研究成果

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研究プロジェクト : 2003年度

「アジア太平洋経済展望」と「地域発展戦略」を主軸に、アジア太平洋地域(関西を含む)の社会・経済動向や政策等に関する研究を行っています。

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    州制の導入および地方分権改革と地域経済の活性化に関する調査研究 (2004年3月)

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    ABSTRACT

    (内閣府経済社会総合研究所 平成15年度委託調査)

    関西社会経済研究所は、平成15年度において内閣府経済社会総合研究所より『持続可能な成長経路への戦略に関する国際共同研究調査(国内等研究グルー プ)』)*を受託し、その一環として、「州制の導入および地方分権改革と地域経済の活性化に関する調査研究」(委員長 齊藤 愼大阪大学大学院経済学研究 科教授)を実施した。本研究の趣旨以下の通り。

    【趣旨】
    本研究は、財政学・公共経済学のみならず、計量経済学や金融論など経済学の多岐にわたる分野の研究者と研究所のスタッフが集まり、州制の導入および地方 分権改革と地域経済の活性化に関して1年間をかけて調査研究した成果である。その結果、これまでに行われた数多くの提言・研究等より、一歩踏み込んだ研究 と豊富な情報を提供することができたのではないかと期待している。
    地方分権のあり方については、これまでも様々な提言等がなされてきたが、近年、「州制」の導入に関する議論が盛んである。また、以前のような議論にとど まらず具体的な動きもみられる。東北の青森、岩手、秋田3県合併の動きや、大阪都構想など、地域により様々な検討が行われており、また北海道では道州制特 区を活用して、権限、財源の移譲、出先機関の統合などに取り組みつつある。その狙いの重要な部分は、地域独自の政策を立案遂行できる行政メカニズムを創出 して、地域経済の活性化を図ることにある。
    これまで、日本の政府間関係は中央集権的であると指摘されてきた。日本経済の沈滞状況を引き起こしている一因は中央政府による規制の強さにあり、政府間 関係における規制の問題もその一部である。このことが地域経済活性化への障害となり、地域の自立を妨げているのではないかと思われる。
    そこで、本研究では、まず、基礎的な調査として、市区レベルのデータに基づく関西経済空洞化の数量的な分析を行い、労働力移動の円滑化による域内全体の労働生産性向上の可能性について研究した。
    次いで、各地域から見た「州制」の利害得失を具体的に検討し、これが今後の地域活性化のための有力な方策であることを検証した。さらに関西地域をモデル として州制導入の効果を経済・財政面からシミュレーションの手法によって明らかにし、関西地域以外の地域についても試算を行った。また、日本での「州制」 導入に際する問題点を調査するために、ドイツの事例を研究し、財政調整と地域の経済自立などについて研究した。
    「州制」導入によって地域経済活性化が期待されるが、現状の地方行政制度における産業政策を総括し、過去の政策評価、地域経済への影響を分析した。その結果として、地域の連携・広域化の必要性を明らかにした。
    このような経済的分析、財政学的分析に加えて、金融のあり方の側面からも調査を行ったことが本研究の大きな特徴である。財政部門を分析する際に金融は、 ともすれば捨象されがちであるが、「州制」導入を議論する際には、この問題は避けて通れない。地方債への資金供給はどのようになされるのか、また地域金融 システムの変革の方向と、州制導入後の日本の地域金融システムの構想についても検討した。
    このような調査研究を実施することで、これまで理念型で語られることの多かった州制の効果について具体的に示すことが可能になり、より現実的な議論ができる土俵を提供できることを期待している。

    * 国際共同研究の成果は内閣府hpでご覧いただけます。
    http://www.esri.go.jp/jp/prj-rc/macro/macro15/syousai2.html
    http://www.esri.go.jp/en/prj-rc/macro/macro15/syousai2-e.html
    http://www.esri.go.jp/jp/prj-rc/kankyou/kankyou16/syousai.html
    http://www.esri.go.jp/en/prj-rc/kankyou/kankyou16/syousai-e.html

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    税財政および社会保障制度の総合的改革に関する研究 (2004年3月)

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    ABSTRACT

    関西経済連合会よりの委託調査
    (主査:帝塚山大学経済学部教授 森口親司氏 )

