研究者紹介
研究統括 稲田 義久2021年4月現在
数量経済分析センター センター長・甲南大学名誉教授
日本経済および関西経済の短期予測、
関西地域の成長牽引産業の展望、
計量経済学、環境経済学、政策シミュレーション
学歴
- 神戸大学経済学部卒業(昭和51年3月)
- 神戸大学大学院経済学研究科博士後期課程単位取得(昭和56年3月)
- 博士(経済学)(神戸大学) (平成 4年12月)
職歴
- 神戸学院大学経済学部講師(昭和56年4月-昭和59年3月)
- 神戸学院大学経済学部助教授(昭和59年4月-平成4年3月)
- アメリカ合衆国ペンシルベニア大学客員研究員(昭和60年年7月-昭和61年8月)
- 国際東アジア研究センター客員研究員(平成2年4月-平成12年3月)
- 立命館大学経済学部助教授(平成4年4月-平成7年3月)
- 経済企画庁経済研究所客員研究員(平成7年4月-平成10年3月)
- 甲南大学経済学部教授(平成7年4月-令和3年3月)
- アジア経済研究所外部研究員(平成7年4月-平成19年3月)
- アメリカ合衆国ペンシルベニア大学客員研究員(平成9年7月-12月)
- 岐阜県産業経済研究センター委員(平成10年4月-平成11年3月)
- 社会保障人口問題研究所外部研究員(平成15年4月-平成18年3月)
- アメリカ合衆国ペンシルベニア大学客員研究員(平成16年7月-10月)
- 甲南大学経済学部長(平成19年4月-平成21年3月)
- 甲南大学学長補佐・フロンティア研究推進機構長(平成22年4月-平成24年3月)
- 関西社会経済研究所所長(平成23年4月-11月)
- アジア太平洋研究所研究統括(平成23年12月-平成26年6月)
- アジア太平洋研究所数量経済分析センター センター長(平成26年7月-現在に至る)
- 甲南大学副学長(平成26年8月-平成30年9月)
- 甲南大学総合研究所所長(平成30年4月-令和2年3月)
- アジア太平洋研究所研究統括(平成31年1月-現在に至る)
- 甲南大学経済学部名誉教授(令和3年4月-現在に至る)
主な著作物
- 『日米経済の相互依存とリンク・モデル』,日本評論社,平成3年12月
- 「所得階層別租税負担の計量分析」(共著),小川一夫・斉藤光雄・二宮正司編,『多部門経済モデルの実証分析』,創文社,平成4年3月
- “The ICSEAD Japan-United States-Rest of the World Model,” in S. Ichimura and Y. Matsumoto (ed.), Econometric Models of Asia- Pacific Economies, Springer-Verlag, 1993
- 「日米の政策協調と対外不均衡」(pp. 66-100),「日本経済の長期展望」(pp. 118-160),細見卓・竹中平蔵編『日本経済 21世紀への展望』 有斐閣 平成 5年12月
- “Impacts of the EC Integration on Japanese Economy,” in Mitsuru Toida (ed.), Impacts of the EC Integration on Asian Industrializing Region, Institute of Developing Economies, 1995, pp. 104-134
- 「自由貿易地域(FTA)形成の経済効果-環太平洋地域のシミュレーション分析」(pp. 120-140),永谷敬三・石垣健一編『環太平洋経済の発展と日本』勁草書房,平成 7年10月
- 「震災からの復興に影さす不況」(pp. 1-43),藤本建夫編『阪神大震災と経済再建』勁草書房,平成11年8月
- “ICSEAD’s Econometric Model of the Chinese Economy,” in L.R. Klein and S. Ichimura eds., Econometric Modeling of China, World Scientific, 2000
- “A Retrospective View of the Asian Financial Crisis: Special Reference to Exchange Rate Policy,” in L.R. Klein and S. Ichimura eds., Econometric Modeling of China, World Scientific, 2000
- 稲田義久・楠部孝誠・下田充「農村畜産廃棄物CDMプロジェクトの構想」『東アジアの経済発展と環境政策』(森 晶寿編),ミネルヴァ書房,216-242,平成21年9月
- “A high-frequency forecasting model and its application to the Japanese economy,” in L.R. Klein (ed.) The Making of National Economic Forecasts, 172-197, Edward Elgar, 2009
