研究成果

research

人流データを用いた消費動向の予測

新型コロナウイルスの感染拡大後、人の位置や動きに関する情報を示す「人流データ」は、ロックダウンなどの政策効果の検証、今後の感染状況の予測などに利用され、注目を集めている。本稿は商業施設への人出と消費の関係性に焦点を当てて、更新頻度の高い日次ベースの人流データを用いて、ほぼリアルタイムで月次の消費データの予測を行った。
具体的に、Google社の「コミュニティ モビリティ レポート」に含まれた商業施設への人出増減のデータと商業動態統計調査の各種販売額データを結合したパネルデータにより固定効果推定を行った。また構築した予測モデルを用いて、足元の人流データで関西2府4県における2020年12月と21年1月の小売業販売額を予測した。得られた結論は以下の3点に要約できる。
(1) 人流データと消費動向との間に統計的に有意な相関があることが確認された。百貨店販売額を被説明変数とした推定では、小売店・娯楽施設への人出増減は統計的に有意ではなかったが、自宅での滞在時間増減は緊急事態宣言下で販売額と有意で負の相関を持つ。また、飲食料品及びドラッグストア販売額を被説明変数とした場合、食料品・薬局への人出増減と住居での滞在時間増減は、いずれも統計的に有意な正の相関を持つことがわかった。
(2) 消費動向を表す経済指標は通常足元より1カ月以上の遅れが生じるのに対して、人流データは数日の遅れしか生じない。人出と消費動向との間にある統計的に有意な関係を確立し予測モデルを構築することで、人流データを用いて足元の消費動向をほぼリアルタイムで予測できる。
(3) 新型コロナウイルス感染再拡大の影響が懸念される。本モデルを用いた予測結果によると、百貨店販売額は、12月は京都府、大阪府、兵庫県でいずれも伸びは前月とほぼ横ばいだが、1月には大幅に減少することが予測される。また、飲食料品及びドラッグストア販売額は、関西2府4県いずれも12月は前月より上昇するが、1月に大幅に減少することが予測される。
なお、予測精度については概ね高いといえる。しかし、説明変数の選択も含めて予測精度改善の余地もあることから、今後の課題としたい。

関連論文

  • 稲田 義久

    Kansai Economic Insight Monthly Vol.119-景気は足下、先行きともに改善を見込む:海外経済減速による景気下振れリスクが懸念材料-

    経済予測

    経済予測 » Monthly Report(関西)

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 豊原 法彦 / 郭 秋薇 / 盧 昭穎 / 野村 亮輔 / 吉田 茂一 / 今井 功 / 山守 信博

    ABSTRACT

    ・ 関西の景気は足下改善、先行きも改善を見込む。足下、生産は大幅減産し、弱い動きとなった。雇用環境は持ち直しの動きに一服感がみられる一方で、消費・景況感は持ち直している。先行きは改善を見込むものの、欧米を中心とした海外経済減速による景気の下振れリスクに注意が必要である。
    ・ 1月の生産は2カ月ぶりに前月比低下。生産用機械や輸送用機械が大幅減産となり、中国ロックダウンの影響が大きかった22年5月以来の低水準となった。
    ・ 1月は失業率が低下したと同時に、就業者数の増加と非労働力人口の減少が見られた。雇用情勢は持ち直しの動きを維持している。なお、新規求人数はサービス業を中心に大幅に増加したことから、今後も人手不足感が続こう。
    ・ 12月の現金給与総額は22カ月連続の前年比増加。しかし、消費者物価指数の上昇傾向が続き、実質では10カ月連続の減少となった。今春闘で、多くの大手企業は労働組合の要求に応じて賃上げを実現した。ただし、賃上げが全体に波及するかは中小企業における動向が重要である。
    ・ 1月の大型小売店販売額は16カ月連続の前年比増加。うち、百貨店は高額品の好調とインバウンド需要の回復により11カ月連続の増加。スーパーは食料品の値上げもあり4カ月連続の増加となった。
    ・ 1月の新設住宅着工戸数は2カ月連続で前月比増加した。うち、マンションが好調で全体の増加に大きく寄与した。
    ・ 1月の建設工事出来高は13カ月連続の前年比増加で、伸びは2カ月連続で加速した。特に公共工事は22年3月以来の2桁の伸びとなった。また、2月の公共工事請負金額は2カ月連続で同増加となっている。
    ・ 2月の景気ウォッチャー現状判断及び先行き判断DIはいずれも3カ月連続の前月比改善。インバウンド需要の増加や感染状況の落ち着きにより、ホテルや百貨店などを中心に景況感が改善した。
    ・ 1月は春節の影響を受けたため貿易収支は赤字となったが、2月は2カ月ぶりの黒字。ただし、1-2月を均してみれば赤字にとどまった。
    ・ 2月の関空への外国人入国者数は36.9万人、3カ月連続で30万人超の水準となった。中国人客の戻りが依然遅れていることもあり、回復のペースは緩慢。
    ・ 1-2月期の中国経済は、生産の回復が加速したことに加え、個人消費も対面型サービスを中心に大幅に改善した。しかし、民間企業が先行き不安を払拭し雇用拡大に踏み込むまで、景気回復のカギとなる雇用の改善は見込めない。そのため、1-3月期の景気回復が持続可能となるかは民間企業次第である。

