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「2021年度」の研究・論文一覧 [ 3/3 ]

  • 木村 福成

    アジアをめぐる経済統合の展望と課題

    研究プロジェクト

    研究プロジェクト » 2021年度 » アジア太平洋地域軸

    RESEARCH LEADER : 
    木村 福成

    ABSTRACT

    リサーチリーダー

    APIR上席研究員 木村 福成 慶應義塾大学経済学部教授、ERIAチーフエコノミスト

     

    研究目的

    アジア諸国は、日EU EPA、TPP11(CPTPP)の発効、RCEPの署名を受け、新たな段階に入りつつある。グローバリゼーションを押し戻した感もあるコロナ禍はワクチン普及が切望されるものの各国ごとの格差は大きい。バイデン政権に代わった米国は、前政権の保護主義的な通商政策からの転換が期待されるが、人権問題をはじめとした中国との論争は政治問題に拡大し、米中貿易戦争の終結は見通しにくい状況にある。アジアは自由貿易に対する向かい風に抗していけるのか、デジタルエコノミーの急速な進歩はこれまでのグローバル・バリューチェーンをどう変えていくのか、高いレベルの自由化と新たな国際ルール作りは進むのかなど、グローバル企業の事業活動に強い影響を及ぼす局面は多岐にして早いスピードで更新されている。本プロジェクトでは、国際経済学のみならず、国際法学、企業研究などさまざまな知見を得ながら、アジアの経済統合について研究を進めていく。

     

    研究内容

    2021年度は2020年度に引き、刻々と変化する国際貿易体制の状況を踏まえながら、マクロ的には自由貿易体制の行方、ミクロ的には自由化と国際ルール作りの要点につき、学際的な視点を固めていく。また、コロナ禍の影響でアジアをめぐる情勢は急激に変化しているため、日本、関西経済への影響についても最新状況を踏まえて分析していく。
    木村リサーチリーダーによるASEANと日本の経済活動研究による考察を軸に学識者、研究者並びに実務家に登壇いただき、複眼的な見地に立ったディスカッションや話題提供につなげる。企業の見識を高め、事業活動に資する情報提供の場としたい。

    オープンなシンポジウム形式の研究会とすることで、会員企業等の方々との情報共有を進め、また同時に多方面の方々からアンケート等でフィードバックを受ける。時事的な課題についても積極的にテーマに取り込むため、事態の新展開を常に追っていく必要がある。それら最新の情勢に関して専門性をもって解釈し、将来を見据えた議論を展開していくところに、本プロジェクトの独自性が存在する。

     

    <研究体制>

    研究統括

    本多 佑三  APIR研究統括、大阪学院大学教授、大阪大学名誉教授

    リサーチリーダー

    木村 福成  APIR上席研究員、慶應義塾大学経済学部教授、ERIAチーフエコノミスト

     

    期待される成果と社会還元のイメージ

    講演会の内容を基にした会員企業向けの年次報告書は、2021年度内に取りまとめる。
    オープン研究会において、多方面からの理論・実証・政策研究の成果を提供し、企業の方々に還元する。
    アジア太平洋地域における事業展開戦略の策定に資する。

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  • 後藤 健太

    アジアビジネスにおけるSDGs実装化

    研究プロジェクト

    研究プロジェクト » 2021年度 » アジア太平洋地域軸

    RESEARCH LEADER : 
    後藤 健太

    ABSTRACT

    リサーチリーダー

    APIR主席研究員 後藤 健太 関西大学経済学部教授

     

    研究の背景

    アジアにおけるビジネス戦略を考えるうえで、SDGs(Sustainable Development Goals)の達成、持続可能なサプライチェーンの構築は欠かせない視点である。
    当研究所においては、設立当初からアセアン諸国の研究機関等との連携を通じて、アジア太平洋地域の持続的な発展をサポートしていく調査研究を進めていくことをひとつの使命としている。

     

    研究内容

    2025年大阪・関西万博をにらみ、中堅中小企業を含む関西企業もSDGs実装化する必要性に直面している。これにあたり、バックキャスティング、目標のトレードオフを前提とした取組みを行うことにより、SDGsウォッシュにならないよう、一般社団法人SDGsオープンイノベーションプラットフォームの活動と連携しながら、調査研究活動を通じて、啓蒙する。

    SDGsオープンイノベーションプラットフォームのビジネスマッチングを実例として、リサーチャーの知見を活用し、SDGsウォッシュにならないような真の意味での持続可能なビジネス創出に関与することを通じてSDGsの実装化を支援する。

     

    研究体制

    研究統括

    本多 佑三  APIR研究統括、大阪学院大学教授、大阪大学名誉教授

    リサーチリーダー

    後藤 健太  APIR主席研究員、関西大学経済学部教授

    リサーチャー

    菊池 淳子  日本工営 コンサルタント海外事業本部 SDGs&CSR戦略ユニット長
    草郷 孝好  関西大学 社会学部教授
    佐井 亮太  コーエイリサーチ&コンサルティング 主任コンサルタント
    佐藤 寛   ジェトロ・アジア経済研究所 上席主任調査研究員
    長縄 真吾  国際協力機構関西センター(JICA関西) 企業連携課課長
    別府 幹雄  コニカミノルタ 関西支社長(中小企業診断士)

     

    期待される成果と社会還元のイメージ

    会員企業をはじめ、企業、経済団体など民間で利活用可能な好事例の創出とその分析。

    SDGsが直接ビジネスと直結するグローバルな企業活動展開において重要な要素であることの理解促進。

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  • 守屋 貴司

    アジア人材との共働社会

    研究プロジェクト

    研究プロジェクト » 2021年度 » アジア太平洋地域軸

    RESEARCH LEADER : 
    守屋 貴司

    ABSTRACT

    リサーチリーダー

    APIR上席研究員 守屋 貴司 立命館大学経営学部教授

     

    研究の背景

    米国の大手IT企業のCEO(Google、マイクロソフト等)として多くのインド出身者が活躍している。インド工科大学(IIT)は超難関大学として知られ、卒業生は現地のGAFA関連などの巨大企業の研究所への高度人材供給源となっており、国内起業家の育成にもIITは熱心に取り組んでいる。また、インドを含め、シンガポール、ベトナムなどアジア諸国も各国とも大学教育(産業界との連携)を含めて、先進的な取り組みを行い、高度人材を自国の経済発展への繋げる動きが活発、加速化している。特に、インドの場合においてはカースト制などの社会構造制度などの理解も不可欠である。そこで、本研究プロジェクトでは、アジア人材(インド、ベトナム、シンガポールなど)に焦点をあて検討を進める。

