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「中国経済」の検索結果 [ 3/5 ]

  • 稲田 義久

    Kansai Economic Insight Monthly Vol.84- 景気は足下悪化・先行きも悪化を見込む –

    経済予測

    経済予測 » Monthly Report(関西)

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 豊原 法彦 / 木下 祐輔 / 郭 秋薇 / 野村 亮輔 / 吉田 茂一 / 車 競飛

    ABSTRACT

    ・2月の生産は3カ月ぶりの前月比マイナス。生産は依然低調で推移している。このため、近経局は基調判断を「生産は弱含み傾向」と前月から下方修正した。
    ・3月の貿易収支は2カ月連続の黒字だが、前月と比べて黒字幅は縮小している。輸出が減少に転じ、輸入の減少幅が縮小したためである。
    ・3月の景気ウォッチャー現状判断DIは2カ月連続で前月比大幅低下し、過去最低の水準となった。新型コロナウイルスの感染拡大により業種を問わず落ち込みが目立った。
    ・1月の関西2府4県の現金給与総額は名目で6カ月連続、実質では11カ月連続で前年比減少。所得環境は依然悪化している。
    ・2月の大型小売店販売額は5カ月連続で前年比減少した。新型コロナウイルス感染拡大による買いだめと巣ごもり消費でスーパーは増加したが、百貨店は訪日外客数の急減で大幅減少した。
    ・2月の新設住宅着工戸数は2カ月連続の前年比減少。分譲マンションは増加したが、持家と貸家の減少が大きく影響した。
    ・2月の有効求人倍率は2カ月連続で前月から悪化。求人票の記載項目の増加と新型コロナウイルス感染拡大の影響で求人数が減少したため。完全失業率も3カ月連続で悪化した。
    ・2月の建設工事出来高は24カ月連続の前年比プラスだが、伸びは減速している。一方、3月の公共工事請負金額は2カ月ぶりの同増加となった。
    ・新型コロナウイルス感染拡大により、3月の関空への外国人入国者数は前年比-95.1%と2カ月連続の大幅マイナス。世界的な移動制限により渡航に対しては高水準の警戒が続こう。
    ・1-3月期中国のGDPは四半期統計が利用可能な1992年以降で初めてのマイナス(前年同期比-6.8%)となった。足下、生産停止による供給不足は徐々に解消しているが、世界経済の後退による外需の縮小は今後一層中国経済下押し要因となろう。

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  • 稲田 義久

    Kansai Economic Insight Quarterly No.47 – 民需外需の失速が鮮明、正念場迎える関西経済 –

    経済予測

    経済予測 » Quarterly Report(関西)

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 入江 啓彰 / 木下 祐輔 / 野村 亮輔 / 吉田 茂一

    ABSTRACT

    1.  2019年10-12月期実質GDPは前期比年率-6.3%(前期比-1.6%)と5四半期ぶりのマイナス成長だった。寄与度を見ると、純輸出は前期比+1.9ポイントと3四半期ぶりのプラスとなったが、国内需要は同-8.3%ポイントと5四半期ぶりのマイナスで、成長を大きく押し下げた。
    2.  2019年10-12月期の関西経済は、民需と外需の失速が鮮明となった。10月の消費税率引き上げ、中国経済の減速を受けて、家計部門、企業部門、対外部門と多くの指標が失速の様相を呈している。これまで堅調だった雇用環境やインバウンド需要も軟調となりつつある。20年1-3月期以降については、さらに新型コロナウイルス感染拡大の影響が現れてくるため、関西経済は正念場を迎える。
    3.  関西の実質GRP成長率を2019年度+0.1%、20年度+0.2%、21年度+1.0%と予測。消費税率引き上げによる民間消費の停滞、中国経済の減速、新型肺炎による経済活動の縮小といった要因から、19年度20年度は低成長を免れられず、本格的な回復は21年度となる見通しである。
    4.  前回予測に比べて、2019年度は-0.6%ポイントの下方修正、20年度も-0.2%ポイントの下方修正である。下方修正の背景として、19年7-9月期のGDP実績値の大幅下方改定、消費税率引き上げによる影響とそれに伴う足下の景気減速、新型肺炎の影響の織り込みがある。一方21年度は+0.3%ポイントの上方修正とした。
    5.  2019年度については、成長を下支えるのは公的需要のみとなる。民間需要は+0.0%ポイントと成長に貢献しない。公的需要は消費税対策から+0.5%ポイントと成長に貢献する。域外需要は-0.3%ポイントと成長抑制要因となる。20年度は、民間需要が-0.4%ポイントと19年度に続いて成長に寄与せず、むしろ抑制要因となる。公的需要は+0.3%ポイントと成長を押し上げ、域外需要も+0.2%ポイントとプラスに転じる。21年度は、民間需要が+0.3%ポイントと回復に転じ、公的需要+0.2%ポイント、域外需要+0.3%ポイントといずれも成長に寄与する。
    6.  新型コロナウイルスの感染拡大が関西経済に与える影響について、2つの輸出に限定して試算した。回復期間の長短にもよるが、経済損失額は1,782億~5,345億円、名目GRP比では0.2~0.6%に相当する。ただしこの試算にはイベントの中止・延期、レジャー施設の休業などの影響など家計消費への影響は含まれていないため、影響はさらに拡大すると見込まれる。

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  • 稲田 義久

    Kansai Economic Insight Monthly Vol.77 – 景気は足下・先行きともに悪化 –

    経済予測

    経済予測 » Monthly Report(関西)

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 豊原 法彦 / KARAVASILEV, Yani / 野村 亮輔 / CAO THI KHANH NGUYET / 車 競飛

