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「人口減少」の検索結果 [ 2/2 ]

  • 林 敏彦

    日本経済の超長期予測

    ディスカッションペーパー

    ディスカッションペーパー

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    林 敏彦

    ABSTRACT

    日本の人口は2009年をピークとして既に減少に転じ、国立社会保障・人口問題研究所や国連の人口推計によればこの傾向は21世紀の終わりまで続くという。しかし、人口減少の影響は将来の問題として、GDPや一人あたりGDPの短中期の予測にはほとんど取り入れられていない。

    本稿では、われわれが独自に開発した人口とGDPに関する簡単なモデルを使って、2100年までの日本のGDPを推計し、1)過去140年の日本に固有なX 効率性が今後も不変とすれば、GDPは長期にわたって年平均1.3%減少する、2)GDPを2010年の水準に保とうとすれば、X効率性は年平均1?2%上昇しなければならない、3)一人あたりGDPを2010年の水準に保つためには、X効率性の上昇率は0.9%でよい、という結論を得る。

    本論の結論はOECDが2060年まで予測している安定的経済成長仮説を否定するものである。これからアジアをはじめ世界各国で人口減少が始まるという「人口大転換期」を迎えて、本稿が示したような超長期予測の必要性は高まっていくと思われる。

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  • 稲田 義久

    Kansai Economic Insight Monthly Vol.23

    経済予測

    経済予測 » Monthly Report(関西)

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 岡野 光洋 / 林 万平 / 木下 祐輔

    ABSTRACT

    <要 旨>

    1月の鉱工業生産指数は前月比+5.8%と2カ月連続の上昇。生産の基調は緩やかな回復である。

    2月関西の貿易は、輸出は24カ月連続で前年比増加、輸入は2カ月ぶりに同増加。結果、貿易収支は2カ月連続の赤字となり、赤字幅は同870億円悪化した。

    2月の消費者態度指数は3カ月連続の前月比改善。同月の景気ウォッチャー現状判断DIも3カ月連続の改善。春節もあり訪日外国人消費が改善に寄与。消費者心理に改善の動きがみられる。

    11月(関西2府4県)、12月(関西コア)の現金給与総額の伸びは前月から加速。賃金は上昇基調が続いている。

    1月の大型小売店販売は7カ月連続の前年比プラスで小幅改善を続けているものの、百貨店では前年増税前の駆け込み需要の影響がみられ、減少に転じた。

    1月の新設住宅着工戸数は5カ月連続の前年比大幅減。持家と貸家、分譲が全て減少した。

    1月の有効求人倍率は横ばい。2カ月続いた改善傾向が一服したが、インバウンド需要への対応から卸売・小売業や宿泊業で新規求人が増加。失業率は上昇したが非労働力人口減少と就業者数増加がみられる。

    2月の公共工事請負金額は前年比-18.3%と4カ月連続の大幅減。公共工事受注は引き続き減速している。

    1月の建設工事は前年比+1.4%と33カ月連続の増加も、伸びは10カ月連続で1桁となった。建設工事の伸びは停滞している。

    関空への訪日外客数は大幅な伸びが持続している。2015年1月には、訪日外客数が287,120人(前年比+34.0%)と、24カ月連続で増加。一方、出国日本人は239,090人(同-6.2%)と、13カ月連続の低下となった。

    2月の中国の製造業購買担当者景況指数は、2カ月ぶりに前月から改善したが、2カ月連続で50を下回っている。

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  • 稲田 義久

    関西経済月次分析(1月-2月)

    経済予測

    経済予測 » Monthly Report(関西)

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 岡野 光洋 / 林 万平 / 木下 祐輔 / James Brady

    ABSTRACT

    <要 ?旨>

    12月の鉱工業生産指数は前月比+0.3%と2カ月ぶりの上昇。結果、10-12月期は前期比+0.1%と2期ぶりに小幅増産となった。

    1月関西の貿易は、輸出は23カ月連続で増加、輸入は2カ月ぶりに減少。結果、貿易収支は2カ月ぶりの赤字となるも、前年同月から-83.6%縮小した。

    1月の景気ウォッチャー現状判断DIは小幅ながら2カ月連続の改善。訪日外国人の消費の拡大が改善に寄与。先行き判断DIは原油安や賃上げ期待もあり2カ月連続の大幅改善。消費者心理に下げ止まりの動きがみられる。

    10、11月の現金給与総額の伸びは関西2府4県、関西コアともに前月から加速。賃金は上昇基調が続いている。

    12月の大型小売店販売額は6カ月連続の前月比プラス。百貨店も6カ月連続のプラス。スーパーは5カ月連続のプラス。消費は緩やかながら改善を続けている。

    12月の新設住宅着工戸数は前年比-21.1%と2桁減が4カ月続いている。持家、貸家、分譲が全て減少に寄与。

    12月の有効求人倍率は3カ月連続で改善し高水準を維持。失業率は横ばいだが、非労働力人口減少と就業者数増加がみられ、雇用環境は改善傾向。

    1月の公共工事請負金額は前年比-25.1%と3カ月連続の大幅減。公共工事受注は減速が続いている。

    12月の建設工事は前年比+2.4%と32カ月連続の増加も、伸びは9カ月連続で1桁となった。公共工事受注の減速もあり、今後の伸びは停滞が予想される。

    関西空港へ入国する訪日外客数の歴史的高水準が持続している。12月は287,590人(前年比+49.3%)と23カ月連続で増加。結果、2014年の関空への訪日外客者数は317万4,280人となり、前年から36.4%増加した。