     

    研究内容

    2021年度は、日本で働くインド・ベトナム人エンジニアへのアンケート調査と先進的な企業事例のヒアリングなども実施し、日本企業がアジア人材との共働社会を実現するために必要な制度や取り組みへの提言を報告書としてまとめる。

    ①アジアに進出する日系企業の先進事例の調査・検討
    既にアジアに進出している(アジア人材を採用している)日系企業の先行事例を調査・検討し、今後の日本企業に必要な要素を抽出する。

    ②日本企業とアジア企業との連携・イノベーションの調査・検討
    「アジア人材と日本人材の『協働』によるイノベーション」が実現していることを定量的・定性的データ(特許データ〔PCT出願〕)から明らかにし、それに基づきながら「アジアの高度人材との共働のための企業政策」について検討する。

    ③日印間の移動と在日インド系IT人材の動向
    インド人人材が日本でどのように就労しているのかについて、各種統計や公表されている資料を中心に分析を行う。

    ④日本企業におけるアジアの高度人材とのダイバーシティマネジメントとイノベーション
    ②の研究事例として日本企業、アジア現地企業のケーススタディを行い、日本企業への提案としてまとめる。

     

    <研究体制>

    研究統括

    稲田 義久  APIR研究統括兼数量経済分析センター長、甲南大学名誉教授

    リサーチリーダー

    守屋 貴司  APIR上席研究員、立命館大学経営学部教授

    リサーチャー

    安田 聡子  関西学院大学商学部教授
    松下 奈美子 名古屋産業大学現代ビジネス学部准教授
    宮本 和明  HENNGE株式会社 代表取締役副社長
    奥田 智   株式会社をくだ屋技研 代表取締役社長

     

    期待される成果と社会還元のイメージ

    「アジア人材との共働社会」フォーラム開催し、2021年度末に研究会成果報告書を取りまとめ、APIRホームページに掲載する。
    アジア人材との共働社会を実現するための企業の具体的な人事制度設計や取り組みなどに関して活用されることを想定している。

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  • 稲田 義久

    インバウンド先進地域としての関西 ―持続可能な観光戦略を目指して―

    研究プロジェクト

    研究プロジェクト » 2021年度 » 日本・関西経済軸

    RESEARCH LEADER : 
    稲田 義久

    ABSTRACT

    リサーチリーダー

    APIR研究統括兼数量経済分析センター長 稲田 義久

     

    研究目的

    ・持続可能なインバウンド産業にむけての戦略転換の指針の導出
    コロナ前のインバウンド産業では訪日外客の量的拡大を志向する傾向が強く、供給制約に直面した場合、持続可能な発展が望めない状況にあった。こういった量的拡大志向から、コロナ後を見据えて1人当たりの付加価値を高める戦略への転換が必要であり、コロナ禍によって訪日外客が途絶えている現在は戦略を再考する好機といえる。
    2020年度、本研究PJではインバウンド消費を分析する視点として「ブランド力」「広域・周遊化」「イノベーション」「安全・安心・安堵」を提示した。2021年度は特に「ブランド力」の向上のために、日本人が気づきにくい観光資源の魅力や課題を抽出する施策を検討し、戦略転換の指針を導きたい。

    ・ポストコロナのインバウンド戦略策定を意識した、基礎的分析の継続
    本テーマでは、マーケティングの指標となるインバウンド関係基礎データの整理・推計や、戦略策定に参考となるマイクロデータ分析といった基礎的な分析を継続的に行い、得られた知見をトレンド・ウォッチ等の形で都度発表してきた。2021年度はコロナ禍の影響も取り入れた分析を継続し、コロナ後のインバウンド戦略の策定に資する情報として成果を発信したい。コロナ禍により訪日外客のデータが公表されない期間については、対象を拡大して国内旅行について同様の分析を行う。

     

    研究内容

    2020年度に引き続き、以下の5つの軸でバランスよく進める。

    ①関西基礎統計の整理

    ②マイクロデータによる実証分析

    ③ブランド力指標の開発のための基礎調査、アンケート調査の実施

    ④観光戦略の在り方や、成長戦略立案の課題検討

    ⑤成果の発信、課題共有の「場」作り

     

    <研究体制>

    研究統括・リサーチリーダー

    稲田 義久  APIR研究統括兼数量経済分析センター長、甲南大学名誉教授

    リサーチャー

    松林 洋一  APIR上席研究員、神戸大学大学院経済学研究科長・教授
    KARAVASILEV Yani  APIR研究員、京都文教大学総合社会学部講師
    郭 秋薇   APIR研究員
    野村 亮輔  APIR研究員

    研究協力者

    道久 聡   国土交通省 近畿運輸局観光部 計画調整官
    岩﨑 靖彦  国土交通省 近畿運輸局観光部 観光企画課 課長
    濱田 浩一  関西観光本部 事務局次長
    中野 裕行  日本旅行業協会 関西事務局長
    筒井 千恵  関西エアポート株式会社 航空営業部 グループリーダー
    TIRTARA Alin  APIRインターン

    オブザーバー

    森本 裕   甲南大学経済学部準教授

    ※必要に応じてDMO、自治体や民間企業等関係者にも参画いただく。

     

    期待される成果と社会還元のイメージ

    研究成果としては、関西インバウンド基礎統計の整備(月次レポート、トレンドウォッチ)、マイクロデータの分析成果(研究報告書)、関西観光戦略の課題の共有化(研究会、シンポジウム等での情報提供と議論)を予定している。
    また、上記研究成果を「ポストコロナ禍における観光政策の立案」、「観光ハード面とソフト面のインフラ整備」、「推計値を用いた観光DMOのプロモーション施策の検証」等に活用できるであろう。

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  • 下條 真司

    関西・大阪における都市ぐるみ、都市レベルのDX

    研究プロジェクト

    研究プロジェクト » 2021年度 » 日本・関西経済軸

    RESEARCH LEADER : 
    下條 真司

    ABSTRACT

    リサーチリーダー

    APIR上席研究員 下條 真司

     