    ABSTRACT

    ・7月の生産(季節調整値)は2カ月ぶりの前月比プラス、原系列は8カ月ぶりの前年比増加となった。近経局は生産の基調判断を「生産は緩やかな持ち直しの動き」と前月から上方修正した。
    ・8月の貿易収支は3カ月連続の黒字だが、輸出入ともに減少し、貿易総額は対中国を中心に9カ月連続で減少。米中貿易摩擦長期化による中国経済の減速の影響が大きい。対韓輸出管理の厳格化が注目されているが影響は今のところ限定的とみている。
    ・8月景気ウォッチャー現状判断DIは、4カ月ぶりに前月比改善だが、先行き判断については2カ月連続で悪化。消費増税前の駆け込み需要への期待や増税後の反動減の懸念の影響がみられる。
    ・6月の現金給与総額は滋賀県が2か月連続、兵庫県が23カ月連続、京都府が4カ月ぶりにそれぞれ増加。一方、奈良県は12カ月連続、和歌山県は5カ月連続でそれぞれ減少した
    ・7月の大型小売店販売額は3カ月ぶりに前年を下回った。インバウンドの高額品購入が好調で百貨店は小幅プラスに寄与。一方、夏物商品が伸び悩み、スーパーはマイナスの寄与となった。
    ・7月の新設住宅着工戸数は4カ月ぶりの前年比増加。分譲は減少したが、持家、貸家は増加した。1-7月期の持家は前年同期比+9.7%増加にとどまり、前回に比して駆け込み需要は小規模。
    ・7月の有効求人倍率は前月比小幅のマイナスだが、求人数は同横ばい、求職者数は3カ月連続で増加した。完全失業率は前月比マイナス。雇用情勢は堅調である。
    ・7月の建設工事出来高は17カ月連続の前年比増加。8月の公共工事請負金額は2カ月ぶりに増加し、持ち直しの動きがみられる。
    ・8月の関空の外国人入国者数は前年比+4.9%で11カ月連続のプラスだが、伸びは前月(同+15.5%)から減速。日韓関係の悪化による航空路線の運休・減便の影響がみられる。
    ・8月の中国経済は減速感が強まっている。社会消費品小売総額の伸びは自動車市場の継続的な低調(前年比-8.1%)の影響を受け、前月より小幅減速。固定資産投資の伸びは2カ月連続で減速し、とりわけ工業部門(同+2.2%)が目立った。米中貿易摩擦が激化しつつ、貿易総額は4カ月連続で縮小している。

     

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  • 稲田 義久

    日韓関係の悪化と関西経済:2つの輸出とそのリスク

    インサイト

    インサイト » トレンドウォッチ

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 入江 啓彰 / 下田 充

    ABSTRACT

    本稿では最近の日韓関係の悪化が関西経済にどのような影響を及ぼすかを「2つの輸出」の視点から分析した。分析から以下の結論が得られた。

    1. 財貨の交易についてみれば、韓国のシェアは関西・全国ともに輸出が約7%、輸入が約4%である。中国のシェアと比較すれば、輸出で約4分の1、輸入で約8分の1である。今後、韓国との交易が停滞したとしても、関西の輸出や景気全体への影響は限定的となろう。足下、関西の輸出では韓国向けと中国向けの下落率が大きい。米中貿易摩擦の昂進とグローバル・バリュー・チェーンを通じた中国経済と韓国経済の連動性に起因していると考えられる。

    2. 2018年関西への訪日外客による消費総額は1兆1,338億円である。関西産品で9,965億円、その他地域で1,373億円が賄われている。これらによる関西経済への波及効果(付加価値ベース)は約9,213億円なり、関西の域内総生産の1.08%を創出したことになる。

    3. 仮に、訪日韓国人客が前年比30%大幅減少したとしても、訪日外客が関西で生み出す付加価値はベースケースより376億円、-4.1%の減少にとどまる。この背景には韓国人の消費単価の低さがある。府県別では、大阪府の影響が大きく269億円減少し、関西の減少幅の72%を説明する。GRPに対する寄与度でみれば、ベースの1.08%から0.044%ポイント低下する。

    最近の日韓関係の悪化が関西経済に及ぼす影響は限定的と見るが、特にインバウンドの観点から、この結論に至るうえで、重要なのは中国の役割である。関西はアジアからの訪日客が圧倒的に多く、中国人客が堅調に伸びる中、日韓関係の悪化からくるインバウンドへの影響は限定的となろう。勿論、訪問率からわかるように、韓国人の訪問率は中国人に比して比較的地方に分散しているため、関西以外ではその影響は厳しめに出る可能性がある。

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  • 稲田 義久

    Kansai Economic Insight Monthly Vol.76 – 景気は足下・先行きともに悪化 –

    経済予測

    経済予測 » Monthly Report(関西)

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 豊原 法彦 / KARAVASILEV, Yani / 馬 騰 / 野村 亮輔 / 吉田 茂一

    ABSTRACT

    ・6月の生産は3カ月ぶりに減産となった。結果、4-6期は前期比-0.2%小幅低下した。近経局は生産の基調判断を「生産は底堅い動きがみられる」と前月から据え置いた。
    ・7月の貿易収支は2カ月連続の黒字だが、輸出入ともに減少し、貿易総額は対中国を中心に8カ月連続で減少。米中貿易摩擦長期化による中国経済の減速の影響が大きい。対韓輸出管理の厳格化が注目されているが影響は今のところ限定的とみている。
    ・7月の景気ウォッチャー現状判断DIは、3カ月連続で前月から悪化し、8カ月連続で50を下回った。梅雨明けの遅れによる売行きの悪化に加え、インバウンド消費の勢いが以前と比べて緩やかになっているようである。
    ・5月の関西2府4県の現金給与総額は前年比横ばい。実質現金給与総額は3カ月連続で同マイナスとなった。
    ・6月の大型小売店販売額は2カ月連続で前年を小幅上回った。高額品や家庭用電気製品が好調で百貨店はプラスに寄与した。一方、スーパーは昨年の震災によりレトルト食品の売上が増加したが、今年はその反動がみられ、マイナスの寄与となった。
    ・6月の新設住宅着工戸数は前年比-3.6%と3カ月連続で減少。持家と分譲は増加したが、貸家の大幅減少の影響が大きかった。
    ・6月の有効求人倍率は前月比小幅のマイナスだが、求人数、求職者数ともに2カ月連続で増加した。完全失業率は前月比マイナス。雇用情勢には一服感がみられる。
    ・6月の建設工事出来高は16カ月連続で前年比増加した。7月の公共工事請負金額は4カ月ぶりに同マイナスとなった。
    ・7月の関空の外国人入国者数は前年比10カ月連続で増加し、また2カ月連続の二桁の伸びとなった。
    ・中国7月の製造業購買担当者景況指数(PMI)は49.7となり、3カ月連続で景気分岐点を下回っている。対米貿易黒字は279.7億ドルとなり、3カ月ぶりに縮小した。

     

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  • 稲田 義久

    Kansai Economic Insight Quarterly No.43 <一部底堅さも見られるが、先行き不安で弱含み>

    経済予測

    経済予測 » Quarterly Report(関西)

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 入江 啓彰 / 野村 亮輔

    ABSTRACT

    一部底堅さも見られるが、先行き不安で弱含み-米中対立の行方や消費増税の影響など不透明要素が重荷-

    1.2019年1-3月期実質GDP成長率は前期比+0.5%(年率換算+2.1%)と2四半期連続のプラス成長となった。内需で成長率を押し上げたのは民間在庫変動と公的固定資本形成で、民間最終消費支出や民間企業設備はともにマイナスとなった。純輸出(外需)はGDP成長率に対してプラスに寄与した。対中国取引が停滞して輸出が減少したが、輸入が輸出を上回るマイナスとなったためである。