- “High Frequency Model vs. Consensus Forecast,” in S. Ichimura and L.R. Klein (ed.) Macroeconometric Modeling of Japan, pp. 393-409, World Scientific, 2010
- 稲田義久「超短期モデル予測と合意予測」『日本経済のマクロ計量分析』、市村真一・L.R.クライン編著、日本経済新聞社、2011年
- “China’s Energy Balance and CO2 Emissions: An Energy Balance Model Approach,” in Kazuhiro Ueta (ed.) CDM and Sustainable Development in China, pp. 99-140, Hong Kong University Press, 2012
主な論文
- 「近畿経済計量モデルの開発とその応用」,立命館経済学,第43巻第 4号,平成 7年 3月, pp. 50-87
- 「中国地域モデルについて-寧波市経済モデルを例にして-」,PAIR研究報告書 No. 4,『アジア工業圏の経済分析と予測』,アジア経済研究所(樋田満・平塚大祐編),平成 7年 4月,pp. 173-204
- “Long Term Outlook for the Japanese Economy: 1996-2005,”1997 Economic Forecast for Asian Industrializing Region, Institute for Developing Economies, March 1997
- 稲田義久「連鎖型指数について:経済構造との関連で」『甲南経済学論集』,第37巻第4号,pp. 109-130,1997年3月
- 「環境問題への計量経済学的接近」,『経済分析』(経済企画庁経済研究所),No.154,pp.1-135, 平成11年, 藤川清史他との共著
- “Japanese Household Consumption and Survey Data,” Konan Economic Papers, Vol.45, No.3, pp.35-62, December 2004
- “High-Frequency Forecasting Model for the Japanese Economy: An Application of Principal Components Approach,” Konan Economic Papers, Vol.45, No.4, pp.27-42, March 2005
- 稲田義久・下田充「中国多部門計量モデルの開発」『甲南経済学論集』,第46巻第2号,pp. 1-31,2005年9月
- 楠部孝誠・稲田義久・下田充「中国農村地域におけるメタン発酵装置の導入効果と持続可能な発展」『環境科学会誌』,第23巻第5号,pp. 351-362,2010年9月
- 稲田義久・入江啓彰「関西経済予測モデルの改訂」,Asia Pacific Institute of Research Working Paper Series No. 30, 2013
- 小川亮・稲田義久「速報性と正確性が両立する県内GDP早期推計の開発」,Asia Pacific Institute of Research Working Paper Series No. 33, 2013
所属学会
- 日本経済学会
- 日本財政学会
その他
- 主な対外活動
- 太平洋経済展望(PEO)日本委員会主査(平成16年4月-現在に至る)
- 関西社会経済研究所リサーチフェロー(平成17年4月-平成23年11月)
- 関西社会経済研究所マクロ経済分析プロジェクト主査(平成17年4月-平成23年11月)
- 関西メガリージョン活性化構想検討委員会委員・ワーキンググループ座長(平成20年10月-平成21年3月)
- 関西広域連合関西広域産業ビジョン策定委員・検討ワーキング座長(平成23年4月-平成24年3月)
- 関西広域連合関西広域産業ビジョン2011推進会議委員 (平成24年4月-現在に至る)
- 大阪府経済加工統計検討会委員(平成24年5月-現在に至る)
論文一覧
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Kansai Economic Insight Monthly Vol.125-景気は足下改善、先行きは足踏みの兆し: 輸出停滞と生産伸び悩みによる景気下押し圧力に注意-
経済予測
経済予測 » Monthly Report(関西)
