研究成果

research

コロナ禍における大阪府の人口移動動態-住民基本台帳人口移動報告月次データを用いた分析-

Abstract

1. 大阪府の人口は2015年に転入超過に転じ、6年連続で転入超過が続いている。ただし、20年はコロナ禍の影響で転入・転出者数が4年ぶりに減少したが、トレンドに変化はない。

2. 人口移動動態を地域別にみれば、近畿からの転入超過数が最も多い。一方、2018年から20年にかけて、南関東への転出超過の傾向は続いているものの、幾分縮小している。その他の地域では、中国、四国、九州地域からの転入超過数は18年から19年にかけて拡大したが、20年は幾分縮小している。

3. 転入超過数が最も多い年齢階級は20~24歳で、うち近畿からが最も多く、中国、四国、九州も多い。しかし、20年はコロナ禍により府県間移動が制限されたこともあり、中国、四国、九州からの転入超過数が減少した一方、南関東への20~24歳の転出超過数が縮小している。

4. 大阪府内では、大阪市への転入超過数は拡大しており、特に大阪府北部では転入超過数が拡大している地域が増加している。一方、南部では転出超過が続いている地域が多い。

5. 大阪府に対して4度にわたって発令された緊急事態宣言は、人口移動動態に影響を及ぼしている。その影響は男女別に異なる状況となっており、総じて女性の転入者への影響が大きい。

本文

1. はじめに

総務省が2021年6月に発表した国勢調査(速報値)によれば、20年10月1日現在の日本の総人口は1億2,622万7千人と、15年と比べて0.7%減少したものの、前回調査より減少幅(2015/10年:-0.8%)は幾分縮小した。この要因としては、死亡数が出生数を上回る自然減は拡大したものの、日本で生活する外国人が増加したことに加え、新型コロナウイルス(以下、COVID-19)の感染拡大により、海外から帰国した日本人が増加したこと等が指摘されている。都道府県別にみれば、東京都の人口が前回より4.1%増加し、初めて1,400万人を超え、全国の人口の約 11%を占める状況となった。一方、関西では前回より-0.8%減少し、2,054万人となった。うち、滋賀県は人口の増加幅が縮小し、大阪府は減少から増加に転じたが、その他府県では減少幅が拡大した(図表1)。

 

 

人口減少が続く中、COVID-19の影響で日本では、4度にわたって緊急事態宣言が発令され、人々は大きな行動変容を迫られた。感染防止策により、人流は抑制され、人口移動に大きな影響が表れている。中でも、人口が集中している東京都の転入超過数は縮小している一方で、大阪府の転入超過数は拡大しており、異なった移動動態となっている。2021年に入ってからも、東京都は転出超過の傾向は続き、9月1日時点の人口は1,403万7,872人と4カ月連続で減少となるなど、コロナ禍で人口動態に変化がみられている。

そこで本稿では、主として大阪府を取り上げ、ここ数年の人口動態の傾向がコロナ禍の影響により、どのような変容を遂げたのかを概観・分析を行っていく。さらに4度の緊急事態宣言が人口動態に与えた影響を月次ベースで確認する。

 

2. 大阪府の人口移動動態の変化
2-1. 2020年の人口移動動態の変化:東京 vs.大阪

大阪府の人口移動動態を確認する前に、東京都の状況をみてみよう。総務省の『住民基本台帳人口移動報告』によれば、2020年の東京都への転入者数は43万2,930人、転出者数は40万1,805人であった。結果、転入超過数は3万1,125人となり、19年から5万1,857人減少した。外国人を含めて記録を始めた14年以降で過去最少となり、これまでの「東京一極集中」と言われていた社会構造に変化が見られる(図表2)。要因としては、緊急事態宣言発令等で進学や就職に伴う移動ができなかったことや、テレワークの普及等により東京都外へ転出した人が増加したことなどが考えられる。

 

次に2020年の大阪府の状況をみれば、転入者数は17万2,563人、転出者数は15万9,207人であった。結果、転入超過数は1万3,356人となり、19年から5,292人増加した。推移をみれば15年に転入超過に転じて以降、6年連続で転入超過が続いている(図表3)。関西では14年以降、大阪府を中心にインバウンド需要が高まっていたことから、飲食業や宿泊業等のサービス業へ就職する人たちが転入していたことが考えられる。ただし、20年はコロナ禍の影響で転入者数及び転出者数が4年ぶりにいずれも減少している。転出者数の減少幅が転入者数のそれを上回ったため、転入超過となった。

 

2-2. 大阪府の人口移動動態:地域別、年齢階級別の特徴:2018-20年

まず、大阪府の人口移動動態の特徴を地域別にみてみよう。図表4は、大阪府の転入超過数を地域別にみたものである。

 

図からわかるように近畿からの転入超過数が最も多く、2018年は6,293人、19年は8,385人へと拡大している。20年はコロナ禍の影響で人流が抑制されていたものの、転入超過数は10,665人となっており、19年から更に拡大した。

南関東への人口移動動態をみれば、転出超過の傾向が続いているものの、2018年の12,116人から19年は11,852人へと幾分縮小している。20年は更に8,567人へと縮小しており、この要因としては緊急事態宣言発令等で、進学や就職による転居を伴う移動が制限されたことが影響していると考えられる。

