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「2018年度」の研究・論文一覧 [ 3/3 ]

  • 松林 洋一

    テキストデータを利用した新しい景況感指標の開発と応用

    研究プロジェクト

    研究プロジェクト » 2018年度 » 経済予測・分析軸

    RESEARCH LEADER : 
    松林 洋一

    ABSTRACT

    リサーチリーダー

    主席研究員 松林洋一 神戸大学大学院経済学研究科教授

     

    研究目的

    従来、マクロ経済の動向を把握するには、集計データを用いることが一般的である。しかし、集計データは、速報性に欠けており、ミクロの経済要因を知るには不十分という課題がある。一方、昨今の情報技術の急速な進展により、国内外の経済活動において生成される大規模なデータ(ビッグデータ)が様々な形で利用可能になり始めている。きわめて豊富な情報を内包しているビッグデータの活用は、マクロ経済のより精緻な情勢判断と予測において、有効であると考えられる。このため、本研究ではビッグデータの一つであるテキストデータに着目して、経済の動向を、速報性をもって析出することを試みる。

    本研究では、高頻度(日次ベース)で公表される新聞紙上における経済記事に着目し、同記事のテキスト情報から景況感を析出するという手法(=テキストマイニング)を用いて、より速報性の高い景況感指標を作成することを試みていく。

     

    研究内容

    2017年度の研究成果を受け、多様な語彙を持つ経済用語を数量的に解析するために、深層学習、特にリカレント・ニューラル・ネットワーク(RNN)という分析枠組みを用いる。深層学習とは、人間の脳内における多層段階にわたる思考過程を模倣した数理モデルの総称であり、アルゴリズムとデータを用いてコンピュータで実装される。

    深層学習を二段階で実施する。第一段階では、コンピュータにテキストデータ(新聞記事)を大量に読み取らせ、そのデータに対する回答(景況感指数)を人間が教える。第二段階では、新しいデータを読み込ませて、正答を出力できるか確かめる。第二段階で正答が出力されなければ、第一段階に立ち戻る。そこで、アルゴリズムの修正やデータの追加を行い、再度第二段階へ進む。所望の結果が得られるまで、第一段階と第二段階のサイクルを繰り返す。

     

    リサーチャー

    関 和弘  甲南大学知能情報学部准教授

    岡野光洋  大阪学院大学経済学部講師

    生田祐介  APIR研究員

    木下祐輔  APIR調査役・研究員

     

    期待される成果と社会還元のイメージ

    テキストデータを利用した、新しい景況感指標のプロトタイプを開発する。このプロトタイプを、APIRが毎月公表している「APIR Economic Insight Monthly」などへ掲載することも予定している。

    新しい景況感指数を見ることによって、企業は家計(消費者)の景況感(経済マインド)を、より早くより正確に知ることができるようになる。こうした情報は、自社にとって最適な経営戦略の立案や、マーケティング戦略の実施に役立つはずである。また、政策当局においても、従来の数量的な経済変数だけではなく、テキストデータによる新たな指標に基づき、柔軟かつ精緻な情勢判断を行い、政策決定に生かすことが可能になるであろう。

     

    <研究会の活動>

    研究会

    ・2018年9月   第1回研究会開催(予定)

    ・2018年11月   第2回研究会開催(予定)

    ・2019年3月   第3回研究会開催(予定)

  • 高林 喜久生

    2011年版 APIR関西地域間産業連関表の作成と活用

    研究プロジェクト

    研究プロジェクト » 2018年度 » 経済予測・分析軸

    RESEARCH LEADER : 
    高林 喜久生

    ABSTRACT

    リサーチリーダー

    上席研究員 高林 喜久生 関西学院大学経済学部教授

     

    研究目的

    企業活動のグローバル化に伴い、地域経済を取り巻く状況は大きく変化している。中でも関西では、インバウンド需要の増加による交流人口の拡大や、交通網整備を始めとするインフラの充実など、地域を越えた財・サービスの流動が近年増加しており、地域間かつ広域で経済活動を把握することが重要となっている。

    APIRでは、前身の関西社会経済研究所の時代から、関西における地域間産業連関表の作成に取り組んでおり、その成果は「2005年 関西地域間産業連関表」として公表されている。しかし、それから10年以上が経過し、当時と比べて関西の経済構造は大きく変化している。そこで、本プロジェクトでは、関西経済の構造分析や観光消費による経済波及効果分析のために、APIRが持つ「関西地域間産業連関表」の更新・拡張を行うことを目的として実施する。

