研究成果

research

新型コロナウイルス対策特別会計(仮称)の設置 -予算・執行の透明化と財政規律の確保を求める-

新型コロナウイルスは、わが国の財政の悪化にも大きな影響を及ぼしている。コロナ禍の出口は未だ見通せず、財政赤字の大幅な増加が今年度だけで終わる保証はない。もちろん、新型コロナウイルス対応は、国民の生命と経済社会を守るためのものであり、必要な歳出は躊躇なく機動的に行うことが必要である。しかし、財政規律のタガがはずれたままであってよいわけはない。緊急事態から脱したときから、財政健全化に向けてどのような取り組みを行うかも今から議論・検討しておくべき重要課題と考える。新型コロナウイルス対応に要した緊急の歳出については、「新型コロナウイルス対策特別会計(仮称)」を設置して、事業に時限を付しつつ、予算・執行を一元的に管理し透明化するとともに、その財源充当のために発行した国債全額は、コロナ危機からの経済回復後の特別増税などにより計画的に償還していくことが必要と考える。本稿では、財源確保の提案と国債償還の暫定試算を行っている。

関連論文

  • 藤原 幸則

    後期高齢者医療費の自己負担割合のあり方- 今年末に取りまとめられる所得基準の線引きに向けて –

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     / DATE : 

    AUTHOR : 
    藤原 幸則

    ABSTRACT

    政府の全世代型社会保障検討会議などでは、一定以上の所得がある人には自己負担割合を2割に引上げる方針であり、焦点となる所得基準の線引きの議論を本年末までに行うとし、大詰めの段階に来ている。今後も現役世代が高齢者医療を支えていく必要があるが、医療保険制度を維持し、増大する高齢者医療費を現役と高齢の両世代でなるべく公平に負担を分かち合うためには、「能力に応じて」という意味で、一定以上の所得がある高齢者については、自己負担割合を引上げることはやむを得ない。そもそも、所得基準の線引きについては、明確な根拠を求めることは難しいが、筆者の考えとしては、所得額に応じて利用者負担割合が1割、2割、3割とすでに分けて設定されている介護保険サービスを参考にしてはどうかと考える。後期高齢者医療費の自己負担割合引上げについては、まずは、合計所得160万円以上(年金収入等約280万円以上)の一般所得者を対象に2割負担を導入するのが適当と考える。

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  • 藤原 幸則

    水災害の激甚化への総合的対策の強化- 全国的な対策推進の枠組み、土地利用規制、保険制度の強化を-

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    AUTHOR : 
    藤原 幸則

    ABSTRACT

    近年、全国各地で豪雨等による水災害が頻発し、被害も甚大化するケースが増えている。限られた財政の中では、堤防強化や砂防工事などの公共事業によるハード対策だけに頼るには限界がある。水災害リスクを低減させる土地利用、実効性ある避難態勢の構築などのソフト対策もあわせて推進していく必要がある。国としても、2020年度からハード・ソフト一体の「流域治水」という総合的対策の強化に舵を切っている。こうした国の動きは高く評価できるが、効果をさらに高めるためには、地震対策と同じような総合的対策の枠組みの強化、浸水ハザードエリアでの土地利用のさらに踏み込んだ規制、自助を促す水災害保険制度の強化が、なお必要な課題と考える。本稿では、これら課題への対応策を提案する。

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  • 藤原 幸則

    新型コロナウイルス対策で見えた地方の財政力格差-税源交換による地方税の偏在是正・税収安定化を-

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    AUTHOR : 
    藤原 幸則

    ABSTRACT

    新型コロナウイルスの感染拡大は、地域経済にも大きなマイナス影響を及ぼしている。地域経済の悪化は税収減により地方財政へ影響が及び、その影響は長期化する可能性がある。感染拡大は地方財政への影響の長期化だけにとどまらない。そこで、本稿では、新型コロナウイルス感染拡大で見えた地方の財政力格差の背景と問題点を整理し、財政力格差の要因になっている税収の偏在是正のための制度改革の提案を行った。地方税の偏在性において、最も大きいのが地方法人二税であり、最も小さいのが地方消費税である。そこで、地方の法人課税分と国の消費税分について、同額で税源交換し、地方消費税を拡充することが有効と考え、シミュレーションも行った。

