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「2007年度」の研究・論文一覧

  • 熊坂 侑三

    今月のトピックス(2008年3月)

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     / DATE : 

    AUTHOR : 
    熊坂 侑三

    ABSTRACT

    <10-12月期の日本経済成長率:なぜマーケットは予測を間違ったか?>

    2月14日発表の10-12月期GDP1次速報値によれば、同期の実質GDP成長率は前期比+0.9%、同年率+3.7%となった。好調な新興市場 への輸出増加と民間企業設備の伸びに支えられた結果である。7-9月期の同年率+1.3%を上回る2四半期連続のプラス成長となり、マーケットにとっては ポジティブ・サプライズとなった。この結果、2007暦年の実質成長率は+2.1%となり、2年連続して2%を上回った。

    10-12月期の実績は発表直前の市場コンセンサス(ESPフォーキャスト調 査:+1.36%)を大きく上回ったが、超短期予測(+4.1%)にほぼ近い結果となった。超短期モデルの予測動態を振り返ると、8月から11月にかけ て、超短期予測は市場コンセンサス予測とほぼ同じ+2%程度で推移した。両者の予測が乖離し始めたのは12月初旬である。超短期予測は+3%台にシフト アップするが、市場コンセンサス予測は1%で低迷する。市場コンセンサス予測が+1%にとどまった背景としては、サブプライムローン問題による株価の大幅 下落の影響を挙げることが出来る。日経平均株価(225種)は、2007年 11月1日の16,870.40の高水準から年末には15,307.78となり、2008年1月22日には12,573.05に暴落する。市場のパニック 心理が予測にも影響したものと思われる。超短期予測は人的判断が一切入らないテクニカルな予測であるから、ほぼ正確に予測できたのは当然の結果といえよ う。また2ヵ月程度早く成長率を予測できるのが超短期予測の優れた特徴である。
    超短期予測の10-12月期の成長率は前期(同+1.3%)から加速したが、半期ベースで見ると1-6月期の同+2.6%から7-12月期は同+1.2%へと減速しており、これまで指摘してきたように、10-12月期の高成長は景気減速前の最後の輝きと見てよい。
    一般物価の総合指標であるGDPデフレータは、10-12月期に前期比-0.6%となり、7-9月期の同-0.2%より下落幅が拡大し、4期連続のマイ ナスとなった。前年同期比では39・四半期連続のマイナス(-1.3%)を記録した。輸出入デフレータの変動がGDPデフレータ大幅下落の要因である。原 油高の影響で輸入デフレータは前期比+3.0%上昇したが、輸出デフレータは円高の影響で同-1.1%下落したためである。他方、民間最終消費支出デフ レータはガソリン価格や食料品価格の高騰で同+0.2%上昇した。超短期予測は、デフレータもGDP経済成長率とともにほぼ正確に予測した。
    下表は、最終週の超短期モデルの10-12月期実質GDP項目の予測パフォーマンスをみたものである。今回の超短期予測は公的固定資本形成を除き、その 他のGDP項目をほぼ正確に予測した。特に、GDPの最大構成項目である民間最終消費支出を正確に予測したといえよう。

    日本

    今回の予測では、GDPを説明する1月の主要な月次データが更新された。支出サイドモデルは、純輸出と内需が小幅拡大するため、1-3月期の実質GDP 成長率を、前期比+0.5%、同年率+1.8%と予測している。この結果、2007年度の実質経済成長率は+1.8%となろう。
    1-3月期の国内需要を見れば、実質民間最終消費支出は前期比+0.2%増、実質民間住宅は同+13.9%と大幅増加し、1年ぶりのプラス成長となる。 一方、実質民間企業設備は同-0.7%と3期ぶりのマイナスになる。実質政府最終消費支出は同+0.3%、実質公的固定資本形成は同+0.3% となる。このため、実質GDP成長率(前期比+0.5%)に対する国内需要の寄与度は+0.2%ポイントとなる。財貨・サービスの実質輸出は 同+2.4%、実質輸入は同+1.2%となる。純輸出の寄与度は+0.3%ポイントとなる。
    4-6月期の実質GDP成長率については、内需が小幅の拡大を維持するが純輸出は横ばいとなるため、前期比+0.4%、同年率+1.6%と予測している。
    GDPデフレータは1-3月期に前期比-0.5%、4-6月期も同0.0%となる。輸入デフレータが引き続き上昇し(GDPデフレータの引き下げ要因)、輸出デフレータが円高の影響で下落するためである。
    主成分分析モデルは、1-3月期の実質GDP成長率を前期比年率+3.1%と予測している。また4-6月期を同+0.9%とみている。GDPデフレータは1-3月期に前期比-0.2%、4-6月期に同+0.1%とみている。
    この結果、支出サイドと主成分分析モデルの実質GDP成長率(前期比年率)の平均は、1-3月期が+2.5%、4-6月期が+1.2%となる。 GDPデフレータは1-3月期が前期比-0.4%、4-6月期は同0.0%である。両モデルの平均で見れば、日本経済は2008年央にかけて減速するパ ターンを示しているが、現時点では、多くのマーケットエコノミストが予測するようなリセッションに落ち込む事態は避けられそうである。引き続き注意深く データの動向を見守っていかなければならない。

    [稲田義久 KISERマクロ経済分析プロジェクト主査 甲南大学]

