研究成果

research

緊急事態宣言再発令の関西経済への影響 -高頻度・ビッグデータを用いた振り返りと分析-

Abstract

政府は2021年1月7日に1都3県に対して緊急事態宣言を再発令した。当初、対象地域のGDPシェアは33.2%であったが、1月13日には7府県が加えられたことで、シェアは約60%に拡大した。ほとんどの大都市圏が含まれたことから、経済全体への影響は深刻度を増している。関西でも大阪府、京都府、兵庫県がその対象となっており、経済的な影響が懸念されている。
そこで、本稿では、高頻度・ビッグデータを用いて緊急事態宣言の経済的影響を振り返り、そこで得られた知見をもとに、今回の緊急事態宣言再発令が関西経済に与える影響を分析した。結果は以下のように要約できる。

 

1. 緊急事態宣言により、人々は行動変容を迫られた。日次ベースの消費支出額は、4月7日以降前年比マイナス幅が拡大し、5月初旬を底として緩やかに縮小した。カテゴリー別では、半耐久財やサービスへの支出が大きく減少する一方、非耐久財や耐久財では増加がみられた。

 

2. 人流(経済活動)への影響では、前回は小売店・娯楽施設、公共交通機関、職場で人出が大きく減少した。一方、食料品店・薬局は大幅な減少は見られなかった。今回と前回を比べると、今回の方が公共交通機関、小売店・娯楽施設、職場で人出の戻りが観察できる。

 

3. 前回宣言時の経験と足下の人流の動向を踏まえ、緊急事態宣言再発令による家計消費減少額を試算した。基本ケース(1月14日~2月7日)では、今回緊急事態宣言の対象である大阪府・兵庫県・京都府の2府1県の消費減少額は1,858億円。関西2府4県では2,233億円となり、2020年度関西2府4県の名目GRPを0.3%程度追加的に引き下げることとなる。

 

4. 今回の再発令が経済に与える影響(基本ケース)は前回の4分の1強とみられる。しかし、コロナ禍によりサービス業を中心に弱い動きが続いている中、関西経済にとって大きな下押し圧力となる。結果、コロナ禍からの回復過程に水を差すことになろう。

本文

はじめに

APIRの最新の予測(第131回)によれば、実質GDPがコロナ禍以前の水準(2019年10-12月期)に戻るのは22年4-6月期、コロナ禍以前のピーク(19年7-9月期)に戻るのは23年以降とみている。図表0-1は日本経済の回復パターンを示したものであるが、このベースライン予測には今回の緊急事態宣言再発令によるマイナスの影響は反映されていない。

 

 

本稿の目的は、高頻度・ビッグデータを用いて緊急事態宣言の経済的影響を振り返り、そこで得られた知見をもとに、今回の緊急事態宣言再発令の関西経済に与える影響を分析することにある。

昨年4月7日~5月25日において、COVID-19感染拡大を防遏するために緊急事態宣言が発令された。それは、感染拡大をおさえるため経済成長を犠牲にするという壮大な社会実験といえよう。その実験結果及びその後のデータは、高頻度・ビッグデータの形で利用可能となっている。具体的には、家計消費や人流の日次データである。これらを用いて、緊急事態宣言の影響を詳細に分析し、そこから含意を得ようというものである。

以下、本稿は次のような構成をとる。1.では緊急事態宣言をめぐる chronology を確認しながら、緊急事態宣言による家計消費と人流に対する影響を日次ベースのデータを用いて確認する。2.では緊急事態宣言により家計がどの程度不要不急消費を削減したかを推計する。3.では 2.で得られた知見をもとに、今回の緊急事態宣言再発令の関西経済へ影響を分析する。

1. 緊急事態宣言による家計消費及び人流への影響

本節では前回発令された緊急事態宣言(2020年4月7日~5月25日)に関する chronology を整理しその経済的影響を振り返る。本稿の特徴は高頻度データ及びビッグデータを用いて緊急事態宣言の影響を明らかにすることにある。具体的に使用するデータは、総務省『家計調査』の日別消費支出と Google 社「コミュニティ モビリティ レポート」の人流データであり、いずれも日次ベースのデータである。

1-1. 緊急事態宣言を巡る chronology

図表1-1-1は、2度に渡る緊急事態宣言の経過を chronology 風に整理し、あわせて緊急事態宣言対象地域の経済規模を示したものである。

2020年4月7日に7都府県に対し緊急事態宣言が発令され、対象地域の域内総生産(GRP)の国内総生産(GDP)に占めるシェアは47.6%であった。16日には全都道府県に対し発令されたことで影響が拡大し(GDPシェア:100%)、5月4日には緊急事態宣言期間が5月末まで延長された。14日に政府は感染状況が落ち着いている39県の緊急事態宣言をまず解除した。これにより対象地域は8都道府県となり、GDPシェアは49.5%まで低下した。更に21日に京都府、大阪府、兵庫県が解除され(GDPシェア:36.6%)、25日には全国的に解除された。

