「稲田 義久」の検索結果
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関西経済の持続的発展に向けて~大阪・関西万博を契機に~
研究プロジェクト
研究プロジェクト » 2022年度 » 日本・関西経済軸
ABSTRACT
リサーチリーダー
APIR研究統括兼数量経済分析センター長 稲田 義久
研究目的
1970年に開催された日本万国博覧会(70年万博)は、博覧会としては成功したもののその後の関西経済の成長につなげられなかった。一方、2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)に向け都市・交通インフラが整備されつつあり、関西経済の反転に向けた準備が整いつつある。
そこで、当研究プロジェクトは、70年万博を持続的経済成長につなげることができなかった原因・課題を分析し、2025年大阪・関西万博を契機に、関西経済を長期停滞から反転させるための戦略を考える。具体的には、関西経済の中長期的成長に向けもうかる産業を発掘し、投資、人材を関西に呼び込む戦略を議論し、経済界・行政に向けた情報発信を行っていく。研究内容
①大阪万博後の関西経済低迷の原因と課題
環境変化(産業構造、インフラ整備、人口動態等)を踏まえ経済停滞の原因と課題を調査。
②投資と経済成長に関するシミュレーション
例)どれくらいの追加投資をすると関西の経済成長率がどれくらい上がるか試算し、成長率・期間をいくつかのパターンに分け経済反転のシミュレーションを行う。
③業種別のシェア・付加価値の動向調査
内閣官房のRESAS(地域経済分析システム)のデータに基づき、付加価値額の高い業種(もうかる産業)とその関西におけるシェアを抽出し、関西の産業構造の動向を調査
④関西の経済回復のシミュレーションをもとに、経済界・行政等と具体的なシナリオを議論
⑤「関西の魅力」を高める提案
・「イノベーション」の起こるポテンシャルのある地域と認知してもらうための提案
例)産業クラスター、技術力のある中小企業の現場を周遊化する仕掛け
・老若男女、外国人も活き活き生活できる地域と認知してもらうための提案
例)健康・医療、教育のさらなる充実と行政手続のワンストップ化・共通化・デジタル化<研究体制>
研究統括・リサーチリーダー
稲田 義久 APIR研究統括兼数量経済分析センター長、甲南大学名誉教授リサーチャー
寺田 憲二 APIRアウトリーチ推進部長井上 建治 APIR総括調査役・研究員井原 渉 APIR総括調査役・研究員大島 久典 APIR総括調査役・研究員山守 信博 APIR調査役・研究員野村 亮輔 APIR研究員吉田 茂一 APIR所員期待される成果と社会還元のイメージ
・「トレンドウォッチ」、「フォーラム」、「研究報告書」等により情報発信を行う。
・関西の経済回復に向けた情報提供として、分析・シミュレーション結果等を発表する。
・「関西の魅力」をより高めるために、もうかる産業を発掘し、アジア・世界中から投資・人材を呼び込むためのより良い環境整備を提案する。 -
持続可能なツーリズム先進地域・関西をめざして
研究プロジェクト
研究プロジェクト » 2022年度 » 日本・関西経済軸
ABSTRACT
リサーチリーダー
APIR研究統括兼数量経済分析センター長 稲田 義久
研究目的
・持続可能なツーリズム産業に向けた、戦略の転換の必要性
コロナ禍による需要の消失を経て、今後の観光戦略はインバウンド重視から、国内客・訪日外客それぞれの1人当り付加価値を高める戦略へと大幅な転換を迫られている。本研究もコロナ前はインバウンド産業の分析に注力してきたが、この転換に対応するとともに、持続可能性の視点から自治体・DMOの課題と解決の方向性を検討したい。・観光地の「ブランド力」への注目
本研究ではインバウンド消費の決定要因として、ブランド力、広域・周遊化、イノベーション、安全・安心・安堵の4つを示してきた。このうち、観光地のブランド力の定量化に取り組み、観光地の魅力と各種の要素の寄与度を示す指標を作りたい。また、観光地の魅力を向上する施策を、事例をもとに検討したい。・ポストコロナのインバウンド戦略策定を意識した、基礎的分析の継続の必要性
2021年度まで行ってきた、インバウンド関係基礎データの整理・推計や、マイクロデータ分析といった基礎的な分析を継続し、自治体・DMO等の戦略策定の参考として提供したい。
従来はデータが利用可能でなかった、県域より小さいレベルの観光動態にも注目し、共同研究により分析を行いたい。研究内容
2021年度に引き続き、以下の5つの軸でバランスよく進める。
①関西基礎統計の整理
②マイクロデータによる実証分析
③ブランド力指標の開発のためのアンケート調査から得られる結果の解釈
④観光戦略の在り方や、成長戦略立案の課題検討
⑤成果の発信、課題共有の「場」作り
<研究体制>
研究統括・リサーチリーダー
稲田 義久 APIR研究統括兼数量経済分析センター長、甲南大学名誉教授リサーチャー
松林 洋一 APIR上席研究員、神戸大学大学院経済学研究科長・教授KARAVASILEV Yani APIR研究員、京都文教大学総合社会学部講師野村 亮輔 APIR研究員郭 秋薇 APIR研究員研究協力者
衣川 勝己 国土交通省 近畿運輸局観光部 計画調整官山本 康彦 国土交通省 近畿運輸局観光部 観光企画課長西川 敬三 関西観光本部 事務局次長筒井 千恵 関西エアポート株式会社 航空営業部 広域連携グループリーダー花﨑 由季子 関西エアポート株式会社 航空営業部 広域連携グループ原 菜々子 関西エアポート株式会社 航空営業部 広域連携グループ中野 裕行 日本旅行業協会 関西事務局長古山 健大 京都府観光連盟 主事LUONG ANH Dung APIRインターンオブザーバー
森本 裕 甲南大学経済学部準教授※必要に応じてDMO、自治体や民間企業等関係者にも参画いただく。
期待される成果と社会還元のイメージ
研究成果としては、関西インバウンド基礎統計の整備(月次レポート、トレンドウォッチ)、マイクロデータの分析成果(トレンドウォッチ)、関西観光戦略の課題の共有化(研究会、シンポジウム等での情報提供と議論)を予定している。
また、上記研究成果を「ポストコロナにおける観光政策の立案」、「観光ハード面とソフト面のインフラ整備」、「推計値を用いた観光DMOのプロモーション施策の検証」等に活用できるであろう。 -
関西地域間産業連関表2015年表の作成と利活用
研究プロジェクト
研究プロジェクト » 2022年度 » 経済予測・分析軸
ABSTRACT
リサーチリーダー
APIR上席研究員 高林 喜久生 大阪経済法科大学経済学部教授
研究目的
これまで、本プロジェクトでは、COVID-19が経済社会活動にもたらした影響について、産業連関表を用いた分析を行ってきた。2020年度は,COVID-19感染拡大が関西のスポーツ関連産業に与えた生産減少額を「負の経済波及効果」として府県別・産業部門別に推計した。また、2021年度は,観光庁「旅行・観光サテライト勘定(TSA)」に基づき、独自の観光産業の分析を行うとともに、観光消費額減少が地域経済にもたらす経済波及効果や、観光関連消費回復のための需要喚起策として行われた「Go Toトラベル事業」の効果についても分析を行った。2021年度の研究成果は『アジア太平洋と関西―2021年関西経済白書』の「Chapter6 関西と観光産業:産業連関表を用いた分析」にまとめられている。
また、APIRでは前身の関西社会経済研究所の時代から、関西における地域間産業連関表の作成や利活用に関する研究に継続して取り組んでいる。2021年度は2020年度に実施した基礎調査(関西居住者や関西への来訪者を対象に、消費費目や金額、消費場所などについて尋ねたWEBアンケート調査)の結果をまとめ、関西経済白書に掲載するとともに、2015年の関西地域間産業連関表(以下、2015年表)作成のために、統合中分類(107部門)をベースに統合・調整を行うなどの基礎作業を実施した。それを受けて、2022年度は,2015年表の完成を目指すとともに、その利活用を行う。
研究内容
1)「2015年 APIR関西地域間産業連関表」の作成
2021年度、地域間表の作成に必要な関西2府8県(福井県、三重県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県、鳥取県、徳島県)の「2015年地域産業連関表」をほぼ全て入手し、入手した府県については産業分類の統合・調整を行い、産業中分類(107部門)をベースに2015年表の作成作業を行った。2022年度はこの作業を継続するとともに、未公表の県については暫定版をAPIRで推計し、それを用いて地域間表の統合作業を行う(暫定版の作成)。その後、当該府県より2015年の産業連関表が公表され次第、差し替え・再度統合作業・バランス調整を行う(確定版の作成)という二段階の作業を行う(※1)。
また、作業過程において必要な移出入等に関する情報について、APIRマクロ経済研究プロジェクト等のネットワークを活用して府県の統計担当者へのヒアリングを行う(※2)。