    米国

    ラリー・サマーズやウォーレン・バフェットなど著名なエコノミストや投資家が「米国経済はただいまリセッション中」と述べている。バーナンキ連邦 準備理事会(FRB)議長も、議会証言では「米経済はリセッションにはなっていないが、リセッションの一歩手前」と発言している。しかし、同議長はインフ レよりも景気を重視して、これまで大幅な政策金利引下げを行っていることから、米国経済がすでにリセッションに入っていると想定していると考えても間違い はない。もちろん、FRB議長の立場では「ただいまリセッション中」などとは言えないのである。
    グラフは実質総需要、実質国内需要、実質最終需要の超短期予測を示している。1月の在庫、貿易収支がまだ発表されていないことから、実質GDPよ りこれら需要の指標を見るほうが景気判断にはよいだろう。確かに、2月に入り1月の経済指標が更新され始めたことによって景気は急速に減速してきた。今の ところ、1-3月期の成長率は0%?+1%(前期比年率)と理解するのがよいだろう。これがマイナス成長になるか、プラス成長を維持するかは、今後の個人 消費支出がどこまで減速するか、そしてドル安による純輸出の改善がどの程度かにかかっている。
    今回の超短期予測では、1-3月期の実質個人消費の伸び率が+1%程度(前期比年率) にまで低下してきたと予想している。一方、実質純輸出は前期から約300億ドル改善すると見ている。景気が減速しているとはいうものの、1月の統計でも個 人所得の伸び率がそれほど悪くないことから、個人消費支出が直ちに大きく崩れることはないだろう。
    バーナンキ議長は議会証言で「スタグフレーションになるとは思わない」とも述べている。超短期予測では1-3月期の総合・コアの個人消費支出価格デフ レータの伸び率(前期比年率)が2月にはいり急速に上昇し始め、現在+3%?+5%の範囲にある。確かに、1970年代のようなスタグフレーションの状況 にはならないと思われるが、今の米経済はまさに「ミニスタグフレーション」の状況にある。一旦このような状況になると、正常化するにはかなりの時間がかか る。

    [熊坂有三 ITエコノミー]

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    人口変動が関西の消費に与える影響(2008年2月)

    研究プロジェクト

    研究プロジェクト » 2007年度

    ABSTRACT

    「日本経済のマクロ分析」特別研究成果報告
    (主査: 稲田義久・甲南大学経済学部教授、高林喜久生・関西学院大学経済学部教授

    当研究所のマクロ経済分析プロジェクトチームでは、在阪の大手企業・団体の若手スタッフの参加による研究会を組織し、稲田主査指導のもとマクロ計量モデルによる景気予測を行なうとともに、高林主査指導のもと時宜に適ったテーマを取り上げ、特別研究を実施している。
    2007年度の特別研究では、わが国の経済・社会に最も大きな影響を与える要因のひとつである人口減少・少子高齢化を取り上げ、それがGDPの最大構成項 目である消費にどのような影響をもたらすかについて分析し、このほどその成果をとりまとめ、2008年2月22日発表した。

    <<要旨>>

    【関西の人口変動の特徴】
    関西における人口変動の特徴として、(1)少子高齢化の進行が早い、(2)0-14歳と25-64歳(働き盛り層とその子供達)の流出が多い、(3)15-24歳の学生層の流入が多い、の3点を挙げた。

    【少子高齢化と消費行動の関係】
    少子高齢化の下での特徴的な消費行動として、(1)近年の高齢者世代は消費意欲が衰えず、教養・娯楽等への出費も多いこと、(2)結婚・出産を機に退職す る女性が減少し、就業女性による消費カテゴリが拡大している可能性があること、(3)団塊ジュニア世代が積極的に住宅を取得し、都心回帰の動きを支えてい ること、(4)関西では若年層が地元教育機関に進学し、仕送りが少ないため教育関連費用が低くてすむこと、の4点を挙げた。

    【関西の消費市場、活性化のカギ】
    今後の活性化のカギとして、(1)エリアとしての魅力向上をはかる「まちづくり」、(2)従来から大学などの集積がある「教育」、(3)歴史的にも交流の深い「アジア」、の3点を挙げた。

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    「暫定税制に関する調査研究」成果報告(2008年3月)

    研究プロジェクト

    研究プロジェクト » 2007年度

    ABSTRACT

    平成20年度、道路特定財源暫定税率に関する議論が活発に行われた。この問題は、自動車利用にともなう負担や道路 整備のあり方に関わるだけでなく、国民経済、環境、地域開発、財政、交通政策等、さまざまな側面に直接、間接に影響を及ぼすものである。したがって、党利 党略や地域間の争いではなく、国民経済や国民生活の向上といった視点から、より良い政策選択につながるものでなくてはならない。
    そこで、「国と地方の制度設計研究会」の1テーマとして道路特定財源にかかわる揮発油(ガソリン)税などの暫定税率を取り上げ、廃止された場合の消費者物価への影響度並びに家計負担の軽減額について、産業連関表並びに家計調査のデータを用いて、試算を行いました。
    その結果、暫定税率の廃止によって、消費者物価全体を0.6%押し下げ、特に自動車等関係費については4.09%押し下げることが判りました。
    また、暫定税率を廃止した場合に起きる収入階層別の税負担の変化(直接効果)について計測しました。年間の収入が低いほど負担の軽減率(収入比)は大き く(0.61%:第Ⅰ所得階層)、収入が高いほど軽減率が低くなります(0.31%:第Ⅴ所得階層)。つまり、自動車が生活必需品的な色彩が強く、揮発油 税などは逆進的な要素を持っていることを意味します
    そして、暫定税率の廃止によって、ガソリン以外の様々な物価も上記のように下がります。その物価の下落で家計の支出額が減ることの効果(間接効果)につ いても計測を行いました。年間で8千円?2万円程度の支出を抑えることができ、所得に対する比率で見ると収入が低いほど支出の削減率が高いということがわ かりました。
    また都市階級別で暫定税率廃止による影響を見ると、地方部ほどその軽減額は大きく、例えば町村部の場合、世帯当たり年間53,366円軽減され、大都市部では年間30,415円軽減されることがわかりました。
    ◆ 平成20年3月より当研究所のホームペ?ジに討論ページを開設いたしました。
    そこで国会で論議のテーマとして繰り広げられた「道路特定財源の暫定税率」について当研究所の上記研究成果をもとに、会員の皆様方の忌憚ない個人としての 自由な意見交換、討論の場として活用していただき、そのご意見を今後の研究所の指針としても活用させていただきました。

