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「2016年度」の研究・論文一覧 [ 2/4 ]

  • 稲田 義久

    Kansai Economic Insight Monthly Vol.41-足下緩やかな回復が続くも、鈍化傾向-

    経済予測

    経済予測 » Monthly Report(関西)

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 林 万平 / 木下 祐輔 / James Brady / CAO THI KHANH NGUYET / 豊原 法彦

    ABSTRACT

    -足下緩やかな回復が続くも、鈍化傾向-

    ・7月の鉱工業生産指数は4カ月連続のマイナス。4-6月平均比-2.1%となっており、生産の基調は弱い。
    ・8月の輸出は11カ月連続の前年比マイナス。輸入は12カ月連続の同マイナス。大幅な円高進行により輸入減が輸出減を上回る状況が続いている結果、貿易収支は7カ月連続の黒字。
    ・8月の消費者態度指数は雇用環境や収入の増え方指数の改善により、2カ月ぶりの改善。一方、景気ウォッチャー現状判断DIは2カ月ぶりに悪化したものの、公共工事受注増加等、売上増加への期待から、先行き判断DIは2カ月連続で改善した。
    ・5月の関西2府4県の現金給与総額は4カ月ぶりの小幅下落。一方、6月の「関西コア」賃金指数は2カ月ぶりに上昇した。
    ・7月の大型小売店の販売額は5カ月ぶりの前年比プラス。百貨店は7カ月連続の同マイナスも、スーパーは2カ月連続の同プラス。百貨店の減速が続いている。
    ・7月の新設住宅着工戸数は2カ月ぶりの前年比プラス。8月のマンション契約率は3カ月連続で70%台を上回った。
    ・7月の有効求人倍率は、6カ月連続の小幅上昇。新規求人倍率は2カ月連続で下落したものの、高水準を維持。完全失業率は2カ月ぶりに改善しており、雇用情勢は堅調である。
    ・8月の公共工事請負金額は2カ月連続の前年比プラスも、季節調整値でみれば3カ月ぶりのマイナス。
    ・8月の関空への訪日外客数は51万8,880人で43カ月連続のプラス。国籍別にみると、6月の中国からの訪日外客数の伸びはマイナスであった前月から一転し、2カ月ぶりのプラス。
    ・中国8月の製造業購買担当者景況指数(PMI)は5カ月ぶりの改善。リコノミクス指数(APIR試算)は前年比8カ月連続で上昇しているものの、伸びは小幅にとどまる。

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  • 林 敏彦

    Population as a Source of Long-Term Growth: From Malthus to Japan’s Postmodern Regime

    ディスカッションペーパー

    ディスカッションペーパー

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    林 敏彦

    ABSTRACT

    This paper introduces a simple macroeconomic time series model incorporating a key concept of? GDP elasticity with respect to population (population elasticity). Using this model, we conducted empirical analyses of 158 countries each covering 25 to 180 years of history. As a result, we found first that the estimated population elasticity demarcated the countries according to regime, showing clearly whether a country was in the ‘Malthusian regime’, in the ‘modern growth regime’ or in the ‘postmodern regime’. We found that the poorest countries as well as some oil-rich countries were in the Malthusian regime. The modern growth regime prevailed in most European, Asian and American countries in the 20th century. We then predicted long-term real GDP for each country while they stayed in modern growth regimes. Third, we observed that both Germany and Japan went into a postmodern regime after a demographic transformation. Focusing on Japan, we argued that if the nation remained in the modern growth regime, it would face a precipitous decline in GDP. We suggested that Japan must reduce dependence on population as a source of growth in the postmodern era. This lesson might be important for the two thirds of countries in the world that are expected to enter a postmodern regime around the middle of this century.

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  • 稲田 義久

    Kansai Economic Insight Quarterly No.31 <関西経済は弱い基調が定着、先行きも好材料に乏しい>

    経済予測

    経済予測 » Quarterly Report(関西)

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 入江 啓彰 / 林 万平 / 木下 祐輔 / James Brady / CAO THI KHANH NGUYET

    ABSTRACT

    関西経済は弱い基調が定着、先行きも好材料に乏しい
    民需外需は牽引力不足、景気対策の効果も関西では期待薄

    1.4-6月期の実質GDP成長率は前期比年率+0.2%(前期比+0.0%)と2四半期連続のプラスとなった。閏年要因を除けば年前半は小幅のプラス成長であり、日本経済は緩やかに回復しているといえる。寄与度を見ると、内需は前期比+1.2%ポイントと2四半期連続のプラスだが、純輸出は同-1.0%ポイントと4四半期ぶりのマイナス。

    2.関西経済は、足下弱い基調が定着しつつあり、かつ先行きも好材料に乏しい。家計部門は、前期から引き続いて弱含んでいる。企業部門は、景況感や生産などで足下では弱い動きが見え始めている。域外取引では、輸出と輸入の失速が続いており、かつマイナス幅が拡大し続けている。

    3.関西の実質GRP成長率を2016年度+0.7%、17年度+0.8%と予測する。前回予測と比較すると、2016年度は0.1%ポイントの下方修正、17年度は0.2%ポイントの上方修正となった。また景気対策の影響の大小の違いにより、関西の成長率は日本経済予測の結果より若干下回って推移すると見込む。

