(External Adjustments under Increasing Integration in the Pacific Region)
2000年代に入って、世界経済全体で経常収支不均衡が相当期間にわたって持続している。この対外不均衡の調整が、いつ、どのような形で起こるのかが重要な政策問題となった。今回の研究課題では、太平洋地域における経済統合化の進展に伴う長期的な対外調整プロセスの構造変化としてこの問題をとらえる。
今回、とくに注目したのは市場統合化という構造変化の含意である。まず、資本市場の統合化は、投資が内外の生産的な機会に配分されている限り、一国の貯蓄投資のバランス(経常収支不均衡)の短期的な解消は重要ではなくなることを意味する。他方、財市場の統合化は、生産ネットワークのグローバル化という形で、国際垂直分業を深化させ、また価格の粘着性を増大させる。すなわち、本研究では、経済統合化の進展という新たな国際経済環境を背景に、対外収支決定要因と同不均衡の持続性を再検討することによって、最近の対外調整メカニズムを明らかにし、これらのマクロ経済政策に対するインプリケーションを導く。