研究成果

research

雇用調整助成金の効果と課題 – 新型コロナウイルス感染症特例措置をめぐって –

Abstract

1. 新型コロナウイルス感染症の拡⼤は、企業規模を問わず、幅広い産業や業種に深刻な影響を及ぼしている。このような中で、政府は企業の事業継続と雇⽤維持の⽀援に注⼒している。失業を防⽌する雇⽤維持対策として雇⽤調整助成⾦がある。政府においては、昨年2⽉14⽇、雇⽤調整助成⾦の「新型コロナウイルス感染症特例措置」を創設して対応を⾏っている。

2. 雇⽤調整助成⾦について、2021年1⽉15⽇時点で、申請件数は累計で 36万件、⽀給決定額は累計で2兆6,042億円となっており、幅広い企業や事業主が助成⾦を活⽤している。リーマンショック時の助成⾦⽀給額実績の年度ピークは2009年度で6,535億円だったのに⽐べて、今回のコロナ禍では著しく急増していることがわかる。完全失業率について、2020年4⽉以降で最⾼3.1%(10⽉)、直近の11⽉は2.9%と、リーマンショック後の最悪の数値(2009年7⽉5.5%)に⽐べて低い⽔準にとどまっている。コロナ禍の中で2020年4〜6⽉期に実質GDPが年率約3割減という落ち込みがあったことを考えると、雇⽤調整助成⾦が未曾有の経済危機の中での失業防⽌という点で⼤きな効果を発揮していると評価できよう。

3. コロナ禍の中では雇⽤調整助成⾦の活⽤が急拡⼤し、特例措置の適⽤期間も1年にわたることとなり、雇⽤調整助成⾦の財源プールとなっている雇⽤安定資⾦の涸渇化が懸念されるようになっている。雇⽤調整助成⾦は、事業主の利益だから財源は事業主負担という本則があるが、危機対応の観点から⾒直すべきではないか。そもそも、今般の感染症拡⼤による経済危機は、事業主連帯の考え⽅での保険料で雇⽤調整助成⾦の財源を賄うに⾜る域を超える異常事態であり、失業の著しい急増を避けることは経済や社会にとって⼤きな利益ともなる。⾃然災害やパンデミックなどによる国難とも⾔うべき重⼤な経済危機に際しては、雇⽤調整助成⾦へ⼀般財源を投⼊できることを本則にすべきと考える。

4. 欧⽶各国は、危機的な新型コロナウイルス感染症の急拡⼤に直⾯して、雇⽤維持政策の実施を相次いで延⻑しているが、出⼝を模索する動きもある。⽇本においても雇⽤維持政策の出⼝の模索は悩ましい課題であるが、危機がある以上は雇⽤調整助成⾦の特例措置を延⻑しつつも、コロナ禍の中でも様々な創意⼯夫や対策によって事業の継続・再開・転換を図る企業に対する重点的な助成に軸⾜を移していくべきであろう。労働者を休業させて雇⽤維持を図るだけの企業に対しては、雇⽤情勢をみながら、段階的に特例の縮減を進めていくべきであろう。また、成⻑分野への労働移動促進のための⽀援、職業能⼒開発への⽀援は、思い切った強化を図るべきと考える。

本文

1.コロナ禍で効果があった雇⽤調整助成⾦

新型コロナウイルス感染症の拡⼤は、企業規模を問わず、幅広い産業や業種に深刻な影響を及ぼしている。このような中で、昨年2⽉以降、政府は、企業の事業継続と雇⽤維持の⽀援に注⼒している。失業を防⽌する雇⽤維持対策として、雇⽤調整助成⾦がある。政府においては、昨年2⽉14⽇、雇⽤調整助成⾦の「新型コロナウイルス感染症特例措置」を創設して対応を⾏っている。

 

(1)雇⽤調整助成⾦の制度と特例措置

雇⽤調整助成⾦は、景気の変動や産業構造の変化、その他の経済上の理由により事業活動の縮⼩を余儀なくされた事業主が、休業等により労働者の雇⽤の維持を図った場合に、それに要した休業⼿当等の費⽤を助成する制度である。雇⽤保険⼆事業として、事業主の利益になるという考えから全額が事業主負担(保険料で負担)で賄われており、国庫負担はない。

雇⽤調整助成⾦を包括する雇⽤保険制度は、労働者の⽣活安定と失業の防⽌、能⼒開発という⽬的があり、図表1に制度体系を⽰すとおり、失業等給付、雇⽤保険⼆事業、就職⽀援法事業で構成される。事業主が主体で⾏う雇⽤安定と能⼒開発の雇⽤保険⼆事業の中に雇⽤調整助成⾦がある。雇⽤を維持する事業主への助成⾦という形をとり、結果として労働者の失業予防となる。

 

 

雇⽤調整助成⾦の「新型コロナウイルス感染症特例措置」では、図表2に⽰すとおり、助成上限額の引上げ、助成率最⼤10割、対象労働者の拡⼤など、リーマンショック時を超える異例の措置が実施されている。特例措置の適⽤期限は、これまで⼆度にわたり延⻑され、現在は2021年2⽉末までとなっている。