    また関西全体を一地域として捉えた近畿経済産業局の「近畿地域産業連関表」が2005年表を最後に作成中止となったため、本表が関西地域を対象とする唯一の本格的な2011年産業連関表となり、その意義はさらに大きくなるものと考えられる。

     

    研究内容

    関西経済の構造分析や観光消費による経済波及効果分析のために、APIRが持つ「関西地域間産業連関表」を2011年版へと更新・拡張を行う。具体的には、関西の各府県の「2011年地域産業連関表」及び総務省「2011年全国産業連関表」の統合・調整を行う。その作業過程において必要な移出入等に関する情報について、APIRマクロ研等のネットワークを活用して各府県統計担当者へのヒアリングを行う。

    対象となる府県は従来の関西2府4県(滋賀県・京都府・大阪府・兵庫県・奈良県・和歌山県)に加えて、福井県、三重県、徳島県、鳥取県の4県を合わせた2府8県をベースとする。これにより、関西広域連合(2府6県)、関西観光本部(2府8県)など、関西を広域で捉えた際の経済波及効果等の分析を行うことが可能となる

    産業連関表の作成においては、企業間の取引状況の把握と同時に、消費者がどこで消費行動を行っているか把握することが重要である。そのため、既存統計に加えて、関西域内外の消費者を対象としたWEBアンケート調査を実施することで、より実態に即した産業連関表を作成する

     

    リサーチャー

    下田 充  日本アプライドリサーチ研究所主任研究員

    下山 朗  奈良県立大学地域創造学部教授

    入江啓彰  近畿大学短期大学部准教授

    木下祐輔  APIR調査役・研究員

     

    期待される成果と社会還元のイメージ

    成果物である「2011年 関西地域間産業連関表」は、部門を集約した上でAPIRのホームページ上で発表を行う。また、各リサーチャーがそれぞれの持つネットワークを通じて、2011年表の紹介や分析成果を報告する。

    産業連関表を用いることで、関西における府県間・産業間の相互取引関係・供給構造の分析や、経済波及効果の推計を通じた政策評価を客観的かつ定量的に行うことが可能となる。これらの分析結果は、自治体の担当者にとっても、政策形成を行ううえでの重要な指針となるだけでなく、関西経済の現状及び特徴を説明する際の貴重な資料として活用されることが期待できよう。

     

    <研究会の活動>

    研究会

    ・2018年7-10月   第1回研究会開催(予定)

    ・2018年11-12月   第2回研究会開催(予定)

    ・2019年2-3月   第3回研究会開催(予定)

  • 稲田 義久

    Kansai Economic Insight Monthly Vol.63-景気は足下、先行きともに悪化基調で推移-

    経済予測

    経済予測 » Monthly Report(関西)

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 豊原 法彦 / 木下 祐輔 / 生田 祐介 / CAO THI KHANH NGUYET / 馬 騰

    ABSTRACT

    – 景気は足下、先行きともに悪化基調で推移-
    ・5月の鉱工業生産指数は4カ月ぶりに前月比大幅マイナスとなり、近畿経産局は生産の基調判断を前月から下方修正した。一方、4-5月平均は1-3月平均比で大幅上昇した。
    ・6月の貿易収支は5カ月連続の黒字となり、黒字幅は前年比大幅拡大した。アジア向けの半導体関連による輸出の伸びが、原油高による輸入の伸びを上回ったためである。
    ・6月の景気ウォッチャー現状判断DIは、6カ月ぶりに前月比改善。大阪北部地震の影響はあったが、サッカーW杯開催による家電の販売増や好天に恵まれたことなどから、総じてみれば改善した。
    ・4月の関西2府1県の「関西コア」賃金指数は12カ月連続の前年比増加。実質現金給与総額も2カ月連続の改善。所得環境は改善が見られる。
    ・5月の大型小売店販売額は3カ月ぶりの前年比マイナス。百貨店では気温低下による夏物衣料品の販売が低調となり、スーパーでは主に農産品価格が低下したため。
    ・分譲マンションの好調により、5月の新設住宅着工戸数は、2カ月連続で前年比大幅増加。水準は2015年6月以来の最高値。
    ・5月の有効求人倍率は前月比横ばい。労働需給が引き締まった状態が続く。完全失業率は4カ月ぶりの小幅改善。雇用情勢は好調である。
    ・6月の公共工事請負金額は前月から大幅なプラスの伸びに転じた。結果、4-6月期、公共工事請負金額は2四半期ぶりのプラスであった。
    ・5月の建設工事は、3カ月連続で前年比増加した。大阪府北部地震の影響もあり、今後は増加が期待される。
    ・6月の関空を利用した訪日外客数は16カ月連続の前年比増加。15カ月連続で2桁増が続いており好調である。国籍別では、4月は花見のため中国からの訪日客が8カ月ぶりに最多となった。
    ・4-6月期の中国実質GDPは前年同期比+6.7%となり、前期から‐0.1%ポイント減速した。6月の工業生産は2カ月連続で前年比減速し、(累積)固定資産投資は4カ月連続で同減速した。