    <研究成果>

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    第72回 景気分析と予測(2008年2月25日)

    経済予測

    経済予測 » Quarterly Report(日本)

     / DATE : 

    ABSTRACT

    「日本経済のマクロ経済分析」研究成果報告
    (主査: 稲田義久・甲南大学経済学部長・教授
    高林喜久生・関西学院大学経済学部教授 )

    当研究所のマクロ経済分析プロジェクトチームでは、在阪の大手企業・団体の若手スタッフの参加の下で研究会を組織し、予測に必要な景気の現状分析、外生変数の想定について共同で作業を行っている。
    「景気分析と予測」については、四半期ごとに年4回(2003年度までは年2回)発表している。
    2005年度より四半期予測作業において、日本経済超短期予測モデル(CQM)による、直近2四半期のより正確な予測値を取り入れている。
    2月14日の政府四半期別GDP一次速報の発表を受けた2007-2009年度の改訂経済見通しとなっている。
    ポイントは以下の通り。

    * 2007年度10-12月期実績の評価‥‥当期の実質GDP成長率(一次速報)は弱気な市場コンセンサス予測を上回り、前期比+0.9%、同年率+3.7%と2期連続のプラス成長となった。好調な新興市場への輸出と民間企業設備が成長に貢献した。

    * 2007年度、2008年度の改訂見通し‥‥2008年1-3月期経済は減速するものの、2007年10-12月期が比較的好調であったため、 2007年度の実質GDP成長率は+1.8%となろう(前回予測+1.5%から上方改訂)。2008年度の日本経済は、改正建築基準法による民間住宅の落 ち込みの影響が剥落するため民需の貢献は上昇するものの、米国経済の急減速により、景気回復のギア(輸出)が逆回転する可能性が高まる。2008年度の実 質GDP成長率予測は小幅減速の+1.6%と予測する。

    * 2009年度の見通し‥‥世界経済の回復による輸出の拡大と民間需要の回復により、2009年度の実質GDP成長率は+2.0%となろう。ただ、民間最終 消費の伸びは低迷する。エネルギー・食料価格の上昇に加え、所得環境の改善の遅れ、社会保障負担増や定率減税廃止による実質増税等が家計に影響してくるた めである。民間企業設備も2008年度前半に循環的な減速局面に入り、その影響は長引くであろう。

  • 熊坂 侑三

    今月のトピックス(2008年2月)

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    インサイト » コメンタリー

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    熊坂 侑三

    ABSTRACT

    <景気回復のギア(輸出)の逆回転を懸念?今こそ必要な内需拡大のプログラム>

    1月31日に開かれた関西社会経済研究所(KISER)主催の景気討論会「世界経済の変調と日本経済の行方」(※)は盛況で示唆に富む議論が展開 された。討論者である白川浩道氏(クレディスイス証券)の明瞭な米国経済の見通し、久貝卓氏(近畿経済産業局長)の日本経済成長戦略をめぐる議論や近畿経 済の見通しは実にinformativeであった。討論会での議論は、2008年度日本経済の見通しついて、重要な視点を与えてくれる。
    図は戦後の平均実質GDP成長率とGDP項目の成長寄与率を時代区分別に見たものである。最も印象的なのは、今回の景気回復局面(2002年2月以降) において純輸出が果たした役割である。2002-06年の実質GDP平均成長率は+1.7%と、『失われた10年』(1992-2001年)の平均成長 率+0.9%から緩やかに回復したものの、国民にとっては実感を伴わない回復となっている。実際、景気回復の中身を見ると、成長率の37.9%が純輸出に よる貢献である。すなわち、景気回復を実感したのは、家計ではなく輸出企業なのである。戦後日本経済の成長過程で、純輸出が経済成長に最も貢献した時期 は、1960年代の高度成長期や石油危機からの回復期ではなく、今回の回復期である。今、輸出市場としての米国やemerging marketの役割を見逃すことは出来ない。
    白川氏の推計によれば、今回の米国住宅バブルの崩壊による景気押し下げ効果はGDP比3%程度という。この効果が2年で現われるとして、年1.5%程度 米国景気を押し下げることになる。一方、ブッシュ大統領の提案する景気対策が成長率を1%程度引き上げるとすると、2008年の米国経済の当初の成長見通 し(1%台の後半)は差し引き0.5%ポイント程度下方修正されることになる。すなわち、1%台前半の低成長となり、厳しいリセッションに陥ることはない が、年前半には景気下押し圧力が働き、一時的にマイナス成長を経験するかもしれない。2008年度の日本経済は、米国経済の低迷により、景気回復のギア (輸出)が逆回転する可能性が高まろう。これが景気討論会から得られた第1の含意である。
    図からわかるように、石油危機からプラザ合意にかけての期間(1974-85年)では、純輸出の経済成長に対する寄与率は19.0%と今回の回復局面に つぐ高さである。石油危機による低迷から対米輸出の急拡大で景気回復の活路を見出したのがこの時代である。しかしこの景気回復は日米貿易摩擦を引き起こ し、日本経済は構造改革を余儀なくされる。この難局を克服するために内需拡大路線が議論され、「前川レポート」が作成されたのである。最近、第2の「前川 レポート」作成が議論されているが、これは正しい方向である。 規制緩和を推し進め、内需拡大のフロンティアを拡大する構造改革がもっと議論されるべきである。これには、サービス産業の生産性の上昇が決定的に重要とな ろう。これが討論会で得られた第2の含意である。
    (※)景気討論会の要旨は(財)関西社会経済研究所ホームページで2月中旬に公開予定。