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  • 稲田 義久

    Kansai Economic Insight Quarterly No.63 -内需を中心に緩やかな持ち直しの動き続く:物価高と世界経済の行方が攪乱要因-

    経済予測

    経済予測 » Quarterly Report(関西)

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 入江 啓彰 / 郭 秋薇 / 盧 昭穎 / 野村 亮輔 / 吉田 茂一

    ABSTRACT

    1. 2022年10-12月期の関西経済は、前期から引き続き緩やかに持ち直した。経済活動の正常化に伴い、生産、雇用、公共投資など内需を中心に幅広い項目で堅調な回復が見られた。ただし先行きについては、物価高が家計や企業に影響するほか、米欧中経済の動向が攪乱要因となるなど、力強い回復は見込みづらい。
    2. 家計部門は、物価高が回復の足かせとなっている部分もあるが、各種行動制限が解除となるなど経済活動の正常化により、概ね持ち直している。大型小売店販売、所得・雇用環境、住宅市場など堅調に推移している。センチメントや実質賃金などこれまで低調だった指標でも底打ちの兆しが見られる。
    3. 企業部門は、経済活動が正常化に向かっていることから、概ね緩やかに持ち直した。生産は一進一退で伸び悩んでいるものの、景況感は非製造業を中心に持ち直しており、設備投資計画についても積極的な姿勢がうかがえる。
    4. 対外部門は、財の貿易については輸出・輸入ともに前年を上回ったものの、増加幅は縮小した。輸出を地域別に見ると、米国向けは堅調だったが、EU向けはやや伸び悩み、中国向けは停滞した。関空経由の外国人入国者数・百貨店免税売上などインバウンド需要については、水際対策が緩和されたことで急回復した。
    5. 公的部門では、全国に比べて堅調な動きが続いている。
    6. 関西の実質GRP成長率を2022年度+1.3%、23年度+1.3%、24年度+1.6%と予測。19年度・20年度の2年連続のマイナス成長から、21年度以降は内需が成長を牽引して1~2%のプラス成長が続く。コロナ禍前のGRP水準を回復するのは24年度となり、前回予測に比べて後ずれする。
    7. 成長に対する寄与度を見ると、民間需要は22年度+1.8%ポイント、23年度+1.0%ポイント、24年度+1.3%と成長の牽引役となる。また公的需要も22年度から24年度にかけていずれも+0.2%ポイントと成長を下支える。域外需要は22年度-0.7%ポイントと成長を押し下げる。23年度以降はプラスの寄与となるが、小幅にとどまる。
    8. 実質GRP成長率について前回予測(22年12月19日公表)と比較すると、22年度は-0.19%ポイントの下方修正、23年度は+0.11%ポイントの上方修正としている。24年度は大きな修正はない。
    9. 今号のトピックスは「大阪・関西万博と拡張万博の経済効果:アップデート」として、新たな消費需要の想定に基づく経済効果を試算した。生産誘発額は、基準ケースの2.4兆円に対して、日帰り客数や宿泊数の増加を織り込んだ拡張万博ケースでは2.9兆円となる。

     

    ※説明動画は下記の通り4つのパートに分かれています。

    ①01’01”~02’35” :Executive summary

    ②02’36”~36’39”:第142回「景気分析と予測」<強まるインフレと海外経済減速の影響>

    ③36’40”~53:02:Kansai Economic Insight Quarterly No.63<景気は足下、先行きともに改善を見込む:消費者物価上昇と海外経済減速のリスクに注意>