 

 

(2)雇⽤調整助成⾦の効果

雇⽤調整助成⾦については、図表3に⽰すとおり、2021年1⽉15⽇時点で、申請件数は累計で236万件、⽀給決定額は累計で2兆6,042億円となっており、幅広い企業や事業主が助成⾦を活⽤している。リーマンショック時の雇⽤調整助成⾦⽀給額実績の年度ピークは2009年度で6,53 億円だったのに⽐べて、今回のコロナ禍では著しく急増していることがわかる。

 

 

今年3⽉以降の雇⽤状況の推移を図表4に⽰す。4⽉の緊急事態宣⾔の発出の時には、休業者が前⽉より348万⼈増えて597万⼈まで上昇した。休業者数はその後減少していっており、8⽉以降は概ね平年の⽔準に近づいている。⼀⽅、4⽉には求職活動をあきらめて⾮労働⼒化した⼈々が、前⽉より94万⼈増えて4,274万⼈となったが、翌⽉以降は労働⼒市場に戻る動きがみられる。

失業者の増加はあるものの⼤きくはなく、5⽉の緊急事態宣⾔解除とその後の経済活動の回復の動きもあって、失業者の増加を上回って就業者が増加していることから、完全失業率については、最⾼で3.1%(10⽉)、直近の11⽉は2.9%という低い⽔準にある。コロナ禍の中で2020年4〜6⽉期に実質GDPが年率約3割減という落ち込みがあったにもかかわらず、完全失業率がリーマンショック後の最悪の数値(2009年7⽉5.5%)に⽐べて低い⽔準にとどまっていることは、新型コロナウイルス感染症による未曾有の経済危機の中で急激な休業者の増加があっても解雇・失業が抑えられてきたという点で、雇⽤調整助成⾦が⼤きな効果を発揮していると評価できよう。

今般の雇⽤調整助成⾦の特例措置の効果については、リーマンショック後の時と同じく、今後、精緻な実証分析により計測と検証が必要となろう。

 

 

2.コロナ禍での対応を踏まえた雇⽤調整助成⾦の課題

(1)重⼤な経済危機時における雇⽤調整助成⾦への⼀般財源の投⼊

雇⽤保険⼆事業、特に雇⽤調整助成⾦は不況期に多額の⽀出がある⼀⽅で、景気好調時には⽀出が減るという特性がある。財源となる事業主負担の雇⽤保険料は毎年度⼀定の料率(現⾏0.30%)によって徴収されるので、景気好調な時に剰余を雇⽤安定資⾦として積み⽴てておいて、不況期に多く⽀出できる仕組みとなっている。保険料は事業主が連帯して対応するという考え⽅に⽴っている。

こうした仕組みが⽤意されていたものの、コロナ禍の中では雇⽤調整助成⾦の活⽤が急拡⼤し、特例措置の適⽤期間も1年にわたることとなり、図表5に⽰すとおり、雇⽤安定資⾦の涸渇化が懸念されるようになっている。雇⽤安定資⾦の財源不⾜のため、雇⽤保険臨時特例法により、失業等給付の積⽴⾦から借⼊を⾏うとともに、雇⽤調整助成⾦と新型コロナ対応休業⽀援⾦に要する経費のうち中⼩企業分の上限8,370円を超える部分には⼀般財源が投⼊されることとなった。

 

 

⼀般財源がすでに投⼊されている失業等給付の積⽴⾦からの借⼊、臨時特例法による⼀般財源の投⼊となると、雇⽤調整助成⾦は事業主の利益だから財源は事業主負担という本則を⾒直してもよいのではないか。雇⽤安定資⾦の財源として、⽬的が異なる失業等の給付の積⽴⾦を取り崩すのではなく、⼀般財源を投⼊することが本来あるべきことと考える。

そもそも、今般の感染症拡⼤による経済危機は、事業主連帯の考え⽅での保険料で雇⽤調整助成⾦の財源を賄うに⾜る域を超える異常事態であり、失業の著しい急増を避けることは経済や社会にとって⼤きな利益ともなる。⾃然災害やパンデミックなどによる国難とも⾔うべき重⼤な経済危機に際しては、雇⽤調整助成⾦へ⼀般財源を投⼊できることを本則にすべきと考える。

 

(2)雇⽤調整助成⾦による雇⽤維持政策の出⼝戦略

新型コロナウイルス感染症対応では、欧⽶主要国においても、図表6に⽰すとおり、コロナ禍での雇⽤維持政策に取り組んでいる。

アメリカは、もともとある州レベルの操業短縮補償(Short-Time Compensation, STC)の拡充に加え、連邦レベルの中⼩企業での雇⽤維持を⽬的とした給与保護プログラム(Paycheck Protect Program, PPP)を新たに導⼊した。イギリスは、これまで雇⽤維持の制度は存在しなかったが、政府は新たにコロナウイルス雇⽤維持スキーム(Coronavirus Job Retention Scheme)を導⼊した。

