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「消費税」の検索結果 [ 3/3 ]

  • 熊坂 侑三

    今月のトピックス(2010年6月)

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    インサイト » コメンタリー

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    熊坂 侑三

    ABSTRACT

    6月18日に政府から「新成長戦略」(副題:「元気な日本」復活のシナリオ)が発表された。あわせて戦略実行の工程表も示された。新成長戦略の基本哲学 は、いわゆる「第三の道」による日本経済の建て直しである。すなわち、これまでの公共事業中心の経済政策(第一の道)や、行き過ぎた市場原理に基づき、供 給サイドに偏った生産性重視の経済政策(第二の道)から、経済社会が抱える課題の解決のため、新たな需要や雇用の創出をはかり、それを成長につなげる政策 (第三の道)に転換することを意味している。また新成長戦略は「強い経済」、「強い財政」、「強い社会保障」の一体的実現に主眼を置いているのが特徴であ る。
    具体的なイメージとしては、新成長戦略で「強い経済」の実現を図り、2020年度までに年平均で、名目3%、実質2%を上回る経済成長を目指している。すなわち、1%程度のインフレ率(GDPデフレータ)を想定していることになる。
    同時に民主党から参議院選挙向けのマニフェスト(Manifesto 2010)が発表された。2009年度版と比較すると、以下の3点が新しいところである。まず、(1)歳出面において、短期的な所得補償型政策から中期的 な雇用創出型政策に転換したことである。(2)歳入面では、早期増税の可能性が視野に入ってきたことである。(3)その結果、長期的(10年後)には国と 地方の基礎的財政収支を黒字化するという点が新たに追加された。
    (1)に関して言えば、2010年度の予算編成過程では効果的な歳出抑制機能が働かなかったという反省から、需要・雇用創出基準で優先順位をつけること にした。この点から、子ども手当の満額支給断念と一部現物支給の可能性、農家戸別所得補償の縮小、高速道路料金無料化断念等を決定する一方で、大都市イン フラ整備のための投資に注目した。(2)に関しては、法人税減税や消費税増税の必要性に触れているが、具体的にスケジュール化したわけでもなくインパクト に欠ける。第三の道の政策とは、増税(例えば消費税)と特定分野への重点的な資源投入の組み合わせによる雇用創出と考えられるが、この政策効果は早期には 期待できない。
    以上から、2010-11年度に限ってみれば、財政状況は景気回復の影響で財政収入が幾分改善し、歳出削減については幾分進行することから、国債新規発 行は当初予算の44兆円以下に収まるとみている。要は、残された3年間で「強い経済」、「強い財政」、「強い社会保障」の一体的実現ができるような政策メ カニズムを構築できるかである。(稲田義久)

    日本
    <4-6月期、成長率は減速するが堅調な伸びが続く>

    今週(6月21日)の支出サイドモデルは、4-6月期の実質GDP成長率を、純輸出は引き続き拡大するが内需が減速するため前期比+0.6%、同年 率+2.5%と予測する。また7-9月期の実質GDP成長率を、内需・純輸出ともに緩やかに拡大するため、前期比+0.8%、同年率+3.1%と予測して いる。いずれも1-3月期の同年率+5.0%の高成長率からは減速するものの堅調な伸びとなろう。
    4-6月期の国内需要を見れば、実質民間最終消費支出は前期比+0.1%となる。実質民間住宅は同-3.8%減少するが、実質民間企業設備は 同+3.7%増加する。実質政府最終消費支出は同+0.7%増加するが、実質公的固定資本形成は同-19.9%と大幅な減少となる。このため、国内需要の 実質GDP成長率(前期比+0.6%)に対する寄与度は+0.1%ポイントにとどまる。
    内需が減速するのは公的需要(公的固定資本形成)の減少が民間需要の伸びをほぼ相殺するためである。月次データをみると、4月の公共工事は前年同月比 -17.4%減少し、17ヵ月ぶりのマイナス。季節調整値ベースでみれば、前月比-15.4%と大幅減少し、3ヵ月連続のマイナスとなった。公共工事の先 行指標である公共工事請負金額も5月に前年同月比-5.9%となった。5ヵ月連続のマイナス。季節調整値は前月比-15.8%減少し、2ヵ月ぶりのマイナ ス。このように、公共工事は明瞭な減少トレンドを示している。
    外需をみると、財貨・サービスの実質輸出は前期比+4.9%増加し、実質輸入は同+2.2%減少する。このため、実質純輸出の実質GDP成長率に対する寄与度は+0.5%ポイントとなる。景気は依然として外需に支えられている。
    1-3月期の実質GDP成長率への寄与度をみれば、実質純輸出は4四半期連続で、実質内需は2四半期連続で成長率を引上げている。今後純輸出に大崩れがなければ、日本経済は堅調な伸びとなろう。

    [[稲田義久 KISERマクロ経済分析プロジェクト主査 甲南大学]]

    米国

    グラフにみるように、5月の雇用統計を更新した時点で超短期予測(6月4日)は4-6月期実質GDP成長率を4%程度と予測した。その後、地区連銀が発 表した製造業指数の減速と一致するように、超短期予測で示される景気拡大もスローダウンしてきた。しかし、懸念した景気の下降トレンドは形成される様子は なく、6月18日の予測では、同期の経済成長率は悪くとも2.5%を維持するものとみている。このことは、超短期予測は市場ないし連銀が考えているより、 景気の見方が楽観的であることを意味している。
    米経済は堅調に回復をしてきている。にもかかわらず、これまでホーニング・カンザスシティー地区連銀総裁を除いて政策金利の引上げを主張する連銀エコノ ミストはいなかった。確かに、ギリシャ債務危機の米経済への影響に不確実性があったことから政策金利引上げに対して慎重になる連銀の態度も理解できる。し かし、6月に入るや、フィッシャー・ダラス地区連銀総裁とロックハート地区連銀総裁がホーニング総裁と同じような見解を示すにいたった。
    ホーニング総裁は夏の終わり頃までに政策金利を1%に引上げることを主張している。フィッシャー総裁は米経済は今すぐに利上げを求める状況ではないが、 利上げへの準備の必要性を説いている。そして、米景気の回復が確実なものになるなかで、利上げの時期が近いことを示唆している。ロックハート総裁は経済が 引き続き回復し、金融市場が安定していく中で、今の異常な低金利政策は景気回復の目的としては必要でなくなり、むしろ物価安定維持の目的と一致しなくなる と言う。
    このように、これらの3人の総裁は超短期予測が示すような米経済の堅調な回復に気付き始めた。ヨーロッパの債務危機のグローバル経済への懸念が薄らいで くれば、景気の減速も収まるであろう。今後、超短期予測は経済成長が下降トレンドを形成するより、上昇トレンドに戻る可能性が高いと思われる。したがっ て、政策金利引き上げ機会が意外に早く来るかもしれない。

    [[熊坂有三 ITエコノミー]]

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    税財政に関する調査研究結果(2010年5月)

    研究プロジェクト

    研究プロジェクト » 2010年度

    ABSTRACT

    税財政に関する調査研究を実施しましたので、成果を発表いたします。
    尚、本研究は抜本的税財政改革研究会(主査:関西大学経済学部教授 橋本恭之氏)を中心に実施いたしました。

    【今回の研究のポイント】
    経済のグローバル化の進行により所得分配に問題が発生している。この状況下、消費税率引き上げを検討するためにはこの問題への対応が重要である。
    今回は格差是正或いは逆進性の問題を中心に、消費税率引き上げに際しての制度的問題について研究を行うとともに、格差是正に関して、各国で導入されている「給付付き消費税額控除制度」についてその有効性を検証した。

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    第1号 第45回衆議院総選挙を終えて (2009.9.10)

