第3号 関西エコノミックインサイト
関連論文
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拡張万博の経済波及効果:UPDATE
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稲田 義久 / 入江 啓彰 / 下山 朗 / 野村 亮輔ABSTRACT
2022年関西経済白書の第6章3節において、拡張万博の経済効果について2015年関西地域間産業連関表(暫定版)を用いて分析した。本稿では、消費単価と日帰り客の新たな想定に基づき、大阪・関西万博の経済効果を再推計した。本試算は3つのケース(基準ケース、拡張万博ケース1、拡張万博ケース2)に分けて分析を行った。得られた分析結果と含意は以下のようである。
1. 経済効果を生産誘発額でみれば、基準ケースでは2兆3,759億円、拡張万博ケース1では2兆7,875億円、拡張万博ケース2では2兆8,818億円と試算された。拡張万博の効果を考慮した場合、経済効果は約4千~5千億円程度の上振れが見込まれる。
2. 拡張万博の経済効果は基準ケースに比べて、大阪府以外の地域ではかなり大きくなる。生産誘発額の地域別シェアをみれば、大阪府のシェアが基準ケースの74.5%から、拡張万博ケース2では62.4%まで低下する。すなわち、拡張万博の展開に伴う延泊と日帰り客の増加により、大阪府以外の地域での経済効果が相対的にも高まることになる。
3. 関西広域にわたって拡張万博に類する様々な取り組みが広がり、観光客にとって魅力的なコンテンツ、滞在型消費を促すようなインセンティブが高まれば、本試算を上回る経済効果が期待できる。
4. 大阪・関西万博に代表される大規模なイベントの経済効果は、特定の地域や特定の時期に留まるのではなく、関西広域で中長期的な取り組みがなされていくことが求められる。大阪・関西万博をひとつの「呼び水」として、関西経済の成長に繋げていくことが重要である。 -
Kansai Economic Insight Quarterly No.63 -内需を中心に緩やかな持ち直しの動き続く:物価高と世界経済の行方が攪乱要因-
経済予測
経済予測 » Quarterly Report(関西)
/ DATE :
AUTHOR :
稲田 義久 / 入江 啓彰 / 郭 秋薇 / 盧 昭穎 / 野村 亮輔 / 吉田 茂一ABSTRACT
1. 2022年10-12月期の関西経済は、前期から引き続き緩やかに持ち直した。経済活動の正常化に伴い、生産、雇用、公共投資など内需を中心に幅広い項目で堅調な回復が見られた。ただし先行きについては、物価高が家計や企業に影響するほか、米欧中経済の動向が攪乱要因となるなど、力強い回復は見込みづらい。
2. 家計部門は、物価高が回復の足かせとなっている部分もあるが、各種行動制限が解除となるなど経済活動の正常化により、概ね持ち直している。大型小売店販売、所得・雇用環境、住宅市場など堅調に推移している。センチメントや実質賃金などこれまで低調だった指標でも底打ちの兆しが見られる。
3. 企業部門は、経済活動が正常化に向かっていることから、概ね緩やかに持ち直した。生産は一進一退で伸び悩んでいるものの、景況感は非製造業を中心に持ち直しており、設備投資計画についても積極的な姿勢がうかがえる。
4. 対外部門は、財の貿易については輸出・輸入ともに前年を上回ったものの、増加幅は縮小した。輸出を地域別に見ると、米国向けは堅調だったが、EU向けはやや伸び悩み、中国向けは停滞した。関空経由の外国人入国者数・百貨店免税売上などインバウンド需要については、水際対策が緩和されたことで急回復した。
5. 公的部門では、全国に比べて堅調な動きが続いている。
6. 関西の実質GRP成長率を2022年度+1.3%、23年度+1.3%、24年度+1.6%と予測。19年度・20年度の2年連続のマイナス成長から、21年度以降は内需が成長を牽引して1~2%のプラス成長が続く。コロナ禍前のGRP水準を回復するのは24年度となり、前回予測に比べて後ずれする。
