「東日本大震災」の検索結果
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経済教室「東日本大震災から3年」バックグラウンドペーパー
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インサイト » 分析レポート
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ABSTRACT
筆者は2014年3月4日付け日本経済新聞に「(東日本大震災から3年(中))復興の遅れ、『基金』に制約」という論考(以下、新聞論考)を発表した。大西裕隆日本学術会議会長「(東日本大震災から3年(上))復興へ市町村連携・統合を」と姥浦道生東北大学准教授「(東日本大震災から3年(下)都市計画、総合的な調整を)との3連作の一部で、大震災の経済的課題について分析してほしいとの編集部の依頼に応じたものだった。
新聞論考では、災害からの復興を「被災地の持続的発展」と定義し、大災害から3年が経過した時点での経済的課題を、短期、中期、長期の視点から整理した。短期的課題としては、国の復興予算執行が滞っている問題、中期的には被災地域の地域GRPの持続的成長に必要な条件、長期的には人口変動の要因について取り上げた。
しかし、新聞という紙幅の制約から、それぞれの論点について十分に展開できなかったため、ここでは新聞論考のバックグラウンドとなった分析をやや詳しく紹介しておきたい。
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東日本大震災に際しての寄付アンケート調査結果(2011年8月)
研究プロジェクト
研究プロジェクト » 2011年度
ABSTRACT
東日本大震災以降、寄付に強い関心が集まり、2011年4月の税制改正で寄付金控除が拡充されました。
関西社会経済研究所では、寄付金控除とその拡充の政策効果を検証するためにインターネットアンケート調査を実施しましたので、その調査結果をご報告致します。
なお、本調査は当研究所の税財政研究会(主査:橋本恭之教授(関西大学経済学部))の研究成果の一部です。【アンケート調査結果のポイント】
・寄付金控除の拡充(上限引き上げ)が寄付行動に及ぼした効果は小さく、
今回の事象からは不必要な政策であったと判断できる。
・寄付金控除は寄付促進効果を持つものの、税収を減少させるマイナス面に留意すべき。
・高所得者に有利な現行制度を見直し、税額控除方式に切り替えるべきか否かは、
寄付金控除の高所得者層に対する寄付促進効果と、控除による税収減少の大小関係を
詳細に検証する必要がある。 -
第6号「東日本大震災による被害のマクロ経済に対する影響」(2011.4.12)
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インサイト » 分析レポート
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ABSTRACT
東日本大震災の直接的な被害額を推計し、3月18日発表の「日米超短期予測」にて推計した間接的な生産に対する被害額、関西経済への影響の結果とともに、政策レポート第6号としてとりまとめましたので報告いたします。
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令和6年能登半島地震の影響と北陸3県経済 -ストック、フロー、人流を中心に-
インサイト
インサイト » トレンドウォッチ
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ABSTRACT
1月1日に発生した「令和6年能登半島地震」の影響が懸念されている。震災によって大きな被害を受けた新潟県、富山県、石川県の3県(以下、北陸3県と記す)の被害状況に基づき、復旧復興の観点からその経済的な影響を考察した。それを整理し得られた含意は以下の通りである。
- ストックの観点から北陸3県経済をみれば、民間企業資本ストックは、各県とも「サービス」が最も大きい。次いで新潟県、石川県では「農林水産」が、富山県では「化学」が大きい。また、住宅ストックは新潟県が最も大きく、次いで石川県、富山県と続く。
- フローの観点から北陸3県経済をみれば、各県とも製造業のシェアが最も高い。うち、新潟県は「食料品」が、富山県は「化学」が、石川県は「はん用・生産用・業務用機械」がそれぞれ最も高いシェアを占めている。
- 今回の震災による北陸3県の直接被害(建築物等)を推計すれば、新潟県は5,177億円、富山県は2,946億円、石川県は5,827億円、3県計で1兆3,951億円となる。また、間接被害は4兆円となり、これは2020年度の名目GDPの0.4%に相当する。