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  • 藤原 幸則

    「目指すべき企業経営のあり方~世界の潮流を牽引する企業統治のあり方」研究(公益社団法人関西経済連合会委託研究)

    その他の活動・出版物紹介

    その他の活動・出版物紹介 » その他の活動

     / DATE : 

    EDITOR : 
    藤原 幸則

    ABSTRACT

    研究内容

    近年、世界では、短期利益志向と株主価値の最大化を図る企業経営に対する反省が高まっている。反省の潮流の中にあるのは、長期的な視点での経営と株主だけでない多様なステークホルダーへの配慮が重要ということである。また、富の大きな格差、超国家的存在の巨大多国籍企業の過剰な税回避など、行き過ぎた資本主義の問題が露呈される中で、経営には倫理的であることが強く求められている。

    長期的視点での経営、多様なステークホルダーへの配慮、経営と倫理の両立は、日本企業の根底にある経営哲学である。今、SDGsという世界の持続的な社会実現に向けた目標があるが、古くから日本企業が経営哲学とし、実践してきたことに合致するものが多い。こうした日本企業の経営哲学は、世界から評価されるべき普遍的価値を有するものである。日本企業は、経営や企業統治において、SDGsという世界の潮流を牽引していくことが必要である。

    そこで、本研究では、短期利益志向や株主価値最大化の経営に走った投資家資本主義の問題と反省の動きをレビューし、SDGsという最近の世界の潮流を踏まえて、企業統治(コーポレートガバナンス)の観点から、世界の潮流を牽引する「目指すべき企業経営のあり方」について報告書をとりまとめた。

     

    リサーチリーダー

    加護野忠男 甲南大学特別客員教授、神戸大学名誉教授

    リサーチャー

    田中一弘  一橋大学 大学院経営管理研究科教授

    伊藤博之  滋賀大学 経済学部教授

    吉村典久  大阪市立大学 大学院経営学研究科教授

    藤原幸則  アジア太平洋研究所 主席研究員

  • 稲田 義久

    Kansai Economic Insight Monthly Vol.62-景気は足下、先行きともに悪化基調-

    経済予測

    経済予測 » Monthly Report(関西)

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 豊原 法彦 / 木下 祐輔 / 生田 祐介 / CAO THI KHANH NGUYET / 馬 騰

    ABSTRACT

    -景気は足下、先行きともに悪化基調-
    ・4月の鉱工業生産指数は前月比大幅上昇し、3カ月連続のプラス。また、1-3月平均比でも大幅上昇した。近畿経産局は生産の基調判断を前月から据え置いた。
    ・5月の貿易収支は4カ月連続の黒字となったものの、黒字幅は前年比縮小。アジア向けの半導体関連の輸出が伸びたが、原油高により輸入の伸びが上回ったため。
    ・5月の景気ウォッチャー現状判断DIは、2カ月ぶりの前月比悪化。インバウンド消費は堅調だが、天候不順や3-4月に売上が好調だった衣料品の反動減などが悪化に寄与した。
    ・3月の関西2府4県の現金給与総額は13カ月連続の前年比増加。実質現金給与総額は3カ月ぶりの改善となったものの、物価上昇の影響から伸びは小幅にとどまった。
    ・4月の大型小売店販売額は2カ月連続の前年比プラス。スーパーでは農産品価格の低下により減少したが、百貨店では高額品と初夏物アイテムの好調により増加したため。
    ・4月の新設住宅着工戸数は、分譲マンションの急増により、2カ月ぶりの前年比大幅増加。2015年6月以来の最高値となった。
    ・4月の有効求人倍率は43カ月ぶりに前月比小幅悪化も、依然として高水準で推移。完全失業率は2カ月連続で横ばい。労働力人口と就業者数の増加がみられ、雇用情勢は好調である。
    ・5月の公共工事請負金額は3カ月ぶりの前月比マイナス。基調は前月の持ち直しから減少に転じた。また、4月の建設工事は、2カ月連続で前年比増加した。
    ・5月の関空を利用した訪日外客数は15カ月連続の前年比増加。14カ月連続で2桁増と好調が続く。国籍別にみれば、3月は韓国からの訪日客は7カ月連続で最多を更新した。
    ・5月の中国経済は幾分減速感がみられる。工業生産は2カ月ぶりの前年比減速。1-5月期の(累積)固定資産投資は3カ月連続で減速。社会消費品小売総額は2カ月連続で前年比減速した。