(※1)本項を執筆している5月23日時点で、対象府県のうち、奈良県のみ未公表である。
(※2)これまでに関係が深い大阪府、兵庫県、和歌山県などを予定している。
2)「2025年大阪・関西万博 」の経済波及効果の分析
足下で入手できる最新の情報に基づき、「2025年大阪・関西万博」の経済波及効果の推計を行う。
なお、2025年大阪・関西万博の経済効果は2019年の関西経済白書で試算を行っているが、コロナ禍による訪日外国人の激減,予算額の変更等が報道されていることを受け、来場者数や訪日外国人の人数、工事費等について再検討を行う。必要な情報については、APIR所内の万博検討チームや万博関連プロジェクトとも連携して、効率的な把握に努める。
3)インフラ整備の経済効果に関する勉強会
2021年度に引き続き、「2025年大阪・関西万博」に関連した取り組みを行っている組織や、広域的な交通ネットワーク整備や今後備えるべき災害への対応など,関西で問題となっているインフラ課題について専門家を招聘し、勉強会を行う。
2022年度は、事業整備を通じた生活の質向上や時間短縮による生産性向上といった「ストック効果」に着目するとともに、産業連関表やマクロ計量モデルを用いてどのように分析を行うかといった手法面についても議論を行う。年2回程度実施を検討している。
4)対外的な成果報告
メンバーは各々の立場で分析結果を報告することを通じて、積極的な対外発信に努める。。<研究体制>
研究統括
稲田 義久 APIR研究統括兼数量経済分析センター長、甲南大学名誉教授リサーチリーダー
高林 喜久生 APIR上席研究員、大阪経済法科大学経済学部教授リサーチャー
下田 充 日本アプライドリサーチ研究所主任研究員下山 朗 大阪経済大学経済学部教授入江 啓彰 近畿大学短期大学部教授藤原 幸則 APIR上席研究員、大阪経済法科大学経済学部教授木下 祐輔 大阪商業大学経済学部専任講師期待される成果と社会貢献のイメージ
成果物である2015年表は、2011年表と同様、部門を集約した上でAPIRのホームページ上で発表を行う。また、分析成果は景気討論会や学会や外部の研究会で報告することを予定している。
地域間産業連関表を用いることで、関西における府県間・産業間の相互取引関係・供給構造の分析や、経済波及効果の推計を通じた政策評価を客観的かつ定量的に行うことが可能となる。これらの分析結果は、自治体の担当者にとっても、政策形成を行ううえでの重要な指針となるだけでなく、関西経済の現状および構造的特徴を説明する際の貴重な資料として活用されることが期待できる。 -
テキストデータを利用したS-APIR指数の実用化
研究プロジェクト
研究プロジェクト » 2022年度 » 経済予測・分析軸
ABSTRACT
リサーチリーダー
APIR主席研究員 関 和広 甲南大学知能情報学部教授
研究目的
従来、マクロ経済の動向を把握するには、集計データを用いることが一般的である。しかし、集計データは、リアルアイム性に欠けており、ミクロの経済要因を知るには不十分という課題がある。一方、昨今の情報技術の急速な進展により、国内外の経済活動において生成される大規模なデータ(ビッグデータ)が様々な形で利用可能になり始めている。きわめて豊富な情報を内包しているビッグデータの活用は、マクロ経済のより精緻な情勢判断と予測において、有効であると考えられる。このため、本研究ではビッグデータの一つであるテキストデータを利用して、経済の動向を把握することを試みる。
研究内容
S-APIR指数(景気関連指数)を推定するため、リカレント・ニューラル・ネットワーク(Recurrent Neural Network,以下RNN)に加え、Google社が開発した最新の学習モデルであるBERT(Bidirectional Encoder Representations from Transformers)を用いる。BERTは、RNNのように単語の順序を考慮した上では学習することはせず、文中の全ての単語同士の依存関係を学習する。その処理を基本として、S-APIR指数を推定するモデルの精度向上を図る。
<研究体制>
研究統括
稲田 義久 APIR研究統括兼数量経済分析センター長、甲南大学名誉教授リサーチリーダー
関 和広 APIR主席研究員、甲南大学知能情報学部教授リサーチャー
松林 洋一 APIR上席研究員、神戸大学大学院経済学研究科長・経済学部長・教授生田 祐介 大阪産業大学経営学部准教授期待される成果と社会還元のイメージ
新聞記事のテキストデータから景況感を推定するモデルを構築し、その出力値をS-APIR指数と称している。これを政府による既存の景況感指数と比較することで、我々のモデルが有する特徴を明らかにする。その結果を踏まえて、「S-APIR指数」を一般に公表していく。
景気動向を代理する「S-APIR指数」を見ることで、企業の経営判断を行う際の議論に使えるようにする。そして、国や自治体に対しても、政策決定に活用して頂くことを検討する。具体的に、本研究の成果の一つとして期待できる「単語のデモ・システム」を、ユーザーへ公開する。ユーザー自身が、デモ・システムへ興味ある単語を入力すると、その単語がS-APIR指数にどのような影響を与えているのか知ることができる。例えば、「東京五輪」という単語を入力した場合、ミクロの波及メカニズム(例、建設需要)までは見ることができないが、東京五輪が最終的に景気動向へ正の影響を及ぼすのかどうかを調べるための、きっかけとなる。
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アジア人材との共働社会
研究プロジェクト
研究プロジェクト » 2021年度 » アジア太平洋地域軸
ABSTRACT
リサーチリーダー
APIR上席研究員 守屋 貴司 立命館大学経営学部教授
研究の背景
米国の大手IT企業のCEO(Google、マイクロソフト等)として多くのインド出身者が活躍している。インド工科大学(IIT)は超難関大学として知られ、卒業生は現地のGAFA関連などの巨大企業の研究所への高度人材供給源となっており、国内起業家の育成にもIITは熱心に取り組んでいる。また、インドを含め、シンガポール、ベトナムなどアジア諸国も各国とも大学教育(産業界との連携)を含めて、先進的な取り組みを行い、高度人材を自国の経済発展への繋げる動きが活発、加速化している。特に、インドの場合においてはカースト制などの社会構造制度などの理解も不可欠である。そこで、本研究プロジェクトでは、アジア人材(インド、ベトナム、シンガポールなど)に焦点をあて検討を進める。
研究内容
2021年度は、日本で働くインド・ベトナム人エンジニアへのアンケート調査と先進的な企業事例のヒアリングなども実施し、日本企業がアジア人材との共働社会を実現するために必要な制度や取り組みへの提言を報告書としてまとめる。
①アジアに進出する日系企業の先進事例の調査・検討
既にアジアに進出している(アジア人材を採用している)日系企業の先行事例を調査・検討し、今後の日本企業に必要な要素を抽出する。②日本企業とアジア企業との連携・イノベーションの調査・検討
「アジア人材と日本人材の『協働』によるイノベーション」が実現していることを定量的・定性的データ(特許データ〔PCT出願〕)から明らかにし、それに基づきながら「アジアの高度人材との共働のための企業政策」について検討する。③日印間の移動と在日インド系IT人材の動向
インド人人材が日本でどのように就労しているのかについて、各種統計や公表されている資料を中心に分析を行う。④日本企業におけるアジアの高度人材とのダイバーシティマネジメントとイノベーション
②の研究事例として日本企業、アジア現地企業のケーススタディを行い、日本企業への提案としてまとめる。<研究体制>
研究統括
稲田 義久 APIR研究統括兼数量経済分析センター長、甲南大学名誉教授リサーチリーダー
守屋 貴司 APIR上席研究員、立命館大学経営学部教授リサーチャー
安田 聡子 関西学院大学商学部教授松下 奈美子 名古屋産業大学現代ビジネス学部准教授宮本 和明 HENNGE株式会社 代表取締役副社長奥田 智 株式会社をくだ屋技研 代表取締役社長期待される成果と社会還元のイメージ
「アジア人材との共働社会」フォーラム開催し、2021年度末に研究会成果報告書を取りまとめ、APIRホームページに掲載する。
アジア人材との共働社会を実現するための企業の具体的な人事制度設計や取り組みなどに関して活用されることを想定している。 -
インバウンド先進地域としての関西 ―持続可能な観光戦略を目指して―
研究プロジェクト
研究プロジェクト » 2021年度 » 日本・関西経済軸
ABSTRACT
リサーチリーダー
APIR研究統括兼数量経済分析センター長 稲田 義久
研究目的
・持続可能なインバウンド産業にむけての戦略転換の指針の導出