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  • 藤原 幸則

    最低賃金をどう決定するか -経済実態、生活圏を反映した水準決定とエリア設定を-

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    AUTHOR : 
    藤原 幸則

    ABSTRACT

    新型コロナウイルスの感染拡大による経済危機は、2020年度の最低賃金改定の議論に大きな影響を与えている。本稿では、最低賃金引上げについての近年の動向や議論の論点(国際比較、生産性との関係、全国一元化)を整理した上で、制度の見直し提案として、①エビデンスに基づく経済実態に即した引上げ額の検討、②都道府県単位のエリア設定を見直し、同一都道府県でも経済実態に即した区分けや都府県をまたがる生活圏としての一体化を反映した水準決定、③ポリシーミックスによる引上げが可能となる環境整備、という3点を示している。

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  • 藤原 幸則

    コロナ禍後の財政健全化に向けて

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    AUTHOR : 
    藤原 幸則

    ABSTRACT

    新型コロナウイルス感染症拡大防止による経済の影響が一段と深刻化している。政府においては、2020年度補正予算(第1号、第2号)を編成し、追加歳出総額のすべてを新規国債発行で賄うという財政出動に踏み出した。今般の補正予算で、財政状況の一段の悪化が避けられない。本稿では、新型コロナウイルス対策での財政出動による財政悪化のインパクトを試算し(暫定)、潜在的な財政破綻リスクの深刻化を確認するとともに、コロナ禍後の財政健全化に向けての議論の進展を期待して、今後考えるべき論点と思われるところを整理してみた。

    ※ 5月28日のAPIR「128回景気分析と予測」の名目GDP成長率予測値を試算に反映、一部修正

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  • 藤原 幸則

    Policy Brief No.4 <頻発・激甚化する災害への備えの強化を>

    政策提言

    政策提言

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    藤原 幸則

    ABSTRACT

    近年、頻発・激甚化する災害が新型コロナウイルス感染拡大と重なれば、多数の人命が失われ、社会経済機能の維持すら困難となる。感染拡大がいまだ収束していないからこそ、災害対策の備えを強化しなければならない。

    災害発生には、利便性や効率性等を追求する人間行動が深く関与している。近年、一つの災害あたりの物的被害や社会経済の損失は増大傾向にあるが、これは人間の行動によって、人口・資産が災害の発生危険度の高い地域に集積し、災害リスクが高まっていると言える。典型的な例は東京一極集中である。利便性や成長を求めて人口や経済機能が東京圏へ集中した結果、首都直下地震のような大規模災害が生じれば、被害と損失は非常に大きく、東京圏にとどまらず、日本全体に影響が及ぶ。

    したがって、災害による被害を防止・軽減するために、災害リスクをできる限り小さくする対策を講じていくことが重要になる。そこで、2019年度のAPIR自主研究プロジェクトの研究成果をもとに、個人や企業のより安全な選択行動や行政の役割強化を図る法律・制度の見直しを提案する。自主研究成果の報告書にもあるとおり、講ずべき対策は多いが、特に重要なものをここで提案している。

  • 藤原 幸則

    「関西のスポーツ産業振興に係る基礎調査報告書」(公益社団法人関西経済連合会委託調査)

    その他の活動・出版物紹介

    その他の活動・出版物紹介 » その他の活動

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    藤原 幸則

    ABSTRACT

    調査内容

    日本では2015年にスポーツ庁が発足し、スポーツの成長産業化に向けた議論が活性化している(スポーツ基本計画策定など)。また、ラグビーワールドカップ2019に加えて、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会、ワールドマスターズゲームズ2021関西と、連続で3つの大きなスポーツイベントがあり、ゴールデン・スポーツイヤーズとも称されており、スポーツ産業活性化に向けては絶好の機会が到来している。