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  • 稲田 義久

    Kansai Economic Insight Quarterly No.38 <改善基調に一服感、踊り場にある関西経済>

    経済予測

    経済予測 » Quarterly Report(関西)

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 入江 啓彰 / 木下 祐輔 / CAO THI KHANH NGUYET / 生田 祐介 / 馬 騰

    ABSTRACT

    改善基調に一服感、踊り場にある関西経済。堅調な設備投資計画の実現と外需の下支えが再加速の鍵

    1.2018年1-3月期の実質GDP成長率は、前期比年率-0.6%(前期比-0.2%)と9四半期ぶりのマイナス成長となった。寄与度を見ると、純輸出は+0.3%ポイントと2四半期ぶりに成長に寄与した一方で、国内需要は-0.9%ポイントで2四半期ぶりに成長を押し下げた。住宅投資や在庫変動が低調だった。民間消費や設備投資も小幅ではあるが減少している。

    2.2018年1-3月期の関西経済は、これまでの改善ペースにやや一服感が見られ、踊り場を迎えている。家計部門では、所得環境や雇用環境など堅調であるが、センチメントは悪化した。企業部門では、生産は一進一退で総じて横ばい。景況感や設備投資計画は高水準を維持している。対外部門は輸出輸入とも拡大しているが、ペースは減速しつつある。公的部門は、一進一退で推移している。

    3.足下の経済状況および2015年度県民経済計算確報値の公表を受けて、関西の実質GRP成長率を2018年度+1.3%、19年度+0.9%と予測する。前回予測と比較すると、18年度は+0.2%ポイントの下方修正、19年度は修正なし。また過年度の実績見通しについて、GDP早期推計の改定(下記6.参照)を反映し、16年度の成長率を+0.1%、17年度同+2.2%とした。

    4.実質GRP成長率に対する寄与度を見ると、18年度は民間需要が+0.7%ポイント、公的需要+0.1%ポイント、外需+0.5%ポイントとなる。19年度は民間需要+0.4%ポイント、公的需要+0.2%ポイント、外需+0.4%ポイントとなる。民需と外需が成長要因となるが、19年度にはどちらも若干減速する。

    5.全国と比較すると、関西では外需の貢献が大きく、17年度以降全国より若干高い成長率で推移する。関西経済が踊り場を抜けて再加速するためには、全国を上回る伸びを見込む設備投資計画の着実な実行と、堅調な輸出と旺盛なインバウンド需要のさらなる拡大が肝要である。

    6.関西各府県は、2015年度の県民経済計算を順次公表している。これを受けて、16-17年度の県内GDP早期推計を改定した。関西の実質GRP成長率(生産側)の実績見通しは、16年度+0.0%、17年度+2.6%となる。16年度は大阪府が-1.7%と大幅マイナスとなるが、他府県の成長によって関西全体では相殺される。一方、17年度は大阪府が+3.9%と大幅プラスに転じ、関西経済を牽引する。

     

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  • 稲田 義久

    第117回景気分析と予測<117回予測:18年1-3月期GDP2次速報値反映>

    経済予測

    経済予測 » Quarterly Report(日本)