コロナ前のインバウンド産業では訪日外客の量的拡大を志向する傾向が強く、供給制約に直面した場合、持続可能な発展が望めない状況にあった。こういった量的拡大志向から、コロナ後を見据えて1人当たりの付加価値を高める戦略への転換が必要であり、コロナ禍によって訪日外客が途絶えている現在は戦略を再考する好機といえる。
2020年度、本研究PJではインバウンド消費を分析する視点として「ブランド力」「広域・周遊化」「イノベーション」「安全・安心・安堵」を提示した。2021年度は特に「ブランド力」の向上のために、日本人が気づきにくい観光資源の魅力や課題を抽出する施策を検討し、戦略転換の指針を導きたい。・ポストコロナのインバウンド戦略策定を意識した、基礎的分析の継続
本テーマでは、マーケティングの指標となるインバウンド関係基礎データの整理・推計や、戦略策定に参考となるマイクロデータ分析といった基礎的な分析を継続的に行い、得られた知見をトレンド・ウォッチ等の形で都度発表してきた。2021年度はコロナ禍の影響も取り入れた分析を継続し、コロナ後のインバウンド戦略の策定に資する情報として成果を発信したい。コロナ禍により訪日外客のデータが公表されない期間については、対象を拡大して国内旅行について同様の分析を行う。研究内容
2020年度に引き続き、以下の5つの軸でバランスよく進める。
①関西基礎統計の整理
②マイクロデータによる実証分析
③ブランド力指標の開発のための基礎調査、アンケート調査の実施
④観光戦略の在り方や、成長戦略立案の課題検討
⑤成果の発信、課題共有の「場」作り
<研究体制>
研究統括・リサーチリーダー
稲田 義久 APIR研究統括兼数量経済分析センター長、甲南大学名誉教授リサーチャー
松林 洋一 APIR上席研究員、神戸大学大学院経済学研究科長・教授KARAVASILEV Yani APIR研究員、京都文教大学総合社会学部講師郭 秋薇 APIR研究員野村 亮輔 APIR研究員研究協力者
道久 聡 国土交通省 近畿運輸局観光部 計画調整官岩﨑 靖彦 国土交通省 近畿運輸局観光部 観光企画課 課長濱田 浩一 関西観光本部 事務局次長中野 裕行 日本旅行業協会 関西事務局長筒井 千恵 関西エアポート株式会社 航空営業部 グループリーダーTIRTARA Alin APIRインターンオブザーバー
森本 裕 甲南大学経済学部準教授※必要に応じてDMO、自治体や民間企業等関係者にも参画いただく。
期待される成果と社会還元のイメージ
研究成果としては、関西インバウンド基礎統計の整備(月次レポート、トレンドウォッチ)、マイクロデータの分析成果(研究報告書)、関西観光戦略の課題の共有化(研究会、シンポジウム等での情報提供と議論)を予定している。
また、上記研究成果を「ポストコロナ禍における観光政策の立案」、「観光ハード面とソフト面のインフラ整備」、「推計値を用いた観光DMOのプロモーション施策の検証」等に活用できるであろう。 -
テキストデータを利用した新しい景況感指標の開発と応用
研究プロジェクト
研究プロジェクト » 2021年度 » 経済予測・分析軸
ABSTRACT
リサーチリーダー
APIR上席研究員 松林 洋一 神戸大学大学院経済学研究科長・経済学部長・教授
研究目的
従来、マクロ経済の動向を把握するには、集計データを用いることが一般的である。しかし、集計データは、リアルアイム性に欠けており、ミクロの経済要因を知るには不十分という課題がある。一方、昨今の情報技術の急速な進展により、国内外の経済活動において生成される大規模なデータ(ビッグデータ)が様々な形で利用可能になり始めている。きわめて豊富な情報を内包しているビッグデータの活用は、マクロ経済のより精緻な情勢判断と予測において、有効であると考えられる。このため、本研究ではビッグデータの一つであるテキストデータを利用して、経済の動向を把握することを試みる。
研究内容
本研究で基本となる成果物は、テキストデータから推定された景気関連指数(S-APIR指数)である。指数を推定するため、2020年度から引き続き、人工知能の一種である深層学習を用いる。深層学習のモデルとして、これまでと同様にリカレント・ニューラル・ネットワーク(Recurrent Neural Network、以下RNN)に加え、Google社が開発した最新の学習モデルであるBERT(Bidirectional Encoder Representations from Transformers)を用いる。BERTは、RNNのように単語の順序を考慮した上で学習することはせず、文中の全ての単語同士の依存関係を学習する。その処理を基本として、S-APIR指数の各バージョンを推定するモデルを構築する。
<研究体制>
研究統括
稲田 義久 APIR研究統括兼数量経済分析センター長、甲南大学名誉教授リサーチリーダー
松林 洋一 APIR上席研究員、神戸大学大学院経済学研究科長・経済学部長・教授リサーチャー
関 和広 甲南大学知能情報学部教授生田 祐介 大阪産業大学経営学部講師期待される成果と社会還元のイメージ
新聞記事のテキストデータから景況感を推定するモデルを構築し、その出力値をS-APIR指数と称している。これを政府による既存の景況感指数と比較することで、我々のモデルが有する特徴を明らかにする。その結果を踏まえて、「S-APIR指数」を一般に公表していく。
景気動向を代理する「S-APIR指数」を見ることで、企業の経営判断を行う際の議論に使えるようにする。そして、国や自治体に対しても、政策決定に活用して頂くことを検討する。具体的に、本研究の成果の一つとして期待できる「単語のデモ・システム」を、ユーザーへ公開する。ユーザー自身が、デモ・システムへ興味ある単語を入力すると、その単語がS-APIR指数にどのような影響を与えているのか知ることができる。例えば、「東京五輪」という単語を入力した場合、ミクロの波及メカニズム(例、建設需要)までは見ることができないが、東京五輪が最終的に景気動向へ正の影響を及ぼすのかどうかを調べるための、きっかけとなる。
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関西地域間産業連関表2015年表の作成と応用
研究プロジェクト
研究プロジェクト » 2021年度 » 経済予測・分析軸
ABSTRACT
リサーチリーダー
APIR上席研究員 高林 喜久生 関西学院大学経済学部教授
研究目的
APIRでは、前身の関西社会経済研究所の時代から、関西における地域間産業連関表の作成や利活用に関する研究に継続して取り組んでいる。
COVID-19は経済社会活動に大きな影響をもたらし、特に観光産業に大きな打撃を与えた。世界的な感染拡大に伴い、観光消費額は日本人、外国人ともに大きく落ち込んだ。観光消費額に関する統計は「旅行・観光消費動向調査」などがあるが、観光消費額の減少が地域経済にどのような経済波及効果をもたらすか分析した研究は少ない。したがって、2021年度は観光産業に焦点を当て、全国や関西各府県の産業連関表を用いて分析を行う。
また、昨年度末にかけて地域間表の作成に必要な関西2府8県の「2015年地域産業連関表」がほぼ出そろったことから、「2015年 APIR関西地域間産業連関表(以下2015年表)」の作成を行う。研究内容
1)観光庁TSAに基づく観光産業分析のフレームワークの構築
現在入手できる最新版の全国表である経済産業省「平成29年 延長産業連関表(平成27年基準)」の各産業部門を観光庁「旅行・観光サテライト勘定(TSA)」に基づき、「観光部門」と「非観光部門」に分割し、他産業と比較した観光産業の特徴を明らかにする。同様に、関西2府8県の「2015年地域産業連関表」を用いて、観光産業の特徴を分析する。
2)「2015年 APIR関西地域間産業連関表」の作成
2020年度実施したWEBアンケート結果を基に、府県間の取引関係を示した交易マトリックスを更新する。また、関西2府8県の「2015年地域産業連関表」から統合小分類をベースに産業部門の統合・調整を行い、2015年表の作成を行う。
3)インフラ整備の経済効果に関する勉強会
2025年に予定されている大阪・関西万博に向けた交通ネットワークの整備や今後備えるべき災害への対応を始め、関西で課題となっているインフラに関する勉強会を数回程度実施する。既存の研究との差異は以下の2点である。
1つ目は、観光庁「旅行・観光サテライト勘定(TSA)」に基づき、観光に関連する産業を「観光部門」と「非観光部門」に分割する。観光産業はすそ野が広く、産業連関表の産業分類では観光関連とそれ以外が分かれておらず、分析が粗くなってしまうという問題がある。そのため、観光部門と非観光部門を分けることで、分析の精緻化を図っている。
2つ目は、分析ツールとしてAPIRが持つ2015年表を用いることである。現存する最新版の関西の地域間産業連関表はAPIRが作成した2011年表のみである。地域間かつ広域で経済活動を把握することができる地域間産業連関表について、年次を2015年に更新したものを用いることで2011年表よりも直近の経済構造を反映でき、より実態に即した分析が可能となると考えられる。