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ABSTRACT
・関西の景気は足下改善、先行きは足踏みの兆しがみられる。足下、生産は2カ月ぶりの減産となり、低調な動きとなった。雇用環境は失業率が悪化したが、労働力人口と就業者数の増加で、持ち直しの動きを維持している。消費は百貨店を中心に回復しており、景況感はインバウンド需要の増加もあり改善。先行きは海外経済悪化による輸出の停滞と生産の伸び悩みが景気の下押し圧力となっており、足踏みの兆しがみられる。
・7月の生産は2カ月ぶりに前月比低下。生産用機械、汎用・業務用機械や化学(除.医薬品)等が減産に寄与しており、生産は低調な動きとなった。
・7月の失業率は4カ月ぶりに悪化したが、労働力人口と就業者数はいずれも増加した。雇用情勢は持ち直しの動きを維持している。また、新規求人数と新規求職者数がともに大幅増加し、足下労働需給の動きが活発となっている。
・6月の現金給与総額は19カ月連続の前年比増加となり、伸びは前月より縮小した。一方、実質ベースでは減少が続き、減少幅は前月より拡大した。
・7月の大型小売店販売額は22カ月連続の前年比増加となった。うち、百貨店は衣料品とその他の商品などが高い伸びを示し、インバウンド需要も堅調。スーパーは10カ月連続で拡大した。
・7月の新設住宅着工戸数は2カ月連続で前月比減少。マンションの大幅減少により全体が押し下げられた。
・7月の建設工事は前年比増加が続くものの、関西は減速、全国は加速となった。うち公共工事については依然として全国より関西のほうが伸びは高いが、減速が目立つ。また、8月の公共工事請負は、前年比減少に転じた。
・8月の景気ウォッチャー現状判断は2カ月連続の前月比改善。インバウンド需要の増加や行動制限のない夏祭り等のイベントの開催が好影響した。一方、先行き判断は円安進行や原油価格高騰への懸念から2カ月ぶりに悪化した。
・8月の関西の貿易は輸出入ともに前年比減少だが、どちらも減少幅は前月から縮小となった。輸出は4カ月連続で1桁の減少にとどまる。なお、対中食料品輸出の動向については、p.14【BOX】において分析を行っている。
・8月の関空への外国人入国者数はコロナ禍前の9割に迫る水準となり、コロナ禍前をほぼ回復した。
・8月の中国経済は、生産と消費はともに増加し、回復ペースは前月より加速した。ただし、住宅販売の不振による影響で耐久財消費の低迷が続いている。長引く雇用情勢の悪化と不動産市場の不況は景気回復の足かせとなっているため、7-9月期の経済成長率は前期より減速する可能性が高い。 -
2023年阪神タイガース優勝の地域別経済効果:速報版 -APIR関西地域間産業連関表による分析-
インサイト
インサイト » トレンドウォッチ
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ABSTRACT
今回の阪神タイガース優勝は慶賀に堪えない。本稿では、阪神タイガース優勝により発生する新規需要を球場観戦時の消費及び球場外の消費(優勝セール含む)に分けて想定した上で、APIR関西地域間産業連関表を用いてその経済波及効果を計測した。その際、地域経済に与える影響という視点が重要であり、この観点から分析を行った。分析結果を整理し、得られた内容は以下の通りである。
1. 阪神タイガースの優勝により全国で発生する経済効果総計は1,051億2,400万円、うち直接効果465億8,700万円、間接効果585億3,800万円となった。
2. うち、関西(2府8県ベース)の経済効果は686億9,600万円、関西を除くその他地域では364億2,800万円となる。
3. 地域間交易を考慮した関西地域間産業連関表の分析によれば、全体の効果は、関西に65.3%、その他地域に34.7%配分される。関西を除く地域では364億円の経済効果を発生させているが、その大部分は間接効果である。すなわち、関西での直接需要を満たすため、関西以外の他府県で一定程度の需要が発生していることを意味している。
4. 次に関西各府県での効果をみると、大阪府は306億4,400万円(29.2%)、兵庫県は172億7,000万円(16.4%)と圧倒的に2府県に効果が集中している。
5. 阪神のファン数は減少しているにもかかわらず、今回の優勝は一定の経済効果をあげている。これから得られる含意としては、新たなファン層の拡大やリピーター率の向上によりファン数の減少トレンドを抑制し、加えてファンサービスの高付加価値化による消費単価の引き上げにより一層の経済効果が期待できよう。
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都道府県別訪日外客数と訪問率:7月レポート No.50
インバウンド
インバウンド
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ABSTRACT
【ポイント】