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 下田 充

    ABSTRACT

    117回予測:18年1-3月期GDP2次速報値反映
    シミュレーション:米中貿易摩擦進行による日本経済への影響

    ・6月8日発表のGDP2次速報値によれば、18年1-3月期の実質GDP成長率は前期比-0.2%、同年率-0.6%となり、1次速報値(前期比-0.2%、同年率-0.6%)から変化なしである。一方、総合的な物価動向を示すGDPデフレータは前期比-0.3%と1次速報値(同-0.2%)から幾分下方修正された。
    ・過去に遡ってデータが改訂された結果、2017年の成長率は、1-3月期+0.1%ポイント、4-6月期+0.1%ポイント、10-12月期+0.5%ポイント、いずれも1次速報値から上方修正された。一方、7-9月期は-0.1%ポイント下方修正された。10-12月期の上方修正幅が比較的大きかったので、2017年度の実質成長率は+1.6%と1次速報値(+1.5%)から0.1%ポイント上方修正された。
    ・1-3月期GDP2次速報値を織り込み、2018年度の実質GDP成長率を+1.1%、19年度を+0.7%と予測。前回(第116回)予測に比して、18年度、19年度、いずれも変化なし。緩やかな回復を維持するという予測シナリオに変化はない。
    ・1-3月期が9四半期ぶりのマイナス成長であったが、足下のデータは1-3月期のマイナス成長は一時的であったことを示唆している。4月の民間消費(消費活動指数や消費総合指数といった供給側統計)と純輸出は、特に強い結果を示している。
    ・標準予測では、海外からの大きなショック(貿易紛争や金融ショック)が生じない限り、しばらく企業部門中心の回復が続くとみている。ただ、景気持続性の観点からは家計の実質所得の着実な拡大が課題である。
    ・米国と中国の間で、貿易摩擦が進行している。トランプ政権は6月15日に中国の知的財産権侵害への制裁措置として500億ドルの中国製品に対して25%の追加関税を決定した。中国も同規模の報復関税発動を打ち出した。今のところ、この直接の影響は限定的と見られているが、経済規模世界第一、第二位の国が報復合戦を起し世界経済に波及すればその影響は大きい。
    ・本予測のシミュレーションとして米中間の貿易摩擦が世界経済に波及するケースを検討する(後掲シミュレーション参照)。具体的には、実質世界輸出の伸びが半減するようなケースを想定する。2016年の実質輸出は前年比2%程度まで落ちたが、17年は5%超の伸びに戻り、いわゆるslow tradeを脱した。標準予測では18-19年は世界実質輸出が4%台後半で推移すると想定している。今この伸びが半減し16年のような貿易状況となった場合の影響を検討した。
    ・2018-19年に実質世界輸出の伸びが半減した場合、名目世界輸出は3,900-8,600億ドル程度減少する。結果、日本の実質GDPは標準予測から0.1-0.25%程度減少する。1%程度の潜在成長率が続く日本経済にとって、小さくないインパクトである。

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  • 稲田 義久

    「訪日外国人消費動向調査」個票データ分析から得られる関西インバウンド戦略へのインプリケーション(1)

    インサイト

    インサイト » トレンドウォッチ

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 松林 洋一 / 木下 祐輔

    ABSTRACT

    国土交通省近畿運輸局との共同研究により『訪日外国人消費動向調査』の個票データの観察に基づき、関西インバウンド戦略に向けての含意を導出する。今後シリーズで紹介する予定であるが、初回となる本報告では、特に入出港の視点から詳細に検討する。観察結果より以下の点が明らかになった。(1)アジア地域からの観光・レジャー目的での訪日に関しては、関西国際空港を利用するケースは依然として多い。(2)また欧州からの同目的の関西国際空港の利用者数はアジア地域に比すれば数は多くはないが安定している。(3)なお近年は九州圏の利用が無視できない動きとなりつつある。(4)ビジネス目的では成田と羽田を利用した関東圏への集中が圧倒的であり、関西にとっても挑戦すべき課題である。観光・レジャー目的におけるアジア地域からの需要の着実な取り込みが関西圏において不可欠であるといえる。

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  • 稲田 義久

    日本経済(月次)予測(2018年5月)<内需と純輸出はバランスよく、4-6月期の実質成長率を押し上げる>

    経済予測

    経済予測 » Monthly Report(日本)

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久

    ABSTRACT

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  • 稲田 義久

    第116回景気分析と予測<一時的な踊り場をこえ企業部門中心の回復が続く>

    経済予測

    経済予測 » Quarterly Report(日本)

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 下田 充

    ABSTRACT

    一時的な踊り場をこえ企業部門中心の回復が続く-課題は家計実質所得の改善

    1.GDP1次速報値によれば、1-3月期実質GDPは前期比-0.2%(同年率-0.6%)と9四半期ぶりのマイナス成長となった。また季節調整のかけ直しや基礎統計の改定に伴い過去の値が改定され、2017年の3四半期はいずれも前回から下方修正された。結果、2017年度の実質GDPは+1.5%と3年連続のプラス成長となったが、実績は超短期最終予測(+1.7%)より低めとなった。