7. 成長に対する寄与度を見ると、民間需要は22年度+1.8%ポイント、23年度+1.0%ポイント、24年度+1.3%と成長の牽引役となる。また公的需要も22年度から24年度にかけていずれも+0.2%ポイントと成長を下支える。域外需要は22年度-0.7%ポイントと成長を押し下げる。23年度以降はプラスの寄与となるが、小幅にとどまる。
8. 実質GRP成長率について前回予測(22年12月19日公表)と比較すると、22年度は-0.19%ポイントの下方修正、23年度は+0.11%ポイントの上方修正としている。24年度は大きな修正はない。
9. 今号のトピックスは「大阪・関西万博と拡張万博の経済効果:アップデート」として、新たな消費需要の想定に基づく経済効果を試算した。生産誘発額は、基準ケースの2.4兆円に対して、日帰り客数や宿泊数の増加を織り込んだ拡張万博ケースでは2.9兆円となる。※説明動画は下記の通り4つのパートに分かれています。
①01’01”~02’35” :Executive summary
②02’36”~36’39”:第142回「景気分析と予測」<強まるインフレと海外経済減速の影響>
③36’40”~53:02:Kansai Economic Insight Quarterly No.63<景気は足下、先行きともに改善を見込む:消費者物価上昇と海外経済減速のリスクに注意>
④53’03”~58’54”:トピックス<大阪・関西万博と拡張万博の経済効果:アップデート>
※要旨およびフルレポートは以下にてご覧ください
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Kansai Economic Insight Quarterly No.62 -GDP2次速報を反映し関西経済予測を改定 :22年度+1.5%、23年度+1.2%、24年度+1.5%-
経済予測
経済予測 » Quarterly Report(関西)
/ DATE :
AUTHOR :
稲田 義久 / 入江 啓彰 / 郭 秋薇 / 盧 昭穎 / 野村 亮輔 / 吉田 茂一ABSTRACT
1. 2022年7-9月期の実質GDP成長率(2次速報値)は、前期比-0.2%(同年率-0.8%)となり、1次速報の前期比-0.3%(同年率-1.2%)から上方修正された。民間在庫変動・政府消費・輸出が上方修正、個人消費・住宅投資・公共投資が下方修正となった。なお過去値が遡及改定されたことにより、コロナ前のピークは2019年7-9月期となった。22年7-9月期の実質GDPは、3年前のコロナ前ピーク時の水準を約10兆円下回っている。
2. GDP2次速報を反映し関西経済予測を改定。関西の実質GRP成長率を2022年度+1.5%、23年度+1.2%、24年度+1.5%と予測する。19年度・20年度の2年連続のマイナス成長から、21年度以降は1%台のプラス成長が続く。回復の勢いは弱く、コロナ禍前のGRP水準を回復するのは23年度までかかる。前回予測(11月29日公表)に比べて、22年度は-0.3%ポイントと下方修正、23年度・24年度はそれぞれ+0.1%ポイント上方修正とした。
3. 実質GRP成長率に対する寄与度を見ると、民間需要が2022年度+1.7%ポイント、23年度+0.9%ポイント、24年度+1.2%と成長の牽引役となる。また公的需要も22年度から24年度にかけていずれも+0.2%ポイントと成長を下支える。域外需要は、22年度は-0.4%ポイントと成長を押し下げ、23年度・24年度もそれぞれ+0.1%ポイントと成長に対する貢献は大きくない。 -
ゼロコロナ政策による中国経済減速と関西経済への影響
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/ DATE :
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稲田 義久 / 入江 啓彰 / 野村 亮輔 / 吉田 茂一ABSTRACT
1. 2022年に入り中国におけるCOVID-19陽性者数が急増している。1-3月期では吉林省が全陽性者数の約6割を、4-6月期では上海市が約7割強を占めるなど、陽性者数の増加が顕著な省及び直轄市で、厳格なロックダウンが行われた。7-9月期は一旦感染状況が落ち着いたが、10-11月期では広東省、北京市、重慶市で感染が拡大しており景気への悪影響が懸念される。
