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「 新型コロナウィルス 」の研究・論文一覧

  • 藤原 幸則

    新型コロナウイルス対策特別会計(仮称)の設置 -予算・執行の透明化と財政規律の確保を求める-

    インサイト

    インサイト » トレンドウォッチ

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    藤原 幸則

    ABSTRACT

    新型コロナウイルスは、海外で依然猛威をふるっている。国内においても、今後、インフルエンザとの同時流⾏や感染流⾏の「第3波」の可能性があり、警戒は怠れない状況にある。新型コロナウイルスは、わが国の財政の悪化にも⼤きな影響を及ぼしている。コロナ禍の出⼝は未だ⾒通せず、財政⾚字の⼤幅な増加が今年度だけで終わる保証はない。

    もちろん、新型コロナウイルス対応は、国⺠の⽣命と経済社会を守るためのものであり、必要な歳出は躊躇なく機動的に⾏うことが必要である。しかし、財政規律のタガがはずれたままであってよいわけはない。財政⺠主主義の原則に照らし、緊要な予算・執⾏でも透明性の確保と事後の効果検証は必要であるし、緊急事態から脱したときから、財政健全化に向けてどのような取り組みを⾏うかも今から議論・検討しておくべき重要課題と考える。そこで、今後の財政健全化に向けては、平時と緊急時で分けて考えていくことを提案したい。提案内容の要約は、以下の通りである。

    1. コロナ禍前からのわが国財政は、社会保障の給付と負担のアンバランスなどによる構造的な財政⾚字を抱えており、こうした平時の財政の健全化については、潜在成⻑率を引上げ、経済成⻑を通じた税収増による財政収⽀改善が重要であるとともに、社会保障⽀出増加の抑制に踏み込んだ改⾰、消費税による安定的な税財源の確保が必要と考える。

    2. ⼀⽅、新型コロナウイルス対応に要した緊急の歳出については、東⽇本⼤震災復興特別会計にならい、別途、「新型コロナウイルス対策特別会計(仮称)」を設置して、事業に時限を付しつつ、予算・執⾏を⼀元的に管理し透明化するとともに、その財源充当のために発⾏した国債全額は、コロナ危機からの経済回復後の特別増税などにより計画的に償還していくことが必要と考える。コロナ禍の今を⽣きる世代が連帯して負担し、将来世代に負担を先送りしないとして、借換債も含め全体として20年間で償還し終えるのが適切と考える。

    3. 新型コロナウイルス対策で発⾏した国債の償還財源については、負担の分かち合いや能⼒に応じた追加負担という意味で、所得税が最も望ましい。特に、コロナ禍でも所得減の影響が少なかった(あるいは、影響がなかった)中・⾼所得者に特別な負担を求めることは公平の観点から妥当であろう。これに加え、社会連帯と経済対策の受益という意味で、法⼈も幅広く負担することが必要だろう。さらに、国際協調により資産課税や⾦融取引課税を主要国が同時に同税率で導⼊することもめざすべき⽅策であろう。

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  • 稲田 義久

    Kansai Economic Insight Quarterly No.50 – COVID-19の感染拡大で記録的な景気減速:対中輸出は早期回復しているがリスク孕む –

    経済予測

    経済予測 » Quarterly Report(関西)

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 入江 啓彰 / 木下 祐輔 / 野村 亮輔 / 吉田 茂一

