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    マクロモデル研究合宿を開催(2010年3月)

    研究プロジェクト

    研究プロジェクト » 2009年度

    ABSTRACT

    テーマ:日本経済財政中期モデルの開発ならびに関西経済予測モデル(2010年版)の検討
    開催日:平成22年(2010年)3月11日(木)?13日(土)
    会 場:兵庫県豊岡市城崎町 まつや会議室

    今回の研究合宿は、関西社会経済研究所に設置された計量モデル研究会の活動の一環であり、日本経済財政中期モデルを新規構築するためのキックオフミー ティングとして実施された。当研究所は、1976年から短期モデルによる日本経済の四半期予測(短期予測)を公表しているが、近年は、税財政改革等の中期 的な経済問題への対応の必要性が高まっていた。そこでこの度、マクロ経済部門と財政部門の中期見通しおよび政策シミュレーションを目的とする、日本経済財 政中期モデルの構築を開始することとした。

    2010年3月11日(木)
    当研究所が管轄する複数の経済モデルについて、分析対象や分析期間、モデルの目的等の比較・検討が行われた。そのうえで高林主査からは、「財政の持続可 能性を明示化するのであれば、日本が高齢化のピークを迎える2025年ごろが重要なターゲットになる。そのためにはモデルのシミュレーション期間は 2030年ごろまでがよいのではないか」という意見が出された。
    また、稲田主査からは参考文献として、環境政策分析用に開発された3Eモデルの概要が説明された。3Eモデルはオーソドックスなマクロ計量モデルにエネ ルギーバランス表とエネルギー需要ブロック、国内エネルギー価格ブロックが接続されており、原料価格やエネルギー税率、炭素税、エネルギー技術改善のシ ミュレーションが可能なモデルである。中期予測を前提としたモデルであるため、サブブロックとの直接手法を含め、本研究会が目指す中期モデル構築の参考と なると思われる。

    2010年3月12日(金)
    午前中は、当研究所が四半期ごとに公表する「関西エコノミックインサイト」の基盤となる、関西予測モデルについて議論が行われた。特に、モデルを構成す る方程式のうち、輸出関数の改訂が主な議題となった。アジア経済との結びつきを深める関西経済の特色を考慮し、輸出関数の説明変数をどのように設定するか について活発な意見交換がなされた。高林主査からは、「アジアで部材を組み立て、最終財を米国に輸出するという経路を考慮すると、対アジア輸出関数(除く 中国)の所得変数としては米国のGDPを追加するのはどうか」という提案がなされた。
    なお、今回は中国、中国除くアジア、アジア除く世界をそれぞれ被説明変数とした場合の輸出関数の修正が行われた。これらの輸出の所得弾力性については、 後日、当研究所が公表する「日米中超短期予測(3月見通し)」および「エコノミックインサイト6号」で解説が行われる予定である。
    午後からは下田委員が合流し、再び日本経済財政中期モデルについて議論がなされた。稲田主査からは、2003年に公表された電力中央研究所による財政モ デルの概要が説明された。内生変数が89本と中規模であり、制度の正確性も担保されていることから、本研究会が目指す日本経済財政中期モデルの財政ブロッ ク部分の参考となると思われる。特に、一般政府の部門別所得勘定表の説明は、SNAによる財政部門の理解には欠かせないものであった。
    最後には、研究会として中期モデルのワーキングペーパーを1本完成させること、8-9月ごろをめどに一旦中期モデルを確定させることなどが確認された。
    (文責 武者)

     

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    マクロモデル研究会で報告(2010年7月)

    研究プロジェクト

    研究プロジェクト » 2010年度

    ABSTRACT

    2010年7月2-3日、日本経済研究センター(東京)で開催されたマクロモデル研究会において、当研究所の入江研究員・武者研究員が「地域計量モデルと地域間産業連関表」というテーマで報告を行いました。

    この報告とマクロモデル研究会全体の概要をレポートとしてまとめました。
    (研究会の全ての報告概要は、日本経済研究センターのホームページでご覧になれます→http://www.jcer.or.jp/)

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    マクロモデル研究会で報告(2009年7月)

    研究プロジェクト

    研究プロジェクト » 2009年度

    ABSTRACT

    2009年7月24-25日、日本経済研究センター(東京)で開催されたマクロモデル研究会において、当研究所の入江研究員が「関西経済予測モデルの開発と応用」というテーマで報告を行いました。報告論文はディスカッションペーパーNo.15に公開しています。