- 人口移動の観点からみれば、北陸新幹線開業を契機に富山県、石川県でみられたような人口移動が今回の震災を契機に一層進む可能性がある。3月16日に金沢-敦賀間の延伸が実現するが、この効果は福井県では限定的と思われる。
- 今回の震災で北陸の観光業の特徴が明らかとなった。北陸は国内市場に強く依存した構造となっている。人口減少が長期トレンド下にあるため、この構造から脱却する必要がある。地域創生戦略にとって、インバウンド需要の一層の取り込みを実現する戦略が重要となろう。
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コロナ後における財政の規律回復と健全化 – 内閣府「中長期の経済財政に関する試算」から考察した論点 –
インサイト
インサイト » トレンドウォッチ
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ABSTRACT
内閣府は、例年1月と7月に「中長期の経済財政に関する試算」の結果を公表している。今年、7月21日に最新の試算結果が示された。2025年度のPB(プライマリーバランス)黒字化目標を堅持した骨太方針2021を数字で裏付けるものである。本稿では、この最新の試算結果を考察し、コロナ後における財政の規律回復と健全化の論点整理を行った。要約は以下の通りである。
1. 今回の試算結果によると、「成長実現ケース」では、2027年度にPB黒字化が達成される。前回(2021年1月)試算結果では2029年度であったのが2年早くなっている。コロナ前への経済回復がやや遅れると見通しているにもかかわらず、こうした試算結果となるのは、名目GDPの水準の落ち込みによる収支悪化要因よりも、2020年度の税収の予想外の上振れによる収支改善要因の方が大きいということの結果といえるだろう。また、歳出改革を今後も継続すれば、PB黒字化の前倒しが視野に入る試算結果ともなっており、コロナ後における財政健全化の道筋についての検討で、歳出改革は重要なポイントになることがわかる。
2. 内閣府の中長期試算の前提となっている全要素生産性の上昇率(いわば技術進歩率)については、以前から多くの研究者から非現実的あるいは過大な想定との疑問が呈されている。潜在成長率の過去の推移から、今回試算の「成長実現ケース」の想定は過大ではないかという見方はどうしても否めない。かといって、1%弱を下回る「ベースラインケース」の想定のままであってもいけない。政府が成長戦略の柱に掲げるグリーンやデジタルについて、具体的な戦略を積み上げていく議論が、財政健全化の道筋の具体化という意味でも必要である。
3. コロナ感染の収束が見極められてから、財政規律の回復とともに、PB黒字化などの財政健全化目標を再設定するのがよいだろう。コロナ後の財政健全化については、人口減少・高齢化等による構造的な財政赤字への対処と、コロナ対策のような予期できない緊急措置による財政赤字への対処とを、分けて考える必要がある。また、コロナ後の財政規律の確保のために、コロナ対応の施策を中心に、必要なくなったものが存続しないよう既存歳出のスクラップに取り組む必要があるし、補正予算も含め、追加的な歳出にはそれに見合う安定的な財源を確保するというペイアズユーゴー(pay as you go)原則が踏まえられるべきである。
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都道府県別訪日外客数と訪問率:7月レポート
インバウンド
インバウンド
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ABSTRACT
【トピックス】
・3-6月期の宿泊者数(全国ベース)の減少幅(推計値)から国内旅行消費額の損失額を計算すると約4.8兆円となる。Go To キャンペーンの事業予算を考慮すれば、損失額の4割程度が補填されることになるが、先行きは不透明である。
・5月の関西2府8県の延べ宿泊者数(全体)は4カ月連続の前年同月比マイナスとなった。5月4日に緊急事態宣言の延長が発出されたことによる影響が大きい。
・うち日本人延べ宿泊者数をみれば、1,245.2千人泊となり5カ月連続の前年同月比マイナス。外国人延べ宿泊者数をみれば、24.5千人泊となり4カ月連続の前年同月比マイナスとなった。
・関西7月の輸出は5カ月連続のマイナスだが、対中輸出の伸びもありマイナス幅は前月よりも縮小。輸入額は10カ月連続のマイナス。対欧米向けの輸出入の減少が続いていることに加え、原油価格の低下により鉱物性燃料の減少も影響した。
・7月の関空への訪日外客数は前年同月比-99.9%大幅減少し、6カ月連続のマイナス。新たに推計(APIR)された2019年の関西での外国人消費額は1兆1,485億円(確報ベース)となった。このため7月のインバウンド需要の損失額は956億円(= 11,485/12 ×関空への訪日外客数の減少率)と推計される。結果、2-7月期インバウンド需要の損失合計は5,368億円となる。