その他の地域をみれば、中国、四国、九州地域の転入超過数は 2018から19年にかけて拡大したが、20年は幾分縮小している。前述した緊急事態宣言発令等が遠方からの移動者にも影響していると考えられる。

次に、年齢階級別に転入超過数の経年変化をみてみよう(後掲の参考図表1参照)。

2018年の転入超過数が最も多い年齢階級は20~24歳で、うち近畿が4,472人、中国が1,710人、九州が1,364人、四国が1,299人となっている。

更に2019年をみれば、上記の4地域における20~24歳の転入超過数はいずれも18年と比べて増加していることがわかる。また、25~29歳の転入超過数も増加しており、特に九州は18年が転出超過であったのが転入超過に転じている。

しかしながら、2020年における20~24歳の転入超過数をみれば、近畿は増加しているものの、中国、四国、九州は減少している。

一方、南関東への状況を見ると、2018年から19年にかけて20~24歳の転出超過が拡大しており、若年層の人口が流出している状況であった。しかし、20年はコロナ禍で人流抑制の影響もあり、上記の年齢階級の南関東への転出超過数は縮小している。

以上から、大阪府への転入超過は西日本からが中心であり、主に就職を契機に移動する世代が多いことがわかる。この要因としては前述したように大阪府は堅調なインバウンド需要に支えられていたこともあり、サービス業へ就職する人が増加していたことが考えられる。しかし、COVID-19感染拡大防止策として、人流が抑制されたため、特に若年層の転入者が減少した状況となっている。

2-3. 大阪府内の人口移動動態

地域別、年齢階級別に人口移動動態の特徴をみてきたが、以下では大阪府の各市町村別にみていく。2018-20年の3年間で大阪府内の転入超過となった市町村は16市町村、転出超過となったのは27市町村となっている(後掲の参考図表2参照)。中でも、大阪市への転入超過数は、2018年が1万2,081人、19年が1万3,762人、20年が1万6,802人と拡大している。大阪府内のエリアによっても人口移動動態は異なっている。転入超過となった市町村(豊中市、吹田市、茨木市、箕面市、島本町など)の多くは大阪府北部となっており、また、転入超過数が拡大している地域が増加している。一方、転出超過となった市町村(岬町、貝塚市、泉南市、堺市、岸和田市など)の多くは大阪府南部の地域が多く、転出超過が続く状況となっている。このように大阪府全体でみれば転入超過となっているものの、市町村別にみれば、大阪市エリア、北部や南部エリアでは転入超過数に差がみられている(図表5)。

 

 

3. 緊急事態宣言が人口移動に与えた影響

前節では、年次ベースで地域別、年齢階級別にコロナ禍の人口移動動態を見てきた。本節では4度にわたって発令された緊急事態宣言が人口動態にどのような影響を与えたかを月次ベースでみていく。

最初の緊急事態宣言が大阪府に発令された期間(2020年4月7日~5月21日)となる20年4-5月期を見ると、転入者はそれぞれ男性が2万548人、女性が1万5,893人となっている。4月において進学や就職を契機に転入者は増加する傾向があるものの、前年同期(19年4-5月期)と比べれば、男性は-1,758人、女性は-2,738人減少している。同様に、転出者数をみれば、男性は1万9,462人(同-2,963人)、女性は1万4,285人(同-3,203人)といずれも減少している。転入者数、転出者ともに大きく減少しており、緊急事態宣言発令によって都道府県を跨ぐ往来が制限された影響が、特に女性の方に表れている。

2021年に入り、3度にわたる緊急事態宣言が発令された。2度目の時期(21年1月14日~2月28日)をみると、21 年 1-2 月期の転入者数はそれぞれ男性が1万1,541人(前年同期差+81人)、女性が9,715人(同-524人)となっており、前年に比べて男性より女性の方が減少している。一方、同期の転出者数をみれば、男性が 1万1,572人(同+528人)、女性が9,625人(同+207人)となっている。

3度目の緊急事態宣言時期(2021年4月25日~6月20日)にあたる21年4-6月期の転入者数をみれば、進学や就職時期の影響もあり男性が2万5,959人、女性が2万1,115人となっている。しかしながら、コロナ禍の影響がない前々年同期(19年4-6月期)と比すれば、男性は-2,522人、女性は-2,505人といずれも大きく減少している。また、同期の転出者数をみると、男性は2万6,172人(同-2,136人)、女性は2万34人(同-2,223人)となっている。結果、男女とも転入者数及び転出者数がいずれも大きく減少したが、女性が転入超過(1,081人)となったため、全体では転入超過(868人)を維持した。

4度目の時期(2021年8月2日~9月30日)では、8月の転入者数はそれぞれ男性が 5,995人(前々年同月差-405人)、女性が 5,026人(同-344人)と、男女とも減少している。また、転出者数も男性が5,972人(同-95人)、女性が5,086人(同-166人)となっており、転入者数の減少幅が転出者数のそれを上回ったため、6カ月ぶりの転出超過に転じている。

以上のように、4度の緊急事態宣言の発令は、人口動態に影響を及ぼしている。その影響は男女別に異なる状況となっており、総じて女性の転入者への影響が大きい。なお、2021年1-8月までの大阪府全体の転入者数は12万 7,397人、転出者数は12万1,750人となっており、5,647人の転入超過だが、19年同期(7,057人)を下回っている。2015年以降順調に転入超過数は拡大を続けていたが(前掲図表3参照)、21年は幾分縮小する傾向が見られ始めていることに注意が必要である。

