研究成果

research

Kansai Economic Insight Quarterly No.45 – 内外需ともに弱さが目立ち、停滞懸念が顕在化確固たる成長の牽引役が先行き不在となるおそれ –

1.  2019年7-9月期実質GDPは前期比年率+0.2%(前期比+0.1%)と4四半期連続のプラス成長だが小幅にとどまった。寄与度を見ると、純輸出は前期比-0.2ポイントと成長を抑制し、国内需要は同+0.2%ポイントと4四半期連続のプラスだが民間需要も公的需要のいずれも同+0.1%ポイントと低調だった。
2.  2019年7-9月期の関西経済は、内需外需とも弱い動きが見られる。インバウンド需要や設備投資計画、公共投資など堅調な部分も随所に見られるが、センチメントや景況感は大幅悪化している。また、これまで比較的堅調だった所得・雇用環境でも改善ペースが緩慢となり、弱含みとなっている。
3.  関西の実質GRP成長率を2019年度+0.6%、20年度+0.4%、21年度+0.7%と予測する。19年度は修正なし、20年度は-0.1%ポイントの下方修正である。19年度は民間需要を下方修正とした一方で、公的需要を上方修正した。域外需要は輸出・輸入とも下方修正しており、全体では相殺して修正なしとなった。20年度も民需を小幅下方修正した。21年度は今回から新たに予測を追加した。
4.  実質GRP成長率に対する各需要項目の寄与度を見ると、2019年度は民間需要+0.6%ポイント、公的需要+0.5%ポイントと内需は成長に貢献する。域外需要は-0.5%ポイントと成長抑制要因となる。20年度は、成長を下支えるのは公的需要(+0.3%ポイント)のみで、民間需要・域外需要はそれぞれ+0.1%ポイントにとどまる。21年度は、民間需要+0.3%ポイント、公的需要+0.2%ポイント、域外需要+0.1%ポイントといずれも成長に寄与するが小幅で、成長を力強く牽引することはできない。
5.  関西2府4県GRPの過年度の未公表分の実績見通しについて早期推計した。17年度は大阪府と兵庫県をはじめとした各府県のプラス寄与により+1.5%の成長を達成した。18年度は、大阪府のマイナス成長があったが他府県のゼロまたはプラスの寄与度により、関西全体としてはほぼ横ばいの動きとなったと予測される。
6.  関西における消費税率引き上げ前後の動態を過去の事例と比較した。今回は種々の対策により、関西でも前回に比して駆け込み需要が小幅であることを確認した。なお足下9月の指標は、前年の特殊要因からの反動増を含むことに注意。

 

※英語版はこちら

関連論文

  • 小川 亮

    関西2府4県GRPの早期推計 No.1

    経済予測

    経済予測 » 関西2府4県GRPの早期推計

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    小川 亮 / 稲田 義久 / 吉田 茂一

    ABSTRACT

    【トピックス:関西各府県のコロナ禍からの回復過程】

    ・コロナ禍から3年が経過した。今回のトピックスでは関西各府県GRPの回復過程をレビューする。2021年度以降の回復の推移を見れば、兵庫県、京都府、大阪府、和歌山県には順調な回復の兆しが見える。特に京都府や和歌山県では22年度における回復は急激である。一方で、滋賀県、奈良県においては他府県と異なり回復軌道に乗っているようにはみられず、コロナ禍によるダメージから未だ回復しきれていない状況が見える。

    【ポイント】

    ・2020年度のGRPは、関西各府県のマイナスの寄与度が大きく増し、国全体に近いマイナス成長になったと見込まれる。21年度には、大阪府と兵庫県を中心とした反転により関西全体でプラス成長であったが、関西の回復力は更に国を下回っている。そして、22年度では回復の傾向を強めたと予想される。

    PDF
  • 稲田 義久

    Kansai Economic Insight Quarterly No.64 -消費の復元を起点として好循環に向かう関西経済:景気は足下改善、先行きも改善を見込む-

    経済予測

    経済予測 » Quarterly Report(関西)

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 入江 啓彰 / 小川 亮 / 郭 秋薇 / 盧 昭穎 / 野村 亮輔 / 吉田 茂一