    4.成長に対する寄与度を見ると、2016年度は民間需要が+0.4%ポイントと3年ぶりにプラスに転じる。公的需要も+0.2%ポイント、外需も+0.1%ポイントと小幅ではあるが各項目ともプラスの寄与となる。17年度も、民間需要+0.3%ポイント、公的需要+0.2%ポイント、外需+0.3%ポイントと各項目ともプラスの寄与となる。しかしいずれも小幅にとどまり、景気を牽引するような力強さには物足りない。

    5.8月2日、政府は新たな景気対策を閣議決定した。民需や外需の牽引力に期待しづらい関西経済において、公的需要が景気を幾分下支えする役割を果たそう。ただし関西では景気対策の影響が限定的となることから、公的需要の寄与は全国に比べると小幅にとどまる。

    6.2015年の関西経済におけるインバウンド需要の影響は歴史的なものであった。(1)訪日外国人消費は2015年の関西GRPを0.76%程度説明している。関西におけるインバウンド・ツーリズムの影響力は年々高まっているが、特に、15年のGRPに対する寄与は前年の1.73倍となっている。(2)就業者についてみると、15年は1.10%程度押し上げたことがわかる。15年の雇用押し上げ効果は前年比1.67倍である。

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  • 稲田 義久

    第109回景気分析と予測<新経済対策を考慮し予測を小幅上方修正>

    経済予測

    経済予測 » Quarterly Report(日本)

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 下田 充

    ABSTRACT

    新経済対策を考慮し予測を小幅上方修正

    1.GDP1次速報値によれば、4-6月期実質GDP成長率は前期比年率+0.2%(前期比+0.0%)と2四半期連続のプラスとなった。実績は市場コンセンサスから幾分下振れた。内閣府は季節調整において閏年調整を行っておらず、その分4-6月期の成長率を押し下げたようである。閏年要因を均せば、年前半2四半期は小幅(1%程度)のプラス成長となり、景気は緩やかな回復といえよう。

    2.4-6月期実質GDP成長率への寄与度を見ると、内需は前期比+1.2%ポイントと2四半期連続のプラスだが、純輸出は同-1.0%ポイントと4四半期ぶりのマイナスとなった。民間最終消費支出と民間住宅が伸び公的固定資本形成も増加する一方で、民間企業設備と輸出が減少したのは懸念材料である。

    3.2015年以降足下まで、財貨・サービス輸出の伸びは前期比プラス・マイナスを繰り返しており、均せば横ばいの動きとなっている。BREXITの影響は当面は限定的だが、今後は一定の影響が出てくる。米国経済の回復は緩やかで、中国経済も低迷から脱出できていない。しばらくは、日本経済にとって輸出市場の回復見込みは薄い。

    4.4-6月期GDP1次速報値を織り込み、2016年度の実質GDP成長率は前年を幾分下回る+0.7%、17年度は+1.0%と予測する。前回(第108回)予測に比して、16年度0.2%ポイント、17年度0.3%ポイント、いずれも上方修正となった。16年度は純輸出が世界経済の低迷、円高の進行から前回予測から下方修正、一方民間需要と公的需要が上方修正された。民間最終消費支出や民間住宅が幾分回復するが、企業設備が低調で輸出が減少し、成長牽引役が不在の状況となる。

    5.前回予測における財政政策の想定は、消費増税の再延期と補正予算の効果のみであった。今回は新たに経済対策(「未来への投資を実現する経済対策」)の影響を考慮した結果、公的需要は16-17年度にわたり景気を下支えする。純輸出は横ばいだが、民間需要と公的需要が成長を支えるパターンである。

    6.足下消費者物価コア指数は前年比マイナスが続いている。これを織り込み、同指数のインフレ率は2016年度-0.2%、17年度+0.6%と予測。国内企業物価指数は-2.7%、+0.1%となる。GDPデフレータは+0.2%、+0.2%と予測している。日銀は7月の展望レポートの中で、消費者物価コア指数の見通しを、16年度+0.1%、17年度+1.7%としているが、実現には困難が伴うと思われる。

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  • CAO THI KHANH NGUYET

    APIR Commentary No.59<「魚か鉄か」― 台湾大手製鉄会社による海洋環境破壊事件からみた海外投資誘致と環境問題>

    インサイト

    インサイト » コメンタリー

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    CAO THI KHANH NGUYET

    ABSTRACT

    2016年4月半ばにベトナムの中部沿岸で、台湾の製鉄工場の廃液による魚の大量死が500キロ以上にわたって発生した。この事件は、漁業を生業とする漁師にとって一大事であり、また観光産業を重視する地方政府にとっても、外資誘致に取り組んでいる政府にとっても、大きな出来事であった。今回の事件は、経済を発展させるために海外からの資本誘致をひたすら優先させる道を歩んできたベトナムの政策スタンスに対して、大きな警鐘を鳴らすものとなった。本稿では今回の出来事を中心に、海外投資の誘致による工業化の推進と、それによって起こりうる環境汚染問題について、いくつかコメントを述べてみたい。

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  • 稲田 義久

    Kansai Economic Insight Monthly Vol.40-足下景気は緩やかな回復も、先行き不透明感が高まる-

    経済予測

    経済予測 » Monthly Report(関西)