前回の緊急事態宣言解除から約半年経った2020年11月以降、COVID-19の感染再拡大(第3波)を受け、政府は21年1月7日に1都3県に対して緊急事態宣言を再発令した。当初、対象地域のGDPシェアは33.2%であったが、13日には7府県が加えられたことで、シェアは約60%に拡大した。ほとんどの大都市圏が含まれたことから、経済全体への影響は深刻度を増している。

 

 

前回と今回の緊急事態宣言では、対象地域のみならず、制限の内容にも違いがある(図表1-1-2)。具体的には、休校措置は前回小中高に対して行われたが、今回は行われない。また、休業要請について、前回は遊興施設、運動・遊戯施設、劇場、商業施設などに対して行われた。しかし、今回は施設に対する休業要請は行われておらず、営業時間の短縮要請が中心となっている。

 

1-2. 緊急事態宣言の経済的影響:日次データでみた消費の動態

以下では昨年の緊急事態宣言期間及びその後の消費動態を日次ベースで確認する。図表1-2-1は総務省の『家計調査』の品目分類による日別支出(二人以上世帯、7日移動平均)の前年比の推移を示している。緊急事態宣言(4月7日~5月25日)により、人々は行動変容を迫られた。4月7日以降マイナス幅は拡大し、5月初旬を底として以降緩やかにマイナス幅は縮小していった。

 

 

次に図表1-2-2ではカテゴリー別の財・サービス支出の前年比の推移を示している。緊急事態宣言期間では、衣服やカバンなどの半耐久財やサービスの伸びが大きく減少していることがわかる。

一方、飲食料品などの非耐久財は内食需要などからプラスで推移しており、耐久財についてはテレワーク拡大によるパソコン需要や巣ごもり消費によるTV需要の高まりがみられる。また特別定額給付金支給の影響もあり、6月に入り支出全般が回復する局面がみられる。

 

 

1-3. 緊急事態宣言の経済的影響:月次データでみた消費の動態

図表1-3は緊急事態宣言時期を含む4~6月の消費動態を整理したものである。緊急事態宣言時期に絞れば、家計消費支出計は前年比-15.6%減少した。うち、財の支出は同-1.2%減だが、サービス支出は同-49.9%大幅減少となった。また、財支出のうち非耐久財は内食需要の影響もあり同+6.7%増加したが、不要不急の消費が多く含まれる半耐久財は同-36.7%大幅減少した。一方、巣ごもり消費やテレワークの拡大により、TVやパソコンなどの耐久財は同+8.8%増加している。

 

 

1-4. 人流への影響

COVID-19の家計消費への影響と同様に人流(経済活動)への影響をみていく。そのためには、Google 社の「コミュニティ モビリティ レポート」が有用である。このデータでは、各カテゴリー(①小売店・娯楽施設、②食料品店・薬局、③公園、④公共交通機関、⑤職場、⑥住居)に分類された場所への訪問者(またはその場所に滞在した時間)が曜日別基準値と比べてどのように変化したかを示している。

図表1-4-1では、6つのカテゴリーから緊急事態宣言の影響を受けるものを選んでいる。うち、小売店・娯楽施設、公共交通機関、職場では前回の緊急事態宣言期間中に人出が大きく減少していることがわかる。一方で、食料品店・薬局への人出は巣ごもり需要の高まりもあり、生活必需品購入のため人出の大幅な減少は見られない。

今回の緊急事態宣言再発令と前回を比較すれば、公共交通機関、小売店・娯楽施設、職場への人出は基準時点よりも減少しているが、人出の戻りが観察できる。一方、食料品店・薬局への人出は前回よりも減少幅が拡大しているようである。

 

 

月次ベースで前回と今回の緊急事態宣言の人流への影響(1月8日~22日)を比較すると、公共交通機関は11.8%ポイント(前回:-47.0%→今回:-35.2%)、小売店・娯楽施設への人出は 10.8%ポイント(前回:-31.5%→今回:-20.8%)、職場への人出は 8.8%ポイント(前回:-26.4%→今回:-17.6%)上昇し、いずれも前回よりも人出が戻っている。一方、食料品店・薬局は 4.1%ポイント(前回:-1.8%→今回:-5.9%)低下しており、人出は減少していることがわかる(図表 1-4-2)。

 

 

2. 緊急事態宣言による不要不急消費減少額の推計

筆者らは昨年5月、緊急事態宣言の発令を受けた関西各府県における家計消費の減少額を試算した。そこでは、家計が消費支出費目の中でも「不要不急消費」を削減すると想定していた。2.では、改めて不要不急消費の定義を確認するとともに、家計が昨年4月7日から5月25日までの緊急事態宣言下で、不要不急消費に該当する品目をどの程度減少させたか確認する。筆者らの関心は、同期間における実際の消費の減少額を通じて、家計がどの程度「行動変容」を行ったかを把握することにある。前回の緊急事態宣言の経験を踏まえ、今回の再発令によって、どの程度消費の減少が見込まれるか考察したい。