 

 

4. まとめ

これまでにみたように、コロナ禍の影響で人口移動動態は変化しつつある。東京都ではテレワークの普及等により、都外へ人口が流出し、転入超過は縮小している。大阪府では、これまで堅調であったインバウンド関連産業へ就職する人が転入していたこともあり、転入超過が続いていた。しかしながら、コロナ禍によりインバウンド需要が消失している現在、飲食や宿泊業などサービス関連産業は大きな打撃を受けている。関連産業への就職を契機に大阪府に転入してくる、特に20歳代の西日本からの転入者にとって影響が表れている。また、大阪府内の市町村をみれば、大阪市への転入超過数の増加は続き、大阪府北部では転出超過であった地域が転入超過に転じている。一方で、大阪府南部では、多くの地域で転出超過が続いており、地域間で移動動態が異なっている状況である。更に、コロナ禍となり1年半以上が経過したが、大阪府に対して4度にわたって発令された緊急事態宣言は人口移動に大きな影響を与えている。

コロナ禍の影響を受けながらも、大阪府の転入超過の傾向は依然続いている。これは前述したように大阪市のみならず大阪北部への人口流入の影響が大きいと言えよう。北部地域への転入超過拡大の背景の一つには、大阪府中心部や隣接する京都府など、東西を向いた交通要衝の中間点に位置しており、交通アクセスの利便性の良さや、住宅地などの再開発で地域住民が住みやすい環境が整備されつつあることが考えられる。

また、「with コロナ」時代においては、テレワークなど多様な働き方が求められているため、都市部と周辺地域の関係も変容している。例えば、東京都ではテレワークの拡大により、特に高い技能を持つ人材の東京都外への転出が指摘されており、大都市と周辺地域における人々の住環境の関係性に動きがみられている。

今後、大阪府では日本国際万国博覧会(以下、大阪・関西万博)をはじめ、多くのイベントが予定されていることから、一層人口移動動態が注目されよう。大阪・関西万博開催に向け、交通インフラ網が整備されることで、これまで転出超過となっていた南部地域へのアクセス向上にもつながることが予想される。大阪・関西万博開催まで3年半となったが、ICT化などのイノベーションも喚起しつつ新産業や雇用を創出し、大阪府と他道府県間のみならず、大阪府内の南北間の移動を活性化することが可能となれば、今後の大阪府への人口移動動態のトレンドに少なからず影響が表れてくるだろう。

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    • 関西の景気は、足下局面変化、先行きは下げ止まりの兆しがみられる。足下、生産は大幅減産となった。雇用環境は失業率が小幅悪化したものの、労働力人口と就業者数はともに増加していることもあり、持ち直している。消費は初売りセールやインバウンド需要の増加で好調。貿易収支は2カ月ぶりの黒字だが、黒字幅は大幅縮小。先行きは令和6年能登半島地震の影響が和らぎつつあるものの、生産回復の遅れが景気の下押しリスクとなろう。
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    • 1月の失業率は前月より小幅悪化したが、労働力人口と就業者数はともに増加。また、就業率も前月より上昇した。雇用情勢は持ち直している。なお、一部の産業を除いて、足下では労働需給の動きはともに低調である。
    • 12月の現金給与総額は2カ月ぶりの前年比増加となり、伸びは前月より大きく拡大した。結果、実質賃金の減少は続いているが、減少幅は前月より縮小した。
    • 1月の大型小売店販売額は28カ月連続の前年比増加となった。うち、百貨店はインバウンド需要の増加や身の回り品などの好調で、23カ月連続のプラス。スーパーも16カ月連続で拡大した。
    • 1月の新設住宅着工戸数は2カ月連続で前月比増加。貸家は減少したものの、持家、分譲は増加となったためである。
    • 1月の建設工事は公共工事がマイナスに転じた影響で25カ月ぶりの減少。2月の公共工事請負金額も2カ月連続の前年比減少となった。
    • 2月の景気ウォッチャー現状判断は2カ月ぶりに前月比改善。令和6年能登半島地震の影響が和らいだことやインバウンド需要の増加が景況感に好影響となった。また、先行き判断は賃上げへの期待もあり、4カ月連続で改善した。
    • 2月の貿易収支は2カ月ぶりの黒字だが、黒字幅は前年比大幅縮小。春節の時期のずれから、対中輸出が減少に転じた影響とみられる。一方、輸入は11カ月ぶりに前年比増加となった。
    • 2月の関空経由の外国人入国者数は春節休暇の影響もあり、単月としては過去最高を記録。インバウンド需要は堅調に推移している。
    • 1-2月の中国経済は、前月より大きな改善が見られなかった。工業生産は前月比で減速となったうえ、個人消費の回復も勢いを欠いている。中国政府は今年の実質経済成長率の目標を「5%前後」と定めたが、個人消費を直接支援する景気刺激策の実施には慎重である。そのため、1-3月期の景気は10-12月期より大きな改善が見込まれないと予想される。
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    ABSTRACT