    研究目的

    コロナ禍によって日本のデジタルトランスフォーメーション(DX)の遅れが改めて浮き彫りとなり、官民ともにDX推進の機運が高まった。一方、DXには事業の転換や業務プロセスの変革を含む場合があり、拙速に行うと組織内外に負の影響を伴うにも関わらず、DXの「進め方」に比べて、有効なDXとするために守るべき「規範」に関する考察は少ない。DXの有効性をより高めるには、「規範となる考え方」が広く共有される必要があると思われる。
    16~20年度の研究PJ「都市におけるIoTの活用」では、「『人々の幸せ』を中心とする、持続的に成長する都市」実現のためのIoT/ICTのあるべき姿を考察してきたが、それを都市ぐるみ、都市レベルのDXの取り組みへと発展させ、個々の企業にも役立つ指針としたい。21年度はこれまでの考察に加え、DX実施に伴う課題、負の面ならびにその対策を検討して、関西・大阪における都市レベルのDXの「規範となる考え方」を提案することを目指す。

     

    研究内容

    (1) 複数の視点を設定し、それぞれの視点での文献調査、政策レビュー、事例調査を通じて、DXの際に想定される課題と、それに対応する規範の内容案を多面的に検討する。

    (2) 研究期間中には複数のクール(検討期間)を設定し、各クールの最後には産官学のオブザーバーを交えた研究会を開催する。研究会ではそれまでの検討結果を報告するとともに、規範の考え方について実務者との意見交換を行い、規範案のブラシュアップを行う。関連する事例の共有も行う。

    (3) 国内外の代表的な展示会に出席し、DXに関連する官民の技術の方向性を現地調査する。調査結果は所内研究会で報告するとともに、示唆を抽出する際の参考情報とする。

    (4)21年度の成果報告と、産官学有識者との意見交換を通じた規範案のPRとさらなるブラシュアップを目的としたフォーラムを開催する。

     

    <研究体制>

    研究統括

    宮原 秀夫  APIR所長

    リサーチリーダー

    下條 真司  APIR上席研究員、大阪大学サイバーメディアセンター教授・センター長

    リサーチャー

    岸本 充生  大阪大学データビリティフロンティア機構教授
    大島 久典  APIR研究員・総括調査役

    ※必要に応じて、大学、自治体や企業等にも参画いただく。

     

    期待される成果と社会還元のイメージ

    2025年万博、都市OSに向けた提言を含め、関西・大阪におけるDX推進の規範となる考え方をまとめた報告書を取りまとめる。産官学それぞれの枠を超えた、DX/スマートシティの諸課題に関する情報共有と議論の場を提供する。
    関西・大阪の自治体・企業において、今後DXの実行計画を策定する際、目的・仕様の上位概念として参照いただく。また研究会を通じて、DX/スマートシティ構築に関して各社間で交流・連携いただく。

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  • 家森 信善

    関西における地域金融面からの事業支援の課題 ―ポストコロナを見据えた地域金融のあり方―

    研究プロジェクト

    研究プロジェクト » 2021年度 » 日本・関西経済軸

    RESEARCH LEADER : 
    家森 信善

    ABSTRACT

    リサーチリーダー

    APIR上席研究員 家森 信善 神戸大学経済経営研究所教授

     

    研究目的

    2014年9月に公表された金融庁の『平成26事務年度 金融モニタリング基本方針』において「事業性評価に基づく融資等」が盛り込まれて以来、金融行政や地域金融機関経営のキーワードとして「事業性評価」が注目を集めている。
    従来からの事業性評価(事業性評価1.0と呼ぶ)は、外側からみえにくい企業の強みや弱みを十分に見極める点に重点があった。今後もこの点での能力を向上させていくことが必要である。一方で、事業性評価の質的拡大が求められていると考えられる。すなわち、将来の外部環境の変化が急速でかつ大規模であると予想されることから、そうした変化が企業に及ぼす影響を予め検討して、その対応策を企業と一緒になって考え、企業が対応策を実行していく際に伴走していくことが、新しい事業性評価のあり方(事業性評価2.0)だと考えられる。

    本研究での取り組みを通じて、次のような成果を狙いとしている。
    ①地域経済を支える金融機関の優れた実践を整理し分析して、それを横展開できるように紹介する。
    ②事業性評価2.0の定着に向けた課題として、とくにESG金融に焦点を当てて、ESG金融を浸透させるための課題について検討し、必要な取組を提言する。

     

    研究内容

    2021年度は5回の研究会を実施する。
    研究会の前半では従来型の事業性評価の深化を図り、後半では事業性評価の質的な向上として、ESG要素を含んだ事業性評価への発展を取り上げる。
    具体的には、それぞれの研究者が文献や各種のデータを活用して研究を行い、その成果を持ち寄り、議論を重ね、研究の精緻化を図る。また、ESG金融に関しての外部の専門家や実務家の講演会を実施し、講師との質疑を通じて、現状を正確に把握し、課題についての理解を深める。

    外部専門家の講演として、ESG金融の専門家や進んだ取り組みを実行している金融機関を招いての研究会実施を予定。

     

    <研究体制>

    研究統括

    本多 佑三 APIR研究統括、大阪学院大学教授、大阪大学名誉教授

    リサーチリーダー

    家森 信善  APIR上席研究員、神戸大学経済経営研究所教授

    リサーチャー

    西谷 公孝  神戸大学経済経営研究所教授
    高屋 定美  関西大学教授
    播磨谷 浩三 立命館大学教授
    小塚 匡文  摂南大学教授
    柴本 昌彦  神戸大学経済経営研究所准教授
    海野 晋悟  香川大学准教授
    橋本 理博  愛知学院大学准教授
    尾島 雅夫  神戸大学経済経営研究所研究員(2022/3/31現在)
    芝田 健二  APIR統括調査役

     

    期待される成果と社会還元のイメージ

    事業性評価の質的向上の優れた実践の紹介や課題の分析を行った書籍の刊行を予定している。
    ESG金融に関する分析については、APIR報告書の形で取りまとめた後に、論文や各種の講演の形で社会や金融機関に還元する。

     