2-1. 推計のフロー

本稿で行う不要不急消費減少額の推計フローは以下のとおりである。図表2-1が示すように、最終的な不要不急消費減少額は、ベンチマークとなる家計消費額に、3つのパラメータ([1]不要不急消費の割合、[2]減少率、[3]期間)を乗じて計算される。2.ではこれらのパラメータについてそれぞれ説明し、3.でベンチマークとなる家計消費支出と関西における消費減少額の推計結果について述べる。

 

 

2-2. 家計消費に占める不要不急消費の割合

総務省『家計調査』では、各消費費目を「基礎的支出」と「選択的支出」の2つに分類している。

中でも「基礎的支出」は、主に食料、家賃、光熱費、保健医療サービスなどが含まれており、生活必需品と考えることができる。一方、「選択的支出」は家電をはじめとする教養娯楽用耐久財、被服、月謝などが含まれており、ぜいたく品とみなすことができる。

緊急事態宣言下では、家計はこれらの選択的支出の中から不要不急の消費を削減することとなる。

そこで、筆者らは『家計調査』の「収支項目分類表」を用いて、「1世帯当たり1か月間の日別支出」に記載されている500を超える品目の中から、不要不急の消費に該当する品目を抽出した。

2019年通年の財・サービス支出計に占める不要不急消費の割合(第1のパラメータ)を計算したところ、29.3%であった。問題は、家計消費支出の3割弱を占める不要不急消費が緊急事態宣言によって、実際にどの程度削減されたかである。

2-3. 不要不急消費額の減少率

ここでは、第2のパラメータである家計の不要不急消費額の減少率を確認する。1.で見たように、『家計調査』では日別の支出額が利用できる。そこで、緊急事態宣言が発令された4月7日から全国的に解除された5月25日までの49日間で、家計がどの程度不要不急消費を減少させたかを示したのが図表2-2である。これを見ると、前回の緊急事態宣言期間において、家計は不要不急消費額を41.6%減少させたことがわかる。減少率が大きかった品目を見ると、サービス支出のうち、鉄道運賃などの公共サービスが88.2%、旅行費などの娯楽関連が72.5%、外食は67.3%となっている。外出自粛に伴い、関連する家計消費が大幅に減少していることが確認できる。一方で、耐久財は巣ごもり需要の高まりにより+6.6%増加している。

 

 

今回の緊急事態宣言による不要不急消費減少額の推計にあたり、考慮すべき点がある。それは、前回の緊急事態宣言と今回を比べると、制限の内容が異なっているため、人々の行動が変化した可能性である。

まず、制限の内容について、前回は遊興施設や運動・遊戯施設、劇場、商業施設など幅広い業種を対象として休業要請が行われていた(前掲図表1-1-2を参照)。しかし、今回はクラスター(全国各地で報告されている感染者の集団)の多くが歓楽街や飲食店で発生していることから、飲食店への時短要請に絞った内容となっている。

次に、人々の行動が変化した可能性について、Google 社の「コニュミティ モビリティ レポート」から人流の動態を確認したところ、感染再拡大(第3波)の中にあっても、多くのカテゴリーで前回と比べて人出が戻っている(前掲図表1-4-2を参照)。コロナ禍慣れの現象がみられるようである。また、今回の緊急事態宣言が再発令された京都府・大阪府・兵庫県の3府県において、初めての週末である17日の人出の調査によれば、繁華街では特に昼間の往来が抑制されず、前回の緊急事態宣言時に比べ2.5~3倍となったと報告されている。

これらの状況を踏まえ、今回の緊急事態宣言における不要不急消費の減少率を以下のように設定した。外食については、前回の緊急事態宣言における減少幅の3分の1、それ以外の品目では、2分の1と、減少率を設定した。その結果、今回の不要不急消費の減少率は 22.7%となる。

2-4. 緊急事態宣言期間の想定

第3のパラメータである推計期間については、2021年1月14日から2月7日の25日間を基本ケースとして設定する。また、足下の感染状況を踏まえ、参考ケースとして2月末(2月28日)まで延長された場合(46日間)についても推計を行った。

3. 緊急事態宣言再発令が関西経済に与える影響

3.では、まず不要不急消費減少額推計のベンチマークとなる関西2府4県における家計消費支出の導出方法について述べる。その後、家計消費減少額の推計結果を確認する。

3-1. 関西各府県のベンチマーク消費の推計

消費減少額推計のベンチマークとなるのは、2019年度の名目民間家計最終消費支出である。名目民間家計最終消費支出は、内閣府『県民経済計算』を用いる。しかし、『県民経済計算』は最新の値が17年度値であることから、19年度値に延長推計する必要がある。そこで、実質民間家計最終消費支出(17年度値)を、APIRが行った関西各府県の実質GRP早期推計の伸び率で延長することで、19年度値(実質値)を計算した。次に、GRPデフレータ(APIR推計)を用いて、実質値を名目値へと変換した。なお、今回の緊急事態宣言は大阪府、兵庫県、京都府の2府1県を対象に発令されたが、近隣府県でも同等の影響を受けるとみなし、滋賀県、奈良県、和歌山県の3県も推計の対象に加えている。