    日本
    <10-12月期は高成長を予測するが、内需拡大の動向が予測上のリスク>

    2月14日に10-12月期の実質GDP成長率が発表される。最近の民間エコノミストの成長率コンセンサスは年率で1%台のようである。一方、2 月1日までの月次情報を更新した超短期予測は、10-12月期は純輸出が引き続き拡大し、内需が反転拡大するため、前期比+1.1%、同年率+4.6%と 見込んでいる。われわれの予測と市場コンセンサスは好対照であるが、見方の違いは内需拡大の程度にある。特に、民間最終消費支出と民間住宅の予測が鍵とな ろう。
    10-12月期の国内需要を見れば、実質民間最終消費支出は前期比+0.4%増加する。家計調査報告によれば、同期の実質家計消費は同+0.8%と堅調 である。ただ、今回の予測には反映されていないが、その後に発表された消費総合指数は同横ばいとなっており、民間最終消費支出は予測より低めに出る可能性 がある。仮にその要因を考慮しても、経済成長率は3%台とやはり高めに出ると見ている。
    実質民間住宅は同-7.9%と前期並みの減少を予測している。一方、実質民間企業設備は同+1.4%と2期連続のプラスとなる。実質政府最終消費支出は 同+0.4%、実質公的固定資本形成は同+2.4%、それぞれ増加する。このため、国内需要の実質GDP成長率(前期比+1.1%)に対する寄与度 は+0.6%ポイントとなる。
    財貨・サービスの実質輸出は同2.7%増加し、実質輸入は同1.0%減少する。純輸出の実質GDP成長率に対する貢献度は+0.5%ポイントとなる。
    1-3月期の実質GDP成長率については、純輸出は拡大し内需は小幅増にとどまるため、前期比+0.5%、同年率+2.1%と予測している。この結果、2007暦年・年度の経済成長率はそれぞれ+2.2%、+1.9%となろう。
    1-3月期の実質民間最終消費支出は前期比0.3%増加し、実質民間住宅は同10.1%増加する。実質民間企業設備は同0.5%減少する。実質政府最終消費支出は同0.6%増加し、実質公的固定資本形成は同横ばいとなる。
    財貨・サービスの純輸出は引き続き拡大する。実質輸出は同1.3%増加するが、実質輸入は同2.2%減少するためである。
    GDPデフレータは10-12月期に前期比-0.4%、1-3月期も同-0.8%となる。輸入デフレータが引き続き上昇し(GDPデフレータにとって は、引き下げ要因)、輸出デフレータに円高の影響(10-12月期は前期比5円程度円高)が大きく出始めており、これが全体の物価水準を押し下げているよ うである。ただ、民間最終消費支出デフレータは、エネルギー価格高騰の影響により、10-12月期に同+0.2%、1-3月期に同-0.1%となる。

    [稲田義久 KISERマクロ経済分析プロジェクト主査 甲南大学]

    米国
    <景気は急速に減速するがリセッションの兆候なし。FRBは株式市場に対する金融緩和策のアナウンスメント効果の演出に失敗>

    バーナンキ連邦準備理事会(FRB)議長が異常とも思えるほど懸念した通り、経済統計は景気のスローダウンを示し始めた。2007年10-12月 期の実質GDP成長率(年率換算)は7-9月期の+4.9%から+0.6%へ低下し、1月の雇用統計は2003 年8月以来の減少(-1万7,000人)となった。1月の失業率は前月の5.0%より0.1%減少し4.9%になったものの、1月26日の新規失業保険申 請件数は前週の30万6,000件から37万5,000件へと大幅に増加した。また1月の自動車販売は15.2百万台と2005年以来の最低水準を記録。 住宅は今もって底が見えず、12月の新規住宅販売は前期比で‐4.7%の減少。これらを受け、市場・エコノミストの間にも急速にリセッション懸念が広まっ ている。米経済はすでにリセッションに突入したとの見方もある。FRBは1月21日の緊急ミーティングで75ベーシスポイント(0.75%)の政策金利の 引下げを行い、1月29/30日のFOMCにおいて更に追加的な50ベーシスポント(0.5%)の政策金利引下げを行った。また、政府は1,500億ドル の緊急財政刺激政策の導入を検討している。
    しかし、今週の超短期予測は平均実質GDP成長率を1-3月期+1.4%(支出・所得サイドの平均。グラフ参照)、4-6月期+1.0%と予測してい る。景気は急速にスローダウンしているものの、今すぐにも2四半期続いてマイナス成長となるようなリセッションの兆候を示してはいない。
    インフレ率に関しては、今週の超短期予測は前期比+1.5%?+2.0%内と予測している。これは、FRBの許容範囲ぎりぎりのところである。景気のス ローダウンはあるものの、大幅な金融緩和によって今後インフレ圧力が増すことは確かであろう。FRBがインフレ加速懸念よりもリセッション懸念に重点を置 き、積極的に金融を緩和するのは理解できる。しかし、今回の大幅な政策金利の引下げによっても、株式市場がポジティブに反応しなかったことはFRBの失敗 である。10日間で合わせて125ベーシスポイント(12.5%)の政策金利の引下げを実施するのなら、株式市場にもっと好影響を与えるような方法があっ たと思われる。バーナンキ議長は政策金利引下げを行う時のアナウンスメント効果をうまく使うべきであった。逆に、彼はあちこちでリセッション懸念を吹聴 し、市場をリセッション懸念で洗脳してしまった。

    [熊坂有三 ITエコノミー]

  • 熊坂 侑三

    今月のトピックス(2008年1月)