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  • 松林 洋一

    テキストデータを利用した新しい景況感指標の開発と応用

    研究プロジェクト

    研究プロジェクト » 2021年度 » 経済予測・分析軸

    RESEARCH LEADER : 
    松林 洋一

    ABSTRACT

    リサーチリーダー

    APIR上席研究員 松林 洋一 神戸大学大学院経済学研究科長・経済学部長・教授

     

    研究目的

    従来、マクロ経済の動向を把握するには、集計データを用いることが一般的である。しかし、集計データは、リアルアイム性に欠けており、ミクロの経済要因を知るには不十分という課題がある。一方、昨今の情報技術の急速な進展により、国内外の経済活動において生成される大規模なデータ(ビッグデータ)が様々な形で利用可能になり始めている。きわめて豊富な情報を内包しているビッグデータの活用は、マクロ経済のより精緻な情勢判断と予測において、有効であると考えられる。このため、本研究ではビッグデータの一つであるテキストデータを利用して、経済の動向を把握することを試みる。

     

    研究内容

    本研究で基本となる成果物は、テキストデータから推定された景気関連指数(S-APIR指数)である。指数を推定するため、2020年度から引き続き、人工知能の一種である深層学習を用いる。深層学習のモデルとして、これまでと同様にリカレント・ニューラル・ネットワーク(Recurrent Neural Network、以下RNN)に加え、Google社が開発した最新の学習モデルであるBERT(Bidirectional Encoder Representations from Transformers)を用いる。BERTは、RNNのように単語の順序を考慮した上で学習することはせず、文中の全ての単語同士の依存関係を学習する。その処理を基本として、S-APIR指数の各バージョンを推定するモデルを構築する。

     

    <研究体制>

    研究統括

    稲田 義久  APIR研究統括兼数量経済分析センター長、甲南大学名誉教授

    リサーチリーダー

    松林 洋一  APIR上席研究員、神戸大学大学院経済学研究科長・経済学部長・教授

    リサーチャー

    関 和広   甲南大学知能情報学部教授
    生田 祐介  大阪産業大学経営学部講師

     

    期待される成果と社会還元のイメージ

    新聞記事のテキストデータから景況感を推定するモデルを構築し、その出力値をS-APIR指数と称している。これを政府による既存の景況感指数と比較することで、我々のモデルが有する特徴を明らかにする。その結果を踏まえて、「S-APIR指数」を一般に公表していく。

    景気動向を代理する「S-APIR指数」を見ることで、企業の経営判断を行う際の議論に使えるようにする。そして、国や自治体に対しても、政策決定に活用して頂くことを検討する。具体的に、本研究の成果の一つとして期待できる「単語のデモ・システム」を、ユーザーへ公開する。ユーザー自身が、デモ・システムへ興味ある単語を入力すると、その単語がS-APIR指数にどのような影響を与えているのか知ることができる。例えば、「東京五輪」という単語を入力した場合、ミクロの波及メカニズム(例、建設需要)までは見ることができないが、東京五輪が最終的に景気動向へ正の影響を及ぼすのかどうかを調べるための、きっかけとなる。

  • 高林 喜久生

    関西地域間産業連関表2015年表の作成と応用

    研究プロジェクト

    研究プロジェクト » 2021年度 » 経済予測・分析軸

    RESEARCH LEADER : 
    高林 喜久生

    ABSTRACT

    リサーチリーダー

    APIR上席研究員 高林 喜久生 関西学院大学経済学部教授

     

    研究目的

    APIRでは、前身の関西社会経済研究所の時代から、関西における地域間産業連関表の作成や利活用に関する研究に継続して取り組んでいる。
    COVID-19は経済社会活動に大きな影響をもたらし、特に観光産業に大きな打撃を与えた。世界的な感染拡大に伴い、観光消費額は日本人、外国人ともに大きく落ち込んだ。観光消費額に関する統計は「旅行・観光消費動向調査」などがあるが、観光消費額の減少が地域経済にどのような経済波及効果をもたらすか分析した研究は少ない。したがって、2021年度は観光産業に焦点を当て、全国や関西各府県の産業連関表を用いて分析を行う。
    また、昨年度末にかけて地域間表の作成に必要な関西2府8県の「2015年地域産業連関表」がほぼ出そろったことから、「2015年 APIR関西地域間産業連関表(以下2015年表)」の作成を行う。

     

    研究内容

    1)観光庁TSAに基づく観光産業分析のフレームワークの構築
    現在入手できる最新版の全国表である経済産業省「平成29年 延長産業連関表(平成27年基準)」の各産業部門を観光庁「旅行・観光サテライト勘定(TSA)」に基づき、「観光部門」と「非観光部門」に分割し、他産業と比較した観光産業の特徴を明らかにする。同様に、関西2府8県の「2015年地域産業連関表」を用いて、観光産業の特徴を分析する。
    2)「2015年 APIR関西地域間産業連関表」の作成
    2020年度実施したWEBアンケート結果を基に、府県間の取引関係を示した交易マトリックスを更新する。また、関西2府8県の「2015年地域産業連関表」から統合小分類をベースに産業部門の統合・調整を行い、2015年表の作成を行う。
    3)インフラ整備の経済効果に関する勉強会
    2025年に予定されている大阪・関西万博に向けた交通ネットワークの整備や今後備えるべき災害への対応を始め、関西で課題となっているインフラに関する勉強会を数回程度実施する。

    既存の研究との差異は以下の2点である。
    1つ目は、観光庁「旅行・観光サテライト勘定(TSA)」に基づき、観光に関連する産業を「観光部門」と「非観光部門」に分割する。観光産業はすそ野が広く、産業連関表の産業分類では観光関連とそれ以外が分かれておらず、分析が粗くなってしまうという問題がある。そのため、観光部門と非観光部門を分けることで、分析の精緻化を図っている。
    2つ目は、分析ツールとしてAPIRが持つ2015年表を用いることである。現存する最新版の関西の地域間産業連関表はAPIRが作成した2011年表のみである。地域間かつ広域で経済活動を把握することができる地域間産業連関表について、年次を2015年に更新したものを用いることで2011年表よりも直近の経済構造を反映でき、より実態に即した分析が可能となると考えられる。
    なお、関西地域間産業連関表の対象地域は広域関西2府8県であり、関西広域連合や関西観光本部の対象地域をカバーしている。これにより関西を広域で捉えた際の経済波及効果等の分析を行うことが可能となる

     