    また、マクロモデル研究会に参加した当研究所分析チームスタッフが業務と関連の深い報告をピックアップしてレポートとしてまとめました(研究会の全ての報告概要は、日本経済研究センターのホームページでご覧になれます)。

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  • 稲田 義久

    経済フォーキャスト

    研究プロジェクト

    研究プロジェクト » 2016年度 » 経済予測・分析、シミュレーション

    AUTHOR : 
    稲田 義久

    ABSTRACT

    リサーチリーダー

    数量経済分析センター長 稲田義久 甲南大学教授

     

    研究目的

    企業や政策主体(中央政府及び地方政府)にとって、正確で迅速な景気診断が、各主体の意思決定や政策判断にとって決定的に重要となる。本プロジェクトは、日本経済及び関西経済の高頻度の定点観測とともに、超短期予測モデル(CQM)や四半期マクロ計量モデルを用いてタイムリーで正確な短期経済見通しの提供に加え、刻一刻変化する経済に対する適切なコメントならびに政策評価を行うことを意図している。

     

    研究内容

    1. 月次レポートの作成

    経済の月次見通しに加え、関西経済の月次レポート(Kansai Economic Insight Monthly)を所内研究員の協力を経て毎月中旬以降に作成している。また翌月の初旬には関経連向けに『関西経済レポート』を提出している。この作業を通して所内エコノミストの分析力の向上を図っている。

    2. 日本経済予測・関西経済予測の四半期レポートの作成

    超短期予測の足下の正確な予測成果を反映し、QE(四半期GDP一次速報値)発表の1週間後に日本経済の四半期予測とともに関西経済の年次予測の四半期改訂が発表される。予測結果や予測改訂は、『景気分析と予測』と『Kansai Economic Insight Quarterly』として発表され、プレスリリリースされる。

    3. 府県別GRP早期推計と超短期予測

    各府県の県民経済計算確報値が発表され次第、5月予測では関西2府4県経済の成長率予測がアップデートされる。11月には、当該年度の月次指標を基にして超短期予測を行なう。

    4. 関西DSGEモデルの開発と関西GRP四半期QEデータベースの作成

    DSGEモデルの特性を活かし、地域固有の構造的課題の抽出や各種政策シミュレーションを行う。その際、DSGEモデルの実用にあたって考えられる課題に十分配慮する。またこのとき、関西の四半期データが必要になると思われるが、足りないところは線形補間や推定によって補い、必要に応じて新しい関西データの指標を作成する。

    また8月予測では関西2府4県経済の成長率予測がトッピクスとして発表される。これらの成果は関西各府県の早期推計として注目されている。また11月予測を受けて景気討論会を企画している。

     

    リサーチャー

    入江啓彰 近畿大学短期大学部准教授(早期推計、関西モデル、DSGEとデータベース)

    小川 亮 大阪市立大学大学院経済学研究科・経済学部准教授(早期推計、関西モデル)

    下田 充 日本アプライドリサーチ主任研究員(日本モデル、早期推計、関西モデル)

    松林洋一 神戸大学大学院経済学研究科 教授(DSGEとデータベース)

    岡野光洋 大阪学院大学講師(DSGEとデータベース)

    井田大輔 桃山学院大学経済学部 准教授(DSGEとデータベース)

     

    期待される成果と社会還元のイメージ

    研究成果はHP上で高頻度に提供。プレスリリースを行うことでマスコミに周知。一部成果はマクロモデル研究会やその他学会でも報告予定である。

    モデルを用いた関西経済の経済予測・構造分析の結果を客観的かつ定量的に示すことで、足元の経済情勢判断の材料として用いることが可能であるとともに、企業の経営戦略や自治体の政策形成を構築するうえでの重要な指針となり、関西経済の現状および構造的特徴を内外において説明する際の貴重な資料となりうる。

  • 稲田 義久

    経済の定点観測と予測

    研究プロジェクト

    研究プロジェクト » 2015年度 » 経済予測・分析軸

    AUTHOR : 
    稲田 義久

    ABSTRACT

    リサーチリーダー

    数量経済分析センター長 稲田義久 甲南大学教授

     