    2.2019年1-3月期の関西経済は、一部にはまだ底堅さも見られるが、景気後退懸念が高まってきている。中国経済の減速から、対中輸出や生産は停滞している。また消費者センチメントや企業の景況感などマインドに関する指標の悪化も目立つ。この背景には、米中対立の行方や消費増税の影響など景気の先行きに対するリスクの高まりがある。

    3.関西の実質GRP成長率を2019年度+0.7%、20年度+0.4%と予測する。前回の予測結果と比べて、19・20年度とも下方修正とした(それぞれ-0.1%ポイント、-0.2%ポイント)。域外需要、特に輸出を見直したためである。なお標準予測に対するリスクとして、米中対立に伴う中国経済の鈍化および影響の長期化、消費増税の影響が考えられる。

    4.実質GRP成長率に対する各需要項目の寄与度を見ると、2019年度は民間需要が+0.5%ポイントと、前年度に比べると幾分小幅となるが、景気を下支えする。また公的需要も政府の消費税対策の影響から+0.3%ポイントと成長に貢献する。一方域外需要は-0.1%ポイントと成長抑制要因となる。20年度は民間需要+0.3%ポイント、公的需要+0.3%ポイント、域外需要-0.1%ポイントとなる。前年度と似た傾向の成長パターンとなるが、民需の貢献はやや小さくなる。

    5.地域経済統計の確報値公表について、時期の遅れや頻度がしばしば課題となる。APIRでは、足下の経済のタイムリーな状況把握を目的として、確報値発表に先行する経済データの作成に取り組んでいる。今回は都道府県別訪日外客数と県内総生産の早期推計を紹介する。

     

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  • 稲田 義久

    Kansai Economic Insight Monthly Vol.70 – 景気は足下横ばいも、先行きは改善の兆しか –

    経済予測

    経済予測 » Monthly Report(関西)

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 豊原 法彦 / 木下 祐輔 / 生田 祐介 / CAO THI KHANH NGUYET / 馬 騰

    ABSTRACT

    – 景気は足下横ばいも、先行きは改善の兆しか –
    ・12月の生産は2カ月連続の前月比減産となったが、10月の挽回生産の影響もあり、10-12月期は3四半期ぶりにプラスに転じた。結果、2018年平均の生産は3年連続で増加した。
    ・1月の貿易収支は12カ月ぶりの赤字となり、前年比大幅拡大した。中国経済の減速と米中貿易摩擦により、半導体関連を中心に輸出額が大幅減少したためである。
    ・1月の景気ウォッチャー現状判断DIは、3カ月連続の前月比悪化。暖冬傾向が続き季節商材の売れ行きが低調であること、中国における電子商取引法(EC法)の影響で百貨店の免税売上が減少したことなどが判断を押し下げた。
    ・11月の関西2府4県の現金給与総額は2カ月連続の前年比増加。実質現金給与総額は消費者物価上昇率の減速もあり、4カ月ぶりの前年比上昇であった。
    ・12月の大型小売店販売額は2カ月連続の前年比マイナス。高額品や化粧品が伸び百貨店は2カ月ぶりのプラスも、季節性飲食料品の不振のためスーパーは3カ月連続のマイナスであった。
    ・12月の新設住宅着工戸数は2カ月連続の前年比増加。分譲をはじめ、すべての項目で増加した。結果、2018年通年では2年ぶりの改善となった。
    ・12月の有効求人倍率は3カ月連続で前月比悪化したが、完全失業率は4カ月ぶりの改善。雇用情勢は堅調である。2018年通年は、有効求人倍率は9年連続、完全失業率は6年連続で改善した。
    ・1月の公共工事請負金額(季節調整値)は前月比大幅増加し、2カ月ぶりのプラスとなった。
    ・12月の建設工事出来高は10カ月連続の前年比増加。結果、2018年通年は前年とほぼ同水準であった。
    ・1月の関空の外国人入国者数は4カ月連続で前年比増加したものの、一桁台の伸びにとどまっている。国籍別では、11月は韓国・台湾・香港からの入国者数が6カ月連続で減少した。
    ・中国1月の製造業PMIは2カ月連続で景気分岐点を下回ったが、前月からやや改善。一方、米中貿易摩擦の影響を受け、12月と1月の対米輸出入はともに前年比減少。米中貿易摩擦の影響が顕在化している。

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  • 稲田 義久

    Kansai Economic Insight Monthly Vol.69 – 景気は足下横ばいも、先行きは悪化を見込む –

    経済予測

    経済予測 » Monthly Report(関西)

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 豊原 法彦 / 木下 祐輔 / 生田 祐介 / CAO THI KHANH NGUYET / 馬 騰

    ABSTRACT

    – 景気は足下横ばいも、先行きは悪化を見込む –
    ・11月の生産は2カ月ぶりの前月比減産となったが、10-11月平均は7-9月平均比+2.8%上昇。10-12月期は3四半期ぶりの回復となる可能性が高い。
    ・12月の貿易収支は11カ月連続の黒字だが、黒字幅は4カ月連続の前年比縮小。貿易黒字を四半期ベースで見ると、1-3月期と4-6月期は前年比拡大したが、7-9月期と10-12月期は縮小した。
    ・12月の景気ウォッチャー現状判断DIは、3カ月ぶりの前月比悪化。インバウンド需要は堅調だが、株価下落や暖冬傾向が続き、季節商材の売れ行きが低調であることが判断を押し下げた。
    ・10月の関西コア賃金指数は2カ月ぶりの前年比増加だが、消費者物価上昇により、実質現金給与総額は3カ月連続で減少している。実質賃金を巡る環境は悪化している。
    ・11月の大型小売店販売額は2カ月ぶりの前年比マイナス。暖冬の影響もあり、冬物衣料の不振で百貨店は2カ月ぶり、飲食料品(鍋物)の不振でスーパーは2カ月連続のマイナスであった。
    ・11月の新設住宅着工戸数は2カ月ぶりの前年比改善。分譲をはじめ、すべての項目が全体を押し上げた。
    ・11月の有効求人倍率は2カ月連続の前月比悪化。完全失業率も3カ月連続で悪化したが、非労働力人口の減少もあり、引き続き雇用情勢は堅調である。
    ・12月の公共工事請負金額(季節調整値)は3カ月ぶりの前月比マイナスとなったが、10-12月期は2四半期ぶりの前期比プラス。今後、復旧関連の補正予算の効果が期待できる。
    ・11月の建設工事出来高は9カ月連続の前年比増加。インバウンド・復興関連作業で今後も増加することが見込まれる。
    ・12月の関空の訪日外客数は3カ月連続の前年比増加。訪日外客数は徐々に回復しており、2018年通年では前年比+6.8%の765万人。7年連続の前年比プラスだが、伸びは1桁に減速した。
    ・中国経済の減速は鮮明である。2018年の実質GDP成長率は+6.6%となり、90年以来の低水準。12月の製造業PMIは米中貿易摩擦の影響で29カ月ぶりに景気分岐点(50)を下回った。