なお、関西地域間産業連関表の対象地域は広域関西2府8県であり、関西広域連合や関西観光本部の対象地域をカバーしている。これにより関西を広域で捉えた際の経済波及効果等の分析を行うことが可能となる。<研究体制>
研究統括
稲田 義久 APIR研究統括兼数量経済分析センター長、甲南大学名誉教授リサーチリーダー
高林 喜久生 APIR上席研究員、関西学院大学経済学部教授リサーチャー
下田 充 日本アプライドリサーチ研究所主任研究員下山 朗 大阪経済大学経済学部教授入江 啓彰 近畿大学短期大学部准教授藤原 幸則 APIR上席研究員、大阪経済法科大学経済学部教授木下 祐輔 APIR調査役兼研究員期待される成果と社会貢献のイメージ
成果物である2015年表は、2011年表と同様、部門を集約した上でAPIRのホームページ上で発表を行う。また、分析成果は景気討論会や学会など外部の研究会で報告することを予定している。
地域間産業連関表を用いることで、関西における府県間・産業間の相互取引関係・供給構造の分析や、経済波及効果の推計を通じた政策評価を客観的かつ定量的に行うことが可能となる。これらの分析結果は、自治体の担当者にとっても、政策形成を行う上での重要な指針となるだけでなく、関西経済の現状および構造的特徴を説明する際の貴重な資料として活用されることが期待できる。 -
インド/アジアの人材活用
研究プロジェクト
研究プロジェクト » 2020年度 » アジア太平洋地域軸
ABSTRACT
リサーチリーダー
上席研究員 守屋貴司 立命館大学経営学部教授
研究の背景
米国の大手IT企業のCEO(グーグル、マイクロソフト等)として多くのインド出身者が活躍している。インド工科大学(IIT)は超難関大学として知られ、卒業生は現地のGAFA関連などの巨大企業の研究所への高度人材供給源となっており、国内起業家の育成にも熱心に取り組んでいる。また、インドを含め、シンガポール、ベトナムなどアジア諸国では、各国とも大学教育(産業界との連携)を含めて、先進的な取り組みを行い、高度人材を、自国の経済発展への繋げる動きが、活発、加速化している。
そこで、本研究プロジェクトでは、インドを中心に、シンガポール、ベトナムの3カ国に焦点をあて、下記通り検討を進めたい。
・優秀な高度人材を育成する環境、教育などに関して、各国の文化、風土を背景とした相違点や共通点を抽出、明確化する。
・世界企業が高度人材をどのように生かしているかを明らかにする。
・日本企業が積極的に高度人材に目を向けて、企業の成長に活かしていくための課題、高度人材獲得に向けた魅力的な制度、取り組みなどに関して研究会活動を通じて提言を行う。
研究内容
2020年度は、インド、シンガポールおよびベトナムにおいて上記の目的を達成するために、現地の新型コロナの影響を含めて最新状況の把握を中心に行い、まとめる。
①インドをはじめとする文化・経済の調査・検討
インド人材の活用に関しては、カースト制などの社会構造制度の理解などが不可欠であり、インドを中心として文化や経済について、人材活用の背景を理解するために調査・検討を行う。
②世界企業の高度人材活用に関する調査・検討
欧米の大手IT企業がインド/アジア人材をどのように活用しているか、新型コロナの影響を含めて、その実態を調査・検討し、分析を行う。現地の人材コンサルタント、企業駐在員などのWEBヒアリングなども行う。
研究体制
研究統括
稲田義久 APIR研究統括兼数量経済分析センター長、甲南大学教授
リサーチリーダー
守屋貴司 APIR上席研究員、立命館大学経営学部教授
リサーチャー
安田聡子 関西学院大学商学部教授
松下奈美子 名古屋産業大学現代ビジネス学部准教授
宮本和明 HENNGE株式会社 代表取締役副社長
奥田 智 株式会社をくだ屋技研 代表取締役社長
期待される成果と社会還元のイメージ
2020年度末に研究会成果報告書を取りまとめ、APIRホームページに掲載する。
インド/アジアの高度人材活用に関して活用されることを想定している。
<研究会の活動>
研究会
・2020年 8月25日 第1回研究会開催(オンライン)
・2020年 9月14日 第2回研究会開催(オンライン)
・2020年10月29日 第3回研究会開催(オンライン)
・2020年11月26日 第4回研究会開催(オンライン)
・2020年12月17日 第5回研究会開催(オンライン)
・2021年 1月29日 第6回研究会開催(オンライン)
・2021年 2月12日 第7回研究会開催(オンライン)
・2021年 3月12日 第8回研究会開催(オンライン)
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関西の大学・大学院で学ぶ留学生の就職に関する研究
研究プロジェクト
研究プロジェクト » 2020年度 » 日本・関西経済軸
ABSTRACT
リサーチリーダー
上席研究員 古沢昌之 近畿大学経営学部教授
研究目的
経営のグローバル化が進展する中、企業の人的資源管理においては、多様な人材の登用が求められている。その1つが日本の大学(含む大学院)で学ぶ外国人留学生の活躍である。一方で、日本での就職を希望する外国人留学生の就職決定率は日本人学生のそれよりもいまだ遥かに低く、就職後の定着率に関する問題についてはここ数年間指摘され続けるも、改善には至っていない。かような状況下、本研究プロジェクトでは、企業、大学、留学生それぞれの立場に根差す実態を明らかにし、上記ミスマッチの原因究明を図るとともに、その解決に向けた提言を行う。
研究内容
2019年度は大学側の状況調査を実施したが、2020年度は留学生、企業側の実態を把握すべく取り組む。制度や取り組みの最新状況一つ一つを留学生、大学、企業3つの角度から分析することで、留学生の認識、大学の支援、企業ニーズの間に生じているギャップをつまびらかとし、深堀した分析から3者のスタンスの違いを踏まえた実効的な提案に繋げていきたい。
定量的調査(アンケート)と定性的調査(ヒアリング)の両面から分析し、多角的にアプローチする。2019年度の大学側調査では167大学のサンプルを基に大学側から見た様々な課題について整理、分析を実施。2020年度は外国人留学生本人並びに企業への調査を実施し、各視点のギャップを見出すことで研究の深耕と課題解決策の提言を図る。学術と実務両面に対する貢献を果たしたい。
研究体制
研究統括
稲田義久 研究統括兼数量経済分析センターセンター長、 甲南大学経済学部教授(2021年4月以降、同大学名誉教授)
リサーチリーダー
古沢昌之 APIR上席研究員、近畿大学経営学部教授
リサーチャー
松川佳洋 広島経済大学経営学部教授
カオ・ティ・キャン・グェット 関西学院大学経済学部講師(2021年4月以降、京都先端科学大学経済経営学部准教授)
越村惣次郎 大阪産業経済リサーチ&デザインセンター 主任研究員
期待される成果と社会還元のイメージ
大学における外国人留学生の就職支援に向けた取り組みの現状と課題、外国人留学生の就職活動を巡る現状と課題等について、報告書に取りまとめる。
また研究成果を、企業の外国人留学生活用に向けた人的資源管理施策、大学における外国人留学生の就職支援施策、日本の大学で学ぶ外国人留学生の就職活動に活用されたい。
<研究会の活動>
研究会
報告書「関西の大学・大学院で学ぶ留学生の就職に関する研究」はこちら
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テキストデータを利用した新しい景況感指標の開発と応用
研究プロジェクト
研究プロジェクト » 2020年度 » 経済予測・分析軸
ABSTRACT
リサーチリーダー
主席研究員 松林洋一 神戸大学大学院経済学研究科教授
研究目的
従来、マクロ経済の動向を把握するには、集計データを用いることが一般的である。しかし、集計データは、リアルアイム性に欠けており、ミクロの経済要因を知るには不十分という課題がある。一方、昨今の情報技術の急速な進展により、国内外の経済活動において生成される大規模なデータ(ビッグデータ)が様々な形で利用可能になり始めている。きわめて豊富な情報を内包しているビッグデータの活用は、マクロ経済のより精緻な情勢判断と予測において、有効であると考えられる。このため、本研究ではビッグデータの一つであるテキストデータに着目して、経済の動向を把握することを試みる。
研究内容
2019年度から引き続き、人工知能の一種である深層学習(ニューラルネットワークという人間の脳神経回路を模したモデルを構築し、コンピュータに機械学習させること)を、テキストマイニングに用いる。2020年度も、深層学習における推定モデルの一つである、リカレント・ニューラル・ネットワーク(Recurrent Neural Network,以下RNN)を、基本の分析枠組みとする。そうした分析による出力結果が、本年度の研究の出発点となる「S-APIR指数」である。
①低コスト・低タイムラグ