    研究目的

    企業や政策主体(中央政府及び地方政府)にとって、正確で迅速な景気診断が、各主体の意思決定や政策判断にとって決定的に重要となる。本プロジェクトは、日本経済及び関西経済の高頻度の定点観測とともに、超短期予測モデル(CQM)や四半期マクロ計量モデルを用いてタイムリーで正確な短期経済見通しの提供に加え、刻一刻変化する経済に対する適切なコメントならびに政策評価を行うことを意図している。

     

    研究内容

    1.週次予測

    特徴は、高頻度(超短期)予測がベースにある。よく知られた超短期予測モデル(CQM)の手法を用いて、週次ベースで日米経済に対する超短期予測が週末に行われる。毎翌週の初めに当該四半期の日米経済の成長率予測が発表される。また月末には、週次予測は月次レポートとして整理、要約される。予測結果は、いずれもHPで発表される。

    2.月次経済見通しの作成

    日米経済の月次見通しに加え、関西経済の月次レポート(Kansai Economic Insight Monthly)を所内研究員の協力を経て毎月中旬以降に作成している。また翌月の初旬には関経連向けに『関西経済レポート』を提出している。この作業を通して所内エコノミストの分析力の向上を図っている。

    3.四半期予測と年次予測の四半期改訂

    超短期予測の足下の正確な予測成果を反映し、QE(四半期GDP一次速報値)発表の1週間後に日本経済の四半期予測とともに関西経済の年次予測の四半期改訂が発表される。予測結果や予測改訂は、『景気分析と予測』と『Kansai Economic Insight Quarterly』として発表され、プレスリリリースされる。

    また8月予測では関西2府4県経済の成長率予測がトッピクスとして発表される。これらの成果は関西各府県の早期推計として注目されている。また11月予測を受けて景気討論会を企画している。

     

    リサーチャー

    入江啓彰 近畿大学短期大学部講師

    小川 亮 大阪市立大学大学院経済学研究科・経済学部専任講師

    下田 充 日本アプライドリサーチ主任研究員

     

    期待される成果と社会還元のイメージ

    研究成果はHP上で高頻度に提供。プレスリリースを行うことでマスコミに周知。一部成果はマクロモデル研究会やその他学会でも報告予定である。

  • 熊坂 侑三

    今月のトピックス(2010年7月)

    インサイト

    インサイト » コメンタリー

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    熊坂 侑三

    ABSTRACT

    7月2日?3日、日本経済研究センターで「マクロモデル会議」が開催された(同センターHPを参照)。政策課題が活発に議論されたが、筆者流に解釈すれば、メイン・トピックスは(1)成長戦略と(2)環境政策であった。
    (1)に関しては、九州大学篠崎彰彦教授(日本経済研究センター主任研究員)が、ITを通した生産性の引き上げという観点から、2020年までのシミュ レーション期間で、法人税率引き下げとIT投資の加速により、成長率を0.5%ポイント程度加速できるという分析結果を示した。成長戦略の重要なポイント は、IT資本の進化(deepening)である。ところで、篠崎教授の分析はマクロの生産性の分析であったが、産業ごとにIT投資進化の重要性を指摘し たレポートに熊坂有三(経団連プロジェクト:IT革新による日本産業への影響?日本経済の3%成長実現への政策提言?(2008年))がある。このレポー トは、筆者も間接的にかかわってきた日本版上げ潮路線の産業版ともいえよう。
    話は変わるが、日本経済の「失われた20年の原因」の1つとして、デフレ犯人説がある。この数年の日本経済を見れば、消費者物価が1%下がれば賃金が 2-3%下がるという状況にあった。逆にいえば、賃金が2-3%上昇すれば、物価が1%上昇する。だから、デフレが問題であると。しかし、中国と同じ製品 を作っていれば日本の賃金が低下する(グローバル化による要素価格の均等化)のは当たり前である。これはデフレとは無関係で、問題は、日本がいかにより良 い(高付加価値の)製品・サービスを作り出せていないかである。日本経済低迷脱出のカギはIT革新、グローバル化への迅速な適応にある。実際、日本企業の IT活用については、経営戦略・成長戦略へのIT使用が特に遅れているといわれている。
    (2)のテーマでは、「地球温暖化対策に係る中長期ロードマップ(環境大臣試案)」に盛り込まれたモデル試算が取り扱われた。これまで二酸化炭素削減政 策を実施した場合、負担のみを強調する傾向があったが、ロードマップではそのプラス面(省エネ投資・消費の需要拡大効果)にも着目したのが特徴である。よ りバランスのとれた分析になっている。
    これらの分析から、環境部門は将来有望な成長分野であり、この分野への投資は大きな波及効果をもたらすことが示された(藤川清史、下田充:グリーン投資 の経済・雇用効果)。そのためにも、環境投資促進に向けて財政政策のみならず規制緩和政策が重要となる。財政制約の中で公共投資が伸びないなか、民間投資 や省エネ化を誘発するための政策が重要で、再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度、排出量取引制度、環境税などの議論が十分されるべきである。
    今後の成長戦略を考える場合、「第三の道」のロジックも重要だが、実証に支えられた具体戦略としてIT投資の進化と環境戦略が2本の柱となることは確実だ。(稲田義久)