    年金制度の問題は国民的関心事である。年金、医療保険を中心とした社会保障制度は、国民が安心でき、企業の活力を削がず、持続可能なものでなければならない。
    本研究では、年金制度について、負担と給付のあり方、経済成長、歳出、社会保障費の見通しのもとでの国民と企業負担について理論的に検討した。具体的に は、委託者である関西経済連合会の年金改革に対する提言(歳出を抑制し、基礎年金には消費税を充てる)のケースについて厚生労働省案のケースと比較しつ つ、シミュレーションを行い、その妥当性を検証した。

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    小泉内閣に望む景気政策・提言 (2003年12月)

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    ABSTRACT

    持続的景気回復をビッグプッシュする(後押しする)ために?
    「デフレ下のマクロ政策研究会」
    主査:北坂真一(同志社大学経済学部教授)
    (主査: 齊藤 愼・大阪大学大学院経済学研究科教授)

    当研究所では国家的重要課題の研究に取り組んでいる。その一環として平成15年度、「デフレ下のマクロ政策研究会(主査:北坂真一同志社大学経済学部教 授)」を設け、金融不安、財政窮迫のなかで、いかにして、金融・財政政策などマクロ政策が景気の持続的拡大に貢献できるかについて研究を続けてきた。以下 は本研究会にて平成15年12月3日に記者発表した「小泉内閣に望む景気政策・提言」の要点である。

    提言のポイント

    来秋の米国大統領選挙をひかえ再び米国の円高圧力によって、輸出の先行きが懸念されるなど不安も多い。景気の持続的な回復は日本再生の抜本策である構造改 革を成功させるためにも必要不可欠である。このため財政金融等マクロ政策的には金融不安、厳しい財政難の中でも、せっかく芽の出てきた景気回復の腰を折ら ない持続的回復に最大限配慮した政策が望まれる。そこで私どもは持続的回復をビッグプッシュする提案を下記の通りとりまとめた。

    1. 為替・金融政策
    1)当面、急激な円高に対しては、積極的に為替介入を実施する。
    2)将来的には、人民元などドルに連動しているアジア諸国の通貨制度の変更を促す。
    3)金融政策については、現在の量的緩和政策を維持し、合わせて積極的なデフレの解消や円高の悪影響を取り除くために「インフレ率がプラス2%になるまで量的緩和を継続する」とのコミットメントを行う。
    4)量的緩和政策の安定的な終了を目指して、将来の出口政策を今から検討する。
    2. 財政政策
    1)税制改正について、競争力強化のために次の法人課税改革を実施する。
    (ⅰ)減価償却制度における現在10%の残存価格をゼロにする。
    (ⅱ)欠損金の繰越期間を5年から7年にする。
    (ⅲ)固定資産税において償却資産に課税することを止める。
    2)財政支出の配分の重点を、従来型公共投資からセーフティネット、バリアフリーの促進、子育て支援策などに移す。
    3)16年度予算で導入されるモデル事業、政策群の手法を大胆に拡充する。
    3. 金融システム・資金循環
    個人や海外部門の国債保有を増すために、個人向け国債の満期について2年や5年ものなど多様化し、発行頻度も年4回から毎月にする。また、外貨建ての国債を発行する。
    2)証券投資の魅力を高めるために、「株式投資版マル優(少額貯蓄非課税制度)」を創設する。また、個人が保有する複数の株式投資信託や株式の譲渡損益や配当金を通算して申告できるようにする。

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    「三位一体改革」への緊急提言 (2003年11月)

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    ABSTRACT

    「国・地方の行財政健全化に関する研究」研究成果報告
    (主査: 齊藤 愼・大阪大学大学院経済学研究科教授)

    地方分権については、当研究所でも最重要課題の一つと位置づけて、長年研究を重ねてきた。国庫補助負担金削減・税源移譲・交付税見直しの「三位一体改 革」こそが、「真の分権型社会」への移行に直結する、21世紀の大改革であると受けとめて、平成15年度の重要な研究活動として「国・地方の行財政健全化 に関する研究会」(主査:齊藤愼大阪大学大学院経済学研究科教授)を立ち上げた。この研究会では、昨今の経済財政諮問会議や地方自治体をはじめとする各界 の有益な議論・提案をも考慮に入れつつ、実行可能で具体的な「三位一体改革」のあり方について検討を行ってきた。もとより平成18年度までの「改革と展 望」の期間は、地方の「自己決定・自己責任」に基づく「真の分権型社会」の実現を左右する、極めて重要な期間である。こうした問題意識の下に、今般、「三 位一体改革」の加速に向けて緊急提言を行うこととした(平成15年11月25日記者発表)。提言のポイントは以下のとおりである。