・関空入国者数の伸びをみれば、7月の落ち込みは前月とほぼ同程度であった。関空では国際線の一部運行が再開されるなど、訪日外客の移動手段は幾分緩和されつつあるものの、便数は限定的であり、依然として厳しい入国制限措置が取られているため、東日本大震災のように訪日外客の急回復は期待しづらい。
【ポイント】
・7月の関西2府8県別に訪日外客数(推計値)をみると、福井県5人、三重県25人、滋賀県31人、京都府986人、大阪府1,198人、兵庫県202人、奈良県292人、和歌山県24人、鳥取県11人、徳島県9人となった。各府県の伸び率は前年同月比-99.9%となった。依然として観光目的の訪日外客数は蒸発が続いている。
・JNTO訪日外客数推計値によれば、7月総数は3,800人となり、10カ月連続のマイナス。前月(2,600人)から幾分増加したものの、低水準が続いている。
※英語版はこちら
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テキストデータを利用した新しい景況感指標の開発と応用
研究プロジェクト
研究プロジェクト » 2020年度 » 経済予測・分析軸
ABSTRACT
リサーチリーダー
主席研究員 松林洋一 神戸大学大学院経済学研究科教授
研究目的
従来、マクロ経済の動向を把握するには、集計データを用いることが一般的である。しかし、集計データは、リアルアイム性に欠けており、ミクロの経済要因を知るには不十分という課題がある。一方、昨今の情報技術の急速な進展により、国内外の経済活動において生成される大規模なデータ(ビッグデータ)が様々な形で利用可能になり始めている。きわめて豊富な情報を内包しているビッグデータの活用は、マクロ経済のより精緻な情勢判断と予測において、有効であると考えられる。このため、本研究ではビッグデータの一つであるテキストデータに着目して、経済の動向を把握することを試みる。
研究内容
2019年度から引き続き、人工知能の一種である深層学習(ニューラルネットワークという人間の脳神経回路を模したモデルを構築し、コンピュータに機械学習させること)を、テキストマイニングに用いる。2020年度も、深層学習における推定モデルの一つである、リカレント・ニューラル・ネットワーク(Recurrent Neural Network,以下RNN)を、基本の分析枠組みとする。そうした分析による出力結果が、本年度の研究の出発点となる「S-APIR指数」である。
①低コスト・低タイムラグ
景況感を代理する既存の指数は、CI一致指数や消費者態度指数のように、多大な労力を投入したアンケート調査から構築されて、月次で報じられている。ところで、経済情勢の要因は一カ月単位ではなく、日々刻々と変化している。ある月の景況感指数を見て、結果的に経済情勢が前月と異なることに気付いたとしても、景気の転換局面が“いつ”であったのか、“その時”に気づくことはできない。本研究は、こうした課題を克服するため、「S-APIR指数」という新しい指数を提案する。この指数は2つの特徴を有する。まず、既存の新聞記事から自動的に出力されるため、多くの人員を必要としない(低コスト)。さらに、日次で報じることができるため、日々起こりうる景気の転換局面を把握することが可能となる(低タイムラグ)。
②S-APIR指数の評価
一般に、“景況感そのもの”を表す指標は存在せず、既存のCI一致指数や消費者態度指数は、あくまでも、“景況感らしきもの”を示した代理指標に過ぎない。本研究が提案するS-APIR指数についても、その出力の過程は異なるものの、同様に景況感の代理指標である。このため、S-APIR指数が景況感らしきものを表す指標として、どういった観点から、どの程度信頼できるものなのか、定量的にその特徴を明らかにする。具体的に、S-APIR指数は、様々なデータに対して、常に安定した入出力を繰り返すモデルであるのか、既存の類似する指数と比べてどういった特徴を有しているのか、という点に着目する。
③S-APIR指数を用いたマクロ経済分析
S-APIR指数を利用して、予期せぬイベントの発生によるマクロ経済への影響を把握することを試みる。対象のイベントとして、世界金融危機(2008年9月15日)、東日本大震災(2011年3月11日)、上海株式市場暴落(2016年1月4日)を視野に入れている。これらのイベントへ注目することにより、負のショックに対して消費者や企業がどう反応するかという観点から、「経済の不確実性」の特徴を示す。
研究体制
研究統括
稲田義久 APIR研究統括兼数量経済分析センター長、甲南大学教授
リサーチリーダー
松林洋一 APIR主席研究員、神戸大学大学院経済学研究科長・教授
リサーチャー
関 和広 甲南大学知能情報学部准教授
生田祐介 大阪産業大学経営学部講師
期待される成果と社会還元のイメージ