    日本
    <4-6月期の日本経済、踊り場の可能性高まる>

    7月12日の予測では、6月の一部と5月のほとんどの月次データが更新された。これまでの月次データは、4-6月期の日本経済が一時的な踊り場に入ったことを示唆している。
    生産や出荷をみると、5月の鉱工業生産指数は前月比-0.1%と3ヵ月ぶりのマイナス。資本財出荷指数は同-10.2%と大幅低下した。6ヵ月ぶりのマイナス。生産や出荷の拡大スピードは減速している。
    労働市場の回復は遅れている。5月の現金給与総額は前年比-0.2%と減少、3ヵ月ぶりのマイナスである。完全失業率は前月比0.1%ポイント上昇し、5.2%となった。3ヵ月連続の悪化である。また雇用者数は2ヵ月連続で前月比マイナスを記録した。
    民間需要は停滞気味である。5月の消費総合指数は前月比-0.4%と2ヵ月連続のマイナス。この結果、4-5月平均は1-3月期比横ばいとなった。5月 の小売業販売額は前月比-2.0%で5ヵ月ぶりのマイナス。政府の耐久消費財購入促進プログラムの規模が縮小となったため、反動減が生じている。またこれ まで回復を見せていた住宅市場も低調気味である。5月の新設住宅着工数は前月比-7.0%と2ヵ月連続のマイナスである。
    これらの低調なデータを反映した今週の支出サイドモデルは、4-6月期の実質GDP成長率を、純輸出は横ばい内需が縮小するため前期比-0.3%、同年率-1.3%と予測する。先月の予測(+2.5%)から大幅下方修正された。
    一方、7-9月期の実質GDP成長率は、内需、純輸出ともに緩やかに拡大するため、前期比+0.2%、同年率+0.8%と予測している。先月の予測(同+3.1%)から大幅下方修正された。
    4-6月期の国内需要を見れば、実質民間最終消費支出は前期比横ばいとなる。実質民間住宅は同-5.8%と減少し、実質民間企業設備は同+0.6%と小幅 のプラスにとどまる。実質政府最終消費支出は同+0.7%、実質公的固定資本形成は同-20.3%となる。このため、国内需要の実質GDP成長率(前期比 -0.3%)に対する寄与度は-0.3%ポイントとなる。
    財貨・サービスの実質輸出は同+2.9%増加し、実質輸入は同+4.2%増加する。このため、実質純輸出の実質GDP成長率に対する貢献度は0.0%ポイントとなる。
    7月1日発表の6月短観によると、最も注目される業況判断指数は、大企業製造業で+1となり、前回調査から15ポイント改善した。5期連続の上昇で初め てプラス領域に入った。金融市場の混乱の影響はみられず、ポジティブサプライズであった。企業のセンチメントは大企業製造業を中心に引き続き改善している が、先行きに関しては、中堅企業・中小企業ではいずれも悪化が予想されている。このように企業の景況感は足元着実に回復しているが、設備投資計画は依然慎 重で雇用者数も減少しており、最終需要の回復には少し時間がかかりそうである。

    [[稲田義久 KISERマクロ経済分析プロジェクト主査 甲南大学]]