    * 地方分権実現のために、三位一体改革を計画的に実現することにより、国と自治体の財政の自由度拡大と効率化を断行する。
    * 特に平成18年度までの3年間に実現すべき姿を『マーク1』とし、①奨励的補助金先行型で補助金4兆円削減、②基幹税を中心とした3兆円の税源移譲(平成 17年度には消費税1%を地方に移譲)、③平成18年度までの3年間の具体的なスケジュール(工程表)の作成・実施 を推進する。
    * 新たな地域間財政調整の構築のため、抜本的な地方交付税改革を検討する機関を早急に設ける。
    * 平成19年度以降の第2段階にあっては、補助金の大半を削減し、税源移譲についても『マーク1』に対応して、自治体の効率化努力を前提に、その8割を目処に移譲することを『マーク2』として掲げ、改革を段階的かつ継続的に進める。

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    阪神タイガース優勝の経済効果を検証する

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    地方分権”三位一体改革”についての有識者見解集 (2003年6月)

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    ABSTRACT

    平成15年6月2日(財)関西社会経済研究所担当 宮原

    ●趣旨
    地方分権に向け、三位一体の改革論議(補助金の廃止・縮減、交付税の改革、地方への税源移譲)が、それぞれ対立点を抱えながらも大詰めに近づいた。 この改革は、地方分権への大きな一歩であるが、論議の結果によっては、逆に、後退、スケジュールの遅れにもなりかねい恐れもある。関西は地方分権において 学界・経済界等各界あげて全国を先導してきた。こうした背景もあり、今回、急遽、本問題についての有識者の見解をとりまとめたものである。これが、地方分 権のための三位一体の「真の改革」に貢献することを期待するものである。(有識者の見解収集期間:5月22日?5月30日)

    ●見解をお寄せ頂いた有識者(順不同)
    新川達郎 同志社大学大学院総合政策科学研究科長・教授
    中川幾郎 帝塚山大学大学院法政策研究科教授
    森信茂樹 政策研究大学院客員教授
    林宏昭 関西大学経済学部教授
    林宜嗣 関西学院大学経済学部学部長・教授
    齊籐愼 大阪大学大学院経済学研究科教授
    田中英俊 同志社大学大学院総合政策科学研究科客員教授
    知原信良 大阪大学大学院法学研究科教授
    大住荘四郎 新潟大学経済学部教授
    長谷川裕子 関西経済連合会産業地域本部地域グループ次長
    岸秀隆 監査法人トーマツ代表社員・公認会計士
    上村多恵子 京南倉庫株式会社代表取締役

    ●有識者見解の要約 (文責:事務局)

    * 新川達郎 同志社大学大学院総合政策科学研究科長・教授
    ・ 三位一体改革は国と地方の財政規律の確立であり、地方自治体の自己決定・自己責任体制の強化である。
    ・ 現在の改革論議には、それが目指す新たな社会像が見えない。成熟、低成長、少子高齢化のなかでの地域社会をセフティネットにした社会像としての分権化社会の創造と言う視点が大切。
    ・ 基本的なことよりも、増税ありき、補助金・交付金の削減先行がまかり通っているのは問題。改革の議論の仕方が問題。
    ・ 地方自治の財政自主権を保障する改革が必要。

    * 中川幾郎 帝塚山大学大学院法政策研究科教授
    ・ 地方自治体の非効率と国依存体質の原因は、中央集権支配に基づく補助金・交付金システム。
    ・ 税財源の委譲がなければ、地方の自己決定・自己選択は絵に描いた餅。財政窮迫とは別次元の問題。
    ・ 財政調整機能は簡素な方式にし、基本的には共同税を主に構成にすべき。