景況感を代理する既存の指数は、CI一致指数や消費者態度指数のように、多大な労力を投入したアンケート調査から構築されて、月次で報じられている。ところで、経済情勢の要因は一カ月単位ではなく、日々刻々と変化している。ある月の景況感指数を見て、結果的に経済情勢が前月と異なることに気付いたとしても、景気の転換局面が“いつ”であったのか、“その時”に気づくことはできない。本研究は、こうした課題を克服するため、「S-APIR指数」という新しい指数を提案する。この指数は2つの特徴を有する。まず、既存の新聞記事から自動的に出力されるため、多くの人員を必要としない(低コスト)。さらに、日次で報じることができるため、日々起こりうる景気の転換局面を把握することが可能となる(低タイムラグ)。
②S-APIR指数の評価
一般に、“景況感そのもの”を表す指標は存在せず、既存のCI一致指数や消費者態度指数は、あくまでも、“景況感らしきもの”を示した代理指標に過ぎない。本研究が提案するS-APIR指数についても、その出力の過程は異なるものの、同様に景況感の代理指標である。このため、S-APIR指数が景況感らしきものを表す指標として、どういった観点から、どの程度信頼できるものなのか、定量的にその特徴を明らかにする。具体的に、S-APIR指数は、様々なデータに対して、常に安定した入出力を繰り返すモデルであるのか、既存の類似する指数と比べてどういった特徴を有しているのか、という点に着目する。
③S-APIR指数を用いたマクロ経済分析
S-APIR指数を利用して、予期せぬイベントの発生によるマクロ経済への影響を把握することを試みる。対象のイベントとして、世界金融危機(2008年9月15日)、東日本大震災(2011年3月11日)、上海株式市場暴落(2016年1月4日)を視野に入れている。これらのイベントへ注目することにより、負のショックに対して消費者や企業がどう反応するかという観点から、「経済の不確実性」の特徴を示す。
研究体制
研究統括
稲田義久 APIR研究統括兼数量経済分析センター長、甲南大学教授
リサーチリーダー
松林洋一 APIR主席研究員、神戸大学大学院経済学研究科長・教授
リサーチャー
関 和広 甲南大学知能情報学部准教授
生田祐介 大阪産業大学経営学部講師
期待される成果と社会還元のイメージ
新聞記事のテキストデータから景況感を推定するモデルを構築し、その出力値をS-APIR指数と称している。これを政府による既存の景況感指数と比較することで、我々のモデルが有する特徴を明らかにする。その結果を踏まえて、「S-APIR指数」を一般に公表していく。
「S-APIR指数」を見ることで、消費者にとっての景況感を、より深く知ることができるようになる。まずは、企業の経営判断を行う際の議論に使えるようにする。そして、国や自治体に対しても、政策決定に活用して頂くことを検討する。
<研究会の活動>
研究会
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インバウンド先進地域としての関西
研究プロジェクト
研究プロジェクト » 2020年度 » 日本・関西経済軸
ABSTRACT
リサーチリーダー
研究統括兼数量経済分析センター長 稲田義久 甲南大学経済学部教授
研究目的
・インバウンド産業の戦略転換の必要性
近年急成長してきたインバウンド産業では、訪日外客数の急増を志向する傾向が強いが、需要・供給両面の制約により持続可能な発展が望めない状況にある。こういった量的志向から、訪日外客1人当たりの付加価値を高める戦略への転換が必要であり、コロナ禍によって訪日外客が途絶えている現在はその再考の好機といえる。本研究会が昨年度開催したシンポジウムでは「ブランド力」「広域・周遊化」「イノベーション」の視点でインバウンドを分析する枠組みを提示した。今年度は特に「ブランド力」の向上のために、日本人が気づきにくい観光資源の魅力や課題を抽出する施策を検討したい。
・ポストコロナのインバウンド戦略策定を意識した、基礎分析の継続の必要性
本テーマではマーケティングの指標となるインバウンド関係基礎データの整理・推計や、戦略策定の参考となるマイクロデータ分析といった基礎的な分析を引き続き行っている。そこで得られた知見はトレンド・ウォッチ等の形で都度発表してきた。今年度はコロナ禍の影響も取り入れた基礎的な分析をサーベイ調査などの代替的な方法でも継続し、コロナ後のインバウンド戦略の策定に資する情報として成果を発信したい。
研究内容
2019年度に引き続き、以下4つの軸でバランスよく進めるが、特に②に重点をおく。
①関西基礎統計の整理
インバウンド関係基礎データ(観光庁公表データ、RESAS等)の整理に加え、2019年度に開発した府県別外客数の月次推計も継続して行う。
②マイクロデータによる実証分析
エビデンスにもとづいた戦略が議論できるための基礎データの整理及び実証分析を行う。具体的には、訪日外国人客の多面的な移動パターンの分析、宿泊旅行統計調査の個票をもとに、府県別宿泊者数の動態の分析を、それぞれ行う。
③ブランド力指標の開発のためのアンケート調査及びヒアリング調査の実施
在留外国人へのアンケート調査及びヒアリング調査を行う。在留外国人が日本の魅力をどういった場所に感じているのか、またその理由について調査を行い、日本が従来持っている観光資源のブランド力について指標化し、分析を行う。また、アンケート設計時より外国人研究員及びインターンシップ生からこれまでのインバウンド戦略の課題等をヒアリングすることでこれまでのアンケート調査と差別化も図る。
④観光戦略の在り方や、成長戦略立案の課題を共有する「場」作り
政策担当官庁、推進組織、民間団体等と、ポストコロナ禍の戦略について議論できる「場」を提供し、分析を通じて得られた解決策を発信する。
研究体制
研究統括・リサーチリーダー
稲田義久 APIR研究統括兼数量経済分析センター長、甲南大学教授
リサーチャー
松林洋一 APIR主席研究員、神戸大学大学院経済学研究科長・教授
KARAVASILEV Yani 京都文教大学総合社会学部講師
野村亮輔 アジア太平洋研究所 研究員
郭 秋薇 アジア太平洋研究所 研究員
研究協力者
村上進一郎 国土交通省・近畿運輸局観光部 計画調整官
岩﨑靖彦 国土交通省・近畿運輸局観光部 観光企画課 課長
濱田浩一 関西観光本部 事務局次長
都留敦徳 日本旅行業協会 事務局長
筒井千恵 関西エアポート株式会社 グループリーダー
※必要に応じてDMO、自治体や民間企業等関係者にも参画いただく。
期待される成果と社会還元のイメージ
研究成果としては、関西インバウンド基礎統計の整備(月次レポート、トレンドウォッチ)、マイクロデータの分析成果(研究報告書)、関西観光戦略の課題の共有化(研究会、シンポジウム等での情報提供と議論)を予定している。
また、上記研究成果を「ポストコロナ禍における観光政策の立案」、「観光ハード面とソフト面のインフラ整備」、「推計値を用いた観光DMOのプロモーション施策の検証」等に活用できるであろう。
<研究会の活動>
研究会
・2020年10月 8日 第1回研究会開催(オンライン)
・2020年11月27日 第2回研究会開催(オンライン)
・2021年 1月25日 第3回研究会開催(オンライン)
・2021年 3月 4日 オンラインシンポジウム開催 (開催概要はこちら)
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関西地域間産業連関表の利活用
研究プロジェクト
研究プロジェクト » 2020年度 » 経済予測・分析軸
ABSTRACT
リサーチリーダー
上席研究員 高林喜久生 関西学院大学経済学部教授
研究目的
APIRでは,前身の関西社会経済研究所の時代から、関西における地域間産業連関表の作成に取り組んでいる。昨年度の自主研究プロジェクト(関西地域間産業連関表の利活用と2015年表に向けての検討)では、「2011年版APIR関西地域間産業連関表(以下,2011年表)」を暫定版から確定版へと改定するとともに、利活用に重点を置くという趣旨からG20大阪サミットや夏の甲子園開催、大阪・関西万博などを対象に経済波及効果の分析を行った。これらの成果は夏のフォーラムやトレンドウォッチ、『アジア太平洋と関西』等で発表し、これらを通じて地域間産業連関表の有用性を伝えることができた。
その一方で、対象年である2011年から約10年が経過し、関西経済を取り巻く状況は大きく変化している。インバウンド需要の増大による交流人口の拡大や、交通網整備によるインフラ整備、グローバル・サプライチェーンの進展による貿易構造の変化は関西の経済構造に大きな影響を与えている。そのため、地域間かつ広域で経済活動を把握することができる地域間産業連関表は、今まで以上に関西経済の分析に重要な役割を果たすと考えられる。