図表3-1はベンチマークとなる 2019 年度関西各府県の名目民間家計最終消費支出(APIR推計値、太枠内)を示したものである。関西2府4県では19年度の消費支出額は49.0兆円となる。なお、関西2府1県では40.8兆円となり、関西全体の8割以上を占めている。

 

 

3-2. 関西各府県における消費減少額の試算結果

図表3-2は関西各府県について、緊急事態宣言再発令による家計消費支出の減少額を示したものである。ここでは基本ケース(1月14日~2月7日まで)と参考ケース(2月末まで)の2つを示す。

それぞれ確認すると、基本ケースにおける家計消費減少額は、大阪府が991億円、兵庫県で583億円、京都府で284億円となる。今回緊急事態宣言の対象となっている大阪府・兵庫県・京都府の2府1県の損失額は1,858 億円と推計される。その他の府県の消費減少額は、滋賀県で143億円、奈良県で143億円、和歌山県で89億円となり、関西2府4県では2,233億円の損失額になる。今回対象となった2府1県の損失額は全体の83.2%となる。また、参考ケースでは、家計消費減少額は関西2府1県では3,419億円、2府4県では4,109億円と推計される。

この結果に基づき、2020年度の関西2府4県の域内名目総生産(GRP)への影響を見ると、基本ケースでは、名目GRPを0.3%程度追加的に引き下げる9。APIR の関西経済予測(11月26日時点、Kansai Economic Insight Quarterly No.51)では、実質GRPを2020年度-5.2%の大幅なマイナス成長と予測しているが、マイナス幅は幾分拡大する。また、参考ケースでは引き下げ幅は0.5%程度となっている。感染状況が改善せず、期限が延長された場合は、より経済に与える影響は大きくなる。

なお、図表3-2では前回の緊急事態宣言下における消費支出の減少額も推計している。これを見ると、関西2府4県の名目家計消費支出の減少額は8,004億円となっている。前回と比較すると、今回の緊急事態宣言再発令が経済に与える影響は4分の1強とみられる(基本ケース)。しかし、現状では、コロナ禍によりサービス業を中心に弱い動きが続いており、関西経済にとって大きな下押し圧力となる。結果、コロナ禍からの回復過程に水を差すこととなろう。

 

 

4. おわりに:今回の緊急事態宣言再発令への含意

本稿では、高頻度・ビッグデータを用いて緊急事態宣言の経済的影響を振り返り、そこで得られた知見をもとに、今回の緊急事態宣言再発令の関西経済に与える影響を分析した。本稿の分析結果を要約し、そこから得られた含意は次の通りである。

1. COVID-19の感染再拡大(第3波)を受け、政府は1月7日に1都3県に対して緊急事態宣言を再発令した。1月13日に7府県が追加されたことで、対象地域のGDPシェアは約60%に拡大した。ほとんどの大都市圏が含まれており、経済全体への影響は深刻度を増している。

2. 緊急事態宣言により、人々は行動変容を迫られた。日次ベースの消費支出額は、4月7日以降前年比マイナス幅が拡大し、5月初旬を底として緩やかに縮小した。カテゴリー別では、半耐久財やサービスが大きく減少する一方、非耐久財や耐久財では増加がみられた。

3. 人流(経済活動)への影響では、前回宣言時は小売店・娯楽施設、公共交通機関、職場で人出が大きく減少した。一方、食料品店・薬局は大幅な減少は見られなかった。今回と前回を比べると、今回の方が公共交通機関、小売店・娯楽施設、職場で人出の戻りが観察できる。

4. 前回宣言時の経験と足下の人流の動向を踏まえ、緊急事態宣言再発令による家計消費減少額を試算した。基本ケース(1月14日~2月7日)では、今回緊急事態宣言の対象である大阪府・兵庫県・京都府の2府1県の消費減少額は1,858億円。関西2府4県では2,233億円となり、2020年度関西2府4県の名目GRPを0.3%程度追加的に引き下げることとなる。

5. また、2月末まで延長された参考ケースでは、消費減少額は関西2府1県では3,419億円、2府4県では4,109億円。2020年度関西2府4県の名目GRPを0.5%程度引き下げる。感染状況が改善せず、期限が延長された場合は、より経済に与える影響は大きくなる。

6. 今回の再発令が経済に与える影響(基本ケース)は前回の4分の1強とみられる。しかし、コロナ禍によりサービス業を中心に弱い動きが続いている中、関西経済にとって大きな下押し圧力となる。結果、コロナ禍からの回復過程に水を差すことになろう。