    * 森信茂樹 政策研究大学院客員教授
    ・ 危機的な財政赤字を踏まえ先ず、国・地方を通じた効率的な税の使い方を考えるべき。
    ・ 補助金を通じた国の関与・規制は原則撤廃。公共事業では、国の補助事業を廃止・縮減。
    ・ 地方の財政収支尻を保障する「交付税制度」そのものを廃止し、自治体間の調整は、一人当たり税収の均等化という客観的な調整に改め、その規模も縮小。
    ・ 補助金・交付税の削減によって確保される財源をもとに、地方へ税源移譲する。過去の国の債務(公共事業の国債充当分)も、その一部を国から地方へ移譲。
    ・ 財政諮問会議のような政府レベルの論議に、当事者の自治体の責任者を出席させ、効率化の具体的な数値をコミットさせることが必要。自治体の行政サービスの無駄は国をはるかに超える。
    ・ 三位一体改革、は各省、総務省、財務省、地方公共団体が一両づつ損をする「四方一両損」の改革で、最終的には、住民が受益するという改革であるべき。

    * 林宏昭 関西大学経済学部教授
    ・ 国庫支出金の改革では、事業の責任、財政的責任が曖昧な現状を見直すべき。国庫負担の基準を施設や職員数ではなく、人口、高齢者、児童など財政需要を中心に改めるべき。
    ・ 税源移譲として、消費税収の地方への配分割合を高め、所得税減税と合わせた所得割住民税の比例化を検討すべき。
    ・ 「地域のための負担」という住民意識、「住民の負担による行政」と言う行政側意識の確立が大切。

    * 林宜嗣 関西学院大学経済学部学部長・教授
    ・ 地方財政の効率化と地方分権改革は別個の問題。三位一体は同時並行で進めるべき。
    ・ 地方の歳出削減と地方交付税の縮減は改革のゴールであり、手段ではない。
    ・ 中央集権の実体をきっちり押さえた上での改革案でなければ、三位一体は迷走。

    * 齊籐愼 大阪大学大学院経済学研究科教授
    ・ 大きな改革の場合、マクロや国民生活へのメリットを明らかにすべき。
    ・ 財源難の下で地方分権を実現するには、受益と負担がキーワード。歳出水準を調整するか、あるいは負担水準を調整するかといういわゆる「限界的財政責任」(現在これは専ら地方債に依存)を明確にすべき。

    * 田中英俊 同志社大学大学院総合政策科学研究科客員教授
    ・ 地方分権が真に実体を持つには、国から自主財源を移管し地域が住民・企業・NPOとも一体となり自らの責任で政策の立案・遂行ができるようにすべき。

    * 知原信良 大阪大学大学院法学研究科教授
    ・ 三位一体は同時決着すべき。
    ・ 全国共通の固有財源と地方独自の自主施策の両方が必要。単に国からの税源移譲だけを求めていたのでは国民の理解が得られない。

    * 大住荘四郎 新潟大学経済学部教授
    ・ 歳出の削減と増税の具体的目標を設定する。
    ・ 優良自治体と一般自治体に振り分け、原則、優良自治体への国庫補助は撤廃、交付金は大幅削減。交付金の算定基準も人口などに局限する。
    ・ 将来、優良自治体になれなかった自治体は窓口機能のみをのこし、一般事務は都道府県がになう。

    * 長谷川裕子 関西経済連合会産業地域本部地域グループ次長
    ・ 財政改革優先の考えは問題。三位一体は地方の自立・分権改革が目的。
    ・ 中央集権そのものが財政需要を肥大化。
    ・ まず交付税を改めるべき。交付税税源は地方に移譲し、新たに、住民に見える財政調整の仕組みを構築すべき。

    * 岸秀隆 監査法人トーマツ代表社員・公認会計士
    ・ 地方公共団体における受益と負担の明確化が地方分権改革の目的。
    ・ 義務教育はナショナルミニマムであり国庫が負担しても良い。
    ・ 地方共同税の創設は地方の独自財源としての性格が明確になるので良い。
    ・ 財政調整交付金を恒久的措置とする場合は、「国が法令で一定の行政水準の維持を義務づけている事務を国が保障するための機能」に限定すべきである。
    ・ 「国税、地方税とも増税を伴う税制改革が必要」との案には絶対反対。