2. ゼロコロナ政策によるロックダウンの影響は非常に大きい。特に制限が厳しかった上海市や吉林省では、いずれも実質GDP成長率がマイナスとなった(2022年1-9月期、それぞれ前年同期比-1.4%、同-1.6%)。また、広東省(同+2.3%)、江蘇省(同+2.3%)など経済規模が最大の2省(対GDPシェア21.1%)は、中国全体のGDP成長率(同+3.0%)を下回っている。
3. 中国ゼロコロナ政策による経済的影響を考える上で関西および日本経済の対中貿易シェアは重要である。2021年における対中輸出をみれば、関西(26.2%)の方が全国(21.6%)より全体に占めるシェアは高い。すなわち、関西は全国に比べ対中輸出シェアが高いがゆえに、中国経済の減速は貿易を通して大きな影響を受ける。
4. 中国経済の減速が関西の輸出を通じて関西経済全体にどのような影響をもたらすかについて、輸出関数を推定した。結果は中国の実質GDPが1%下落すると、関西の実質輸出は0.46%程度下落すると試算される。
5. シミュレーションでは、標準予測における関西の実質輸出が2022-24年度にわたって0.462%減少する結果、関西の実質GRPは2022年度-0.12%、23年度-0.13%、24年度-0.13%減少する。金額ベースでは年度当たり943億円~1,082億円程度減少する。 -
Kansai Economic Insight Quarterly No.61 -持ち直しの動き続くも、景気後退への警戒感強まる:懸念材料は海外経済の減速と物価高-
経済予測
経済予測 » Quarterly Report(関西)
/ DATE :
AUTHOR :
稲田 義久 / 入江 啓彰 / 郭 秋薇 / 盧 昭穎 / 野村 亮輔 / 吉田 茂一ABSTRACT
1. 2022年7-9月期の関西経済は、前期に続き緩やかに持ち直した。COVID-19感染第7波に対して行動制限措置は取られず、前年に比べて経済活動が正常化した。また前期に発生した中国のロックダウンの影響が、今期は幾分落ち着いた。しかし一方で、海外経済の減速懸念や物価高により景気後退への警戒感が強まっている。
2. 家計部門は、持ち直している部分もあるが、物価高が回復の足かせとなっている。各種行動制限が解除となったことで百貨店販売は回復し、雇用環境も改善している。しかしながら、食料品やエネルギー価格など消費者物価の高騰により、センチメントや実質賃金などは弱い動きとなっている。
3. 企業部門は、経済活動が正常化に向かっていること、また中国・上海のロックダウンの影響が落ち着いたことから、概ね緩やかに持ち直した。生産は幾分持ち直し、また設備投資計画についても積極的な姿勢がうかがえる。一方、原材料価格の高騰が続いていること、海外経済の減速などを警戒する向きもあり、景況感については足踏み状態にある。
4. 対外部門は、財については輸出・輸入とも増加基調が続いている。特に輸入の伸びが大きく、貿易収支は赤字に転じた。輸出を地域別に見ると、米国向けおよびEU向けは堅調だったが、中国向けは鈍化した。インバウンド需要などのサービス輸出については、入国規制の緩和により、関空経由の外国人入国者数・百貨店免税売上で大幅な改善が見られる。
5. 公的部門は、引き続き全国に比べて堅調に推移している。
6. 関西の実質GRP成長率を2022年度+1.8%、23年度+1.1%、24年度+1.4%と予測。19年度・20年度の2年連続のマイナス成長から、21年度以降は1%台のプラス成長が続く。しかしコロナ禍からの回復としては力強さに欠く。日本経済予測と回復経路に大きな違いはない。
7. 成長に対する寄与度を見ると、民間需要が22年度+2.3%ポイント、23年度+0.8%ポイント、24年度+1.2%と成長の牽引役となる。また公的需要も22年度から24年度にかけていずれも+0.2%ポイントと成長を下支える。域外需要は、22年度は-0.6%ポイントと成長を押し下げ、23年度以降も成長に対する貢献は大きくない。