    【ポイント】

    ・JNTO訪日外客統計によれば、1月の訪日外客総数(推計値)は268万8,100人、2019年同月比では-0.0%と2カ月ぶりに小幅マイナスに転じたが、コロナ禍前とほぼ同程度となった。なお、国・地域別では韓国、台湾とオーストラリアが単月で過去最高を記録した。

    ・目的別訪日外客総数(暫定値)をみれば11月は244万890人。観光客は220万6,883人となり、2カ月連続で200万人超の水準となった。

    ・令和6年能登半島地震は新潟県、富山県、石川県、福井県の観光業に大きな影響を与えている。政府は当該地域で落ち込んだ観光需要を喚起するために、3月より「北陸応援割」を開始した。喚起策により、国内旅行者及び訪日旅行者の増加が期待されよう。

    【トピックス1】

    ・関西1月の輸出は春節休暇の時期のズレも影響し、9カ月ぶりの前年比増加。一方、輸入は10カ月連続で減少した。貿易収支は12カ月ぶりの赤字となった。

    ・1月の関西国際空港への訪日外客数は70万402人と、2カ月連続で70万人超の水準。低調なアウトバウンド需要に比してインバウンド需要は堅調に推移している。

    ・12月のサービス業の活動は小幅改善だが、足踏みの状態が続く。第3次産業活動指数は4カ月ぶりの前月比上昇。また、対面型サービス業指数は2カ月ぶりに同上昇した。観光関連指数も年末の旅行需要増加の影響もあり、旅行業や宿泊業が上昇に寄与し、4カ月ぶりの同上昇となった。

    【トピックス2】

    ・11月の関西2府8県の延べ宿泊者数は11,949.3千人泊で、2019年同月比+10.0%と3カ月連続の増加となった。

    ・うち、日本人延べ宿泊者数は8,124.0千人泊、2019年同月比+1.3%と3カ月連続の増加。また、外国人延べ宿泊者数は3,825.3千人泊となり、同+34.6%と4カ月連続で増加した。日本人宿泊者に比して外国人宿泊者は着実に増加している。

    【トピックス3】

    ・2023年10-12月期における関西2府8県の国内旅行消費額(速報)は1兆1,331億円、19年同期比+12.4%と3四半期連続のプラス。23年通年では4兆1,034億円となり、コロナ禍前(19年比-0.6%)をほぼ回復した。

    ・国内旅行消費額のうち、10-12月期の宿泊旅行消費額は9,101億円で2019年同期比+21.2%となり、2四半期連続のプラス。一方、日帰り旅行消費額は2,230億円。2019年同期比-13.1%と7-9月期(同-21.4%)からマイナス幅は縮小したものの、宿泊旅行消費額に比して回復ペースは緩慢である。

     

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    ABSTRACT

    1月1日に発生した「令和6年能登半島地震」の影響が懸念されている。震災によって大きな被害を受けた新潟県、富山県、石川県の3県(以下、北陸3県と記す)の被害状況に基づき、復旧復興の観点からその経済的な影響を考察した。それを整理し得られた含意は以下の通りである。

     

    1. ストックの観点から北陸3県経済をみれば、民間企業資本ストックは、各県とも「サービス」が最も大きい。次いで新潟県、石川県では「農林水産」が、富山県では「化学」が大きい。また、住宅ストックは新潟県が最も大きく、次いで石川県、富山県と続く。
    2. フローの観点から北陸3県経済をみれば、各県とも製造業のシェアが最も高い。うち、新潟県は「食料品」が、富山県は「化学」が、石川県は「はん用・生産用・業務用機械」がそれぞれ最も高いシェアを占めている。
    3. 今回の震災による北陸3県の直接被害(建築物等)を推計すれば、新潟県は5,177億円、富山県は2,946億円、石川県は5,827億円、3県計で1兆3,951億円となる。また、間接被害は4兆円となり、これは2020年度の名目GDPの0.4%に相当する。
    4. 人口移動の観点からみれば、北陸新幹線開業を契機に富山県、石川県でみられたような人口移動が今回の震災を契機に一層進む可能性がある。3月16日に金沢-敦賀間の延伸が実現するが、この効果は福井県では限定的と思われる。
    5. 今回の震災で北陸の観光業の特徴が明らかとなった。北陸は国内市場に強く依存した構造となっている。人口減少が長期トレンド下にあるため、この構造から脱却する必要がある。地域創生戦略にとって、インバウンド需要の一層の取り込みを実現する戦略が重要となろう。

     

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    稲田 義久 / 豊原 法彦 / 関 和広 / 野村 亮輔 / 郭 秋薇 / 盧 昭穎 / 吉田 茂一 / 宮本 瑛 / 新田 洋介 / 壁谷 紗代