    <研究体制>

    研究統括

    稲田 義久  APIR研究統括兼数量経済分析センター長、甲南大学名誉教授

    リサーチリーダー

    高林 喜久生 APIR上席研究員、関西学院大学経済学部教授

    リサーチャー

    下田 充   日本アプライドリサーチ研究所主任研究員
    下山 朗   大阪経済大学経済学部教授
    入江 啓彰  近畿大学短期大学部准教授
    藤原 幸則  APIR上席研究員、大阪経済法科大学経済学部教授
    木下 祐輔  APIR調査役兼研究員

     

    期待される成果と社会貢献のイメージ

    成果物である2015年表は、2011年表と同様、部門を集約した上でAPIRのホームページ上で発表を行う。また、分析成果は景気討論会や学会など外部の研究会で報告することを予定している。
    地域間産業連関表を用いることで、関西における府県間・産業間の相互取引関係・供給構造の分析や、経済波及効果の推計を通じた政策評価を客観的かつ定量的に行うことが可能となる。これらの分析結果は、自治体の担当者にとっても、政策形成を行う上での重要な指針となるだけでなく、関西経済の現状および構造的特徴を説明する際の貴重な資料として活用されることが期待できる。

  • 稲田 義久

    都道府県別訪日外客数と訪問率:5月レポート No.24

    インバウンド

    インバウンド

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 松林 洋一 / 野村 亮輔

    ABSTRACT

    【ポイント】

    ・JNTO訪日外客統計によれば、5月の訪日外客総数(推計値ベース)は10,000人で、前月(10,900人)から減少した。伸びは前々年同月(2019年5月)比でみれば-99.6%となり、依然訪日外客は低迷した状況が続いている。

    ・JNTO訪日外客統計を目的別にみれば、3月の総数(暫定値ベース)は12,276人となった。伸びはコロナ禍のない前々年同月(2019年3月)比では、-99.6%と大幅減少が続く。うち、観光客は374人(同-100.0%)、商用客は1,105人(同-99.3%)、その他客は10,797人(同-94.2%)であった。

     

    【トピックス1】

    ・関西5月の輸出は堅調な対中輸出に加え欧米向け輸出の回復もあり、3カ月連続で増加し、伸びは前月から加速した。対中貿易動向をみると、輸出の伸びは12カ月連続の増加だが、輸入は昨年5月のマスク需要の急増を受け、輸入が大幅増加した裏が出たため、2カ月連続の減少となった。

    ・財貨の輸出入は中国や欧米の景気回復により堅調だが、サービスの輸出入は厳しい状況が続いている。

    5月の関西国際空港への訪日外客数は2,001人、日本人出国者数は2,902人でいずれも前月から減少し、低位で推移している。

    ・3度目の緊急事態宣言を受け、サービス業は再び悪化した。

    4月の第3次産業活動指数は98.0で2カ月ぶりの前月比マイナス。4月末に発令された緊急事態宣言により小売業などの対面型サービス業を中心に悪影響が表れた。

    ・第3次産業活動指数のうち、観光関連指数は66.3で2カ月ぶりの前月比マイナス。緊急事態宣言の発令に伴い、飲食サービス業を中心に休業要請が行われたことが悪影響した。

     

    【トピックス2】

    ・3月の関西2府8県の延べ宿泊者数は5,413.3千人泊で、伸びはコロナ禍の影響がない前々年同月(2019年3月)比で-49.9%となった。

    ・うち日本人延べ宿泊者数は5,356.4千人泊で伸びは前々年同月比-33.3%と前月からマイナス幅は縮小した。外国人延べ宿泊者数は、56.9千人泊で伸びは前々年同月比-98.0%となり、前月から小幅縮小した。

    ・関西の延べ宿泊者数を宿泊者の居住地別でみると、県内の延べ宿泊者数は1,300.0千人泊、県外は3,882.0千人泊であった。延べ宿泊者数に占めるシェアを前年同月で比較すると、県内は上昇している一方で、県外は低下しており、県内比率が高まっていることが分かる。

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  • 稲田 義久

    Kansai Economic Insight Monthly Vol.98–景気は足下、先行きともに改善:先行きの個人消費回復のカギを握るワクチン接種の進捗–

    経済予測

    経済予測 » Monthly Report(関西)

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 豊原 法彦 / 木下 祐輔 / 郭 秋薇 / 野村 亮輔 / 吉田 茂一 / 車 競飛

    ABSTRACT

    ・関西のCOVID-19の1日当たり新規感染者数(7日移動平均)は、4月末にピークアウトし、5月以降減少。足下では「感染第4波」は収束に向かっている。
    ・4月の鉱工業生産は生産用機械や汎用・業務用機械などの増産もあり、2カ月ぶりに前月比上昇したものの、4-6月期の最初の月としては低調である。
    ・4月の完全失業率は4カ月ぶり、有効求人倍率(受理地別)は2カ月連続の前月比悪化。3度目の緊急事態宣言発令で経済活動が抑制されており、雇用への下押し圧力が見られる。
    ・3月の関西2府4県の現金給与総額は名目で20カ月ぶり、実質で3カ月連続の前年比増加。パートタイム労働者比率が4カ月連続で低下したために、1人当たり賃金が押し上げられたと見られる。所得環境の本格的な回復は道半ばである。
    ・4月の大型小売店販売額は2カ月連続の前年比増加。ただし、コロナ禍の影響がない前々年と比較すると、販売額は依然低水準である。今月は感染拡大と緊急事態宣言再発令により、百貨店を中心に前月より販売額が縮小した。
    ・4月の新設住宅着工戸数は3カ月連続の前月比増加。持家の回復と貸家の大幅な増加は全体の上昇に寄与した。
    ・4月の建設工事出来高は関東が15カ月連続で前年比減少する一方、関西は37カ月連続で増加した。5月の公共工事請負金額は2カ月ぶりの前年比増加となった
    ・5月の景気ウォッチャー現状判断DIは2カ月ぶりの前月比改善。新規感染者数の減少や休業要請の一部緩和が影響した。先行きはワクチン接種普及等の期待から3カ月ぶりに改善した。
    ・5月の輸出は3カ月連続、輸入は4カ月連続の前年比増加。堅調な回復を見せるものの、前々年同月比では輸入は減少となっている。ただし、欧米からの医薬品輸入の増加が続く。
    ・5月の関空への外国人入国者数は2,001人と前月(2,341人)から減少。入国制限が続いているため、入国者数は底這いでの推移が続こう。
    ・5月の中国の貿易収支は15カ月連続の黒字となったが、輸入の増大もあり4カ月連続で前年比縮小。また、企業のセンチメント、工業生産指数などは前月から幾分回復したが、社会消費品小売総額は前月から減速した。