    ABSTRACT

    1. 2023年1-3月期の関西経済は、コロナ禍に伴う行動制限の解除、また賃上げの動きの広がりにより、家計部門を中心に緩やかに持ち直した。一方、企業部門や海外部門では、原材料価格の高騰、海外経済の減速などの不安要因から、弱い動きが見られる。先行きは、消費の復元を起点として民間部門全体に好影響が波及し、投資増や賃上げの継続につながるかがポイントとなる。
    2. 家計部門をめぐる環境は、本格的な経済活動の再開、物価高に起因する賃上げ、マインドの回復と総じて改善している。このため家計部門は前期に引き続き、概ね持ち直している。センチメント、大型小売店販売、所得・雇用環境、住宅市場などいずれも堅調に推移している。依然として物価高の影響も見られるものの、政策効果もあり幾分緩和している。
    3. 企業部門は、業種間で明暗が分かれている。製造業は原材料価格の高騰や海外経済の減速などから生産・景況感ともに軟調である。一方非製造業は経済活動再開に伴い、宿泊・飲食・小売など対面型サービスを中心に総じて復調。また23年度の設備投資計画は、増勢となった前年度の水準を維持し、業種問わず底堅い。
    4. 対外部門のうち、財の貿易については輸出・輸入ともに前年比増となったが、増加幅は前期から縮小。輸出を地域別に見ると、欧米向けは伸びが鈍化、中国向けは前年を下回った。一方インバウンド需要は順調で、関空経由の外国人入国者数や免税売上高はコロナ禍前のピークの5割を超えるまでに回復した。
    5. 公的部門は、引き続き堅調に推移している。
    6. 関西の実質GRP成長率を2023年度+1.3%、24年度+1.7%と予測。19年度・20年度の2年連続のマイナス成長から、21年度以降は1~2%のプラス成長が続く。23年度にはコロナ禍前のGRP水準をほぼ回復する。前回予測(2月28日公表)に比べて、23年度は修正なし、24年度は+0.1%ポイントの上方修正とした。
    7. 成長に対する寄与度を見ると、民間需要は23年度+1.1%ポイント、24年度+1.4%と成長の牽引役となる。また公的需要も23年度・24年度ともに+0.2%ポイントと成長を下支える。域外需要は、アジア向け輸出が弱い動きにとどまることなどから、成長に対する寄与はほとんどない。
    8. 日本経済予測と比較すると、23年度日本経済予測では欧米経済の停滞で輸出の失速を見込むが、関西の輸出はウエイトの高いアジア向けの持ち直しにより、小幅増を見込む。24年度も民間部門・公的部門とも設備投資が堅調に推移し、日本経済を上回る成長となる。
    9. 今号のトピックスでは、「関西各府県GRPの早期推計」および「急回復するインバウンド需要と関西経済」を取り上げる。

     

    ※説明動画は下記の通り4つのパートに分かれています。

    ①00’00”~00’56”: Executive summary

    ②00’56”~27’23”: 第143回「景気分析と予測」
    <サービス消費支出中心の回復と海外経済減速の引き合い>

    ③27’23”~39:58: Kansai Economic Insight Quarterly No.64
    <消費の復元を起点として好循環に向かう関西経済:景気は足下改善、先行きも改善を見込む>

    ④39’58”~42’42”: トピックス<関西2府4県GRPの早期推計>

    ⑤42’42”~47’27”: トピックス<急回復するインバウンド需要と関西経済>

     

    ※要旨およびフルレポートは以下にてご覧ください

  • 稲田 義久

    143回景気分析と予測:詳細版<サービス消費支出中心の回復と海外経済減速の引き合い - 実質GDP成長率予測:23年度+0.9%、24年度+1.4% ->

    経済予測

    経済予測 » Quarterly Report(日本)