    ④53’03”~58’54”:トピックス<大阪・関西万博と拡張万博の経済効果:アップデート>

    ※要旨およびフルレポートは以下にてご覧ください

     

  • 稲田 義久

    Kansai Economic Insight Monthly Vol.118-景気は足下、先行きともに改善を見込む:消費者物価上昇と海外経済減速のリスクに注意-

    経済予測

    経済予測 » Monthly Report(関西)

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 豊原 法彦 / 郭 秋薇 / 盧 昭穎 / 野村 亮輔 / 吉田 茂一 / 今井 功 / 山守 信博

    ABSTRACT

    ・関西の景気は足下、先行きともに改善を見込む。足下、生産は3カ月ぶりの増産だが、回復のペースは遅い。雇用環境は持ち直しの動きに一服感がみられる一方で、消費は百貨店を中心に持ち直しが続く。先行きは消費者物価の上昇と海外経済減速による景気下押しリスクに注意が必要である。
    ・COVID-19の新規陽性者数は減少が続く。3月13日よりマスクの着用は個人の判断に委ねられ、5月8日から感染症法上の分類が5類へ変更となる。
    ・12月の生産は3カ月ぶりの前月比上昇だが、小幅増産にとどまった。2022年平均では2年ぶりのマイナスとなり、依然としてコロナ禍前の水準を回復できていない。
    ・22年通年では、失業率は3年ぶりに低下したと同時に、労働力人口と就業者数はともに増加し、雇用の回復は順調に進んだ。しかし、足下12月に失業者数の減少が見られたが、10‐12月期を均してみると、失業率の上昇及び労働力人口と就業者数の減少が同時に見られ、雇用の回復に一服感が出ている。
    ・11月の現金給与総額は21カ月連続の前年比増加。しかし、消費者物価指数の上昇傾向が続き、実質では9カ月連続の減少となった。ただし、一部の企業で賃上げの動きが見られ、賃上げの機運が高まりつつある。今後の実質賃金の動向に注視を要する。
    ・12月の大型小売店販売額は15カ月連続の前年比増加。うち、百貨店は高額品の好調とインバウンド需要の回復により10カ月連続の増加。スーパーは食料品の値上げもあり3カ月連続の増加となった。
    ・12月の新設住宅着工戸数は2カ月ぶりに前月比増加した。うち、貸家と分譲が全体の増加に寄与した。
    ・12月の建設工事出来高は12カ月連続の前年比増加で全国に比して高い伸びが続いている。関西、全国ともに民間工事は前月から減速、公共工事は加速した。また、1月の公共工事請負金額は3カ月ぶりに増加に転じた。
    ・1月の景気ウォッチャー現状判断DIは2カ月連続で前月比改善した。また先行き判断DIも2カ月連続で改善。インバウンド需要増加の影響もあり、百貨店やホテルなどが好調であった。
    ・1月の貿易収支は5カ月ぶりの赤字。中国の春節時期のずれの影響もあり、輸出は23カ月ぶりに減少し、一方、輸入は24カ月連続で増加したためである。
    ・1月の関空への外国人入国者数は37.9万人。2カ月連続で30万人を超えたが、訪日中国人客の回復が遅れており回復のペースは緩やかである。
    ・1月の中国経済は、経済活動の再開と春節連休による旅行機運の高まりが景況感の回復に繋がり、消費者物価指数からも対面型サービスを中心に個人消費は持ち直しつつあることが窺える。ただし、新規貯蓄が高水準で、消費に慎重な姿勢が続いているため、1-3月期の景気は大きな改善が見込まれない。

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  • 稲田 義久

    Kansai Economic Insight Monthly Vol.117-景気は足下、先行きともに改善を見込む:不確実性上昇に伴う景気下押しリスクに注意-

    経済予測

    経済予測 » Monthly Report(関西)

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 豊原 法彦 / 郭 秋薇 / 盧 昭穎 / 野村 亮輔 / 吉田 茂一 / 今井 功 / 山守 信博