    スポーツ産業は、スポーツ用品をはじめとする製造業・商業に限らず、医療・健康、観光、サービス業など幅広い産業分野に関係し、産業横断的に存在していると言える。スポーツ用品の製造・販売だけでは成長に限界があり、スポーツツーリズムなど、異なる産業分野の様々シナジーがスポーツ産業の発展につながる。

    欧州諸国においては、スポーツサテライトアカウント(Sport Satellite Account)が開発され、経済計算に基づきGⅤA(粗付加価値)、雇用者数などのスポーツ産業規模の統計値が推計されている。スポーツサテライトアカウントは、産業分類の中でのスポーツ産業の位置づけや範囲が示され、また国際比較可能であることから、欧州各国のスポーツ産業振興のベンチマークとして活用されている。

    日本全体のスポーツ産業規模の計測については、欧州スポーツサテライトアカウントの方法に準拠し、有識者の協力を得てすでに日本政策投資銀行で行われ、結果が2018年3月に公表されている(日本政策投資銀行地域企画部・同志社大学「わが国スポーツ産業の経済規模推計~日本版スポーツサテライトアカウント~」2018年3月)。

    そこで、本調査では、関西のスポーツ産業の現状と動向について、できる限り最新の情報を織り込みながら、統計データや情報の整理を行うとともに、日本版スポーツサテライトアカウント方法に準拠した関西のスポーツ産業規模の推計を行った。関西のスポーツ産業規模の推計にあたっては、アジア太平洋研究所が独自に作成した「2011年関西地域間産業連関表」(対象:関西2府8県)を利用した。今後、関西地域間産業連関表の改定にあわせ、関西のスポーツ産業規模の推計を継続して行いえることとなる。

     

    調査監修

    稲田義久 アジア太平洋研究所 研究統括兼数量経済分析センター長、 甲南大学経済学部教授

    調査担当

    藤原幸則  アジア太平洋研究所 主席研究員

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  • 藤原 幸則

    社会保障の給付と負担の一体改革を

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     / DATE : 

    AUTHOR : 
    藤原 幸則

    ABSTRACT

    2019年12月19日、政府の全世代型社会保障検討会議が中間報告をとりまとめた。個別の改革検討事項をみると、医療・介護の制度改革については踏み込み不足となっている。国民に追加負担を求める改革メニューのほとんどは退けられた。社会保障制度改革をめぐる議論の背景にある大きな問題点は、高齢化などに伴う社会保障給付の累増にどう対応していくかに関する国民的コンセンサスが欠如していることがあると考える。どの程度まで給付を受け、負担に応じるかという、最終的には国民の選択の問題であろう。本稿では、社会保障制度の何が問題なのか、どのように改革を検討していくべきかの方向性を述べる。

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  • 藤原 幸則

    災害リスク管理の視点からの社会システムのあり方

    研究プロジェクト

    研究プロジェクト » 2019年度 » 日本・関西経済軸

    AUTHOR : 
    藤原 幸則

    ABSTRACT

    リサーチリーダー

    主席研究員 藤原幸則

     

    研究目的

    近年、全国各地で自然災害が相次いでいる。特に、昨年の豪雨、台風、地震は、広範な地域で甚大な被害をもたらすとともに、空港閉鎖やブラックアウト、サプライチェーンを通じて、経済や生活面において大きな影響を与えた。関西においても、昨年9月の台風21号による暴風、高波、高潮の影響で、関西国際空港が大規模な浸水被害に見舞われ、タンカー船の衝突による空港連絡橋の損傷も重なり、空港機能が一時停止するに至った。

    インフラの民営化やPPP導入が進んでいるが、所有と管理が分離され、民間が運営主体となることについて、災害リスク管理の視点から、初動対応、迅速な回復、今後の対策に至るまで、課題を抽出し、事前に手当すべきことなど、適切な対応策を考えることが必要である。災害リスク管理の視点からは、インフラ以外にも、人口や経済機能の東京への一極集中、情報ネットワーク化、都市計画・土地利用計画といった日本の社会システムについて、潜在的な課題を浮き彫りにし、適切な対応策を探ることが必要である。