    ABSTRACT
    • 関西の景気は、足下局面変化、先行きは悪化の兆しがみられる。足下、生産は3カ月ぶりの増産だが、10-12月期で均せば低調。雇用環境は失業率が4カ月連続で改善したが、有効求人倍率は悪化が続く。消費は年末商戦や好調なインバウンド需要で堅調。貿易収支は12カ月ぶりに赤字に転じた。自動車生産停止や中国経済減速のリスクもあり、先行き悪化の兆しがみられる。
    • 12月の生産は3カ月ぶりの前月比上昇だが、10-12月期では3四半期ぶりの減産。生産は低調である。
      23年通年の失業率は前年比横ばいだが、労働力人口と就業者数はともに増加し、雇用の回復は順調に進んだ。しかし、10-12月期は労働力人口と就業者数が前期よりいずれも減少し、就業率は低下した。足下では雇用回復の勢いがやや弱くなっている。
    • 11月の現金給与総額は24カ月ぶりの前年比減少。インフレの高止まりにより実質賃金は減少が続き、減少幅は前月より拡大した。
    • 12月の大型小売店販売額は27カ月連続の前年比増加となった。うち、百貨店はインバウンド需要の増加や身の回り品などの好調で、22カ月連続のプラス。スーパーも15カ月連続で拡大した。
    • 12月の新設住宅着工戸数は2カ月ぶりに前月比増加した。持家、分譲は減少したものの、貸家は増加となったためである。
      堅調な公共工事の影響もあり、12月の建設工事は24カ月連続の前年比増加。しかし、1月の公共工事請負金額は前年比減少に転じている。
    • 1月の景気ウォッチャー現状判断は3カ月ぶりに悪化。令和6年能登半島地震の発生によりサービス関連を中心に悪影響を及ぼした。一方、先行き判断は3カ月連続の改善。春節によるインバウンド需要増加の期待が寄与した。
    • 1月の貿易収支は12カ月ぶりの赤字だが、赤字幅は前年比大幅縮小。輸出は9か月ぶりに同増加に転じた。ただし、春節の時期のずれの影響もあるため、注意が必要である。一方、輸入は10カ月連続で同減少した。
    • 1月の関空経由の外国人入国者数は2カ月連続で70万人超の水準となり、インバウンド需要は堅調に推移している。
    • 1月の中国経済は、前月より大きな改善が見られなかった。消費者物価指数の低下傾向が顕著になっており、不動産市場の不況も続いている。また、企業の景況感も低迷している。ただし、2月の春節連休は例年より1日多くなっており、観光などレジャーの消費は前年より伸びる可能性が高いため、1-3月期の景気は10-12月期よりわずかな改善が見込まれる。
    【関西経済のトレンド】

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    ABSTRACT
    1. 2023年10-12月期の関西経済は、内需・外需ともに回復の動きが鈍くなっており、足踏みが続いている。家計部門では消費者センチメント、所得、雇用と多くの指標で伸び悩んでいる。企業部門では、景況感は堅調であるものの、生産は一進一退で弱い動きとなっている。対外部門は、インバウンド需要はコロナ禍前の水準以上に回復しているが、財輸出は前年割れが続いている。
    2. 家計部門は足踏み状態にある。大型小売店販売はインバウンド需要など客足の回復で堅調であるが、センチメント、所得・雇用環境、住宅市場など幅広い指標で弱い動きとなっている。物価上昇ペースは緩やかになってきたものの、賃上げ機運にも落ち着きが見られ、実質賃金の目減りが個人消費に影を落としている。
    3. 企業部門は、緩やかに持ち直しているが、生産など一部に弱い動きが見られる。景況感は製造業・非製造業ともに持ち直した。また今年度の設備投資計画は今のところ製造業・非製造業とも旺盛となっている。ただ生産は一進一退続きで、3四半期ぶりの減産となるなど回復の足取りは鈍い。
    4. 対外部門のうち、財貿易は輸出・輸入ともに低調である。輸出では全国と対照的に、関西は3四半期連続の前年割れとなっている。一方インバウンド需要は順調に回復している。関空経由の外国人入国者数、免税売上高などではコロナ禍前の水準を回復し、その後も増加傾向が続いている。
    5. 公的部門は、万博関連需要を背景に、引き続き堅調に推移している。
    6. 関西の実質GRP成長率を2023年度+1.4%、24年度+1.5%、25年度+1.5%と予測。22年度以降1%台の緩やかな回復基調が続き、24年度以降は日本経済を上回る伸びとなる見通し。前回予測に比べて、23年度は+0.1%ポイントの上方修正、24年度は-0.1%ポイントの下方修正、25年度は+0.1%ポイントの上方修正。
    7. 成長に対する寄与を見ると、民間需要は23年度+0.3%ポイント、24年度+0.9%ポイント、25年度+1.2%ポイントとなり、24年度に入って緩やかに回復する。公的需要は万博関連の投資により23年度+0.4%ポイント、24年度+0.3%ポイントと成長を下支えるが、25年度には剥落する。域外需要は、23年度は+0.7%ポイント、24年度+0.3%ポイント、25年度+3%ポイントとなる。
    8. 日本全体に比べて、予測期間通じて関西経済が増勢となる。23年度は設備投資を中心に民間需要・公的需要ともにやや増勢となる。一方外需は中国向け輸出の停滞から全国に比べると寄与は小幅となる。24年度は設備投資や公共投資など万博関連需要により全国を上回る伸びとなる。25年度も域外需要の押し上げから関西が全国を上回る。
    9. 今号のトピックスでは「令和6年能登半島地震の北陸3県経済への影響」および「大阪・関西万博の経済波及効果」を取り上げる。

     

    予測結果表

     