    ABSTRACT

    ・関西の景気は足下、先行きともに改善を見込む。足下、生産は2カ月連続の減産で、弱い動きが続く。雇用環境は持ち直しの動きに一服感がみられる一方で、消費・景況感は持ち直しが続く。先行きは物価や海外経済の見通し不確実性上昇に伴う景気下押しリスクに注意が必要である。
    ・COVID-19の新規陽性者数は1月11日をピークに減少に転じた。また政府は感染症法上の分類を今春に変更する意向を示した。
    ・11月の生産は2カ月連続の前月比低下。特に電子部品・デバイスは3カ月連続で減産しており、全国と比して弱い動きとなっている。
    ・11月は失業者数が増加するとともに、労働力人口と就業者数はいずれも減少した。また、就業率も2カ月連続で低下し、コロナ禍前の水準を下回っている。雇用の回復は停滞している。
    ・10月の関西2府4県の現金給与総額は、名目で20カ月連続の前年比増加。しかし、消費者物価指数の上昇傾向が続き、実質では8カ月連続の減少となった。
    ・11月の大型小売店販売額は14カ月連続の前年比増加。うち、百貨店は高額品の好調とインバウンド回復により9カ月連続の増加。スーパーは食料品の値上げもあり2カ月連続の増加となった。
    ・11月の新設住宅着工戸数は2カ月ぶりに前月比減少。建設費高騰と円安の影響もあり、分譲と持家が低調だった。
    ・11月の建設工事出来高は11カ月連続の前年比増加で全国に比して高い伸びが続いているが、公共工事・民間工事ともに前月から減速となった。また、12月の公共工事請負金額は2カ月連続で同減少となっている。
    ・12月の景気ウォッチャー現状判断DIは5カ月連続で前月比改善した。また先行き判断DIも2カ月連続で改善。国内旅行需要やインバウンド需要が回復しつつあることから、関連するサービス業が改善した。
    ・12月の貿易収支は4カ月連続の黒字。エネルギー価格の落ち着きや円安修正の影響で、輸入額の伸びは前月から大幅に減少した。このため黒字幅は前月から拡大した。
    ・12月の関空への外国人入国者数は33.1万人とコロナ禍前の5割程度まで回復。22年通年では水際対策の大幅緩和もあったが、年前半の低調により88.5万人にとどまった。
    ・中国の10-12月期実質GDPは前年同期比+2.9%と前期から減速した。その結果、22年通年の経済成長率は+3.0%にとどまり、政府の目標成長率(5.5%)を大幅に下回った。1月に4年ぶりに行動制限のない春節休暇を控え、消費の回復が期待されている一方、更なる感染拡大による混乱が懸念されている。

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  • 稲田 義久

    Kansai Economic Insight Monthly Vol.116-景気は足下、先行きともに改善を見込む:物価の高止まりと海外経済減速がリスク要因-

    経済予測

    経済予測 » Monthly Report(関西)

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 豊原 法彦 / 郭 秋薇 / 盧 昭穎 / 野村 亮輔 / 吉田 茂一 / 今井 功 / 山守 信博