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  • 稲田 義久

    Kansai Economic Insight Quarterly No.54 -持ち直しているが本格回復には道半ば:ワクチン接種を促進し、内需主導の確固たる成長を-

    経済予測

    経済予測 » Quarterly Report(関西)

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 入江 啓彰 / 木下 祐輔 / 野村 亮輔 / 吉田 茂一

    ABSTRACT

    一般財団法人アジア太平洋研究所では、日本ならびに関西経済について、四半期ごとに景気分析と予測を行っています。6月1日、最新の「日本経済予測」と「関西経済予測」を発表しました。経済見通しの説明動画を以下の通り配信しています。

     

    1. 2021年1-3月期の関西経済は、緩やかに持ち直している。ただしコロナ禍が依然続く中、緊急事態宣言等で経済活動が抑制されているため、家計部門や企業部門など内需部門の改善ペースは緩慢である。規模・業種によっても回復度合いに差が見られる。
    2. 2021年に入り、新規陽性者数は「第3波」の収束から「第4波」を迎えた。その「第4波」は4月末にピークアウトし、足下では収束に向かっている。ただし重症患者病床使用率は依然として高水準にあるため、4月以降、3度目となる緊急事態宣言が発令され、6月以降も継続となる。
    3. 新型コロナワクチンの接種が21年2月から開始となった。ワクチン接種の進展は、先行きの新規陽性者数の減少に加え、消費者心理の改善、先送りしていたペントアップ需要の発現に貢献しよう。
    4. 家計部門は、COVID-19の感染拡大や緊急事態宣言発令の影響から、総じて弱い動きとなっている。センチメントや所得・雇用環境など持ち直してはいるものの、前年の反動といった部分もあり、堅調な回復とは言いがたい状況である。
    5. 企業部門は、製造業と非製造業で回復度合いに差異が見られる。製造業は、輸出の回復を背景にして生産や景況感など持ち直しの動きが見られる。一方非製造業は、特に対面型サービスでコロナ禍の影響が根強く、弱い動きとなっている。
    6. 輸出の回復は鮮明となっている。中国向けに続き、米国・EU向けも足下で2019年同月の水準を上回った。一方インバウンド需要は回復の見込みが立たない。
    7. 関西の実質GRP成長率を2021年度+3.6%、22年度+2.1%と予測する。20年度の大幅マイナスから21年度以降回復に転じる。ただしコロナ禍前の水準に戻るのは22年度以降となる。前回予測(3月1日公表)に比べて、21年度は輸入を上方修正したため-0.2%ポイントの下方修正、22年度は成長の加速を見込み+0.5%ポイントの上方修正とした。
    8. 成長に対する寄与度を見ると、民間需要が21年度+2.2%ポイント、22年度+1.4%ポイントと2018年度以来3年ぶりにプラスとなり、成長を牽引する。また、公的需要・域外需要も成長を下支えし、バランスの取れた成長となる。
    9. 感染抑制と景気回復の両立に向け、ワクチン接種の進展は、経済活動再開を促進しよう。今後景気を加速していくにあたっては、外需のみに依存するのではなく、内需を刺激する経済対策も望まれる。経済活動の正常化には、過剰な自粛・萎縮は避け「正しく恐れる」ことが必要であろう。
    10. トピックスでは、関西各府県における2019-20年度のGRPの早期推計結果を紹介する。2020年度は関西2府4県いずれもマイナス成長となった。

     

    ※説明動画の一般公開は終了しました。会員企業の方は会員専用ページから閲覧可能です。

     

  • 稲田 義久

    133回景気分析と予測<ワクチン接種にgame changerとしての期待が高まる-実質GDP成長率予測:21年度+3.4%、22年度+2.3%->

    経済予測

    経済予測 » Quarterly Report(日本)

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 下田 充

    ABSTRACT

    一般財団法人アジア太平洋研究所では、日本ならびに関西経済について、四半期ごとに景気分析と予測を行っています。6月1日、最新の「日本経済予測」と「関西経済予測」を発表しました。経済見通しの説明動画を以下の通り配信しています。

     

    1.  2021年1-3月期実質GDP(1次速報)は前期比年率-5.1%(前期比-1.3%)減少し、3四半期ぶりのマイナス。結果、2020年度実質GDP成長率は-4.6%と2年連続のマイナスとなった(19年度-0.5%)。リーマンショック時の08年度(-3.6%)、09年度(-2.4%)を超えるマイナス成長となった。1-3月期実績は、市場コンセンサス(ESPフォーキャスト5月調査)の最終予測(前期比年率-4.61%)から下振れた。なお、CQM最終予測の支出サイドは同-3.8%であった。
    2.  1-3月期のマイナス成長の主要因は緊急事態宣言による民間最終消費支出の減少である。またGo Toキャンペーン一時停止による政策的効果の剥落と感染者急増による医療機関への受診手控え等による政府最終消費支出の減少が影響した。実質GDP成長率(前期比-1.3%)への寄与度を見ると、国内需要は同-1.1%ポイントと3四半期ぶりのマイナス。うち、民間需要は同-0.7%ポイントと3四半期ぶりのマイナス、公的需要も同-0.4%ポイントと10四半期ぶりのマイナス寄与。また純輸出も同-0.2%ポイントと3四半期ぶりのマイナスとなった。
    3. 新たに、1-3月期GDP1次速報を追加し、外生変数の想定を織り込み、21-22年度の日本経済の見通しを改定した。今回、実質GDP成長率を、21年度+3.4%、22年度+2.3%と予測した。暦年ベースでは、21年+2.1%、22年+2.6%と予測した。前回(第132回)予測に比して、21年度は変化なし、22年度は+0.5%ポイント上方修正した。ワクチン接種普及が後ずれすることから、成長の加速効果を21年後半から22年にかけて発現するとした
    4.  実質GDP成長率への寄与度をみれば21年度は、民間需要(+1.7%ポイント)、純輸出(+1.2%ポイント)、公的需要(+0.5%ポイント)、すべての項目が景気を押し上げるが、民間需要、純輸出は前年度の落ち込みに比すれば回復力に欠ける22年度も、民間需要(+1.7%ポイント)、公的需要(+0.4%ポイント)、純輸出(+0.3%ポイント)と、いずれも景気を押し上げるが、純輸出の寄与度が前年から低下する
    5.  実質GDPの四半期パターンをみれば、21年4-6月期はCOVID-19感染再拡大(第4波)と3度目の緊急事態宣言の影響で停滞は避けられない。以降、ワクチン接種普及に伴うセンチメントの急回復により、潜在成長率を上回るペースが持続する。このため、コロナ禍前の水準を超えるのは22年1-3月期、コロナ禍前のピークを超えるのは10-12月期となろう。
    6.  消費者物価指数の先行きについては、通信料、エネルギー価格、宿泊料がポイントとなろう。年後半以降前年同月比プラスに転じるが、サービス価格が下押し圧力となるため、消費者物価指数の基調は低調である。結果、消費者物価コア指数のインフレ率を、21年度+0.4%、22年度+0.5%と予測する