    ※説明動画は下記の通り4つのパートに分かれています。

    ①00’00”~01’46”: Executive summary

    ②01’46”~24’13”: 第147回「景気分析と予測」

    <依然遠い内需主導の回復、厳しい内外需好循環への道>

    ③24’13”~34’51”: Kansai Economic Insight Quarterly No.68

    <内外需の回復鈍く、足踏みが続いている:先行き24年度以降は民需と輸出の持ち直しで緩やかに改善>

    ④42’06”~42’34”: トピックス<令和6年能登半島地震と北陸3県経済-フロー、ストック、人流を中心に->

  • 野村 亮輔

    都道府県別訪日外客数と訪問率:12月レポート No.55

    インバウンド

    インバウンド

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    野村 亮輔 / 稲田 義久 / 松林 洋一

    ABSTRACT

    【ポイント】

    ・JNTO訪日外客統計によれば、12月の訪日外客総数(推計値)は273万4,000人、2019年同月比+8.2%と2カ月ぶりのプラス。2023年通年では年後半の回復が影響し、2,506万5,862人となり、コロナ禍前の8割程度(19年比-21.4%)を回復した。

    ・目的別訪日外客総数(暫定値)をみれば10月は251万6,623人。観光客は224万5,892人でコロナ禍前(19年同月比+3.1%)を回復した。

    ・訪日外客の先行きについては、回復が遅れている訪日中国人客の動向が気になるところである。2月は10日から春節が始まり、中国人客の増加が期待されている。一方で、中国経済減速の影響もあるため、大幅な増加は見込めず、緩やかな回復にとどまる可能性が高い。

    【トピックス1】

    ・関西12月の輸出は8カ月連続で前年比減少。また、輸入は9カ月連続で減少し、8カ月連続で2桁のマイナスであった。結果、輸入の減少幅が輸出のそれを大きく上回ったため、貿易収支は11カ月連続の黒字となった。

    ・12月の関西国際空港への72万1,677人となり、12月単月で過去最高を記録。2023年通年では652万5,158人となり、コロナ禍前の8割弱(19年比-22.1%)を回復した。

    ・11月のサービス業の活動は悪化傾向が続く。第3次産業活動指数は3カ月連続の前月比低下。また、対面型サービス業指数は2カ月ぶりに同低下した。観光関連指数も飲食店、飲食サービス業や宿泊業が低下に寄与し、3カ月連続の同低下となった。

    【トピックス2】

    ・10月の関西2府8県の延べ宿泊者数は11,417.1千人泊、2019年同月比では+10.1%となった。前月に引き続き外国人宿泊者の増加が延べ宿泊者全体の増加に寄与した。

    ・うち、日本人延べ宿泊者数は7,709.1千人泊、2019年同月比+4.7%と2カ月連続の増加。また、外国人延べ宿泊者数は3,708.0千人泊となり、同+23.1%と3カ月連続で増加した。

    【トピックス3】

    ・2023年10-12月期における訪日外国人消費額(1次速報、全目的ベース)は1兆6,688億円、19年同期比+37.6%と2四半期連続のプラス。23年通年では5兆2,923億円となり、過去最高額を更新した。

    ・2023年10-12月期の1人当たり旅行支出(全目的)は21万201円となった。2019年同期比+28.0%と、4四半期連続のプラス。1人1泊当たり旅行支出でみれば、2万5,493円となり、2019年同期比+30.5%増加した。費目別では、宿泊費、飲食費、交通費、娯楽等サービス費、買物代いずれも増加した。

     

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  • 稲田 義久

    Kansai Economic Insight Monthly Vol.129-景気は足下局面変化、先行きは悪化の兆し: 自然災害の影響や生産の下振れがリスク要因-

    経済予測

    経済予測 » Monthly Report(関西)

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 豊原 法彦 / 関 和広 / 野村 亮輔 / 郭 秋薇 / 盧 昭穎 / 吉田 茂一 / 宮本 瑛 / 新田 洋介 / 壁谷 紗代

    ABSTRACT
    • 関西の景気は、足下局面変化、先行きは悪化の兆しがみられる。足下、生産は2カ月連続の減産となり、弱い動き。雇用環境は失業率が3カ月連続で改善したが、7-9月期と比べて回復は緩やかである。消費は優勝セールや好調なインバウンド需要の増加もあり堅調。貿易収支は黒字だが、依然輸出入とも減少が続いており、貿易活動は停滞している。自然災害の影響や自動車生産停止による生産の下振れリスクもあり、先行き悪化の兆しがみられる。
    • 11月の生産は2カ月連続で前月比低下しており、低調な動きとなった。業種別では汎用・業務用機械を中心に減産が目立った。
    • 11月の失業率は前月から改善し、労働力人口と就業者数はいずれも増加に転じた。ただし、回復は緩やかであるため、10‐11月平均は依然7-9月期より低調である。足下労働需要の動きは弱く、製造業や建設業に加えて、サービス業での新規求人も減少した。
    • 10月の現金給与総額は23カ月連続の前年比増加となり、伸びは2カ月連続で拡大した。一方、実質ベースでは減少が続いているが、名目賃金の伸びが前月より拡大したため、減少幅は2カ月連続で前月より縮小した。
    • 11月の大型小売店販売額は26カ月連続の前年比増加となった。うち、百貨店はインバウンド需要の高まり、身の回り品と衣料品などの好調で、21カ月連続のプラス。スーパーも14カ月連続で拡大した。
    • 11月の新設住宅着工戸数は4カ月ぶりの前月比減少となった。持家、貸家と分譲はいずれも減少した。
    • 11月の建設工事は前年比23カ月連続の増加。足下の伸びは低いものの3カ月連続で加速した。また、12月の公共工事請負金額は前年比大幅増加した。結果、23年通年では全国に比して関西の伸びは大きなものとなった。
    • 12月の景気ウォッチャー現状判断は2カ月連続の改善。コロナ5類移行後、初めての年末商戦などの開催が好影響した。先行き判断は2カ月連続の改善したものの、能登半島地震の影響を考えると1月指標は悪化の可能性が高い。
    • 12月の貿易は輸出入ともに前年比減少。輸出は8カ月連続で前年比減少したが減少幅は小幅にとどまる。輸入は高騰していたエネルギー価格の落ち着きから9カ月連続の減少。結果、貿易収支は10カ月連続の黒字となった。
    • 12月の関空経由の外国人入国者数は70万人を超え、12月単月過去最高を記録。23年通年は年後半の回復が影響し、コロナ禍前の7割強の回復となった。
    • 中国の10-12月期実質GDPは前期から加速した。その結果、23年通年の経済成長率は+5.2%となり、政府目標の「5%前後」を小幅に上回った。ただし、足下では雇用回復の遅れと不動産市場の不況は依然として改善が見られず、生産と消費の回復は勢いが鈍化している。そのため、1-3月期の経済成長率は前期より大きな改善は見られないだろう。
    【関西経済のトレンド】
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  • 稲田 義久