新聞記事のテキストデータから景況感を推定するモデルを構築し、その出力値をS-APIR指数と称している。これを政府による既存の景況感指数と比較することで、我々のモデルが有する特徴を明らかにする。その結果を踏まえて、「S-APIR指数」を一般に公表していく。
「S-APIR指数」を見ることで、消費者にとっての景況感を、より深く知ることができるようになる。まずは、企業の経営判断を行う際の議論に使えるようにする。そして、国や自治体に対しても、政策決定に活用して頂くことを検討する。
<研究会の活動>
研究会
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都道府県別訪日外客数と訪問率:3月レポート
インバウンド
インバウンド
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ABSTRACT
【ポイント】
・3月の関西2府8県別に訪日外客数(推計値)をみると、福井県302人(前年同月比-94.5%)、三重県1,514人(同-90.9%)、滋賀県1,541人(同-90.7%)、京都府5万2,937人(同-91.7%)、大阪府7万4,602人(同-92.3%)、兵庫県1万2,529人(同-91.9%)、奈良県2万3,678人(同-90.3%)、和歌山県2,188人(同-88.7%)、鳥取県874人(同-93.7%)、徳島県577人(同-89.5%)となった。先月に引き続き訪日外客の大幅減少により、各府県で大幅な落ち込みがみられている。
・JNTO訪日外客数推計値によれば、3月総数は19万3,700人と前年同月比-93.0%大幅減少し、6カ月連続のマイナス。各国で新型コロナウイルス(以下、COVID-19)による渡航制限や外出禁止などが大きく影響した。
・東アジアの伸び率をみると、中国、台湾、香港は2カ月連続、韓国は9カ月連続のマイナス。COVID-19拡大により東アジアを中心に2月を上回る減少幅となった。来月以降も大幅減少が続くと予想されていることから、一層厳しい状況が続くこととなろう。
【トピックス】
・関西3月の貿易動向を見ると、COVID-19による世界経済減速の影響が輸出入ともにみられた。輸出額は前年同月比-5.3%減少し、2カ月ぶりのマイナスに転じた(前月:同+0.8%)。輸入額は同-4.2%減少し6カ月連続のマイナスだが、減少幅は前月(同-17.5%)から縮小。結果、関西の貿易収支は2カ月連続の黒字だが、貿易総額(輸出入合計)は昨年9月を除けば15カ月連続で縮小している。
・3月の関空への訪日外客数は前年同月比-95.1%大幅減少し、2カ月連続のマイナス。2019年の関西での外国人消費額は1兆610億円と推計(APIR)されることから、3月のインバウンド需要の損失額は840.5億円(=10,610/12×0.951)と推計される。2月の損失額は583.9億円であるから、2-3月損失合計は1,424.4億円となる。なお、4月も3月と同程度の減少幅が続けば、4-6月期の損失合計は2,519.9億円に増加する。
・関空入国者数の伸びは、2月に続いて3月の落ち込みも大幅であった。今回の場合は、リーマンショックや東日本大震災のケースと異なる回復パターンとなろう。95%減の水準が最低3カ月続き、以降徐々に回復するパターンを想定するが、完全な回復には1年以上となろう。
※英語版はこちら
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都道府県別訪日外客数と訪問率:2月レポート
インバウンド
インバウンド
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ABSTRACT
【ポイント】
・2月の関西2府8県別に訪日外客数(推計値)をみると、福井県1,691人(前年同月比-67.6%)、三重県7,421人(同-53.3%)、滋賀県6,466人(同-60.6%)、京都府28万3,118人(同-54.7%)、大阪府41万1,531人(同-55.8%)、兵庫県5万8,021人(同-60.8%)、奈良県14万5,024人(同-36.1%)、和歌山県9,880人(同-56.0%)、鳥取県3,994人(同-66.3%)、徳島県2,391人(同-58.0%)となった。
・JNTO訪日外客数推計値によれば、2月総数は108万5,100人と前年同月比-58.3%大幅減少し、5カ月連続のマイナス。新型コロナウイルス感染拡大の影響により、各国で海外旅行を控える動きがみられるようである。
・国籍別に伸び率をみると、中国は17カ月ぶり、台湾は7カ月ぶり、香港は6カ月ぶり、韓国は8カ月連続のマイナス。特に中国は2003年5月以来の減少幅(前年同月比-69.9%)となった。東アジアを中心に新型コロナウイルス感染拡大の影響が大きく現れ、来月以降も更なる大幅減少が予想されていることから、今後の動向には一層の注意が必要。