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 林 万平 / 木下 祐輔 / James Brady / CAO THI KHANH NGUYET

    ABSTRACT

    -足下景気は緩やかな回復も、先行き不透明感が高まる-

    〇4-6月期の鉱工業生産指数は2期連続のプラスだが、6月は3カ月連続の前月比マイナスとなった。依然、生産の基調は弱い。

    〇7月の輸出は10カ月連続の前年比マイナス。輸入は11カ月連続の同マイナス。大幅な円高進行により輸入減が輸出減を上回る状況が続いている結果、貿易収支は6カ月連続の黒字。

    〇7月の消費者態度指数は収入の増え方指数の悪化もあり、3カ月ぶりに悪化した。一方、景気ウォッチャー現状判断DIは3カ月ぶりの改善。金融市場の落ち着きと政府の経済対策への期待から、先行き見通しも大幅に改善した。

    〇4月の関西2府4県の現金給与総額は3カ月連続の上昇。一方、5月の「関西コア」賃金指数は横ばいであった。

    〇6月の大型小売店の販売額は4カ月連続の前年比マイナス。スーパーは2カ月ぶりの同プラスも、百貨店は6カ月連続の同マイナスとなり、減速感が強まっている。

    〇6月の新設住宅着工戸数は6カ月ぶりの前年比マイナス。7月のマンション契約率は2カ月連続で70%台を上回った。

    〇6月の有効求人倍率は、5カ月連続の上昇。新規求人倍率は前月からの反動もあり、3カ月ぶりに下落した。完全失業率は2カ月ぶりに悪化したが、雇用情勢は堅調が続く。

    〇7月の公共工事請負金額は3カ月ぶりの前年比プラス、季節調整値でみれば、2カ月連続のプラス。

    〇7月の関空への訪日外客数は57万9,850人で42カ月連続のプラスであったが、5月の中国からの訪日外客数の伸びはマイナスとなった。

    〇中国7月の製造業購買担当者景況指数(PMI)は2カ月連続で前月から悪化。リコノミクス指数(APIR試算)は前年比7カ月連続で上昇しているものの、顕著な改善は依然として見られない。

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  • 稲田 義久

    訪日外国人消費の経済効果 関西各府県への影響の比較:2013-15年

    インサイト

    インサイト » トレンドウォッチ

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 下田 充

    ABSTRACT

    トレンドウォッチNo.21とNo.30おいて、筆者たちは、平成25年(2013年)及び平成26年(2014年)の関西への訪日外国人消費を推計し、関西各府県に及ぼす経済効果を比較分析した。分析の手法としては、関西各府県の観光消費ベクトルを推計し、APIR開発の関西地域間産業連関表を用いて訪日外国人消費が関西各府県の生産、所得や雇用にどの程度寄与したかを推計するものである。結果、2014年では、訪日外国人消費は関西の名目GRP(域内総生産)を0.44%(3,630億円)程度引き上げ、雇用を0.7%(6万6,000人)程度拡大したことがわかった。ただ訪日外国人消費の寄与を関西各府県別に見ると、効果は大阪府や京都府に集中しており、他県における寄与は大きくはなかった。ところで、2015年は訪日外国人数の伸びは前年より大幅に加速しており、「爆買い」という言葉に象徴されるような圧倒的な外国人消費の拡大が各府県経済にどのように寄与したかは興味のあるところである。本稿では前回までと同様の手法で平成27年(2015年)の経済効果を推計し、2013-15年の経年比較を行う。最後に、比較から得られる政策への含意が示される。

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  • 木下 祐輔

    求職者の減少が有効求人倍率押し上げに寄与~関西ではインバウンド求人増加と人口流出が影響~

    インサイト

    インサイト » トレンドウォッチ

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    木下 祐輔

    ABSTRACT

    2016年の関西経済は総じて横ばいないしは停滞が続いているが、唯一雇用関連指標だけが堅調な改善を続けている。そこで、本稿では、関西における有効求人倍率の動きに焦点を当て、分析を行った。

    有効求人倍率の上昇は、求人数の上昇と求職者数の減少に分解できる。関西では、近年、有効求人数の上昇に加えて、有効求職者数減少の影響が目立つ。この背景には、少子高齢化による労働力人口の減少や、元々求人超過であった職種でミスマッチが解消せず、求人倍率全体が上昇したといった全国と共通の要因がある。加えて、関西の特徴としては、インバウンド関連の求人増加や、2040代の若手・中堅世代が関東地域へ転出したことも影響していることがわかった。これらが複合的に重なった結果、有効求人倍率の上昇をもたらしたと見られる。

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  • 稲田 義久

    Kansai Economic Insight Monthly Vol.39

    経済予測

    経済予測 » Monthly Report(関西)

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 林 万平 / 木下 祐輔 / James Brady / CAO THI KHANH NGUYET