     

    ※説明動画の一般公開は終了しました。会員企業の方は会員専用ページから閲覧可能です。

     

  • 稲田 義久

    都道府県別訪日外客数と訪問率:4月レポート No.23

    インバウンド

    インバウンド

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 松林 洋一 / 野村 亮輔

    ABSTRACT

    【ポイント】

    ・JNTO訪日外客統計によれば、4月の訪日外客総数(推計値ベース)は10,900人で、前月(12,300人)から減少したが、2カ月連続で1万人を超える水準となった。伸びはCOVID-19の影響がない前々年同月(2019年4月)比でみれば-99.6%で底這いの状況が続いている。

    ・JNTO訪日外客統計を目的別にみれば、2月の総数(暫定値ベース)は7,355人(前年同月比-99.3%)となった。うち、観光客は266人(同-100.0%)、商用客は776人(同-98.9%)、その他客は6,313人(同-94.4%)であった。

    ・世界のワクチン接種状況をみれば、欧米の主要国でワクチンの普及が進み、イタリアや英国では観光に対する規制緩和が行われている。一方、日本の接種状況は欧米各国と比較すると遅れており、入国緩和の目途も依然立っていない状況となっている。

     

    【トピックス】

    ・関西4月の輸出は中国や米国の景気回復もあり、2カ月連続のプラスとなり、伸びは前月から加速した。対中貿易動向をみると、輸出の伸びは11カ月連続のプラスだが、輸入は昨年のマスクの輸入の大幅増加の裏が出たため、3カ月ぶりのマイナスとなった。

    ・財貨の輸出入は回復を示しているが、サービスの輸出入は低迷している。

    4月の関西国際空港への訪日外客数は2,341人で前月から減少。また、同月の日本人出国者数は2,965人であった。インバウンド需要、アウトバウンド需要ともに消失した状況が続く。

    ・財貨の生産は持ち直しの動きがみられるが、サービス業の回復は遅れている。

    3月の第3次産業活動指数は97.5で5カ月ぶりの前月比プラス。1-3月期では3四半期ぶりの前期比マイナスとなり、水準は前年同期から低い状況が続く。

    ・第3次産業活動指数のうち、観光関連指数は68.8で2カ月ぶりの前月比プラス。1月の落ち込みが大きかったため1-3月期では65.4となり、3四半期ぶりの前期比マイナスとなった。前年同期の水準(92.7)と比較すれば27.3ポイント低く、回復が遅れていることがわかる。

     

    ・2月の関西2府8県の延べ宿泊者数は3,077.2千人泊で、伸びは13カ月連続の前年比マイナスとなり、大幅減少が続く。

    ・うち日本人延べ宿泊者数は3,044.4千人泊で伸びは14カ月連続の前年比マイナス、外国人延べ宿泊者数は、32.8千人泊で13カ月連続の同マイナスとなった。

    ・関西の延べ宿泊者数を宿泊者の居住地別でみると、県内の延べ宿泊者数は853千人泊で伸びは3カ月連続の前年比マイナス、県外は2,063千人泊で伸びは15カ月連続の同マイナス。緊急事態宣言再発令により府県間を跨ぐ不要不急の移動が制限されたことから、特に県外の延べ宿泊者への影響が大きい。

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  • 稲田 義久

    Kansai Economic Insight Monthly Vol.97–景気は足下、先行きともに改善:懸念される緊急事態宣言発令の影響–

    経済予測

    経済予測 » Monthly Report(関西)

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 豊原 法彦 / 木下 祐輔 / 郭 秋薇 / 野村 亮輔 / 吉田 茂一 / 車 競飛

    ABSTRACT

    ・関西のCOVID-19の1日当たり新規感染者数(7日移動平均)は、4月以降急増し28日に過去最高を更新し、ピークを打った。5月以降は減少に転じたが、依然高水準が続いている。
    ・3月の鉱工業生産は生産用機械や汎用・業務用機械などの減産により、3カ月ぶりに前月比低下。1-3月期では3四半期連続の上昇となり、コロナ禍の影響が出始めた時期まで回復した。
    ・3月の完全失業率は2カ月連続の前月比改善。有効求人倍率(受理地別)は3カ月ぶりの小幅悪化。1-3月期は、完全失業率は小幅だが6四半期ぶり、有効求人倍率は7四半期ぶりの改善。雇用情勢は総じて回復が見られるが、回復のペースは緩やかである。
    ・2月の関西2府4県の現金給与総額は名目で19カ月連続の前年比減少だが、マイナス幅は前月から縮小。実質では24カ月ぶりに同増加に転じた。
    ・3月の大型小売店販売額は18カ月ぶりの前年比増加。ただし、前年同月はインバウンド消費の激減や巣ごもり需要の増加による影響もあり、それらの影響がない前々年と比較すると、販売額は依然コロナ前の水準を下回っている。
    ・3月の新設住宅着工戸数は2カ月連続の前月比増加。全てのカテゴリーで増加がみられ、特に分譲マンションの増加が全体の上昇に大きく寄与した。
    ・3月の建設工事出来高は関東が15カ月連続で前年比減少する一方、関西は8カ月連続で増加した。4月の公共工事請負金額は3カ月ぶりの前年比減少となった
    ・4月の景気ウォッチャー現状判断DIは4カ月ぶりの前月比悪化。3度目の緊急事態宣言の発令で対面型サービス業が大きく影響を受けた。また、先行きも2カ月連続で悪化した。
    ・4月の輸出は2カ月連続、輸入は3カ月連続の前年比増加。輸出増には中国向け半導体等製造装置や米国向け建設用・鉱山用機械が寄与し、輸入増には欧米からの医薬品が引き続き寄与した。
    ・4月の関空への外国人入国者数は2,341人と前月(3,129人)から減少し、依然インバウンド需要は消失した状況が続く。
    ・4月の中国経済は、多くの経済指標で堅調な伸びを示したが、前年同月の裏が出たため、伸び率は前月からやや縮小した。2020年の「人口普査(センサス)」が発表されたが、結果は今後の中国経済の課題を示唆するものとなっている。