    ABSTRACT

    ・関西の景気は足下、先行きともに改善を見込む。足下、生産は減産で、回復のペースは遅い。雇用環境・消費・景況感は持ち直しが続く。先行きは物価の高止まりに加え、海外経済減速がリスク要因となろう。
    ・COVID-19の新規陽性者数は12月中旬より再度増加傾向に転じた。また6都県においてインフルエンザ流行期入り。ツインデミック(同時流行)が現実となりつつある。
    ・10月の生産はプラスチック製品や電子部品・デバイスなどの減産もあり、3カ月ぶりの前月比低下。7-9月平均比小幅上昇だが、回復のペースは遅い。
    ・10月は失業者数が増加するとともに、労働力人口と就業者数はいずれも減少に転じた。また、就業率も前月より微減した。雇用の回復は一服したとみられる。なお、新規求人数が大幅に増加したことから、今後も人手不足感が続こう。
    ・9月の関西2府4県の現金給与総額は、名目で19カ月連続の前年比増加。一方、消費者物価指数の上昇により、実質では7カ月連続の減少となった。物価高は当面続くと見込まれるため、実質賃金はマイナスで推移し続けるだろう。
    ・10月の大型小売店販売額は13カ月連続の前年比増加。うち、百貨店は高額品と秋冬衣料品の販売が好調で8カ月連続の増加。スーパーは食料品の値上げもあり3カ月ぶりの増加となった。
    ・10月の新設住宅着工戸数は2カ月ぶりに前月比増加。一方、建設資材の高騰による価格転嫁が進んでおり、先行きは住宅購入意欲の低下が懸念される。
    ・10月の建設工事出来高は10カ月連続の前年比増加と全国と比して堅調。公共工事・民間工事ともに増加基調が続いている。一方、11月の公共工事請負金額は2カ月ぶりに同減少している。
    ・11月の景気ウォッチャー現状判断DIは4カ月連続で前月比改善した。また先行き判断DIも2カ月ぶりの改善。国内旅行需要やインバウンド需要の増加もあり、サービス関連を中心に回復した。
    ・11月の貿易収支は3カ月連続の黒字。輸出の伸びが前月より加速し、輸入の伸びが減速したため。1月からの累計をみれば、輸出入額ともに19兆円を超えており、年別過去最高額を更新している。
    ・11月の関空への外国人入国者数は24万7,090人と前月から倍増。水際対策の大幅緩和が継続されていることもあり外国人入国者数は着実に回復が進む。
    ・11月の中国経済は、感染急拡大に応じて多くの地域で行動制限が強化された影響もあり、生産回復の減速と個人消費の大幅な減少が見られた。12月にゼロコロナ政策の大幅な緩和など明るい動きもあるが、先行き不透明感は依然として強いため、10-12月期の景気は悪化するだろう。

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  • 稲田 義久

    Kansai Economic Insight Quarterly No.62 -GDP2次速報を反映し関西経済予測を改定 :22年度+1.5%、23年度+1.2%、24年度+1.5%-

    経済予測

    経済予測 » Quarterly Report(関西)

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 入江 啓彰 / 郭 秋薇 / 盧 昭穎 / 野村 亮輔 / 吉田 茂一

    ABSTRACT

    1. 2022年7-9月期の実質GDP成長率(2次速報値)は、前期比-0.2%(同年率-0.8%)となり、1次速報の前期比-0.3%(同年率-1.2%)から上方修正された。民間在庫変動・政府消費・輸出が上方修正、個人消費・住宅投資・公共投資が下方修正となった。なお過去値が遡及改定されたことにより、コロナ前のピークは2019年7-9月期となった。22年7-9月期の実質GDPは、3年前のコロナ前ピーク時の水準を約10兆円下回っている。
    2. GDP2次速報を反映し関西経済予測を改定。関西の実質GRP成長率を2022年度+1.5%、23年度+1.2%、24年度+1.5%と予測する。19年度・20年度の2年連続のマイナス成長から、21年度以降は1%台のプラス成長が続く。回復の勢いは弱く、コロナ禍前のGRP水準を回復するのは23年度までかかる。前回予測(11月29日公表)に比べて、22年度は-0.3%ポイントと下方修正、23年度・24年度はそれぞれ+0.1%ポイント上方修正とした。
    3. 実質GRP成長率に対する寄与度を見ると、民間需要が2022年度+1.7%ポイント、23年度+0.9%ポイント、24年度+1.2%と成長の牽引役となる。また公的需要も22年度から24年度にかけていずれも+0.2%ポイントと成長を下支える。域外需要は、22年度は-0.4%ポイントと成長を押し下げ、23年度・24年度もそれぞれ+0.1%ポイントと成長に対する貢献は大きくない。

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  • 稲田 義久

    Kansai Economic Insight Quarterly No.61 -持ち直しの動き続くも、景気後退への警戒感強まる:懸念材料は海外経済の減速と物価高-

    経済予測

    経済予測 » Quarterly Report(関西)

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 入江 啓彰 / 郭 秋薇 / 盧 昭穎 / 野村 亮輔 / 吉田 茂一