産業連関表は通常、5年ごとに更新されるため、次のベンチマークイヤーは2015年である。2011年から15年にかけては,2013年以降のアベノミクスによる景気の好転、14年以降の外国人観光客急増とそれに伴うインバウンド需要の高まりなど、関西経済にとって重要な出来事が多く起こった期間でもある。ただし、関西各府県における2015年産業連関表の公表はまだ一部府県にとどまっているため、2015年を基準年とした作表に着手できるのは、来年度以降となる。そこで2020年度は、2011年APIR関西地域間産業連関表をベンチマークとした、2015年の関西地域間産業連関表延長表(以下、2015年延長表)作成を行うとともに、引き続き2011年表を利用した分析に取り組む。なお、本年度の調査研究で実施するWEBアンケート等の交易マトリックスに関する調査結果は、来年度以降に実施する2015年基準表の作成においても利用することを見込んでいる。
研究内容
WEBアンケート結果を利用し2015年延長表の作成作業を行うとともに、今後関西地域で開催が予定されている大規模イベント等の経済波及効果の推計について検討する。作業過程で蓄積された知見や分析の成果はトレンドウォッチなどの形で適宜報告を行うとともに、学会などでも対外発表を行いたい。
1)「2015年 APIR関西地域間産業連関表延長表」作成に向けた基礎調査の実施
2011年表作成時に実施した調査から得られた課題(サンプルサイズや設問の尋ね方)を踏まえ、WEBアンケート調査を実施する。
2)「2015年 APIR延長関西地域間産業連関表延長表」の作成
1)で得られたアンケート調査結果を利用し、府県間の取引関係を示した交易マトリックスを更新するとともに、2015年延長表の作成を行う。
3)対外的な成果報告
メンバーは各々の立場で2011年表を活用した分析結果を報告することを通じて、積極的な対外発信に努める。
研究体制
研究統括
稲田義久 APIR研究統括兼数量経済分析センター長、 甲南大学教授
リサーチリーダー
高林喜久生 上席研究員、関西学院大学経済学部教授
リサーチャー
下田 充 日本アプライドリサーチ研究所主任研究員
下山 朗 奈良県立大学地域創造学部教授
入江啓彰 近畿大学短期大学部准教授
藤原幸則 APIR主席研究員
木下祐輔 APIR調査役・研究員
期待される成果と社会還元のイメージ
近畿経済産業局「近畿地域産業連関表」は2005年表を最後に作成中止となっており、当研究所の表が関西を対象とする唯一の本格的な産業連関表となる。対象地域は広域関西2府8県で、関西広域連合や関西観光本部の対象地域をカバーしている点も特徴である。また、年次を2015年に更新することで、2011年表よりも直近の経済状況を反映できることから、2015年延長表を活用した分析や対外発表等は非常に価値が高いと考えられる。
加えて、産業連関表は政策評価を行う上での基礎資料でもあるため、所内の他の自主研究(インバウンド等)とのクロスオーバー、関連する調査を受託することでの外部資金獲得等が期待できる。
成果物である2015年延長表は、2011年表と同様、部門を集約した上でAPIRのホームページ上で発表を行う。また、分析成果は景気討論会や学会や外部の研究会で報告することを予定している。
地域間産業連関表を用いることで、関西における府県間・産業間の相互取引関係・供給構造の分析や、経済波及効果の推計を通じた政策評価を客観的かつ定量的に行うことが可能となる。これらの分析結果は、自治体の担当者にとっても、政策形成を行ううえでの重要な指針となるだけでなく、関西経済の現状および構造的特徴を説明する際の貴重な資料として活用されることが期待できる。また、外部資金獲得についても、既に受託している大阪府の調査(新型コロナウイルス感染症に関する大阪経済への影響分析等調査)の中で、産業別の影響を推計した結果を報告するなどして活用している。
<研究会の活動>
研究会・分科会
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「関西のスポーツ産業振興に係る基礎調査報告書」(公益社団法人関西経済連合会委託調査)
その他の活動・出版物紹介
その他の活動・出版物紹介 » その他の活動
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ABSTRACT
調査内容
日本では2015年にスポーツ庁が発足し、スポーツの成長産業化に向けた議論が活性化している(スポーツ基本計画策定など)。また、ラグビーワールドカップ2019に加えて、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会、ワールドマスターズゲームズ2021関西と、連続で3つの大きなスポーツイベントがあり、ゴールデン・スポーツイヤーズとも称されており、スポーツ産業活性化に向けては絶好の機会が到来している。
スポーツ産業は、スポーツ用品をはじめとする製造業・商業に限らず、医療・健康、観光、サービス業など幅広い産業分野に関係し、産業横断的に存在していると言える。スポーツ用品の製造・販売だけでは成長に限界があり、スポーツツーリズムなど、異なる産業分野の様々シナジーがスポーツ産業の発展につながる。
欧州諸国においては、スポーツサテライトアカウント(Sport Satellite Account)が開発され、経済計算に基づきGⅤA(粗付加価値)、雇用者数などのスポーツ産業規模の統計値が推計されている。スポーツサテライトアカウントは、産業分類の中でのスポーツ産業の位置づけや範囲が示され、また国際比較可能であることから、欧州各国のスポーツ産業振興のベンチマークとして活用されている。
日本全体のスポーツ産業規模の計測については、欧州スポーツサテライトアカウントの方法に準拠し、有識者の協力を得てすでに日本政策投資銀行で行われ、結果が2018年3月に公表されている(日本政策投資銀行地域企画部・同志社大学「わが国スポーツ産業の経済規模推計~日本版スポーツサテライトアカウント~」2018年3月)。
そこで、本調査では、関西のスポーツ産業の現状と動向について、できる限り最新の情報を織り込みながら、統計データや情報の整理を行うとともに、日本版スポーツサテライトアカウント方法に準拠した関西のスポーツ産業規模の推計を行った。関西のスポーツ産業規模の推計にあたっては、アジア太平洋研究所が独自に作成した「2011年関西地域間産業連関表」(対象:関西2府8県)を利用した。今後、関西地域間産業連関表の改定にあわせ、関西のスポーツ産業規模の推計を継続して行いえることとなる。
調査監修
稲田義久 アジア太平洋研究所 研究統括兼数量経済分析センター長、 甲南大学経済学部教授
調査担当
藤原幸則 アジア太平洋研究所 主席研究員
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インバウンド先進地域としての関西 持続可能な観光戦略を目指して
研究プロジェクト
研究プロジェクト » 2019年度 » 日本・関西経済軸
ABSTRACT
リサーチリーダー
研究統括兼数量経済分析センター長 稲田義久 甲南大学経済学部教授
研究目的
・世界に通用する観光圏「関西」形成のための、関西におけるインバウンド戦略の必要性
日本経済が人口減少化の下で、将来に亘って持続的な経済成長を実現するためには、新たな成長戦略が必要となる。特に関西経済においては、インバウンド・ツーリズムの戦略的価値が高い。本テーマでは、関西におけるインバウンド戦略を検討するための関西基礎統計の整理、マイクロデータによる分析に取り組んできた。これらを引き続き深化させる。
・持続可能な戦略策定のために考慮すべき課題
インバウンド需要を持続的に拡大するうえで課題となるオーバーツーリズムの解消に加え、最近の課題として、今後数年の間に動向変化が見込まれるIR/MICEの観点、関西三空港の観点も研究に含める必要がある。
研究内容
2018年度に引き続き、以下4つの軸でバランスよく進めるが、特に②に重点をおく。
①関西基礎統計の整理
インバウンド関係基礎データ(観光庁の公開データ、RESAS等)の整理に加え、18年度に開発した府県別外客数の月次推計手法を用いて動態を分析する 。
②マイクロデータによる実証分析
近畿運輸局等の協力のもと、エビデンスにもとづいた戦略が議論できるための実証分析を行う。具体的には、観光庁が訪日外国人客の消費実態等を把握し、観光行政の基礎資料とする目的で実施してきた訪日外国人消費動向調査(個票をもとに、訪日外国人の多面的な移動パターンの分析)・宿泊旅行統計調査(同じく、府県別宿泊者数の動態分析)等の分析を行う。
③観光戦略の在り方成長戦略立案のための課題の認識と共有
政策担当官庁、推進組織、民間団体と、持続可能なマーケティング戦略をめぐる課題を議論できる「場」を提供し、分析を通じて得られた解決策を発信する。
④IR/MICEに関する調査分析
動向調査による現状把握をもとに、課題抽出と提言の検討を行う。
研究体制
リサーチャー
松林洋一 APIR主席研究員、神戸大学大学院教授
森本 裕 甲南大学経済学部 准教授
研究協力者
柴谷淳一 国土交通省・近畿運輸局観光部 計画調整官
村上良明 国土交通省・近畿運輸局観光部 観光企画課 課長
野口礼子 関西観光本部 事務局長
都留敦徳 日本旅行業協会 事務局長