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  • 稲田 義久

    Kansai Economic Insight Monthly Vol.96–景気は足下先行きともに改善:感染拡大防止策によるサービス消費の下押し圧力に注意–

    経済予測

    経済予測 » Monthly Report(関西)

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 豊原 法彦 / 木下 祐輔 / 郭 秋薇 / 野村 亮輔 / 吉田 茂一 / 車 競飛

    ABSTRACT

    ・関西のCOVID-19の1日当たり新規感染者数(7日移動平均)は、緊急事態宣言が解除された3月1日以降、増加に転じた。4月19日には過去最多を更新し、感染拡大が続いている。
    ・2月の鉱工業生産は汎用・業務用機械や輸送機械などの増産もあり、2カ月連続の前月比上昇。水準は消費増税前の2019年9月以来の値となり、生産は回復傾向が続いている。
    ・2月の完全失業率は5カ月ぶり、有効求人倍率(受理地別)は2カ月連続でいずれも前月比改善だが、回復のテンポは緩やかである。
    ・1月の関西2府4県の現金給与総額は名目で18カ月連続の前年比減少だが、実質賃金はほぼ横ばい。来月以降、所得環境が回復基調に転じるかどうか、注視が必要である。
    ・2月の大型小売店販売額は17カ月連続の前年比減少。減少幅は前月から縮小し、回復が見られた。ただし、前年2月はうるう年や衛生用品の買い占めの影響もあり、影響がない前々年同月と比較すると、依然厳しい状況が続いている。
    ・2月の新設住宅着工戸数は3カ月ぶりの前月比増加。中でも貸家が大幅な増加となり、全体の押し上げに寄与した。
    ・2月の建設工事出来高は関東が14カ月連続で前年比減少する一方、関西は7カ月連続で増加した。3月の公共工事請負金額は2カ月連続の前年比増加となったが、1-3月期は2四半期連続で前年比減少した。
    ・3月の景気ウォッチャー現状判断DIは緊急事態宣言が全国的に解除されたことで、2カ月連続の前月比改善。一方、先行きは感染再拡大の悪影響が懸念されており、4カ月ぶりに悪化した。
    ・3月の輸出は2カ月ぶり、輸入は2カ月連続の前年比増加。輸出増には中国向けプラスチックや米国向け建設用・鉱山用機械が寄与。一方、輸入増には欧米の医薬品や中国のPC等が寄与した。
    ・3月の関空への外国人入国者数は前月から増加したものの、厳格な水際対策が依然続いており、入国者は低迷している。
    ・1-3月期の中国の実質GDPは前年同期の低水準により+18.3%と11年4-6月期以来の2桁増加。一方、中国政府は世界経済の先行きリスクや、海外の感染拡大状況などの不確実性を警戒し、21年の経済成長率を6%以上とする控えめな目標を設定した。

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  • 稲田 義久

    都道府県別訪日外客数と訪問率:3月レポート No.22

    インバウンド

    インバウンド

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 松林 洋一 / 野村 亮輔

    ABSTRACT

    【ポイント】

    ・JNTO訪日外客統計によれば、3月の訪日外客総数(推計値ベース)は12,300人で、前月から増加したものの、水準は依然低い。伸びは前年同月比-93.6%と17カ月連続のマイナス。なお、昨年の水準が低いため、影響のない前々年同月(2019年3月)比でみれば、-99.6%と依然訪日外客は消失した状況が続いている。

    ・JNTO訪日外客統計を目的別にみれば、1月の総数(暫定値ベース)は46,522人(前年同月比-98.3%)となった。うち、観光客は547人(同-100.0%)、商用客は3,099人(同-97.3%)、その他客は42,876人(同-83.4%)であった。

    ・その他客をみれば、ベトナムがビジネス目的での往来が緩和されて以降、3カ月連続で1万人を超える水準となっている。しかしながら、1月14日以降、入国制限が厳格化されたため、ビジネス目的での往来緩和も一時停止されており、来月以降は低水準となろう。

     

    【トピックス】

    ・3月の関西国際空港への訪日外客数は3,129人で前月から増加。伸びは前年同月比-99.2%と14カ月連続のマイナスとなった。なお、前々年同月(2019年3月)比では-99.6%となっており、入国者は消失した状況が続いている。

    ・関西3月の輸出は中国を中心としたアジア向け輸出の好調もあり、前年同月比+14.6%で2カ月ぶりのプラス。また輸入は同+6.2%と2カ月連続のプラス。結果、関西の貿易収支は3,809億円と14カ月連続の黒字となった。

     

    1月の関西2府8県の延べ宿泊者数は12カ月連続の前年比マイナス。1月14日から京都府、大阪府、兵庫県に緊急事態宣言が再発令されたため、マイナス幅は前月から拡大した。

    ・うち日本人延べ宿泊者数は2,993.0千人泊で伸びは13カ月連続の前年比マイナスで、前月からマイナス幅は拡大。外国人延べ宿泊者数は、97.1千人泊で12カ月連続の同マイナスとなった。

    ・関西の延べ宿泊者数を宿泊者の居住地別でみると、20年5月に県内・県外(外国人宿泊者含む)ともに大底とし、Go To トラベルキャンペーン事業が開始された7月以降、中でも県外の宿泊者数の増加が特徴的である。21年1月ではCOVID-19感染再拡大(第3波)を受け、事業が一時停止されたこともあり、特に県外からの宿泊者が大幅に減少している。

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