8. 今号のトピックスは「関西各府県GRPの早期推計」と「中国経済減速リスクと関西経済へのインパクト」を紹介する。後者の分析結果によると、中国の実質GDPが1%下落したと仮定すると、それに伴い関西の実質輸出が0.462%減少し、関西の実質GRPは0.12~0.13%減少する。※説明動画は下記の通り4つのパートに分かれています。
①00’00”~02’56” :Executive summary
②02’57”~34’42”:第140回「景気分析と予測」<世界経済の減速を反映し、23年度成長率を下方修正に – 実質GDP成長率予測:22年度+1.7%、23年度+1.2%、24年度+1.4% ->
③34’43”~47:52:Kansai Economic Insight Quarterly No.61<持ち直しの動き続くも、景気後退への警戒感強まる:懸念材料は海外経済の減速と物価高>
④47’53”~53’33”:トピックス<「関西各府県GRP早期推計」「中国経済減速リスクと関西経済へのインパクト」>
※要旨およびフルレポートは以下にてご覧ください
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Kansai Economic Insight Quarterly No.60 -総じて持ち直しているが回復テンポはまだら模様:先行き弱含みだが関西全体での投資増が反転のポイント-
経済予測
経済予測 » Quarterly Report(関西)
/ DATE :
AUTHOR :
稲田 義久 / 入江 啓彰 / 郭 秋薇 / 野村 亮輔 / 吉田 茂一ABSTRACT
1. 2022年4-6月期の関西経済は、総じて緩やかに回復しているものの、部門、業種、規模などによって、好調な指標と停滞を示す指標が混在するまだら模様となっている。物価高、半導体不足等の供給制約、世界経済の減速、地政学的リスクの高まりなど景気下押し要因も多く、先行き不透明感が強まっている。
2. 家計部門は、持ち直している部分もあるが、本格的な回復には至っていない。各種行動制限は解除となったことで百貨店では回復し、求人倍率も全国に比べると緩やかではあるが持ち直している。しかし物価高のペースに賃上げが追いついておらず、家計を圧迫している。
3. 企業部門は、生産動向や景況感については総じて弱含みとなった。特に製造業で原材料価格の高騰や中国でのロックダウンの影響が大きい。一方、22年度の設備投資計画については、積極的な姿勢がうかがえる。
4. 対外部門は、財については輸出・輸入とも増加基調が続いている。輸出を地域別に見ると、米国向けおよびEU向けは堅調だったが、中国向けはロックダウンの影響もあり欧米に比べると小幅な伸びにとどまった。インバウンド需要などのサービス輸出については、持ち直している。
5. 公的部門は、全国に比べて堅調に推移している。
6. 関西の実質GRP成長率を2022年度+1.8%、23年度+1.5%と予測。前回予測と比較すると、22年度は、民間需要・公的需要・域外需要のいずれも小幅ではあるが下方修正。23年度の下方修正は、世界経済の回復の遅れなど海外リスク要因を織り込み輸出を下方修正したことによる。
7. 日本経済予測と比較すると、22年度は、関西での公的需要の寄与が全国よりも大きいことから、成長率全体も関西が全国を上回る。23年度は、大きな違いはない。
8. 成長に対する寄与度をみると、民間需要は22年度+1.8%ポイント、23年度+1.2%ポイントと成長を牽引する。また公的需要も22年度+0.3%ポイント、23年度+0.3%ポイントと成長を下支える。一方、域外需要は22年度-0.2%ポイントと成長を押し下げ、23年度は成長に寄与しない。
9. 今号のトピックスでは「関西経済の反転にむけて:大阪・関西万博、IRを梃子に」を紹介する。関西経済の反転の実現には、ベイエリアでの投資を端緒として、関西全体での投資増を持続する必要がある。※説明動画は下記の通り4つのパートに分かれています。
①00’00”~02’19” :Executive summary
②02’20”~37’46”:第139回「景気分析と予測」<弱い輸出の見込みを反映し、成長率を下方修正に – 実質GDP成長率予測:22年度+1.5%、23年度+1.5% ->