    ABSTRACT

    1. 2022年7-9月期の関西経済は、前期に続き緩やかに持ち直した。COVID-19感染第7波に対して行動制限措置は取られず、前年に比べて経済活動が正常化した。また前期に発生した中国のロックダウンの影響が、今期は幾分落ち着いた。しかし一方で、海外経済の減速懸念や物価高により景気後退への警戒感が強まっている。
    2. 家計部門は、持ち直している部分もあるが、物価高が回復の足かせとなっている。各種行動制限が解除となったことで百貨店販売は回復し、雇用環境も改善している。しかしながら、食料品やエネルギー価格など消費者物価の高騰により、センチメントや実質賃金などは弱い動きとなっている。
    3. 企業部門は、経済活動が正常化に向かっていること、また中国・上海のロックダウンの影響が落ち着いたことから、概ね緩やかに持ち直した。生産は幾分持ち直し、また設備投資計画についても積極的な姿勢がうかがえる。一方、原材料価格の高騰が続いていること、海外経済の減速などを警戒する向きもあり、景況感については足踏み状態にある。
    4. 対外部門は、財については輸出・輸入とも増加基調が続いている。特に輸入の伸びが大きく、貿易収支は赤字に転じた。輸出を地域別に見ると、米国向けおよびEU向けは堅調だったが、中国向けは鈍化した。インバウンド需要などのサービス輸出については、入国規制の緩和により、関空経由の外国人入国者数・百貨店免税売上で大幅な改善が見られる。
    5. 公的部門は、引き続き全国に比べて堅調に推移している。
    6. 関西の実質GRP成長率を2022年度+1.8%、23年度+1.1%、24年度+1.4%と予測。19年度・20年度の2年連続のマイナス成長から、21年度以降は1%台のプラス成長が続く。しかしコロナ禍からの回復としては力強さに欠く。日本経済予測と回復経路に大きな違いはない。
    7. 成長に対する寄与度を見ると、民間需要が22年度+2.3%ポイント、23年度+0.8%ポイント、24年度+1.2%と成長の牽引役となる。また公的需要も22年度から24年度にかけていずれも+0.2%ポイントと成長を下支える。域外需要は、22年度は-0.6%ポイントと成長を押し下げ、23年度以降も成長に対する貢献は大きくない。
    8. 今号のトピックスは「関西各府県GRPの早期推計」と「中国経済減速リスクと関西経済へのインパクト」を紹介する。後者の分析結果によると、中国の実質GDPが1%下落したと仮定すると、それに伴い関西の実質輸出が0.462%減少し、関西の実質GRPは0.12~0.13%減少する。

     

    ※説明動画は下記の通り4つのパートに分かれています。

    ①00’00”~02’56” :Executive summary

    ②02’57”~34’42”:第140回「景気分析と予測」<世界経済の減速を反映し、23年度成長率を下方修正に – 実質GDP成長率予測:22年度+1.7%、23年度+1.2%、24年度+1.4% ->

    ③34’43”~47:52:Kansai Economic Insight Quarterly No.61<持ち直しの動き続くも、景気後退への警戒感強まる:懸念材料は海外経済の減速と物価高>

    ④47’53”~53’33”:トピックス<「関西各府県GRP早期推計」「中国経済減速リスクと関西経済へのインパクト」>

    ※要旨およびフルレポートは以下にてご覧ください

  • 稲田 義久

    Kansai Economic Insight Monthly Vol.115-景気は足下、先行きともに改善を見込む: 民間消費は持ち直しも、リスクは消費者物価加速と中国経済減速-

    経済予測

    経済予測 » Monthly Report(関西)

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 豊原 法彦 / 郭 秋薇 / 盧 昭穎 / 野村 亮輔 / 吉田 茂一 / 今井 功 / 山守 信博