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 下田 充

    ABSTRACT

    1. 5月17日発表のGDP1次速報によれば、2023年1-3月期の実質GDPは前期比年率+1.6%増加し3四半期ぶりのプラス成長となったが、前期と均してみれば回復は緩やかである。結果、23年度の実質成長率は+1.2%と2年連続のプラス成長となった。しかし、足下のGDPの水準はピーク(19年7-9月期)から依然1.5%低い。民間最終消費支出、民間資本形成の回復の遅れが主要因である。一方、インバウンドの急回復もありサービス輸出はほぼ戻りつつある。今後は、社会経済活動の正常化からサービス消費中心の回復が期待できる。
    2. 1-3月期の実質GDP成長率(前期比+0.4%)への寄与度を見ると、国内需要は同+0.7%ポイントと2四半期ぶりのプラスとなった。うち、民間需要は同+0.6%ポイントと2四半期ぶりのプラス寄与。民間最終消費支出(同+0.6%)、民間住宅(同+0.2%)、民間企業設備(同+0.9%)がいずれも増加したためである。公的需要は同+0.1%ポイントと4四半期連続のプラス寄与。一方、純輸出は同-0.3%ポイントと2四半期ぶりのマイナス寄与となった。
    3. 交易条件が2四半期連続で改善したため、国内総所得(GDI)成長率は前期比年率+4.0%となり、実質GDPの伸び(同+1.6%)を2四半期連続で上回った。
    4. 1-3月期GDP1次速報と新たな外生変数の想定を織り込み、2023-24年度日本経済の見通しを改定した。今回、実質GDP成長率を、23年度+0.9%、24年度+1.4%と予測。前回(第142回予測)から、23年度は据え置き、24年度-0.1%ポイント下方修正した。23年度については民間需要の上方修正が純輸出の下方修正で相殺され、24年度は民間需要及び純輸出がともに小幅下方修正されたためである。
    5. COVID-19の5類移行に伴い社会経済活動が一層正常化することから、家計は累積した強制貯蓄を取り崩すため、サービス支出を中心に民間最終消費支出主導の回復が期待できる。一方、海外経済は欧米を中心に低迷することから純輸出のマイナス寄与は避けられず、また民間需要の寄与度が減速するため、23年度の成長率は前年から低下すると予測。このため、実質GDPがコロナ禍前のピークを超えるのは24年7-9月期以降となろう。回復に5年(20四半期)を要することになる。ちなみに、リーマンショックはピークからは22四半期を要している。
    6. 足下、政府の激変緩和政策の影響もありエネルギー価格は下落に転じたが、電気料金は再び値上げが予定されており、消費者物価指数基調のかく乱要因となる。加えて賃金の動きに連動するサービス価格の上昇もあり、インフレ率は23年度前半には3%台で推移するが、後半は原材料高と円安は落ち着きを見せ減速する。結果、消費者物価コア指数のインフレ率を、23年度+2.5%、24年度+1.3%と予測する。前回予測から、足下の状況を反映し、23年度を+0.3%ポイント上方修正した。

     

    ※説明動画は下記の通り4つのパートに分かれています。

    ①00’00”~00’56”: Executive summary

    ②00’56”~27’23”: 第143回「景気分析と予測」
    <サービス消費支出中心の回復と海外経済減速の引き合い>

    ③27’23”~39:58: Kansai Economic Insight Quarterly No.64
    <消費の復元を起点として好循環に向かう関西経済:景気は足下改善、先行きも改善を見込む>

    ④39’58”~42’42”: トピックス<関西2府4県GRPの早期推計>

    ⑤42’42”~47’27”: トピックス<急回復するインバウンド需要と関西経済>

     

    ※要旨およびフルレポートは以下にてご覧ください

  • 稲田 義久

    Kansai Economic Insight Monthly Vol.121-景気は足下改善、先行きも改善を見込む:消費は持ち直しも海外経済減速が下押しリスク-

    経済予測

    経済予測 » Monthly Report(関西)

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 豊原 法彦 / 野村 亮輔 / 郭 秋薇 / 盧 昭穎 / 吉田 茂一 / 今井 功 / 新田 洋介

