(Aging and Economic Growth Potentials in the Pacific Region)
人口高齢化は、先進国のみならず、新興市場経済においても、経済成長の鈍化、技術革新の停滞、年金・健保を通じた財政負担を導く。ここでは、最も急速に高齢化の進む地域の一つである太平洋地域に焦点をあて、上述のようなリスク状況、とりわけ成長の鈍化の可能性を分析対象としてメンバー間で現状の相互理解を深め、潜在的リスクに対処するための可能な政策選択肢を探る。
人口高齢化の経済効果については、人口高齢化と労働供給、物的人的資本形成および生産性との関係におけるメンバー間の類似性と異質性を地域間および期間ごとに検討した。労働市場参加率、民間貯蓄・投資率、生産性成長に関わるパラメータが期間を通じて安定であり、また、各経済で相似的であるとする既存研究の前提には疑問の余地があると思われる。むしろ、ここでは、過去のデータの単純な外挿を避け、民間部門・公的部門が待ち受ける人口高齢化の全く新たな現実に適応する多様な経路を明示的に考慮してゆく。
さらに、労働供給、国内貯蓄、生産性成長を高める政策措置を検討する。各側面について、現実の政策選択肢とその立案と実施状況を各メンバー経済について詳しく比較検討を加える。