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    • 2月の景気ウォッチャー現状判断は2カ月ぶりに前月比改善。令和6年能登半島地震の影響が和らいだことやインバウンド需要の増加が景況感に好影響となった。また、先行き判断は賃上げへの期待もあり、4カ月連続で改善した。
    • 2月の貿易収支は2カ月ぶりの黒字だが、黒字幅は前年比大幅縮小。春節の時期のずれから、対中輸出が減少に転じた影響とみられる。一方、輸入は11カ月ぶりに前年比増加となった。
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    1. 2023年2月から24年1月までの「電気・ガス激変緩和対策」事業により、一世帯あたり電気代29,119円、都市ガス代4,733円、負担額が軽減された。収入階級別にみると、収入が高い世帯ほど電気の使用量が多いため、負担軽減額は大きくなる傾向がみられた。
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    【ポイント】

    ・JNTO訪日外客統計によれば、1月の訪日外客総数(推計値)は268万8,100人、2019年同月比では-0.0%と2カ月ぶりに小幅マイナスに転じたが、コロナ禍前とほぼ同程度となった。なお、国・地域別では韓国、台湾とオーストラリアが単月で過去最高を記録した。

    ・目的別訪日外客総数(暫定値)をみれば11月は244万890人。観光客は220万6,883人となり、2カ月連続で200万人超の水準となった。

    ・令和6年能登半島地震は新潟県、富山県、石川県、福井県の観光業に大きな影響を与えている。政府は当該地域で落ち込んだ観光需要を喚起するために、3月より「北陸応援割」を開始した。喚起策により、国内旅行者及び訪日旅行者の増加が期待されよう。

    【トピックス1】

    ・関西1月の輸出は春節休暇の時期のズレも影響し、9カ月ぶりの前年比増加。一方、輸入は10カ月連続で減少した。貿易収支は12カ月ぶりの赤字となった。

    ・1月の関西国際空港への訪日外客数は70万402人と、2カ月連続で70万人超の水準。低調なアウトバウンド需要に比してインバウンド需要は堅調に推移している。

    ・12月のサービス業の活動は小幅改善だが、足踏みの状態が続く。第3次産業活動指数は4カ月ぶりの前月比上昇。また、対面型サービス業指数は2カ月ぶりに同上昇した。観光関連指数も年末の旅行需要増加の影響もあり、旅行業や宿泊業が上昇に寄与し、4カ月ぶりの同上昇となった。

    【トピックス2】

    ・11月の関西2府8県の延べ宿泊者数は11,949.3千人泊で、2019年同月比+10.0%と3カ月連続の増加となった。

    ・うち、日本人延べ宿泊者数は8,124.0千人泊、2019年同月比+1.3%と3カ月連続の増加。また、外国人延べ宿泊者数は3,825.3千人泊となり、同+34.6%と4カ月連続で増加した。日本人宿泊者に比して外国人宿泊者は着実に増加している。

    【トピックス3】

    ・2023年10-12月期における関西2府8県の国内旅行消費額(速報)は1兆1,331億円、19年同期比+12.4%と3四半期連続のプラス。23年通年では4兆1,034億円となり、コロナ禍前(19年比-0.6%)をほぼ回復した。

    ・国内旅行消費額のうち、10-12月期の宿泊旅行消費額は9,101億円で2019年同期比+21.2%となり、2四半期連続のプラス。一方、日帰り旅行消費額は2,230億円。2019年同期比-13.1%と7-9月期(同-21.4%)からマイナス幅は縮小したものの、宿泊旅行消費額に比して回復ペースは緩慢である。

     

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    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 野村 亮輔 / 壁谷 紗代 / 吉田 茂一

    ABSTRACT

    1月1日に発生した「令和6年能登半島地震」の影響が懸念されている。震災によって大きな被害を受けた新潟県、富山県、石川県の3県(以下、北陸3県と記す)の被害状況に基づき、復旧復興の観点からその経済的な影響を考察した。それを整理し得られた含意は以下の通りである。

     

    1. ストックの観点から北陸3県経済をみれば、民間企業資本ストックは、各県とも「サービス」が最も大きい。次いで新潟県、石川県では「農林水産」が、富山県では「化学」が大きい。また、住宅ストックは新潟県が最も大きく、次いで石川県、富山県と続く。
    2. フローの観点から北陸3県経済をみれば、各県とも製造業のシェアが最も高い。うち、新潟県は「食料品」が、富山県は「化学」が、石川県は「はん用・生産用・業務用機械」がそれぞれ最も高いシェアを占めている。
    3. 今回の震災による北陸3県の直接被害(建築物等)を推計すれば、新潟県は5,177億円、富山県は2,946億円、石川県は5,827億円、3県計で1兆3,951億円となる。また、間接被害は4兆円となり、これは2020年度の名目GDPの0.4%に相当する。
    4. 人口移動の観点からみれば、北陸新幹線開業を契機に富山県、石川県でみられたような人口移動が今回の震災を契機に一層進む可能性がある。3月16日に金沢-敦賀間の延伸が実現するが、この効果は福井県では限定的と思われる。
    5. 今回の震災で北陸の観光業の特徴が明らかとなった。北陸は国内市場に強く依存した構造となっている。人口減少が長期トレンド下にあるため、この構造から脱却する必要がある。地域創生戦略にとって、インバウンド需要の一層の取り込みを実現する戦略が重要となろう。