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    インサイト » 分析レポート

     / DATE : 

    ABSTRACT

    財団法人 関西社会経済研究所
    1.「新しい国のかたち」の模索  文責(浜藤豊)
    今や、日本は外にあっても内にあっても大変な時期である。我々は安心と自信を回復するために政治を鍛え直さなければいけない。この国の統治の立て直しを 誰に託すかを判断し、「新しい国のかたち」の建設を始めるのがまさに8月30日であった。その建設を進めていくに当たって克服すべき課題は多いが、大きく 分けてみるならば次の3つに集約できる。
    (1)経済構造の脆弱さ
    (2)政治、行政に対する不信感
    (3)巨額の財政赤字
    これらが複雑に絡み合って内外の環境激変に対応しきれなくなり、持続的な成長イメージが描けない状況に陥っている。

    <3課題に対する対策>
    第一に、構造的に弱い日本経済の足腰を強くするには、民間の活力を最大限に引き出す経済社会の確立を目指さなければならない。
    そのためには、日本国内の成長力を強化するとともに、海外の成長力を取り込むことが肝要である。国内面では、
    ①雇用機会の拡大や女性・高齢者の労働参加の促進
    ②省エネ設備・製品の開発・普及に向けた対策
    ③成長戦略のための技術開発促進による産業強化策
    (例)新たなサービス産業(医療、介護分野等で)の創出 など

    一方、海外成長力取り込みでは
    ①グローバル化に対応した法人税減税などの税制改革
    ②WTO中心型とEPA,FTA締結促進型との併用による自由貿易体制の確立
    ③競争力強化対策の拡充
    (例)日本への直接投資の促進(秩序ある資本の流出入を実現する市場の形成) など

    第二に、政治や行政に対する不信感を取り除いて国民が安心できる制度を構築するにはどうすればいいのかの問題である。行政の失敗が政治への不信につながっていることから
    ①無駄が生み出す財政赤字の排除の仕組みを取り入れた予算制度・公務員制度の改革
    (例)民間経営手法(PDCAサイクルなど)の採用

    ②住民選択を尊重する地域重視型社会の実現及び国・地方の役割分担を明確にした上での権限委譲
    (例)地方税財源確保のための補助金、交付税、税源配分見直し。道州制導入 など

    ③グローバル化・高齢化にも対応可能な社会保障制度の再構築
    (例)高齢者が安心して受けられる医療制度の再確立、派遣労働者へのセイフティーネット強化 など

    第三に、財政の健全化の問題が重くのしかかっている。このまま赤字が膨らみ続けると、現下の景気悪化に伴う赤字財政の拡大も加わって、将来世代が受ける 公共サービスレベルの低下も心配される。しかも、2015年には団塊世代が65歳の年金受給年齢に達し、本格的な高齢社会に突入することになる。その時期 までに財政再建への道筋をつけておかなければならない。具体的には、
    ①歳出削減と成長による、基礎的財政収支の赤字幅の削減、及び黒字化の時期
    ②成長・増税・歳出削減による、国・地方の債務残高の対GDP比のピークアウトを図る目標時期
    を明確化しておく必要がある。
    今、日本に求められていることは、現実を正しく認識し、先に述べた3つの課題に対する構造改革を推し進め、国内外の変化に柔軟に対応できる「新し い国のかたち」を構築していくことである。そこで、以下では、現在示されている各党のマニフェストがこの国の将来を示し得るものになっているのかを検討し てみたい。

    2.マニフェストに求めること  文責(島章弘)
    8月30日に実施された総選挙の結果、民主党が衆議院の過半数以上の議席を占めた。総選挙では多くの事が議論されたが、当然、政策議論が主体であり、その中心に各党のマニフェストが存在したといえる。
    近年、国政選挙におけるマニフェストの存在意義が高まっている。各党は従来以上にマニフェスト作成に努力し、国民そして各界も高い関心を払うようになって きた。マニフェストは各党の国民へのコミットメントであり、その内容を豊かにすることは日本の将来にインパクトがあると考える。
    ここでは、各党の2009年衆議院選挙に向けたマニフェストを概観し、これまでの議論や各界からの期待を踏まえ、さらに求めたいことを列挙してみた。マニフェスト評価を出発点として、政策議論の一層の活発化を期待したい。

    ■各党ともに多くの行政サービスの具体策を示しているが、その源泉となる国富の創出に関する記述が少ない。
    厳しい国際競争下、各党のマクロ経済政策や産業振興施策には一層の充実が求められる。今、求められるものはいかに内需を喚起するか、いかに国際競争力を 有する産業を発展させるかである。この結果、過度に外需に依存しない持続可能な経済発展が可能となり、国の税収を増加させ、政策が豊かなものになる。
    1990年代、米国経済は長期にわたる好況を謳歌し、「もはや景気循環はなくなった」とする「ニューエコノミー」論が活発に語られるほどであった。これ によって、巨額の財政赤字は解消され、クリントン政権を引き継いだ直後のブッシュ政権が実施した10年間で1.3兆ドルを超える減税プログラムが実現され た。

    ■不況下のマニフェストであり、セイフティーネット充実の必要性から全体として政策が増加している感が否めない。
    各党ともに行政の無駄排除を掲げているが、新政策の増加から結果として政府が関与する領域が広くなり大きな政府となる可能性がある。政府が関与する領域が広い社会経済システムを選択するのか、政府関与が少ないシステムを関与するのかの問題提起が欲しいところである。

    ■金融危機そのものに対する政策が少ない。
    現在の経済不況の発端となったのが金融危機である。株価は世界的に回復基調にあるが、根本的な問題は継続しており、国や地方の財政問題などこれから影響 が本格化する領域もある。こういったマイナス影響への対応策及び危機の再発防止への対応といった政策の提示が求められる。

    ■環境問題目標の達成手段についての国の関与に関する記述が少ない。
    原子力利用の充実を唱えている政党もあるが、これまでの原子力利用の実績を見ると、安全問題など克服すべき課題が大きく具体策に欠ける。また、日本の1 人当たり一次エネルギー消費は世界的にみて高いものであるが、個別産業のエネルギー効率でみると多くの産業で世界のトップ級になっている。技術開発の芽も 少ない状況では、削減目標数値先にありきでは、製造業の海外移転を促すだけになりかねない。さらに、排出権取引市場の設置も真の意味での環境問題進展への 寄与は期待できない。
    エネルギー分野で信頼度が高いBP統計によれば、2008年の日本の人口1人当り一次エネルギー消費量は中国の2倍以上である。しかし、鉄鋼業でみると 中国の製鉄所のエネルギー原単位は日本に比べ10%から20%悪いなど、ほぼ全ての産業で日本は優れた効率を達成している。日本の産業界が今のレベルから 飛躍的にエネルギー効率を向上させるのは相当困難である。こうした情勢下で、より厳しい目標を設定するには、より具体的な政策が求められる。

    ■税制改正に関する体系立った提案がない。
    抜本的改革との表現を使っているところもあるが、メッセージはそれだけであり中身が不透明である。暫定税率など一部の税廃止と税控除措置見直しを提唱しているところもあるが、税体系全体に関するメッセージが欠けている。
    逆進性がある消費税と累進性がある所得税とを中核として税負担をしている国民にとっては、負担構造のあり方についてむしろ受益と負担の関係から議論が行われて然るべきである。
    また、多くの党は中小企業の法人税率引き下げを提唱しているが、これは緊急経済対策的な色彩が濃いものであり、法人税全体に関する議論こそが、グローバル経済下では重要である。

    ■地方分権推進の考えは鮮明であるが、内容が説明不足。
    道州制導入を明確にしている政党は三層型地方分権制度であるのに対し、現状より広域化させた基礎自治体をベースとする政党は二層型地方分権制度といえよう。 それぞれの違いが国民生活にいかなる違いをもたらすかのメッセージが伝えられていない。

