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「2011年度」の研究・論文一覧 [ 3/3 ]

  • 熊坂 侑三

    今月のエコノミスト・ビュー(2011年7月)

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    インサイト » コメンタリー

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    熊坂 侑三

    ABSTRACT

    地域のことは地域が責任と権限を持つ「地域主権」を確実なものとするため、国においては地域主権戦略会議が設置(平成21年11月)され、明治以来 の中央集権体質から脱却し、新たな役割分担に向けて、検討が進められてきている。こうした中、関西の自治体が全国に先駆けて立ち上がり、平成22年12月 に府県レベルでは全国初の組織「関西広域連合」が誕生した。関西広域連合は、関西全体の広域行政を担う責任主体を確立し、地域の自己決定、自己責任を貫け る分権型社会を実現することを目指しており、当然、産業振興面においても、新たな広域産業行政の主体となるものである。
    関西広域連合では、23年度末に向けて関西産業ビジョンの策定が進められている。これまでの産業施策では、広域施策は経済産業局等が担当し、各自治 体はそれぞれの施策を独自に推進するという形をとってきた。その結果、各自治体の政策はほぼ均質的であり、いわば、金太郎飴のような状況となっている。各 自治体のポテンシャルを最大限生かすという明瞭な政策体系にはなっていないのである。
    そのような状況下、今なぜ広域連合を推進しなければならないのか。この背景には、この20年日本の所得(名目GDP、すなわち各産業の付加価値の合 計)が減少してきているという厳然たる事実がある。結論を言えば、日本はこの間付加価値を高めるビジネスモデルの創出に失敗してきたのである。ITグロー バル下の「要素価格均等化」に抗するビジネスモデルの導入とそれを促す政策が着実に実現されてこなかったことが原因といえよう。もう一つの原因として、 マーケットの縮小に対して適切な対応ができていなかったことも挙げられる。以上は日本全体の競争力低下の原因として指摘したが、この問題は関西にもそのま ま当てはまる。
    経済活動は自治体の枠を超えて、関西地域、全国、アジア、世界へと広がっている。今後確実に進展する人口の大幅減少や激化する国際的な地域間競争下 において、関西産業の国際競争力を強化していくためには、関西広域連合は構成府県間のみならず、国や他の自治体、産学との協力と創造による “シナジー(相乗)効果”を発揮し、関西が国内外から認知される広域経済圏(メガ・リージョン)を形成していくことが不可欠と考えられる。自治体間でパイ を奪い合うのではなく、地域全体でパイを大きくしてこそ関西発展につながるのである。産学をはじめとした関係機関とも適切な役割分担と密接な連携を行い、 文字通り「オール関西」により、目指す将来像の実現に向けて取り組んでいかなければならない。
    なおグローバルな地域間競争下での関西経済発展に向けた政策を論じる際のキーワードは、(1)ブランド化、(2)海外所得の取り込み、(3)人材の 育成・活用、(4)広域連携の推進である。この点については、2011年度版『関西経済白書』第6章において展開している(9月発刊予定)。
    注:関西広域連合は、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、和歌山県、鳥取県、徳島県の7府県により構成されるが、「産業振興」事務については、鳥取県を除く6府県が参加する(平成23年7月現在)。

    日本
    <4-6月期経済はマイナス成長だが4月には底を脱する>

    今回(7月18日)の予測では、一部の6月データとほとんどの5月データが更新されている。予測結果は、サプライチェーンの混乱が想定を上回るス ピードで改善していることを示唆している。今月の支出サイドモデルは、4-6月期の実質GDP成長率を、内需はほぼ横ばい、純輸出は大幅に縮小するため前 期比-1.1%、同年率-4.1%と予測する。先月(6月20日)の予測(-7.8%)から3.7%ポイントの上方修正となっている。先月の予測は、4月の実績と5-6月の時系列モデルの予測からなるものであったが、今回の予測は、4-5月の実績と6月の予測から推計されている。したがって、上方修正は5月の実績と予測の差から来ており、足元の回復のスピードは予想を大幅に上回るペースで推移していることがわかる。ま たグラフ(予測動態)からわかるように、ほぼすべての4月のデータが更新された6月の半ばの予測は景気がすでに底を打っていることを示している。すなわ ち、4月に景気は底を脱し上昇のモメンタムがついてきたことを示唆している。今後の注目点は、6月データの回復スピードである。特に、依然成長にマイナス の寄与度となっている純輸出の動向が気になる。21日に発表される6月の貿易統計の結果は要注意である。
    先行き7-9月期の実質GDP成長率は、内需は拡大し純輸出のマイナス寄与度幅が縮小するため、前期比+0.5%、同年率+1.8%と予測する。先月の予測から小幅の上方修正にとどまっている。
    4-6月期の民間需要を見れば、実質民間最終消費支出は前期比-0.6%となる。実質民間住宅は同-4.1%減少し、実質民間企業設備は同+0.6%増加 する。一方公的需要では、実質政府最終消費支出は同+0.6%、実質公的固定資本形成は同-4.3%となる。このため、国内需要の実質GDP成長率(前期 比-1.1%)に対する寄与度は+0.1%ポイントとほぼ横ばいである。
    財貨・サービスの実質輸出は同-5.6%減少し、実質輸入は同+2.5%増加する。この結果、実質純輸出の実質GDP成長率に対する貢献度は-1.2%ポイントとなる。
    主成分分析モデルは、4-6月期の実質GDP成長率を前期比年率-4.4%と予測している。また7-9月期を同+1.4%とみている。この結果、支出サイ ド・主成分分析モデルの実質GDP平均成長率(前期比年率)は、4-6月期が-4.3%、7-9月期が+1.6%となる。

    [[稲田義久 KISER所長 マクロ経済分析プロジェクト主査 甲南大学]]