ドイツとフランスは、コロナ禍の以前にすでに雇⽤維持政策が制度化されており、それを拡充・緩和して対応を⾏っている。 ドイツは操業短縮⼿当(Kurzarbeitergeld, KuG)、フランスは部分的失業(Activité partielle – chômage partiel)であり、ドイツの制度は⽇本の雇⽤調整助成⾦のモデルとなっている。ドイツの制度は、もともと熟練労働者の技能を維持するという⽬的がある。

 

 

これら欧⽶4か国とも、危機的な新型コロナウイルス感染症の急拡⼤に直⾯して、雇⽤維持政策の実施を相次いで延⻑している。もちろん、失業防⽌のためのいわばカンフル剤の注⼊とも⾔える雇⽤維持政策について、出⼝を模索する動きもある。英国がその例にあたる。英国のコロナウイルス雇⽤維持スキームでは、経済活動が再開し始めている状況を踏まえ、昨年11⽉から新たなスキームに移⾏して助成対象から休業者をはずし短時間就業者に限定するという予定であった。しかし、繰り返される感染急拡⼤に直⾯して現⾏スキームの延⻑を余儀なくされている。昨年12⽉17⽇、英国政府は、雇⽤維持スキームを賃⾦補助率80%で2021年4⽉まで延⻑すると発表した。

 

⽇本も含めた各国において、新型コロナウイルス感染症が遠からず収束を迎え、経済活動が早期に回復していけば、雇⽤維持政策の出⼝は⽐較的容易になるだろう。しかし、現時点では、新型コロナウイルス感染症対応に終わりは⾒えない。この先、経済活動の再開と引き締めを繰り返す可能性もある。経済活動の回復が遅れるほど、それに遅れて雇⽤情勢の悪化が顕在化する懸念がある。

経済成⻑と失業にはオークンの法則という経験則があることが知られている。図表7は⽇本における実質GDPと失業者数の推移を⽰しているが、リーマンショック時や今回のコロナ禍の推移をみれば、GDPの低下に2四半期ほど遅れて失業者が増え出すという関係性があることがみてとれる。

今年1⽉7⽇に⾸都圏の1都3県に緊急事態宣⾔が再び発出され、さらに1⽉13⽇には栃⽊県・⼤阪府・京都府・兵庫県・愛知県・岐⾩県・福岡県の7府県にも緊急事態宣⾔発出が⾏われたことから、消費等の経済活動の収縮によって、2021年1-3⽉の実質GDPがマイナス成⻑に陥る可能性がある。当⾯は雇⽤調整助成⾦の活⽤による雇⽤維持の継続を優先的に図らないといけないだろう。

 

 

⼀⽅、雇⽤調整助成⾦による雇⽤維持政策の継続については、副作⽤の問題がある。今後検証すべき課題となるが、例えば、コロナ禍の中でも様々な創意⼯夫や対策によって事業の継続・再開を図る企業には賃⾦負担が全額⾃⼰負担になるのに対し、休業を継続し従業員へ休業⼿当を⽀給し続ける企業には最⼤100%の助成がある。企業ごとに事情が違い、休業継続そのものが不適切とは⾔えないが、⾃⽴を図る企業努⼒を阻害するモラルハザードの問題がありうることは否定できないだろう。⽣産性が低く、本来なら市場から撤退が求められる不採算企業の延命にもなりうることもあろう。また、コロナ禍の中でも需要が拡⼤し成⻑している事業分野への労働移動を阻害しかねない問題もあろう。こうした雇⽤調整助成⾦の副作⽤として、コロナ禍後に、⽇本経済のただでさえ低い潜在成⻑率(内閣府による2019年度の推計は0.9%)をさらに押し下げないかが懸念される。

 

以上のとおり、欧⽶各国と同じく、⽇本においても雇⽤維持政策の出⼝の模索は悩ましい課題であるが、先に紹介した英国政府の考え⽅(脚注9)が参考になると思われる。

新型コロナウイルス感染症による危機がある以上は雇⽤調整助成⾦の特例措置を延⻑しつつも、コロナ禍の中でも様々な創意⼯夫や対策によって事業の継続・再開・転換を図る企業に対する重点的な助成に軸⾜を移していくべきであろう。労働者を休業させて雇⽤維持を図るだけの企業に対しては、雇⽤情勢をみながら、段階的に特例の縮減を進めていくべきであろう。また、成⻑分野への労働移動促進のための⽀援(労働移動⽀援助成⾦の拡充、受け⼊れ企業の教育訓練等への⽀援)、職業能⼒開発への⽀援(使いやすい教育訓練休暇制度への⾒直し、教育訓練給付⾦の拡充、デジタル化に対応した教育訓練の充実など)は、思い切った強化を図るべきと考える。

政府・関係者には、雇⽤調整助成⾦の特例措置を延⻑しつつも、出⼝戦略についての検討・議論も早急に進めていくことを期待したい。

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  • 藤原 幸則

    四半期開示制度の日本企業の経営に与えた影響 – 研究開発費に関する企業財務データのパネル分析 –

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     / DATE : 