    1月の中国の製造業購買担当者景況指数は、4カ月連続で前月から悪化。また、2012年9月以来28カ月ぶりに50を下回った。

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  • 稲田 義久

    関西経済月次分析(2014年10-11月)

    経済予測

    経済予測 » Monthly Report(関西)

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 岡野 光洋 / 林 万平 / 木下 祐輔

    ABSTRACT

    <要 旨>
    9月の鉱工業生産指数は前月比+4.8%と2カ月ぶりの上昇も、7-9月期の生産は3期ぶりの前期比マイナス。今後の生産動向には注意が必要。

    10月関西の貿易は、輸出は20カ月連続で増加し伸びは2桁となった。輸入は2カ月連続で増加し、単月過去最高額を記録。結果、貿易収支は2カ月ぶりの黒字となり、前年同月から改善。

    10月の景気ウォッチャー現状判断DIは前月比2カ月ぶりのマイナス。外国人観光客による消費の増加が落ち込みを軽減したようである。先行き判断は同2カ月連続の悪化。

    10月の消費者態度指数は3カ月連続の悪化。消費者心理の停滞感が増しており、同指数を構成する4つの指標のうち3つが前月からマイナス。

    8月の現金給与総額の伸びは関西2府4県、関西コアともに6カ月連続のプラスとなったものの、伸びは大幅に減速。

    9月の大型小売店販売額は、前年比3カ月連続のプラス。関西の消費は増税後緩やかながら改善を続けている。

    9月の新設住宅着工戸数は前年比2カ月ぶりの大幅減。持家と分譲の2桁減が全体の減少に寄与した。

    9月の有効求人倍率は3年5カ月ぶりに前月比悪化。一方、新規求人倍率は改善しており、求人意欲は回復傾向。失業率は非労働力人口減少と完全失業者増加により、前月から小幅上昇。

    10月の公共工事請負金額は前年比+10.8%と3カ月ぶりの増加も、季節調整値では前月比-22.1%と減少。公共工事受注はここのところ停滞している。

    9月の建設工事は前年比+2.3%と29カ月連続の増加も、伸びは6カ月連続で1桁となった。全国的に伸びは減速感が強まっている。

    10月の中国の製造業購買担当者景況指数(PMI)は、前月から-0.3ポイント低下し50.8。輸出額は前年比+11.6%増加し7カ月連続のプラス。輸入額は同+4.6%と2カ月連続のプラス。

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  • 稲田 義久

    関西地域の成長牽引産業の展望 フェーズⅡ

    研究プロジェクト

    研究プロジェクト » 2014年度 » 関西の成長戦略

    RESEARCH LEADER : 
    稲田 義久

    ABSTRACT

    リサーチリーダー

    研究統括 稲田義久

     

    研究目的

    人口減少下の日本(関西)経済の成長牽引産業とその成長をサポートする要素を抽出し、実践的な発展戦略立案に資する研究を行う。

    研究内容

    昨年度に開催した4回のオープン研究会の成果を踏まえ、本年度は成長牽引産業候補を絞り込みその成長をサポートする要素を抽出する。具体的には、観光分野、医療分野等を重点的にとりあげ成長業種を絞り込みながら議論を深め、より実践的な発展戦略立案に資する研究を行う。

    リサーチャー

    入江啓彰 近畿大学短期大学部講師

    期待される成果と社会還元のイメージ

    アジアとの関係を意識しつつ関西の実情に根ざした具体的な発展戦略イメージを示し、政策提言の構築に資する。

  • 林 敏彦

    世界の人口と経済に関する超長期データベースの作成

    研究プロジェクト

    研究プロジェクト » 2013年度 » アジア太平洋地域軸

    RESEARCH LEADER : 
    林 敏彦

    ABSTRACT

    目的

    OECDが発表した2060年までの加盟国の実質GDPに関する予測によれば、中国およびインドは、GDPにおいて21世紀中葉にアメリカを凌駕し一人当たりGDPも順調に上昇すると推定されている。英国エコノミスト誌も、2050年までの世界の経済、人口、社会構造等に関する長期予測を発表するなど、世界的に長期予測に関心が高まっている。この研究においては、2100年までの世界160カ国について、人口、実質GDP、および一人当たりGDPを予測し、それをデータベースとして広く一般に提供することを目的とする。

    内容

    初めに、アンガス・マディソンの歴史統計(西暦1年~2006年)によって、各国の人口と実質GDPの統計的関係性を推定する。次いで、国連の人口推計を手がかりとして、160カ国について、2100年までの実質GDPと一人当たりGDPの年次推定を行う。最後に、それらのデータを公表するための、簡易データベースを構築し、APIRデータとしてホームページ上に英文で公表する。国連の人口推計もIMF経済展望も定期的に改訂されるため、このデータベースも再推定した結果を継続的にアップデートすることとする。

