研究者紹介

researcher

研究者紹介

藤原 幸則

藤原 幸則2023年4月現在

大阪経済法科大学 経済学部 教授

財政学、地方財政論、都市経済論

学歴

  • 1980年3月 大阪大学経済学部経済学科卒
  • 1986年3月 大阪大学大学院法学研究科博士課程前期修了

職歴

  • 1980年4月 株式会社三菱総合研究所に入社
  • 1983年3月 同社 退職
  • 1986年4月 社団法人関西経済連合会事務局に入局
  • 2008年6月 同会事務局 地域連携部長
  • 2009年4月 同会事務局 経済調査部長
  • 2010年5月 同会 理事(兼経済調査部長)
  • 2011年5月 公益社団法人 関西経済連合会 理事再任
  • 2013年5月 同会 理事再任
  • 2015年5月 同会 理事再任
  • 2017年5月 同会 理事再任
  • 2017年6月 一般財団法人アジア太平洋研究所へ出向
  •       研究推進部長(~2018年7月)・主席研究員(~2021年3月)
  • 2018年4月 大阪大学大学院法学研究科招聘教授
  • 2018年5月 公益社団法人 関西経済連合会 理事退任
  •       同会 嘱託 参与
  • 2021年3月 同会 退職
  • 2021年4月 大阪経済法科大学 経済学部教授(現職)
  •       一般財団法人アジア太平洋研究所 上席研究員

所属学会

  • 日本経済学会

その他

  • 【団体・公職歴】
  • 2009年 公益財団法人地球環境センター理事
  • 2011年 大阪経営者協議会事務局長
  • 2011年 一般財団法人関西環境管理技術センター理事
  • 2011年 公益財団法人若狭湾エネルギー研究センター理事
  • 2011年 特定非営利活動法人大阪府就労支援事業者機構理事
  • 2011年 公益社団法人日本租税研究協会評議員
  • 2014年 神戸大学客員教授
  • 2015年 近畿管区行政評価局行政苦情救済推進会議委員
  • 2015年 グローバル人材活用運営協議会事務局長
  • 2015年 近畿地方社会保険医療協議会委員
  • 2016年 国土交通省近畿地方整備局入札監視委員会委員長

論文一覧

  • 藤原 幸則

    四半期開示制度の日本企業の経営に与えた影響 – 研究開発費に関する企業財務データのパネル分析 –

    インサイト

    インサイト » トレンドウォッチ

     / DATE : 

    AUTHOR : 
    藤原 幸則

    ABSTRACT

    岸田文雄首相が所信表明演説(2021年10月8日)で四半期開示制度の見直しを表明して以降、金融庁の金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループにおいて検討が行われてきたところ、2022年度報告書では四半期開示は維持し、取引所規則による決算短信に一本化するのが適切とされた。主に情報利用者の便益からの意見が大勢になっており、日本の四半期開示制度の経営に与える影響について、実証研究の十分な蓄積があっての政策決定とは必ずしも言えないものとなっている(そもそも日本での実証研究の数は非常に少ない)。そこで、本稿では、企業の長期的視点にかかわる研究開発に対して、四半期開示制度が短期利益志向を助長し、研究開発費の抑制などの影響を与えているかどうかの検証を企業財務データのパネル分析により試みた。以下はその要旨である。

     

    1. 四半期開示の導入による研究開発費の抑制の因果関係については、仮説として、四半期開示によって投資家の短期利益志向が強まり、それが企業に対する市場からの圧力となって経営判断を短期化させ、目先の利益を計上するために、研究開発費の抑制による財務内容の改善といった対応に頼る企業行動がみられる可能性があると考えた。投資家の短期利益志向を表す指標としては、投資家の株式平均保有期間の短期化、外国法人等株式保有率の上昇という二つのものがあるとみている。

    2. 四半期開示制度の導入による投資家の短期利益志向を表す指標をもとに、企業の長期的な研究開発活動にどのような影響を与えているかを企業の財務データによるパネル分析を行った。
    分析対象企業は、日本の各業界を代表し株式取引の多い日経225の株価銘柄企業(225社)とした。パネル分析では、研究開発費の推計モデル式を設定し、投資家の短期利益志向を表す指標の影響の統計的有意性を検証した。