    個別分野ごとにマニフェストを概観し、これまでの議論や各界からの期待を踏まえ、求めることを列挙してみた。
    更に、個別分野ごとの議論ではなく、マニフェスト全体にかかわるポイントを指摘してみたい。マニフェストは数値や時期が明示された政策目標と合理的に選 択された明確な手段が提示されるべきである。今回、多くの政党のマニフェストは政策目標は提示されているが、具体的で明確な政策手段が示されているとの評 価をするのは難しいといえる。
    「政策形成能力」には、まだまだ問題があることを強く指摘しておきたい。また、この政策を実現・実行するのが「実現力」・「実行能力」といわれている が、前者は議院内閣制であれば政権をとるかとらないかの問題であり、後者は行政組織に対する管理能力の問題である。したがって、実現・実行の問題はマニ フェスト上の問題ではない。各党には、むしろ「政策形成能力」の向上を強く求めたい。

    3.日本の未来を示し得る政策への期待を込めて          文責(浜藤豊)
    前節では、現在までに公表されたマニフェストを前提に不充分な点を指摘してきた。日本は今、2つの大きなうねりに翻弄されている。すなわち、外にあって はグローバル化が急速に進むなかでの昨年来の経済危機、内にあっては高齢化・少子化の2つである。経済のグローバル化のうねりの象徴と対策としては、
    ①背後から迫りくる中国(GDPで追い抜かれる) → 実効性のある産業育成戦略の立案
    ②外国資金による国内金融資本市場の撹乱 → 新しい市場監視ルールの確立(投機資金の規正)
    などがあり、高齢化・少子化のうねりの象徴と対策としては
    ①人口減少の始まり → 外国人労働力・移民の受入体制の整備
    ②出生率の長期的低迷 → 結婚・出産阻害要因の除去(高校編入制度の未整備、婚外子対応など)
    などが挙げられる。
    グローバル化、高齢化・少子化が進展するなかでも持続的成長を図るためには、政府による体系的な実効性のある成長戦略が必要であると同時に、『民間企業 も成長していかなければ!』という覚悟をもって民間でも自らの成長戦略を構築することも重要である。官民共同による成長があってこそ社会は安定するので あって、子育てや雇用への安心もその延長線上に見えてくる。
    直面している危機を一刻も早く脱出し、これからの「新しい国のかたち」を構築していかなければならない。各党のマニフェストは政策内容としてはまだまだ不 十分な部分もあり、我々国民も充分にその内容を理解できているとは言い難いが、民主党に政権がバトンタッチされることになった今、マニフェスト通り誠実に 政策実現されるかをよくウォッチしていくことが肝要である。

    4.有権者意識調査                      文責(長尾正博)
    (財)関西社会経済研究所では、8月8日、9日の両日にわたって、楽天リサーチの全国サンプル1000人を対象に、インターネットを通じて、各党政策に対する有権者の意識調査を実施した。その3週間後(8月30日)衆議院選挙の投開票が行われ、獲得議席数が、多い順に、民主党308、自民党119、公明党21、共産党9、社民党7、みんなの党5、国民新党3、その他8議席という結果になった。前述の調査によれば、比例区の投票先政党については、民主党32.4%、自民党9.8%、公明党2.0%、共産党4.3%、社民党1.1%、国民新党0.5%であった(その時点で、まだ決めていない又は投票しないという方の合計は49.4%であった。)ので、実際の獲得議席数と同様の傾向を示していたことになる。例外は共産党であったが、同党に投票した有権者は比例区で7.0%であり、獲得票という意味では、これも、調査結果が反映されたと言える。
    調査結果の詳細については、「No5 各党政策に対する有権者の意識」というタイトルで、(財)関西社会経済研究所ホームページのリサーチペーパー欄に掲載しているが、その一部は下記の通りである。

    (1)支持の理由
    自民党の場合、支持する政党だから(56.1%、複数回答、以下同様)と政権を委ねるのに信頼できるから(35.7%)が突出しており、具体的な政策を評価していることにはなっていない。一方、民主党の場合、国の無駄遣いを解消し(55.2%)、官僚主導体制を打破し(45.1%)、国の構造改革を積極的にすすめてくれそう(26.5%)だからというのが支持の理由である。

    (2)個別のマニフェスト評価
    個別政策(特に民主党)について、それぞれ賛成か反対かについて聞いた結果を、賛成比率の高いものから並べると下記のグラフの通りとなった。また、比例区投票先別(民主党と自民党)にもクロス分析したところ、「子ども手当て」と「高速道路無料化」では、意見が分かれた。とくに子ども手当てについて、中学生以下のこどもがいない家庭では、賛否が互角であった。

    (3)経済・財政運営方針に対する有権者の賛否
    経済並びに財政に関する運営方針についても、その支持度合を計測した。
    この質問は難易度が高くなる為、「どちらともいえない。わからない。」という方が、経済運営で53%、財政運営で38%と多くなる。残りの明確に賛否を示された方の中で、どちらを支持するかについて聞いたところ下記の通りとなった。

  • 熊坂 侑三

    今月のトピックス(2009年8月)

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    インサイト » コメンタリー

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    熊坂 侑三

    ABSTRACT

    関西社会経済研究所は7月30日、岩田一政氏(内閣府経済社会総合研究所所長)と櫨浩一氏(ニッセイ基礎研究所経済調査部部長)をパネリストとして招 き、「世界同時不況からの回復?夜明けは見えたか?」というテーマで景気討論会を行った。政権交代の可能性が高まる中、短期的には政策や景気の見通しにつ いて不確実性が高まるという状況での討論会であった。
    各パネリストの議論は、それぞれが得意とする中期、短期、超短期をカバーした非常に内容の充実したものとなった。以下、景気討論会での重要と思われる議 論を紹介する。8月30日には総選挙結果の如何を問わず、今後の景気見通しや経済運営の議論にとって重要と考えられるからである。

    内閣府の中期経済見通し
    岩田氏は、内閣府試算の最新の中期経済の見通しから3つのシナリオを提示された。3つのシナリオとは、2011年度から毎年消費税率を1%ポイント、累 計で3%、5%、7%の引上げを行った場合の、それぞれの経済成長率と財政の基礎収支(プライマリーバランス)のパスを示したものである。プライマリーバ ランスは、成長戦略と景気回復で2007年度に-1%台まで改善したが、2008年度の大不況と大規模な財政出動で大幅に悪化し、2009年度には -8.1%まで低下すると見込まれるため、2011年度黒字化の目標はすでに放棄された。
    今後この3つのシナリオが実現された場合、プライマリーバランスが黒字化する時期は、消費税率引き上げが7%ポイントのケースは2018年度、5%ポイ ント引き上げのケースは2021年度となる。それ以外のケース(3%ないしはゼロ%)では2023年度までに黒字は実現できないようである。図からわかる ように、今回の大不況は、日本のプライマリーバランスの改善を10年程度先送りにしたことになる。

    内閣府の試算では、日本経済の成長率のパスは2008-09年度に2年連続の-3%台のマイナス成長の後、2010年度は+0.6%となり、2012年度までは大幅な需給ギャップを埋めるため3%程度の比較的高い成長を経たのち、以降潜在成長率に戻るというものである。
    最終目的としての政府債務/名目GDP比が2010年代半ばに安定化し、2020年代に低下するためにも、長期実質金利が低位安定的でなければならな い。岩田氏の指摘によれば、長期金利は生産年齢人口の変化と関係しており、日米とも生産年齢人口がピークアウトする時期にバブルが発生したことから、今後 の日本の生産年齢人口比率が低下することは長期金利安定化の一助となるが、逆に、中国は生産年齢人口が上昇することから、今後バブル発生の可能性は高くな るという。これは、重要なポイントと考えられる。

