研究成果

research

コロナ危機下における企業の財務調整- 法人企業統計調査結果から考察した課題 –

コロナ危機下での企業の財務調整状況について、2020年10-12月期までの法人企業統計調査結果を活用し、企業のバランスシート(貸借対照表)項目のうち、特に、内部留保(利益剰余金)と有利子負債の変化に焦点を当てて考察してみた。コロナ危機下で、政府・日本銀行の金融支援もあって借入金増加や社債発行により大量の資金確保が図られ、負債の増加でバランスシートは悪化した。しかし、機動的に取り崩せる内部留保の蓄積があったことで、自己資本比率はわずかな低下ですんでおり、健全な水準を維持している。こうした財務状況を製造業、非製造業で分けてみると、非製造業はより厳しいという実態がわかる。非製造業の中でも、特にコロナ危機で需要減退の強い影響を受けているサービス関係業種の財務状況はさらに厳しく、今後も需要の低迷が続けば、小規模企業などで事業継続が一気に困難になるリスクがあろう。ポストコロナを視野に入れた日本企業の今後の課題としては、潜在成長率の押し上げにつながる内部留保の有効活用、バランスシート悪化に対応する事業構造改革の推進をあげたい。

関連論文

  • 藤原 幸則

    雇用調整助成金の効果と課題 – 新型コロナウイルス感染症特例措置をめぐって –

    インサイト

    インサイト » トレンドウォッチ

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    藤原 幸則

    ABSTRACT

    コロナ禍での雇用維持対策として、政府は雇用調整助成金の「新型コロナウイルス感染症特例措置」を創設して対応を行っている。完全失業率は低い水準にとどまり、2020年4~6月期に実質GDPが年率約3割減という落ち込みがあったことを考えると、雇用調整助成金が未曾有の経済危機の中での失業防止という点で大きな効果を発揮していると評価できよう。雇用調整助成金の活用が急拡大し、特例措置の適用期間も1年にわたることとなり、財源プールとなっている雇用安定資金の涸渇化が懸念されるようになっている。失業の著しい急増を避けることは経済や社会にとって大きな利益となる。自然災害やパンデミックなどによる国難とも言うべき重大な経済危機に際しては、雇用調整助成金へ一般財源を投入できることを本則にすべきと考える。また、雇用維持政策の出口の模索は悩ましい課題であるが、危機がある以上は雇用調整助成金の特例措置を延長しつつも、コロナ禍の中でも様々な創意工夫や対策によって事業の継続・再開・転換を図る企業に対する重点的な助成に軸足を移していくべきであろう。

    PDF
  • 藤原 幸則

    後期高齢者医療費の自己負担割合のあり方- 今年末に取りまとめられる所得基準の線引きに向けて –

    インサイト

    インサイト » トレンドウォッチ

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    藤原 幸則

    ABSTRACT

    政府の全世代型社会保障検討会議などでは、一定以上の所得がある人には自己負担割合を2割に引上げる方針であり、焦点となる所得基準の線引きの議論を本年末までに行うとし、大詰めの段階に来ている。今後も現役世代が高齢者医療を支えていく必要があるが、医療保険制度を維持し、増大する高齢者医療費を現役と高齢の両世代でなるべく公平に負担を分かち合うためには、「能力に応じて」という意味で、一定以上の所得がある高齢者については、自己負担割合を引上げることはやむを得ない。そもそも、所得基準の線引きについては、明確な根拠を求めることは難しいが、筆者の考えとしては、所得額に応じて利用者負担割合が1割、2割、3割とすでに分けて設定されている介護保険サービスを参考にしてはどうかと考える。後期高齢者医療費の自己負担割合引上げについては、まずは、合計所得160万円以上(年金収入等約280万円以上)の一般所得者を対象に2割負担を導入するのが適当と考える。

    PDF
  • 藤原 幸則

    新型コロナウイルス対策特別会計(仮称)の設置 -予算・執行の透明化と財政規律の確保を求める-

    インサイト

    インサイト » トレンドウォッチ

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    藤原 幸則

    ABSTRACT

    新型コロナウイルスは、わが国の財政の悪化にも大きな影響を及ぼしている。コロナ禍の出口は未だ見通せず、財政赤字の大幅な増加が今年度だけで終わる保証はない。もちろん、新型コロナウイルス対応は、国民の生命と経済社会を守るためのものであり、必要な歳出は躊躇なく機動的に行うことが必要である。しかし、財政規律のタガがはずれたままであってよいわけはない。緊急事態から脱したときから、財政健全化に向けてどのような取り組みを行うかも今から議論・検討しておくべき重要課題と考える。新型コロナウイルス対応に要した緊急の歳出については、「新型コロナウイルス対策特別会計(仮称)」を設置して、事業に時限を付しつつ、予算・執行を一元的に管理し透明化するとともに、その財源充当のために発行した国債全額は、コロナ危機からの経済回復後の特別増税などにより計画的に償還していくことが必要と考える。本稿では、財源確保の提案と国債償還の暫定試算を行っている。