    2.1-3月期実質GDP成長率への寄与度を見ると、国内需要は前期比-0.2%ポイント(同年率-0.9%ポイント)と2四半期ぶりのマイナス、純輸出は前期比+0.1%ポイント(同年率+0.3%ポイント)と2四半期ぶりのプラスとなったが小幅の寄与にとどまった。実質GDPのマイナス成長は一時的で、これまで順調な回復の踊り場とみている。大雪や生鮮野菜価格の高騰による民間最終消費支出の小幅減少や民間住宅の低迷、加えて企業設備の減少や輸出の減速が複合的に影響している。

    3.1-3月期GDP1次速報値を織り込み、2018年度の実質GDP成長率を+1.1%、19年度を+0.7%と予測を改定した。過去値の下方修正から成長の下駄が低くなったため、前回(第115回)予測に比して、18年度+0.1%ポイント、19年度+0.1%ポイント、いずれも小幅の下方修正となった。ただ緩やかな回復を維持するという予測シナリオに大きな変化はない。

    4.ベースライン予測では、2019年10月に消費増税が予定通り実施されると想定している。この影響で19年度後半の景気落ち込みは避けられない。ただ前回(14年4月実施)に比して、税率引き上げ幅が小幅にとどまること、飲食料品と新聞には軽減税率が適用されること、実施時期が年度の真ん中であること、またオリンピック需要の影響もあり19年度のマイナス成長は避けられよう。

    5.海外からの大きなショック(貿易紛争や金融ショック)が生じない限り、しばらく企業部門中心の回復が続くが、景気持続性の課題は家計の実質所得拡大である。所得環境は改善しているが、春闘賃上げは3%を下回り厳しい状況である。加えて消費者物価が緩やかに上昇する中、非勤労者世帯を含む家計全体の実質可処分所得の伸びは実質雇用者報酬の伸びを下回る。実質民間最終消費支出の伸びは低調となる。

    6.原油価格は前回予測を上回る上昇となっている。これらの変化を織り込み、消費者物価コア指数のインフレ率は、18年度+1.1%、19年度は消費増税の影響で+1.6%と予測。国内企業物価指数は+2.1%、+2.4%。18年度はガソリン価格の高騰によりいずれも上方修正となった。GDPデフレータは、+0.1%、+1.1%と予測している。日銀は4月の展望レポートの中で、消費者物価コア指数の見通しを、18年度+1.3%、19年度+2.3%(+1.8%、除く消費税の影響)とみており、18年度を前回から0.1%ポイント下方修正した。この予測実現には依然困難が伴うと思われる。

     

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  • 木下 祐輔

    北陸新幹線開業後、北陸と関西の結びつきはどう変わったか

    インサイト

    インサイト » トレンドウォッチ

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    木下 祐輔 / 馬場 孝志

    ABSTRACT

    2018年3月14日の北陸新幹線開業以来3年間の大学進学先や就職先などの「人」の流れに着目して分析した結果、北陸と関東間の関係性は強化される一方、関西間との関係性は相対的に弱くなっていることがわかった。
    現在関西では、北陸新幹線だけでなく、様々な交通インフラの整備計画が進行中である。財源の確保や、関係者間の利害調整など、いくつもの壁を乗り越える必要があるが、これらの事業は、国内に点在する地域資源を結び付け、新たなイノベーションを生むだけでなく、海外と国内地域を結ぶ交通ネットワークにも大きな経済的インパクトをもたらす可能性を秘めている。グローバルに開かれた日本経済を支える屋台骨として交通インフラ整備を位置づけ、より俯瞰的な視点から、検討を行うべきであろう。

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  • 稲田 義久

    Kansai Economic Insight Monthly Vol.61-景気は足下、先行きともにおおむね悪化基調-

    経済予測

    経済予測 » Monthly Report(関西)

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 豊原 法彦 / 木下 祐輔 / 生田 祐介 / CAO THI KHANH NGUYET / 馬 騰