筒井千恵 関西エアポート株式会社 グループリーダー
※必要に応じてDMOや民間企業、IR/MICE関係者 等にも参画いただく。
期待される成果と社会還元のイメージ
関西の各自治体・観光団体・経済界に対して
①基礎的な観光指標を公表する
昨年に続いてインバウンド関係基礎データを整理し、関西観光本部と協力して公表する。
②インバウンド戦略策定に向けた実績推計値とマーケティング情報を提供する
観光庁データのより詳細な分析により、関西におけるインバウンド需要の特性を分析し、観光戦略を検討するために必要となる実績推計を行う 。これらは、新たなツーリズム施策の効果検証を可能にする。
また個票データ等の分析による関西と他地域の比較から、関西の強みを活かしたマーケティングの立案に貢献することができる情報を提供する。インバウンド消費需要の数量的分析(需要関数の推定)もここで行う。
③観光戦略の在り方と課題を共有するための、情報と「場」を提供する
関西三空港の動向も踏まえ、四半期毎の研究会を想定する。
④IR/MICEについて、現状分析と新たな提言を行う
最近の動向を含む分析から、新たな提言を行う。
<研究会の活動>
研究会
・2019年 7月31日 第1回研究会開催
・2019年11月21日 シンポジウム開催 (シンポジウム概要はこちら)
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災害リスク管理の視点からの社会システムのあり方
研究プロジェクト
研究プロジェクト » 2019年度 » 日本・関西経済軸
ABSTRACT
リサーチリーダー
主席研究員 藤原幸則
研究目的
近年、全国各地で自然災害が相次いでいる。特に、昨年の豪雨、台風、地震は、広範な地域で甚大な被害をもたらすとともに、空港閉鎖やブラックアウト、サプライチェーンを通じて、経済や生活面において大きな影響を与えた。関西においても、昨年9月の台風21号による暴風、高波、高潮の影響で、関西国際空港が大規模な浸水被害に見舞われ、タンカー船の衝突による空港連絡橋の損傷も重なり、空港機能が一時停止するに至った。
インフラの民営化やPPP導入が進んでいるが、所有と管理が分離され、民間が運営主体となることについて、災害リスク管理の視点から、初動対応、迅速な回復、今後の対策に至るまで、課題を抽出し、事前に手当すべきことなど、適切な対応策を考えることが必要である。災害リスク管理の視点からは、インフラ以外にも、人口や経済機能の東京への一極集中、情報ネットワーク化、都市計画・土地利用計画といった日本の社会システムについて、潜在的な課題を浮き彫りにし、適切な対応策を探ることが必要である。
また、災害からの復旧、復興にはファイナンスが必要であるが、巨大災害には事後的なファイナンスは極めて困難となり、国家の財政対応能力を超えることにもなりかねない。公的部門における資本市場へのリスク移転など、持続的なリスクファイナンスの制度化の検討が必要である。
研究内容
研究会を開催し、法学、経済学、ファイナンス、防災の専門家や研究者から、検討テーマについて講演をいただくとともに、その質疑応答や意見交換を通じて、課題と対応方向を探る。あわせて、海外事例の調査、必要に応じて関係機関へのヒアリング調査も行い、研究の深耕を行う。
災害や防災に関する研究は、減災・防災や避難などのハード・ソフトの対策に関して、いろいろなところで行われているので、当研究所は社会科学分析に強い特性を活かし、社会システムの在り方やリスクファイナンスについての研究を行うことで差別化する。
研究会は毎回、関心ある会員企業・団体の参加を可能とするオープン研究会で開催し、企業等の現場の課題認識も聴取できるものとする。
研究体制
研究統括
稲田義久 APIR研究統括兼数量経済分析センターセンター長、甲南大学教授
研究協力者
服部和哉 AIG総合研究所 主任研究員
期待される成果と社会還元のイメージ
災害リスク管理の視点から、日本の社会システムの潜在的な課題を浮き彫りにし、必要な法律・制度・政策などの提案、巨大災害に備えた持続的なリスクファイナンスの制度化の提案を報告書にまとめる。報告書はHPにて公開する。研究成果の政策提言に関する内容は、Policy Brief として発信し、政府、自治体、経済界、マスコミ、学界の関係者に広くアピールする。
行政の法律・制度・政策への反映、企業や社会の課題認識と世論形成につなげたい。
<研究会の活動>
研究会
・2019年7月25日 第1回研究会開催
・2019年9月2日 第2回研究会開催
・2019年9月30日 第3回研究会開催
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地方創生 関西の人口動態と地域経済に与える影響
研究プロジェクト
研究プロジェクト » 2019年度 » 日本・関西経済軸
ABSTRACT
リサーチリーダー
研究統括兼数量経済分析センターセンター長 稲田義久 甲南大学教授
研究目的
我が国の総人口は少子化・高齢化、人口減少が継続して進んでおり、2010年に1億2,805万人でピークを迎え、2017年の段階で7年連続の減少となった。国立社会保障・人口問題研究所の2017年時点の推計によると、2045年の日本の総人口は約1億人、高齢化率は約37%、生産年齢人口は約5,600万人になるとされている。また、東京一極集中の傾向は継続・拡大しており、2018年の東京圏(1都3県)への人口移動は、約14万人の転入超過となった。
関西は、人口の減り方が全国や東京圏より厳しい。国立社会保障・人口問題研究所の推計によれば、2010年~45年の減少率で、東京圏17%減に対し、関西は19%減となる。関西の人口減少の大きな要因は自然増減よりも社会増減である。関西から人口の転出を促している最大の要因は、関西から企業の本社機能が東京へ流出している点である。経済社会のグローバル化の流れにより、東京移転が加速された点もある。本社機能の東京集中は税収の偏在をもたらし、地域創生に取り組む関西の自治体が必要な財源を十分に確保できない状態になっている。
人口動態の足元の動向からは、東京集中だけでない、新たな兆候もみられる。2018年に大阪圏からの転出超過人数は7,907人と4年連続で縮小した。インバウンド産業が活性化している関西が人口流入を惹き付けている点もあるだろうとみられる。関西で働く外国人も増えている。
そこで、関西の人口動態を中心に、企業移転や産業構造、税収も含めて、基礎データを整理することにより、政策提案になりうる特徴やポイントを見出だすことが必要である。また、地域創生に必要な雇用所得創生について、その方策を探るうえで実証分析を行う必要がある。あわせて、地域創生、地方分権に寄与する法制度(税制等)の提案を検討していくことも有意義と考える。
研究内容
リサーチリーダーの指導の下、APIR所内研究員、近畿経済産業局、日本政策投資銀行関西支店の実務メンバーからなるワーキンググループにて、基礎データ整理と検討、実証分析、法制度の提案検討を行う。研究成果のTrend Watchでの発信の機会に、自治体・経済団体・会員企業団体・大学の関係者を集めたオープン研究会を開催し、その質疑応答や意見交換を通じ、さらなる課題の深掘りや研究の深耕を図る。
RESASをはじめとする基礎データの整理、関西地域間産業連関表を活用した実証分析は、APIRの独自性を生かしたものとなる。また、近畿経済産業局、日本政策投資銀行関西支店の協力を得ることで、オープンデータだけでは容易に得難い産業・金融関係のデータ把握や知見の共有は、本研究の質を上げることになる。
研究体制
研究統括
稲田義久 APIR研究統括兼数量経済分析センターセンター長、甲南大学教授
リサーチャー
下田 充 日本アプライドリサーチ研究所主任研究員
藤原幸則 APIR主席研究員
中山健悟 APIR調査役・研究員
野村亮輔 APIR研究推進部員
研究協力者
山本敏明 近畿経済産業局 総務企画部企画調査課長
有馬貴博 近畿経済産業局 総務企画部企画調査課総括課長補佐
坂倉孝雄 近畿経済産業局 総務企画部企画調査課総括係長
田口 学 日本政策投資銀行 関西支店企画調査課長
柏山稜介 日本政策投資銀行関西支店企画調査課副調査役
期待される成果と社会還元のイメージ
関西の人口動態と地域経済に与える影響について、基礎データ整理からの政策的インプリケーション、経済分析ツールによる実証分析、法制度の提案の3点から、政策提案になる研究成果をまとめる。研究成果は、Trend Watch として発信するとともに、景気討論会等での議論・報告にも活用することを検討し、政府、自治体、経済界、マスコミ、学界の関係者に広くアピールする。詳しい基礎データも含めた全体報告書は年度末までにまとめ、HPにて公開する。
地域創生にかかわる基礎データからの緻密な整理と分析をもとにした政策提案・制度提案は、関西の自治体関係者の政策立案を行う上での有益な参考資料・情報として活用されることが期待できる。また、政府の「まち・ひと・しごと創生本部」事務局にも報告を行い、2020年度からの第2期「まち・ひと・しごと総合戦略」への反映もめざす。