    中国は米国市場に替わる役割を完全に担うことはできない
    短期的な視点に戻せば、2009年4-6月期の日本経済の実質成長率は純輸出のリバウンドで前期比プラス成長に転じ、景気の底打ちは確認できそうだが、 年後半は加速ではなく緩やかな回復にとどまる可能性が高い。米国の超短期予測が示すように、マーケットが期待するような回復には所得サイドから疑問が投げ かけられている。日本経済にとって重要な貿易パートナーである米国経済の急回復が期待できないとすれば、年後半の日本経済の回復は緩やかなものにとどまろ う。一方、新興諸国の代表である中国は、足下政策効果があらわれ経済成長率を加速させており、日本の中国向け輸出も前期比で増加している。しかし、公共投 資を中心とする財政政策では民間消費をけん引役とする内需拡大型成長は実現できない。結局、輸出の回復が戻らなければ、中国の高成長は持続可能でないであ ろう。その意味で、日本にとって、中国は米国市場に替わる役割を完全に担うことはできない。
    日本経済が、内閣府試算が示す3つのシナリオないしはそれ以外のシナリオをとろうとも、中期成長パスの初期条件として、2010年度の経済パフォーマン スないし景気回復の中身は今後にとって非常に重要な鍵となろう。その意味で、2010年度に効果が剥落する政策の存否については、その効果についての十分 な精査が必要である。(稲田義久)

    日本
    <4-6月期は5期ぶりのプラス成長に転じるも、年後半は勢いに欠ける>

    4-6月期の実質GDP成長率(1次速報値)は前期比年率+3.7%となり、5期ぶりのプラスに転じた。成長率への寄与度(年率)を見ると、国内需要は-2.8%ポイントと成長率を引き下げ、純輸出は+6.5%ポイント引き上げた。
    今回の回復の特徴は、景気対策効果と純輸出の大きな寄与である。実質民間最終消費支出は前期比年率+3.1%と3期ぶりのプラスとなり、実質GDP成長 率を1.9%ポイント引き上げた。もっとも所得環境は悪く、実質雇用者報酬は同-6.7%と2期連続のマイナス。にもかかわらず民間最終消費支出が伸びた のは、政策効果(エコポイント制度、自動車取得促進税制や補助金)による消費性向の一時的な高まりが影響している。
    一方、投資は住宅、企業設備ともに不調である。実質民間住宅は同-33.0%と2期連続のマイナスである。実質民間企業設備も同-16.1%と5期連続 で減少した。この結果、民間住宅と民間企業設備で実質GDP成長率を3.7%ポイント引き下げたことになる。また、実質民間在庫品増加は-2.1%ポイン ト成長率を押し下げた。大幅に在庫調整が進んだといえよう。
    公的需要は同4.7%増加し、実質GDP成長率を1.1%ポイント引き上げた。うち、実質公的固定資本形成は同36.3%増加し、寄与度は+1.4%ポイントである。
    外需をみると、実質純輸出は大きく経済成長率に貢献した。財貨・サービスの実質輸出は同+27.9%増加する(寄与度+3.2%ポイント)一方で、同実質輸入は同-18.9%(寄与度+3.3%)減少したためである。
    デフレータをみると、GDPデフレータは前期比-1.1%と3期ぶりの下落となった。需給ギャップの急激な拡大を背景にデフレ圧力が強まっている。
    今週の支出サイドモデル予測は、7-9月期の実質GDP成長率を、純輸出は拡大するが、民需(特に、民間住宅、民間企業設備)が不調となるため、前期比 年率+1.6%と予測している。10-12月期の実質GDP成長率も、純輸出は引き続き拡大するが、内需が引き続き悪化するため、同+0.6%と予測して いる。このように2009年後半の経済は、4-6月期のプラス転換にもかかわらず、勢いに欠ける。この結果、2009暦年の実質GDP成長率は-5.4% となろう。
    7-9月期の国内需要を見れば、実質民間最終消費支出は前期比+0.3%となる。実質民間住宅は同-3.7%と3期連続のマイナスとなる。実質民間企業 設備も同-5.3%と6期連続のマイナスとなる。実質政府最終消費支出は同+0.5%、実質公的固定資本形成は同+0.2%となる。このため、国内需要の 実質GDP成長率(前期比+0.4%)に対する寄与度は-0.3%ポイントとなる。
    財貨・サービスの実質輸出は同5.4%増加するが、実質輸入は同横ばいとなる。このため、実質純輸出の実質GDP成長率に対する貢献度は+0.7%ポイントとなる。

    [[稲田義久 KISERマクロ経済分析プロジェクト主査 甲南大学]]

    米国
    <所得サイドから懸念される米国経済への楽観的見方 >

    6月の始め頃から米国景気の減速が緩やかになってきたことがわかってきた。このため、超短期予測は、6月から7月の始めにかけて米国景気に対して楽観的 な見方をするようになった。しかし、その後、超短期予測の改善は進まず、支出・所得サイドから4-6月期の実質GDP経済成長率を最終的には前期比年率 -1.1%と予測した。7月31日に発表された4-6月期の実質GDP速報値によれば、成長率は同-1.0%となった。実績は、超短期予測に近かったもの の、市場コンセンサスの同-1.5%よりマイナス幅が小さかった。このため、市場・エコノミスト達の間ではリセッションが2009年1-3月期に底を打 ち、これから景気が回復に向かうであろうという楽観的な見方が広まった。実際、多くのエコノミスト達は2009年7-9月期の経済成長率を+2%近くに上 方修正をしている。
    発表された経済統計が良くなくとも、それが市場のコンセンサスより良かった場合、市場・エコノミストにある種の楽観的な見方が生まれることがある。今 回、このことが雇用統計においても生じた。市場は7月の失業率が前月より0.1%ポイント上昇し9.6%になると予想していたが、結果は前月より0.1% ポイント低い9.4%となった。7月の雇用減も市場のコンセンサスをかなり下回る数字となった。このため、株価の高騰にみるように、市場、エコノミストの 間に景気回復に対する楽観的な見方が急速に広まってきた。更に、消費者が政府の補助を得てエネルギー効率のよい自動車に買い換え る”Cash?for?Clunkers Program(エコカー購入促進システム)” が予想以上に好調なこともエコノミスト達の楽観論を支えることになっている。
    8月10日の超短期予測では7月の自動車の小売販売統計が更新されていない。すなわち、”Cash?for?Clunkers Program”の経済への影響を考慮できていないことから、7-9月期の成長率予測は過小推計の可能性があるが、問題はグラフに見るように、所得サイド からのGDP予測が下降トレンドを示していることにある。所得サイドから景気回復がみられなければ、持続的・堅調な米景気の回復・拡大は難しい。その結 果、今の景気回復への楽観的な見方は期待はずれに終わることになるであろう。

    [[熊坂侑三 ITエコノミー]]

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    抜本的税財政改革研究会2008年度報告書(2009年7月)

    研究プロジェクト

    研究プロジェクト » 2009年度

    ABSTRACT

    ◇抜本的税財政改革研究会◇
    本研究会では国と地方の構造改革に資する政策提言を目指して研究を行ってきた。
    2008年度は次のテーマで研究を行い報告書にとりまとめた。
    ・小泉改革の検証
    ・消費税率の引き上げについて
    ・法人税課税と設備投資
    ・定額給付金の経済分析
    ・租税支出の推計と経済的意義
    ・たばこ税増税について
    残された課題については、2009年度において引き続き検討を行うこととする。

    2008年度抜本的税財政研究会報告書

  • 熊坂 侑三

    今月のトピックス(2009年5月)