【トピックス】
・2月の関空への訪日外客数は前年同月比-66.0%大幅減少した。2019年の関西での外国人消費額は1兆610億円と推計(APIR)されるから、2月のインバウンド需要の損失額は583.9億円(=10610/12×0.66)と推計される。
・関空入国者数の伸びをリーマンショック期、東日本大震災期と今回の新型コロナウイルスの3つの時期を比較すると、今回の落ち込みが最も大きい。各経済ショック発生月の翌月に減少幅が拡大する傾向が見られる。その後、再び訪日外客がプラスとなるまでリーマンショック期で15カ月、東日本大震災期で10カ月を要している。
※英語版はこちら
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127回 景気分析と予測<新型コロナウイルスの影響で2四半期連続の マイナス成長は不可避:2次速報更新後の予測改定>
経済予測
経済予測 » Quarterly Report(日本)
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ABSTRACT
1. 3月9日発表のGDP2次速報によれば、10-12月期実質GDPは前期比年率-7.1%と1次速報(同-6.3%)から更に下方修正された。前回増税時(14年4-6月期:同-7.4%)以来の下げ幅となった。
2. 10-12月期GDP2次速報発表に合わせて、基礎統計の改定や季節調整のかけ直しが行われ、過去値が改訂された。注意を要するのは、7-9月期が-0.4%ポイント(前期比年率+0.5%→同+0.1%)下方修正された結果、ほぼゼロ成長になったことである。駆け込み需要は前回増税時に比して限定的であったが、その反動減は一部台風の影響もあるとはいえ大きかった。日本経済は消費増税前から景気減速に入っていたといえよう。
3. 新型コロナウイルス感染拡大は急速に経済を縮小に追い込んでいる。財とサービスの2つの輸出の減少に加え、自粛活動の広範化による民間最終消費支出への影響を今回の予測に反映した。このため、もともと基調の弱い民間最終消費支出の大幅落ち込みにつながった。
4. 10-12月期GDP2次速報を織り込み、予測を改定した。2019年度の実質GDP成長率は-0.0%、20年度は-0.4%と2年連続のマイナス成長、21年度は+1.2%と回復に転じよう。前回(第126回)予測に比して、今回は(1)7-9月期のほぼゼロ成長、(2)10-12月期大幅マイナス成長の下方修正、(3)1-3月期以降の新型コロナウイルスの民間最終消費支出への影響を反映し、19年度を-0.3%ポイント、20年度を-0.6%ポイントいずれも下方修正。21年度は下方修正からの反動もあり、+0.1%ポイント上方修正した。
5. 実質GDPの四半期パターンをみれば、2019年10-12月期は5四半期ぶりのマイナス成長。純輸出はプラス寄与となったものの、民間需要が総崩れとなったためである。標準予測(後掲、表2参照)では、新型コロナウイルスの影響で1-3月期は民間需要の戻りが遅いことに加え、純輸出がマイナス寄与に転じるため、2四半期連続のマイナス成長は避けられない。20年度の最初の2四半期はマイナス成長からの反動で比較的高い成長となるが、以降は潜在成長率ないしはそれを幾分下回るペースが持続する。前年同期比でみると、19年10-12月期と20年の最初の3四半期はマイナス成長が避けられない。
6. 新型コロナウイルスの感染拡大の終息は標準予測では4-6月期と想定しているが、終息・回復が一層遅れる可能性もある。その回復の程度は、経済活動の下落幅とその持続期間に依存する。また中国での生産や輸出活動が回復したとしても、風評被害により人の移動の回復が遅れる可能性が高い。2011年東日本大震災の場合は、訪日外客の回復に1年を要した。生産・消費の回復スピードは一様ではない。
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災害復興の総合政策的研究
研究プロジェクト
研究プロジェクト » 2016年度 » アジア太平洋地域の経済的ダイナミズムと今後の行方
ABSTRACT
リサーチリーダー
研究員 林 万平
研究目的
地震、台風、洪水を始めとする自然災害が近年多発するアジア地域において、総合政策としての復興政策の重要性は高まってきていることを背景に、日本、フィリピン、タイ、インドネシアにおける災害後の復興政策について、経済的、行政的、市民的視点も含めて、求められる政策対応について考察する。
研究内容
過去に東日本大震災、フィリピン台風「ハイアン」、タイ洪水の分析を行ってきている(「アジアの自然災害リスク」、「アジアの自然災害リスクへの対処」、「日本企業立地先としての東アジア」、「日本、フィリピン、タイにおける災害復興のあり方」)。今年度はインドネシアの現地調査を行う。