    大阪・関西万博の経済波及効果 -最新データを踏まえた試算と拡張万博の経済効果-

    インサイト

    インサイト » トレンドウォッチ

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 野村 亮輔 / 高林 喜久生 / 入江 啓彰 / 下山 朗 / 下田 充

    ABSTRACT

    本稿の目的は、万博関連事業費などの最新データを踏まえた大阪・関西万博の経済波及効果の試算を示すとともに拡張万博の重要性を主張するものである。今回の試算の背景にはCOVID-19パンデミックやロシアのウクライナ侵攻の影響によるインフレの加速と供給制約の高まりがある。このような環境下においても、大阪・関西万博を開催することには重要な意義があるとわれわれは考える。万博開催が、関西経済、ひいては日本経済の反転に向けてのチャンスであり、これを生かすことは、反転を実現するための将来への投資でもある。分析結果の要約と含意は以下のとおりである。

    1. 今回の最終需要は、万博関連事業費7,275億円、消費支出8,913億円と想定した。前回より前者は1,381億円(前回比+23.4%)、後者は1,047億円(同+13.3%)の上振れとなった。
    2. 上記最終需要をもとにAPIR関西地域間産業連関表を用いて経済波及効果を計算した結果、生産誘発額は夢洲会場のみで発生する基準ケースで2兆7,457億円、夢洲会場以外のイベントによる追加的な参加(泊数増加)を想定した拡張万博ケース1で3兆2,384億円、加えてリピーター増を考慮した拡張万博ケース2で3兆3,667億円。前回よりそれぞれ3,698億円(前回比+15.6%)、4,509億円(同+16.2%)、4,849億円(同+16.8%)と上振れた。
    3. 得られた試算値は、最終需要が発生した場合、その需要を満たすために直接・間接に一定の産業構造の下でどの程度の需要が諸産業に発生するかを計算したものであり、明瞭な供給制約がないことを前提としている。その意味で本試算値は一定の幅を持って理解される必要がある。
    4. また、試算結果を実現するためには供給制約の緩和は必須である。そのためにDXの活用が重要となり、それが日本の潜在成長率を高めることになる。加えて万博が海外の旅行者に興味を持ってもらうためには、万博と絡めた旅行コンテンツの磨き上げが重要となる。
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  • 野村 亮輔

    都道府県別訪日外客数と訪問率:11月レポート No.54

    インバウンド

    インバウンド

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    野村 亮輔 / 稲田 義久 / 松林 洋一

    ABSTRACT

    【ポイント】

    ・JNTO訪日外客統計によれば、11月の訪日外客総数(推計値)は44万800人となり、6カ月連続で200万人を超えた。なお、中国人客を除いた総数は218万2,500人(同+29.1%%)で、5カ月連続でコロナ禍前を上回っている。

    ・目的別訪日外客総数(暫定値)をみれば、9月は218万4,442人となった(2019年同月比-3.9%)。うち、観光客は190万5,162人(同-0.4%)とコロナ禍前をほぼ回復。商用客は9万7,835人(同-36.5%)、その他客は18万1,445人(同-11.8%)であった。

    ・2024年1月1日に発生した「令和6年能登半島地震」により、これまで順調に回復してきた訪日外客への悪影響が懸念されている。突発的なリスクに弱いインバウンド需要に対して、日本の危機対応力を磨き上げ訪日外客に訴求していく戦略が必要である。すなわち、旅行先での「安全・安心」の確保に加え、ストレスなく旅行ができる「安堵」を得られることが重要となろう。

     

    【トピックス1】

    ・関西11月の輸出額は前年同月比-7.7%と7カ月連続の減少。また、輸入額も同-12.6%と8カ月連続で減少し、7カ月連続で2桁のマイナス。輸出、輸入いずれも減少だが、後者の落ち込み幅が前者を上回り、貿易収支は10カ月連続で黒字を維持した。