    期待される成果と社会還元のイメージ

    ・人口動態が経済に与える影響を明示する。100年におよぶ超長期予測のベースとなる変数は人口であることにもとづく。

    ・世界の中には人口増加に伴って一人当たりGDPが低下するという「マルサスのわな」に陥っている国もあることを明らかにする。

    ・21世紀の中央まで一人当たりGDPの国別格差が縮小する方向に動くが、それ以降再び国別格差が拡大することを示す。

    ・2100年時点の世界経済においてもアメリカの優位性は保たれ、中国やインドは人口減少でマイナス成長に転移すると予想する。

    ・ASEAN(+6)、TPP参加予定国、EUなどの地域経済の長期的展望についても明らかにする。

    ・APIRでの各研究の基礎データとなるとともに、投資先を検討する企業にも、カントリーリスク推定などに利用価値が高いと思われる。

  • 高林 喜久生

    報告書『“関西広域観光統計”整備に向けて?行政のリーダーシップと民間の知の活用?』

    研究プロジェクト

    研究プロジェクト » 2012年度 » その他調査研究

    RESEARCH LEADER : 
    高林 喜久生

    ABSTRACT

    広域観光研究会(主査:関西学院大学経済学部教授 高林喜久生氏)の報告書を掲載しました。
    人口減少や景気の低迷によって国内の観光消費は伸び悩む一方で、外国人観光客数の伸びしろは大きく、1人当たりの消費支出額も国内観光客のそれよりはるか に大きい。今後、外国人観光客の誘客促進に取り組む上で統計整備は重要な役割をもつが、関西地域での消費額を把握するためには、必ずしも十分なものとは言 えない。本研究では、とりわけアジアの観光客を主眼に置き、外国人観光客に関する統計整備の課題と、利用者の視点に立った統計の整備に向け、統計のあり方 や実現のための手法について提言を行っています。

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    『人流で創る関西経済の未来-潜在需要を掘り起こせ!-』(2010年3月)

    研究プロジェクト

    研究プロジェクト » 2009年度

    ABSTRACT

    (主査:稲田義久・甲南大学経済学部教授、高林喜久生・関西学院大学経済学部教授 )
    当研究所のマクロ経済分析プロジェクトチームでは、在阪の大手企業・団体の若手スタッフの参加による研究会を組織し、稲田主査指導のもとマクロ計 量モデルによる景気予測を行なうとともに、高林主査指導のもと時宜に適ったテーマを取り上げ、特別研究を実施している。2009年度の特別研究は、人口減 少が進む中での関西における『交流人口』の拡大をテーマに取り組み、2010年4月5日にその成果を公表した。

    <<要旨>>
    (1)本報告書は、人口減少が進む中で、関西経済の持続的成長には交流人口の増加が不可欠との問題意識に基づき、交流人口増加の要因について事例研究中心に考察。

    (2)いずれの事例も新たな人の流れをつくり「潜在需要」の掘り起こしを効果的に行っているが、とりわけ、行政、民間企業、地域住民といった関連主体の『連携』による取組みが、より大きな成果をもたらすカギになることを確認した。

    【報告書で取り上げた事例=掘り起こした潜在需要】
    ・京都市「まちなか観光案内所」、大阪市「大阪あそ歩」など=認知度の低い観光資源の魅力創出
    ・高野山(金剛峯寺,南海電鉄)=観光需要創出
    ・阪急西宮ガーデンズ=地域における生活利便性の向上
    ・企業誘致(大阪府)=新たな雇用の創出
    ・阪神なんば線=交通のボトルネックを解消
    ・高速道路料金割引=観光需要創出
    ・神戸医療産業都市構想=阪神淡路大震災をきっかけに新産業の拠点を構築
    ・兵庫県立芸術文化センタ=阪神淡路大震災をきっかけに、文化拠点として需要創出
    ・酒ぐらフェスタ=阪神淡路大震災をきっかけに、地場産業による観光需要創出

    (3)上記事例の一部については計量分析を行い、その効果を実証した。

    ①阪神なんば線の開通は、アクセシビリティの向上により沿線地価を引き上げる効果をもたらす。大阪難波駅までの改善効果に集約して分析すると、その効果は年率平均5.3%ポイントとなる(着工開始となる2003年以降7年間、沿線8駅の平均値)。

    ②高速道路料金割引(休日1,000円定額制)は、関西を目的地とする観光消費を増加させ、関西経済(GRP)を0.1%押し上げる効果となる見込み。ただし2010年度に無料となる路線は関西では限定的であり、効果はさほど大きくない。

    ③ 2009年5月の新型インフルエンザ感染拡大による損失額は、関西経済(GRP)の0.15%に相当する。雇用喪失効果でみると約18,000人分に相当する。

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    第1号 第45回衆議院総選挙を終えて (2009.9.10)

    インサイト

    インサイト » 分析レポート

     / DATE : 

    ABSTRACT

    財団法人 関西社会経済研究所
    1.「新しい国のかたち」の模索  文責(浜藤豊)
    今や、日本は外にあっても内にあっても大変な時期である。我々は安心と自信を回復するために政治を鍛え直さなければいけない。この国の統治の立て直しを 誰に託すかを判断し、「新しい国のかたち」の建設を始めるのがまさに8月30日であった。その建設を進めていくに当たって克服すべき課題は多いが、大きく 分けてみるならば次の3つに集約できる。
    (1)経済構造の脆弱さ
    (2)政治、行政に対する不信感
    (3)巨額の財政赤字
    これらが複雑に絡み合って内外の環境激変に対応しきれなくなり、持続的な成長イメージが描けない状況に陥っている。

    <3課題に対する対策>
    第一に、構造的に弱い日本経済の足腰を強くするには、民間の活力を最大限に引き出す経済社会の確立を目指さなければならない。
    そのためには、日本国内の成長力を強化するとともに、海外の成長力を取り込むことが肝要である。国内面では、
    ①雇用機会の拡大や女性・高齢者の労働参加の促進
    ②省エネ設備・製品の開発・普及に向けた対策
    ③成長戦略のための技術開発促進による産業強化策
    (例)新たなサービス産業(医療、介護分野等で)の創出 など