    ABSTRACT

    1.  2020年4-6月期の関西経済は、COVID-19の感染拡大とそれに伴う緊急事態宣言の発令から、急速に悪化した。足下では宣言解除による反動増や政策効果で底打ちの兆しもみられるが、基調としては弱く、厳しい状況が続く。全国の4-6月期実質GDP成長率は前期比年率-27.8%で、3四半期連続のマイナス成長だった。
    2.  家計部門は、厳しい状況が続いている。センチメントや大型小売店販売は、COVID-19の感染拡大と緊急事態宣言発令により急激に悪化した。足下で下げ止まっているが、コロナ禍前の水準には及ばない。所得・雇用環境は昨年来から弱含みだったところへ、コロナ禍で一段の悪化となった。
    3.  企業部門は、生産動向、景況感ともに急速に悪化している。20年度の設備投資計画は堅調であるが、設備の過剰感が強まっており、下方修正となる可能性が高い。
    4.  対外部門も、弱い動きとなった。財貨の貿易は輸出・輸入ともに縮小が続いている。対中輸出には回復の兆しが見られるが、カントリーリスクを孕む。インバウンド需要などのサービス輸出は、消失したままである。
    5.  関西の実質GRP成長率を2020年度-5.2%、21年度+3.3%と予測する。20年度は記録的な大幅マイナスとなる。21年度には回復に転じるが、以前の水準に戻るのは22年度以降となる。
    6.  前回予測(5月28日公表)に比べて、20年度は-0.1%ポイントの下方修正、21年度は+0.7%ポイントの上方修正である。20年度は、民間企業設備の見込みを上方修正した一方で、域外需要について純輸出・純移出とも下方修正した結果、全体では小幅下方修正となった。21年度は域外需要を上方修正とした。

    7.  2020年度は民間需要と域外需要がそれぞれ-4.4%ポイント、-1.1%ポイントと大きく成長を抑制する。公的需要は+0.3%ポイントと成長に貢献するが、民間需要のマイナスを補うには至らない。21年度は、民間需要+2.1%ポイント、公的需要+0.3%ポイント、域外需要+1.0%ポイントといずれも成長に寄与する。
    8.  関西経済は中国とのつながりが強く、足下でも対中輸出が早期回復しているが、チャイナ・リスクが懸念材料である。標準予測に対するリスク要因として、COVID-19の収束時期、米中対立の行方、長江流域の水害を指摘する。
    9.  トピックスとして、(1)2019年訪日外国人消費の経済効果の推計と、(2)関西経済予測10年間の振り返り、を取り上げた。

     

     

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  • 稲田 義久

    128回 景気分析と予測<COVID-19収束後のV字型回復は期待薄:ソーシャルディスタンシングが回復のスピードを遅らせる>

    経済予測

    経済予測 » Quarterly Report(日本)

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 下田 充

    ABSTRACT

    1.  5月18日発表のGDP1次速報によれば、1-3月期実質GDPは前期比年率-3.4%(前期比-0.9%)低下し、2四半期連続のマイナス成長を記録した。市場コンセンサス(ESPフォーキャスト5月調査)の最終予測同-4.63%を上回った。CQM最終予測は、支出サイドが同-5.2%、生産サイドが同-1.7%、平均同-3.4%となった。
    2.  1-3月期のGDP統計を供給面からみると、COVID-19による供給ショックで国内総生産は前期比-4.5兆円、財貨サービスの輸入は同-4.6兆円減少した。これに対して、需要面では、民間最終消費支出が-2.1兆円、民間資本形成-1.3兆円、また財貨サービスの輸出-5.3兆円の減少が対応した。4-6月期には、4月の緊急事態宣言発令による民間消費削減の影響が一層強く出てこよう
    3.  COVID-19の感染拡大は急速に経済を縮小に追い込んでいる。財とサービスの2つの輸出の縮小に加え、自粛活動の広範化による民間最終消費支出への影響を今回の予測に反映した。緊急事態宣言が解除されても、ソーシャルディスタンシング(社会的距離の確保)が持続するため、生産・消費の急速な(V字型)回復は期待薄である
    4.  1-3月期GDP1次速報を追加し外生変数の情報を織り込み、予測を改定した。2020年度の実質GDPは-5.6%大幅減少し2年連続のマイナス成長となろう。21年度は大幅落ち込みの反動もあり+2.5%と回復に転じるが、19年度の水準が回復するのは22年度以降となろう。前回(第127回)予測に比して、今回は20年度を-5.2%ポイント大幅下方修正。21年度は前年度の大幅下方修正からの反動もあり+1.3%ポイント上方修正した。
    5.  実質GDPの四半期パターンをみれば、緊急事態宣言の影響もあり、4-6月期は-20%を超える大幅なマイナス成長は避けられない。20年の後半の2四半期はマイナス成長からの反動で比較的高い成長となるが、以降は潜在成長率を幾分上回るペースが持続する。ただ前年同期比でみると、19年10-12月期と20年の最初の3四半期はマイナス成長が避けられない
    6.  標準予測ではCOVID-19による経済悪化は4-6月期を大底と想定しているが、収束・回復については不確実性が高い。内需外需の低迷からデフレ圧力は高まり深刻である。原油安を背景としたガソリン価格の下落、幼児教育無償化に加え高等教育無償化の影響もCPIを引き下げる。これらに加え、今後の需給ギャップの動向をふまえ、消費者物価コア指数のインフレ率を、20年度-0.4%、21年度+0.4%と予測する。