    米国
    <4-6月期の成長率は1.0%?1.5%?景気回復のペースは更に弱まっている>

    前月のこのコラムで述べたように、支出・所得サイドから予測された実質GDP成長率の乖離は5月の輸出入を更新することで収束し始めた。超短期予測 と大きく異なり、5月の輸出が前月比-0.6%と下落した一方、輸入は同+2.6%と大きく伸びた。その結果、純輸出が大幅に下方修正され、支出(需要) サイドからの4-6月期の実質GDP成長率(前期比年率)は7月12日の予測では前週の2.65%から1.0%にまで大きく下方修正された(グラフ参 照)。一方、所得サイドからの実質GDP伸び率はGDP価格デフレーターが下方に修正されたことから前週の0.99%から1.15%へと上方修正された。 グラフは7月13日(6月の輸出入価格、連邦政府支出)、14日(5月の企業在庫、6月の小売販売、生産者物価指数)、15日(6月の消費者物価指数、鉱 工業生産指数)の日々の超短期予測の結果を示している(超短期予測は通常は週次ベースで予測を行っているが、今回は日次ベースで行った)。このグラフか ら、4-6月期の実質GDP伸び率は1.0%?1.5%と予測予想できる。この予測値は、市場のコンセンサスより幾分低い。超短期予測からみると、米経済 の回復力は1-3月期よりも4-6月期において、より弱まったといえる。
    これに対してバーナンキFRB議長は景気の見方を7月13日の議会証言で次のように述べている。

    - 経済は今もってソフトリカバリーを続けている。
    - ここ数ヵ月経済はモメンタムを失っている。
    - 経済成長に関して注意深くなるのは理解できる。
    - 景気回復のペースは7-9月期以降速まるだろう。
    - 我々は経済がどこに行こうとしているのか分からない。
    FRBとしては、景気回復のペースが4-6月期に入り前期より更に弱くなっているが、かといってバランスシートは拡大しレバレッジ比率がリーマン ショック時のベアースターンズより悪い50を超えていれば、簡単にQE3の導入を明言することもできない。FRBは経済成長率が3%を超えた時に出口戦略 を始め、政策金利をこれまでに0.5%?1.0%程度上げておけば、今の時点で0.5%の政策金利の引き下げができた。高い失業率に余りにもこだわり、出 口戦略を遅らせてきたことの付けが今に回っている。そのため、経済がどこに行こうとしているか分からないといいながら、7-9月期以降に景気回復のペース が速まるだろうと言わざるをえない。個人消費支出の伸び率(4-6月期)が前期比1.0%程度にまで落ちてきた今、7-9月期になって景気回復のペースが 速まるというのもおかしな話である。

    [[熊坂有三 ITエコノミー]]

  • 熊坂 侑三

    今月のトピックス(2011年6月)

    インサイト

    インサイト » コメンタリー

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    熊坂 侑三

    ABSTRACT

    世界経済の見通しについて、足元の景気は一時的な停滞にとどまるという見方が増えつつあるが、先行きについては景気のダウンサイドリスクを強調する傾向 が高まっている。足元の見方の背景には米国と日本経済の下方修正があり、実際、4-6月期の日米の超短期予測はこの見方を支持している。
    確かに先行きのダウンサイドリスクは高まりつつあるが、足元の停滞は二番底に陥るのではなく一時的な軟化(ソフトパッチ)にとどまろう。2011年後半 に日本経済は急速に回復するであろうし、米国経済も原油価格の軟化が続くことにより民間消費や設備投資を支え成長は年前半から幾分か加速するものとみてい る。
    世界経済が直面するダウンサイドリスクとして、これまで3つの要因に注目してきた。(1)緊縮財政、(2)原油価格の高騰、(3)東日本大震災の影響で ある。世界経済にとって3つの逆風のうち(2)の要因は幾分緩和されてきたし、(3)のうちサプライチェーンの混乱も急速に改善されつつある。いまや主要 なダウンサイドリスクは、緊縮財政、債務問題に対する不確実性の高まりである。逆に、アップサイドリスクとしては、原油価格が低下することから家計のバラ ンスシート制約が緩和し、加えて企業の潤沢なキャシュフローから民間消費ならびに設備投資が堅調に推移することを指摘できる。
    当研究所では日本経済の四半期予測を定期的に発表しているが、その際、外生変数として海外経済、特に、米国、EU、中国経済の動向に注目している。簡単に地域の見通しをスケッチしておこう。
    米国経済:米国超短期予測が見ているように2011年前半の米国経済の成長率は2%程度の低成長にとどまるものと考 えられるが、景気の二番底(ダブルディップ・リセッション)は避けられよう。原油価格の低下でインフレが落ち着くことにより潜在的な需要(家計消費と企業 設備)が出てこよう。また輸出も期待できる。
    EU経済:足元、EU経済にとって最大の試練はギリシャ問題である。短期的にはギリシャへの資金供与は見込まれる (すなわち、デフォルトは回避できる)が、長期的には資金の需給ギャップをどのように埋めるかの道筋は立っていない。金融機関のリスク許容度が低下した場 合は、景気へのダウンサイドリスクは高まる。
    中国経済:最近の中国経済は民間企業部門ですでに軟化の兆しが見られる。不動産価格の過熱感は十分とは言えないが収 まりつつあり、5月の貨幣供給の伸びは2008年以来の低い値となった。しかし、同月の消費者物価指数でみたインフレ率は前年比+5.5%を記録し、政府 の目標値を上回っている。このため、すでに高い銀行の支払準備率は今後も引き上げられよう。一方で、工業生産や都市部固定資産投資は堅調である。そのた め、中国経済のハードランディングは避けられようが、年後半の経済は減速基調となろう。
    日本経済は、2011年後半に輸出の供給制約が緩みまた復興需要の効果が出てくることにより、急速に加速するとみている。しかし、先行きのダウンサイド リスクが高まりつつあることから、輸出の供給制約が解消できたとしても、順調に輸出が成長のドライバーとなるとは限らないのである。(稲田義久)