    * 上村多恵子 京南倉庫株式会社代表取締役
    ・ 地方分権・地方主権の確立は、東京ではめったに話題にならないが、関西はじめ、地方ではずっと問題にしてきた。
    ・ 明治政府以来の東京を中心とする中央集権、官主導、平等志向、欧米キャッチアップ志向等を基礎とした国のあり方を、根本的に見直す大きな「国家のモデルチェンジ」である。
    ・ 「その時代に」「その地域に」「そこに住む」人々が、自ら考えもう少し身近に行動できる新しい国と地方の関係を創る必要がある。
    ・ 国・地方の歳出削減を含めた四位一体論で進めるべきものである。国の財政再建を優先するため、国庫補助金負担や地方交付金の削減が先で、本格的な税源移譲は後からという考え方はおかしい。

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    関西自治体経営評価 2003年版 (2003年5月)

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    関西活性化白書2003年版 関西の産業競争力強化に向けて

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    関西のプロジェクト動向調査 2003年版

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    ディスプレイ産業から見る中国との新しい分業・補完関係の構築について?関西における産業高度化のあり方?

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    ABSTRACT

    「KANSAI TOMORROW(KT)研究会 産業創生部会 平成16年度」研究報告
    (委員長:阿部 茂行・同志社大学 政策学部教授)

    当研究所では、平成15年度「都市再生シリーズシンポジウム」の結果を踏まえて、平成16年度はKT研究会を立ち上げ、その中に産業創生部会と都市創生部会を組織し、調査研究を進めてきた。本報告は、産業創生部会の平成16年度研究成果であり、概要は以下の通りである。

    最近の製造業の復権は、ディスプレイ産業に代表されるデジタル家電と中国の急成長である。本調査において、日本の中でも、特に関西が、中国との深い関係 を維持されていること、また、日本の得意とする「摺り合わせ型技術」を内包するデジタル家電に大きな強みを持っていることを実証し、今後の中国との Win?Winの分業関係をさらに発展させる大きな可能性を明らかにするとともに、それを促進する方策も示した。
    提言のポイントは、(1)中国とのWin?Winの関係のもとでの分業の徹底、(2)日本の強みである「摺り合わせ型産業」を活かした新しいコア技術の開発、(3)ローカル企業と技術移転などの連携を図る場合は中国の大学を活用などである。

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    関西における産業高度化のあり方調査

    研究プロジェクト

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    ABSTRACT

    「関西における産業高度化のあり方調査」研究成果報告
    (委員長:橋本介三大阪大学大学院国際公共政策研究科教授)

    日本経済の最大の強みは、製造業・ものづくりにあり、なかでも製造業の世界的大集積地である関西が、その高度化の先端を切り、磨きをかけていくことが、地 盤沈下に苦慮する関西の再生・発展にとって不可欠であり、これがひいては日本経済の永続的な国際競争力に大きな貢献を果たすものである。
    本調査では、この問題意識のもとで、調査研究会(委員長:橋本介三大阪大学大学院国際公共政策研究科教授)を設け、1年間、産業高度化に積極的に取り組ん でいる、全国7地域の企業・行政・関連機関などの事例調査を実施し、その中から、関西また全国の地域が学ぶべき産業高度化・活性化施策を抽出することとし た。
    本研究成果が、ものづくりに対する再認識を促し、産業の高度化・発展に関西の経済界・大学・行政等が総力をあげて取り組むきっかけのひとつにつながることが期待される。

    【報告書のポイント】

    * 日本の製造業の強みのひとつは、「熟練基盤技術」、これを企業、地域が先端・成長部門の育成など企業戦略・地域産業戦略に有効に連結させることが、発展の鍵。
    * パワー・インキューベーションの設立促進:IPO(株式公開)を目指す企業輩出を主眼とする。
    * 先進地域事例に共通する高度化戦略
    熟練基盤技術の重視、産学官など各界の共通の危機感。集中と選択、産学官の連携、戦略を推進する人材を重視、特に「産業ディレクター」的人材の存在。
    * 各地の先進事例をふまえての関西の産業高度化のための地域戦略
    ①振興分野への資金・人の集中 ②「熟練基盤技術型企業」の維持・強化、その大学、公的研究機関の連携 ③産業ディレクターの確保と役割強化など