    ABSTRACT

    ・関西の景気は足下、先行きともに改善を見込む。足下、生産は増産だが、回復のペースは遅い。雇用環境・消費・センチメントは持ち直しが続く。サービス消費を中心に引き続き改善を見込むが、先行きは消費者物価加速と中国経済減速による景気の下押しリスクに注意が必要である。
    ・COVID-19の新規陽性者数は11月に入り増加傾向が顕著である。またインフルエンザの感染者数もコロナ禍である昨年、一昨年と比べ増加してきており、同時感染に注意が必要である。
    ・9月の生産は輸送機械などの増産もあり、2カ月連続の前月比上昇。結果、7-9月期は2四半期ぶりの前期比上昇だが、回復のペースは全国に比して遅い。
    ・9月の完全失業率は3カ月連続で改善。就業率もコロナ禍前の水準を超えている。また、有効求人倍率は6カ月連続で改善した。7‐9月期は、失業率は2四半期ぶりに改善し、就業率と有効求人倍率も3四半期連続で上昇した。総じて、雇用情勢は改善傾向にある。
    ・8月の関西2府4県の現金給与総額は、名目で18カ月連続の前年比増加。一方、消費者物価指数の上昇により、実質では6カ月連続の減少となった。物価高は当面続くと見込まれるため、実質賃金はマイナスで推移し続けるだろう。
    ・9月の大型小売店販売額は12カ月連続の前年比増加。うち、百貨店は前年の営業時間短縮や行動制限の反動に加え、高額品と秋冬衣料品の販売が好調で7カ月連続の増加。一方、スーパーは2カ月連続の減少となった。
    ・9月の新設住宅着工戸数は2カ月ぶりの前月比減少だが、7-9月期は2四半期連続で前期比増加した。建設資材の高騰による価格転嫁が進んでおり、先行き売上への影響が懸念される。
    ・9月の建設工事出来高は9カ月連続の前年比増加。うち、公共工事出来高は15カ月連続の同増加。公共工事・民間工事ともに増加基調が続いている。また、10月の公共工事請負金額も2カ月ぶりに同増加した。
    ・10月の景気ウォッチャー現状判断DIは3カ月連続で前月比改善した。全国旅行支援事業の開始もありサービス関連を中心に回復。一方、先行き判断DIは物価高による消費への悪影響が懸念されることから3カ月ぶりに悪化した。
    ・10月の貿易収支は2カ月連続の黒字だが、黒字幅は前月から縮小。輸出入ともに過去最高額を更新したものの、輸出の伸びは前月より減速し、輸入の伸びが加速したため。
    ・10月の関空への外国人入国者数は前月から大幅増加し単月で10万人を超える水準まで回復。入国者数の上限撤廃など水際対策の大幅緩和が影響した。
    ・10月の中国経済は、COVID-19の感染拡大に応じて一部の都市で行動制限が厳しくなった影響もあり、生産の回復が減速したことに加えて、個人消費は減少した。11月に感染は急激に拡大しており、今後多くの都市で厳しい行動制限が課されることが予想されるため、10-12月期の景気は悪化するだろう。

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  • 稲田 義久

    Kansai Economic Insight Monthly Vol.114-景気は足下、先行きともに改善を見込む: 対面型サービス消費の持ち直し期待も、物価高の加速が懸念材料-

    経済予測

    経済予測 » Monthly Report(関西)

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 豊原 法彦 / 郭 秋薇 / 盧 昭穎 / 野村 亮輔 / 吉田 茂一 / 今井 功 / 山守 信博

    ABSTRACT

    ・関西の景気は足下、先行きともに改善を見込む。足下、生産は増産だが、回復のペースは弱い。雇用環境・消費・センチメントは持ち直しが続く。先行きは全国旅行支援事業の開始やインバウンド需要回復の期待もあり対面型サービス消費を中心に改善を見込むが、物価高の加速が懸念材料である。
    ・COVID-19の新規陽性者数は減少が続いた後、足下で増加傾向へ転じている。政府による全国旅行支援事業や入国上限撤廃により対面型サービス消費の回復は期待できるものの、持続的な医療体制へのケアは必要である。
    ・8月の生産は電気・情報通信機械などの増産もあり、2カ月ぶりの前月比上昇。7-8月平均は4-6月平均比上昇だが、回復ペースは全国に比して緩慢である。
    ・8月の完全失業率は2カ月連続で改善。就業率もコロナ禍前の水準を超えている。また、有効求人倍率は5カ月連続で改善した。総じて、雇用情勢は回復基調を維持している。
    ・7月の関西2府4県の現金給与総額は、名目で17カ月連続の前年比増加。一方消費者物価指数の上昇により、実質では5カ月連続の減少となった。物価高は当面続くと見込まれるため、実質賃金はマイナスで推移し続けるだろう。
    ・8月の大型小売店販売額は11カ月連続で前年比増加。うち、百貨店は前年の営業自粛に対する反動や、ラグジュアリー商品の値上げ前の駆け込み需要の影響もあり6カ月連続の増加。一方、スーパーは2カ月ぶりの減少となった。
    ・8月の新設住宅着工戸数は2カ月ぶりの前月比増加。一方、建設資材の価格が高騰しており、住宅価格への転嫁が進んでいることに注意が必要である。
    ・8月の建設工事出来高は8カ月連続の前年比増加。うち公共工事出来高は14カ月連続の同増加。一方、9月の公共工事請負金額は2カ月ぶりに同減少した。
    ・9月の景気ウォッチャー現状判断DIは2カ月連続の前月比改善。新規陽性者数が減少したことで、サービス関連が改善した。先行き判断DIは全国旅行支援事業の開始やインバウンド需要回復への期待から2カ月連続で改善した。
    ・9月の貿易収支は3カ月ぶりの黒字だが、7-9月期でみれば2014年7-9月期以来32四半期ぶりの赤字となった。5四半期連続で輸入の増加幅が輸出の増加幅を上回る状況が続いている。
    ・9月の関空への外国人入国者数は前月から増加しコロナ禍が始まった20年3月の水準を上回った。7-9月期では水際対策緩和の進捗もあり10万人を超える水準となった。
    ・中国の7-9月期実質GDPは前年同期比+3.9%と前期から加速した。しかし、1‐9月期の前年同期比は+3.0%にとどまり、目標成長率(5.5%)の達成は難しいとみられる。ゼロコロナ政策と不動産市場の低迷は今後も景気回復の足かせとなるため、10-12月期の景気は大きな改善が見込まれない。