    一方、海外成長力取り込みでは
    ①グローバル化に対応した法人税減税などの税制改革
    ②WTO中心型とEPA,FTA締結促進型との併用による自由貿易体制の確立
    ③競争力強化対策の拡充
    (例)日本への直接投資の促進(秩序ある資本の流出入を実現する市場の形成) など

    第二に、政治や行政に対する不信感を取り除いて国民が安心できる制度を構築するにはどうすればいいのかの問題である。行政の失敗が政治への不信につながっていることから
    ①無駄が生み出す財政赤字の排除の仕組みを取り入れた予算制度・公務員制度の改革
    (例)民間経営手法(PDCAサイクルなど)の採用

    ②住民選択を尊重する地域重視型社会の実現及び国・地方の役割分担を明確にした上での権限委譲
    (例)地方税財源確保のための補助金、交付税、税源配分見直し。道州制導入 など

    ③グローバル化・高齢化にも対応可能な社会保障制度の再構築
    (例)高齢者が安心して受けられる医療制度の再確立、派遣労働者へのセイフティーネット強化 など

    第三に、財政の健全化の問題が重くのしかかっている。このまま赤字が膨らみ続けると、現下の景気悪化に伴う赤字財政の拡大も加わって、将来世代が受ける 公共サービスレベルの低下も心配される。しかも、2015年には団塊世代が65歳の年金受給年齢に達し、本格的な高齢社会に突入することになる。その時期 までに財政再建への道筋をつけておかなければならない。具体的には、
    ①歳出削減と成長による、基礎的財政収支の赤字幅の削減、及び黒字化の時期
    ②成長・増税・歳出削減による、国・地方の債務残高の対GDP比のピークアウトを図る目標時期
    を明確化しておく必要がある。
    今、日本に求められていることは、現実を正しく認識し、先に述べた3つの課題に対する構造改革を推し進め、国内外の変化に柔軟に対応できる「新し い国のかたち」を構築していくことである。そこで、以下では、現在示されている各党のマニフェストがこの国の将来を示し得るものになっているのかを検討し てみたい。

    2.マニフェストに求めること  文責(島章弘)
    8月30日に実施された総選挙の結果、民主党が衆議院の過半数以上の議席を占めた。総選挙では多くの事が議論されたが、当然、政策議論が主体であり、その中心に各党のマニフェストが存在したといえる。
    近年、国政選挙におけるマニフェストの存在意義が高まっている。各党は従来以上にマニフェスト作成に努力し、国民そして各界も高い関心を払うようになって きた。マニフェストは各党の国民へのコミットメントであり、その内容を豊かにすることは日本の将来にインパクトがあると考える。
    ここでは、各党の2009年衆議院選挙に向けたマニフェストを概観し、これまでの議論や各界からの期待を踏まえ、さらに求めたいことを列挙してみた。マニフェスト評価を出発点として、政策議論の一層の活発化を期待したい。

    ■各党ともに多くの行政サービスの具体策を示しているが、その源泉となる国富の創出に関する記述が少ない。
    厳しい国際競争下、各党のマクロ経済政策や産業振興施策には一層の充実が求められる。今、求められるものはいかに内需を喚起するか、いかに国際競争力を 有する産業を発展させるかである。この結果、過度に外需に依存しない持続可能な経済発展が可能となり、国の税収を増加させ、政策が豊かなものになる。
    1990年代、米国経済は長期にわたる好況を謳歌し、「もはや景気循環はなくなった」とする「ニューエコノミー」論が活発に語られるほどであった。これ によって、巨額の財政赤字は解消され、クリントン政権を引き継いだ直後のブッシュ政権が実施した10年間で1.3兆ドルを超える減税プログラムが実現され た。

    ■不況下のマニフェストであり、セイフティーネット充実の必要性から全体として政策が増加している感が否めない。
    各党ともに行政の無駄排除を掲げているが、新政策の増加から結果として政府が関与する領域が広くなり大きな政府となる可能性がある。政府が関与する領域が広い社会経済システムを選択するのか、政府関与が少ないシステムを関与するのかの問題提起が欲しいところである。

    ■金融危機そのものに対する政策が少ない。
    現在の経済不況の発端となったのが金融危機である。株価は世界的に回復基調にあるが、根本的な問題は継続しており、国や地方の財政問題などこれから影響 が本格化する領域もある。こういったマイナス影響への対応策及び危機の再発防止への対応といった政策の提示が求められる。

    ■環境問題目標の達成手段についての国の関与に関する記述が少ない。
    原子力利用の充実を唱えている政党もあるが、これまでの原子力利用の実績を見ると、安全問題など克服すべき課題が大きく具体策に欠ける。また、日本の1 人当たり一次エネルギー消費は世界的にみて高いものであるが、個別産業のエネルギー効率でみると多くの産業で世界のトップ級になっている。技術開発の芽も 少ない状況では、削減目標数値先にありきでは、製造業の海外移転を促すだけになりかねない。さらに、排出権取引市場の設置も真の意味での環境問題進展への 寄与は期待できない。
    エネルギー分野で信頼度が高いBP統計によれば、2008年の日本の人口1人当り一次エネルギー消費量は中国の2倍以上である。しかし、鉄鋼業でみると 中国の製鉄所のエネルギー原単位は日本に比べ10%から20%悪いなど、ほぼ全ての産業で日本は優れた効率を達成している。日本の産業界が今のレベルから 飛躍的にエネルギー効率を向上させるのは相当困難である。こうした情勢下で、より厳しい目標を設定するには、より具体的な政策が求められる。