    3. 今般の推計結果では、特に外国法人等株式保有率のパラメータの符合や統計的有意性に頑健な結果が得られた。短期利益を求めて、利益還元など強く求める海外投資家の市場圧力が、日本企業の研究開発費を抑制している可能性があることが示唆されたことになる。ただし、結果の評価は慎重に考える必要があり、分析対象企業の拡大やモデル式の一層の改善といった研究課題がある。また、今後、政策決定のエビデンス蓄積に向けて、筆者以外にも多くの研究者が、四半期開示制度の評価を試みる有益な実証研究を進めていくことを期待したい。

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  • 藤原 幸則

    四半期開示制度の日本企業の経営に与えた影響

    研究プロジェクト

    研究プロジェクト » 2022年度 » 日本・関西経済軸

    RESEARCH LEADER : 
    藤原 幸則

    ABSTRACT

    リサーチリーダー

    上席研究員 藤原幸則 大阪経済法科大学経済学部教授

     

    研究目的

    現在、金融庁の金融審議会ディスクロージャーワーキング・グループにおいて、企業情報開示のあり方について幅広い検討が行われている。とりわけ、四半期開示制度の見直しは、重要課題として位置づけられている。
    企業ごとの実態を考慮せず、短期的かつ一律的な財務情報の開示を促す現行の四半期開示制度は、企業経営者や投資家の短期的利益志向を助長しているとの懸念がかねて指摘されている。また、SDGsやサステナビリティへの意識と関心が高まるなかで、四半期ごとの定型的な開示を求める制度が、果たして、中長期的な企業価値向上を見据えた企業と株主の建設的な対話に寄与するものなのか、疑問の声もあげられている。
    頻繁な情報開示を行う企業が大きな負担を負っていることから、関西経済界からは四半期開示の義務付け廃止の要望が、2009年以来、政府や取引所に対して幾度も行われている。これに対し、今年4月、新しい資本主義実現会議と金融審議会は、四半期開示は維持し、取引所の決算短信に一本化するとの方針を示した。主に情報利用者の便益からの意見が大勢になっており、実証分析による十分なエビデンスがあっての議論になっていない。

    研究内容

    四半期開示制度による投資家の短期的利益志向化(株式保有期間の短期化)が、企業の長期的な企業価値向上への取り組み(長期投資、研究開発等)にネガティブな影響を与えているのではないか、ということを仮説として実証分析したい。たとえば、長期投資や研究開発の水準を被説明変数、ROA、Leverage、投資家株式保有期間その他を説明変数とする回帰分析が考えられる。法人企業統計によるマクロベースと上場企業の財務データ(サンプル数:数百社、30年)によるミクロベースの両面で、実証分析を行うつもりである。

     

    研究体制

    研究統括

    本多 佑三  APIR研究統括、大阪学院大学教授、大阪大学名誉教授

    リサーチリーダー

    藤原幸則  APIR上席研究員、大阪経済法科大学経済学部教授

     

    期待される成果と社会還元のイメージ

    四半期開示制度の日本の企業経営への影響(特にネガティブな影響)について、これまで十分な実証研究が行われていない現状から、日本企業の経営データ(上場企業対象)に基づく実証分析を行い、四半期開示制度の企業経営に与える影響を報告書にまとめる。報告書はWEBサイトに掲載、公表する。

    政府の制度見直しへの反映、企業や社会の課題認識と世論形成につなげる。

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  • 藤原 幸則

    金融所得課税のあり方 – 国民の資産形成と成長資金供給の促進を重視した議論を –

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     / DATE : 