    ABSTRACT

    -雇用は好調も、厳しさを増す消費動向-
    ・5月の鉱工業生産指数は2カ月連続の前月比マイナス。生産は依然停滞基調である。
    ・6月の輸出は9カ月連続の前年比マイナス。輸入は10カ月連続の同マイナス。結果、貿易収支は5カ月連続の黒字。資源価格・為替レートも変動しており、今後貿易黒字の持続性については、注意が必要である。
    ・6月の消費者態度指数は消費増税が延期されたこともあり、2カ月連続の改善。一方、関西の景気ウォッチャー現状判断DIは2カ月連続の悪化。英国のEU離脱への不安やインバウンド関連の減速から、先行き判断DIも2カ月連続の悪化。
    ・4月の「関西コア」賃金指数は3カ月連続で上昇したものの、伸びは小幅にとどまっている。
    ・5月の大型小売店の販売額は3カ月連続の前年比マイナスとなり、減少幅は前月より拡大。百貨店、スーパーとも伸びが前年比マイナスとなったのは消費増税による反動減の影響が見られた2015年3月を除けば、2014年6月以来およそ2年ぶり。
    ・5月の新設住宅着工戸数は5カ月連続の前年比プラス。うち、持家、貸家は2桁増となった。6月のマンション契約率は3カ月ぶりに70%台を上回った。
    ・5月の有効求人倍率は、4カ月連続の上昇。新規求人倍率も2カ月連続の上昇。完全失業率は4カ月ぶりの改善となり、雇用情勢は好調を維持。
    ・6月の公共工事請負金額は2カ月連続の前年比マイナス、季節調整値でみれば、2カ月ぶりのプラス。結果、4-6月期は前期比+28.4%増加した。
    ・6月の関空への訪日外客数は51万2,100人で41カ月連続のプラスであった。
    ・4-6月期の実質GDP成長率は前年同期比+6.7%となり、前期から横ばい。依然として成長減速トレンドにある。一方、リコノミクス指数は6カ月連続で前年比上昇しており、中国経済に底打ちの兆しが見られるものの、引き続き注意が必要である。

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  • 木村 福成

    環太平洋経済連携協定(TPP)と東アジア経済統合

    研究プロジェクト

    研究プロジェクト » 2016年度 » アジア太平洋地域の経済的ダイナミズムと今後の行方

    RESEARCH LEADER : 
    木村 福成

    ABSTRACT

    リサーチリーダー

    上席研究員 木村福成 慶應義塾大学経済学部教授

     

    研究目的

    2015年10月の環太平洋連携協定(TPP)大筋合意は、東アジア諸国にも大きな影響を与えつつある。TPPが早期に批准・発効するかどうかについては、米議会の動向等、未だに不確定要素が存在する。しかし、協定文ドラフトが公表された今、TPP交渉参加国は対応策を練り、周辺国もTPPに参加するか否かについて真剣な検討を始めている。日EU経済連携協定の交渉は加速されつつあるが、一方で東アジア経済連携協定(RCEP)や日中韓FTAの交渉はモメンタムを失いつつあるように見える。

    このような新しいメガFTAsの展開のもと、東アジア諸国の経済はどのように変わっていくのか、またそれは日本あるいは関西の企業にとってどのような変化をもたらすのかは、緊急に検討すべき課題である。本プロジェクトでは、官民学のステークホルダーに対し直近の情報を提供しつつ、自由化と国際ルール作りにつき、経済と国際法の両面から分析を加えていく。

     

    研究内容

    第2年度となる2016年度は、TPPがASEANおよび東アジアの経済社会に与えうる影響、それに伴うASEAN経済統合やRCEPの変容、それらを踏まえての日本・関西企業のビジネスチャンスに焦点を絞り、国際政治学、国際経済法、国際貿易論、アジア経済論の気鋭の研究者を集め、議論を深めていく。

     

    リサーチャー

    阿部 顕三 大阪大学大学院経済学研究科教授
    春日 尚雄 福井県立大学地域経済研究所教授
    川島富士雄 神戸大学大学院法学研究科教授
    清水 一史 九州大学経済学研究院教授
    陳  永峰 東海大学副教授・日本地域研究センター長
    湯川  拓 大阪大学大学院国際公共政策研究科准教授

     

    <研究会の活動>

    研究会

    2016年  7月  4日  第1回研究会開催
    2016年  8月31日  第2回オープン研究会開催
    2016年12月13日  第3回オープン研究会開催

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  • 岩本 武和

    アジアの成長に資する開発金融

    研究プロジェクト

    研究プロジェクト » 2016年度 » アジア太平洋地域の経済的ダイナミズムと今後の行方

    RESEARCH LEADER : 
    岩本 武和

    ABSTRACT

    リサーチリーダー

    上席研究員 京都大学教授 岩本 武和

    研究目的

    2015年における新興国(主要30カ国)への資本流入は、対前年比で半減し、新興国から海外への資本流出も減少するが、ネットでは5,400億ドルの流出超過となる見通しである(IIF)。流出超は1988年以来27年ぶりである。中国経済の減速を背景に、国別では中国が4,775億㌦と過去最大の流出超過、アジアでは韓国743億㌦、マレーシア334億㌦、タイ216億㌦と続いている。新興国の外貨準備高は、過去15年間で11倍に増え、1997年の通貨危機のようなリスクは低いものの、海外からの資金を引き付け、それを原資として工業品の輸出で稼ぐ成長モデルは転換点を迎えている。こうした現状を背景に、本研究では、アジアにおける新しい成長モデルと開発金融のあり方を提示する。