    AUTHOR : 
    藤原 幸則

    ABSTRACT

    岸田文雄首相が所信表明演説(2021年10月8日)で四半期開示制度の見直しを表明して以降、金融庁の金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループにおいて検討が行われてきたところ、2022年度報告書では四半期開示は維持し、取引所規則による決算短信に一本化するのが適切とされた。主に情報利用者の便益からの意見が大勢になっており、日本の四半期開示制度の経営に与える影響について、実証研究の十分な蓄積があっての政策決定とは必ずしも言えないものとなっている(そもそも日本での実証研究の数は非常に少ない)。そこで、本稿では、企業の長期的視点にかかわる研究開発に対して、四半期開示制度が短期利益志向を助長し、研究開発費の抑制などの影響を与えているかどうかの検証を企業財務データのパネル分析により試みた。以下はその要旨である。

     

    1. 四半期開示の導入による研究開発費の抑制の因果関係については、仮説として、四半期開示によって投資家の短期利益志向が強まり、それが企業に対する市場からの圧力となって経営判断を短期化させ、目先の利益を計上するために、研究開発費の抑制による財務内容の改善といった対応に頼る企業行動がみられる可能性があると考えた。投資家の短期利益志向を表す指標としては、投資家の株式平均保有期間の短期化、外国法人等株式保有率の上昇という二つのものがあるとみている。

    2. 四半期開示制度の導入による投資家の短期利益志向を表す指標をもとに、企業の長期的な研究開発活動にどのような影響を与えているかを企業の財務データによるパネル分析を行った。
    分析対象企業は、日本の各業界を代表し株式取引の多い日経225の株価銘柄企業(225社)とした。パネル分析では、研究開発費の推計モデル式を設定し、投資家の短期利益志向を表す指標の影響の統計的有意性を検証した。

    3. 今般の推計結果では、特に外国法人等株式保有率のパラメータの符合や統計的有意性に頑健な結果が得られた。短期利益を求めて、利益還元など強く求める海外投資家の市場圧力が、日本企業の研究開発費を抑制している可能性があることが示唆されたことになる。ただし、結果の評価は慎重に考える必要があり、分析対象企業の拡大やモデル式の一層の改善といった研究課題がある。また、今後、政策決定のエビデンス蓄積に向けて、筆者以外にも多くの研究者が、四半期開示制度の評価を試みる有益な実証研究を進めていくことを期待したい。

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  • 藤原 幸則

    四半期開示制度の日本企業の経営に与えた影響

    研究プロジェクト

    研究プロジェクト » 2022年度 » 日本・関西経済軸

    RESEARCH LEADER : 
    藤原 幸則

    ABSTRACT

    リサーチリーダー

    上席研究員 藤原幸則 大阪経済法科大学経済学部教授

     

    研究目的

    現在、金融庁の金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループにおいて、企業情報開示のあり方について幅広い検討が行われている。とりわけ、四半期開示制度の見直しは、重要課題として位置づけられている。
    企業ごとの実態を考慮せず、短期的かつ一律的な財務情報の開示を促す現行の四半期開示制度は、企業経営者や投資家の短期的利益志向を助長しているとの懸念がかねて指摘されている。また、SDGsやサステナビリティへの意識と関心が高まるなかで、四半期ごとの定型的な開示を求める制度が、果たして、中長期的な企業価値向上を見据えた企業と株主の建設的な対話に寄与するものなのか、疑問の声もあげられている。
    頻繁な情報開示を行う企業が大きな負担を負っていることから、関西経済界からは四半期開示の義務付け廃止の要望が、2009年以来、政府や取引所に対して幾度も行われている。これに対し、今年4月、新しい資本主義実現会議と金融審議会は、四半期開示は維持し、取引所の決算短信に一本化するとの方針を示した。主に情報利用者の便益からの意見が大勢になっており、実証分析による十分なエビデンスがあっての議論になっていない。

    研究内容

    四半期開示制度による投資家の短期的利益志向化(株式保有期間の短期化)が、企業の長期的な企業価値向上への取り組み(長期投資、研究開発等)にネガティブな影響を与えているのではないか、ということを仮説として実証分析したい。たとえば、長期投資や研究開発の水準を被説明変数、ROA、Leverage、投資家株式保有期間その他を説明変数とする回帰分析が考えられる。法人企業統計によるマクロベースと上場企業の財務データ(サンプル数:数百社、30年)によるミクロベースの両面で、実証分析を行うつもりである。

     

    研究体制

    研究統括

    本多 佑三  APIR研究統括、大阪学院大学教授、大阪大学名誉教授

    リサーチリーダー

    藤原幸則  APIR上席研究員、大阪経済法科大学経済学部教授

     