③37’46”~58:59:Kansai Economic Insight Quarterly No.60<総じて持ち直しているが回復テンポはまだら模様:先行き弱含みだが関西全体での投資増が反転のポイント>
④59’00”~1’04’43”:トピックス<関西経済の反転にむけて:大阪・関西万博、IR を梃子に>
※要旨およびフルレポートは以下にてご覧ください
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Kansai Economic Insight Quarterly No.59 -経済活動の正常化に影差す海外要因:関西では中国ゼロコロナ政策の影響大-
経済予測
経済予測 » Quarterly Report(関西)
/ DATE :
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稲田 義久 / 入江 啓彰 / 野村 亮輔 / 吉田 茂一ABSTRACT
一般財団法人アジア太平洋研究所では、日本ならびに関西経済について、四半期ごとに景気分析と予測を行っています。2022年5月31日、最新の「日本経済予測」と「関西経済予測」を発表しました。経済見通しの説明動画を以下の通り配信しています。
1. 1. 2022年1-3月期の関西経済は、従来型より感染力の強いオミクロン株の流行で新規陽性者数が第6波を迎えたことにより、再びまん延防止等重点措置が適用され、経済活動は停滞を余儀なくされた。またロシアによるウクライナへの軍事侵攻、原材料価格の高騰に起因する物価高、中国ゼロコロナ政策など海外リスク要因も景気回復に重荷となった。
2. 家計部門は、第6波となる感染拡大とまん延防止等重点措置の適用により、弱い動きとなった。各種感染防止策が解除されるなど明るい材料もあるが、実質賃金や雇用など弱含みで、本格的な回復には至っていない。
3. 企業部門は、生産動向、景況感、設備投資計画など、総じて弱含みである。オミクロン株による感染拡大、原材料価格の高騰、中国でのゼロコロナ政策の影響といったリスク要因が警戒されている。
4. 対外部門は、財については輸出・輸入ともコロナ禍前の水準を上回り、増加基調が続いている。ただし中国向けは、ゼロコロナ政策の影響により弱含み。サービス輸出については、回復の兆しが見えてきた。
5. 公的部門は、全国に比べて堅調に推移している。
6. 関西の実質GRP成長率を2022年度+2.0%、23年度+1.9%と予測。21年度以降は2%前後のプラス成長が続き、23年度にはコロナ禍前のGRP水準を回復する。22年度は輸出を中心に-0.45%ポイントの下方修正。関西では、他地域に比べて中国ゼロコロナ政策の影響が大きい。23年度は-0.04%ポイントの小幅下方修正。
7. 日本経済予測と比較すると、22年度は、成長率全体は同程度の伸びとなるが、中身がやや異なる。公的需要は、全国+0.1%ポイントに対して関西は+0.3%ポイントと関西が全国を上回る。一方域外需要は、関西では中国ゼロコロナ政策に関して全国以上に影響を受けるため、全国-0.0%ポイントに対して関西は-0.2%ポイントと成長を押し下げる。23年度は、大きな違いはない。
8. 22年度は、民間需要が+1.9%ポイント、公的需要+0.3%ポイントと成長を下支える。一方、域外需要は輸出の伸び悩みから-0.2%ポイントと成長を押し下げる。23年度は、民間需要+1.2%ポイント、公的需要+0.3%ポイント、域外需要+0.4%ポイントと、3項目すべてがバランス良く成長に貢献する。
9. 今号のトピックスでは、関西2府4県のGRP早期推計とロシアのウクライナ侵攻から見えてきた関西経済の諸リスクについて紹介する。 -
Kansai Economic Insight Quarterly No.58 -不安材料多く、霞む本格回復への途:コロナ禍に加え国際情勢や物価高などが下押し圧力に-
経済予測
経済予測 » Quarterly Report(関西)
/ DATE :
AUTHOR :
稲田 義久 / 入江 啓彰 / 木下 祐輔 / 野村 亮輔 / 吉田 茂一ABSTRACT