    PDF
  • 藤原 幸則

    水災害の激甚化への総合的対策の強化- 全国的な対策推進の枠組み、土地利用規制、保険制度の強化を-

    インサイト

    インサイト » トレンドウォッチ

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    藤原 幸則

    ABSTRACT

    近年、全国各地で豪雨等による水災害が頻発し、被害も甚大化するケースが増えている。限られた財政の中では、堤防強化や砂防工事などの公共事業によるハード対策だけに頼るには限界がある。水災害リスクを低減させる土地利用、実効性ある避難態勢の構築などのソフト対策もあわせて推進していく必要がある。国としても、2020年度からハード・ソフト一体の「流域治水」という総合的対策の強化に舵を切っている。こうした国の動きは高く評価できるが、効果をさらに高めるためには、地震対策と同じような総合的対策の枠組みの強化、浸水ハザードエリアでの土地利用のさらに踏み込んだ規制、自助を促す水災害保険制度の強化が、なお必要な課題と考える。本稿では、これら課題への対応策を提案する。

    PDF
  • 藤原 幸則

    新型コロナウイルス対策で見えた地方の財政力格差-税源交換による地方税の偏在是正・税収安定化を-

    インサイト

    インサイト » トレンドウォッチ

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    藤原 幸則

    ABSTRACT

    新型コロナウイルスの感染拡大は、地域経済にも大きなマイナス影響を及ぼしている。地域経済の悪化は税収減により地方財政へ影響が及び、その影響は長期化する可能性がある。感染拡大は地方財政への影響の長期化だけにとどまらない。そこで、本稿では、新型コロナウイルス感染拡大で見えた地方の財政力格差の背景と問題点を整理し、財政力格差の要因になっている税収の偏在是正のための制度改革の提案を行った。地方税の偏在性において、最も大きいのが地方法人二税であり、最も小さいのが地方消費税である。そこで、地方の法人課税分と国の消費税分について、同額で税源交換し、地方消費税を拡充することが有効と考え、シミュレーションも行った。

    PDF
  • 藤原 幸則

    最低賃金をどう決定するか -経済実態、生活圏を反映した水準決定とエリア設定を-

    インサイト

    インサイト » トレンドウォッチ

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    藤原 幸則

    ABSTRACT

    新型コロナウイルスの感染拡大による経済危機は、2020年度の最低賃金改定の議論に大きな影響を与えている。本稿では、最低賃金引上げについての近年の動向や議論の論点(国際比較、生産性との関係、全国一元化)を整理した上で、制度の見直し提案として、①エビデンスに基づく経済実態に即した引上げ額の検討、②都道府県単位のエリア設定を見直し、同一都道府県でも経済実態に即した区分けや都府県をまたがる生活圏としての一体化を反映した水準決定、③ポリシーミックスによる引上げが可能となる環境整備、という3点を示している。

    PDF
  • 藤原 幸則

    コロナ禍後の財政健全化に向けて

    インサイト

    インサイト » トレンドウォッチ

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    藤原 幸則

    ABSTRACT

    新型コロナウイルス感染症拡大防止による経済の影響が一段と深刻化している。政府においては、2020年度補正予算(第1号、第2号)を編成し、追加歳出総額のすべてを新規国債発行で賄うという財政出動に踏み出した。今般の補正予算で、財政状況の一段の悪化が避けられない。本稿では、新型コロナウイルス対策での財政出動による財政悪化のインパクトを試算し(暫定)、潜在的な財政破綻リスクの深刻化を確認するとともに、コロナ禍後の財政健全化に向けての議論の進展を期待して、今後考えるべき論点と思われるところを整理してみた。

    ※ 5月28日のAPIR「128回景気分析と予測」の名目GDP成長率予測値を試算に反映、一部修正

    PDF
  • 藤原 幸則

    Policy Brief No.4 <頻発・激甚化する災害への備えの強化を>

    政策提言

    政策提言

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    藤原 幸則

    ABSTRACT

    近年、頻発・激甚化する災害が新型コロナウイルス感染拡大と重なれば、多数の人命が失われ、社会経済機能の維持すら困難となる。感染拡大がいまだ収束していないからこそ、災害対策の備えを強化しなければならない。