海外学会参加を通じて、調査研究によって得た分析結果を、海外学会で発表し、ディスカッションを通じて知見を深める。
過年度の研究報告書(「アジアの自然災害リスク」、「アジアの自然災害リスクへの対処」、「日本企業立地先としての東アジア」、「日本、フィリピン、タイにおける災害復興のあり方」)にて行った2011年のタイ洪水、東日本大震災、2013年フィリピン台風「ハイアン」による被害とその後の復興についての分析を、最新の情報も加えた上で、再度整理する。
以上の分析を比較し、各大災害の特性を踏まえつつ復興における問題点や課題について整理し、政策提言を行う。また、各分析結果をもとに本の出版に向けた準備を行う。
統括
林 敏彦 APIR研究統括
リサーチャー
Jose Tiusonco APIRインターン
Mizan Bustanul Fuady Bisri APIRインターン
期待される成果と社会還元のイメージ
東日本大震災、タイ洪水、ヨランダ台風、インドネシア地震・津波災害による被害やその復興における問題や課題等についての分析を元に、報告書を執筆し公表する。政府・自治体は今後の災害復興や将来の災害対策に向けた参考にすることができる。市民・企業は、地域における防災体制の構築の上で参考にすることができる。
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エネルギーインフラ研究会
研究プロジェクト
研究プロジェクト » 2014年度 » その他調査研究
ABSTRACT
リサーチリーダー
アジア太平洋研究所 副所長 澤 昭裕
常葉大学 教授 山本 隆三
研究目的
東日本大震災は多くの教訓を残したが、その一つは防災に強い国土建設の必要性であった。特に、電気、ガス、石油のエネルギー関係のインフラを強靭にすることと、同時に他地域での震災に備えバックアップ機能を持たせることの重要性は広く認識された。関西地区での、エネルギーインフラの防災機能の現状を調査し、強靭化する方策を検討する。
研究内容
1.関西地区のエネルギーインフラの現状能力を把握する。具体的には次の点を調査する。
・供給能力(製造設備、供給設備の能力)
・製造、供給設備の配置
・海外からの燃料受け入れ
・関西以外の地域との連携状況
2.阪神大震災、東日本大震災の経験を踏まえて、南海トラフ地震に備え、工学的な見地からの設備の具体的な強靭化策と、政策面の検討を行う。
リサーチャー
能島暢呂 岐阜大学工学部社会基盤工学科教授
鍬田泰子 神戸大学大学院工学研究科准教授
橋爪吉博 石油連盟総務部
オブザーバー
大阪ガス
関西電力
期待される成果と社会還元のイメージ
エネルギーインフラ強靭化の提言を示し、官公庁、企業関係者及び研究者を対象に広く発信する。
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日本、フィリピン、タイにおける災害復興のあり方
研究プロジェクト
研究プロジェクト » 2015年度 » アジア太平洋地域の制度インフラとリスク分析
ABSTRACT
リサーチリーダー
研究員 林 万平
研究目的
アジア地域の大きなリスクのひとつである自然災害への備えを研究する。
研究内容
過去に行った東日本大震災、タイ洪水の分析研究(「アジアの自然災害リスク」、「アジアの自然災害リスクへの対処」、「日本企業立地先としての東アジア」)をベースに、最新の情報を加えつつ、フィリピンのヨランダ台風のケースについても調査分析を行うことで、各災害の比較研究を行う。
リサーチャー
Jose Tiusonco APIRインターン
Mizan Bustanul Fuady Bisri APIRインターン
林 敏彦 APIR研究統括
期待される成果と社会還元のイメージ
東日本大震災、タイ洪水、ヨランダ台風による被害やその復興における問題や課題等についての分析を元に、報告書を執筆し公表する。政府・自治体は今後の災害復興や将来の災害対策にむけた参考にすることができる。市民・企業は、地域における防災体制の構築の上で参考にすることができる。
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アジアの自然災害リスクへの対処
研究プロジェクト
研究プロジェクト » 2014年度 » アジア太平洋地域の経済成長と発展形態
ABSTRACT
リサーチリーダー
研究員 林 万平
研究目的
アジア地域の大きなリスクのひとつである自然災害への備えを研究する。
研究内容
自然災害がその後の被災地の経済成長にどのようなインパクトを与えるのか、東日本大震災等を例に研究する。近年、様々な実証研究により、自然災害がマクロ経済に与える影響についての蓄積が進んできている。本研究では、それら先行研究を整理した上で、東日本大震災等を例にとり、理論・実証的に検討する。
リサーチャー
外谷英樹 名古屋市立大学教授
期待される成果と社会還元のイメージ
