研究成果

research

第77回 景気分析と予測(2009年2月24日)

Abstract

「日本経済のマクロ経済分析」研究成果報告
(主査: 稲田義久・甲南大学経済学部長・教授
高林喜久生・関西学院大学経済学部教授)

当研究所のマクロ経済分析プロジェクトチームでは、在阪の大手企業・団体の若手スタッフの参加の下で研究会を組織し、予測に必要な景気の現状分析、外生変数の想定について共同で作業を行っている。
「景気分析と予測」については、四半期ごとに年4回(2003年度までは年2回)発表している。
2005年度より四半期予測作業において、日本経済超短期予測モデル(CQM)による、直近2四半期のより正確な予測値を取り入れている。
2月16日の政府四半期別GDP一次速報の発表を受け、2008-2009年度の改訂および2010年度の最新経済見通しとなっている。
ポイントは以下の通り。

* 2008年度10-12月期実績の評価‥‥当期の実質GDP成長率(一次速報)は、前期比▲3.3%、同年率▲12.7%と、第一次オイルショック期 1974年1-3月期に次ぐ急激な落ち込みとなり、3期連続のマイナス成長となった。これまで景気の牽引役であった輸出の急激な落ち込みと、低調な民間需 要が原因であり、輸出に大きく依存する日本経済成長モデルの脆弱性が示唆される。

* 2008年度、2009年度の改訂見通し‥‥2008年度の実質GDP成長率は▲2.8%と7年ぶりのマイナス成長に転じよう(前回予測▲1.3%から大 幅下方修正)。主要貿易相手国である米国・EU経済のマイナス成長、消費の減速および企業設備の減少による民需の落ち込みの影響である。民需の回復が停滞 し、世界経済の不況が深化するため、2009年度の実質GDP成長率は▲3.7%(前回予測▲1.4%から大幅下方修正)と2年連続のマイナス成長とな る。

* 2010年度の見通し‥‥2009年後半に一旦プラス成長に戻るが、緩やかながら持続的なプラス成長に転じるのは2010年以降となろう。2010年度の実質GDP成長率は+1.5%となろう。

* 以上の標準予測に対して、追加的経済対策として定額給付金、住宅ローン減税、法人税減税、その他の財政支出の4つの政策を同時に実施した場合の効果は2009年度の実質GDPを約0.9%程度拡大させると検証された。

* 関西経済は急激に悪化しており、成長率は2008年度▲2.2%、2009年度▲3.1%、2010年度+1.6%と予測している。