    ■税制改正に関する体系立った提案がない。
    抜本的改革との表現を使っているところもあるが、メッセージはそれだけであり中身が不透明である。暫定税率など一部の税廃止と税控除措置見直しを提唱しているところもあるが、税体系全体に関するメッセージが欠けている。
    逆進性がある消費税と累進性がある所得税とを中核として税負担をしている国民にとっては、負担構造のあり方についてむしろ受益と負担の関係から議論が行われて然るべきである。
    また、多くの党は中小企業の法人税率引き下げを提唱しているが、これは緊急経済対策的な色彩が濃いものであり、法人税全体に関する議論こそが、グローバル経済下では重要である。

    ■地方分権推進の考えは鮮明であるが、内容が説明不足。
    道州制導入を明確にしている政党は三層型地方分権制度であるのに対し、現状より広域化させた基礎自治体をベースとする政党は二層型地方分権制度といえよう。 それぞれの違いが国民生活にいかなる違いをもたらすかのメッセージが伝えられていない。

    個別分野ごとにマニフェストを概観し、これまでの議論や各界からの期待を踏まえ、求めることを列挙してみた。
    更に、個別分野ごとの議論ではなく、マニフェスト全体にかかわるポイントを指摘してみたい。マニフェストは数値や時期が明示された政策目標と合理的に選 択された明確な手段が提示されるべきである。今回、多くの政党のマニフェストは政策目標は提示されているが、具体的で明確な政策手段が示されているとの評 価をするのは難しいといえる。
    「政策形成能力」には、まだまだ問題があることを強く指摘しておきたい。また、この政策を実現・実行するのが「実現力」・「実行能力」といわれている が、前者は議院内閣制であれば政権をとるかとらないかの問題であり、後者は行政組織に対する管理能力の問題である。したがって、実現・実行の問題はマニ フェスト上の問題ではない。各党には、むしろ「政策形成能力」の向上を強く求めたい。

    3.日本の未来を示し得る政策への期待を込めて          文責(浜藤豊)
    前節では、現在までに公表されたマニフェストを前提に不充分な点を指摘してきた。日本は今、2つの大きなうねりに翻弄されている。すなわち、外にあって はグローバル化が急速に進むなかでの昨年来の経済危機、内にあっては高齢化・少子化の2つである。経済のグローバル化のうねりの象徴と対策としては、
    ①背後から迫りくる中国(GDPで追い抜かれる) → 実効性のある産業育成戦略の立案
    ②外国資金による国内金融資本市場の撹乱 → 新しい市場監視ルールの確立(投機資金の規正)
    などがあり、高齢化・少子化のうねりの象徴と対策としては
    ①人口減少の始まり → 外国人労働力・移民の受入体制の整備
    ②出生率の長期的低迷 → 結婚・出産阻害要因の除去(高校編入制度の未整備、婚外子対応など)
    などが挙げられる。
    グローバル化、高齢化・少子化が進展するなかでも持続的成長を図るためには、政府による体系的な実効性のある成長戦略が必要であると同時に、『民間企業 も成長していかなければ!』という覚悟をもって民間でも自らの成長戦略を構築することも重要である。官民共同による成長があってこそ社会は安定するので あって、子育てや雇用への安心もその延長線上に見えてくる。
    直面している危機を一刻も早く脱出し、これからの「新しい国のかたち」を構築していかなければならない。各党のマニフェストは政策内容としてはまだまだ不 十分な部分もあり、我々国民も充分にその内容を理解できているとは言い難いが、民主党に政権がバトンタッチされることになった今、マニフェスト通り誠実に 政策実現されるかをよくウォッチしていくことが肝要である。

    4.有権者意識調査                      文責(長尾正博)
    (財)関西社会経済研究所では、8月8日、9日の両日にわたって、楽天リサーチの全国サンプル1000人を対象に、インターネットを通じて、各党政策に対する有権者の意識調査を実施した。その3週間後(8月30日)衆議院選挙の投開票が行われ、獲得議席数が、多い順に、民主党308、自民党119、公明党21、共産党9、社民党7、みんなの党5、国民新党3、その他8議席という結果になった。前述の調査によれば、比例区の投票先政党については、民主党32.4%、自民党9.8%、公明党2.0%、共産党4.3%、社民党1.1%、国民新党0.5%であった(その時点で、まだ決めていない又は投票しないという方の合計は49.4%であった。)ので、実際の獲得議席数と同様の傾向を示していたことになる。例外は共産党であったが、同党に投票した有権者は比例区で7.0%であり、獲得票という意味では、これも、調査結果が反映されたと言える。
    調査結果の詳細については、「No5 各党政策に対する有権者の意識」というタイトルで、(財)関西社会経済研究所ホームページのリサーチペーパー欄に掲載しているが、その一部は下記の通りである。

    (1)支持の理由
    自民党の場合、支持する政党だから(56.1%、複数回答、以下同様)と政権を委ねるのに信頼できるから(35.7%)が突出しており、具体的な政策を評価していることにはなっていない。一方、民主党の場合、国の無駄遣いを解消し(55.2%)、官僚主導体制を打破し(45.1%)、国の構造改革を積極的にすすめてくれそう(26.5%)だからというのが支持の理由である。