    インサイト

    インサイト » コメンタリー

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    熊坂 侑三

    ABSTRACT

    <2009年度補正予算のマクロ経済への効果とその含意: アンケート調査に基づく検討>

    【はじめに】
    関西社会経済研究所(KISER)では、麻生内閣による経済危機対策についてアンケート調査(ウェブベース)を行い、5月13日に速報結果を報告した。一 方、5月20日発表された1-3月期の実質GDP(1次速報値)は前期比年率-15.2%と戦後最大の落ち込みとなった。これをうけて、KISERは26 日に日本経済の四半期見通しを発表する。これまで財政・金融政策の効果をマクロモデルのシミュレーションを通じて分析してきたが、より正確を期すために、 昨年以来、マクロ・ミクロの両アプローチから検討している。今回のアンケート結果のミクロ情報がマクロモデル分析に援用される。本コラムでは、先般発表し たアンケート調査結果を精査し再検討した結果から、その政策効果や含意に焦点を当ててみよう。

    【アンケート結果の精査と政策効果の推計】
    アンケート調査では、経済危機対策(補正予算)のうち、低炭素革命関連、(1)エコカー購入への補助、(2)グリーン家電普及促進、(3)太陽光発電システム購入への補助、(4)住宅などの購入にかかわる贈与税の減免などを取り扱った。
    補正予算(財政政策)の効果により発生する需要の推計は、基本的にはアンケートによる回答率に母集団である世帯数(エコカーは保有台数)を乗じて計算し ている。1,000というサンプルから出来るだけ正確に母集団の行動を推計するため、速報発表後に回答率の精査を行うとともに母集団の選択にも注意を払っ た。さらに、政策に関係なく購入する予定者の割合から潜在的な需要を割り出し、それが業界の最近の販売量と大きく相違しないかチェックも行っている。
    1.エコカー
    今回の精査では、車を持っている人のうち(車歴13年以上90、13年未満631)、今後1年以内の車の購入予定がないと答え、さらに、新車購入の予定 はなかったがこの政策により新車を購入すると答えた人(車歴13年以上3、13年未満16)のみをカウントした。この比率を車歴13年以上、13年未満の それぞれの台数に乗じる。ちなみに、2008年3月末の乗用車登録台数は4,147万台(車歴13年以上817万台13年未満3,330万台)である。

    スクラップ促進策とエコカー減税による追加的な需要創出効果は、合計、111.7万台となる。これに1台あたり200万円(インサイト、プリウスの最も安いランクの価格を参考とする)をかけると、約2兆2,334億円が政策効果となる。
    2.グリーン家電
    現在グリーン家電(テレビ、冷蔵庫、エアコン)のいずれも購入予定はないが、制度が実施されるならエコ家電を購入したいと答えた人の中で、それぞれのエ コ家電を購入すると答えた人のみが今回の政策による追加的購入の該当者とみなしている。全サンプルに対する割合は、テレビは8.5%、エアコンは 6.6%、冷蔵庫は7.0%である。この割合を2009年3月時点の世帯数(労働力調査)に乗じて追加需要を、さらに当該エコ家電の平均単価を乗じて金額 を推計している。エコ家電のうち、テレビとエアコンについては全世帯数を母集団としているが、冷蔵庫については2人以上の一般世帯を母集団としている。

    グリーン家電普及促進策による追加的な需要創出効果は、合計、1,010.4万台となり、約1兆480億円が政策効果となる。
    3.住宅用太陽光発電システム
    2005年国勢調査によると、全世帯4,906万世帯のうち、持家一戸建の世帯は2,539万世帯である。全世帯数は、直近2009年3月時点には、 5,059万世帯になっている。全世帯数の伸び率から、直近の持家一戸建数は2,618万戸と推計できる(2,539×5,059/4906)。この世帯 数が補助金対象になる。補助金対象者のうち、アンケートで太陽光発電システムをぜひ設置したいと答えた人の割合(24/494=4.9%)をかけると、 128.3万戸となる。
    これに実現可能性バイアスを考慮する。一戸建住宅を所有していると答えた人と太陽光発電システム補助金制度を利用したことがある、と答えた人の比率は 5.5%(=25/458)である。これに直近の持家一戸建推計数2,618万戸をかけると、142.9万戸となる。しかし実際には、1997-2005 年度の累積設置戸数は25.3万戸程度で利用実績は小さい(財団法人新エネルギー財団のデータ調べ)。すなわち、17.7%(=25.3/142.9)し か実際には設置されていないことになる。
    これを修正係数とすると、アンケートベースの128.3万戸に17.7%をかけた22.7万戸が新しく太陽光発電設備を設置する戸数になる。結局、250万円/戸×22.7万戸=5,675億円が追加的な需要効果と推計できる。

    最後に、贈与税制度の拡充による住宅投資創出効果をアンケートから推計しようとしたが、質問が正確に理解されていない可能性があり、今回は推計しなかっ た。グリーン家電や乗用車のような耐久消費財については、経済条件が多少変化しても購入意思が実現される可能性は高いが、住宅のような高額な買い物につい ては別物であると判断した。この政策の効果の推計には不確実性が付きまとうためである。

    【アンケート結果の経済政策への含意】
    以上の推計結果は、速報の段階よりはスケールダウンされたが、われわれは経験上確度の高い結果であると考えている。低炭素革命関連の補正予算により、民 間最終消費支出に3兆8,489億円の追加需要が2009年度に発生すると考えられる。2008年度の民間最終消費支出は290.6兆円であるから、民間 最終消費支出を1.3%引き上げることになる。経済全体では0.7%程度の引き上げとなろう。
    もっともこのアンケートは4月時点での経済情勢にもとづく消費者の追加需要を推計していることに注意しなければならない。最近発表されている夏のボーナ スの予測を見れば、前年比20%程度の減少を避けられないようである。大型の耐久消費財(big ticket items)の購入にはボーナスが決定的に重要である。これからは所得制約が強まることがはっきりしているから、ここで示した推計には上方バイアスがか かっている可能性があることを指摘しておこう。
    最後に、低炭素革命関連の補正予算の効果で2009年度に発生する追加需要は2010年度には消滅することを忘れてはいけない。ちょうど消費税引き上げ の駆け込み需要と同じである。その結果、2009年度には民間最終消費支出は成長促進要因となるが、2010年度には0.7%程度の抑制要因に転じるので ある。仮にその部分を世界経済の回復による外需が相殺してくれれば、日本経済は大不況からうまく脱出できることになる。結局、外需頼みの回復といえよう。 景気回復はダブルディップ型になる可能性が高いことを指摘しておこう。 (稲田義久・入江啓彰)