     

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  • 稲田 義久

    Kansai Economic Insight Quarterly No.40 <2つの輸出により足下景気は堅調も先行きに黄信号>

    経済予測

    経済予測 » Quarterly Report(関西)

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 入江 啓彰 / 木下 祐輔 / CAO THI KHANH NGUYET / 生田 祐介 / 馬 騰

    ABSTRACT

    2つの輸出により足下景気は堅調も先行きに黄信号自然災害と米中貿易摩擦高進で高まる景気減速リスク

    1.2018年7-9月期実質GDP成長率は前期比-0.3%(年率換算-1.2%)と2四半期ぶりのマイナス成長となった。実質GDP成長率に対する寄与度は国内需要-0.8%ポイント、純輸出-0.3%ポイントとともにマイナスとなった。国内需要は相次ぐ自然災害の影響で伸び悩み、民間最終消費支出が-0.3%ポイント、民間企業設備が-0.1%ポイントと成長を押し下げた。また輸出は関空の一時閉鎖の影響もあり、-1.3%ポイントと5四半期ぶりのマイナスとなった。

    2.2018年7-9月期の関西経済は、一部で自然災害の影響が見られたが、おおむね堅調を維持した。家計部門では、所得や雇用は改善が続いているが、センチメントや大型小売店販売は低調だった。企業部門では、景況感は堅調に推移し、設備投資計画は旺盛である一方、生産は弱い動きとなった。対外部門は、関空一時閉鎖により輸出入や外国人客数は一時的に前年割れとなったが、インバウンド需要は前年を上回る拡大を維持した。公的部門は弱い動きである。

    3.関西の実質GRP成長率を2018年度+1.8%、19年度+0.7%、20年度+0.5%と予測する。前回予測と比較すると、18年度は修正なし、19年度・20年度ともに-0.3%ポイントの下方修正である。

    4.全国の成長率と比較すると、18年度は、所得環境の全国を上回る高い伸びやインバウンド需要の加速により、全国より高い成長率で推移する。19年度以降は、消費増税の影響から日本経済予測と同様に関西でも成長率は減速し、全国並みの成長率となる。2020年度には、全国に比して関西では内需の貢献が小幅となり、日本予測の成長率が関西を若干上回る。

    5.標準予測に対して、海外・国内とも様々なリスクが懸念される。海外リスクとしては、世界経済全体の鈍化が指摘できる。特に中国経済にスローダウンの兆しが見えつつある中で、米中間の貿易戦争の高進は、関西経済にも影響が波及するおそれがある。国内リスクとしては、消費増税後の民間需要の停滞がある。一方で、2025年の万博開催が大阪・関西に決定したことは、先行きの明るい材料となろう。

    6.トピックスとして、自然災害の中でも、9月の台風21号による影響について検討した。9月の関空一時閉鎖によりインバウンド関連では317億円、財輸出関連では281億円となり、合計では約598億円の経済的損失が発生した見込み。これは輸出の0.3%、関西GRPの0.1%に相当する。関西に対する風評被害が履歴効果として蓄積しないよう、迅速かつ適切な情報発信が必要である。また、関西2府4県のGDP早期推計の改定結果および超短期予測の結果が示されている。

     

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  • 岩本 武和

    アジアにおける開発金融と金融協力

    研究プロジェクト

    研究プロジェクト » 2018年度 » アジア太平洋地域軸

    RESEARCH LEADER : 
    岩本 武和

    ABSTRACT

    上席研究員 京都大学教授 岩本 武和

     

    研究目的

    2017年度は、アジアにおける開発金融の実態について、(1)中国からの資本の純流出と外貨準備高減少の問題、(2)マイクロ・ファイナンスやイスラム金融などの新たな金融手法に焦点を当て、ゲストスピーカーを招聘し、足下の実態について考察した。

    中国に関しては、景気回復を企図とした人民元安が資本流出を招き、その対応策としての金融政策の引き締めが当初の景気回復策を打ち消してしまうという典型的な「国際金融のトリレンマ」に直面した状態が継続している。今年度においても、「生産能力の過剰」、「不動産在庫の過剰」及び「債務の過剰」という3つの過剰問題を中心とした中国の資本フローの研究を継続する一方で、2017年に続いてアジアの成長に資する開発金融のあり方に関して、カンボジアを中心とする途上国のドル化の問題や行政経験のある有識者を招聘して金融面からみたアジア経済の主要な課題についての検討を試みたい。

     

    研究内容

    アジアの開発金融(アジアの経済成長に資する投資のために動員される国内外の公的及び民間金融)について、以下のようなテーマを理論的かつ実証的に解明する。

    (1)リーマン・ショック後の中国経済の減速を背景にした「アジアの新興国、特に中国からの資本流出」についての昨年度の研究を継続する。

    (2)東南アジアの金融メカニズムの実態(カンボジアにおける基軸通貨のドル化)調査を実施。

    (3)東南アジアの国際機関の勤務経験を有する専門家を招聘し、金融面からみたアジア経済の主要な課題の検討を実施。

    (4)アジアインフラ投資銀行(AIIB)とインフラ開発及びアジアにおける金融システム改革や  銀行部門の資金調達等に関して、中国・ASEAN数カ国に現地調査を行う予定である。

    以下のようなテーマ、研究会、ワークショップ、フォーラムを行う予定である。

    (1)「東南アジアの金融メカニズムの実態」に関する研究会

    (2)「金融面からみたアジア経済の主要な課題を考える」ワークショップ

    (3)「ASEAN+3の枠組みによる金融協力の成果と今後の課題」に関する研究会

    (4)「人民元改革とアジアの金融統合」に関する研究会(3年間の研究成果のまとめ))

     

    統括

    本多佑三  APIR研究統括

    リサーチャー

    三重野文晴 京都大学 東南アジア研究所教授

    矢野 剛 京都大学 大学院経済学研究科教授

    青木浩治 甲南大学 経済学部教授

    中山健悟 APIR調査役・研究員

    リサーチアシスタント

    芦 苑雪 京都大学アジアアフリカ地域研究科

     

    期待される成果と社会還元のイメージ

    (1)中国における国際資本フローに関する報告(時系列などの金融市場データを含む)

    (2)『アジアにおける開発金融と金融協力』に関する報告書

    (3)本研究会の研究成果を踏まえた書籍の出版

    そのほか、政策立案、ビジネス戦略策定、将来予測の裏付けとなる理論的・実証的裏付け、公共財や研究インフラとなる研究成果やデータに資する。

     

    <研究会の活動>

    研究会

    ・2018年8月8日   第1回研究会開催

    「カンボジアのドル化:アジア開発金融への示唆」講師:一橋大学大学院 奥田英信 教授

  • 稲田 義久

    Kansai Economic Insight Monthly Vol.62-景気は足下、先行きともに悪化基調-

    経済予測

    経済予測 » Monthly Report(関西)