    AUTHOR : 
    藤原 幸則

    ABSTRACT

    昨年秋、自民党総裁選挙を契機に金融所得課税の見直し議論がにわかに注目された。しかし、市場関係者から懸念の声があり、昨年10月初めには株価下落もあって、表立った議論は消えた。昨年12月の令和4年度与党税制改正大綱では、今後の検討課題とされている。今回の議論の背景は、いわゆる「1億円の壁」というフレーズに端的に集約されている。本稿では、金融所得課税の見直し議論の背景と論点を概観したうえで、そのあり方について私見を提起している。今後の金融所得課税のあり方として、重視すべきことは、国民の資産形成と成長資金供給の促進にあると考える。将来の検討課題として、コロナ対策のために発行した国債の償還財源について、コロナ禍の終息後の経済回復を待って、所得税や法人税を時限的に付加増税することにあわせて、金融所得課税も超高所得者を対象に税率を25%(現行税率20%+5%)へ時限的に付加増税することは現実的に納得性があるものと考える。

     

    1. 「1億円の壁」の問題は、申告所得税において所得階層別にみた場合、合計所得金額が1億円超になると所得税の負担率が下がっていくことをさしている。高所得者層ほど所得に占める株式等譲渡所得の割合が高くなっており、その金融所得の大部分は分離課税の対象として、累進所得課税よりも相対的に低い税率が適用されているからである。これがゆえに、税負担の不公平、所得再分配機能の低下、格差の拡大と問題視されている。

    2. 金融所得課税の見直しについて、分離課税の税率を一律に引き上げる場合、高所得者層の税負担増加にとどまらず、中低所得者層も増税になるという問題がある。株式・債券等の有価証券を持つ中低所得者は幅広く存在している。大衆増税にならないよう、たとえば、税率引き上げの対象を合計所得金額が1億円超の超高所得者に限定するということが考えられる。
    しかし、税率が高率になると、投資家心理を冷やし株価下落などの金融資本市場への影響がありうる。こうした影響の判断は難しいが、何よりも、成長資金供給に向けて、投資家が積極的にリスクテイクを行うという機能を損なってしまうことにならないかが懸念される。

    3. 今後の金融所得課税のあり方として、重視すべきことは、国民の資産形成と成長資金供給の促進にあると提起したい。中低所得者層の資産形成の支援に向けてはNISAの拡充や株式等譲渡所得の総合課税選択可とすること、高所得者層には損益通算範囲のさらなる拡充などを検討する必要がある。将来の検討課題として、コロナ対策のために発行した国債の償還財源について、コロナ禍の終息後の経済回復を待って、所得税や法人税を時限的に付加増税することにあわせて、金融所得課税も超高所得者を対象に税率を25%(現行税率20%+5%)へ時限的に引き上げることは現実的に納得性があることだと考える。

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  • 藤原 幸則

    コロナ後における財政の規律回復と健全化 – 内閣府「中長期の経済財政に関する試算」から考察した論点 –

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     / DATE : 

    AUTHOR : 
    藤原 幸則

    ABSTRACT

    内閣府は、例年1月と7月に「中長期の経済財政に関する試算」の結果を公表している。今年、7月21日に最新の試算結果が示された。2025年度のPB(プライマリーバランス)黒字化目標を堅持した骨太方針2021を数字で裏付けるものである。本稿では、この最新の試算結果を考察し、コロナ後における財政の規律回復と健全化の論点整理を行った。要約は以下の通りである。

    1. 今回の試算結果によると、「成長実現ケース」では、2027年度にPB黒字化が達成される。前回(2021年1月)試算結果では2029年度であったのが2年早くなっている。コロナ前への経済回復がやや遅れると見通しているにもかかわらず、こうした試算結果となるのは、名目GDPの水準の落ち込みによる収支悪化要因よりも、2020年度の税収の予想外の上振れによる収支改善要因の方が大きいということの結果といえるだろう。また、歳出改革を今後も継続すれば、PB黒字化の前倒しが視野に入る試算結果ともなっており、コロナ後における財政健全化の道筋についての検討で、歳出改革は重要なポイントになることがわかる。

    2. 内閣府の中長期試算の前提となっている全要素生産性の上昇率(いわば技術進歩率)については、以前から多くの研究者から非現実的あるいは過大な想定との疑問が呈されている。潜在成長率の過去の推移から、今回試算の「成長実現ケース」の想定は過大ではないかという見方はどうしても否めない。かといって、1%弱を下回る「ベースラインケース」の想定のままであってもいけない。政府が成長戦略の柱に掲げるグリーンやデジタルについて、具体的な戦略を積み上げていく議論が、財政健全化の道筋の具体化という意味でも必要である。