    (2)個別のマニフェスト評価
    個別政策(特に民主党)について、それぞれ賛成か反対かについて聞いた結果を、賛成比率の高いものから並べると下記のグラフの通りとなった。また、比例区投票先別(民主党と自民党)にもクロス分析したところ、「子ども手当て」と「高速道路無料化」では、意見が分かれた。とくに子ども手当てについて、中学生以下のこどもがいない家庭では、賛否が互角であった。

    (3)経済・財政運営方針に対する有権者の賛否
    経済並びに財政に関する運営方針についても、その支持度合を計測した。
    この質問は難易度が高くなる為、「どちらともいえない。わからない。」という方が、経済運営で53%、財政運営で38%と多くなる。残りの明確に賛否を示された方の中で、どちらを支持するかについて聞いたところ下記の通りとなった。

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    人口変動が関西の消費に与える影響(2008年2月)

    研究プロジェクト

    研究プロジェクト » 2007年度

    ABSTRACT

    「日本経済のマクロ分析」特別研究成果報告
    (主査: 稲田義久・甲南大学経済学部教授、高林喜久生・関西学院大学経済学部教授

    当研究所のマクロ経済分析プロジェクトチームでは、在阪の大手企業・団体の若手スタッフの参加による研究会を組織し、稲田主査指導のもとマクロ計量モデルによる景気予測を行なうとともに、高林主査指導のもと時宜に適ったテーマを取り上げ、特別研究を実施している。
    2007年度の特別研究では、わが国の経済・社会に最も大きな影響を与える要因のひとつである人口減少・少子高齢化を取り上げ、それがGDPの最大構成項 目である消費にどのような影響をもたらすかについて分析し、このほどその成果をとりまとめ、2008年2月22日発表した。

    <<要旨>>

    【関西の人口変動の特徴】
    関西における人口変動の特徴として、(1)少子高齢化の進行が早い、(2)0-14歳と25-64歳(働き盛り層とその子供達)の流出が多い、(3)15-24歳の学生層の流入が多い、の3点を挙げた。

    【少子高齢化と消費行動の関係】
    少子高齢化の下での特徴的な消費行動として、(1)近年の高齢者世代は消費意欲が衰えず、教養・娯楽等への出費も多いこと、(2)結婚・出産を機に退職す る女性が減少し、就業女性による消費カテゴリが拡大している可能性があること、(3)団塊ジュニア世代が積極的に住宅を取得し、都心回帰の動きを支えてい ること、(4)関西では若年層が地元教育機関に進学し、仕送りが少ないため教育関連費用が低くてすむこと、の4点を挙げた。

    【関西の消費市場、活性化のカギ】
    今後の活性化のカギとして、(1)エリアとしての魅力向上をはかる「まちづくり」、(2)従来から大学などの集積がある「教育」、(3)歴史的にも交流の深い「アジア」、の3点を挙げた。

  • 熊坂 侑三

    今月のトピックス(2008年1月)

    インサイト

    インサイト » コメンタリー

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    熊坂 侑三

    ABSTRACT

    <何故日本株は売られるのか??成長戦略を示せない政治状況が課題>

    今月の日本経済見通しで示したように、超短期モデルは10-12月期の日本経済について4%を超える高い成長率を予測している。一方、マーケット の見方は、例えば、1月10日に発表されたESPフォーキャスト1月調査では10-12月期の実質成長率を前期比年率+1.01%と見ている。8月?10 月までは+2%程度の予測が11月には+1.7%となり、12月?1月は更に+1%まで低下してきたのである。
    多くの11月のデータが発表されており、10-12月期のデータの2/3が発表されている現状で詳細に月次データを検証すれば、過去の15年を超える超 短期予測の経験からは、+1%というような数字は出てこない。確かに、2008年1-3月期はゼロ成長となり、景気減速を十分示唆していると思われるが、 リセッション(米国の定義では2四半期連続でマイナス成長)に陥るとは考えていない。今日のように、サービス産業のウェイトが高くなっている経済では、成 長率はマイナスになりにくい。実際、超短期予測は第3次産業活動指数を10-12月期、1-3月期とも連続で堅調なプラス成長を予測している。
    筆者の見方では、マーケットの予測は下方にオーバーシュートしていると思われる。おそらく、サブプライムローン問題に起因する日本株の低迷に大きく影響 されているといえよう。2007年1月4日に17,353.67で始まった日経平均(225)は、7月9日に一旦18,261.98まで買われたが、年末 は15,307.78で終了し、結局、年初比12.8%も下落した。先進国で株価が値下がりしたのは日本だけである。日本株は2008年に入っても 15,000を割り込み低迷を続けている。

    何故日本株は売られるのであろうか(Japan passing)。日本の金融市場が魅力に欠けるといった制度的な問題やemerging marketの成長率が非常に高いといった要因もある。しかし、基本的には日本経済の成長戦略が見えてこない点がきわめて重要と考える。日本の株価市場へ の投資主体の60%を超える外国人投資家にとって、人口減少下で成長戦略を示すことのできない日本経済などにはまったく興味がないといえよう。重要なの は、生産性の向上を最優先課題とする成長戦略である。安倍政権の発足時に喧伝されたあの新成長戦略(いわゆる、上げ潮路線)は一体どうなったのであろう か。混迷する政治が、内向きで成長戦略に背を向けるような状況をつくり出しているとするならば、由々しき事である。