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 豊原 法彦 / 木下 祐輔 / 生田 祐介 / CAO THI KHANH NGUYET / 馬 騰

    ABSTRACT

    -景気は足下、先行きともに悪化基調-
    ・4月の鉱工業生産指数は前月比大幅上昇し、3カ月連続のプラス。また、1-3月平均比でも大幅上昇した。近畿経産局は生産の基調判断を前月から据え置いた。
    ・5月の貿易収支は4カ月連続の黒字となったものの、黒字幅は前年比縮小。アジア向けの半導体関連の輸出が伸びたが、原油高により輸入の伸びが上回ったため。
    ・5月の景気ウォッチャー現状判断DIは、2カ月ぶりの前月比悪化。インバウンド消費は堅調だが、天候不順や3-4月に売上が好調だった衣料品の反動減などが悪化に寄与した。
    ・3月の関西2府4県の現金給与総額は13カ月連続の前年比増加。実質現金給与総額は3カ月ぶりの改善となったものの、物価上昇の影響から伸びは小幅にとどまった。
    ・4月の大型小売店販売額は2カ月連続の前年比プラス。スーパーでは農産品価格の低下により減少したが、百貨店では高額品と初夏物アイテムの好調により増加したため。
    ・4月の新設住宅着工戸数は、分譲マンションの急増により、2カ月ぶりの前年比大幅増加。2015年6月以来の最高値となった。
    ・4月の有効求人倍率は43カ月ぶりに前月比小幅悪化も、依然として高水準で推移。完全失業率は2カ月連続で横ばい。労働力人口と就業者数の増加がみられ、雇用情勢は好調である。
    ・5月の公共工事請負金額は3カ月ぶりの前月比マイナス。基調は前月の持ち直しから減少に転じた。また、4月の建設工事は、2カ月連続で前年比増加した。
    ・5月の関空を利用した訪日外客数は15カ月連続の前年比増加。14カ月連続で2桁増と好調が続く。国籍別にみれば、3月は韓国からの訪日客は7カ月連続で最多を更新した。
    ・5月の中国経済は幾分減速感がみられる。工業生産は2カ月ぶりの前年比減速。1-5月期の(累積)固定資産投資は3カ月連続で減速。社会消費品小売総額は2カ月連続で前年比減速した。

    ※ 英語版はこちら

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  • 岩本 武和

    アジアにおける開発金融と金融協力

    研究プロジェクト

    研究プロジェクト » 2017年度 » アジア太平洋地域軸

    RESEARCH LEADER : 
    岩本 武和

    ABSTRACT

    リサーチリーダー

    上席研究員 京都大学教授 岩本 武和

     

    研究目的

    2016年度のプロジェクトでは、「アジア新興国における国際資金フロー」について、特に「中国からの資本の純流出と外貨準備の減少」に焦点を当て、「アジアインフラ投資銀行」(AIIB)と「一帯一路」構想を、こうした文脈において考察した。現在の中国では、景気回復のための元安が資本流出を招き、それに対応するためには金融を引き締めざるを得ず、当初の景気回復策を打ち消してしまうという意味で、典型的なトリレンマに直面している。今年度においても、中国を中心としたアジアにおける国際資本フローの研究を継続する一方で、中国のみならず広く「金融協力」という側面から、アジアの成長に資する開発金融のあり方を検討する。

     

    研究内容

    アジアの開発金融(アジアの経済成長に資する投資のために動員される国内及び海外の公的及び民間の金融)について、以下のようなテーマを理論的かつ実証的に解明する。第一に、リーマン・ショック後の中国経済の減速を背景にした「アジアの新興国、特に中国からの資本流出」についての昨年度の研究を継続する。第二に、ASEAN+3の枠組みによる金融協力の成果を検証し、今後の課題を展望する。(3)アジアインフラ投資銀行(AIIB)とインフラ開発、およびアジアにおける金融システム改革や銀行部門の資金調達等に関して、中国およびASEAN数カ国に現地調査を行う予定である。

    具体的には、以下のようなテーマを取り上げ、以下のような研究会、ワークショップ、フォーラムを行う予定である。(1)「東南アジアの金融メカニズムと政策的取り組み」に関する研究会、(2)「リーマン・ショック後の中国の国際資本フロー」に関するワークショップ、(3)「ASEAN+3の枠組みによる金融協力の成果と今後の課題」に関する研究会、(4)「アジア太平洋における地域統合と金融統合」に関するフォーラム(「アジア太平洋地域におけるFTAとEPAのあり方」プロジェクト(木村福成上席研究員)とのジョイント・フォーラム)

     

    統括

    猪木武徳  研究統括

    リサーチャー

    三重野文晴 京都大学 東南アジア研究所教授

    矢野 剛 京都大学 大学院経済学研究科准教授

    青木浩治 甲南大学 経済学部教授

    Cao, Thi Khanh Nguyet APIR研究員

    辻 俊晴 APIR総括調査役

    研究協力者

    北野尚宏 国際協力機構 JICA研究所所長

    高野久紀 京都大学 大学院経済学研究科准教授

    伊藤亜聖 東京大学 社会科学研究所講師

    リサーチアシスタント

    芦 苑雪 京都大学アジアアフリカ地域研究科

     

    期待される成果と社会還元のイメージ

    (1)中国における国際資本フローに関する時系列データ

    (2)アジアにおけるよる金融協力の成果に関する報告

    (3)アジアのインフラ開発に時系列データ

    (4)マイクロ・ファイナンスに関する実験データ

    (5)アジアにおける開発金融と金融協力に関する報告書

    (1)政策立案、ビジネス戦略策定、将来予測の裏付けとなる理論的・実証的裏付け

    (2)公共財や研究インフラとなる研究成果やデータ

     

    <研究会の活動>

    研究会

    ・2017年5月18日   第1回研究会開催

    ・2017年8月3日   第2回オープン研究会(予定)

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  • 稲田 義久

    Kansai Economic Insight Quarterly No.32 <足下は停滞局面続くも先行きに緩やかな持ち直しの兆し>

    経済予測

    経済予測 » Quarterly Report(関西)

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 入江 啓彰 / 林 万平 / 木下 祐輔 / James Brady / CAO THI KHANH NGUYET

    ABSTRACT

    足下は停滞局面続くも先行きに緩やかな持ち直しの兆し

    1.2016年7-9月期の実質GDP成長率は前期比年率+2.2%(前期比+0.5%)となった。3四半期連続のプラス成長で、事前の市場コンセンサスを大きく上回る結果となった。家計消費をはじめとする国内需要は振るわなかったが、純輸出が高い伸びを示し、GDP成長率を押し上げた。