    日本
    <4月データは反転回復を示すが、4-6月期経済は依然マイナス成長>

    6月20日の予測では、多くの4月データが更新されている。データの多くは前月比でプラス反転して回復のスピードを速めているが、3月の落ち込みが大きいため水準は1-3月期平均より相当低いことに注意が必要である。
    例えば、4月の鉱工業生産指数(確報値)は前月比+1.6%上昇し、前月の大幅落ち込み(同-15.5%)から反転した。しかし、4月の実績は1-3月 期平均よりなお9.0%低い。製造工業生産予測調査によると、5月の製造工業の生産は前月比+8.0%、6月は同+7.7%と引き続き増産が予想されてい るが、仮に実現しても1-3月期の水準を超えるのは7-9月期となろう。また設備投資動向を示す資本財出荷指数は4月に前月比横ばいとなったものの、 1-3月期平均より9.9%低い水準である。
    家計消費の代表的な指標である消費総合指数は4月に前月比+2.4%と大幅上昇し、2ヵ月ぶりのプラスとなったが、震災の影響もあり1-3月期平均比 0.7%低い水準に留まっている。また4月の新設住宅着工数は前月比-1.1%と減少し、2ヵ月連続のマイナス。4月は1-3月期平均比-5.2%と減少 しており、足下住宅着工は下落傾向にある。
    一方で、復興需要が期待されるところであるが、公共投資関連のデータもさえない。4月の公共工事(建設総合統計ベース)は前年比-9.3%と減少した。 13ヵ月連続のマイナス。季節調整値ベースでも3ヵ月連続のマイナスである。注意すべきは、東日本大震災の影響により宮城県の4月分が取りまとめられてい ないことである。このため政府は前年比を発表していない。4月の前年比はわれわれが仮に計算したもので、厳密には問題がある。建設総合統計における 2010年度の宮城県のウェイトは1.9%であるが、これを考慮しても、復旧・復興はまだまだこれからである。
    このように内需の縮小、外需の大幅縮小のため、6月20日の支出サイドモデルは、4-6月期の実質GDP成長率を前期比-2.0%、同年率-7.8%と 大幅なマイナスを予測する。一方、7-9月期の実質GDP成長率を、内需と純輸出が小幅拡大するため、前期比+0.4%、同年率+1.4%と予測する。
    4-6月期の国内需要を見れば、実質民間最終消費支出は前期比-0.5%となる。実質民間住宅は同-5.2%減少し、実質民間企業設備も同-3.2%と 減少する。実質政府最終消費支出は同0.6%増加するが、実質公的固定資本形成は同-4.1%となる。このため、国内需要の実質GDP成長率(前期比 -2.0%)に対する寄与度は-0.7%ポイントとなる。
    財貨・サービスの実質輸出は同-8.1%減少し、実質輸入は同0.1%増加する。この結果、実質純輸出の実質GDP成長率に対する貢献度は-1.3%ポイントとなる。
    今後、5-6月のデータが更新されるにつれて4-6月期の実質GDP成長率は上方修正されマイナス幅が縮小してくるが、依然マイナス成長にとどまろう。 問題は7-9月期以降の回復のスピードが問題である。米国経済の低調、中国経済の減速傾向は、供給能力回復をドライバーとして輸出による急速な回復を期待 する日本経済にとって、ダウンサイドリスクを高めてきているといえよう。

    [[稲田義久 KISER所長 マクロ経済分析プロジェクト主査 甲南大学]]

    米国
    <4月の輸出入統計で米景気減速懸念が解消?>

    グラフ(4-6月期米国経済の超短期予測動態)を見れば、4月半ばまでは1-3月期の景気スローダウンの影響が見られ、その後景気が拡大に転じたものの 労働市場の改善が進まず、5月13日から6月3日の超短期予測は、市場、エコノミスト達が懸念したとおりの景気のスローダウンを示している。しかし、6月 9日に発表された4月の貿易赤字は、輸出が前月比+1.3%増加、輸入が同-0.5%減により、437億ドルへと3月の468億ドルから大きく改善した。
    このデータにより米景気のスローダウン懸念が薄れ、エコノミストは4-6月期の経済成長率を上方に修正するようになった。確かに、超短期予測も4月の輸 出入を更新することによって、需要サイドからの同期の実質GDP伸び率を6月3日の前期比年率+0.9%から+3.9%へと大きく上方修正した。しかし、 所得サイドからの実質GDP伸び率の予測は6月3日の+1.0%から+0.4%へと逆に下方に修正されている。すなわち、支出サイドでは4月の大幅な純輸 出の改善が名目・実質GDPの上方修正をもたらしたが、所得サイドからの名目GDPは6月3日と6月10日のあいだではほとんど変化せず、輸入の大幅な減 少からGDPデフレーターが上方に修正され、その結果所得サイドからの実質GDPが下方に修正されたのである。
    すなわち、支出サイドだけに注目すれば確かに景気のスローダウン懸念はなくなるものの、所得サイドをみればやはり景気のスローダウン懸念が残る。理論的 には支出サイド、所得サイドからのGDPは一致するわけであるから、今後の超短期予測では次のようなことが生じるだろう。
    (1) 5月、6月の輸入が現時点の超短期予測より大きく伸び、支出サイドからのGDPを  下方に修正する。
    (2) 6月の雇用がかなり改善し、個人所得が増加し所得サイドからのGDPを上方に修正  する。5月の雇用統計の上方への改定も考えられる。
    (3) 5月の鉱工業生産指数、小売販売統計を更新することで法人所得が増加し、その結  果所得サイドからのGDPが上方に修正される。
    この2週間の超短期予測からみれば、4-6月期野成長率は支出・所得の両サイドからの実質GDP伸び率の平均値の1.5%?2%程度(前期と同程度)が 妥当であろう。すなわち、ロバート・シラー教授が懸念しているようなダブルディップ・リセッションの可能性は極めて小さいと言える。しかし、単に4月の貿 易赤字の大幅改善により景気回復に楽観的になるのも問題である。景気の現状を正しく把握するには、常に支出・所得の両サイドをみることが重要である。