    また、災害からの復旧、復興にはファイナンスが必要であるが、巨大災害には事後的なファイナンスは極めて困難となり、国家の財政対応能力を超えることにもなりかねない。公的部門における資本市場へのリスク移転など、持続的なリスクファイナンスの制度化の検討が必要である。

    研究内容

    研究会を開催し、法学、経済学、ファイナンス、防災の専門家や研究者から、検討テーマについて講演をいただくとともに、その質疑応答や意見交換を通じて、課題と対応方向を探る。あわせて、海外事例の調査、必要に応じて関係機関へのヒアリング調査も行い、研究の深耕を行う。

    災害や防災に関する研究は、減災・防災や避難などのハード・ソフトの対策に関して、いろいろなところで行われているので、当研究所は社会科学分析に強い特性を活かし、社会システムの在り方やリスクファイナンスについての研究を行うことで差別化する。

    研究会は毎回、関心ある会員企業・団体の参加を可能とするオープン研究会で開催し、企業等の現場の課題認識も聴取できるものとする。

     

    研究体制

    研究統括

    稲田義久 APIR研究統括兼数量経済分析センターセンター長、甲南大学教授

    研究協力者

    服部和哉 AIG総合研究所 主任研究員

     

    期待される成果と社会還元のイメージ

    災害リスク管理の視点から、日本の社会システムの潜在的な課題を浮き彫りにし、必要な法律・制度・政策などの提案、巨大災害に備えた持続的なリスクファイナンスの制度化の提案を報告書にまとめる。報告書はHPにて公開する。研究成果の政策提言に関する内容は、Policy Brief として発信し、政府、自治体、経済界、マスコミ、学界の関係者に広くアピールする。

    行政の法律・制度・政策への反映、企業や社会の課題認識と世論形成につなげたい。

     

    <研究会の活動>

    研究会

    ・2019年7月25日 第1回研究会開催

    ・2019年9月2日  第2回研究会開催

    ・2019年9月30日 第3回研究会開催

     

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  • 稲田 義久

    G20大阪サミットと関西経済 -その経済効果と意義-

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     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 藤原 幸則 / 下山 朗 / 川本 剣悟 / 野村 亮輔

    ABSTRACT

    2019年6月28・29日、大阪で開催されるG20サミットは、日本で初の開催となり、世界的な課題解決に向けてその存在感を世界に示す重要な機会であるのみならず、開催地大阪・関西にとっては25年の万博開催を見据えたうえでの大きな意義がある。本稿は、経済的効果に限定してその評価を行ったものであり、分析ツールとしては産業連関表を用いている。産業連関表はイベント実施が経済全体にどのように波及して所得や雇用に影響を与えるかを分析できる。分析結果を要約すれば、以下のようになる。

     

    1. G20大阪サミット関連最終需要として支出される金額は428億4,200万円と推計される。
    2. 2016年伊勢志摩サミットと支出内訳を比較すれば、今回はインフラ関係の整備事業額が少ないのが特徴で、既存インフラを活用して経費を抑えたコンパクトな開催となっている。
    3. APIR関西地域間産業連関表(2011年版)を用いた試算によれば、G20大阪サミットの総合効果として生産誘発額は621億4,800万円、粗付加価値誘発額は390億3,600万円、雇用者所得誘発額は234億6,300万円と推計される。いずれも直接効果と間接2次効果を含んでいる。
    4. G20大阪サミットは関西経済に365億6,360万円の付加価値を誘発する。0.04%程度の押し上げ効果となり、減速が予測される関西経済に一定程度の下支え効果を発揮する(ここでの関西経済は、APIR関西経済予測モデルと比較可能となるように2府4県ベースでみている)。なお日本全体の下支え効果は0.01%である。
    5. 単年度の効果としては大きくはないが、関西経済にとっては、2025年大阪・関西万博開催を控え、G20サミット開催の意義は深い。今後一連の経済イベントによる需要拡大が投資を誘発し関西経済の供給力を引き上げるという好循環が期待できる。結果、関西経済の潜在成長率引き上げにつながる意義を持つキックオフイベントとなろう。
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