    2.足下の関西経済は、停滞局面を抜けて、先行きに緩やかな回復の兆しが見られはじめた。家計部門は、弱めの動きとなっている。消費者心理は改善しつつあるが、所得環境は足下で伸び悩んでいる。雇用環境では依然堅調な改善が続いているとはいえ、ペースはやや鈍化傾向にある。一方企業部門は、景況感や生産などで弱い動きから持ち直しの動きが見られる。域外取引では、貿易収支は黒字基調であるものの、輸出と輸入はともに停滞が続いている。

    3.関西の実質GRP成長率を2016年度+0.6%、17年度+0.8%、18年度+1.1%と予測する。前回の予測結果と比較すると、2016年度は小幅の下方修正、17年度は修正なしである。今回から18年度の予測を新たに追加した。

    4.日本経済予測と比較すると、関西の成長率は2016-17年度にかけて日本経済予測の結果より下回って推移すると見込む。所得環境の回復の動きが弱いこと等から民需の伸びは比較的緩慢である。また輸出の停滞から外需の寄与も全国に比べて小さい。一方18年度は、中国経済の復調で外需が伸び、全国よりも高い成長率を見込む。

    5.2016年度は民間需要が+0.4%ポイント、公的需要+0.2%ポイントと内需が成長を押し上げるが、外需は成長に対して寄与しない。17年度は小幅ながら各項目がバランスよく成長に貢献する。18年度は、民間需要+0.5%ポイント、公的需要+0.2%ポイント、外需+0.4%ポイントと、民需と外需の貢献が拡大する。

    6.県内GDP早期推計(2014-15年度実績見通し)を改定した。関西2府4県の実質GRP成長率(生産側)は2014年度+0.28%、15年度が-0.09%と予測。一部に堅調な成長を続ける府県があるものの、経済規模の大きい大阪府の景気が振るわないことなどにより、回復軌道になかなか乗れない状況にあったと見込まれる。

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  • 稲田 義久

    第109回景気分析と予測<新経済対策を考慮し予測を小幅上方修正>

    経済予測

    経済予測 » Quarterly Report(日本)

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 下田 充

    ABSTRACT

    新経済対策を考慮し予測を小幅上方修正

    1.GDP1次速報値によれば、4-6月期実質GDP成長率は前期比年率+0.2%(前期比+0.0%)と2四半期連続のプラスとなった。実績は市場コンセンサスから幾分下振れた。内閣府は季節調整において閏年調整を行っておらず、その分4-6月期の成長率を押し下げたようである。閏年要因を均せば、年前半2四半期は小幅(1%程度)のプラス成長となり、景気は緩やかな回復といえよう。

    2.4-6月期実質GDP成長率への寄与度を見ると、内需は前期比+1.2%ポイントと2四半期連続のプラスだが、純輸出は同-1.0%ポイントと4四半期ぶりのマイナスとなった。民間最終消費支出と民間住宅が伸び公的固定資本形成も増加する一方で、民間企業設備と輸出が減少したのは懸念材料である。

    3.2015年以降足下まで、財貨・サービス輸出の伸びは前期比プラス・マイナスを繰り返しており、均せば横ばいの動きとなっている。BREXITの影響は当面は限定的だが、今後は一定の影響が出てくる。米国経済の回復は緩やかで、中国経済も低迷から脱出できていない。しばらくは、日本経済にとって輸出市場の回復見込みは薄い。

    4.4-6月期GDP1次速報値を織り込み、2016年度の実質GDP成長率は前年を幾分下回る+0.7%、17年度は+1.0%と予測する。前回(第108回)予測に比して、16年度0.2%ポイント、17年度0.3%ポイント、いずれも上方修正となった。16年度は純輸出が世界経済の低迷、円高の進行から前回予測から下方修正、一方民間需要と公的需要が上方修正された。民間最終消費支出や民間住宅が幾分回復するが、企業設備が低調で輸出が減少し、成長牽引役が不在の状況となる。

    5.前回予測における財政政策の想定は、消費増税の再延期と補正予算の効果のみであった。今回は新たに経済対策(「未来への投資を実現する経済対策」)の影響を考慮した結果、公的需要は16-17年度にわたり景気を下支えする。純輸出は横ばいだが、民間需要と公的需要が成長を支えるパターンである。

    6.足下消費者物価コア指数は前年比マイナスが続いている。これを織り込み、同指数のインフレ率は2016年度-0.2%、17年度+0.6%と予測。国内企業物価指数は-2.7%、+0.1%となる。GDPデフレータは+0.2%、+0.2%と予測している。日銀は7月の展望レポートの中で、消費者物価コア指数の見通しを、16年度+0.1%、17年度+1.7%としているが、実現には困難が伴うと思われる。

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  • 稲田 義久

    Kansai Economic Insight Monthly Vol.39

    経済予測

    経済予測 » Monthly Report(関西)

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 林 万平 / 木下 祐輔 / James Brady / CAO THI KHANH NGUYET

    ABSTRACT

    -雇用は好調も、厳しさを増す消費動向-
    ・5月の鉱工業生産指数は2カ月連続の前月比マイナス。生産は依然停滞基調である。
    ・6月の輸出は9カ月連続の前年比マイナス。輸入は10カ月連続の同マイナス。結果、貿易収支は5カ月連続の黒字。資源価格・為替レートも変動しており、今後貿易黒字の持続性については、注意が必要である。
    ・6月の消費者態度指数は消費増税が延期されたこともあり、2カ月連続の改善。一方、関西の景気ウォッチャー現状判断DIは2カ月連続の悪化。英国のEU離脱への不安やインバウンド関連の減速から、先行き判断DIも2カ月連続の悪化。
    ・4月の「関西コア」賃金指数は3カ月連続で上昇したものの、伸びは小幅にとどまっている。
    ・5月の大型小売店の販売額は3カ月連続の前年比マイナスとなり、減少幅は前月より拡大。百貨店、スーパーとも伸びが前年比マイナスとなったのは消費増税による反動減の影響が見られた2015年3月を除けば、2014年6月以来およそ2年ぶり。
    ・5月の新設住宅着工戸数は5カ月連続の前年比プラス。うち、持家、貸家は2桁増となった。6月のマンション契約率は3カ月ぶりに70%台を上回った。
    ・5月の有効求人倍率は、4カ月連続の上昇。新規求人倍率も2カ月連続の上昇。完全失業率は4カ月ぶりの改善となり、雇用情勢は好調を維持。
    ・6月の公共工事請負金額は2カ月連続の前年比マイナス、季節調整値でみれば、2カ月ぶりのプラス。結果、4-6月期は前期比+28.4%増加した。
    ・6月の関空への訪日外客数は51万2,100人で41カ月連続のプラスであった。
    ・4-6月期の実質GDP成長率は前年同期比+6.7%となり、前期から横ばい。依然として成長減速トレンドにある。一方、リコノミクス指数は6カ月連続で前年比上昇しており、中国経済に底打ちの兆しが見られるものの、引き続き注意が必要である。