    日本
    <10-12月期は高成長を予測、マーケットは悲観的過ぎる>

    今回の超短期モデル予測(支出サイド)では、ほぼ11月の月次データを更新している。10-12月期の経済を説明するデータの2/3が出揃ったこ とになる。同期の実質GDP成長率は、内需が拡大に転じ純輸出も大幅に伸びるため、前期比+1.1%、同年率+4.6%と予測される。先月(+4.0%) から小幅の上方修正である。マーケットコンセンサスの同年率1.01%(ESPフォーキャスト1月調査)に比べ非常に高い予測である。以下、超短期モデル 予測の特徴を説明しよう。
    10-12月期の国内需要を見れば、実質民間最終消費支出は前期比+0.4%となる。実質民間住宅は同-9.8%となり、実質民間企業設備は 同+1.4%となる。実質政府最終消費支出は同+0.3%となり、実質公的固定資本形成も同+0.9%となる。この結果、国内需要の実質GDP成長率(前 期比+1.1%)に対する寄与度は+0.6%ポイントとなる。
    民間住宅は大幅な落ち込みを予測しているが、民間最終消費支出は意外と高い伸びとなっている。10-11月の消費総合指数は7-9月期平均より0.2% 高く、民間消費の堅調な伸びを予測しているのである。民間企業設備、公的固定資本形成もプラスの伸びを示しており、民間住宅は確かに大幅なマイナスとなろ うが、経済に占めるウェイトは10%以下で大きくないから、国内需要の伸びは意外と高いと見込んでいる。
    加えて、外需が貢献しそうである。財貨・サービスの実質輸出は同3.2%増加し、実質輸入が同0.6%減少する。このため、純輸出の実質GDP成長率に 対する貢献度は+0.6%ポイントとなる。注意すべきは、通関ベース貿易収支(季節調整値)の10-11月平均は7-9月期平均を2.5%下回っている が、輸入価格が大幅に上昇し、輸出価格は低下していることから、実質の純輸出は相当経済成長率を引き上げているのである。この結果、2007暦年の実質 GDP成長率は+2.2%と予測する。
    1-3月期の実質GDP成長率については、純輸出が小幅拡大するが内需の縮小が相殺するため、前期比-0.0%、同年率-0.0%と予測している。先月の予測(0.0%)と横ばいである。2007年度の実質GDP成長率は+1.8%と予測する。
    物価トレンドを見れば、GDPデフレータは、10-12月期に前期比-0.2%、1-3月期も同-0.3%と引続きデフレを予測している。民間最終消費支出デフレータは、10-12月期に同+0.1%、1-3月期に同-0.2%となる。
    主成分分析モデルは、10-12月期の実質GDP成長率を前期比年率+2.8%と予測している。また1-3月期を同+1.6%とみている。GDPデフレータは10-12月期に前期比-0.1%、1-3月期に同-0.2%とみている。
    この結果、支出サイドと主成分分析モデルの実質GDP成長率(前期比年率)の平均は、10-12月期が+3.7%、1-3月期が+0.8%となる。 GDPデフレータは10-12月期が前期比-0.2%、1-3月期も同-0.3%である。両モデルの平均で見れば、日本経済は10-12月期に比較的高成 長を示すものの、1-3月期は停滞局面に入ると予測している。10-12月期の高成長は景気減速前の最後の輝きかもしれない。

    米国

    2008年の初仕事日(1月2日)にダウ平均株価は1.67%と大幅に下落した。これは過去における新年の初仕事日のダウ下落において史上7番目 の落ち込み幅であり、1983年1月3日に1.9%下落して以来の大幅な下げとなった。この理由は市場にリセッション懸念が急速に広がったことである。同 日に発表された12月のISM(全米供給管理協会)の製造業指数が50を大きく下回る47.7となり、製造業リセッションを示唆し、また石油価格は取引中 に心理的な天井である100ドルを一度超えた。さらに、市場のリセッション懸念に追い討ちをかけたのが12月の雇用統計の結果である。雇用増が 18,000人と市場予想の70,000人を大幅に下回り、失業率も11月の4.7%から5.0%へと大きく上昇した。
    1月4日の超短期モデル(需要サイド)は、2007年10-12月期の実質GDPの伸び率を前期比年率+5.3%と非常に高く予想している。これは10 月、11月と輸入価格がそれぞれ前月比で+1.4%、+2.7%と大きく伸びたことにより、NIPA(米国国民所得統計)の実質輸入が20%も低下すると 予測されていることによる。もっとも、11月の貿易収支と12月の輸出入価格の更新によって支出サイドからの実質GDP予測は大きく修正されると思われ る。このように輸出入部門の予測に大きな不確実性が残るとき、景気判断には実質総需要、実質国内需要、実質最終需要(GDP?在庫?純輸出)をみるのが良 い(グラフ参照)。
    このグラフが示すように、実質総需要、実質国内需要や実質最終需要の伸びで見た景気は9月後半から減速してきており、12月14日の予測では経済 成長率はゼロとなり超短期予測はこの時点でリセッション懸念のシグナルを出している。しかし、その後景気はリバウンドし、最近では1.5% – 2.0%の経済成長率(2007年10-12月期)を示している。また、2008年1-3月期においても2%程度の経済成長率を予測している。超短期予測 からすれば、リセッション懸懸念のピークは12月半ばであり、すでに通りすぎたといえる。
    (注:毎月の超短期予測は、通常、実質GDPの成長率予測の動態から景気を診断している。ただ実質GDPの構成項目である実質純輸出の予測には困難 が伴う場合が多い。名目純輸出の予測は大きく変動することはないが、原油価格の高騰などで輸入デフレータが毎月大きく変動する結果、実質純輸出の予測も大 きな変動をこうむる。このような困難を避けるために、GDPから純輸出を除いた総需要やさらに在庫品増加を除いた最終需要の伸びで経済の実力を測ることが ある。)