1. 2021年10-12月期の関西経済は、新型コロナ「第5波」が収束し、緊急事態宣言等の感染抑止策が全て解除となった。これにより経済活動は正常化したものの、半導体不足に伴うサプライチェーンの混乱や物価高など足下で不安材料が多く、下押し圧力がかかる。
2. 家計部門は、「第5波」の収束と緊急事態宣言の解除で、百貨店販売額などで持ち直しの動きが見られた。センチメントや所得は伸び悩んでおり、本格的な回復には至っていない。雇用環境も横ばい続きで、全国に比べて回復が遅れている。
3. 企業部門は、前期から引き続いて足踏み状態にある。景況感は緩やかに回復しているが、生産は部材供給不足や物流逼迫の影響から弱い動きとなった。またエネルギー価格の高騰は企業収益を圧迫している。
4. 対外部門は、財については輸出・輸入とも増加してコロナ禍前の水準を上回っている。特に資源価格高の影響により、輸入の伸びが顕著で、足下1月の貿易収支は赤字となった。インバウンド需要などのサービス輸出は、底ばいが続いている。
5. COVID-19感染状況は、秋口から新規陽性者数の減少が続いていたが、感染力の強いオミクロン株の広がりにより、12月下旬以降急速に増加し「第6波」を迎えた。このため22年1月以降、まん延防止等重点措置が各自治体に順次適用され、再び経済活動が制限されている。
6. 関西の実質GRP成長率を2021年度+2.6%、22年度+2.5%、23年度+1.9%と予測。22年度にコロナ禍前の水準に戻り、23年度もプラス成長を見込む。ただしコロナ禍の収束見通し、地政学的リスク、エネルギー価格の高進など、懸念材料が非常に多く、下振れリスクは大きい。
7. 日本経済予測と比較すると、21年度から23年度にかけて、関西が全国の伸びを上回って推移する見込み。公的需要と域外需要の寄与が関西の方が大きい。
8. 実質GRP成長率について、前回予測(12月23日公表)に比べて、21年度は-0.28%ポイントの下方修正、22年度-0.30%ポイントの下方修正、23年度は+0.2%ポイントの上方修正。21年度は、民間需要を中心に、需要項目いずれも下方修正。22-23年度は、輸出の伸びを下方修正。
9. 2021年度は、民間需要が+1.0%ポイントと4年ぶりに成長押し上げ要因となる。公的需要はコロナ対策の効果から+0.5%ポイント、域外需要も+1.0%ポイントとそれぞれ堅調。22年度以降は、経済活動の正常化により3項目すべてがバランス良く成長に貢献する。
10. 今号のトピックスでは、「DMOのインバウンド誘客の取り組みとその効果」および「足下の関西・台湾間貿易に基づく台湾のCPTPP加盟による影響の考察」と題する当研究所レポート2篇の概要を紹介する。
※説明動画は下記の通り4つのパートに分かれています。
①00:00~02:27 :Executive summary
②02:28~29:16:第137回「景気分析と予測」<遅れる日本経済の回復:リスクは変異株、原油高と為替安>
③29:17~42:14:Kansai Economic Insight Quarterly No.58<不安材料多く、霞む本格回復への途>
④42:14~44:42:トピックス1<京都府におけるDMOのインバウンド誘客の取り組みとその効果>
トピックス2<足下の関西・台湾間貿易に基づく台湾のCPTTP加盟による影響> -
Kansai Economic Insight Quarterly No.57 -GDP2次速報を反映し関西経済予測を改定 21年度+2.8%、22年度+2.8%、23年度+1.8%-
経済予測
経済予測 » Quarterly Report(関西)
/ DATE :
AUTHOR :
稲田 義久 / 入江 啓彰 / 木下 祐輔 / 野村 亮輔 / 吉田 茂一ABSTRACT
1. GDP2次速報によれば、2021年7-9月期の実質GDPは前期比-0.9%(同年率-3.6%)減少し、1次速報の前期比-0.8%(同年率-3.0%)から下方修正された。民間需要は変化がなかったが、公的需要は下方修正された。純輸出の寄与度は小幅にとどまった。また過去のGDPの水準が改定されたことにより、コロナ前のピークは2019年4-6月期となった。