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  • 岩本 武和

    アジアの成長に資する開発金融

    研究プロジェクト

    研究プロジェクト » 2016年度 » アジア太平洋地域の経済的ダイナミズムと今後の行方

    RESEARCH LEADER : 
    岩本 武和

    ABSTRACT

    リサーチリーダー

    上席研究員 京都大学教授 岩本 武和

    研究目的

    2015年における新興国(主要30カ国)への資本流入は、対前年比で半減し、新興国から海外への資本流出も減少するが、ネットでは5,400億ドルの流出超過となる見通しである(IIF)。流出超は1988年以来27年ぶりである。中国経済の減速を背景に、国別では中国が4,775億㌦と過去最大の流出超過、アジアでは韓国743億㌦、マレーシア334億㌦、タイ216億㌦と続いている。新興国の外貨準備高は、過去15年間で11倍に増え、1997年の通貨危機のようなリスクは低いものの、海外からの資金を引き付け、それを原資として工業品の輸出で稼ぐ成長モデルは転換点を迎えている。こうした現状を背景に、本研究では、アジアにおける新しい成長モデルと開発金融のあり方を提示する。

    研究内容

    アジアの開発金融(アジアの成長・開発目的に資する投資のために動員される国内及び海外の公的及び民間の金融)について、以下のようなテーマを理論的かつ実証的に解明する。(1)アジア通貨危機、世界金融危機、中国経済の減速を画期として、「アジアの開発金融」がどのような影響を受けたか、(2)その課題をどのように克服しながら現在に至っているか、(3)「海外からの資金流入・海外への工業品輸出」に代わる将来のアジアの成長・開発モデルはどのようなものか。また、アジアインフラ投資銀行とインフラ開発、およびアジアにおける金融システム改革や銀行部門の資金調達等に関して、中国およびタイに現地調査を行う予定である。

    具体的には以下のようなテーマを取り上げ、各テーマについて1-2名のリサーチャーが担当。研究者のみならず、官民の現場で開発金融に携わっている実務家を招聘し、研究会やセミナーを開催する予定である。(1)アジア太平洋の資金フローの変化(主として研究者)、(2)東南アジアの銀行部門(アジアの民間銀行の在日支店、JBIC審査部)、(3)アジアのインフラ開発とアジアインフラ投資銀行(AIIB)の役割(JICA、中国関係の実務家)、(4)アジアにおける国際協力とABMI(アジア債券市場育成イニシアティブ)の現状(財務省、JBIC)、(5)マイクロ・ファイナンス(主として研究者)、(6)人民元改革とアジアの金融統合。

    統括

    林 敏彦 研究統括

    リサーチャー
    三重野文晴 京都大学 東南アジア研究所教授
    矢野 剛 京都大学 大学院経済学研究科准教授
    青木浩治 甲南大学 経済学部教授
    北野尚宏 国際協力機構 JICA研究所所長

    研究協力者
    高野久紀 京都大学 大学院経済学研究科准教授
    榊 茂樹 野村アセットマネジメント 運用調査本部チーフ・ストラテジスト

    リサーチアシスタント
    芦 苑雪 京都大学アジアアフリカ地域研究科

    期待される成果と社会還元のイメージ

    アジアにおける資本フローのパネルデータ(時系列とクロスセクションを統合したデータ)。アジアの民間企業・銀行部門の資金調達に関するパネルデータ。アジアのインフラ開発に関する州・県レベルのパネルデータ。マイクロ・ファイナンスに関する実験データ。マイクロ・ファイナンスに関する実験データ。アジアにおける新しい成長モデルと開発金融のあり方に関する報告書。
    政策立案、ビジネス戦略策定、将来予測の裏付けとなる理論的・実証的裏付け。公共財や研究インフラとなる研究成果やデータ。

    <研究会の活動>

    研究会
    ・2016年6月20日   第1回研究会開催  プレゼン資料はこちら
    ・2016年8月1日  第2回研究会開催?  プレゼン資料はこちら
    ・2016年10月17日  第3回研究会開催
    ・2016年11月21日  第4回研究会開催
    ・2017年2月13日  第5回研究会開催

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  • 稲田 義久

    Kansai Economic Insight Quarterly No.29 <関西経済は足踏み状態から後退気配、先行きに警戒感強まる>

    経済予測

    経済予測 » Quarterly Report(関西)

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 入江 啓彰 / 小川 亮 / 林 万平 / 木下 祐輔 / James Brady

    ABSTRACT
    1. GDP1次速報によると、15年10-12月期の実質GDP成長率は前期比年率-1.4%(前期比-0.2%)となった。2四半期ぶりのマイナス成長。内需が-2.0%ポイントで2四半期ぶりに成長引き下げ要因となった。特に賃金の増加ペースの鈍化から民間最終消費支出の減少が大きい。純輸出は+0.6%ポイントで2四半期連続のプラスだが、輸入減が輸出減を上回った結果で、内容は良くない。景気は踊り場局面にある。
    2. 関西経済は、足踏み状態から景気後退気配で、先行きに警戒感が強まってきている。家計部門は、センチメントや雇用環境などで改善の兆しが一部見られるも、所得の改善が緩慢なことから弱含みである。企業部門では、生産は足踏み状態が続いており、設備投資計画は慎重な動きとなっている。域外取引は、中国経済の停滞などから輸出が4カ月連続の前年割れで、かつマイナス幅が拡大している。
    3. 関西の実質GRP成長率を2015年度+0.4%、16年度+1.4%、17年度-0.3%と予測する。前回予測と比較すると、2015年度0.2%ポイント、16年度0.5%ポイント、17年度0.2%ポイントのいずれも下方修正。民需は前回予測と大きく変わらないが、外需の伸びを大幅に下方修正したことによる。
    4. 成長に対する寄与度を見ると、2015年度は民間需要+0.2%ポイント、公的需要+0.1%ポイント、外需+0.1%ポイントと、成長の牽引役が不在となる。16年度は翌年の消費税率引き上げに伴う駆け込み需要から、民間需要が成長を押し上げる(+1.1%ポイント)。公的需要と外需の寄与は小さい。17年度は、消費税率引き上げにより民間需要は-0.4%ポイントと成長を抑制。外需も-0.1%ポイントと小幅ながら成長を押し下げる。公的需要の寄与は+0.1%ポイントにとどまる。
    5. 関西の2015年の賃金は伸び悩んだ。その要因として、相対的に給与の低い非正規やパートタイム労働者比率の上昇、生産調整による所定外給与減少、夏季賞与支給額減少による特別給与減少の3つがある。また、春闘が企業側に配慮した形で交渉が進んでいること、世界経済の減速による生産調整が続くことなどから、関西の賃金は2016年も引き続き伸び悩むとみられる。