    ・11月の関西国際空港(以下、関空)への訪日外客数は66万3,795人と2カ月連続で60万人超の水準となった。

    ・10月のサービス業の活動は2カ月連続で悪化し、足踏みがみられた。第3次産業活動指数は2か月連続で、対面型サービス業指数は3カ月連続でいずれも前月比低下。また、観光関連指数も2カ月連続で同低下した。

     

    【トピックス2】

    ・9月の関西2府8県の延べ宿泊者数は10,375.7千人泊。外国人延べ宿泊者の増加が全体に寄与した影響もあり、2019年同月比では9カ月ぶりに増加に転じた。

    ・うち、日本人延べ宿泊者数は7,413.3千人泊と6カ月ぶりに2019年同月の水準を上回った。また、外国人延べ宿泊者数は2,926.4千人泊で、2019年同月比+19.8%と2カ月連続でコロナ禍前を上回った。日本人延べ宿泊者に比して外国人の回復の方が先行している。

     

    【トピックス3】

    ・2023年7-9月期における関西各府県の訪問率をみれば、大阪府39.5%が最も高く、次いで京都府30.2%、奈良県8.7%、兵庫県5.8%、和歌山県1.3%、滋賀県0.9%と続く。

    ・2023年7-9月期の関西2府4県の訪日外国人消費単価(旅行者1人1回当たりの旅行消費金額)は19年同期比+12.1%増加。費目別では、飲食費は減少したが、その他費目が増加した。

    ・関西の訪日外客数と消費単価を用いて、2023年7-9月期の関西における消費額を推計した。結果、訪日外客消費額は1,253億2,262万円となり、19年同期比-5.5%と、コロナ禍前の9割超を回復。全国の消費額が同+17.7%とコロナ禍前を回復したのに比して、関西の回復は依然遅れている。

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  • 稲田 義久

    Kansai Economic Insight Monthly Vol.128-景気は足下局面変化、先行きは悪化の兆し: 海外経済減速による輸出停滞が景気下押しリスク-

    経済予測

    経済予測 » Monthly Report(関西)

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 豊原 法彦 / 関 和広 / 郭 秋薇 / 盧 昭穎 / 野村 亮輔 / 吉田 茂一 / 新田 洋介 / 宮本 瑛

    ABSTRACT

    ・関西の景気は、足下局面変化、先行きは悪化の兆しがみられる。足下、生産は3カ月ぶりに減産し、一進一退の動きが続く。雇用環境は失業率が2カ月連続の改善だが、求人倍率は横ばい。消費は好調なインバウンド需要の増加もあり百貨店を中心に増加。貿易収支は黒字だが、輸出入とも減少が続いており、貿易活動は停滞しつつある。先行きについては、海外経済減速による輸出停滞の景気下押しリスクもあり、悪化の兆しがみられる。
    ・10月の生産は3カ月ぶりの前月比低下。生産用機械、化学(除.医薬品)、鉄鋼・非鉄金属や電子部品・デバイス等が減産した。10月生産を7-9月平均と比較すれば、小幅低下しており、生産は一進一退の動きが続く。
    ・10月の失業率は前月から改善した一方、労働力人口と就業者数はいずれも減少に転じた。また、就業率も低下した。雇用情勢は一時的な足踏みとなった。なお、足下求職活動の低調と新規求人数の増加から、労働需給の逼迫度合いが幾分強まった。
    ・9月の現金給与総額は22カ月連続の前年比増加となり、伸びは4カ月ぶりに拡大した。一方、実質ベースでは減少が続いているが、減少幅は前月より縮小した。
    ・10月の大型小売店販売額は25カ月連続の前年比増加となった。うち、百貨店はインバウンド需要が高まり、身の回り品と衣料品などの好調で、20カ月連続のプラス。スーパーも13カ月連続で拡大した。
    ・10月の新設住宅着工戸数は3カ月連続の前月比増加だが、2カ月連続で1桁の伸びにとどまった。持家の着工戸数の減少も影響が大きい。
    ・10月の建設工事は前年比増加となった。6月以降伸びは低迷していたが8月に底を打ち、足下の伸びは低いものの2カ月連続で加速した。また、11月の公共工事請負金額は前年比大幅増加だが、前月の大幅減を回復できていない。
    ・11月の景気ウォッチャー現状判断は、好調なインバウンド需要と在阪球団のセールもあり3カ月ぶりの前月比改善。先行き判断は、クリスマス・年末商戦での売上増加への期待が好影響し、4カ月ぶりに改善した。
    ・11月の関西の貿易は輸出入ともに7カ月連続で前年比減少した。輸出は米国向けの停滞が顕著。輸入は前年に高騰していたエネルギー価格が落ち着いた影響で7カ月連続の2桁の減少。結果、貿易収支は10カ月連続の黒字となった。
    ・11月の関空経由の外国人入国者数は66.4万人と2カ月連続で60万人を超えたが、コロナ禍前の水準は幾分下回った。
    ・11月の中国経済は、雇用回復の遅れと不動産市場の不況は依然として改善が見られない。一方、生産と消費は緩やかに持ち直しているものの、ゼロコロナ政策が続いていた前年同月に対する反動の影響もあると思われる。10-12月期の経済成長率は前期より幾分加速するだろう。

     

    【関西経済のトレンド】
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