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    「太平洋経済展望(PEO)2003-2004」

    研究プロジェクト

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    ABSTRACT

    (太平洋経済協力会議(PECC)地域 の経済予測の発表)
    当研究所は、アジア太平洋の産学官で組織する太平洋経済協力会議(PECC)の作業部会の一つ=太平洋経済展望(PEO)の事務局も務めている。PEO は、PECC加盟国・地域のうち20カ国・地域の2003?04年の経済予測について、「Pacific Economic Outlook 2003?04」を取りまとめ、2003年7月2日午前0時(日本時間)、域内各国・地域において成果を同時発表した。
    PEOの経済予測は、毎年6月頃に作成・発表しているもので(今年で16回目の発表)、産学官の共同による中立的な分析が特色となっている。今年3月に 大阪で国際会議を開催して、参加各国・地域の意見・情報を検討した後、それぞれの担当エコノミスト・研究機関が作成した分析結果を、幹事国=オーストラリ アで取りまとめた。
    当研究所も、「アジア太平洋地域の経済分析」の活動の一環として、本件成果発表の資料作成に携わった。日本経済の予測は、PEO日本委員会(事務局=(財)関西社会経済研究所)での検討を経て、同委員会主査の森口親司・帝塚山大学教授がとりまとめている。

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    「東アジアとの新産業ネットワーク構築調査」概要

    研究プロジェクト

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    ABSTRACT

    趣旨
    本調査では、長引く景気低迷や工場の海外移転により空洞化の危機に直面している、関西の中小製造業が、いたずらに中国脅威論に陥ることなく、中国の台頭 を現実のこととして、受け入れたうえで生き残り、さらなる発展を遂げるために、中国などの東アジアとの産業ネットワークをどのように構築すべきか、また課 題は何か、を調べた。
    関西の中小製造業と中国のローカル企業とが共存共栄をはかり得る国際分業体制の構築や、中国市場参入のための、ネットワークの在り方を探るという、問題 意識に加え、単なる「中国進出のための調査」にしないために、先進的な取り組みを進めている企業のヒアリングに重点を置いた。これらのヒアリング調査を通 じて産業ネットワークの視点として、次の3パターンに絞り、あるべき姿を視野に入れつつ、これからの産業ネットワークのイメージを提言した。

    (1) 自立した中小企業による主体的な取り組み。
    (2) 中国を単に輸出生産拠点に加え、巨大市場として捉える。
    (3) 産業集積や技術集積また人材の活用を目的とする。

    また、中国台頭の背景にある日本の製造業における構造転換の問題を取りあげることにより、ネットワーク構築の前提として今後の中小製造業が目指すべき戦略像を示した。
    従来の下請け構造が崩れ、自立を強いられる中小製造業においては、独自性の発揮、製品の高付加価値化には外部資源の活用が不可欠であり、まず何らかの形 で、存立基盤のある国内でのネットワークを構築することが必要となる。ネットワーク構築には製品や分野ごとに様々なパターンがあるが、国内において、得意 分野に経営資源を集中する一方、弱い分野を補強するために異業種企業などのの他企業、あるいは大学と連携しネットワークを構築すべきである。
    一方、経営資源の集中等により、相対的に付加価値の低い生産工程等はある程度アウトソーシングせざるを得ず、ファブレス化が進む。その際、世界的な競争 のなかで中国等はアウトソーシングの相手先としてふさわしく、直接生産拠点を設けるにせよ、ローカル企業を活用するにせよ、中国等との間で何らかのネット ワークを構築することが競争上有利となる。また、中国等は市場として魅力を増しており、販売拠点の設置やローカルの販売パートナーとの提携による売込み 等、市場参入のためのネットワーク構築が今後は重要となり、仲介役として元日本留学生等の新華僑の活用が一つのポイントになる。
    また、中小製造業が国内でネットワークを構築しながら単独で中国等のローカル企業と交流するのではなく、企業や大学等を含めたネットワークグループ全体 で行う中国等のローカル企業との交流では、受注可能な案件の拡大が期待でき、また海外市場に向けての情報収集力や営業力が強化され、新しいビジネスモデル として重要なものとなる。

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