    [[熊坂有三 ITエコノミー]]

  • 村上 一真

    第10号 関西エコノミックインサイト

    経済予測

    経済予測 » Quarterly Report(関西)

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    村上 一真 / 山本 周吾 / 岡野 光洋

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  • 村上 一真

    東日本大震災からの復興における関西の役割

    インサイト

    インサイト » 分析レポート

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    村上 一真

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    関西エコノミックインサイト 第10号(2011年6月3日)

    経済予測

    経済予測 » Quarterly Report(関西)

     / DATE : 

    ABSTRACT

    「日本経済のマクロ経済分析?関西経済の現況と予測?」研究成果報告
    (主査: 稲田義久・甲南大学経済学部教授
    高林喜久生・関西学院大学経済学部教授)

    「関西エコノミックインサイト」は、関西経済の現況の解説と、計量モデルによる将来予測を行ったレポートです。関西社会経済研究所が公表する日本経済予測と連動しており、原則として四半期ごとに公表いたします。

    第10号(2011年6月)の概要は以下の通りです。
    1.関西は東日本大震災の直接的な被害を受けなかったが、全国的な自粛・買い控えムードと風評被害によって消費が停滞し、さらに生産も、電力問題とサプライチェーンの寸断による供給制約の影響を少なからず受けた。

    2.震災後、全国の輸出が減少する中、関西は小幅ながら増加を維持し、代替輸出の拠点としての機能を発揮した(4月シェア25.3%と26年ぶりの高水準)。
    また、3月の鉱工業生産の減少幅も全国と比べて軽微に止まり、代替生産の機能も担った。
    加えて関西では百貨店の増床等の影響もあり消費の落ち込みは避けられた。

    3.東日本大震災の影響と日本経済の最新予測を織り込み、関西の実質GRP成長率見通しを2011年度+0.5%、2012年度+2.0%と改訂した。震 災の影響で11年度は前回よりも-1.6%ポイントの下方修正であるが、プラス成長を維持する。成長率寄与度をみると、全国とは異なり民需と特に外需が引 き続き関西経済の成長の牽引役となる。
    公的需要は、被災地への重点配分により関西ではマイナス要因になる。

    4.今後の関西経済へのリスク要因の一つとして電力不足にともなう生産への懸念がある。
    7-9月に5%の電力供給減が生じたならば、関西のGRPは0.5%程度減少すると予想される。

    5.東日本大震災からの復興における関西の役割としては、①学術研究・イノベーション、②観光産業、③新エネ・省エネビジネスの3つの強みを活かした取り組みを進めることが必要である。

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    日本経済財政中期モデルの開発:財政の持続可能性のシミュレーション分析

    ディスカッションペーパー

    ディスカッションペーパー

     / DATE : 

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  • 稲田 義久

    第87回 景気分析と予測(2011年5月26日)

    経済予測

    経済予測 » Quarterly Report(日本)

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 高林 喜久生

    ABSTRACT

    「日本経済のマクロ経済分析」研究成果報告
    (主査: 稲田義久・甲南大学経済学部教授
    高林喜久生・関西学院大学経済学部教授)

    当研究所のマクロ経済分析プロジェクトチームでは、在阪の大手企業・団体の若手スタッフの参加の下で研究会を組織し、予測に必要な景気の現状分析、外生変数の想定について共同で作業を行っている。
    「景気分析と予測」については、四半期ごとに年4回(2003年度までは年2回)発表している。
    2005年度より四半期予測作業において、日本経済超短期予測モデル(CQM)による、直近2四半期のより正確な予測値を取り入れている。
    ポイントは以下の通り。

    *GDP1次速報値によれば、1-3月期の実質GDP成長率は前期比年率-3.7%と市場の見方を下回った。震災の影響により2期連続のマイナスと なったが、年初から回復の勢いが強かったので、2010年度の実質GDP成長率は前年度比+2.3%と3年ぶりのプラスとなった。2006年度以来の大き さである。

    *1-3月期GDP1次速報値を織り込み、2011年度実質GDP成長率を-0.1%、2012年度を+2.9%と予測する。前回から2.1%ポイ ント下方に、1.2%ポイント上方にそれぞれ修正した。ともに震災が影響しており、2012年度は復興需要による成長の加速が反映されている。

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  • 熊坂 侑三

    今月のトピックス(2011年5月)

    インサイト

    インサイト » コメンタリー

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    熊坂 侑三

    ABSTRACT

    今月のトピックスでも引き続き東日本大震災の問題を取り扱いたい。
    気になるコラムがあった。日経新聞5月9日付の『景気指標』の「復興論議は現地直視から」である。コラムのヘッドラインが示すように、適切な震災に対する 政策は正しい現実認識から始まる。すなわち、「復興計画、復興財源の議論に参加するすべての関係者にはまず被災地を歩いて現実を自分の目で認識することを 勧めたい」としていることである。阪神・淡路大震災と比較して今回の震災は被害が広域に及ぶという点で大きく異なる。また被災県ごとに被害の内容が大きく 異なり、本当に必要な復興計画は地域ごとに多様なものになるのである。関西社会経済研究所ではまずはマクロ的な被害分析から始め、復旧・復興に向けての提 言を取り扱う予定であるが、上記コラムの指摘は我々にとっては喉に刺さるとげのようなものである。
    このことは気になっていたがチャンスが巡ってきた。地震発生2ヵ月後の5月12日に関経連『震災復興対策特別委員会』(安藤圭一委員長)の東北ヒアリング 調査に参加させていただいたことである。宮城県を中心に一日で4箇所のヒアリングを行うことができた。強行軍ではあったが成果の多い調査であった。調査先 は、(1)物流、(2)製造業、(3)建設業、(4)政策金融と現状での復旧・復興状況を知る上でバランスのとれたものである。以下ヒアリングの結果を簡 単にコメントする。