・JNTO訪日外客統計によれば、7月の訪日外客総数(推計値)は232万600人となり、2カ月連続で200万人を超え、コロナ禍前の8割に迫る水準まで回復。なお、中国人客を除いた総数ではコロナ禍前を回復した。
・目的別訪日外客総数(暫定値)をみれば5月は189万9,176人。うち、観光客は165万6,118人、商用客は9万5,468人、その他客は14万7,590人であった。
・訪日外客の先行きについては、中国人客がどの程度回復するかが気になるところである。中国人客の団体旅行が解禁されたものの、日中関係の変化や中国経済の減速などのリスク要因で回復のペースが緩慢となる可能性がある。今後の課題は、団体旅行解禁による消費単価の低下を避けるとともに、急増するインバウンド需要に対して日本の労働供給制約をいかに解消するかである。
【トピックス1】
・関西7月の輸出は3カ月連続の前年比減少。また、輸入は4カ月連続で同減少し、3カ月連続で2桁のマイナスとなった。輸入の減少幅が輸出のそれを大きく上回ったため、貿易収支は6カ月連続の黒字となった。
・7月の関西国際空港への60万1,246人となり、コロナ禍前の8割に迫る水準まで回復。
・6月のサービス業の活動は前月から悪化したが、持ち直し傾向は維持。第3次産業活動指数、観光関連指数はいずれも3カ月ぶりの前月比低。一方、対面型サービス業指数は2カ月ぶりに同上昇した。
【トピックス2】
・5月の関西2府8県の延べ宿泊者数は10,486千人泊。2019年同月比では5カ月連続の減少だが、前月から減少幅は縮小。
・うち、日本人延べ宿泊者数は7,818.9千人泊と2カ月連続で2019年同月の水準を下回った。一方、外外国人延べ宿泊者数は2,667千人泊で、2019年同月比-8.6%と減少幅は前月から縮小。日本人延べ宿泊者の回復は停滞した一方で、外国人延べ宿泊者数は回復しているようである。
【トピックス3】
・2023年4-6月期の関西の国内旅行消費額は1兆2,052億円であった。2019年同期比-15.7%と3四半期ぶりのマイナス。4-6月期の観光関連指数が示すように、低調な国内旅行消費と指数の動きとは整合的である。うち、宿泊旅行消費額は8,389億円と3四半期ぶりにコロナ禍前を下回った。また、日帰り旅行額は2,109億円となり、19年同期比で減少幅が1-3月期から拡大した。
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日本経済(月次)予測(2023年8月)<8月末までに発表されたデータを更新し、7-9月期実質GDP成長率を前期比年率+1.6%と予測>
経済予測
経済予測 » Monthly Report(日本)
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中国人客の回復とインバウンド戦略について
インサイト
インサイト » トレンドウォッチ
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ABSTRACT
2023年8月10日に中国政府は日本への団体旅行を解禁した。そのため、23年後半以降、インバウンド需要の加速が期待される。本稿では中国人客の団体旅行解禁が日本及び関西に与える経済的影響を一定の仮定を置き分析した。分析内容を整理し、得られた含意は以下の通りである。
1. 水際対策が大幅緩和された2022年10月以降訪日外客数は急拡大し、中国人客を除けば23年7月に2019年同月の水準を上回った。この間、回復には3四半期程度を要した。
2. 中国人客の回復については、2023年8月の団体旅行解禁から3四半期をかけて中国人客が100%回復するCase1を想定。なお、回復パターンについてはこのベースラインに対して中国経済や対日関係の変化の影響をも考慮し、回復が遅れる2つのケースを想定した。
3. 各Caseに基づいて訪日中国人旅行消費額を推計すれば、2023年度においてCase1では全国で1兆7,631億円、関西で6,044億円となる。Case2では全国で1兆4,926億円、関西で5,114億円。Case3では全国で1兆2,222億円、関西で4,183億円と試算される。
4. 中国人客の回復は、コロナ禍により鮮明になってきた労働供給制約の課題を一層強く意識させる。このため、生産性向上を目指し、DX推進に向けた投資の一層の拡大が必要となろう。
5. 今回のケースはこれまでのインバウンド戦略を再考するにあたり重要な教訓となる。団体旅行解禁により、上昇した消費単価を低下させないよう、高付加価値サービスを提供することが一層重要となろう。すなわち、これまでのモノ消費からコト消費への転換を一層推進する仕組みづくり(インバウンド戦略)が必要となろう。
6. また、団体旅行客の増加による観光地におけるオーバーツーリズム現象の解消も課題である。観光地への観光客集中を避けるためにも、他地域への周遊促進が一層重要となる。