    米国

    投資家はこれまでの景気への悲観的な見方が嘘のように、7月5日から始まる週には景気への見方が急に楽観的になった。その週には、株価は4日間連続して 上昇し、ダウ平均株価指数は512ポイント、5.3%も上昇した。前週の6月29日に、6月のコンファレンスボードの消費者コンフィデンスが10ポイント 低下した時、ダウ平均株価指数は268ポイントも低下した。投資家が景気に対して楽観的な時は、“コンフィデンスはコンフィデンス”というのが常である。 一体、何が起こったのであろうか。たしかに、IMFが世界経済の成長率を少し上方に修正したり、欧州の銀行に対するストレステスト(健全性審査)を巡る懸 念が後退するという外的な要素はあった。しかし、これで投資家の景気へのセンチメントが急変したことを説明するのは難しい。
    投資家は懸念していた景気の二番底の可能性の低さに気づき、また12日の週から本格的に発表される2010年4-6月期の企業収益に期待をしたためだと 考えられる。超短期予測が示すように、景気の二番底どころか、同期の経済成長率が3%程度になることは十分に可能である。また、国民所得の企業収益と企業 が発表する企業収益は幾分異なるが、2010年1-3月期のGDP統計(確報値)を反映した後の4-6月期GDPの統計上の誤差が大きく下方に修正された ことは、企業収益の上方修正を示唆する。市場にとって良いサプライズの企業収益発表があるかもしれない。
    7月9日の超短期予測が示すように、GDP以外のアグリゲート指標で経済をみても4-6月期の経済成長率は3%を超えるとみてよい。今回の景気回復が持 続的な回復になるには、投資家が今の景気回復が堅調なことを認め”Cautious Optimism(注意深い楽観的な見方)”を維持するのがベストで 最もコストのかからない対策である。これまでは、あまりに景気回復に悲観的すぎた。住宅バブルの崩壊から住宅市場が改善するには、いつでもかなりの時間が かかるし、労働生産性の改善が著しいなかで急速な雇用増を求めるには無理がある。そのような中で3%の経済成長率は非常に好ましいと言える。

    [[熊坂有三 ITエコノミー]]

  • 熊坂 侑三

    今月のトピックス(2009年5月)

    インサイト

    インサイト » コメンタリー

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    熊坂 侑三

    ABSTRACT

    <2009年度補正予算のマクロ経済への効果とその含意: アンケート調査に基づく検討>

    【はじめに】
    関西社会経済研究所(KISER)では、麻生内閣による経済危機対策についてアンケート調査(ウェブベース)を行い、5月13日に速報結果を報告した。一 方、5月20日発表された1-3月期の実質GDP(1次速報値)は前期比年率-15.2%と戦後最大の落ち込みとなった。これをうけて、KISERは26 日に日本経済の四半期見通しを発表する。これまで財政・金融政策の効果をマクロモデルのシミュレーションを通じて分析してきたが、より正確を期すために、 昨年以来、マクロ・ミクロの両アプローチから検討している。今回のアンケート結果のミクロ情報がマクロモデル分析に援用される。本コラムでは、先般発表し たアンケート調査結果を精査し再検討した結果から、その政策効果や含意に焦点を当ててみよう。

    【アンケート結果の精査と政策効果の推計】
    アンケート調査では、経済危機対策(補正予算)のうち、低炭素革命関連、(1)エコカー購入への補助、(2)グリーン家電普及促進、(3)太陽光発電システム購入への補助、(4)住宅などの購入にかかわる贈与税の減免などを取り扱った。
    補正予算(財政政策)の効果により発生する需要の推計は、基本的にはアンケートによる回答率に母集団である世帯数(エコカーは保有台数)を乗じて計算し ている。1,000というサンプルから出来るだけ正確に母集団の行動を推計するため、速報発表後に回答率の精査を行うとともに母集団の選択にも注意を払っ た。さらに、政策に関係なく購入する予定者の割合から潜在的な需要を割り出し、それが業界の最近の販売量と大きく相違しないかチェックも行っている。
    1.エコカー
    今回の精査では、車を持っている人のうち(車歴13年以上90、13年未満631)、今後1年以内の車の購入予定がないと答え、さらに、新車購入の予定 はなかったがこの政策により新車を購入すると答えた人(車歴13年以上3、13年未満16)のみをカウントした。この比率を車歴13年以上、13年未満の それぞれの台数に乗じる。ちなみに、2008年3月末の乗用車登録台数は4,147万台(車歴13年以上817万台13年未満3,330万台)である。