    期待される成果と社会還元のイメージ

    四半期開示制度の日本の企業経営への影響(特にネガティブな影響)について、これまで十分な実証研究が行われていない現状から、日本企業の経営データ(上場企業対象)に基づく実証分析を行い、四半期開示制度の企業経営に与える影響を報告書にまとめる。報告書はWEBサイトに掲載、公表する。

    政府の制度見直しへの反映、企業や社会の課題認識と世論形成につなげる。

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  • 藤原 幸則

    金融所得課税のあり方 – 国民の資産形成と成長資金供給の促進を重視した議論を –

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     / DATE : 

    AUTHOR : 
    藤原 幸則

    ABSTRACT

    昨年秋、自民党総裁選挙を契機に金融所得課税の見直し議論がにわかに注目された。しかし、市場関係者から懸念の声があり、昨年10月初めには株価下落もあって、表立った議論は消えた。昨年12月の令和4年度与党税制改正大綱では、今後の検討課題とされている。今回の議論の背景は、いわゆる「1億円の壁」というフレーズに端的に集約されている。本稿では、金融所得課税の見直し議論の背景と論点を概観したうえで、そのあり方について私見を提起している。今後の金融所得課税のあり方として、重視すべきことは、国民の資産形成と成長資金供給の促進にあると考える。将来の検討課題として、コロナ対策のために発行した国債の償還財源について、コロナ禍の終息後の経済回復を待って、所得税や法人税を時限的に付加増税することにあわせて、金融所得課税も超高所得者を対象に税率を25%(現行税率20%+5%)へ時限的に付加増税することは現実的に納得性があるものと考える。

     

    1. 「1億円の壁」の問題は、申告所得税において所得階層別にみた場合、合計所得金額が1億円超になると所得税の負担率が下がっていくことをさしている。高所得者層ほど所得に占める株式等譲渡所得の割合が高くなっており、その金融所得の大部分は分離課税の対象として、累進所得課税よりも相対的に低い税率が適用されているからである。これがゆえに、税負担の不公平、所得再分配機能の低下、格差の拡大と問題視されている。

    2. 金融所得課税の見直しについて、分離課税の税率を一律に引き上げる場合、高所得者層の税負担増加にとどまらず、中低所得者層も増税になるという問題がある。株式・債券等の有価証券を持つ中低所得者は幅広く存在している。大衆増税にならないよう、たとえば、税率引き上げの対象を合計所得金額が1億円超の超高所得者に限定するということが考えられる。
    しかし、税率が高率になると、投資家心理を冷やし株価下落などの金融資本市場への影響がありうる。こうした影響の判断は難しいが、何よりも、成長資金供給に向けて、投資家が積極的にリスクテイクを行うという機能を損なってしまうことにならないかが懸念される。

    3. 今後の金融所得課税のあり方として、重視すべきことは、国民の資産形成と成長資金供給の促進にあると提起したい。中低所得者層の資産形成の支援に向けてはNISAの拡充や株式等譲渡所得の総合課税選択可とすること、高所得者層には損益通算範囲のさらなる拡充などを検討する必要がある。将来の検討課題として、コロナ対策のために発行した国債の償還財源について、コロナ禍の終息後の経済回復を待って、所得税や法人税を時限的に付加増税することにあわせて、金融所得課税も超高所得者を対象に税率を25%(現行税率20%+5%)へ時限的に引き上げることは現実的に納得性があることだと考える。

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  • 藤原 幸則

    コロナ後における財政の規律回復と健全化 – 内閣府「中長期の経済財政に関する試算」から考察した論点 –

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    AUTHOR : 
    藤原 幸則

    ABSTRACT

    内閣府は、例年1月と7月に「中長期の経済財政に関する試算」の結果を公表している。今年、7月21日に最新の試算結果が示された。2025年度のPB(プライマリーバランス)黒字化目標を堅持した骨太方針2021を数字で裏付けるものである。本稿では、この最新の試算結果を考察し、コロナ後における財政の規律回復と健全化の論点整理を行った。要約は以下の通りである。

    1. 今回の試算結果によると、「成長実現ケース」では、2027年度にPB黒字化が達成される。前回(2021年1月)試算結果では2029年度であったのが2年早くなっている。コロナ前への経済回復がやや遅れると見通しているにもかかわらず、こうした試算結果となるのは、名目GDPの水準の落ち込みによる収支悪化要因よりも、2020年度の税収の予想外の上振れによる収支改善要因の方が大きいということの結果といえるだろう。また、歳出改革を今後も継続すれば、PB黒字化の前倒しが視野に入る試算結果ともなっており、コロナ後における財政健全化の道筋についての検討で、歳出改革は重要なポイントになることがわかる。

    2. 内閣府の中長期試算の前提となっている全要素生産性の上昇率(いわば技術進歩率)については、以前から多くの研究者から非現実的あるいは過大な想定との疑問が呈されている。潜在成長率の過去の推移から、今回試算の「成長実現ケース」の想定は過大ではないかという見方はどうしても否めない。かといって、1%弱を下回る「ベースラインケース」の想定のままであってもいけない。政府が成長戦略の柱に掲げるグリーンやデジタルについて、具体的な戦略を積み上げていく議論が、財政健全化の道筋の具体化という意味でも必要である。