    【物流】
    サプライチェーンの混乱については、自動車と電子機器について影響の大きさを伝える向きが多いが、食料などの流通保管のチェーンも大きな被害を受けてい る。最初の調査先は鴻池運輸仙台食品流通センターである。同センターは本震と4月7日の最大余震で事務所が使用不能となり、現在仮事務所使用中である。倉 庫は建物に大きな被害はなかったものの、中のラック、商品に被害がでている。特に、冷蔵設備の被災は商品に微妙な影響を与える。4月20日から通常業務を 再開したが、震災直後、道路は普通車でも通りにくい状態が10日間くらい続き、また停電が1週間続いたとのことであった。
    福島県の相馬、岩手県の三陸沿岸などではまだ配送がストップしている。それ以外は通常通りに回復している。仙台では主要量販店の食品納入センターが多いエ リアが被害を受けた。7割くらい受入れ体制はできたものの、消費の落ち込みもあり、現在荷物量は震災前の4?5割程度の回復にとどまっている。

    【製造業】
    第二の訪問先は段ボール製造のレンゴー仙台工場パッケージングディビジョンである。工場は仙台湾沿岸に位置しており地震発生1時間後に津波が襲った。津波 は社屋を抜けてあらゆるものを流したため工場は壊滅的で再開不能の状況にある。近隣には大企業の工場や配送設備が多くありダメージの大きい典型的な被災地 域である。ただ印象的であったのは、リーダーの判断の早さであった。レンゴーの工場移転については社長が従業員の意見も聞いて即断されたようである。内陸 部の工業団地に土地を即座に手当てし、結果的には雇用が現地で確保されることとなった。これは稀有な復興の一例である。
    宮城県の復興については、宮城県と沿岸部の基礎自治体とで建築規制などの問題で意見がなかなか一致しないようである。理想と現実のはざまで、企業を現地に 残すことに苦慮している。湾岸地区以外にある8割の企業は年内再建と言っているが、湾岸地区の2割はまだ行方不明者がいて、再建の手前の状況である。
    各社の段ボール需要をみると、復興は予想より早いが、マーケットではバラツキがある。宮城県は商業や水産業が多い。商業ではすでに荷動きの動きが見られるが、魚市場の復旧はまだ塩釜のみである。

    【建設業】
    宮城県の沿岸部の惨状を見て内陸部に移動すると、震災についてはかなり異なる印象を受ける。第三の訪問先は仙台市内の竹中工務店東北支店である。
    今回は震災の特徴は地震そのものの被害よりも、津波による広範囲の影響が大きいことである。阪神・淡路大震災以降、地震への備えはしっかりしていたが、津 波に対しては十分でなかったようである。また、当時と異なるところは、景気回復につれ建築資材価格が上げ基調のところに今回の地震が起こっており、深刻な 状況ではないものの資材価格の高騰を懸念しているとのことであった。
    復興をどういう方向に持っていくべきかについて意見交換をした。建築制限を6ヵ月としているが、被災市町村には職員も被災し、限られた期間内で復興の明確 な方向付けはなかなか厳しいとの印象を受けた。住居を高台に移せというのは現実性に乏しい、高さ5?6メートルの防波堤とRC防災拠点を組み合わせるべき との意見も聞かれた。堅牢な建物を免震でつくるということが重要で、1000年に一度のため住居を移すより、避難して被害をミニマム化することが重要との 指摘もなされた。
    建設業のサプライチェーンに問題はあるかについて聞いてみた。建設産業は、本来はエリアごとに分散した地場産業的なものだが、エレベーターなどはある部品 がないため復旧できない。エレベーターを設置できないことから、新築のビルにテナントが入れないという影響も表れているとのことであった。
    広域連合の促進について質問したが、震災後連携を強める動きは出てきているがまだまだの印象を受けた。ただ観光については、夏祭りで東北はすでに連携はし ている。また復興院のような機能を仙台におくべきではとの質問に対しては、政府には現地でもっと現場を見てほしいとの意見があった。

    【政策金融】
    最後の訪問先は、日本政策金融公庫仙台支店である。大企業のみならず是非とも中小企業や農林水産業の状況を聞きたかったためである。
    東京商工リサーチによれば、石巻、気仙沼の7割の企業が被害を受けており、鳴子、作並、秋保温泉では風評被害が出ており、震災以後予約が全部キャンセルになり先行きに不安を持っている。GWに客足は一時回復したが、その後また減少している。
    同公庫によれば、管轄地域企業からの相談の3割が返済の相談、7割が融資の相談である。福島県のみが返済相談と融資相談の割合が半々となっており、同県で は原発の問題があり復旧・復興の遅れが目立つ。ちなみに、震災後の融資申込金額は平時の年間申込金額と同規模になっている。
    沿岸部は企業の集積地で、同行の取引先の4割が被災した。経営者の再建への意志は高いものの、生産の大幅縮小を余儀なくされている。この結果いわゆる二重 債務問題が生じている。これに対して、国民生活事業については、ニューローンとリスケジューリングを並行してできるだけ対応しているが、それは今後の見通 しあるものが基本となる。
    農林漁業者のマインドが変わって復興への意欲が出てきている。農業はすでに6次産業化の動きがある。企業参入、大規模化、農地が使えるまで植物工場を使う 動きもある。漁業はまだだが、それでも協同化など、かってない動きがある。6次産業化すると、資金管理、マーケティング等の必要が出てくるので、結局、復 興は人の問題(human capital)だということに尽きる。
    漁業者の復活と水産加工業等の復活は車の両輪である。協同化して頑張ろうという動きがある。そのために冷蔵庫や作業場の共同化、大企業と中小企業の連携、 スーパーでの地産地消フェアなど、創意工夫がみられる。ただ、株式会社化は漁業権、農地法等で身動きが取れない状況でありブレイクスルーが難しい。株式会 社化より今ある三セク、農業公社を活用すべきとの意見も聞かれた。
    以上、今回の宮城県を中心とした被災地調査では、はからずも冒頭紹介したコラムの忠告を確認するものとなった。たしかに、被害状況は多様であり、復興計画も多様でなければならない。重要なのは人の問題(human capital)であるとの印象が強かった。(稲田義久)