    インサイト

    インサイト » コメンタリー

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    熊坂 侑三

    ABSTRACT

    <何故日本株は売られるのか??成長戦略を示せない政治状況が課題>

    今月の日本経済見通しで示したように、超短期モデルは10-12月期の日本経済について4%を超える高い成長率を予測している。一方、マーケット の見方は、例えば、1月10日に発表されたESPフォーキャスト1月調査では10-12月期の実質成長率を前期比年率+1.01%と見ている。8月?10 月までは+2%程度の予測が11月には+1.7%となり、12月?1月は更に+1%まで低下してきたのである。
    多くの11月のデータが発表されており、10-12月期のデータの2/3が発表されている現状で詳細に月次データを検証すれば、過去の15年を超える超 短期予測の経験からは、+1%というような数字は出てこない。確かに、2008年1-3月期はゼロ成長となり、景気減速を十分示唆していると思われるが、 リセッション(米国の定義では2四半期連続でマイナス成長)に陥るとは考えていない。今日のように、サービス産業のウェイトが高くなっている経済では、成 長率はマイナスになりにくい。実際、超短期予測は第3次産業活動指数を10-12月期、1-3月期とも連続で堅調なプラス成長を予測している。
    筆者の見方では、マーケットの予測は下方にオーバーシュートしていると思われる。おそらく、サブプライムローン問題に起因する日本株の低迷に大きく影響 されているといえよう。2007年1月4日に17,353.67で始まった日経平均(225)は、7月9日に一旦18,261.98まで買われたが、年末 は15,307.78で終了し、結局、年初比12.8%も下落した。先進国で株価が値下がりしたのは日本だけである。日本株は2008年に入っても 15,000を割り込み低迷を続けている。

    何故日本株は売られるのであろうか(Japan passing)。日本の金融市場が魅力に欠けるといった制度的な問題やemerging marketの成長率が非常に高いといった要因もある。しかし、基本的には日本経済の成長戦略が見えてこない点がきわめて重要と考える。日本の株価市場へ の投資主体の60%を超える外国人投資家にとって、人口減少下で成長戦略を示すことのできない日本経済などにはまったく興味がないといえよう。重要なの は、生産性の向上を最優先課題とする成長戦略である。安倍政権の発足時に喧伝されたあの新成長戦略(いわゆる、上げ潮路線)は一体どうなったのであろう か。混迷する政治が、内向きで成長戦略に背を向けるような状況をつくり出しているとするならば、由々しき事である。

    日本
    <10-12月期は高成長を予測、マーケットは悲観的過ぎる>

    今回の超短期モデル予測(支出サイド)では、ほぼ11月の月次データを更新している。10-12月期の経済を説明するデータの2/3が出揃ったこ とになる。同期の実質GDP成長率は、内需が拡大に転じ純輸出も大幅に伸びるため、前期比+1.1%、同年率+4.6%と予測される。先月(+4.0%) から小幅の上方修正である。マーケットコンセンサスの同年率1.01%(ESPフォーキャスト1月調査)に比べ非常に高い予測である。以下、超短期モデル 予測の特徴を説明しよう。
    10-12月期の国内需要を見れば、実質民間最終消費支出は前期比+0.4%となる。実質民間住宅は同-9.8%となり、実質民間企業設備は 同+1.4%となる。実質政府最終消費支出は同+0.3%となり、実質公的固定資本形成も同+0.9%となる。この結果、国内需要の実質GDP成長率(前 期比+1.1%)に対する寄与度は+0.6%ポイントとなる。
    民間住宅は大幅な落ち込みを予測しているが、民間最終消費支出は意外と高い伸びとなっている。10-11月の消費総合指数は7-9月期平均より0.2% 高く、民間消費の堅調な伸びを予測しているのである。民間企業設備、公的固定資本形成もプラスの伸びを示しており、民間住宅は確かに大幅なマイナスとなろ うが、経済に占めるウェイトは10%以下で大きくないから、国内需要の伸びは意外と高いと見込んでいる。
    加えて、外需が貢献しそうである。財貨・サービスの実質輸出は同3.2%増加し、実質輸入が同0.6%減少する。このため、純輸出の実質GDP成長率に 対する貢献度は+0.6%ポイントとなる。注意すべきは、通関ベース貿易収支(季節調整値)の10-11月平均は7-9月期平均を2.5%下回っている が、輸入価格が大幅に上昇し、輸出価格は低下していることから、実質の純輸出は相当経済成長率を引き上げているのである。この結果、2007暦年の実質 GDP成長率は+2.2%と予測する。
    1-3月期の実質GDP成長率については、純輸出が小幅拡大するが内需の縮小が相殺するため、前期比-0.0%、同年率-0.0%と予測している。先月の予測(0.0%)と横ばいである。2007年度の実質GDP成長率は+1.8%と予測する。
    物価トレンドを見れば、GDPデフレータは、10-12月期に前期比-0.2%、1-3月期も同-0.3%と引続きデフレを予測している。民間最終消費支出デフレータは、10-12月期に同+0.1%、1-3月期に同-0.2%となる。
    主成分分析モデルは、10-12月期の実質GDP成長率を前期比年率+2.8%と予測している。また1-3月期を同+1.6%とみている。GDPデフレータは10-12月期に前期比-0.1%、1-3月期に同-0.2%とみている。
    この結果、支出サイドと主成分分析モデルの実質GDP成長率(前期比年率)の平均は、10-12月期が+3.7%、1-3月期が+0.8%となる。 GDPデフレータは10-12月期が前期比-0.2%、1-3月期も同-0.3%である。両モデルの平均で見れば、日本経済は10-12月期に比較的高成 長を示すものの、1-3月期は停滞局面に入ると予測している。10-12月期の高成長は景気減速前の最後の輝きかもしれない。