    日本
    <4-6月期日本経済、楽観は禁物>

    5月20日に発表された1-3月期GDP1次速報値によれば、同期の実質GDPは前期比-4.0%、同年率-15.2%と前期(-14.4%)を上回る 大幅なマイナスとなった。下落率は戦後最悪となり、昨年4-6月期以来4四半期連続のマイナス成長を記録した。この結果、2008年度の成長率は -3.5%となった。実績は直近の超短期モデル予測(支出サイドモデル、主成分分析モデルの平均値:-17.4%)やマーケットコンセンサス予測(ESP フォーキャスト:-15.9%)を小幅下回る結果となった。超短期モデル予測の動態を見れば、2月の月次データが利用可能となった2月末の予測において は、すでに-14%程度の大幅な成長率予測へ下方シフトが起こっている。超短期予測は2ヵ月程度早く大幅落ち込みを予測できたことになる。
    1-3月期の成長率が戦後最大の落ち込み幅となった主要因は、輸出の急激な落ち込みと低調な民間需要(民間最終消費支出と民間企業設備)である。日本の 景気の落ち込み幅は、他の先進国、米国(年率-6.1%)やEU(約年率-10%)のそれを大きく上回っている。これは、輸出に大きく依存した日本経済成 長モデルの脆弱性を引き続き示したことになる。
    ただ、3月には生産や輸出が前月比でプラスに転じたことにより、マーッケトでは4-6月期は前期比でプラス成長になる可能性がささやかれている。
    1-3月期のGDPを更新した今週の支出サイドモデル予測によれば、4-6月期の実質GDP成長率は、内需と純輸出が引き続き縮小するため、前期比-1.9%、同年率-7.5%と予測される。前期よりマイナス幅は縮小するものの依然としてマイナス成長が続くとみている。
    4月の多くのデータが利用可能ではなく、予測モデルでは時系列モデルによる予測値を用いているため、今回のようにほとんどデータが急激な下方トレンドを 示している状況では転換点の予測は後ずれする。4月のデータが利用可能となれば、実質GDP成長率のマイナス幅が縮小することは予想できるが、プラスに転 じるかについては次回の予測を待ってみたい。プラス要因として補正予算の効果が期待できるが、新型インフルエンザ等マイナスの要因もあるからである。

    [[稲田義久 KISERマクロ経済分析プロジェクト主査 甲南大学]]

    米国
    米景気に対して注意深いながらも楽観的な見方が広まってきた。最も良い例は5月5日のバーナンキFRB議長の議会両院経済委員会での証言である。彼は  ”昨年秋以降の急激な景気悪化のペースがかなり緩やかになってきた”とコメントをし、景気が2009年4-6月期において安定化することを示唆した。確 かに、最近の新規失業保険申請件数の増加はピークを打ち、雇用減少の緩和、製造業の平均週労働時間の上昇、NAHB(全米住宅建設業者協会)住宅市場指数 の1月以降の反転している。景気後退の象徴となっていた労働市場・住宅市場のこれ以上の悪化が止まる兆候をみて、マーケットは彼の証言を受け入れている。
    市場エコノミストの4-6月期経済成長率の予測は-0.5%から-1.5%の範囲にある。これは今週の超短期モデルの予測値と近い(前期比年率-1.1%)。
    景気判断するのにトレンドが重要である。ミシガン大学の消費者コンフィデンス指数、特に将来指数は2月の50.5から急速に上昇し始め、6月には 69.0にまでなっている。グラフが示すように、超短期モデル予測も3月6日の予測から4月24日の予測まで、4-6月期実質GDP伸び率の予測値が緩や かな上昇トレンドを示し、米景気の安定化を示していた。しかし、5月1日以降になるとこれまでの緩やかな上昇トレンドが急速に下降トレンドに転換し始め た。超短期モデルの予測が景気の転換点を示すのに少なくとも市場より1ヵ月早いことが理解できる。今後の超短期予測にもよるが、おそらく1ヵ月後には、” 第2四半期における景気安定化”という注意深い楽観的な見方が幾分悲観的な見方に変わる可能性が高い。

    [[熊坂侑三 ITエコノミー]]

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    「法人実効税率の引き下げに関する分析」報告 (2008年11月)

    研究プロジェクト

    研究プロジェクト » 2008年度

    ABSTRACT

    ◇抜本的税財政改革研究会◇
    本研究会では国と地方の構造改革に資する政策提言を目指して研究を行ってきた。
    2008年度は次のテーマで研究を行い報告書にとりまとめた。
    ・小泉改革の検証
    ・消費税率の引き上げについて
    ・法人税課税と設備投資
    ・定額給付金の経済分析
    ・租税支出の推計と経済的意義
    ・たばこ税増税について
    残された課題については、2009年度において引き続き検討を行うこととする。

    2008年度抜本的税財政研究会報告書

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    政府の追加経済対策(H20.10.30発表)に関する緊急アンケート結果 (2008年11月)

    研究プロジェクト

    研究プロジェクト » 2008年度

    ABSTRACT

    財団法人関西社会経済研究所(所長:本間正明)では、経済予測や税財政改革を重要な研究テーマとして取り組んで います。その基礎データ収集の一環として、麻生内閣による追加経済対策(生活対策)に対して家計の関心が高い項目(定額給付金、消費税増税、高速道路料金 引き下げ、道路特定財源1兆円の地方財源化)について緊急アンケート調査を実施しました。
    <アンケートの実施方法>
    ・ウェブアンケート形式、11月7日~11月8日
    ・分析対象数は全国1000名

    【質問と回答】
    設問1. あなたは、今回の経済対策全般についてどう思いますか。
    結果:今回の経済対策全般については、「評価しない」と「あまり評価しない」を合わせると86%に達し、「積極的に評価する」はわずか8%にとどまっている。

     

    設問2. 今回政府が発表した経済対策の一つとして、定額給付金(一人1.5万円程度の予定)が支給され、/景気回復後(2011年)に消費税が増税されることが発表されました。/定額給付金が支給されたら、あなたの考えは下記のうちどれに一番近いですか。
    結果:定額給付金については「買う予定のなかったものに使う」が12%、「半分くらいは予定のなかったものに使う」は8%であった (あわせて20%)。「余分に使わない」または「貯蓄やローン返済などにまわす」と答えたひとは80%であった。この結果から読み取れることは、以下の通 り。

    ※ 政策が経済対策への消費効果として表われる部分は、
    「1.全額を買う予定のなかったものに使う」と「2.半分位は買う予定のなかったものに使う」の部分である。「3.全額買う予定のものに使う」、「4.半 分を貯蓄・ローン返済にまわし、半分を生活必需品に使う」、「5.全額を貯蓄やローン返済などにまわす」への回答は、表現、対応は異なるが、実質的には同 じであり、「貯蓄する」と答えていることに等しい。1.を回答した人の割合と2.を回答した人の半分を足すと16%となり、これが追加的消費効果になる。 単純に比例按分すれば、2兆円の定額給付金による追加的消費は3,200億円であり、経済全体への効果はさほど大きくないといえる。

    ※ 給付金の追加的消費傾向は所得階層別に異なる。1000万円以上の所得階層では、追加的消費を考えている人の割合は30%程度(下段の補足資料を参照のこと)であり、特に高い。マクロ的な消費効果の見地からは、所得制限を設けることは望ましくない。

    設問3. ■前問で、「全額を買う予定のなかった商品やサービス購入に使う」/「半分くらいを買う予定のなかった商品やサービス購入に使う」とお答えの方に伺います■/「買う予定のなかった商品やサービス」とは、下記のうちどれに一番近いですか。
    結果:給付金を「買う予定のなかったものに使う」ひとの購入対象は、
    多い順に「旅行・レジャー(31%)」、「耐久消費財(23%)」、「服・アクセサリー(19%)」、「外食(11%)」であった。この結果から読み取れることは、以下の通り。

    ※ 定額給付金の追加的消費対象として最大の項目は「旅行、レジャー」であった。年齢階層別に見ると、50代や60代の比較的所得が高い 層やアクティブシニアにおいて平均値より高い数値が得られた。20代の若い年齢層では平均値より低い値が得られた。耐久消費財の割合がこれより低いのは給 付金のボリュ?ムが小さいからであると思われる。

    設問4. 地方経済対策として、「高速道路料金の引き下げ」と「道路特定財源のうち1兆円を新たに地方財源とする」/案が出されましたが、あなたの考えは下記のうちどれに一番近いですか。
    結果:高速道路料金値下げや道路財源のうち1兆円を地方財源にするという地方経済対策については、「与党の選挙対策であり意味がない」又 は「もっと別の地方対策を実施べきである」と答えているひとは50%にも達している。「両方共に実施すべき」は17%にとどまっている。「高速料値下げす べき」16%、「道路財源の移転」8%であった。