    ABSTRACT

    ・関西の景気は足下改善、先行きも改善を見込む。足下、生産は依然コロナ禍前の水準を下回るが、2カ月連続の増産。雇用環境は持ち直しの動きに一服感がみられるが、消費・景況感は持ち直している。消費の持ち直しから先行きは改善を見込むが、欧米などの海外経済の減速が景気下押しリスクとなろう。
    ・3月の生産は2カ月連続の前月比上昇。電気・情報通信機械や電子部品・デバイス等が増産に寄与した。ただし、1-3月期でみれば、1月の大幅減産が影響し、2四半期連続の低下。また水準は依然コロナ禍前を下回っている。
    ・3月は失業率が前月から上昇したと同時に、就業率の低下が見られた。また、有効求人倍率は3カ月連続、新規求人倍率は2カ月連続でいずれも低下した。1-3月期は雇用環境の回復が一服したとみられる。
    ・2月の現金給与総額は24カ月連続の前年比増加となったが、実質では12カ月連続で減少した。電気・ガス料金の抑制策にもかかわらず依然として消費者物価指数の上昇率は名目賃金の伸びを上回っているためである。
    ・3月の大型小売店販売額は18カ月連続の前年比増加となった。うち、百貨店は外出機会の増加で、衣料品と身の回り品の需要が増え、売上をけん引した。スーパーは6カ月連続の増加となった。
    ・3月の新設住宅着工戸数は2カ月ぶりに前月比増加した。1-3月期は分譲の寄与もあり、4四半期連続の増加となった。
    ・3月の建設工事出来高は15カ月連続の前年比増加となった。伸びは4カ月ぶりに減速したものの、うち公共工事は2カ月連続で大幅な伸びが続いている。なお、4月の公共工事請負金額は4カ月ぶりの減速となった。
    ・4月の景気ウォッチャー現状判断は5カ月連続の前月比改善。経済社会活動の正常化に加え、インバウンド需要の回復が好影響した。一方、先行き判断は5カ月ぶりに小幅悪化。生活必需品などの値上げが景況感に悪影響した。
    ・4月の貿易収支は3カ月連続の黒字となった。輸出は3カ月連続の前年比増加だが、小幅の伸びにとどまった。一方、輸入は27カ月ぶりに前年比減少に転じたためである。
    ・4月の関空への外国人入国者数は2カ月連続で40万人超の水準となった。先行きについては水際対策の終了で入国者数の回復が続くと見込まれるが、重要なのはこれまで遅れていた中国客の戻りである。
    ・4月の中国経済は、前年実施されたロックダウンに対する反動による影響もあり、生産と消費の回復は加速した。しかし、雇用の持ち直しが緩慢であるため、耐久財や住宅の回復は依然緩やかである。4-6月期は小幅な成長加速が見込まれるが、今後景気回復が持続的になるためには雇用回復が欠かせない。

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  • 野村 亮輔

    都道府県別訪日外客数と訪問率:3月レポート No.46

    インバウンド

    インバウンド

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    野村 亮輔 / 稲田 義久 / 松林 洋一

    ABSTRACT

    【ポイント】

    ・JNTO訪日外客統計によれば、3月の訪日外客総数(推計値)は181万7,500人と、コロナ禍の影響が表れ始めた2020年2月以降、最高値となった。また、結果、1-3月期の訪日外客数は479万272人、20年1-3月期(399万9,827人)の水準を上回った。

    ・目的別訪日外客総数(暫定値)をみれば1月は149万7,472人。うち、観光客は1130万8,606人と2か月連続で100万人を超える水準となった。

    ・先行きについては日本の水際対策の終了により訪日外客の回復ペースが加速する可能性が高い。日本政府は4月29日以降、日本への渡航者に求めてきた72時間以内の陰性証明書やワクチン3回接種の証明書の提示を不要とした。水際対策が一部残っていた訪日中国人客についても同様の扱いとなるため、5月以降、回復が期待されよう。

     

    【トピックス1】

    ・関西3月の輸出は2カ月連続の前年比増加だが、伸びは前月から減速。一方、輸入は26カ月連続の同増加だが、伸びは2カ月連続で小幅にとどまった。関西の貿易収支は2カ月連続の黒字だが、黒字幅は縮小した。

    ・3月の関西国際空港への42万5,327人と、前月から増加し40万人超の水準となった。1-3月期では117万3,816人と前期から大幅増加し、全国と同様に20年1-3月期(69万4,997人)の水準を上回った。

    ・2月のサービス業の活動は、対面型サービス業を中心に改善。第3次産業活動指数は2カ月連続の前月比上昇。また対面型サービス業指数は宿泊業やその他生活関連サービス業が改善し2カ月連続で同上昇した。また、観光関連指数は旅行業や航空旅客運送業が大幅改善し3カ月連続の同上昇となった。

     

    【トピックス2】

    ・1月の関西2府8県の延べ宿泊者数は7,563.8千人泊、2019年同月比-10.0%と2カ月ぶりに減少に転じた。

    ・うち、日本人延べ宿泊者数は6,150.8千人泊と4カ月連続でコロナ禍前の水準を上回ったが、増加幅は前月から縮小。また、外外国人延べ宿泊者数は1,413.1千人泊、2019年同月比-40.8%と減少幅は前月から拡大した。

     

    【トピックス3】

    ・1-3月期の訪日外国人消費額は1兆146億円とコロナ禍前の9割近くを回復した。

    ・一般客1人当たり旅行支出(全目的)は21万1,957円となった。2019年同期比で+43.8%となりコロナ禍前を上回った。この背景には円安に加え、欧米豪を中心に長期滞在の旅行者が増加したことが単価の上昇に影響しているようである。