    米国

    2008年の初仕事日(1月2日)にダウ平均株価は1.67%と大幅に下落した。これは過去における新年の初仕事日のダウ下落において史上7番目 の落ち込み幅であり、1983年1月3日に1.9%下落して以来の大幅な下げとなった。この理由は市場にリセッション懸念が急速に広がったことである。同 日に発表された12月のISM(全米供給管理協会)の製造業指数が50を大きく下回る47.7となり、製造業リセッションを示唆し、また石油価格は取引中 に心理的な天井である100ドルを一度超えた。さらに、市場のリセッション懸念に追い討ちをかけたのが12月の雇用統計の結果である。雇用増が 18,000人と市場予想の70,000人を大幅に下回り、失業率も11月の4.7%から5.0%へと大きく上昇した。
    1月4日の超短期モデル(需要サイド)は、2007年10-12月期の実質GDPの伸び率を前期比年率+5.3%と非常に高く予想している。これは10 月、11月と輸入価格がそれぞれ前月比で+1.4%、+2.7%と大きく伸びたことにより、NIPA(米国国民所得統計)の実質輸入が20%も低下すると 予測されていることによる。もっとも、11月の貿易収支と12月の輸出入価格の更新によって支出サイドからの実質GDP予測は大きく修正されると思われ る。このように輸出入部門の予測に大きな不確実性が残るとき、景気判断には実質総需要、実質国内需要、実質最終需要(GDP?在庫?純輸出)をみるのが良 い(グラフ参照)。
    このグラフが示すように、実質総需要、実質国内需要や実質最終需要の伸びで見た景気は9月後半から減速してきており、12月14日の予測では経済 成長率はゼロとなり超短期予測はこの時点でリセッション懸念のシグナルを出している。しかし、その後景気はリバウンドし、最近では1.5% – 2.0%の経済成長率(2007年10-12月期)を示している。また、2008年1-3月期においても2%程度の経済成長率を予測している。超短期予測 からすれば、リセッション懸懸念のピークは12月半ばであり、すでに通りすぎたといえる。
    (注:毎月の超短期予測は、通常、実質GDPの成長率予測の動態から景気を診断している。ただ実質GDPの構成項目である実質純輸出の予測には困難 が伴う場合が多い。名目純輸出の予測は大きく変動することはないが、原油価格の高騰などで輸入デフレータが毎月大きく変動する結果、実質純輸出の予測も大 きな変動をこうむる。このような困難を避けるために、GDPから純輸出を除いた総需要やさらに在庫品増加を除いた最終需要の伸びで経済の実力を測ることが ある。)

    [熊坂有三 ITエコノミー]

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    第71回 景気分析と予測(2007年11月20日)

    経済予測

    経済予測 » Quarterly Report(日本)

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    ABSTRACT

    「日本経済のマクロ経済分析」研究成果報告
    (主査: 稲田義久・甲南大学経済学部長・教授
    高林喜久生・関西学院大学経済学部教授 )

    当研究所のマクロ経済分析プロジェクトチームでは、在阪の大手企業・団体の若手スタッフの参加の下で研究会を組織し、予測に必要な景気の現状分析、外生変数の想定について共同で作業を行っている。
    「景気分析と予測」については、四半期ごとに年4回(2003年度までは年2回)発表している。
    2005年度より四半期予測作業において、日本経済超短期予測モデル(CQM)による、直近2四半期のより正確な予測値を取り入れている。
    11月13日の政府四半期別GDP一次速報の発表を受けた2007-2008年度の改訂経済見通しとなっている。
    ポイントは以下の通り。

    * 2007年度7-9月期実績の評価‥‥当期の実質GDP成長率(一次速報)は前期比+0.6%、同年率で+2.6%となり、2期ぶりのプラス成長となっ た。4-6月期の同▲1.6%に対する反動とみられる。好調な輸出と適度な民間最終消費の伸びに支えられた。設備投資は3期ぶりのプラスとなった。

    * 2007年度の改訂見通し‥‥2007年度の実質GDP成長率は+1.5%となろう(前回予測+2.3%から下方改訂)。改正建築基準法施行による民間住 宅の落ち込みで民間需要の寄与度は低下するが、純輸出の伸びによる外需の好調が支える形となっている。2007年度後半は、これまで景気回復の牽引役で あった民間最終消費、民間企業設備、輸出のダウンサイドリスクの高まりに加え、新たなリスクとして民間住宅が加わった。

    * 2008年度の改訂見通し‥‥2008年度の実質GDP成長率は前年度の反動で+2.2%へ加速する。民間住宅および建設投資減少の影響が剥落し、民間最 終消費と民間企業設備が緩やかに回復するためである。米国経済は住宅投資調整が終わる2008年半ばまで潜在成長を下回る水準で推移するが、中国や新興国 が高成長を維持するため、輸出は5.2%と緩やかな伸びとなろう。輸入は内需の伸びが減速するため+3.1%と低調である。

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    リピーター観光客育成に向けた観光プロモーション策

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    国民健康保険料(税)の水平的不平等性

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    地方公務員人件費はどこまで減らせるのか-コーホート要因法に基づく定員管理シミュレーション分析-

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    2007年版関西経済白書「関西 その現況と次なる課題」

    研究プロジェクト

    研究プロジェクト » 2007年度

    ABSTRACT

    [ 概 要 ]
    6月1日に、2007年版『関西経済白書』の報告会を実施しました。当研究所では、1994年度より毎年発行していた『関西活性化白書』を今年度 より『関西経済白書』と改称し、関西経済の動向、並びに直面している課題についての分析・提言を拡充しています。本白書が、関西経済理解のための必読文献 となることを目指し、今後とも内容の一層の充実に努めてまいります。

    <構 成>
    第1章 関西経済の現況と見通し
    第2章 経済復活への課題と新たな挑戦
    第3章 改革を求められる関西の自治体
    第4章 関西のプロジェクトの動向
    第5章 グラフで見る関西
    第6章 関西年表

    以下では、報告会当日に行われた当研究所所長の本間正明による講演要旨、並びに次の3つの章(第2章、第3章、第4章)の概要について説明する(詳細資料は別紙参照)。

    * 講演「関西経済の新たな挑戦」(要旨) 関西社会経済研究所所長 本間正明
    6月1日白書報告会のおける講演要旨。
    * 第2章 経済復活への課題と新たな挑戦
    本年の特集テーマとして、バブル崩壊後の長期低迷からようやく抜け出した関西経済の軌跡を振り返り、人口減少と高齢化という大きな環境変化の中で新たに取り組むべき課題を分析している。
    * 第3章「改革を求められる関西の自治体」
    当研究所が2006年度に行った自治体に関する研究成果のエッセンスをまとめたもので、関西経済の復活のためには、公共部門の改革は不可欠のテーマであるとの基本認識に基づいている。
    * 第4章「関西のプロジェクトの動向」  1987年から毎年実施している調査。昨年の関西のプロジェクトの動きと内容を分析している。