    3. コロナ感染の収束が見極められてから、財政規律の回復とともに、PB黒字化などの財政健全化目標を再設定するのがよいだろう。コロナ後の財政健全化については、人口減少・高齢化等による構造的な財政赤字への対処と、コロナ対策のような予期できない緊急措置による財政赤字への対処とを、分けて考える必要がある。また、コロナ後の財政規律の確保のために、コロナ対応の施策を中心に、必要なくなったものが存続しないよう既存歳出のスクラップに取り組む必要があるし、補正予算も含め、追加的な歳出にはそれに見合う安定的な財源を確保するというペイアズユーゴー(pay as you go)原則が踏まえられるべきである。

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  • 藤原 幸則

    コロナ危機下における企業の財務調整- 法人企業統計調査結果から考察した課題 –

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     / DATE : 

    AUTHOR : 
    藤原 幸則

    ABSTRACT

    1. コロナ危機下での企業の財務調整状況について、本稿では、企業のバランスシート(貸借対照表)項⽬のうち、特に、内部留保(利益剰余⾦)と有利⼦負債の変化に焦点を当てて考察する。

    2. コロナ危機前の⽇本企業の財務状況を特徴づけるポイントは、2012年以降、7年連続で過去最⾼を更新している内部留保(利益剰余⾦)の拡⼤である(2019年度、475兆円)。内部留保といわれる利益剰余⾦は、建物・設備への国内投資やM&A(企業の合併・買収)などに活⽤され、資産の部に建物・設備、投資有価証券などとして計上される。内部留保はさまざまな形で活⽤されていることが、コロナ危機前の⽇本企業全体の財務内容であったと理解できる。ただし、内部留保の厚みを業種別にみるとばらつきが⼤きい。1ヶ⽉当たり売上⾼に対する倍率でみれば、全産業平均で3.8ヶ⽉分の利益剰余⾦があり、多くの製造業は平均を超える利益剰余⾦の⽔準にある。⼀⽅で、⾮製造業は平均を下回る利益剰余⾦の⽔準の業種が多い。

    3. コロナ危機による⽇本企業への影響を法⼈企業統計で概観すると、最悪期の2020年4-6⽉期は、売上⾼と経常利益が⼤幅な減少を記録した。その結果、政府・⽇本銀⾏の⾦融⽀援もあって借⼊⾦増加や社債発⾏により⼤量の資⾦確保が図られ、負債の増加でバランスシートは悪化した。しかし、機動的に取り崩せる内部留保の蓄積があったことで、⾃⼰資本⽐率はわずかな低下ですんでおり、健全な⽔準を維持している。こうした財務状況を製造業、⾮製造業で分けてみると、⾮製造業はより厳しいという実態がわかる。⾮製造業の中でも、特にコロナ危機で需要減退の強い影響を受けているサービス関係業種の財務状況はさらに厳しく、今後も需要の低迷が続けば、⼩規模企業などで事業継続が⼀気に困難になるリスクがあろう。

    4. ポストコロナを視野に⼊れた⽇本企業の今後の課題として、潜在成⻑率の押し上げにつながる内部留保の有効活⽤、バランスシート悪化に対応する事業構造改⾰の推進をあげたい。コロナ危機での社会の変化は、新たな投資機会を⽣み出す。そうした好機をとらえる投資は、内部留保を活⽤して積極的に⾏う必要がある。また、コロナ危機対応で資⾦繰りを確保するために増加した負債増によるバランスシートの悪化は、放置されれば今後の⼤きな問題となる。中⼩企業を⽀える実質無担保・無利⼦の融資制度で元本返済が猶予されるこの5年間のうちに、中⼩企業のキャッシュを⽣み出す⼒を回復し、さらに強化していく事業構造改⾰に取り組んでいかなければならない。問題状況が違う業種ごとに、当該の業界団体、所管省庁、⾦融機関、⾦融・法務・企業再⽣の専⾨家などが参画して、現状分析と今後の対応⽅向について議論し、業種に応じたきめ細かい対応をとっていく必要があるのではないか。

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  • 藤原 幸則

    後期高齢者医療費の自己負担割合のあり方- 今年末に取りまとめられる所得基準の線引きに向けて –

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     / DATE : 

    AUTHOR : 
    藤原 幸則

    ABSTRACT

    1. 我々が病院や診療所で受診した場合、医療費の窓⼝負担(⾃⼰負担)が必要になる。現⾏制度では、現役世代は所得に関係なく3割負担、70〜74歳の⾼齢者は原則2割負担であるが、75歳以上の後期⾼齢者は原則1割負担となっている。⾼齢者でも現役並み所得がある場合は3割負担となる。

     