2. GDP2次速報を反映し関西経済予測を改定。関西の実質GRP成長率を2021年度+2.8%、22年度+2.8%、23年度+1.8%と予測する。21年度は3年ぶりのプラス成長となるが、緊急事態宣言長期化による消費の伸び悩みが影響し、20年度の大幅落ち込みに比べると小幅である。コロナ禍前の水準を回復するのは22年度以降となる。
3. 前回予測(11月30日公表)に比べて、成長率全体では21年度は修正なし、22年度は下方修正、23年度は上方修正とした。22年度は民間需要を下方修正したことによる。23年度は域外需要を下方修正したが、民間需要を上方修正したことで成長率全体では上方修正となった。
4. 2021年度は、民間需要が+1.2%ポイントと4年ぶりに成長に寄与する。公的需要はコロナ対策の効果から+0.6%ポイント、域外需要も+1.1%ポイントとそれぞれ底堅く成長を下支える。22年度も民間需要+1.7%ポイント、公的需要+0.5%ポイント、域外需要+0.6%ポイントと3項目すべてが成長に貢献する。23年度も同様に3項目とも堅調に推移するが、寄与度はいずれも前年に比べて小幅となる。 -
Kansai Economic Insight Quarterly No.56 -感染症対策により持ち直しの動き一服 本格回復は22年以降に後ずれ-
経済予測
経済予測 » Quarterly Report(関西)
/ DATE :
AUTHOR :
稲田 義久 / 入江 啓彰 / 木下 祐輔 / 野村 亮輔 / 吉田 茂一ABSTRACT
1. 2021年7-9月期の関西経済は、持ち直しの動きに一服感が見られ、踊り場を迎えた。緊急事態宣言の長期化による消費活動の停滞や、半導体不足の影響により、持ち直しの動きが弱まった。
2. 家計部門は、前期には緩やかながら持ち直しの動きが見られていたが、第5波となる感染拡大および緊急事態宣言の発令により、足踏み状態となった。センチメントや所得は伸び悩んでおり、雇用環境は全国に比べて回復が遅れている。
3. 企業部門は足踏み状態にある。生産は半導体不足の影響により減速した。一方、景況感は堅調に回復している。
4. 対外部門は、財については輸出・輸入とも持ち直しの動きが続いている。ただし関西では自動車輸出減や原油高の影響は小さく、全国に比べて緩やかな推移となっている。インバウンド需要などのサービス輸出は、依然低調である。
5. COVID-19感染状況は、7-9月期は第5波の最中にあり、8月には緊急事態宣言が大阪府、次いで京都府と兵庫県、滋賀県に発令された。新規陽性者数は8月28日にピークを打ち、その後は減少傾向が続いている。こうした状況を受けて、政府は9月末で緊急事態宣言等を全て解除した。
6. 関西の実質GRP成長率を2021年度+2.8%、22年度+2.9%、23年度+1.7%と予測。21年度以降に回復に転じる。ただし21年度の回復は緊急事態宣言長期化による消費の伸び悩みが影響し、20年度の大幅落ち込みに比べると小幅である。
7. 前回予測(8月31日公表)に比べて、2021年度は-0.4%ポイントの下方修正、22年度は+0.4%ポイントの上方修正。21年度は、緊急事態宣言の長期化による消費の伸び悩みを反映したことによる民間需要の下方修正が主因である。一方、公的需要はコロナ対策による政府支出の増加を見込み、上方修正。22年度は民間需要を小幅下方修正、公的需要および域外需要を上方修正した。
8. 2021年度は、民間需要が+1.1%ポイントと4年ぶりに成長押し上げ要因となる。公的需要は+0.5%ポイント、域外需要も+1.2%ポイントとそれぞれ底堅く成長を下支える。22年度も民間需要+1.8%ポイント、公的需要+0.5%ポイント、域外需要+0.6%ポイントと3項目すべてが成長に貢献する。23年度も同様に3項目すべてが成長に貢献するが、寄与度はいずれも前年から小幅となる(民間需要+0.9%ポイント、公的需要+0.3%ポイント、域外需要+0.6%ポイント)。
9. トピックスでは、関西各府県GRPの早期推計(2019-20年度)の結果を示した。関西経済全体では2019年度・20年度と2年連続のマイナス成長であるが、日本経済に比べると落ち込みは小さかったと見込まれる。※説明動画の一般公開は終了しました。会員企業の方は会員専用ページから閲覧可能です。