    災害発生には、利便性や効率性等を追求する人間行動が深く関与している。近年、一つの災害あたりの物的被害や社会経済の損失は増大傾向にあるが、これは人間の行動によって、人口・資産が災害の発生危険度の高い地域に集積し、災害リスクが高まっていると言える。典型的な例は東京一極集中である。利便性や成長を求めて人口や経済機能が東京圏へ集中した結果、首都直下地震のような大規模災害が生じれば、被害と損失は非常に大きく、東京圏にとどまらず、日本全体に影響が及ぶ。

    したがって、災害による被害を防止・軽減するために、災害リスクをできる限り小さくする対策を講じていくことが重要になる。そこで、2019年度のAPIR自主研究プロジェクトの研究成果をもとに、個人や企業のより安全な選択行動や行政の役割強化を図る法律・制度の見直しを提案する。自主研究成果の報告書にもあるとおり、講ずべき対策は多いが、特に重要なものをここで提案している。

  • 藤原 幸則

    「関西のスポーツ産業振興に係る基礎調査報告書」(公益社団法人関西経済連合会委託調査)

    その他の活動・出版物紹介

    その他の活動・出版物紹介 » その他の活動

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    藤原 幸則

    ABSTRACT

    調査内容

    日本では2015年にスポーツ庁が発足し、スポーツの成長産業化に向けた議論が活性化している(スポーツ基本計画策定など)。また、ラグビーワールドカップ2019に加えて、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会、ワールドマスターズゲームズ2021関西と、連続で3つの大きなスポーツイベントがあり、ゴールデン・スポーツイヤーズとも称されており、スポーツ産業活性化に向けては絶好の機会が到来している。

    スポーツ産業は、スポーツ用品をはじめとする製造業・商業に限らず、医療・健康、観光、サービス業など幅広い産業分野に関係し、産業横断的に存在していると言える。スポーツ用品の製造・販売だけでは成長に限界があり、スポーツツーリズムなど、異なる産業分野の様々シナジーがスポーツ産業の発展につながる。

    欧州諸国においては、スポーツサテライトアカウント(Sport Satellite Account)が開発され、経済計算に基づきGⅤA(粗付加価値)、雇用者数などのスポーツ産業規模の統計値が推計されている。スポーツサテライトアカウントは、産業分類の中でのスポーツ産業の位置づけや範囲が示され、また国際比較可能であることから、欧州各国のスポーツ産業振興のベンチマークとして活用されている。

    日本全体のスポーツ産業規模の計測については、欧州スポーツサテライトアカウントの方法に準拠し、有識者の協力を得てすでに日本政策投資銀行で行われ、結果が2018年3月に公表されている(日本政策投資銀行地域企画部・同志社大学「わが国スポーツ産業の経済規模推計~日本版スポーツサテライトアカウント~」2018年3月)。

    そこで、本調査では、関西のスポーツ産業の現状と動向について、できる限り最新の情報を織り込みながら、統計データや情報の整理を行うとともに、日本版スポーツサテライトアカウント方法に準拠した関西のスポーツ産業規模の推計を行った。関西のスポーツ産業規模の推計にあたっては、アジア太平洋研究所が独自に作成した「2011年関西地域間産業連関表」(対象:関西2府8県)を利用した。今後、関西地域間産業連関表の改定にあわせ、関西のスポーツ産業規模の推計を継続して行いえることとなる。

     

    調査監修

    稲田義久 アジア太平洋研究所 研究統括兼数量経済分析センター長、 甲南大学経済学部教授

    調査担当

    藤原幸則  アジア太平洋研究所 主席研究員

    PDF
  • 藤原 幸則

    社会保障の給付と負担の一体改革を

    インサイト

    インサイト » トレンドウォッチ

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    藤原 幸則

    ABSTRACT

    2019年12月19日、政府の全世代型社会保障検討会議が中間報告をとりまとめた。個別の改革検討事項をみると、医療・介護の制度改革については踏み込み不足となっている。国民に追加負担を求める改革メニューのほとんどは退けられた。社会保障制度改革をめぐる議論の背景にある大きな問題点は、高齢化などに伴う社会保障給付の累増にどう対応していくかに関する国民的コンセンサスが欠如していることがあると考える。どの程度まで給付を受け、負担に応じるかという、最終的には国民の選択の問題であろう。本稿では、社会保障制度の何が問題なのか、どのように改革を検討していくべきかの方向性を述べる。

    PDF