     

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  • 稲田 義久

    Kansai Economic Insight Monthly Vol.130-景気は足下局面変化、先行きは悪化の兆し: 自動車生産停止と中国経済減速がリスク要因

    経済予測

    経済予測 » Monthly Report(関西)

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 豊原 法彦 / 関 和広 / 野村 亮輔 / 郭 秋薇 / 盧 昭穎 / 吉田 茂一 / 宮本 瑛 / 新田 洋介 / 壁谷 紗代

    ABSTRACT
    • 関西の景気は、足下局面変化、先行きは悪化の兆しがみられる。足下、生産は3カ月ぶりの増産だが、10-12月期で均せば低調。雇用環境は失業率が4カ月連続で改善したが、有効求人倍率は悪化が続く。消費は年末商戦や好調なインバウンド需要で堅調。貿易収支は12カ月ぶりに赤字に転じた。自動車生産停止や中国経済減速のリスクもあり、先行き悪化の兆しがみられる。
    • 12月の生産は3カ月ぶりの前月比上昇だが、10-12月期では3四半期ぶりの減産。生産は低調である。
      23年通年の失業率は前年比横ばいだが、労働力人口と就業者数はともに増加し、雇用の回復は順調に進んだ。しかし、10-12月期は労働力人口と就業者数が前期よりいずれも減少し、就業率は低下した。足下では雇用回復の勢いがやや弱くなっている。
    • 11月の現金給与総額は24カ月ぶりの前年比減少。インフレの高止まりにより実質賃金は減少が続き、減少幅は前月より拡大した。
    • 12月の大型小売店販売額は27カ月連続の前年比増加となった。うち、百貨店はインバウンド需要の増加や身の回り品などの好調で、22カ月連続のプラス。スーパーも15カ月連続で拡大した。
    • 12月の新設住宅着工戸数は2カ月ぶりに前月比増加した。持家、分譲は減少したものの、貸家は増加となったためである。
      堅調な公共工事の影響もあり、12月の建設工事は24カ月連続の前年比増加。しかし、1月の公共工事請負金額は前年比減少に転じている。
    • 1月の景気ウォッチャー現状判断は3カ月ぶりに悪化。令和6年能登半島地震の発生によりサービス関連を中心に悪影響を及ぼした。一方、先行き判断は3カ月連続の改善。春節によるインバウンド需要増加の期待が寄与した。
    • 1月の貿易収支は12カ月ぶりの赤字だが、赤字幅は前年比大幅縮小。輸出は9か月ぶりに同増加に転じた。ただし、春節の時期のずれの影響もあるため、注意が必要である。一方、輸入は10カ月連続で同減少した。
    • 1月の関空経由の外国人入国者数は2カ月連続で70万人超の水準となり、インバウンド需要は堅調に推移している。
    • 1月の中国経済は、前月より大きな改善が見られなかった。消費者物価指数の低下傾向が顕著になっており、不動産市場の不況も続いている。また、企業の景況感も低迷している。ただし、2月の春節連休は例年より1日多くなっており、観光などレジャーの消費は前年より伸びる可能性が高いため、1-3月期の景気は10-12月期よりわずかな改善が見込まれる。
    【関西経済のトレンド】

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  • 稲田 義久

    Kansai Economic Insight Quarterly No.68 -内外需の回復鈍く、足踏みが続いている:先行き24年度以降は民需と輸出の持ち直しで緩やかに改善-

    経済予測

    経済予測 » Quarterly Report(関西)

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 入江 啓彰 / 郭 秋薇 / 盧 昭穎 / 野村 亮輔 / 吉田 茂一 / 壁谷 紗代