    スクラップ促進策とエコカー減税による追加的な需要創出効果は、合計、111.7万台となる。これに1台あたり200万円(インサイト、プリウスの最も安いランクの価格を参考とする)をかけると、約2兆2,334億円が政策効果となる。
    2.グリーン家電
    現在グリーン家電(テレビ、冷蔵庫、エアコン)のいずれも購入予定はないが、制度が実施されるならエコ家電を購入したいと答えた人の中で、それぞれのエ コ家電を購入すると答えた人のみが今回の政策による追加的購入の該当者とみなしている。全サンプルに対する割合は、テレビは8.5%、エアコンは 6.6%、冷蔵庫は7.0%である。この割合を2009年3月時点の世帯数(労働力調査)に乗じて追加需要を、さらに当該エコ家電の平均単価を乗じて金額 を推計している。エコ家電のうち、テレビとエアコンについては全世帯数を母集団としているが、冷蔵庫については2人以上の一般世帯を母集団としている。

    グリーン家電普及促進策による追加的な需要創出効果は、合計、1,010.4万台となり、約1兆480億円が政策効果となる。
    3.住宅用太陽光発電システム
    2005年国勢調査によると、全世帯4,906万世帯のうち、持家一戸建の世帯は2,539万世帯である。全世帯数は、直近2009年3月時点には、 5,059万世帯になっている。全世帯数の伸び率から、直近の持家一戸建数は2,618万戸と推計できる(2,539×5,059/4906)。この世帯 数が補助金対象になる。補助金対象者のうち、アンケートで太陽光発電システムをぜひ設置したいと答えた人の割合(24/494=4.9%)をかけると、 128.3万戸となる。
    これに実現可能性バイアスを考慮する。一戸建住宅を所有していると答えた人と太陽光発電システム補助金制度を利用したことがある、と答えた人の比率は 5.5%(=25/458)である。これに直近の持家一戸建推計数2,618万戸をかけると、142.9万戸となる。しかし実際には、1997-2005 年度の累積設置戸数は25.3万戸程度で利用実績は小さい(財団法人新エネルギー財団のデータ調べ)。すなわち、17.7%(=25.3/142.9)し か実際には設置されていないことになる。
    これを修正係数とすると、アンケートベースの128.3万戸に17.7%をかけた22.7万戸が新しく太陽光発電設備を設置する戸数になる。結局、250万円/戸×22.7万戸=5,675億円が追加的な需要効果と推計できる。

    最後に、贈与税制度の拡充による住宅投資創出効果をアンケートから推計しようとしたが、質問が正確に理解されていない可能性があり、今回は推計しなかっ た。グリーン家電や乗用車のような耐久消費財については、経済条件が多少変化しても購入意思が実現される可能性は高いが、住宅のような高額な買い物につい ては別物であると判断した。この政策の効果の推計には不確実性が付きまとうためである。

    【アンケート結果の経済政策への含意】
    以上の推計結果は、速報の段階よりはスケールダウンされたが、われわれは経験上確度の高い結果であると考えている。低炭素革命関連の補正予算により、民 間最終消費支出に3兆8,489億円の追加需要が2009年度に発生すると考えられる。2008年度の民間最終消費支出は290.6兆円であるから、民間 最終消費支出を1.3%引き上げることになる。経済全体では0.7%程度の引き上げとなろう。
    もっともこのアンケートは4月時点での経済情勢にもとづく消費者の追加需要を推計していることに注意しなければならない。最近発表されている夏のボーナ スの予測を見れば、前年比20%程度の減少を避けられないようである。大型の耐久消費財(big ticket items)の購入にはボーナスが決定的に重要である。これからは所得制約が強まることがはっきりしているから、ここで示した推計には上方バイアスがか かっている可能性があることを指摘しておこう。
    最後に、低炭素革命関連の補正予算の効果で2009年度に発生する追加需要は2010年度には消滅することを忘れてはいけない。ちょうど消費税引き上げ の駆け込み需要と同じである。その結果、2009年度には民間最終消費支出は成長促進要因となるが、2010年度には0.7%程度の抑制要因に転じるので ある。仮にその部分を世界経済の回復による外需が相殺してくれれば、日本経済は大不況からうまく脱出できることになる。結局、外需頼みの回復といえよう。 景気回復はダブルディップ型になる可能性が高いことを指摘しておこう。 (稲田義久・入江啓彰)