    日本
    <4-6月期には最悪期を脱するがマイナス成長>

    19日発表のGDP1次速報値によれば、1-3月期の実質GDP成長率は前期比-0.9%、同年率-3.7%となり、2期連続のマイナスとなった。
    実質GDP成長率は市場コンセンサス(ESPフォーキャスト5月調査:前期比年率-1.53%)を下回った。一方、最終週における超短期モデル(支出サイ ド)予測は同-0.1%となった。予測動態をみると、1-2月期の基礎統計(生産、小売、貿易等)は好調であったため、超短期予測は3月の後半(1-2月 期データが利用可能となる)では同5%を超える成長を予測していた。しかし、3月データ(震災の影響が出る)が入手可能となる4月半ば以降、明瞭なダウン トレンドを示し、1-3月期のデータが出尽くす5月には明瞭にマイナスの領域に入った。3月11日の東日本大震災のインパクトがいかに大きかったか容易に 想像がつく。
    5月20日の予測では、1-3月期GDP1次速報値と4月の一部のデータが更新された。その結果、支出サイドモデルは、4-6月期の実質GDP成長率を、内需は停滞し純輸出は大幅に縮小するため前期比-0.8%、同年率-3.1%と予測する。また7-9月期の実質GDP成長率を、内需は反転するが純輸出が引き続き縮小するため、前期比+0.1%、同年率+0.6%と予測する。日本経済は4-6月期に最悪期を脱し、7-9月期にプラス反転するであろう。
    4-6月期の国内需要を見れば、民間需要では、実質民間最終消費支出は前期比-0.4%となる。実質民間住宅は同-4.7%減少し、実質民間企業設備も同 -1.9%減少する。一方、公的需要では、実質政府最終消費支出は同+0.8%、実質公的固定資本形成は同+5.1%となる。このため、国内需要の実質 GDP成長率(前期比-0.8%)に対する寄与度は0.0%ポイントとなる。
    問題は純輸出である。ライフラインや生産ラインの復旧で最悪期を脱するが、依然として供給制約のため、財貨・サービスの実質輸出は同-4.5%減少する。 一方、実質輸入は同+0.4%増加する。このため、実質純輸出の実質GDP成長率に対する寄与度は-0.8%ポイントと大きな成長制約となる。
    主成分分析モデルは、4-6月期の実質GDP成長率を前期比年率-3.0%と予測している。また7-9月期を同+1.6%とみている。この結果、支出サイ ド・主成分分析モデルの実質GDP平均成長率(前期比年率)は、4-6月期が-3.1%、7-9月期が+1.1%となる。

    [[稲田義久 KISERマクロ経済分析プロジェクト主査 甲南大学]]

    米国
    <二つの懸念?景気スローダウンとインフレ?>

    2011年1-3月期の実質GDP成長率(前期比年率、速報値)は、超短期モデルの支出サイドからの最終予測値の1.7%とほとんど同じ1.8%となった。
    この1.8%の経済成長率に対して、市場は”disappointed(失望的)”、政策当局は”sluggish(のろのろした)”成長率と解釈し、ほとんどの連銀エコノミストは異常な超金融緩和政策の出口戦略を実行することを考えていない。
    一方、1-3月期のヘッドラインインフレーション(個人消費支出デフレータ:前期比年率)は3.8%とインフレを懸念すべき上昇率になっている。もちろ ん、連銀はコアインフレ(コアCPI)をまだ2%以下に安定しており、コモディティー価格の高騰などの影響をうけるヘッドラインインフレの上昇は一時的と の見方をする。しかし、生活者にとって重要なのは食料・ガソリンを購入しなければならないヘッドラインインフレーションである。
    すなわち、今後の米景気を判断する上で大事なことは、(1)1-3月期における景気のスローダウンが”ソフトパッチ(一時的な景気のスローダウン)”だっ たのか、そして(2)ヘッドラインインフレーションは連銀の言うように一時的なものであり、将来の期待インフレは安定しているかにある。
    グラフから米景気のスローダウンは4月半ばに底入れし、その後再び拡大に向かっていることが分かる。5月13日時点における実質GDP成長率は2%にまで 回復している。経済動向を実質総需要、実質国内需要、実質国内最終需要でみても、景気は4月半ばから拡大に転じ、それらの成長率は2.8%?3.4%にま でなっている。すなわち、1-3月期の景気のスローダウンがソフトパッチであった可能性が高い。一方、超短期予測モデルによるヘッドラインインフレーション(4-6月期)は上昇トレンドにあり、3.8%と予測している。一方、コアインフレも2%に達するとの予測で、連銀のインフレ許容範囲の上限に達している。
    最近、ミネアポリス連銀のNarayana Kocherlakota総裁は年末までに50ベーシスポイントの政策金利引き上げの可能性を示唆した。もちろん、今の連銀エコノミストにとっては想定外 の話しである。しかし、超短期予測を見る限り、Kocherlakota総裁の言うことはありえないことではない。ミシガン大学の消費者センチメント調査 に見るように、期待インフレ率は4.5%程度にまで上昇している。更に、出口戦略は政策金利を引き上げるというよりも、そもそも異常な金融政策を正常に戻 すということである。