    ABSTRACT
    1. 2023年10-12月期の関西経済は、内需・外需ともに回復の動きが鈍くなっており、足踏みが続いている。家計部門では消費者センチメント、所得、雇用と多くの指標で伸び悩んでいる。企業部門では、景況感は堅調であるものの、生産は一進一退で弱い動きとなっている。対外部門は、インバウンド需要はコロナ禍前の水準以上に回復しているが、財輸出は前年割れが続いている。
    2. 家計部門は足踏み状態にある。大型小売店販売はインバウンド需要など客足の回復で堅調であるが、センチメント、所得・雇用環境、住宅市場など幅広い指標で弱い動きとなっている。物価上昇ペースは緩やかになってきたものの、賃上げ機運にも落ち着きが見られ、実質賃金の目減りが個人消費に影を落としている。
    3. 企業部門は、緩やかに持ち直しているが、生産など一部に弱い動きが見られる。景況感は製造業・非製造業ともに持ち直した。また今年度の設備投資計画は今のところ製造業・非製造業とも旺盛となっている。ただ生産は一進一退続きで、3四半期ぶりの減産となるなど回復の足取りは鈍い。
    4. 対外部門のうち、財貿易は輸出・輸入ともに低調である。輸出では全国と対照的に、関西は3四半期連続の前年割れとなっている。一方インバウンド需要は順調に回復している。関空経由の外国人入国者数、免税売上高などではコロナ禍前の水準を回復し、その後も増加傾向が続いている。
    5. 公的部門は、万博関連需要を背景に、引き続き堅調に推移している。
    6. 関西の実質GRP成長率を2023年度+1.4%、24年度+1.5%、25年度+1.5%と予測。22年度以降1%台の緩やかな回復基調が続き、24年度以降は日本経済を上回る伸びとなる見通し。前回予測に比べて、23年度は+0.1%ポイントの上方修正、24年度は-0.1%ポイントの下方修正、25年度は+0.1%ポイントの上方修正。
    7. 成長に対する寄与を見ると、民間需要は23年度+0.3%ポイント、24年度+0.9%ポイント、25年度+1.2%ポイントとなり、24年度に入って緩やかに回復する。公的需要は万博関連の投資により23年度+0.4%ポイント、24年度+0.3%ポイントと成長を下支えるが、25年度には剥落する。域外需要は、23年度は+0.7%ポイント、24年度+0.3%ポイント、25年度+3%ポイントとなる。
    8. 日本全体に比べて、予測期間通じて関西経済が増勢となる。23年度は設備投資を中心に民間需要・公的需要ともにやや増勢となる。一方外需は中国向け輸出の停滞から全国に比べると寄与は小幅となる。24年度は設備投資や公共投資など万博関連需要により全国を上回る伸びとなる。25年度も域外需要の押し上げから関西が全国を上回る。
    9. 今号のトピックスでは「令和6年能登半島地震の北陸3県経済への影響」および「大阪・関西万博の経済波及効果」を取り上げる。

     

    予測結果表

     

    ※説明動画は下記の通り4つのパートに分かれています。

    ①00’00”~01’46”: Executive summary

    ②01’46”~24’13”: 第147回「景気分析と予測」

    <依然遠い内需主導の回復、厳しい内外需好循環への道>

    ③24’13”~34’51”: Kansai Economic Insight Quarterly No.68

    <内外需の回復鈍く、足踏みが続いている:先行き24年度以降は民需と輸出の持ち直しで緩やかに改善>

    ④42’06”~42’34”: トピックス<令和6年能登半島地震と北陸3県経済-フロー、ストック、人流を中心に->

  • 稲田 義久

    147回景気分析と予測:詳細版<依然遠い内需主導の回復、厳しい内外需好循環への道- 実質GDP成長率予測:23年度+1.3%、24年度+0.8%、25年度+1.1% ->

    経済予測

    経済予測 » Quarterly Report(日本)

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 下田 充

    ABSTRACT
    1.  2月15日発表のGDP1次速報によれば、10-12月期の実質GDPは前期比年率-0.4%(前期比-0.1%)減少し、2四半期連続のマイナス成長。市場コンセンサスの最終予測(同+1.28%)は実績を大幅に上回った。またCQM最終予測の支出サイドは同+2.0%、生産サイドは同+1.7%、平均は同+1.9%と、実績を大幅に上回った。
    2.  10-12月期の実質GDP成長率(前期比-0.1%)への寄与度を見ると、国内需要は同-0.3%ポイントと3四半期連続のマイナス寄与。うち、民間需要は同-0.2%ポイントと3四半期連続のマイナス寄与。民間最終消費支出、民間住宅、民間企業設備及び民間在庫変動といずれも減少した。公的需要は同-0.1%ポイントと7四半期ぶりのマイナス寄与。一方、サービス輸出(知的財産権等使用料)の大幅増という特殊要因もあり、純輸出は同+0.2%ポイントと2四半期ぶりのプラス寄与。結果、2023年の実質GDPは前年比+1.9%と3年連続のプラスとなった(前年:同+1.0%)。
    3.  10-12月期の国内需要デフレータは前期比+0.4%と12四半期連続のプラス。交易条件は4四半期連続で改善の後横ばい。結果、GDPデフレータは同+0.4%と5四半期連続の上昇となった。このため、名目GDPは前期比+0.3%、同年率+1.2%となり、2四半期ぶりの増加。結果、2023年の名目GDPは前年比+5.7%と3年連続のプラス。バブル崩壊の影響が残る1991年の+6.5%以来の高成長である。
    4.  10-12月期GDP1次速報と新たな外生変数の想定を織り込み、2023-25年度日本経済の見通しを改定。実質GDP成長率を、23年度+1.3%、24年度+0.8%、25年度を+1.1%と予測。前回(146回予測)から、23年度は-0.4%ポイント、24年度は-0.7%ポイント、25年度-0.1%ポイント、それぞれ下方修正。24年1-3月期は輸出の反動減や自動車の減産から低迷が予想される。24年前半は内需主導の回復は遠のき、外需との好循環は厳しい。回復が見込まれるのは24年後半以降となろう。
    5.  実質賃金がプラス反転しないため、10-12月期の民間最終消費支出は3四半期連続の減少、24年1-3月期の回復も緩やかにとどまり、結果、23年度の民間需要寄与は-0.3%ポイント。一方、交易条件の改善もあり貿易赤字が縮小し、また引き続き好調なインバウンド需要によりサービス輸出が増加し、23年度の純輸出の寄与は+1.3%ポイントと前年から大きくプラス反転する。実質賃金のプラス反転は、インフレ高止まりの影響が剥落する24年後半以降となろう。このため24‐25年度の民間需要の寄与は小幅にとどまり、また純輸出の寄与も前年からほぼ横ばいとなる。
    6.  23年度前半に3%台で高止まりした消費者物価インフレ率は徐々に減速する。結果、消費者物価コア指数のインフレ率を、23年度+2.8%、24年度+2.0%、25年度を+1.4%と予測する。前回予測から変化なし。23年度に交易条件が前年から大幅改善するためGDPデフレータは+3.8%上昇する。このため、同年の名目GDPは+5.2%の高成長となる。24‐25年度については、交易条件改善の裏が出るため、GDPデフレータは24年度+1.5%、25年度+1.8%となる。
    予測結果の概要