    [熊坂有三 ITエコノミー]

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    2007年版関西経済白書「関西 その現況と次なる課題」

    研究プロジェクト

    研究プロジェクト » 2007年度

    ABSTRACT

    [ 概 要 ]
    6月1日に、2007年版『関西経済白書』の報告会を実施しました。当研究所では、1994年度より毎年発行していた『関西活性化白書』を今年度 より『関西経済白書』と改称し、関西経済の動向、並びに直面している課題についての分析・提言を拡充しています。本白書が、関西経済理解のための必読文献 となることを目指し、今後とも内容の一層の充実に努めてまいります。

    <構 成>
    第1章 関西経済の現況と見通し
    第2章 経済復活への課題と新たな挑戦
    第3章 改革を求められる関西の自治体
    第4章 関西のプロジェクトの動向
    第5章 グラフで見る関西
    第6章 関西年表

    以下では、報告会当日に行われた当研究所所長の本間正明による講演要旨、並びに次の3つの章(第2章、第3章、第4章)の概要について説明する(詳細資料は別紙参照)。

    * 講演「関西経済の新たな挑戦」(要旨) 関西社会経済研究所所長 本間正明
    6月1日白書報告会のおける講演要旨。
    * 第2章 経済復活への課題と新たな挑戦
    本年の特集テーマとして、バブル崩壊後の長期低迷からようやく抜け出した関西経済の軌跡を振り返り、人口減少と高齢化という大きな環境変化の中で新たに取り組むべき課題を分析している。
    * 第3章「改革を求められる関西の自治体」
    当研究所が2006年度に行った自治体に関する研究成果のエッセンスをまとめたもので、関西経済の復活のためには、公共部門の改革は不可欠のテーマであるとの基本認識に基づいている。
    * 第4章「関西のプロジェクトの動向」  1987年から毎年実施している調査。昨年の関西のプロジェクトの動きと内容を分析している。

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    関西経済復活の軌跡と今後の課題(2007年2月)

    研究プロジェクト

    研究プロジェクト » 2006年度

    ABSTRACT

    「日本経済のマクロ経済分析」特別研究成果報告
    (主査: 稲田義久・甲南大学経済学部長・教授
    高林喜久生・関西学院大学経済学部教授 )

    研究所のマクロ経済分析プロジェクトチームでは、在阪の大手企業・団体の若手スタッフの参加による研究会を組織し、稲田主査指導のもとマクロ計量モデルによる景気予測を行なうとともに、高林主査指導のもと時宜に適ったテーマを取り上げ特別研究調査を実施している。
    特別研究については、年1回の研究調査報告を行なっている。今回は、バブル経済崩壊以来15年以上が経過し、日本経済、関西経済が「平成不況」を脱したと見られる今、関西経済のこれまでの軌跡を振り返り、新しい時代を展望することを目指した研究成果をとりまとめた。

    * 【関西経済はなぜ苦しんだのか】
    バブル期以降の関西経済低迷の背景として、(1)生産性の停滞、(2)中小企業の活力低下、(3)東京一極集中、(4)大規模プロジェクトの不調、(5)生産拠点の海外・域外シフトによる空洞化、を挙げた。

    * 【関西経済はなぜ復活したのか】
    関西経済復活の背景として、(1)関西企業の「3つの過剰(債務、設備、雇用)」の解消、(2)輸出の増加(とりわけ高成長するアジア向け)、(3)工業(場)等制限法の完全撤廃、(4)大規模プロジェクトの都心回帰、を挙げた。

    * 【関西経済、今後の課題】
    今後の課題は、(1)人口減少社会への対応、(2)高齢者有業率の低さと女性労働力活用への対応、(3)少子化・高齢化へのビジネス対応、(4)都市開発における選択と集中

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    文明史への挑戦 少子高齢化時代の日本、そして世界へ

    研究プロジェクト

    研究プロジェクト » 2007年度

    ABSTRACT

    「少子高齢化研究会」成果報告
    主査:
    鷲田清一 大阪大学総長
    委員:
    上原恵美 京都橘大学文化政策学部教授
    山極寿一 京都大学大学院理学研究科教授
    小浦久子 大阪大学大学院工学研究科准教授
    中西 寛 京都大学大学院法学研究科教授
    玄田有史 東京大学社会科学研究所教授

    人口減少問題を含め少子高齢化への時代変化は、個人が一生の中で経験する結婚、子育て、仕事、介護などの問題から、家族、社会、国家といった人間社会の ありようを含め、とてつもなく大きな問題の到来が予想されるものである。この文明史を画するともいえる変化を前に、現在のわが国の取り組みは、年金等財政 問題や、応急処置的な人口対策にとどまっている。また、各界の議論も医療や男女共同参画など少子高齢化の一面に焦点をあてたものが中心である。本研究は、 これら各論的討論を超え、少子高齢化を人類の歴史にとっての新しいステージと捉え、長期的スコープの中で根本的、かつ多面的な視点から取り組むものであ る。具体的には、文化、哲学、生態学、労働経済、環境デザイン、国際政治の各分野の専門家からなる学際的研究により、実り多い少子高齢化自体への英知と勇 気を導こうとするものである。
    なお、今回の研究事例をもって平成16年度から続いた「少子高齢化に伴う課題に関する研究会」は解散し、今後は新たな課題をテーマとしてスタートしたい。また、この研究事例はサントリー文化財団の助成を受けて実施した。

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