    2. 2022年から団塊の世代が75歳以上の後期⾼齢者に⼊り始め、医療費が急増していく⼀⽅で、⽀え⼿の現役世代の⼈⼝は急減が⾒込まれると想定される中で、現役世代の負担上昇を抑えながら、医療保険制度の持続性を維持する観点から、後期⾼齢者医療費の⾃⼰負担割合を負担能⼒に応じて2割に引き上げる議論が進んでいる。政府の全世代型社会保障検討会議などでは、⼀定以上の所得がある⼈には⾃⼰負担割合を2割に引上げる⽅針であり、焦点となる所得基準の線引きの議論を本年末までに⾏うとし、⼤詰めの段階に来ている。

     

    3. 今後も現役世代が⾼齢者医療を⽀えていく必要があるが、医療保険制度を維持し、増⼤する⾼齢者医療費を現役と⾼齢の両世代でなるべく公平に負担を分かち合うためには、「能⼒に応じて」という意味で、⼀定以上の所得がある⾼齢者については、⾃⼰負担割合を引上げることはやむを得ない。⼀⽅、⾼齢者側の事情も⼗分に踏まえる必要がある。1⼈当たり医療費は年齢階級が上がるほど増えていく。⾼齢者は平均年収も⼀般的に下がるので、年間所得に対する患者の窓⼝負担額の割合は現役世代より⾼い。所得が低いほど負担が逆進的になる。

     

    4. そもそも、所得基準の線引きについては、明確な根拠を求めることは難しいが、筆者の考えとしては、所得額に応じて利⽤者負担割合が1割、2割、3割とすでに分けて設定されている介護保険サービスを参考にしてはどうかと考える。後期⾼齢者医療費の⾃⼰負担割合引上げについては、まずは、合計所得160万円以上(年⾦収⼊等約280万円以上)の⼀般所得者を対象に2割負担を導⼊するのが適当と考える。その導⼊タイミングは、急な制度変更で混乱が⽣じないよう、2022年4⽉以降に75歳になる⾼齢者から順次適⽤していくのがよいだろう。

     

    5. また、将来的な検討課題となるが、「能⼒に応じて」の負担という中には⾦融資産や不動産の保有状況も反映させることが考えられる。例えば、フローの年間収⼊は少なくても多額の⾦融資産や不動産を保有する⾼齢者には3割負担を求めることは検討に値するだろう。

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  • 藤原 幸則

    新型コロナウイルス対策特別会計(仮称)の設置 -予算・執行の透明化と財政規律の確保を求める-

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     / DATE : 

    AUTHOR : 
    藤原 幸則

    ABSTRACT

    新型コロナウイルスは、海外で依然猛威をふるっている。国内においても、今後、インフルエンザとの同時流⾏や感染流⾏の「第3波」の可能性があり、警戒は怠れない状況にある。新型コロナウイルスは、わが国の財政の悪化にも⼤きな影響を及ぼしている。コロナ禍の出⼝は未だ⾒通せず、財政⾚字の⼤幅な増加が今年度だけで終わる保証はない。

    もちろん、新型コロナウイルス対応は、国⺠の⽣命と経済社会を守るためのものであり、必要な歳出は躊躇なく機動的に⾏うことが必要である。しかし、財政規律のタガがはずれたままであってよいわけはない。財政⺠主主義の原則に照らし、緊要な予算・執⾏でも透明性の確保と事後の効果検証は必要であるし、緊急事態から脱したときから、財政健全化に向けてどのような取り組みを⾏うかも今から議論・検討しておくべき重要課題と考える。そこで、今後の財政健全化に向けては、平時と緊急時で分けて考えていくことを提案したい。提案内容の要約は、以下の通りである。

    1. コロナ禍前からのわが国財政は、社会保障の給付と負担のアンバランスなどによる構造的な財政⾚字を抱えており、こうした平時の財政の健全化については、潜在成⻑率を引上げ、経済成⻑を通じた税収増による財政収⽀改善が重要であるとともに、社会保障⽀出増加の抑制に踏み込んだ改⾰、消費税による安定的な税財源の確保が必要と考える。

    2. ⼀⽅、新型コロナウイルス対応に要した緊急の歳出については、東⽇本⼤震災復興特別会計にならい、別途、「新型コロナウイルス対策特別会計(仮称)」を設置して、事業に時限を付しつつ、予算・執⾏を⼀元的に管理し透明化するとともに、その財源充当のために発⾏した国債全額は、コロナ危機からの経済回復後の特別増税などにより計画的に償還していくことが必要と考える。コロナ禍の今を⽣きる世代が連帯して負担し、将来世代に負担を先送りしないとして、借換債も含め全体として20年間で償還し終えるのが適切と考える。

    3. 新型コロナウイルス対策で発⾏した国債の償還財源については、負担の分かち合いや能⼒に応じた追加負担という意味で、所得税が最も望ましい。特に、コロナ禍でも所得減の影響が少なかった(あるいは、影響がなかった)中・⾼所得者に特別な負担を求めることは公平の観点から妥当であろう。これに加え、社会連帯と経済対策の受益という意味で、法⼈も幅広く負担することが必要だろう。さらに、国際協調により資産課税や⾦融取引課税を主要国が同時に同税率で導⼊することもめざすべき⽅策であろう。