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  • 稲田 義久

    第107回景気分析と予測<牽引力不足の脆弱な回復>

    経済予測

    経済予測 » Quarterly Report(日本)

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 下田 充

    ABSTRACT

    〈予測のハイライト〉

    1. GDP1次速報値によれば、10-12月期実質GDP成長率は前期比年率-1.4%(前期比-0.4%)と2期ぶりのマイナスとなった。市場コンセンサスから下振れたがCQM予測とほぼ同じとなった。1月に入りCQMはマイナス成長を予測したが、足下の景気の悪さを確認した結果といえよう。
    2. 10-12月期実質GDP成長率(前期比年率ベース)への寄与度を見ると、内需は-2.0%ポイント減少し2四半期ぶりのマイナス。民間企業設備を除き内需は総崩れとなった。一方、純輸出は+0.6%ポイントと2四半期連続のプラスとなったが、輸入の減少が輸出の減少を上回った結果であり、内容はけっしてよくない。
    3. アベノミクスがスタートして3年がたった。実質GDP成長率は12四半期のうち5四半期がマイナス成長であり、消費増税後に集中している。内訳を見れば、民間最終消費支出や民間住宅がこの3年でマイナスの伸びを記録したのに対し、企業設備や輸出、政府支出がプラスの伸びを示しているのが大きな特徴である。企業の生産、雇用や企業設備の増加の成果(trickle-down effect)が家計に十分行きわたっていないことは明瞭である。
    4. 10-12月期GDP1次速報値を織り込み、実質GDP成長率を2015年度+0.6%、16年度+1.1%、17年度を0.0%と予測する。前回(第106回)予測に比して、15年度を0.2%ポイント、16年度を0.4%ポイントいずれも下方修正、17年度は0.2%ポイント上方修正した。
    5. 15年度は予想以上に実質所得が低迷したことと海外経済の減速で、民間最終消費支出と輸出が下方修正されたが、民間住宅と民間企業設備は上方修正されている。このため実質GDP成長率は小幅下方修正にとどまった。
    6. 16年度については、前回予測より回復がより緩やかと見ている。純輸出の寄与度は横ばいで、民間需要を中心とする回復パターンだが脆弱なものとなる。年度末に駆け込み需要の影響が出るため成長率は前年から加速する。17年度は4月に2%ポイントの再増税を想定しているため経済は減速する。今回の上方修正は、軽減税率を考慮し消費増税の影響をより緩やかに見たためである。
    7. 中国経済の先行き不安や年初来の世界的な金融・資本市場の混乱で景気の下方修正リスクが高まっている。足下の原油安、株安、円高の水準が今後も維持された場合のシミュレーションを行った。円高のマイナス効果が、原油安のプラス効果を上回る結果、実質GDPは1年目に-0.1%、2年目に-0.2%程度引き下げられる。
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  • 稲田 義久

    Kansai Economic Insight Monthly Vol.34

    経済予測

    経済予測 » Monthly Report(関西)

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 林 万平 / 木下 祐輔 / James Brady

    ABSTRACT

    12月の鉱工業生産指数は2カ月連続の前月比減少。結果、10-12月期の生産指数は前期比横ばい。

    1月の貿易収支は2カ月ぶりの赤字。輸入は5カ月連続の同マイナスも、前年からの円安による輸出額増加の効果がほぼ剥落したことや、アジア向け輸出の落ち込みもあり、輸出は4カ月連続の前年比マイナス。

    1月の消費者態度指数は小幅改善した一方、景気ウォッチャー調査(現状判断DI)は2カ月ぶりの悪化。先行き見通しも春節を控えインバウンド消費への期待はあるものの、中国経済の減速や株安を不安視する声が多く、3カ月連続の悪化。

    10月の関西2府4県の現金給与総額は4カ月ぶりの低下。11月の「関西コア」賃金指数も2カ月連続で低下。賃金の伸びは今後低下する可能性も出てきた。

    12月の大型小売店販売額は2カ月ぶりの前年比小幅プラス。

    12月の新設住宅着工戸数は2カ月連続の前年比マイナス。1月関西のマンション契約率は5カ月ぶりに70%台を回復。

    12月の有効求人倍率は2カ月連続の改善。一方、完全失業率は前月から小幅悪化したが、労働力人口の増加によるもので、再び職探しが行われるようになったとみられる。

    1月の公共工事請負金額は2カ月ぶりの前年比マイナス。12月の建設工事は4カ月連続の同マイナス。公共工事の減速もあり、建設工事は引き続き停滞している。

    1月関空の訪日外客数は48万2,220人と36カ月連続のプラス。

    中国1月の製造業購買担当者景況指数(PMI)は前月から下落し、6カ月連続で50を下回った。2012年8月以来の低水準。非製造業購買担当者景況指数も3カ月ぶりの下落。

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  • 稲田 義久

    Kansai Economic Insight Monthly Vol.33

    経済予測

    経済予測 » Monthly Report(関西)

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 林 万平 / 木下 祐輔 / James Brady

    ABSTRACT

    11月の鉱工業生産指数は3カ月ぶりの前月比減少も、10-11月平均は7-9月平均比+1.3%の伸び。10-12月期は緩やかな伸びとなろう。

    12月の貿易収支は2カ月ぶりの黒字。輸入は、原油価格の下落もあり、4カ月連続の前年比マイナス。一方、輸出は中国経済の減速もあり、3カ月連続の同マイナス。

    12月の消費者態度指数は3カ月連続の改善、景気ウォッチャー調査(現状判断DI)も6カ月ぶりの改善。一方、先行き見通しは、暖冬が続き、冬物商品への売れ行きを不安視する声が多く、2カ月連続で悪化した。

    9月の関西2府4県の現金給与総額は3カ月連続の上昇。一方、10月の「関西コア」賃金指数は4カ月ぶりの悪化となっており、賃金の回復が一服した可能性がある。

    11月の大型小売店販売額は8カ月ぶりの前年比マイナス。百貨店のマイナスが響いた。

    11月の新設住宅着工戸数は前年比減少し、2カ月ぶりのマイナス。12月関西のマンション契約率も2カ月ぶりに大幅減。

    11月の有効求人倍率は3カ月ぶりの改善。一方、完全失業率は前月から横ばい。これまで減少していた非労働力人口が増加に転じており、職探しが一段落したようである。

    12月の関空への訪日外客数は前年比+54.7%と35カ月連続のプラス。地域別に見ると、10月の関空への訪日外客数は依然上昇トレンドが続いている。

    中国2015年10-12月期の実質GDP成長率は前期より減速。結果、2015年のGDP成長率は実質成長率が名目成長率を上回った。物価動態を見れば、生産者物価指数の下落が続いており、過剰生産の物価押し上げ圧力が厳しくなっている。

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