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  • 稲田 義久

    Kansai Economic Insight Quarterly No.49 – 弱含みの関西経済にCOVID-19が追い打ち:民需・外需が軒並み急落 –

    経済予測

    経済予測 » Quarterly Report(関西)

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 入江 啓彰 / 木下 祐輔 / 野村 亮輔 / 吉田 茂一

    ABSTRACT

    1.  20年1-3月期実質GDPは前期比年率-3.4%(前期比-0.9%)で、2四半期連続のマイナス成長となった。COVID-19の感染拡大の影響(経済活動の自粛)により、民間最終消費支出を中心に民間需要が減少し、加えて二つの輸出(財とサービス)が大幅に減少した。4-6月期はマイナス幅がさらに拡大することが予想されている。
    2.  2020年1-3月期の関西経済は、民需と外需が急激に悪化した。前期の消費税率引き上げと中国経済の減速に加えて、COVID-19感染拡大による外出自粛と外国人観光客の入国規制が追い打ちとなった。景況感やインバウンド関連の指標では統計開始以来最低となった指標もある。
    3.  関西の実質GRP成長率を2020年度-5.1%、21年度+2.6%と予測する。日本経済と同様に20年度は記録的な大幅マイナスとなる。21年度には回復に転じると見込むが、以前の水準に戻るのは22年度以降となる。
    4.  前回予測(3月16日公表)に比べて、20年度は-4.6%ポイントの下方修正、21年度は+1.5%ポイントの上方修正である。20年度の下方修正は、COVID-19感染拡大による世界経済および国内経済の失速を反映した。一方21年度は民間需要を中心に、公的需要・域外需要いずれも上方修正とした。
    5.  実質GRP成長率に対する各需要項目の寄与度を見ていく。2020年度は、民間需要が-4.7%ポイントと成長を大きく押し下げる。域外需要も-0.7%ポイントとマイナスの寄与である。公的需要は経済対策の効果から+0.3%ポイントと成長に貢献するが、民間需要のマイナスを補うには至らない。21年度は、民間需要が+1.8%ポイントと回復する。また公的需要+0.3%ポイント、域外需要+0.5%ポイントといずれも成長に寄与する。
    6.  緊急事態宣言に伴う経済活動の抑制ならびにその後の経済社会活動の変化による影響について、前回予測の時点では織り込んでいなかったが、今回の標準予測では織り込んでいる。前回と今回の予測結果の差をみると、緊急事態宣言等が2020年度の関西経済に与えた影響は、民間最終消費支出2兆1,543億円、民間企業設備8,252億円、輸出3兆2,118億円、GRP3兆7,537億円の損失であり、追加的な失業者は157,966人にのぼると見られる

     

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  • 藤原 幸則

    Policy Brief No.4 <頻発・激甚化する災害への備えの強化を>

    政策提言

    政策提言

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    藤原 幸則

    ABSTRACT

    近年、頻発・激甚化する災害が新型コロナウイルス感染拡大と重なれば、多数の人命が失われ、社会経済機能の維持すら困難となる。感染拡大がいまだ収束していないからこそ、災害対策の備えを強化しなければならない。

