ABSTRACT
本稿では、関西圏のホテル開発投資構造が、大阪・関西万博と大阪IR開業を見据え高価格帯へ広がりつつある変化を明らかにするため、2016〜2030年の大型ホテル開業動向を対象に、供給規模の推移と事業者の長期的投資戦略を体系的に分析する。
- 2016年以降、新築大型ホテルの開業件数と客室数は、大阪・京都を中心に2019年・2024年・2030年の3つのピークを形成しながら拡大してきたが、2026年以降では三宮再開発や神戸空港国際化を背景に兵庫でも開業が増え、供給が3府県へ広がりが確認される。
- 新規供給される客室のグレードは、2016〜23年では低〜中価格帯が中心であった。しかし24〜30年には高価格帯が増し、客室供給の中心も低価格帯の大規模物件から、都心再開発に立地する高価格帯の物件中心へと移行している。供給構造は、高価格帯ニーズの拡大傾向に量・質ともに呼応しつつ、選択肢の幅を広げている。
- 関西のラグジュアリーホテル市場は、2026年にかけて室数と規模では大阪市の複合開発物件が、件数や物件の個性・ブランド数では京都市が大きく拡大してきた。さらに2030年にかけては、神戸市や大阪夢洲で新たな市場が形成されている。関西各都市の価値軸が共存する広域的な高付加価値市場へと進化しつつある。
- 大型ホテル事業は数百億円規模の初期投資を要し、黒字化まで20年超を見込む長期事業であり、事業者は構想段階から長期(約30年スパン)で事業を計画する。大阪IR開業などの国家プロジェクトやリニア新幹線開業といった国家的インフラ整備計画を投資判断の前提とし、都市の長期的成長性を見据えた事業展開が図られている。
DETAIL
はじめに
2025年4月13日、大阪・夢洲において「2025年日本国際博覧会」(以下、大阪・関西万博)が開幕、次週の4月24日には、会場北側に隣接する区域で「大阪・夢洲地区特定複合観光施設設置運営事業」(以下、大阪IR)の起工式が執り行われた。2010年に国会で超党派の「国際観光産業振興議員連盟(IR議連)」が発足してから実に15年を経て、ついに新たな国際観光拠点である、大阪IRが2030年秋の開業を目指して本格的に建設段階へ移行したことになる。
大阪・関西万博開催中、大阪・梅田より多くの来場者が利用した「大阪駅南(マルビル)万博シャトルバス乗場」跡では、2025年12月に「(仮称)大阪マルビル建替プロジェクト」が着工している。高さ約192メートルの複合タワーは大阪駅周辺で最も高いランドマークとなる計画であり、高層階にはラグジュアリーホテル、中層階には都市型ホテルの2ブランドが2030年に開業する予定である。
これらの大阪IRおよび都心再開発による新規投資は、万博後の関西経済を牽引する宿泊インフラの高度化を象徴している。本稿の目的は、こうした国家的プロジェクトを契機とした宿泊市場の構造変化を明らかにし、主要ホテルの建設動向から、事業者がどのような時間軸と戦略で投資判断を行っているのかを体系的に示すことである。本稿の展開は以下の通りである。
1.では、大型ホテル事業者の投資判断に影響を与えた大阪・関西万博と大阪IRプロジェクトの動向を時系列に沿って整理する。2.では、2030年までに開業される関西における新築大型ホテルの動向を整理し、各府県の特徴を概観する。3.では、2.で整理したホテルにおける1室あたりの宿泊単価に注目し、コロナ禍を経て新規開業物件の供給構造が変化していることを明らかにする。4.では、関西における新築大型ホテルのうち、ラグジュアリーホテルの開業状況を網羅的に俯瞰する。5.では、大型ホテル事業者が、ホテル開業から黒字化を目指すための資金計画を想定し、事業者の投資判断がどのように行われるかを考察した。最後の小括では本稿で得られた分析結果の含意を整理する。
1. 大阪府における大型ホテル事業者の取組み:2つの国家プロジェクトを見据えて
2016年3月、政府は「明日の日本を支える観光ビジョン構想会議」(当時:安倍晋三首相)において、訪日外国人旅行者数の目標を「2020年に4千万人、2030年に6千万人」とする方針を打ち出した(図表1)。これにより、観光産業は国家戦略の柱として位置づけられ、宿泊インフラの整備が急務となった。
2018年7月には、カジノを含む統合型リゾート(IR)実施法が国会で可決・成立し、大阪府・市は2024年のIR開業を目標に計画を進めることとなった。