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  • 藤原 幸則

    水災害の激甚化への総合的対策の強化- 全国的な対策推進の枠組み、土地利用規制、保険制度の強化を-

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     / DATE : 

    AUTHOR : 
    藤原 幸則

    ABSTRACT

    近年、全国各地で豪⾬等による⽔災害が頻発し、被害も甚⼤化するケースが増えている。限られた財政の中では、堤防強化や砂防⼯事などの公共事業によるハード対策だけに頼るには限界がある。⽔災害リスクを低減させる⼟地利⽤、実効性ある避難態勢の構築などのソフト対策もあわせて推進していく必要がある。国としても、2020年度からハード・ソフト⼀体の「流域治⽔」という総合的対策の強化に舵を切っている。こうした国の動きは⾼く評価できるが、効果をさらに⾼めるためには、地震対策と同じような総合的対策の枠組みの強化、浸⽔ハザードエリアでの⼟地利⽤のさらに踏み込んだ規制、⾃助を促す⽔災害保険の強化が、なお必要な課題と考える。これら課題への対応策として、本稿において提案する内容の要約は、以下の通りである。

     

    1. 地震対策では「地震防災対策特別措置法」が制定され、国と地⽅あげた全国的な防災対策の強⼒な推進の枠組みがあるが、⽔災害対策では⽤意されていない。近年の激甚化する⽔災害で顕在化した課題への対応をはじめ、全国的な⽔災害対策の強⼒な推進のため、国は「⽔災害対策特別措置法」(仮称)を制定し、全都道府県において優先度も踏まえた実施⽬標の設定と5年おきの事業計画を策定し、進捗管理のPDCAを回す枠組みの早期具体化を期待する。

     

    2. ⽔災害リスクの⾼い地域では、現⾏法上、⼀部開発許可の厳格化があるものの、警戒・避難態勢の整備を求めるにとどまる。浸⽔ハザードエリアすべてにおいて、新たな開発規制を課すことは現実的でない。浸⽔深が深く浸⽔継続時間が⻑いと想定される地域や家屋倒壊等氾濫想定区域といった特にリスクの⾼いエリアでは、新たな開発を原則禁⽌とすべきと考える。

     

    3. ⾃助による保険の備えは、⽔災害の被災者の住宅再建で重要な役割がある。甚⼤化する⽔災害は今後も続く可能性が⾼く、⺠間損害保険会社の保険⾦⽀払負担⼒の余⼒が激減している。⼤都市の⼤河川の氾濫ともなれば、⼀気に限界に達しかねない。先⾏する地震保険と同じように、⺠間の負担⼒を超えるところは国が再保険を⾏い、官⺠が保険責任を分担する⽔災害保険制度を整備する時に来ているのではないだろうか。この新しい保険制度では、損害補償だけの機能にとどまらせず、住⺠・企業等に⽔災害リスクを認識させ防災意識を⾼めるとともに、危険な⼟地の開発禁⽌といった適切な⼟地利⽤や地域の防災・減災努⼒と連携するような制度設計を⾏う必要がある。保険料にリスクの⾼低を反映させ、住⺠や地域等の防災・減災努⼒に応じて保険料の割引を受けられるインセンティブとあわせたものとすべきである。

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  • 藤原 幸則

    新型コロナウイルス対策で見えた地方の財政力格差-税源交換による地方税の偏在是正・税収安定化を-

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     / DATE : 

    AUTHOR : 
    藤原 幸則

    ABSTRACT

    新型コロナウイルスの感染拡大は、地域経済にも大きなマイナス影響を及ぼしている。地域経済の悪化は税収減により地方財政へ影響が及び、その影響は長期化する可能性がある。感染拡大は地方財政への影響の長期化だけにとどまらない。そこで、本稿では、新型コロナウイルス感染拡大で見えた地方の財政力格差の背景と問題点を整理し、財政力格差の要因になっている税収の偏在是正のための制度改革の提案を行った。地方税の偏在性において、最も大きいのが地方法人二税であり、最も小さいのが地方消費税である。そこで、地方の法人課税分と国の消費税分について、同額で税源交換し、地方消費税を拡充することが有効と考え、シミュレーションも行った。

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  • 藤原 幸則

    最低賃金をどう決定するか -経済実態、生活圏を反映した水準決定とエリア設定を-

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     / DATE : 

    AUTHOR : 
    藤原 幸則

    ABSTRACT

    新型コロナウイルスの感染拡大による経済危機は、2020年度の最低賃金改定の議論に大きな影響を与えている。本稿では、最低賃金引上げについての近年の動向や議論の論点(国際比較、生産性との関係、全国一元化)を整理した上で、制度の見直し提案として、①エビデンスに基づく経済実態に即した引上げ額の検討、②都道府県単位のエリア設定を見直し、同一都道府県でも経済実態に即した区分けや都府県をまたがる生活圏としての一体化を反映した水準決定、③ポリシーミックスによる引上げが可能となる環境整備、という3点を示している。

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