人口減少下における活力ある関西を目指して
~2050年を見据えて~

研究プロジェクト 2025年度

ABSTRACT

研究計画

研究の背景

2024年4月に人口戦略会議は、全国地方自治体の「持続可能性」についての分析レポートを発表した。その中で、2020年から2050年までの間に若年女性人口の減少率が50%以上になる自治体(消滅可能性自治体)は全国1,729のうち744(43%)あるとし、関西は全198のうち門真市等81の自治体(41%)が該当している。

国立社会保障・人口問題研究所(以下、社人研)の最新の推計によると、日本の総人口は2023年の1億2,435万人から2056年に1億人を割り、2070年には8,700万人になるとされている。特に関西(2府4県)は、全国や関東に比べて人口減少のスピードが速い。社人研の推計を基に2023年~2050年の減少率をみると、全国-15.8%、関東-6.9%に対し、関西は-18.6%となる。

また、関西の高齢化の進行も厳しい。社人研の推計によると2050年には生産年齢人口が857万人と2023年(1,205万人)比28.9%の減少(全国:同-25.1%)、およそ4人に1人が75歳以上になるとされている。その結果、人手不足による社会インフラ維持の困難さが急速に増している。

また足下でも人手不足は急速に深刻化しつつある。帝国データバンクによると、2024年の人手不足を理由とした倒産件数は342件(前年:260件)で前年比1.3倍増加し、初めて300件を超え、過去最多を更新した。業種別では建設業や運輸業が多く、生活に必要不可欠な職種(エッセンシャルワーカー)の人手不足は深刻である。このように、生産年齢人口の減少に加え、就業率の改善は今後望めないほどの高水準となっている。

今後、就業率の向上が望めないとすれば、労働者1人当たり生産性の向上は必至である。

そこで、全国に比して人口減少・高齢化が厳しい関西において、人口や労働等に関する様々な基礎データを整理し、加えてAPIRがこれまで蓄積してきたデータベースや知見を組み合わせた総合分析が重要となる。また、データを可視化し、関西各府県の労働市場の特徴とその課題を明らかにする。そして中長期的な視点で、人口減少下においても、豊かさと活力を維持向上させるための具体的な方策を模索していきたい。

研究内容

●関西における産業別労働需給分析

  • 昨年度はデータベースを基に産業構造や雇用構造、年齢構造、賃金構造から、関西が抱える労働問題を総合的に明らかにした。
  • 昨年度の成果を踏まえ、モデルを構築し、介護、建設、宿泊サービスの分野に焦点を絞って詳細なデータ分析を行い、どの産業・職種に労働需給のミスマッチが起きるのかを明らかにし、中長期視点で解決策を検討する。

●関西における労働需給予測モデルの作成

  • 関西に焦点を絞ったモデルを作成し、産業別労働需給の将来予測を明らかにする。
  • 加えてAPIRが蓄積してきたデータを利用し、総合的に分析し、可視化する。

●関西各府県ベースでの具体的な検証と、対策の検討

  • シミュレーション結果から得られた地域別、産業別の課題を、各自治体へ共有する。
  • 政策立案におけるインプリケーションへの活用を促す。
  • 公的サービスのボトルネック解消に向けた施策提案を検討する。

期待される成果と社会還元のイメージ

  • 関西の産業別労働需給の予測モデル構築(関西経済白書、トレンドウォッチ)
  • 人口減少下における持続的成長に向けた戦略(研究会等での情報提供)
  • 関西経済の成長戦略の策定に資する情報としての活用
  • 関西各府県における産業別(特に、介護、建設、宿泊)の労働需給ギャップ解消に向けた具体的な施策の立案に資する情報としての活用

研究体制

研究統括・リサーチリーダー

稲田 義久      APIR研究統括兼数量経済分析センター長、甲南大学 名誉教授

サブリサーチリーダー

松林 洋一       APIR上席研究員、神戸大学大学院経済学研究科 教授

リサーチャー
加藤 久和      明治大学 政治経済学部 教授
野村 亮輔      APIR副主任研究員
ルオン・アン・ユン  APIR研究員、神戸大学 経済学研究科 講師
権 明        APIR研究員
吉田 茂一      APIR研究推進部員
古山 健大      APIR研究推進部員
蕨野 真紀      APIR総括調査役
井上 建治      APIR総括調査役
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