    研究内容

    アジアの開発金融(アジアの成長・開発目的に資する投資のために動員される国内及び海外の公的及び民間の金融)について、以下のようなテーマを理論的かつ実証的に解明する。(1)アジア通貨危機、世界金融危機、中国経済の減速を画期として、「アジアの開発金融」がどのような影響を受けたか、(2)その課題をどのように克服しながら現在に至っているか、(3)「海外からの資金流入・海外への工業品輸出」に代わる将来のアジアの成長・開発モデルはどのようなものか。また、アジアインフラ投資銀行とインフラ開発、およびアジアにおける金融システム改革や銀行部門の資金調達等に関して、中国およびタイに現地調査を行う予定である。

    具体的には以下のようなテーマを取り上げ、各テーマについて1-2名のリサーチャーが担当。研究者のみならず、官民の現場で開発金融に携わっている実務家を招聘し、研究会やセミナーを開催する予定である。(1)アジア太平洋の資金フローの変化(主として研究者)、(2)東南アジアの銀行部門(アジアの民間銀行の在日支店、JBIC審査部)、(3)アジアのインフラ開発とアジアインフラ投資銀行(AIIB)の役割(JICA、中国関係の実務家)、(4)アジアにおける国際協力とABMI(アジア債券市場育成イニシアティブ)の現状(財務省、JBIC)、(5)マイクロ・ファイナンス(主として研究者)、(6)人民元改革とアジアの金融統合。

    統括

    林 敏彦 研究統括

    リサーチャー
    三重野文晴 京都大学 東南アジア研究所教授
    矢野 剛 京都大学 大学院経済学研究科准教授
    青木浩治 甲南大学 経済学部教授
    北野尚宏 国際協力機構 JICA研究所所長

    研究協力者
    高野久紀 京都大学 大学院経済学研究科准教授
    榊 茂樹 野村アセットマネジメント 運用調査本部チーフ・ストラテジスト

    リサーチアシスタント
    芦 苑雪 京都大学アジアアフリカ地域研究科

    期待される成果と社会還元のイメージ

    アジアにおける資本フローのパネルデータ(時系列とクロスセクションを統合したデータ)。アジアの民間企業・銀行部門の資金調達に関するパネルデータ。アジアのインフラ開発に関する州・県レベルのパネルデータ。マイクロ・ファイナンスに関する実験データ。マイクロ・ファイナンスに関する実験データ。アジアにおける新しい成長モデルと開発金融のあり方に関する報告書。
    政策立案、ビジネス戦略策定、将来予測の裏付けとなる理論的・実証的裏付け。公共財や研究インフラとなる研究成果やデータ。

    <研究会の活動>

    研究会
    ・2016年6月20日   第1回研究会開催  プレゼン資料はこちら
    ・2016年8月1日  第2回研究会開催?  プレゼン資料はこちら
    ・2016年10月17日  第3回研究会開催
    ・2016年11月21日  第4回研究会開催
    ・2017年2月13日  第5回研究会開催

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  • 後藤 健太

    中所得国の新展開

    研究プロジェクト

    研究プロジェクト » 2016年度 » アジア太平洋地域の経済的ダイナミズムと今後の行方

    RESEARCH LEADER : 
    後藤 健太

    ABSTRACT

    リサーチリーダー

    主席研究員 後藤健太 関西大学教授

     

    研究目的

    戦後の目覚ましい経済成長を通じ、アジアは世界経済の中で着実に存在感を高め、20世紀の終わりには「世界の工場」としてその地位を確立した。しかし21世紀に入ってからのアジアの隆盛を顧みたとき、今日のアジアが世界の工業製品のサプライヤーとしての立場から、消費と投資の側面を中心に、より重要なアクターへと変貌する萌芽的局面に差し掛かっているかのように見える。すでに所得水準で日本を越えてしまったシンガポールについて、そのポジションがアジアはもとより世界の中でも重要となった点はこれまでも言及されてきたことではあるが、中国をはじめマレーシア、タイ、インドネシアやベトナムなどといった「中所得国」がアジアで次々と台頭したことで、アジア域内の経済・ビジネス関係のあり方も一気に多極化・多様化した。こうした変化は、日本経済と企業にとって重要な意味を持つと思われる。つまり、これまで日本が一定のリーダーシップを発揮しながらアジアの国々と関わることで域内の発展を形作ることができた時代から、こうした「中所得国」の出現により、アジア域内でのこれまでのキャッチアップ型の序列、あるいは階層に準じた発展パターンに従わない、多様な発展ダイナミズムが起こりつつあることを示しているのではないだろうか。

    こうしたアジア観を前に、ますます深化する日本経済とアジアとの関係の多極化・多様化に注目し、まずはその現状を関西企業の立場から整理して理解することを試みる。その際、アジアの中でもダイナミックな展開を見せる、上述の「中所得国」に焦点を当てる。また、本研究案件ではさらに関西・アジア中所得国の双方にとってwin-winとなるような発展の可能性を、企業の戦略的な視点およびそれらを取り巻く制度的・環境的な視点から考察する。

     

    研究内容

    まずはアウトバウンド・インバウンドの双方で、現在どのような関係が日本経済・関西企業とアジア中所得国との間で展開しているのかを広くレビュー・分析し、可能であれば何らかの基準・方法で類型化する。

