で発表した。しかし、表明期限のわずか2日前、これまでの方針から一転、参加の意向を表明した。
この一見唐突に見える転換の背景について明らかにしておく必要があろう。本稿では、オーストラリアがAIIBに参加を表明した理由と背景を考察する。検討の結果、参加の判断に影響を及ぼした要因は、①他国の参加、②中国との協議を通じた発言力確保、③オーストラリアの経済戦略という3点であることを示す。