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    「抜本的税制改革に向けた調査研究」中間報告 (2007年9月)

    研究プロジェクト

    研究プロジェクト » 2007年度

    ABSTRACT

    ((社)関西経済連合会委託調査研究)

    主査:
    跡田直澄 慶應義塾大学商学部教授
    担当:
    前川聡子 関西大学経済学部准教授

    緩やかな経済成長を続ける日本経済ではあるが、実際の成長率は2%程度と低迷している。経済構造改革は着実に進み、法人税収等にはその成果が明確に現れ ている。一方、政府の財政構造改革はその端緒についたばかりであり、その成果はまだほとんど現れていない。にもかかわらず、先の参議院選挙の結果を勘案す ると、構造改革路線の一時的後退も予想されるところである。  しかしながら、日本経済の再生には政府の構造改革は不可欠である。肥大化した財政のスリム化により、民間部門の活性化をはからなければ 21世紀の高齢社会は乗り切れない。この点からみれば、今、取り組まなければならない課題は、やはり、歳出の徹底的な削減であり、同時に民間活力の増強に むけた税制の再構築である。そして、その結果を踏まえて、超高齢社会を乗り切るための次なる改革を考えることである。 そこで、本受託研究では、総合的な 財政改革とマクロ経済パフォーマンスとの関係をシミュレーション分析を踏まえて検討し、改革の必要性とそのあり方を模索している。さらに、財政改革の中で も税制については、経済のさまざまな側面に与える影響を考慮しながら、その抜本的改革のあり方を議論している。

    この中間報告では、
    第1章  2011年度までの財政の状況を予想しながら、取り組むべき改革を明らかにする。
    第2章  財政収支を長期的に展望しながら、次なる改革をどうすべきかの検討資料を提示する。

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    歳出・歳入一体改革が地方財政に与える影響

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    「受益と負担の観点から見た税制と社会保障制度改革に関する研究・研究」成果報告 (2007年4月)

    研究プロジェクト

    研究プロジェクト » 2007年度

    ABSTRACT

    ((社)関西経済連合会委託調査研究)
    (主査: 橋本恭之・関西大学経済学部教授
    アドバイザー:跡田直澄・慶應義塾大学商学部教授)

    わが国の地方税制が法人課税に過度に依存している状況は是正されるべきとの見方に立ち、地方税としての法人課税の見直しの方向性について検討した。 ま た、19年度税制改革に向けて減価償却制度の見直しが課題として挙がっており、特に償却可能限度額・残存価額の引き下げを行った場合、企業の設備投資にど のような影響を与えるかを研究した。

    成果報告書の構成は以下の通り。

    1. 地方法人課税の見直しについて
    2. 減価償却制度見直しによる影響について
    3. 2006年将来人口推計と社会保障制度の受ける影響

    『受益と負担の観点から見た税制と社会保障制度改革に関する調査・研究』

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    2007年版関西のプロジェクト動向調査

    研究プロジェクト

    研究プロジェクト » 2007年度

    ABSTRACT

    この記事の詳細は、下記PDFよりご覧いただけます。

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    政令指定都市の事業評価 -経済性、効率性、有効性の視点による-

    研究プロジェクト

    研究プロジェクト » 2007年度

    ABSTRACT

    「政令市事業評価」研究会成果報告

    主査:
    新川達郎・ 同志社大学大学院総合政策科学研究科教授
    委員:
    中川幾郎・ 帝塚山大学法政策学部教授
    稲継裕昭・ 大阪市立大学法学部教授(当時)、
    早稲田大学政治経済学術院(大学院公共経営研究科)教授(現在)
    初谷 勇・ 大阪商業大学総合経営学部教授
    前川聡子・ 関西大学経済学部准教授

    当研究所ではこれまで、地方分権を担う自治体の経営力と財務力について様々な角度から評価活動を続けてまいりました。その一環でこのほど、標記の研究成果を取りまとめました。
    (1)この公共サービスは税で賄うべきなのか? (2)税で賄うとした場合、官で担う方がよいのか、民で担う方がよいのか? (3)民で担うとしても、営 利目的の企業なのか? NPOなのか? 特殊法人なのか???税を有効に使うには絶えずこの3段階の問答が必要です。税金の使途=官が担うという必然性は 薄いといえます。経済性、効率性、有効性の実現にはどの事業形態が最適なのかを、行政側も市民も絶えず問い続けなければなりません。
    本研究は、これらの問いに対する判断材料としての「行政事業効率性・有効性評価」の手法を開発することを目的としました。
    研究内容は、政令市が運営している主要な3つの公共サービス事業分野(ゴミ収集処理事業、小学校給食事業、官民の協働事業・パートナーシップ)を取り上げ て、事業運営の経済性や効率性を評価しましたが、研究成果の特徴としては効率性を有効性(社会性やサービス面)との対比で評価した点です。さらに、効率 性、社会性、有効性を評価するための新たな指標を導入し、市民にとってわかりやすい評価が可能なように可視的な表示も試みました。
    その結果として関西の3政令市の事業運営の非効率性が浮き彫りになりました。

    『政令指定都市の事業評価?経済性、効率性、有効性の視点による?』

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    文明史への挑戦 少子高齢化時代の日本、そして世界へ

    研究プロジェクト

    研究プロジェクト » 2007年度

    ABSTRACT

    「少子高齢化研究会」成果報告
    主査:
    鷲田清一 大阪大学総長
    委員:
    上原恵美 京都橘大学文化政策学部教授
    山極寿一 京都大学大学院理学研究科教授
    小浦久子 大阪大学大学院工学研究科准教授
    中西 寛 京都大学大学院法学研究科教授
    玄田有史 東京大学社会科学研究所教授