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  • 稲田 義久

    Kansai Economic Insight Monthly Vol.120-景気は足下改善、先行きも改善を見込む:サービス消費持ち直しも海外経済減速がリスク要因-

    経済予測

    経済予測 » Monthly Report(関西)

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 豊原 法彦 / 郭 秋薇 / 盧 昭穎 / 野村 亮輔 / 吉田 茂一 / 新田 洋介 / 今井 功

    ABSTRACT

    ・ 関西の景気は足下改善、先行きも改善を見込む。足下、生産はコロナ禍前の水準を下回るが、2カ月ぶりの増産。雇用環境は持ち直しの動きに一服感がみられるが、消費・景況感は持ち直している。先行きはサービス消費を中心に改善を見込むものの、欧米を中心とした海外経済減速がリスク要因となろう。
    ・ 2月の生産は2カ月ぶりの前月比上昇。ただし、1月の大幅落ち込みを回復できておらず、依然コロナ禍前の水準を下回っている。
    ・ 2月は失業率が前月から上昇したと同時に、就業者数の減少が見られた。ただし、非労働力人口が横ばいであることから見れば、失業者の増加は転職意欲が高まっていることを反映している可能性がある。なお、新規求人数はサービス業を中心に大幅な増加が続いているため、今後も人手不足感が続こう。
    ・ 1月の現金給与総額は23カ月連続の前年比増加。しかし、消費者物価指数の上昇傾向が続き、実質では11カ月連続の減少となった。なお今回の春闘で妥結する賃上げ率は前年を上回り、高水準となる見通しである。
    ・ 2月の大型小売店販売額は17カ月連続の前年比増加となった。うち、百貨店は前年のまん延防止等重点措置の反動による外出機会の増加が売上増に寄与した。スーパーは5カ月連続の増加となったが、小幅にとどまった。
    ・ 2月の新設住宅着工戸数は3カ月ぶりに前月比減少したが、1月は大幅増加しており、1-2月期を均せばプラス基調となっている。
    ・ 2月の建設工事出来高は14カ月連続の前年比増加で、伸びは3カ月連続で加速した。特に公共工事の伸びが大きく全体に寄与した。また、3月の公共工事請負金額は3カ月連続で同増加し、1-3月期は前期から加速した。
    ・ 3月の景気ウォッチャー現状判断及び先行き判断DIはいずれも4カ月連続の前月比改善。マスク着用の制限緩和やインバウンド需要の回復が好影響した。
    ・ 3月の貿易収支は2カ月連続の黒字となった。1-3月期は2四半期連続の黒字だが、黒字幅は前年比縮小した。
    ・ 3月の関空への外国人入国者数は40万人超の水準まで回復。1-3月期ではコロナ禍の影響が表れ始めた20年1-3月期の水準を上回った。
    ・ 中国の1-3月期実質GDPは前年同期比+4.5%と前期から加速した。3月はサービス産業の大幅な改善に牽引され、経済は活気を取り戻しつつある。4-6月期の経済成長率は今期より小幅加速すると見込まれる。ただし、雇用は依然として持ち直しが緩慢であるため、今後持続的に加速するかは注視を要する。

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  • 野村 亮輔

    都道府県別訪日外客数と訪問率:2月レポート No.45

    インバウンド

    インバウンド

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    野村 亮輔 / 稲田 義久 / 松林 洋一

    ABSTRACT

    【ポイント】

    ・JNTO訪日外客統計によれば、2月の訪日外客総数(推計値)は147万5,300人と、回復基調が続く。また、1-2月期では297万2,600人と、爆買いが始まった15年1-2月期の水準を上回るペースとなった。

    ・目的別訪日外客総数(暫定値)をみれば12月は137万114人。うち、観光客は125万2,391人と、20年1月以来、100万人を超えた。

    ・先行きの訪日外客数の回復については、訪日中国人客の動向が重要となろう。これまで中国との直行便の到着は成田空港、羽田空港、関西国際空港、中部国際空港の4空港に限定されていたが、水際対策緩和に伴い、3月1日以降、上記空港以外の入国も認められた。加えて、成田空港、羽田空港などで中国-日本間の直行便の復便や増便も予定されている。このため今後、訪日中国人客数の回復が期待されよう。