    ABSTRACT

    -景気は足下、先行きともにおおむね悪化基調-
    ・3月の鉱工業生産指数は2カ月連続の前月比プラス。1月の大雪の影響もあり1-3月期は2四半期ぶりに低下した。近畿経産局は基調判断を、「持ち直しの動きで推移」と前月から据え置いた。
    ・4月の貿易収支は3カ月連続の黒字となり、黒字幅は前年比拡大した。中国向け半導体関連を中心とした輸出の伸びが、輸入の伸びを上回ったため。
    ・4月の景気ウォッチャー現状判断DIは、前月比横ばい。堅調なインバウンド需要に加え、株価が回復傾向となり高額消費が増加したことなどが消費マインドに好影響をもたらした。
    ・1月の関西2府4県の現金給与総額は11カ月連続の前年比増加。実質現金給与総額は6カ月連続で改善したものの、物価上昇の影響から伸びは停滞している。
    ・3月の大型小売店販売額は、2カ月ぶりの前年比プラス。スーパーの販売額は野菜価格の高騰が落ち着き減少したが、百貨店の販売額は気温上昇による春物衣料の好調により増加した。
    ・貸家をはじめ、持家、分譲の減少により、3月の新設住宅着工戸数は2カ月ぶりの前年比減少となった。結果、1-3月期の新設住宅着工は4四半期連続でマイナスとなった。
    ・3月の有効求人倍率は2カ月ぶりの前月比小幅改善。一方、完全失業率は横ばいであった。雇用環境は引き続き堅調である。
    ・4月の公共工事請負金額は前月比増加し、2カ月連続のプラス。引き続き持ち直しがみられる。
    ・3月の建設工事出来高は2カ月ぶりに前年比小幅増加したが、1-3月期は3四半期連続で減少した。
    ・4月の関空への訪日外客数は14カ月連続の前年比増加。単月過去最高を更新したことに加え、13カ月連続で2桁増が続いており好調である。
    ・4月の中国(累積)固定資産投資の伸びは、前月から0.5%ポイント低下した。また、同月の社会消費品小売総額の伸びは前月から0.7%ポイント下落し、4カ月ぶりのマイナスとなった。

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  • 稲田 義久

    Kansai Economic Insight Monthly Vol.60-景気は足下停滞気味、先行きは悪化の兆し-

    経済予測

    経済予測 » Monthly Report(関西)

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 豊原 法彦 / 木下 祐輔 / 生田 祐介 / CAO THI KHANH NGUYET / 馬 騰

    ABSTRACT

    -景気は足下停滞気味、先行きは悪化の兆し-

    ・2月の鉱工業生産指数は2カ月ぶりの前月比プラスだが、1-2月平均は10-12月平均比で大幅下落した。なお、近畿経産局は基調判断を「持ち直しの動きで推移」と前月から据え置いた。
    ・3月の貿易収支は2カ月連続の黒字となり、黒字幅は前年比大幅拡大した。原動機と半導体等電子部品の貢献により輸出が伸び、一方、輸入が13カ月ぶりに減少したため。
    ・3月の景気ウォッチャー現状判断DIは3カ月連続で前月比悪化。インバウンド需要や春物商材の販売は好調だったが、円高・株安の影響から消費マインドは悪化した。
    ・1月の関西主要府県(大阪府・兵庫県)の現金給与総額は一定の改善が見られるが、足下物価の上昇が続いており、実質賃金の伸びは停滞している。先行きには依然注意が必要である。
    ・天候不順の影響で、2月の大型小売店販売額は4カ月ぶりの前年比マイナス。野菜価格高騰でスーパーの販売額は増えたが、春物衣料需要低下のため、百貨店の販売額は減少した。
    ・分譲の好調の影響で、2月の新設住宅着工戸数は前年比大幅に増加し、6カ月ぶりのプラス。
    ・2月の有効求人倍率は前月比横ばい。完全失業率は2カ月ぶりに悪化したものの、雇用環境は引き続き堅調である。
    ・3月の公共工事請負金額(季節調整値)は前月比大幅増加し、4カ月ぶりのプラス。結果、1-3月期は2四半期連続の前期比プラスとなった。
    ・2月の建設工事出来高は3カ月ぶりの前年比減少。関西ではオリンピック・パラリンピックの影響は見られず、伸びは低調である。
    ・3月の関空への訪日外客数は13カ月連続で前年比増加。また、12カ月連続で2桁増が続いており依然好調である。
    ・中国の実質GDPは、2018年1-3月期に前年同期比+6.8%成長した。17年7-9月期以来、3四半期連続で同じ伸び。2018年の政府目標である6.5%成長を上回った。

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