     

    ※説明動画は下記の通り4つのパートに分かれています。

    ①00’00”~01’46”: Executive summary

    ②01’46”~24’13”: 第147回「景気分析と予測」

    <依然遠い内需主導の回復、厳しい内外需好循環への道>

    ③24’13”~34’51”: Kansai Economic Insight Quarterly No.68

    <内外需の回復鈍く、足踏みが続いている:先行き24年度以降は民需と輸出の持ち直しで緩やかに改善>

    ④42’06”~42’34”: トピックス<令和6年能登半島地震と北陸3県経済-フロー、ストック、人流を中心に->

  • 野村 亮輔

    都道府県別訪日外客数と訪問率:12月レポート No.55

    インバウンド

    インバウンド

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    野村 亮輔 / 稲田 義久 / 松林 洋一

    ABSTRACT

    【ポイント】

    ・JNTO訪日外客統計によれば、12月の訪日外客総数(推計値)は273万4,000人、2019年同月比+8.2%と2カ月ぶりのプラス。2023年通年では年後半の回復が影響し、2,506万5,862人となり、コロナ禍前の8割程度(19年比-21.4%)を回復した。

    ・目的別訪日外客総数(暫定値)をみれば10月は251万6,623人。観光客は224万5,892人でコロナ禍前(19年同月比+3.1%)を回復した。

    ・訪日外客の先行きについては、回復が遅れている訪日中国人客の動向が気になるところである。2月は10日から春節が始まり、中国人客の増加が期待されている。一方で、中国経済減速の影響もあるため、大幅な増加は見込めず、緩やかな回復にとどまる可能性が高い。

    【トピックス1】

    ・関西12月の輸出は8カ月連続で前年比減少。また、輸入は9カ月連続で減少し、8カ月連続で2桁のマイナスであった。結果、輸入の減少幅が輸出のそれを大きく上回ったため、貿易収支は11カ月連続の黒字となった。

    ・12月の関西国際空港への72万1,677人となり、12月単月で過去最高を記録。2023年通年では652万5,158人となり、コロナ禍前の8割弱(19年比-22.1%)を回復した。

    ・11月のサービス業の活動は悪化傾向が続く。第3次産業活動指数は3カ月連続の前月比低下。また、対面型サービス業指数は2カ月ぶりに同低下した。観光関連指数も飲食店、飲食サービス業や宿泊業が低下に寄与し、3カ月連続の同低下となった。

    【トピックス2】

    ・10月の関西2府8県の延べ宿泊者数は11,417.1千人泊、2019年同月比では+10.1%となった。前月に引き続き外国人宿泊者の増加が延べ宿泊者全体の増加に寄与した。

    ・うち、日本人延べ宿泊者数は7,709.1千人泊、2019年同月比+4.7%と2カ月連続の増加。また、外国人延べ宿泊者数は3,708.0千人泊となり、同+23.1%と3カ月連続で増加した。

    【トピックス3】

    ・2023年10-12月期における訪日外国人消費額(1次速報、全目的ベース)は1兆6,688億円、19年同期比+37.6%と2四半期連続のプラス。23年通年では5兆2,923億円となり、過去最高額を更新した。

    ・2023年10-12月期の1人当たり旅行支出(全目的)は21万201円となった。2019年同期比+28.0%と、4四半期連続のプラス。1人1泊当たり旅行支出でみれば、2万5,493円となり、2019年同期比+30.5%増加した。費目別では、宿泊費、飲食費、交通費、娯楽等サービス費、買物代いずれも増加した。

     

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