    具体的な研究方法としてはマクロレベルのデータの活用や先行研究の整理も必要に応じて実施するが、特に現在関西でアジアとの関わりを持っている企業や、これから持とうとする企業などへの個別インタビュー調査やフォーカス・グループ・ディスカッションなどを通じて、現場レベルの情報を汲み上げることで課題や可能性を考察する予定である。

    調査対象としては、関西在住の企業を中心とするが、場合によっては東南アジアへの出張調査もありうる(第1回目の研究会で検討予定)。

    東南アジアをはじめ、世界の中所得国についてはこれまで「中所得の罠」といったようなネガティブな観点からとらえたものが多かったが、本研究ではこれらの国々の展開可能性を日本(関西)経済との関係の中でポジティブにとらえなおしてみたい

     

    統括

    林 敏彦 APIR研究統括

    リサーチャー

    小井川広志 関西大学 商学部教授)

    夏田 郁 立命館アジア太平洋大学 国際経営学部准教授)

     

    期待される成果と社会還元のイメージ

    関西経済と中所得国東南アジアとの間で、アウトバウンド・インバウンドの双方でどのような関係が展開しているのかを広くレビュー・分析し、可能であれば何らかの基準・方法で類型化した概説的なレポートの作成を目指す。

    今後の東南アジアとのビジネス関係の構築の際の参考資料となるようにする。

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  • 大野 泉

    アジアの知日産業人材との戦略的ネットワーク構築

    研究プロジェクト

    研究プロジェクト » 2016年度 » アジア太平洋地域の経済的ダイナミズムと今後の行方

    RESEARCH LEADER : 
    大野 泉

    ABSTRACT

    リサーチリーダー

    上席研究員 大野 泉 政策研究大学院大学教授

     

    研究目的

    日本が今までアジア諸国への産業開発協力(政府開発援助(ODA)、官民連携など)を通じて形成してきた知日産業人材のネットワークを強化し、効果的に活用する戦略を検討し、提言をとりまとめることを目的とする。加えて、今後も知日産業人材を継続的に創出していく方策を検討する。これにより、新時代を迎えた日本企業の海外展開ニーズに応え、アジアとの共創パートナーシップの推進に貢献する。

    研究内容

    研究会、国内の経済協力機関(国、自治体、NPOなど)や企業からのヒアリング、アジアの知日産業人材からのヒアリング(招聘予定)、データ収集分析・文献調査を組み合わせて、以下について調査を行う。

    ・ 日本企業による海外直接投資の時代的変遷、およびこれに対応した日本のアジア諸国に対する産業開発協力や官民連携の取組(特に、1980年代のプラザ合意以降)

    ・ 今までの産業開発協力を通じて形成されたアジア諸国の知日産業人材・組織の基盤に関する検討・整理(JICA・HIDA・PREX・自治体・関経連等の取組についての事例分析、データ整理、関西の経験など)

    ・ 日本企業の最近の海外展開ニーズやアジア諸国の課題をふまえ、求められる知日産業人材のタイプに関する考察(類型化)、および企業や経済協力機関が直面している課題の検討・分析

    ・ アジア諸国の知日産業人材とのネットワーク強化、効果的活用に向けた戦略と具体策の提言

    ?研究会は、関経連、およびODAや経済協力を通じてアジア等の新興国・途上国の産業人材育成に取り組んでいる国・自治体・NPOなどの諸機関の協力を得て行う。さらに、アジア諸国(1~2ヵ国)から知日人材を招聘して研究会と公開フォーラムを開催し、アジアの視点から日本との産業人材ネットワーク強化への期待、今後取り組むべき課題等について意見交換する機会をつくる。

    統括

    林 敏彦 APIR研究統括

    リサーチャー

    大野健一 政策研究大学院大学 教授

    大西靖典 国際協力機構(JICA) 関西所長

    小川和久 海外産業人材育成協会(HIDA) 関西研修センター館長

    瀬戸口恵美子 太平洋人材交流センター(PREX) 国際交流部長

    小野知哉 神戸国際協力交流センター(KIC) 総務部長兼事業部長

    濱田浩一 関西経済連合会? 国際部副参与

    研究協力者

    領家 誠 大阪府商工労働部

    森 純一 英国カーディフ大学博士課程、前JICA専門家

    近畿通商産業局 通商部国際事業課

     

    期待される成果と社会還元のイメージ

    アジアの知日産業人材・組織に関する情報を収集・整理する。最近の日本企業の海外展開の動向をふまえ、求められる知日産業人材のタイプを類型化する。アジア諸国の知日産業人材とのネットワーク強化、その効果的活用に向けて、産官学連携で取り組んでいくための戦略を提示する。

    2016年2月の「関西財界セミナー」第3分科会の議論(の一部)のフォローアップとして、関経連や関西経済同友会、関心ある企業による次年度以降の取組の参考に資する。また、日本企業のアジア・ビジネス拡大において鍵となる、現地・国内の知日産業人材・組織に関する情報を提供する。JICA・HIDA・PREX・自治体・関経連等による産業人材育成(研修等)事業のさらなる改善の可能性、および組織横断的な連携の方向性を検討する材料を提供する。