    3. コロナ感染の収束が見極められてから、財政規律の回復とともに、PB黒字化などの財政健全化目標を再設定するのがよいだろう。コロナ後の財政健全化については、人口減少・高齢化等による構造的な財政赤字への対処と、コロナ対策のような予期できない緊急措置による財政赤字への対処とを、分けて考える必要がある。また、コロナ後の財政規律の確保のために、コロナ対応の施策を中心に、必要なくなったものが存続しないよう既存歳出のスクラップに取り組む必要があるし、補正予算も含め、追加的な歳出にはそれに見合う安定的な財源を確保するというペイアズユーゴー(pay as you go)原則が踏まえられるべきである。

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  • 藤原 幸則

    コロナ危機下における企業の財務調整- 法人企業統計調査結果から考察した課題 –

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     / DATE : 

    AUTHOR : 
    藤原 幸則

    ABSTRACT

    1. コロナ危機下での企業の財務調整状況について、本稿では、企業のバランスシート(貸借対照表)項⽬のうち、特に、内部留保(利益剰余⾦)と有利⼦負債の変化に焦点を当てて考察する。

    2. コロナ危機前の⽇本企業の財務状況を特徴づけるポイントは、2012年以降、7年連続で過去最⾼を更新している内部留保(利益剰余⾦)の拡⼤である(2019年度、475兆円)。内部留保といわれる利益剰余⾦は、建物・設備への国内投資やM&A(企業の合併・買収)などに活⽤され、資産の部に建物・設備、投資有価証券などとして計上される。内部留保はさまざまな形で活⽤されていることが、コロナ危機前の⽇本企業全体の財務内容であったと理解できる。ただし、内部留保の厚みを業種別にみるとばらつきが⼤きい。1ヶ⽉当たり売上⾼に対する倍率でみれば、全産業平均で3.8ヶ⽉分の利益剰余⾦があり、多くの製造業は平均を超える利益剰余⾦の⽔準にある。⼀⽅で、⾮製造業は平均を下回る利益剰余⾦の⽔準の業種が多い。

    3. コロナ危機による⽇本企業への影響を法⼈企業統計で概観すると、最悪期の2020年4-6⽉期は、売上⾼と経常利益が⼤幅な減少を記録した。その結果、政府・⽇本銀⾏の⾦融⽀援もあって借⼊⾦増加や社債発⾏により⼤量の資⾦確保が図られ、負債の増加でバランスシートは悪化した。しかし、機動的に取り崩せる内部留保の蓄積があったことで、⾃⼰資本⽐率はわずかな低下ですんでおり、健全な⽔準を維持している。こうした財務状況を製造業、⾮製造業で分けてみると、⾮製造業はより厳しいという実態がわかる。⾮製造業の中でも、特にコロナ危機で需要減退の強い影響を受けているサービス関係業種の財務状況はさらに厳しく、今後も需要の低迷が続けば、⼩規模企業などで事業継続が⼀気に困難になるリスクがあろう。

    4. ポストコロナを視野に⼊れた⽇本企業の今後の課題として、潜在成⻑率の押し上げにつながる内部留保の有効活⽤、バランスシート悪化に対応する事業構造改⾰の推進をあげたい。コロナ危機での社会の変化は、新たな投資機会を⽣み出す。そうした好機をとらえる投資は、内部留保を活⽤して積極的に⾏う必要がある。また、コロナ危機対応で資⾦繰りを確保するために増加した負債増によるバランスシートの悪化は、放置されれば今後の⼤きな問題となる。中⼩企業を⽀える実質無担保・無利⼦の融資制度で元本返済が猶予されるこの5年間のうちに、中⼩企業のキャッシュを⽣み出す⼒を回復し、さらに強化していく事業構造改⾰に取り組んでいかなければならない。問題状況が違う業種ごとに、当該の業界団体、所管省庁、⾦融機関、⾦融・法務・企業再⽣の専⾨家などが参画して、現状分析と今後の対応⽅向について議論し、業種に応じたきめ細かい対応をとっていく必要があるのではないか。

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