?国の復興政策の推進により、東北の経済的復興には政策当局だけでなく、企業の関心も高まっている。経済発展の観点から復興政策のあり方について政策提言することで、企業が被災地への投資を行うための情報提供を行い、復興政策への提案に資する。
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関西企業におけるイノベーションと人材
研究プロジェクト
研究プロジェクト » 2013年度 » イノベーション
ABSTRACT
研究成果概要
本プロジェクトでは、高い生産性の伸びを維持している関西企業を抽出して、ヒアリング調査を通じて高生産性の秘訣を探りました。この調査の大きな特徴は2つあります。第1に、生産性の指標として全要素生産性(TFP; Total factor productivity 付加価値に対する労働や資本といった生産要素の貢献以外の部分)を取り上げ、個別企業の財務データを使用して定量的な分析により各企業の生産性の伸び率を算出し、グローバル金融危機や東日本大震災といった大きなショックが発生した2009年度から2011年度について全国の平均的な企業よりも生産性の伸びが高い関西企業を抽出したことです。
第2に、抽出された関西企業を対象にヒアリング調査を施し、何が高生産性をもたらしたのか定性的な分析を行った点です。高生産性企業ではさまざまなイノベーションが打ち出されていることがわかりましたが、さらにイノベーションを推進する上で優秀な人材をいかに確保し、企業組織内でどのように活用しているのかという点についても検討を加えました。
その結果、多様な人材が持つ遠心力と企業の基本理念の共有化という求心力が備わって始めて、組織の実行力が高められる中で多様な人材の能力が最大限に発揮され、企業の生産性の向上が実現することがわかりました。詳細はこちら
目的
・TPPに象徴される地域経済協定の進展により各国間で貿易への制約が撤廃された場合、企業が生き残っていくためには、絶え間なく高い生産性を維持し、新製品開発により積極的なイノベー ションを推進していかなければならない。こうした企業の創造的活動を推進する上では人材や柔軟な企業組織が果たす役割は大きい。
・高い生産性を誇る関西企業が、優秀な人材をいかに確保して企業組織内でどのように配置することによってイノベーションの創造に成功しているのか、外国人財の活用、大学・地方自治体の役割も考察に入れながら、分析を進めていく。
・読者としては企業、大学そして地方自治体が対象となる。
内容
・大学・研究機関、企業、行政、シンクタンク等をメンバーとするオープンな研究チームを組織し以下の調査を実施する。
(1)企業財務データから生産性を算出するためのデータ収集と分析
(2)関西の高生産性企業へのヒアリング
(3)生産性向上に大学や地方自治体が果たす役割について調査
・財務データという客観的なデータに基づいて高生産性企業を特定するとともに、ヒアリングを通してデータに表れない企業内の無形の工夫を調べ、イノベーション企業の特徴を明らかにする。
期待される成果と社会還元のイメージ
・関西企業の中の高生産性企業を特定し、その人材採用、活用、企業組織における配置といった特徴を明らかにすることにより、企業が生産性の向上を図るために必要な方策を提示する。これは、企業戦略を立案する上で貴重な情報となりうる。
・企業の生産性向上ため、大学や地方自治体とどのような連携を行うべきかについても提言として纏める。
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アジアの自然災害リスク
研究プロジェクト
研究プロジェクト » 2013年度 » アジア太平洋地域軸
ABSTRACT
研究成果概要
本研究では、Hsiao et al. (2010)の手法により、東日本大震災の被災三県(岩手県、宮城県、福島県)の、同震災が発生しなかった場合に実現されていたであろう名目及び実質GRPの推計を行いました。これと、速報的に発表されている被災三県GRPとの比較を行い、同震災が被災地の経済活動に与えた影響の定量把握を試みました。
阪神・淡路大震災以降、復興計画の重要な目的の一つとして、間接経済被害の極小化が挙げられます。そのため、産業連関分析や一般均衡分析を駆使した先行研究の蓄積は多くあります。しかし、全体として復興政策や被災地の回復過程が間接被害の軽減にどの程度貢献しているか知るためには、それらの影響を含んだ被災地GRPの実測値と、大規模自然災害が発生しなかった場合に達成されていたであろう被災地GRP(カウンターファクチュアル値)の比較を行う必要があります。
近年、そのようなアプローチにより災害の間接被害を計測する手法が提案されてきています。Dupont and Noy (2012)は、Abadie et al. (2010)が提案しているSynthetic Control Methodを用いて阪神・淡路大震災の間接経済被害の推計を行いました。その結果、先行研究の主張に反して、被災後15年が経過しても、兵庫県GRPには負の影響があることを発見しています。