    ※ 補足資料(下段)によれば、地域的に評価のバラツキがある。
    東海、四国は政策に対して相対的に高い評価をしている。東北は高い評価をしている割合は平均よりわずかに上回っているが、「別の政策を実施すべき」と答えている割合が全体の24%に対して34%と地域別に見て最も高い。
    設問5. 消費税増税について、あなたの考えは下記のうちどれに一番近いですか。/※食料品・医療品は消費税5%維持を前提とする。
    結果:消費税増税については、「賛成」が41%、「反対」が54%、「わからない」が5%であった。

    ※ 麻生首相が3年後消費税率引上げについて言及したが、3年後の増税に反対している割合(17%)を加えると71%の人が3年後の消費 税引き上げに反対である。バラマキを止め、歳出削減の徹底がなければ、消費税率の引き上げそのものに反対の人が54%に達している。消費税アレルギーは依 然として根強いことがわかる。

    【設問2、3、4、5 のグラフ及び補足資料は下記をクリック下さい。】

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    「抜本的税制改革に向けた調査研究」最終報告 (2008年4月)

    研究プロジェクト

    研究プロジェクト » 2008年度

    ABSTRACT

    ((社)関西経済連合会委託調査研究)

    主査:
    跡田直澄 慶應義塾大学商学部教授

    ゆるやかな経済成長を続ける日本経済ではあるが、実際の成長率は2%程度と低迷している。経済構造改革は着実に進み、法人税収等にはその成果が明確に現 れている。一方、政府の財政構造改革はその端緒についたばかりであり、その成果はまだほとんど現れていない。にもかかわらず、先の参議院選挙の結果を勘案 すると、構造改革路線の一時的後退も予想されるところである。
    しかしながら、日本経済の再生には政府の構造改革は不可欠である。肥大化した財政のスリム化により、民間部門の活性化をはからなければ21 世紀の高齢社会は乗り切れない。この点からみれば、今、取り組まなければならない課題は、やはり、歳出の徹底的な削減であり、同時に民間活力の増強にむけ た税制の再構築である。そして、その結果を踏まえて、超高齢社会を乗り切るための次なる改革を考えることである。
    そこで、本研究では、総合的な財政改革とマクロ経済パフォーマンスとの関係をシミュレーション分析を踏まえて検討し、改革の必要性とそのあり方を模索し てみる。さらに、財政改革の中でも税制改革 は 経済のさまざまな側面に影響を与えることになるので、その影響を考慮しながら、抜本的改革のあり方を議論してみた 。

    第1章  2011年度までの財政の状況を予想しながら、取り組むべき改革を明らかにする。
    第2章  法人課税の実効負担分析に基づき税制が企業の投資行動に与える影響を明らかにし、減税の必要性に言及する。
    第3章  所得格差の原因を明らかにした上で、所得課税における給与所得控除、所得控除、さらには税率表のあり方を議論する。
    第4章  消費税の増税根拠を再考し、増税時期や増税論議における消費税偏重の問題を検討する。
    第5章  財源格差と地方課税の問題をとりあげ、法人税割と事業税を地方消費税に交換した場合のシミュレーションを行い、その影響を踏まえて税源交換のあり方を検討する。
    終 章  本報告書における分析結果を再述するとともに、その意義をまとめ今後の課題に言及する。

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    「受益と負担のあり方に関する研究」中間報告 (2006年9月)

    研究プロジェクト

    研究プロジェクト » 2006年度

    ABSTRACT

    (主査:橋本恭之 関西大学経済学部教授)

    本研究会の目的は、過去に実施された税制改革が国民生活にどう影響し、種々の改革の前提材料となる歳入見積の妥当性についても検証し、歳出・歳入改革が将来的に及ぼす影響を計測するための予備研究である。

    本報告書は2部から構成される。
    第1部では、所得税、法人税、消費税について予算策定時の税収見積額と決算額の相違を検証し、これまでの税収見積がどの程度正確なものであったか、公債発行増大による財政状況悪化が税制予測に恣意性を与えてないかを検証した。その結果、

    1. 消費税は予算と決算の乖離は殆どない。
    2. 所得税や法人税は、予算と決算の乖離があり予算税収は課税ベースだけでなく前年度の公債発行額による影響を受けている。

    第2部では、90年代に実施の税制改革が国民生活に与えた影響を計測した。その結果、

    1. 税制改革全期間通じて現在価値で約35.99兆円の減税超過となっていた。当然、平均的家計の厚生水準は改善されていた。
    2. 所得税の特別減税が家計の満足度に与えた影響は大きくなく、税率表改正による恒久な税制改革が与える影響が大きいことがわかった。
    詳細は、添付報告書を参照下さい。

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    税財政および社会保障制度の総合的改革に関する研究 (2004年3月)

    研究プロジェクト

    研究プロジェクト » 2003年度

    ABSTRACT

    関西経済連合会よりの委託調査
    (主査:帝塚山大学経済学部教授 森口親司氏 )

    年金制度の問題は国民的関心事である。年金、医療保険を中心とした社会保障制度は、国民が安心でき、企業の活力を削がず、持続可能なものでなければならない。
    本研究では、年金制度について、負担と給付のあり方、経済成長、歳出、社会保障費の見通しのもとでの国民と企業負担について理論的に検討した。具体的に は、委託者である関西経済連合会の年金改革に対する提言(歳出を抑制し、基礎年金には消費税を充てる)のケースについて厚生労働省案のケースと比較しつ つ、シミュレーションを行い、その妥当性を検証した。

    PDF
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    「三位一体改革」への緊急提言 (2003年11月)

    研究プロジェクト

    研究プロジェクト » 2003年度

    ABSTRACT

    「国・地方の行財政健全化に関する研究」研究成果報告
    (主査: 齊藤 愼・大阪大学大学院経済学研究科教授)

    地方分権については、当研究所でも最重要課題の一つと位置づけて、長年研究を重ねてきた。国庫補助負担金削減・税源移譲・交付税見直しの「三位一体改 革」こそが、「真の分権型社会」への移行に直結する、21世紀の大改革であると受けとめて、平成15年度の重要な研究活動として「国・地方の行財政健全化 に関する研究会」(主査:齊藤愼大阪大学大学院経済学研究科教授)を立ち上げた。この研究会では、昨今の経済財政諮問会議や地方自治体をはじめとする各界 の有益な議論・提案をも考慮に入れつつ、実行可能で具体的な「三位一体改革」のあり方について検討を行ってきた。もとより平成18年度までの「改革と展 望」の期間は、地方の「自己決定・自己責任」に基づく「真の分権型社会」の実現を左右する、極めて重要な期間である。こうした問題意識の下に、今般、「三 位一体改革」の加速に向けて緊急提言を行うこととした(平成15年11月25日記者発表)。提言のポイントは以下のとおりである。

    * 地方分権実現のために、三位一体改革を計画的に実現することにより、国と自治体の財政の自由度拡大と効率化を断行する。
    * 特に平成18年度までの3年間に実現すべき姿を『マーク1』とし、①奨励的補助金先行型で補助金4兆円削減、②基幹税を中心とした3兆円の税源移譲(平成 17年度には消費税1%を地方に移譲)、③平成18年度までの3年間の具体的なスケジュール(工程表)の作成・実施 を推進する。
    * 新たな地域間財政調整の構築のため、抜本的な地方交付税改革を検討する機関を早急に設ける。
    * 平成19年度以降の第2段階にあっては、補助金の大半を削減し、税源移譲についても『マーク1』に対応して、自治体の効率化努力を前提に、その8割を目処に移譲することを『マーク2』として掲げ、改革を段階的かつ継続的に進める。

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    地方分権”三位一体改革”についての有識者見解集 (2003年6月)