    日本
    <4-6月期日本経済、楽観は禁物>

    5月20日に発表された1-3月期GDP1次速報値によれば、同期の実質GDPは前期比-4.0%、同年率-15.2%と前期(-14.4%)を上回る 大幅なマイナスとなった。下落率は戦後最悪となり、昨年4-6月期以来4四半期連続のマイナス成長を記録した。この結果、2008年度の成長率は -3.5%となった。実績は直近の超短期モデル予測(支出サイドモデル、主成分分析モデルの平均値:-17.4%)やマーケットコンセンサス予測(ESP フォーキャスト:-15.9%)を小幅下回る結果となった。超短期モデル予測の動態を見れば、2月の月次データが利用可能となった2月末の予測において は、すでに-14%程度の大幅な成長率予測へ下方シフトが起こっている。超短期予測は2ヵ月程度早く大幅落ち込みを予測できたことになる。
    1-3月期の成長率が戦後最大の落ち込み幅となった主要因は、輸出の急激な落ち込みと低調な民間需要(民間最終消費支出と民間企業設備)である。日本の 景気の落ち込み幅は、他の先進国、米国(年率-6.1%)やEU(約年率-10%)のそれを大きく上回っている。これは、輸出に大きく依存した日本経済成 長モデルの脆弱性を引き続き示したことになる。
    ただ、3月には生産や輸出が前月比でプラスに転じたことにより、マーッケトでは4-6月期は前期比でプラス成長になる可能性がささやかれている。
    1-3月期のGDPを更新した今週の支出サイドモデル予測によれば、4-6月期の実質GDP成長率は、内需と純輸出が引き続き縮小するため、前期比-1.9%、同年率-7.5%と予測される。前期よりマイナス幅は縮小するものの依然としてマイナス成長が続くとみている。
    4月の多くのデータが利用可能ではなく、予測モデルでは時系列モデルによる予測値を用いているため、今回のようにほとんどデータが急激な下方トレンドを 示している状況では転換点の予測は後ずれする。4月のデータが利用可能となれば、実質GDP成長率のマイナス幅が縮小することは予想できるが、プラスに転 じるかについては次回の予測を待ってみたい。プラス要因として補正予算の効果が期待できるが、新型インフルエンザ等マイナスの要因もあるからである。

    [[稲田義久 KISERマクロ経済分析プロジェクト主査 甲南大学]]

    米国
    米景気に対して注意深いながらも楽観的な見方が広まってきた。最も良い例は5月5日のバーナンキFRB議長の議会両院経済委員会での証言である。彼は  ”昨年秋以降の急激な景気悪化のペースがかなり緩やかになってきた”とコメントをし、景気が2009年4-6月期において安定化することを示唆した。確 かに、最近の新規失業保険申請件数の増加はピークを打ち、雇用減少の緩和、製造業の平均週労働時間の上昇、NAHB(全米住宅建設業者協会)住宅市場指数 の1月以降の反転している。景気後退の象徴となっていた労働市場・住宅市場のこれ以上の悪化が止まる兆候をみて、マーケットは彼の証言を受け入れている。
    市場エコノミストの4-6月期経済成長率の予測は-0.5%から-1.5%の範囲にある。これは今週の超短期モデルの予測値と近い(前期比年率-1.1%)。
    景気判断するのにトレンドが重要である。ミシガン大学の消費者コンフィデンス指数、特に将来指数は2月の50.5から急速に上昇し始め、6月には 69.0にまでなっている。グラフが示すように、超短期モデル予測も3月6日の予測から4月24日の予測まで、4-6月期実質GDP伸び率の予測値が緩や かな上昇トレンドを示し、米景気の安定化を示していた。しかし、5月1日以降になるとこれまでの緩やかな上昇トレンドが急速に下降トレンドに転換し始め た。超短期モデルの予測が景気の転換点を示すのに少なくとも市場より1ヵ月早いことが理解できる。今後の超短期予測にもよるが、おそらく1ヵ月後には、” 第2四半期における景気安定化”という注意深い楽観的な見方が幾分悲観的な見方に変わる可能性が高い。

    [[熊坂侑三 ITエコノミー]]