     

    【トピックス1】

    ・関西2月の輸出は2カ月ぶりの前年比増加。また、輸入は25カ月連続の同増加だが、伸びは小幅にとどまった。結果、関西の貿易収支は2カ月ぶりの黒字となった。

    ・2月の関西国際空港への36万9,191人と、3カ月連続で30万人超の水準。1-2月期では74万8,489人となり、全国と同様に15年1-2月期の水準を上回っている。

    ・1月のサービス業の活動は、対面型サービス業を中心に改善。第3次産業活動指数は3カ月ぶりに前月比上昇。また対面型サービス業指数は娯楽業や飲食サービス業が改善し、2カ月ぶりに同上昇した。また、観光関連指数は2カ月連続の同上昇となった。

     

    【トピックス2】

    ・12月の関西2府8県の延べ宿泊者数は9,828.6千人泊、2019年同月比+0.1%と小幅プラスに転じ、コロナ禍前を上回った。

    ・うち、日本人延べ宿泊者数は8,301.0千人泊と3カ月連続でコロナ禍前の水準を上回った。また、外外国人延べ宿泊者数は1,527.6千人泊、2019年同月比-37.7%と減少幅は前月から縮小。府県別にみれば、京都府や大阪府を中心に回復しつつある。

     

     

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  • 稲田 義久

    Kansai Economic Insight Monthly Vol.119-景気は足下改善、先行きも改善を見込む:海外経済減速による景気下振れリスクが懸念材料-

    経済予測

    経済予測 » Monthly Report(関西)

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 豊原 法彦 / 郭 秋薇 / 盧 昭穎 / 野村 亮輔 / 吉田 茂一 / 今井 功 / 山守 信博

    ABSTRACT

    ・関西の景気は足下改善、先行きも改善を見込む。足下、生産は大幅減産し、弱い動きとなった。雇用環境は持ち直しの動きに一服感がみられる一方で、消費・景況感は持ち直している。先行きは改善を見込むものの、欧米を中心とした海外経済減速による景気の下振れリスクに注意が必要である。
    ・1月の生産は2カ月ぶりに前月比低下。生産用機械や輸送用機械が大幅減産となり、中国ロックダウンの影響が大きかった22年5月以来の低水準となった。
    ・1月は失業率が低下したと同時に、就業者数の増加と非労働力人口の減少が見られた。雇用情勢は持ち直しの動きを維持している。なお、新規求人数はサービス業を中心に大幅に増加したことから、今後も人手不足感が続こう。
    ・12月の現金給与総額は22カ月連続の前年比増加。しかし、消費者物価指数の上昇傾向が続き、実質では10カ月連続の減少となった。今春闘で、多くの大手企業は労働組合の要求に応じて賃上げを実現した。ただし、賃上げが全体に波及するかは中小企業における動向が重要である。
    ・1月の大型小売店販売額は16カ月連続の前年比増加。うち、百貨店は高額品の好調とインバウンド需要の回復により11カ月連続の増加。スーパーは食料品の値上げもあり4カ月連続の増加となった。
    ・1月の新設住宅着工戸数は2カ月連続で前月比増加した。うち、マンションが好調で全体の増加に大きく寄与した。
    ・1月の建設工事出来高は13カ月連続の前年比増加で、伸びは2カ月連続で加速した。特に公共工事は22年3月以来の2桁の伸びとなった。また、2月の公共工事請負金額は2カ月連続で同増加となっている。
    ・2月の景気ウォッチャー現状判断及び先行き判断DIはいずれも3カ月連続の前月比改善。インバウンド需要の増加や感染状況の落ち着きにより、ホテルや百貨店などを中心に景況感が改善した。
    ・1月は春節の影響を受けたため貿易収支は赤字となったが、2月は2カ月ぶりの黒字。ただし、1-2月を均してみれば赤字にとどまった。
    ・2月の関空への外国人入国者数は36.9万人、3カ月連続で30万人超の水準となった。中国人客の戻りが依然遅れていることもあり、回復のペースは緩慢。
    ・1-2月期の中国経済は、生産の回復が加速したことに加え、個人消費も対面型サービスを中心に大幅に改善した。しかし、民間企業が先行き不安を払拭し雇用拡大に踏み込むまで、景気回復のカギとなる雇用の改善は見込めない。そのため、1-3月期の景気回復が持続可能となるかは民間企業次第である。

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