    災害発生には、利便性や効率性等を追求する人間行動が深く関与している。近年、一つの災害あたりの物的被害や社会経済の損失は増大傾向にあるが、これは人間の行動によって、人口・資産が災害の発生危険度の高い地域に集積し、災害リスクが高まっていると言える。典型的な例は東京一極集中である。利便性や成長を求めて人口や経済機能が東京圏へ集中した結果、首都直下地震のような大規模災害が生じれば、被害と損失は非常に大きく、東京圏にとどまらず、日本全体に影響が及ぶ。

    したがって、災害による被害を防止・軽減するために、災害リスクをできる限り小さくする対策を講じていくことが重要になる。そこで、2019年度のAPIR自主研究プロジェクトの研究成果をもとに、個人や企業のより安全な選択行動や行政の役割強化を図る法律・制度の見直しを提案する。自主研究成果の報告書にもあるとおり、講ずべき対策は多いが、特に重要なものをここで提案している。

  • 稲田 義久

    Kansai Economic Insight Quarterly No.48 -民需の大幅失速で19-20年度は 2年連続のマイナス成長: 新型肺炎の影響とGDP2次速報を織り込み予測を改定-

    経済予測

    経済予測 » Quarterly Report(関西)

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 入江 啓彰

    ABSTRACT

    1. 3月9日発表のGDP2次速報によれば、10-12月期実質GDPは前期比年率-7.1%と1次速報(同-6.3%)からさらに下方修正された。前回増税時(14年4-6月期:同-7.4%)以来の下げ幅となった。

    2. 関西経済は、昨年10月の消費税率引き上げと新型コロナウイルス感染拡大の影響のダブルショックにより、特に民間部門が急速かつ大幅に冷え込んでいる。またこれまで関西経済を支えてきた2つの輸出、対中輸出とインバウンド需要も失速している。コロナウイルスは欧米でも感染拡大し、世界経済全体の景況感が悪化しており、金融市場で乱高下が見られるなど、リスクが高まっている。

    3. 足下の経済指標やGDP2次速報の改定を反映して、関西の実質GRP成長率を2019年度-0.2%、20年度-0.5%、21年度+1.1%と予測する。19年度20年度と2年連続のマイナス成長となる。新型コロナウイルス感染拡大に伴う自粛活動の広範化の影響を反映し、19年度は-0.3%ポイント、20年度は-0.7%の大幅下方修正とした。21年度は+0.1%の上方修正である。

    4. 2019年度は、成長を下支えるのは公的需要のみとなる。民間需要は-0.3%ポイントと成長を引き下げる。公的需要は消費税対策から+0.5%ポイントと成長に貢献する。域外需要は-0.3%ポイントと成長抑制要因となる。20年度は、民間需要が-1.2%ポイントと2年連続で成長に寄与せず、むしろ抑制要因となる。公的需要は+0.3%ポイントと成長を押し上げる。域外需要は輸入の減少から+0.4%ポイントとプラスに転じる。21年度は、民間需要が+0.5%ポイントと回復に転じ、公的需要+0.2%ポイント、域外需要+0.3%ポイントといずれも成長に寄与する。景気の急回復は期待できない。

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  • 稲田 義久

    127回 景気分析と予測<新型コロナウイルスの影響で2四半期連続の マイナス成長は不可避:2次速報更新後の予測改定>

    経済予測

    経済予測 » Quarterly Report(日本)

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 下田 充

    ABSTRACT

    1. 3月9日発表のGDP2次速報によれば、10-12月期実質GDPは前期比年率-7.1%と1次速報(同-6.3%)から更に下方修正された。前回増税時(14年4-6月期:同-7.4%)以来の下げ幅となった。

    2. 10-12月期GDP2次速報発表に合わせて、基礎統計の改定や季節調整のかけ直しが行われ、過去値が改訂された。注意を要するのは、7-9月期が-0.4%ポイント(前期比年率+0.5%→同+0.1%)下方修正された結果、ほぼゼロ成長になったことである。駆け込み需要は前回増税時に比して限定的であったが、その反動減は一部台風の影響もあるとはいえ大きかった。日本経済は消費増税前から景気減速に入っていたといえよう。