    人口減少問題を含め少子高齢化への時代変化は、個人が一生の中で経験する結婚、子育て、仕事、介護などの問題から、家族、社会、国家といった人間社会の ありようを含め、とてつもなく大きな問題の到来が予想されるものである。この文明史を画するともいえる変化を前に、現在のわが国の取り組みは、年金等財政 問題や、応急処置的な人口対策にとどまっている。また、各界の議論も医療や男女共同参画など少子高齢化の一面に焦点をあてたものが中心である。本研究は、 これら各論的討論を超え、少子高齢化を人類の歴史にとっての新しいステージと捉え、長期的スコープの中で根本的、かつ多面的な視点から取り組むものであ る。具体的には、文化、哲学、生態学、労働経済、環境デザイン、国際政治の各分野の専門家からなる学際的研究により、実り多い少子高齢化自体への英知と勇 気を導こうとするものである。
    なお、今回の研究事例をもって平成16年度から続いた「少子高齢化に伴う課題に関する研究会」は解散し、今後は新たな課題をテーマとしてスタートしたい。また、この研究事例はサントリー文化財団の助成を受けて実施した。

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    理想は共感共生型『和力(わりき)社会』  関西には大きなポテンシャル 三大都市圏意識調査

    研究プロジェクト

    研究プロジェクト » 2007年度

    ABSTRACT

    日本経済の回復が6年目を迎える中、様々な構造改革のあり方や将来の少子高齢化を踏まえた政策について多くの議

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    第70回 景気分析と予測

    経済予測

    経済予測 » Quarterly Report(日本)

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    ABSTRACT

    「日本経済のマクロ経済分析」研究成果報告
    (主査: 稲田義久・甲南大学経済学部長・教授
    高林喜久生・関西学院大学経済学部教授 )

    当研究所のマクロ経済分析プロジェクトチームでは、在阪の大手企業・団体の若手スタッフの参加の下で研究会を組織し、予測に必要な景気の現状分析、外生変数の想定について共同で作業を行っている。
    「景気分析と予測」については、四半期ごとに年4回(2003年度までは年2回)発表している。 2005年度より四半期予測作業において、日本経済超短期予測モデル(CQM)による、直近2四半期のより正確な予測値を取り入れている。
    8月13日の政府四半期別GDP一次速報の発表を受けた2007-2008年度の改訂経済見通しとなっている。
    ポイントは以下の通り。

    * 2007年度4-6月期実績の評価・・・・当期の実質GDP成長率(一次速報)は前期比+0.1%、同年率で+0.5%となり、10期連続のプラス成長と なった。2006年10-12月期の同+5.4%、2007年1-3月期の同+3.2%から2期連続の減速となった。民間企業設備と民間最終消費が成長に 貢献した。

    * 2007年度の改訂見通し・・・・2007年度の実質GDP成長率は+2.3%となろう(前回予測+2.2%から上方改訂)。2006年度の同+2.1% から加速しているようにみえるが、成長のゲタが1.4%あり、実態は景気減速・停滞の感が強い。また、これまで景気回復の牽引役であった民間最終消費、民 間企業設備、輸出のダウンサイドリスクが高まっている。

    * 2008年度の改訂見通し・・・・2008年度の実質GDP成長率は+2.5%へ加速する。雇用や所得の改善により民間最終消費が拡大し、景気の牽引役が 民間企業設備から民間最終消費に移行する。輸出は世界経済の回復が緩やかにとどまるため、輸入は内需の伸びが減速するため、ともに伸び率は鈍化する。純輸 出の寄与度は2007年度並みとなろう。

    ※なお、今回はリスク分析の一例として、株安・円高のシミュレーションを付け加えた(「第70回 景気分析と予測」16ページ表7参照)。

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    第69回 景気分析と予測

    経済予測

    経済予測 » Quarterly Report(日本)

     / DATE : 

    ABSTRACT

    「日本経済のマクロ経済分析」研究成果報告
    (主査: 稲田義久・甲南大学経済学部長・教授
    高林喜久生・関西学院大学経済学部教授 )

    当研究所のマクロ経済分析プロジェクトチームでは、在阪の大手企業・団体の若手スタッフの参加の下で研究会を組織し、予測に必要な景気の現状分析、外生変数の想定について共同で作業を行っている。
    「景気分析と予測」については、四半期ごとに年4回(2003年度までは年2回)発表している。 2005年度より四半期予測作業において、日本経済超短期予測モデル(CQM)による、直近2四半期のより正確な予測値を取り入れている。
    5月17日の政府四半期別GDP一次速報の発表を受けた2007-2008年度の改訂経済見通しとなっている。
    ポイントは以下の通り。

    * 2007年度1-3月期実績の評価‥‥当期の実質GDP成長率(一次速報)は前期比+0.6%、年率換算で+2.4%となり、9期連続のプラス成長となっ た。2006年10-12月期の同+5.0%より減速したものの、潜在成長率(1.5-2.0%程度)を2期連続で上回った。需給ギャップは縮小傾向にあ り、デフレに後戻りする恐れはないと判断できる。

    * 2007年度の改訂見通し‥‥足下の好調を織り込み、2007年度の実質GDP成長率を前回の+1.8%から+2.2%に上方改訂した。2006年度の同 1.9%から加速しているようにみえるが、好調な民間需要と純輸出に支えられた2006年度下期の高成長により、2007年度出発時点において成長のゲタ が1.2%あり、実態は成長減速といえる。また、民間消費や企業設備の減速、米国経済回復の後ずれによる輸出の伸び悩みなど、ダウンサイドリスクも高まっ ている。

    * 2008年度の改訂見通し‥‥賃金の緩やかな拡大により民間最終消費は回復力を増し、民間企業設備投資の一時的な調整も終わり拡大に転じる。米国経済も 3%近い成長に戻るため世界経済は拡大に転じ、日本の輸出も増加基調に転じる。2008年度の実質GDP成長率は2.4%へ加速する。また、原油価格の変 動等により、デフレ脱却は2008年度に持ち越す。