    関連リンク

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  • 林 万平

    災害復興の総合政策的研究

    研究プロジェクト

    研究プロジェクト » 2016年度 » アジア太平洋地域の経済的ダイナミズムと今後の行方

    RESEARCH LEADER : 
    林 万平

    ABSTRACT

    リサーチリーダー

    研究員  林 万平

     

    研究目的

    地震、台風、洪水を始めとする自然災害が近年多発するアジア地域において、総合政策としての復興政策の重要性は高まってきていることを背景に、日本、フィリピン、タイ、インドネシアにおける災害後の復興政策について、経済的、行政的、市民的視点も含めて、求められる政策対応について考察する。

    研究内容

    過去に東日本大震災、フィリピン台風「ハイアン」、タイ洪水の分析を行ってきている(「アジアの自然災害リスク」、「アジアの自然災害リスクへの対処」、「日本企業立地先としての東アジア」、「日本、フィリピン、タイにおける災害復興のあり方」)。今年度はインドネシアの現地調査を行う。

    海外学会参加を通じて、調査研究によって得た分析結果を、海外学会で発表し、ディスカッションを通じて知見を深める。

    過年度の研究報告書(「アジアの自然災害リスク」、「アジアの自然災害リスクへの対処」、「日本企業立地先としての東アジア」、「日本、フィリピン、タイにおける災害復興のあり方」)にて行った2011年のタイ洪水、東日本大震災、2013年フィリピン台風「ハイアン」による被害とその後の復興についての分析を、最新の情報も加えた上で、再度整理する。

    以上の分析を比較し、各大災害の特性を踏まえつつ復興における問題点や課題について整理し、政策提言を行う。また、各分析結果をもとに本の出版に向けた準備を行う。

    統括

    林 敏彦 APIR研究統括

    リサーチャー

    Jose Tiusonco APIRインターン

    Mizan Bustanul Fuady Bisri APIRインターン

     

    期待される成果と社会還元のイメージ

    東日本大震災、タイ洪水、ヨランダ台風、インドネシア地震・津波災害による被害やその復興における問題や課題等についての分析を元に、報告書を執筆し公表する。政府・自治体は今後の災害復興や将来の災害対策に向けた参考にすることができる。市民・企業は、地域における防災体制の構築の上で参考にすることができる。

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  • CAO THI KHANH NGUYET

    国際経済統合とベトナムの銀行部門:健全なシステムへの道

    研究プロジェクト

    研究プロジェクト » 2016年度 » アジア太平洋地域の経済的ダイナミズムと今後の行方

    RESEARCH LEADER : 
    CAO THI KHANH NGUYET

    ABSTRACT

    リサーチリーダー

    研究員 CAO Thi Khanh NGUYET

     

    研究目的

    経済改革と国際経済への統合はベトナムの銀行部門に市場の多様化、国内銀行の効率性向上、経営ノウハウの習得、法制度の整備等、様々なメリットをもたらしている。例えば、外資保有の国内銀行では、重要なポストを海外の専門家が担当することがあり、国内銀行に外資銀行のノウハウが数多く移転されている。また、近代的な技術のベトナムへの普及という点でも、ベトナム経済に外資銀行が果たした役割は大きいだろう。しかし一方で、資本と経験の豊富な外資系銀行は、国内銀行に激しい競争を強いるという点も重要である。その結果、2006年~2013年において、外資系銀行が31行から53行まで増加したのに対し、ベトナム商業銀行は37行から33行に減少してきた。

    以上の背景を踏まえ、国際経済統合により、ベトナム銀行へもたらされるインパクトは議論、研究されるべきと考える。また、新時代に入り、健全な銀行システムに向かい、国内銀行は外資系銀行の資本、技術、経験を活用し、国内銀行の再編成、財政力の向上、銀行サービスの提供体制の強化が求められており、これに資する政策の提案も重要な課題である。

     

    研究内容

    文献研究及び実証分析(データ資源:ベトナム政府が公表したデータセット、金融機関の公開年間レポート等)。

    ベトナムの銀行システムの発展を評価するために、様々な資料に基づいて、設立された時から現在までの成長段階を分け、文献研究の他、各銀行のデータに基づく実証分析も行う。その他、ベトナムと同様、移行期経済を経験した中国と比較することで、共通点や相違点を明らかにする。

    統括

    林 敏彦 APIR研究統括

    研究アドバイザー

    藤原賢哉 神戸大学教授

    家森信善 神戸大学教授

    地主敏樹 神戸大学教授

    森 純一 京都大学名誉教授・ダナン大学経済大学客員教授

     

    期待される成果と社会還元のイメージ

    研究成果として、論文を執筆する。ホームページでの公表、学会報告、ジャーナル投稿、ベトナム語翻をベトナム国内ジャーナルに投稿することを通じて、関心のある研究者等にベトナム金融市場について理解した上で、ベトナム金融市場が健全性を向上する取り組むべき政策を議論してもらう。

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  • 木下 祐輔

    関西における健康投資の経済評価

    研究プロジェクト

    研究プロジェクト » 2016年度 » アジア太平洋地域の経済的ダイナミズムと今後の行方

    RESEARCH LEADER : 
    木下 祐輔

    ABSTRACT

    リサーチリーダー

    研究員 木下祐輔

     