    [[熊坂有三 ITエコノミー]]

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    「関西の気風研究会」活動報告

    研究プロジェクト

    研究プロジェクト » 2011年度

    ABSTRACT

    「関西の気風研究会」は、塩沢由典主査(現中央大学商学部 教授)のもと活動されていた、京都大学経営管理大学院の寄附講座「関西活性化研究会」を、2010年4月より1年間当研究所主催の研究会として再発足させたものです。

    2010年4月からの1年間の活動を取りまとめました。

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  • 熊坂 侑三

    今月のトピックス(2011年4月)

    インサイト

    インサイト » コメンタリー

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    熊坂 侑三

    ABSTRACT

    【被害推計について】
    3月11日に東日本を襲った大震災被害の本格的な評価にはまだまだ不確実性が伴う。過去の経験によれば、大きな天災が発生した後、1-2四半期は経済にマ イナスの効果が出てくるが、復興が始まれば成長率は加速し、むしろプラスの効果をもたらす。これが過去の経験が教える平均的なパターンである。しかし、今 回のケースとは過去とは異なる側面が多々ある。マグニチュード9を超える大地震のみならず、大津波が東日本を襲い、その影響で原子力発電所が破損し、大幅 な電力供給不足を引き起こしたことだ。いわば複合的な天災(triple disaster)といえよう。
    関西社会経済研究所では、被害推計を含めこれら一連の震災被害のマクロ経済的影響を順次評価していく予定であるが、まず東日本大震災被害の直接被害と間接 被害にわけて一次的な評価を行った。前月のトピックスでは間接的な被害推計の概要を報告したが、その後直接的な被害をも推計した。
    改めて推計結果を要約すると以下のようになる。(1)ストック(住宅、社会インフラ、企業設備、自動車・船舶、流通在庫)に対する直接被害額は17.78 兆円となる。また(2)GDPに対する間接被害額は6.02兆円(GDP比1.2%)となる。関西GRPは2,698億円(関西GRPの0.3%)の損失 となる。震災の影響が半年としても日本経済(GDP)に与える影響は、0.6%?0.8%程度と推計できる。ただし現時点では、原子力発電の被害の収束に 明確な見通しが得られないため、過去の経験が役に立たない。経済の回復パターンは後ずれする可能性が高い。
    今後、被害の出方のポイントは、(1)電力供給削減による生産の減少がいつまで続くかである。それと、(2)原子力発電の安全管理の信頼喪失に伴う消費者 センチメントの低下が民間消費を大幅に長期にわたって減少させる可能性である。これは国内に限らない。風評被害ともいえる海外消費者の訪日旅行忌避や日本 製品輸入に対する過剰な反応がいつ終息するかは現時点では見極めづらい。また(3)生産の減少と風評被害は輸出に大きく影響する。

    【復旧・復興の考え方は如何にあるべきか】
    復興のビジョンについて菅総理は、自らの諮問機関である復興構想会議の五百旗頭議長に対して「元に戻す復旧ではなく、改めて作り出す創造的な復興策」を要求した。
    復興に際しての基本理念は、(1)震災以前から人口減と産業の衰退に直面していた東北地方の単なる復旧ではなく新たな再生を目指すべきと思われる。そのた めにも、東北地方の復興ビジョンをまず明確にすべきである。今回の震災が第3次石油危機の性格を持つことから、エネルギー供給の安定化のみならず企業の弾 力的な生産編成を目指すべきであろう。(2)その際、東北地方の再生構想は東北の人びとに委ねるべきであるが、阪神淡路大震災では十分な実現を見なかった 分権型復興モデルを目指すべきである。(3)また分権型・広域型復興を実現するための先行モデルにすべきと思われる。今回の復旧に当たっては関西広域連合 が非常に有効な機能を果たしていることに注目すべきである。(4)そのためにも、関東大震災後に時限で設けられた復興院のようなものが必要であるが、歴史 的にうまく機能しなかった反省から総合行政機関とする必要があり、国のたて割型地域再生を復興に持ち込むことは避けるべきであろう。最後に、復旧・復興に 向けての基本的な考え方として、阪神淡路大震災の復興の過程で実現されなかった教訓を今回は活かされなければならないことを最も強調したい。