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関西の大学・大学院で学ぶ留学生の就職に関する研究
研究プロジェクト
研究プロジェクト » 2019年度 » 日本・関西経済軸
ABSTRACT
リサーチリーダー
上席研究員 古沢昌之 近畿大学経営学部教授
研究目的
経営のグローバル化が進展する中、企業の人的資源管理においては、多様な人材の活用が求められている。その1つが日本の大学(含む大学院)で学ぶ外国人留学生の活用である。しかしながら、先行研究や我々が2018年度に実施した予備的調査によると、日本での就職を希望する外国人留学生の就職決定率は日本人学生のそれよりも遥かに低く、就職後の定着率に関する問題も指摘されている。かような状況下、本研究プロジェクトでは、上記ミスマッチに対して学術的な視点からアプローチし、その解決に向けた提言を行う。
研究内容
当該問題の解決を図るべく、日本企業、日本の大学、外国人留学生、行政機関といった多様なアクターを研究対象とすると同時に、定量(アンケート)と定性(ヒアリング)の両面から調査を実施するなどして問題に多角的にアプローチする。初年度である2019年度は大学及び外国人留学生本人に対するアンケート調査を行い、その結果を踏まえて2020年度は企業への調査を実施し、研究の深耕を図る。調査結果については科学的な手法を用いて分析し、学術と実務両面に対する貢献を果たしたい。
また、関西経済連合会が主催する「グローバル人材活用運営協議会」とも連携を取り、協力し合いながら研究を進めていく。
研究体制
研究統括
稲田義久 研究統括兼数量経済分析センターセンター長、 甲南大学教授
リサーチャー
松川佳洋 広島経済大学経営学部教授
カオ・ティ・キャン・グェット 関西学院大学経済学部講師
期待される成果と社会還元のイメージ
外国人留学生の日本企業(在外日系企業も含む)への就職を巡る現状と課題について考察するとともに、企業、大学、留学生、社会(行政機関等)の各々に対し、如何なる変革が求められるかを明らかにすることで、各アクターのwin-win-win-winの関係構築に資する。またそれらの研究内容を、各アクター向けに分かりやすく報告書にまとめる。
<研究会の活動>
研究会
・2019年4月10日 第1回研究会開催
・2019年7月17日 第1回アンケート調査分科会
・2019年8月27日 第2回アンケート調査分科会
・2019年9月18日 第2回研究会開催
・2019年10月9日 第3回アンケート調査分科会
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テキストデータを利用した新しい景況感指標の開発と応用
研究プロジェクト
研究プロジェクト » 2019年度 » 経済予測・分析軸
ABSTRACT
リサーチリーダー
主席研究員 松林洋一 神戸大学大学院経済学研究科教授
研究目的
従来、マクロ経済の動向を把握するには、集計データを用いることが一般的である。しかし、集計データは、リアルアイム性に欠けており、ミクロの経済要因を知るには不十分という課題がある。一方、昨今の情報技術の急速な進展により、国内外の経済活動において生成される大規模なデータ(ビッグデータ)が様々な形で利用可能になり始めている。きわめて豊富な情報を内包しているビッグデータの活用は、マクロ経済のより精緻な情勢判断と予測において、有効であると考えられる。このため、本研究ではビッグデータの一つであるテキストデータに着目して、経済の動向を析出することを試みる。
研究内容
2018年度から引き続き、人工知能の一種である深層学習(ニューラルネットワークという人間の脳神経回路を模したモデルを構築し、コンピュータに機械学習させること)を、テキストマイニングに用いる。本年度も、深層学習における推定モデルの一つである、リカレント・ニューラル・ネットワーク(Recurrent Neural Network,以下RNN)を、基本の分析枠組みとする。
研究体制
研究統括
稲田義久 APIR研究統括兼数量経済分析センター長、甲南大学教授
リサーチャー
関 和広 甲南大学知能情報学部准教授
生田祐介 大阪産業大学経営学部講師
岡野光洋 大阪学院大学経済学部准教授
期待される成果と社会還元のイメージ
テキストデータから景況感を推定するモデルを構築する。政府による既存の景況感指数と比較することで、我々のモデルが有する特徴を明らかにする。その成果として「テキスト版景況感指数」を公表する。
「テキスト版景況感指数」を見ることで、消費者にとっての景況感を、より深く知ることができるようになる。まずは、企業の経営判断を行う際の議論に使えるようにする。そして、国や自治体に対しても、政策決定に活用して頂くことを検討する。
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関西地域間産業連関表の利活用と2015年表に向けての検討
研究プロジェクト
研究プロジェクト » 2019年度 » 経済予測・分析軸
ABSTRACT
リサーチリーダー
上席研究員 高林喜久生 関西学院大学経済学部教授
研究目的
APIRでは,前身の関西社会経済研究所の時代から,関西における地域間産業連関表の作成に取り組んでいる.昨年度の自主研究プロジェクト(2011年版・APIR関西地域間産業連関表の作成と活用)では,2011年度に2005年表作成後,7年ぶりに同連関表の改訂作業を実施した。
「2011年版APIR関西地域間産業連関表(以下2011年表)」は現在暫定版が完成している。2011年表は対象地域の拡大,産業部門数の拡大,交易マトリクスの作成を通じた域外取引の精緻化など,地域の取引実態を正確に反映させるための様々な工夫を行った。その結果,自治体やシンクタンクにおける経済波及効果推計だけでなく、アカデミックな研究としても耐えられる質の高いものとなっている.そこで,今年度は暫定版を確定版へと修正するとともに,産業連関表自体の利活用に重点を置いて取り組む。
研究内容
1)「2011年版APIR関西地域間産業連関表」確定版への更新
昨年度の研究成果である2011年表は現在暫定版である.これを自治体の統計担当者へのヒアリングや,各部門の推計に利用した既存統計を再度見直すことで,暫定版を確定版へと修正する.
2)関西が会場となる大規模イベントの経済波及効果の推計
2019年度はG20やラグビーワールドカップの開催が予定されている.また,翌年以降もワールドマスターズゲームズ(2021年)やIR開業(2024年)、大阪・関西万博(2025年)など,関西地域が会場となる大規模イベント開催が多数予定されており,これらのイベントがもたらす経済波及効果の推計を行う.
3)対外的な成果報告
夏頃を目途に,2011年表(確定版)を基に関西地域における取引構造について報告する成果報告会を実施する.また,各々の立場で2011年表を活用した分析結果を報告することを通じて,積極的な対外発信に努める。
4)2015年産業連関表作成に向けた交易マトリックスの更新に向けての準備作業
次の産業連関表のベンチマークイヤーは2015年である.2011年から15年にかけては,2013年以降のアベノミクス,14年以降の外国人観光客急増によるインバウンド需要の高まりなど,関西経済にとって重要な出来事が多く起こった重要な期間でもある.よって,交易マトリックスの更新を行うことで,2015年の関西地域間産業連関表作成の準備作業を行う。
研究体制
研究統括
稲田義久 APIR研究統括兼数量経済分析センター長、 甲南大学教授
リサーチャー
下田 充 日本アプライドリサーチ研究所主任研究員
下山 朗 奈良県立大学地域創造学部教授
入江啓彰 近畿大学短期大学部准教授
藤原幸則 APIR主席研究員
木下祐輔 APIR調査役・研究員
期待される成果と社会還元のイメージ
関西全体を一地域として捉えた近畿経済産業局の「近畿地域産業連関表」は2005年表を最後に作成中止となっており,本表が関西地域を対象とする唯一の本格的な2011年表となる.そのため,2011年表を活用した分析結果や対外発表等は非常に価値が高い.
また,2011年表は政策評価を行う上での基礎資料でもあることから,所内の他の自主研究(インバウンドや地域創生等)とクロスオーバーが期待できる。
2011年表を確定版へと修正作業を行うとともに,関西経済の構造分析を行い、また今後関西地域で開催が予定されている大規模イベントの経済波及効果の推計についても検討する予定である。こうした作業の過程で蓄積された知見は,トレンドウォッチ,コメンタリーの形で適宜報告を行うとともに,学会などでも対外発表も行いたい。
<研究会の活動>
研究会・分科会
・2019年4月26日 第1回研究会開催
・2019年5月17日 第1回分科会開催
・2019年6月7日 第2回分科会開催
・2019年6月25日 第3回分科会開催
・2019年7月30日 第4回分科会開催
・2019年10月28日 第5回分科会開催(予定)