    3. 新型コロナウイルス感染拡大は急速に経済を縮小に追い込んでいる。財とサービスの2つの輸出の減少に加え、自粛活動の広範化による民間最終消費支出への影響を今回の予測に反映した。このため、もともと基調の弱い民間最終消費支出の大幅落ち込みにつながった。

    4. 10-12月期GDP2次速報を織り込み、予測を改定した。2019年度の実質GDP成長率は-0.0%、20年度は-0.4%と2年連続のマイナス成長、21年度は+1.2%と回復に転じよう。前回(第126回)予測に比して、今回は(1)7-9月期のほぼゼロ成長、(2)10-12月期大幅マイナス成長の下方修正、(3)1-3月期以降の新型コロナウイルスの民間最終消費支出への影響を反映し、19年度を-0.3%ポイント、20年度を-0.6%ポイントいずれも下方修正。21年度は下方修正からの反動もあり、+0.1%ポイント上方修正した。

    5. 実質GDPの四半期パターンをみれば、2019年10-12月期は5四半期ぶりのマイナス成長。純輸出はプラス寄与となったものの、民間需要が総崩れとなったためである。標準予測(後掲、表2参照)では、新型コロナウイルスの影響で1-3月期は民間需要の戻りが遅いことに加え、純輸出がマイナス寄与に転じるため、2四半期連続のマイナス成長は避けられない。20年度の最初の2四半期はマイナス成長からの反動で比較的高い成長となるが、以降は潜在成長率ないしはそれを幾分下回るペースが持続する。前年同期比でみると、19年10-12月期と20年の最初の3四半期はマイナス成長が避けられない

    6. 新型コロナウイルスの感染拡大の終息は標準予測では4-6月期と想定しているが、終息・回復が一層遅れる可能性もある。その回復の程度は、経済活動の下落幅とその持続期間に依存する。また中国での生産や輸出活動が回復したとしても、風評被害により人の移動の回復が遅れる可能性が高い。2011年東日本大震災の場合は、訪日外客の回復に1年を要した。生産・消費の回復スピードは一様ではない。

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  • 稲田 義久

    Kansai Economic Insight Quarterly No.47 – 民需外需の失速が鮮明、正念場迎える関西経済 –

    経済予測

    経済予測 » Quarterly Report(関西)

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 入江 啓彰 / 木下 祐輔 / 野村 亮輔 / 吉田 茂一

    ABSTRACT

    1.  2019年10-12月期実質GDPは前期比年率-6.3%(前期比-1.6%)と5四半期ぶりのマイナス成長だった。寄与度を見ると、純輸出は前期比+1.9ポイントと3四半期ぶりのプラスとなったが、国内需要は同-8.3%ポイントと5四半期ぶりのマイナスで、成長を大きく押し下げた。
    2.  2019年10-12月期の関西経済は、民需と外需の失速が鮮明となった。10月の消費税率引き上げ、中国経済の減速を受けて、家計部門、企業部門、対外部門と多くの指標が失速の様相を呈している。これまで堅調だった雇用環境やインバウンド需要も軟調となりつつある。20年1-3月期以降については、さらに新型コロナウイルス感染拡大の影響が現れてくるため、関西経済は正念場を迎える。
    3.  関西の実質GRP成長率を2019年度+0.1%、20年度+0.2%、21年度+1.0%と予測。消費税率引き上げによる民間消費の停滞、中国経済の減速、新型肺炎による経済活動の縮小といった要因から、19年度20年度は低成長を免れられず、本格的な回復は21年度となる見通しである。
    4.  前回予測に比べて、2019年度は-0.6%ポイントの下方修正、20年度も-0.2%ポイントの下方修正である。下方修正の背景として、19年7-9月期のGDP実績値の大幅下方改定、消費税率引き上げによる影響とそれに伴う足下の景気減速、新型肺炎の影響の織り込みがある。一方21年度は+0.3%ポイントの上方修正とした。
    5.  2019年度については、成長を下支えるのは公的需要のみとなる。民間需要は+0.0%ポイントと成長に貢献しない。公的需要は消費税対策から+0.5%ポイントと成長に貢献する。域外需要は-0.3%ポイントと成長抑制要因となる。20年度は、民間需要が-0.4%ポイントと19年度に続いて成長に寄与せず、むしろ抑制要因となる。公的需要は+0.3%ポイントと成長を押し上げ、域外需要も+0.2%ポイントとプラスに転じる。21年度は、民間需要が+0.3%ポイントと回復に転じ、公的需要+0.2%ポイント、域外需要+0.3%ポイントといずれも成長に寄与する。
    6.  新型コロナウイルスの感染拡大が関西経済に与える影響について、2つの輸出に限定して試算した。回復期間の長短にもよるが、経済損失額は1,782億~5,345億円、名目GRP比では0.2~0.6%に相当する。ただしこの試算にはイベントの中止・延期、レジャー施設の休業などの影響など家計消費への影響は含まれていないため、影響はさらに拡大すると見込まれる。