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  • 稲田 義久

    Kansai Economic Insight Monthly Vol.113-景気は足下、先行きともに改善を見込む: 感染状況は落ち着きつつあるも物価高が依然懸念材料-

    経済予測

    経済予測 » Monthly Report(関西)

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 豊原 法彦 / 郭 秋薇 / 野村 亮輔 / 吉田 茂一 / 今井 功 / 山守 信博

    ABSTRACT

    ・関西の景気は足下、先行きともに改善を見込む。足下、生産は減産だが、雇用環境・消費・センチメントは持ち直している。先行きは感染状況の落ち着きもあり改善を見込むが依然物価高が懸念材料である。
    ・COVID-19の新規陽性者数は全国、関西ともピークアウトし減少傾向がつづく。政府の対応も陽性者の全数把握の見直しが議論され、入国者への水際対策の緩和も進み、新たなステージに移行しつつある。
    ・7月の生産は化学(除.医薬品)や電気・情報通信機械などの減産もあり、2カ月ぶりの前月比低下。4-6月平均比では小幅上昇にとどまっており全国と比して回復のペースは遅い。
    ・7月は失業率が小幅に低下し、就業者数と労働力人口はいずれも増加した。また、有効求人倍率は4カ月連続で改善した。総じて、雇用情勢は改善傾向を維持している。
    ・6月の関西2府4県の現金給与総額は、名目で16カ月連続の前年比増加。一方消費者物価指数の上昇により、実質では4カ月連続の減少となった。物価高は当面続くと見込まれるため、実質賃金はマイナスで推移し続けるだろう。
    ・7月の大型小売店販売額は10カ月連続で前年比増加。うち、百貨店は猛暑やクリアランスセール等の影響もあり5カ月連続の増加。スーパーは4カ月ぶりの増加だが微増にとどまった。
    ・7月の新設住宅着工戸数は2カ月ぶりの前月比減少。建設資材の価格が高騰しており、住宅価格への転嫁が進んでいることに注意が必要である。
    ・7月の建設工事出来高は7カ月連続の前年比増加。うち公共工事出来高は13カ月連続の同増加。一方、8月の公共工事請負金額は前月から横ばいとなった。
    ・8月の景気ウォッチャー現状判断DIは3カ月ぶりに前月比改善だが、新規陽性者数が高水準で推移していたこともあり、改善のペースは緩慢。先行き判断DIは感染状況が落ち着くとの期待もあり3カ月ぶりの改善となった。
    ・8月の貿易収支は2カ月連続の赤字となった。輸出入とも伸びは前月から減速したが、輸入の伸びが高水準で推移したためである。
    ・8月の関空への外国人入国者数は前月から増加したものの、依然コロナ禍が始まった20年3月の水準にとどまっている。今後、入国者数の上限撤廃や個人旅行受け入れ再開などの水際対策の一層の緩和が望まれよう。
    ・8月の中国経済は、生産と個人消費の回復のペースはいずれも前月から加速した。しかし、不動産市場は依然低迷し、ゼロコロナ政策による行動制限はサービス産業など内需を下押しした。先行きもこれらの下押し要因による影響が続き、7-9月期の景気は大きな改善が見込めない。

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