    研究プロジェクト

    研究プロジェクト » 2003年度

    ABSTRACT

    平成15年6月2日(財)関西社会経済研究所担当 宮原

    ●趣旨
    地方分権に向け、三位一体の改革論議(補助金の廃止・縮減、交付税の改革、地方への税源移譲)が、それぞれ対立点を抱えながらも大詰めに近づいた。 この改革は、地方分権への大きな一歩であるが、論議の結果によっては、逆に、後退、スケジュールの遅れにもなりかねい恐れもある。関西は地方分権において 学界・経済界等各界あげて全国を先導してきた。こうした背景もあり、今回、急遽、本問題についての有識者の見解をとりまとめたものである。これが、地方分 権のための三位一体の「真の改革」に貢献することを期待するものである。(有識者の見解収集期間:5月22日?5月30日)

    ●見解をお寄せ頂いた有識者(順不同)
    新川達郎 同志社大学大学院総合政策科学研究科長・教授
    中川幾郎 帝塚山大学大学院法政策研究科教授
    森信茂樹 政策研究大学院客員教授
    林宏昭 関西大学経済学部教授
    林宜嗣 関西学院大学経済学部学部長・教授
    齊籐愼 大阪大学大学院経済学研究科教授
    田中英俊 同志社大学大学院総合政策科学研究科客員教授
    知原信良 大阪大学大学院法学研究科教授
    大住荘四郎 新潟大学経済学部教授
    長谷川裕子 関西経済連合会産業地域本部地域グループ次長
    岸秀隆 監査法人トーマツ代表社員・公認会計士
    上村多恵子 京南倉庫株式会社代表取締役

    ●有識者見解の要約 (文責:事務局)

    * 新川達郎 同志社大学大学院総合政策科学研究科長・教授
    ・ 三位一体改革は国と地方の財政規律の確立であり、地方自治体の自己決定・自己責任体制の強化である。
    ・ 現在の改革論議には、それが目指す新たな社会像が見えない。成熟、低成長、少子高齢化のなかでの地域社会をセフティネットにした社会像としての分権化社会の創造と言う視点が大切。
    ・ 基本的なことよりも、増税ありき、補助金・交付金の削減先行がまかり通っているのは問題。改革の議論の仕方が問題。
    ・ 地方自治の財政自主権を保障する改革が必要。

    * 中川幾郎 帝塚山大学大学院法政策研究科教授
    ・ 地方自治体の非効率と国依存体質の原因は、中央集権支配に基づく補助金・交付金システム。
    ・ 税財源の委譲がなければ、地方の自己決定・自己選択は絵に描いた餅。財政窮迫とは別次元の問題。
    ・ 財政調整機能は簡素な方式にし、基本的には共同税を主に構成にすべき。

    * 森信茂樹 政策研究大学院客員教授
    ・ 危機的な財政赤字を踏まえ先ず、国・地方を通じた効率的な税の使い方を考えるべき。
    ・ 補助金を通じた国の関与・規制は原則撤廃。公共事業では、国の補助事業を廃止・縮減。
    ・ 地方の財政収支尻を保障する「交付税制度」そのものを廃止し、自治体間の調整は、一人当たり税収の均等化という客観的な調整に改め、その規模も縮小。
    ・ 補助金・交付税の削減によって確保される財源をもとに、地方へ税源移譲する。過去の国の債務(公共事業の国債充当分)も、その一部を国から地方へ移譲。
    ・ 財政諮問会議のような政府レベルの論議に、当事者の自治体の責任者を出席させ、効率化の具体的な数値をコミットさせることが必要。自治体の行政サービスの無駄は国をはるかに超える。
    ・ 三位一体改革、は各省、総務省、財務省、地方公共団体が一両づつ損をする「四方一両損」の改革で、最終的には、住民が受益するという改革であるべき。

    * 林宏昭 関西大学経済学部教授
    ・ 国庫支出金の改革では、事業の責任、財政的責任が曖昧な現状を見直すべき。国庫負担の基準を施設や職員数ではなく、人口、高齢者、児童など財政需要を中心に改めるべき。
    ・ 税源移譲として、消費税収の地方への配分割合を高め、所得税減税と合わせた所得割住民税の比例化を検討すべき。
    ・ 「地域のための負担」という住民意識、「住民の負担による行政」と言う行政側意識の確立が大切。

    * 林宜嗣 関西学院大学経済学部学部長・教授
    ・ 地方財政の効率化と地方分権改革は別個の問題。三位一体は同時並行で進めるべき。
    ・ 地方の歳出削減と地方交付税の縮減は改革のゴールであり、手段ではない。
    ・ 中央集権の実体をきっちり押さえた上での改革案でなければ、三位一体は迷走。

    * 齊籐愼 大阪大学大学院経済学研究科教授
    ・ 大きな改革の場合、マクロや国民生活へのメリットを明らかにすべき。
    ・ 財源難の下で地方分権を実現するには、受益と負担がキーワード。歳出水準を調整するか、あるいは負担水準を調整するかといういわゆる「限界的財政責任」(現在これは専ら地方債に依存)を明確にすべき。

    * 田中英俊 同志社大学大学院総合政策科学研究科客員教授
    ・ 地方分権が真に実体を持つには、国から自主財源を移管し地域が住民・企業・NPOとも一体となり自らの責任で政策の立案・遂行ができるようにすべき。

    * 知原信良 大阪大学大学院法学研究科教授
    ・ 三位一体は同時決着すべき。
    ・ 全国共通の固有財源と地方独自の自主施策の両方が必要。単に国からの税源移譲だけを求めていたのでは国民の理解が得られない。

    * 大住荘四郎 新潟大学経済学部教授
    ・ 歳出の削減と増税の具体的目標を設定する。
    ・ 優良自治体と一般自治体に振り分け、原則、優良自治体への国庫補助は撤廃、交付金は大幅削減。交付金の算定基準も人口などに局限する。
    ・ 将来、優良自治体になれなかった自治体は窓口機能のみをのこし、一般事務は都道府県がになう。

    * 長谷川裕子 関西経済連合会産業地域本部地域グループ次長
    ・ 財政改革優先の考えは問題。三位一体は地方の自立・分権改革が目的。
    ・ 中央集権そのものが財政需要を肥大化。
    ・ まず交付税を改めるべき。交付税税源は地方に移譲し、新たに、住民に見える財政調整の仕組みを構築すべき。

    * 岸秀隆 監査法人トーマツ代表社員・公認会計士
    ・ 地方公共団体における受益と負担の明確化が地方分権改革の目的。
    ・ 義務教育はナショナルミニマムであり国庫が負担しても良い。
    ・ 地方共同税の創設は地方の独自財源としての性格が明確になるので良い。
    ・ 財政調整交付金を恒久的措置とする場合は、「国が法令で一定の行政水準の維持を義務づけている事務を国が保障するための機能」に限定すべきである。
    ・ 「国税、地方税とも増税を伴う税制改革が必要」との案には絶対反対。

    * 上村多恵子 京南倉庫株式会社代表取締役
    ・ 地方分権・地方主権の確立は、東京ではめったに話題にならないが、関西はじめ、地方ではずっと問題にしてきた。
    ・ 明治政府以来の東京を中心とする中央集権、官主導、平等志向、欧米キャッチアップ志向等を基礎とした国のあり方を、根本的に見直す大きな「国家のモデルチェンジ」である。
    ・ 「その時代に」「その地域に」「そこに住む」人々が、自ら考えもう少し身近に行動できる新しい国と地方の関係を創る必要がある。
    ・ 国・地方の歳出削減を含めた四位一体論で進めるべきものである。国の財政再建を優先するため、国庫補助金負担や地方交付金の削減が先で、本格的な税源移譲は後からという考え方はおかしい。

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