本年度は、Hsiao et al. (2010)の手法に基づき東日本大震災の2011年GRPのカウンターファクチュアル値を推計し、実測値との差分を計測しました。なお、同手法により2010年以前の被災三県GRPのシミュレーションも行いましたが、名目及び実質GRPの両方において実測値との誤差が少ない良好な結果が得られました。分析の結果、岩手県、宮城県では、カウンターファクチュアルGRPと実測値の差分は小さいことが分かりました。被災後の復旧活動や需要増等による効果が大震災によるストック滅失や取引機会の逸失等による効果が相殺しあっている様子がうかがえます。しかし、福島県においては、GRP実測値がカウンターファクチュアル値を大きく下回り、原発事故等による復興政策の遅れが間接経済被害を拡大させていることが分かりました。詳細はこちら
目的
アジア地域は自然災害多発地域である。途上国における災害被害には、人的被害や構造物被害の規模が大きいという特徴がある。防災インフラの建設や避難計画等の整備とともに、自然災害による被害を軽減する上で地域社会の社会的脆弱性を減じることの重要性が明らかになってきた。本研究では、アジア各国における自然災害被害と経済・社会的要因の関連性についての実証分析をもとに、災害被害の軽減に有効な経済・社会的要因を検討する。主な読者は、各国の政策関係者、企業家、地域コミュニティの参加者を想定する。
内容
アジア地域の自然災害とその被害、経済・社会統計を国別に整理し、各国の災害被害と経済・社会的要因の関連性について分析する。アジア地域における大規模災害等について、その被害の実態と復興政策のあり方、及びその問題点について調査する。 復興政策の目的を経済発展の問題として捉え、阪神・淡路大震災や東日本大震災といった先進国型の大規模災害を経験してきた日本の知見を踏まえた研究を行うことで、特徴のある研究プロジェクトとする。
期待される成果と社会還元のイメージ
アジア各国では防災・減災政策に対する関心が高いため、アジア諸国の災害によるカントリーリスク、および取り上げる国の社会的脆弱性による地域リスクに関する情報を、相手国政府および自治体に提供することによって、関西企業の立地交渉の一助とすることができる。
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環太平洋経済協力をめぐる日・米・中の役割
研究プロジェクト
研究プロジェクト » 2012年度 » アジア太平洋地域軸
ABSTRACT
リサーチリーダー
大西 裕 神戸大学教授研究成果概要
本研究は、主要国の政権交代による通商政策への影響を踏まえながら、環太平洋経済協力に対する各国の政策基調を考察し、米中など関係国で高まる政治的不確実性に対する情報を提供し、TPP等で日本の積極的役割が求められていることを示しました。詳細はこちら研究目的
国際政治、国際協力、政治経済学、災害復興協力等の視点から、環太平洋経済協力に対し、日本が果たすべき役割を考察。地域の長期展望を得て、日本及び関西が主導すべき政策的方向性を提言。研究内容
○日本・外国の研究者、産業界、政府関係者の協力のもと研究会・ミニシンポジウムを開催
○中国での現地調査
○多国間交渉における日本の外交的役割として、日本がどのような説得力を発揮できるかを考察
○日米中韓の国内的政治経済状況について、パワーゲームと各々の主張、さらに今年の政権交代が与えるインパクトや選挙結果を分析
○東アジアにおける戦略的災害復興協力体制について提案。 東日本大震災の国際協力の実態も整理・分析メンバー
林 敏彦 (同志社大学)
大矢根聡 (同志社大学)
三宅康之 (関西学院大学)
多湖 淳 (神戸大学)
西山隆行 (甲南大学)
穐原雅人 (ひょうご震災記念21世紀研究機構)期待される研究成果
・米中韓の選挙・政権交代について、選挙の争点及び選挙結果を分析。今後の政治的展望、対外経済政策を見通す。
・過去の貿易自由化交渉を検証し、国際政治経済学の理論に基づいた戦略的視座を得る。
・東日本大震災における防災・復興に関する国際協力の検証により、より有効な支援のあり方を考える。 -
2011年度マクロ経済分析プロジェクト特別研究
研究プロジェクト
研究プロジェクト » 2011年度
ABSTRACT
(主査:稲田義久・甲南大学経済学部教授、高林喜久生・関西学院大学経済学部教授)
当研究所のマクロ経済分析プロジェクトチームでは、在阪の大手企業・団体の若手スタッフの参加による研究会を組織し、稲田主査指導のもとマクロ計量モデ ルによる景気予測を行なうとともに、高林主査指導のもと時宜に適ったテーマを取り上げ、特別研究を実施している。2011年度は各メンバーが自らテーマを 設定し活動を進めた。