    日本
    <1-3月期の日本経済は震災の影響もあるがプラス成長を維持>

    徐々に3月のハードデータ(景気ウォッチャー調査、消費動向調査、貿易統計)が発表されている。今週の予測では、3月の貿易統計が更新された。この結果、 支出サイドモデルは、1-3月期の実質GDP成長率を、内需は停滞し外需が小幅反転拡大にとどまるため前期比+0.3%、同年率+1.4%と予測してい る。前月の予測(+5.1%)から大幅に下方修正されており、このことは、1-2月期の経済が非常に強かったことを意味している。
    また4-6月期の実質GDP成長率を、内需及び純輸出がともに縮小するため、前期比-0.5%、同年率-1.9%と予測している。今回はじめてマイナス成長に転じている。
    超短期モデルではGDP項目を説明する月次データを時系列モデルで予測している。その予測月次データを四半期変換し、過去のGDP項目との関係を推計した ブリッジ方程式に代入することにより、先行き予測を行っている。時系列モデルの予測パフォーマンスは非常に優れているが、地震のような出来事は予測できな い。そこで3月データについては、消費総合指数と鉱工業生産指数についてのみ、以下のような方法で仮置きした。消費総合指数については、阪神淡路大震災の 起こった1995年1月の下落率を2011年3月の下落率とした。また鉱工業生産指数を電力供給量と就業者数で説明し、電力供給量の弾力性を推計した。こ れを用いて3月の予想電力供給量削減から鉱工業生産指数の下落幅を事前に予測した。
    その結果、1-3月期の実質民間最終消費支出は前期比-0.5%となる。実質民間住宅は同+0.1%増加し、実質民間企業設備は同+0.3%増加にとどま る。実質政府最終消費支出は同+0.7%、実質公的固定資本形成は同-2.5%となる。このため、国内需要の実質GDP成長率(前期比+0.3%)に対す る寄与度は+0.0%ポイントとなる。
    財貨・サービスの実質輸出は同+0.7%増加し、実質輸入は同-1.8%減少する。このため、実質純輸出の実質GDP成長率に対する貢献度は+0.3%ポイントとなる。
    一方、主成分分析モデルは、1-3月期の実質GDP成長率を前期比年率+3.4%と予測している。また4-6月期を同-2.5%とみている。この結果、支 出サイド・主成分分析モデルの実質GDP平均成長率(前期比年率)は、1-3月期が+2.4%、4-6月期が-2.2%となる。
    1-3月期については、マーケットコンセンサスは小幅のマイナス成長(-0.22%:4月ESPフォーキャスト調査)を予測している。しかし超短期モデル は、同期の日本経済を震災の影響もあるが小幅のプラス成長にとどまるとみている。本格的な震災の負の影響は4-6月期に出てくるものと思われる。

    [[稲田義久 KISERマクロ経済分析プロジェクト主査 甲南大学]]

    米国
    <いつまで続く連銀の超緩和金融政策>

    4月7日に欧州中央銀行(ECB)は2008年の金融危機以降初めて政策金利を引き上げた。今後インフレが加速する傾向がみられれば、金融を引き締めてい くことを示唆したともいえる。しかし、3月15日のFOMCミーティングの議事録は政策担当者の間において意見の相違があることを示しているが、連銀は依 然としてこれまでの超緩和金融政策を転換する様子を示していない。
    ダラス連銀のRichard Fisher総裁は“金融緩和政策をこれ以上長引かせれば、一時的に終わったかもしれないインフレ圧力を増幅するかもしれない”と言っている。リッチモン ド連銀のJeffrey Lacker総裁は“米経済は順調に回復しており、インフレ圧力が高まってきており、年末前に連銀が政策金利を引き上げる可能性もある”と言っている。し かし、Ben Bernanke連銀議長をはじめ多くの連銀エコノミストは“長期の期待インフレは安定しているし、今のコモディティー価格の高騰も安定化に向かうであろ う。それ故、今の(超)金融緩和政策は適切である”と考えている。更に彼らは“今の景気回復は脆弱であり、まだ今の金融政策を方向転換するわけには行かな い”と言う。クリーブランド連銀のSandra Pianalto総裁は4月7日のパリでの講演で、“今の米景気、インフレ状況をみれば、QE2を予定通り完了し、異常に低いフェデラルファンド・レート の目標値を長期間維持することが望ましい”と全く出口戦略などは考えていない。
    連銀のハト派エコノミストはいたってインフレに対して楽観的であるが、ミシガン大学の消費者センチメント調査にみるように多くの消費者は物価上昇を日常生活の中で感じている。
    グラフから、米景気回復のモメンタムが3月半ばから弱まっていることが分かる。4月28日には1-3月期のGDP1次速報値が発表されるが、同期の経済成 長率を超短期モデルは前期比年率2%?3%と予測している。これは、1月、2月の悪天候によるソフトパッチ(景気の一次的な低迷)の状況かもしれないが、 連銀ハト派エコノミストにとって、超金融緩和策を継続させる都合のよい理由にはなる。4月末のFOMCミーティングで出口戦略が導入される可能性はまずな いだろう。しかし、連銀は将来のインフレ抑制に対してあまりに遅い行動から、インフレリスクが着実に高まっていることを意識すべきである 。この先、連銀とECBの相違がみられるであろう。

    [[熊坂有三 ITエコノミー]]

  • 稲田 義久

    第6号「東日本大震災による被害のマクロ経済に対する影響」(2011.4.12)

    インサイト

    インサイト » 分析レポート

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 入江 啓彰 / 島 章弘 / 戸泉 巧

    ABSTRACT

    東日本大震災の直接的な被害額を推計し、3月18日発表の「日米超短期予測」にて推計した間接的な生産に対する被害額、関西経済への影響の結果とともに、政策レポート第6号としてとりまとめましたので報告いたします。

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    抜本的税財政改革研究会2010年度報告書(2011年4月)

    研究プロジェクト

    研究プロジェクト » 2011年度

    ABSTRACT

    2010年度税財政に関する調査研究を実施しましたので、成果を発表いたします。
    本研究は抜本的税財政改革研究会(主査:関西大学経済学部教授 橋本恭之氏)を中心に実施いたしました。

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    「関西における観光、環境、医療の産業分析調査 3分野の“新”近畿産業連関表」(関経連委託調査)(2011年10月)

    研究プロジェクト

    研究プロジェクト » 2011年度

    ABSTRACT

    2011年8月に関西経済連合会の委託調査として「観光」「環境」「医療」の3分野を含む新しい近畿産業連関表を当研究所オリジナルモデルとして作成・公表しました。
    今般、生産額を一部更新したことに伴い、産業連関表のリバイズ版を作成しました。

    併せて、“新”産業連関表を用いた経済効果の試算例として取り上げた京阪神の
    3つのマラソン大会の経済効果についてもリバイズしています。
    今後も、“新”産業連関表の分析については引き続き内容の向上に取組んでいく予定です。

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