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  • 稲田 義久

    第126回景気分析と予測<消費増税、新型コロナウイルスの影響で大幅減速>

    経済予測

    経済予測 » Quarterly Report(日本)

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    稲田 義久 / 下田 充

    ABSTRACT

    1.  CPB World Trade Monitor(25 Feb. 2020)によれば、2019年10-12月期の世界輸出(数量ベース:2010年=100)は前期比+0.1%と2四半期連続のプラスだが小幅にとどまった。12月14日に、米中貿易交渉は第1段階の合意に達し世界貿易の一層の悪化は避けられたが、世界貿易の先行きは依然読みにくい。
    2.  2月17日発表のGDP1次速報によれば、10-12月期実質GDPは前期比年率-6.3%(前期比-1.6%)大幅低下し、5四半期ぶりのマイナス成長マイナス幅は市場コンセンサス(ESPフォーキャスト1月調査)の最終予測同-4.05%を大きく下回った。CQM最終予測は、支出サイドが同-4.2%、生産サイドが同-6.4%、平均同-5.3%となり、生産サイドからの予測が実績に近かった。
    3.  10-12月期1次速報発表に合わせて、基礎統計の改定や季節調整のかけ直しが行われ、過去値が改訂された。過去1年を振り返ると、18年10-12月期+1.0%ポイント、19年1-3月期0.0%ポイント、4-6月期-0.1%ポイント、7-9月期-1.3%ポイント、それぞれ修正された。特に、7-9月期の下方修正が大きい
    4.  10-12月期GDP1次速報を織り込み、予測を改定した。2019年度の実質GDP成長率は+0.3%、20年度は+0.2%と減速する。21年度は+1.1%と回復に転じよう。前回(第125回)予測に比して、今回は(1)7-9月期の下方修正、(2)10-12月期の大幅マイナス成長と(3)1-3月期以降の新型コロナウイルスの影響を反映し、19年度を-0.6%ポイント、20年度を-0.2%ポイント下方修正。下方修正からの反動もあり、21年度は+0.4%ポイント上方修正した。
    5.  経済政策の影響もあり今回の駆け込み需要は低く出たものの、増税後は駆け込み需要の反動減や10月の台風の影響もあり、消費の落ち込みは相対的に大きかった。そもそも民間最終消費支出の基調は弱く、その後の回復はしばらく緩やかなものにとどまろう。
    6.   米中貿易戦争は一時的な休戦に入ったが、1月下旬に明らかになった中国を発生源とする新型コロナウイルスの感染拡大は日本経済の先行きに大きな影響を与える。その影響はまず財とサービスの輸出に表れる。またその影響の程度は、経済活動の下落幅とその持続期間に依存する。このため、19-20年度の日本経済は大きく減速し、回復に転じるのは21年度である
    7.  物価の先行きについては、エネルギー・非エネルギー価格の動向と消費税増税に加え教育無償化の影響が重要だ。1月における消費増税と幼児教育無償化のCPIに与える影響は+0.4%にとどまった。これらに加え、今後の需給ギャップの動向をふまえ、コアCPIのインフレ率を、19年度+0.6%、20年度+0.5%、21年度+0.4%と予測するる。

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