    研究目的

    近年、高齢化の進展や医療ニーズの多様化を受け、健康・医療産業は大きく成長している。疾病は当事者だけでなく、彼らを支える家族や友人、勤める職場や地域社会にまで幅広い影響を与え、大きな経済・社会的損失をもたらす。そのため、疾病の治療や予防に対する関心が年々高まっている。

    2015年度の調査では、関西地域を対象に医療サービスの利用者である患者数や医療費の将来推計を行うことで医療需要の見通しを示すとともに、予防活動を通じた健康寿命の増進が医療費の抑制と、新たな雇用創出にもつながることを指摘した。

    しかし、医療費は疾病がもたらす損失の一部でしかない。なぜなら疾病は、疾患の治療にかかる直接的な費用(入院・外来患者に要する治療費、薬剤費用等)だけでなく、死亡によって喪失した将来所得、治療のための通院や労働損失や家族の支え(インフォーマルケア)といった間接的な損失も生じさせるためである。

    そのため、2016年度調査では、関西を対象に疾病がもたらす間接費用に着目し、「疾病コスト分析(Cost of Illness)」の考え方に基づき、損失額の推計を行う。その際、推計するだけでなく、関西における特徴についても分析を行いたいと考えている。

     

    研究内容

    2016年度調査は「疾病コスト分析(Cost of Illness)」の考え方に基づき、損失額の推計を行う。

    疾病コストは大きく、「直接費用(Direct cost):疾患の治療にかかる費用(入院・外来患者に要する治療費、薬剤費用、自立支援法関連サービス等)」と間接費用(Indirect Cost)の2つに分けられる。

    特に、間接費用については、疾患で早期に死亡したことによって喪失した将来所得(死亡費用(Mortality Cost))と疾病の治療をするための通院、あるいは病気の状態によって発生する労働損失(罹病費用(Morbidity Cost))に分けられる。また、罹患費用は、企業に勤める人の心身の不調による欠勤(Absenteeism)と出勤しているにも関わらず心身の不調により頭や体が働かず、生産性が低下してしまう状況(Presenteeism)に分けられる。米国の研究では、病気による経済損失の71%が生産性の低下が占め、欠勤の29%よりも大きな損失をもたらすため、問題であることが指摘されている。

    具体的な調査手法としては、以下の4つを想定している。

    (1)疾病コスト分析における文献調査

    分析の基本となる疾病コスト分析について、間接費用を中心に推計を行っている先行研究に着目する。具体的な推計方法の確認が目的。

    (2)アンケート調査の実施

    疾病がもたらす労働損失について、アンケート調査を実施することで、病欠や病気によって正常に頭が働かなかった時間などを調査する。アンケート調査項目は、在日米国商工会議所(ACCJ)が2011年に実施した「疾病の予防、早期発見及び経済的負担に関する意識調査」に基づき、検討する。

    (3)疾病コストの推計

    (1)(2)の調査結果に基づき、関西における疾病がもたらす間接費用の推計を行う。対象となる間接費用は、死亡費用と罹患費用(Absenteeism, Presenteeism)を想定している。また、2015年度に実施した医療費の推計結果を用いることで、関西における疾病コストの全体額を推計する。また、間接費用が直接費用の何倍になるかといった点についても検討したい。

    (4)健康経営を実施している企業へのインタビュー(仮)

    現在、国は従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に取り組んでいる企業に着目し、「健康経営を行う企業」として注目している。関西地域で健康経営に取り組む企業を対象に、健康経営を導入した経緯や効果などについてインタビューすることで、最終的な提言へと結び付けたいと考えている。

    上記に加え、昨年に引き続き既存の提言や報告書のサーベイを行うとともに、医療関係学会・各種セミナーへの参加、学識者へのヒアリングも必要に応じて実施する。

     

    統括

    稲田義久 APIR数量経済分析センターセンター長、甲南大学教授

    オブザーバー

    加藤久和 明治大学教授

    島 章弘 APIRシニアプロデューサー

     

    期待される成果と社会還元のイメージ

    今後は、医療ニーズの受け皿を病院から在宅へと移す施策も行われるなど、地域が社会保障の担い手となることが期待されている。地域単位での間接費用を推計した研究はこれまでになく、保健行政に取り組む自治体職員の参考になると考えられる。健康・医療関連企業にとっても疾病がもたらす費用に関する定量的な数値を公表することで、事業計画や市場規模見通し等にも利用可能できよう。また、健康経営については、現在東京証券取引所と共同で、健康経営に取り組む企業を「健康経営銘柄」として選定し公表しており、市場からの関心も高い。

  • 稲田 義久

    ツーリズム先進地域・関西をめざして

    研究プロジェクト

    研究プロジェクト » 2016年度 » 人口減少下における関西の成長戦略

    RESEARCH LEADER : 
    稲田 義久 / 林 敏彦

    ABSTRACT

    研究の目的

    ツーリズム先進諸国との比較・分析を踏まえ、観光資源豊富な関西地域にとってツーリズムが重要な成長分野であることを ”産業”、”雇用機会”、”文化発信”等の各視点から客観的に捉えると共に、今後基幹産業として育成していく上での様々な課題をハード・ソフト両面から総合的に検討・把握した上で、関西がツーリズム先進地域として今後さらに飛躍していくための長期的な観光投資戦略のあり方に関する提言をめざす。

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