さらに2018年11月、フランス・パリで開催された第164回博覧会国際事務局(BIE)総会において、2025年国際博覧会の開催地として日本(大阪)が正式に選出された(図表1)。これら民間を中心とした投資を後押しするため、政府および地方自治体により 都市計画特例・容積率緩和・宿泊施設誘致制度などの政策的支援が図られた(図表2)。こうした制度も活用して、宿泊施設の質的転換と国際化が加速し、外資系ブランドの進出や高付加価値物件の計画が相次いでいる。

当初2024年開業を予定していた大阪IRプロジェクトは、2025年大阪・関西万博開催時の夢洲地区へのアクセス混雑を避けたいという政府方針により2026年以降へ延期された。さらに、2020年に発生したコロナ禍の影響を受けて、開業時期は2030年へと後ろ倒しとなった。
開業時期が延期されたものの、夢洲地区の都市再生と国際観光拠点化を推進する中核施設として、万博閉幕後においてその重要性と期待はむしろ高まっている。こうした国家的プロジェクトの開業時期の変更や進展は、大型ホテル事業者の投資判断に大きな影響を与えたと考えられる。
2. 開業動向と建設投資の拡大規模
関西における新築大型ホテル開業件数の府県別推移(2016〜30年)を見てみよう。
分析には、当研究所が実施した「大型ホテル建設プロジェクト動向調査」を用いる[1]。調査対象とした宿泊施設101件の開業年、客室数、運営形態、宿泊料金グレード、ブランド構成、建設事業費などを整理・分析し、15年間の開業傾向と供給構造の変化を把握した(参考図表1)。なお、選定基準は図表3に示す通りである。

図表4は関西における新築大型ホテルの開業軒数の推移を示したものである。2020年から22年にかけて新型コロナウイルス感染拡大により宿泊需要は急激に落ち込んだが、2020年から24年までの5年間において、新築大型ホテルの開業軒数は年間平均10軒を超える水準で推移した。
大型ホテル事業者は深刻な宿泊需要の低迷に左右されることなく、2025年の大阪・関西万博及びその後の宿泊需要の回復を見据え、長期的な視野に立った展望に基づく投資判断を継続していたことを示している。このように関西圏における大型ホテル投資は、コロナ禍においても堅調に継続されたことになる。

建設事業費推移(2016〜30年)に着目すれば、調査対象の新築大型ホテルの建設事業費は総額1兆3,052億円に達しており、うち大阪府が7,736億円(59.3%)となっている(図表5)。
大阪府では、IR実施法の成立や大阪・関西万博の開催決定以降、都心再開発が重なり、竣工ベースで2019年、2024年、2030年に建設事業費が増加していることがわかる。特に2030年は1,610億円と突出しており、大阪IR開業時期に併せてホテルの開業が集中する見込みである。

京都府は3,204億円(24.5%)で、2019〜22年に18軒が開業した。観光需要拡大の影響もあり、新築ホテルの高付加価値化が進んだと考えられる。その後も2024~26年においても、万博開幕とその後の需要を見据えて8軒が開業している。
兵庫県は2016~30年間で1,371億円(10.5%)となっている。特に2026年以降は813億円と期間全体の約6割を占めている。三宮駅周辺で4軒の再開発プロジェクト、淡路島で2軒の滞在型物件の開業が重なり、投資が堅調に進んでいる。また、2030年の神戸空港国際化により、チャーター機を含む国際ビジネス航空の利用拡大が見込まれる。
IR開業後、訪日外客の増加が想定される中、高価格帯物件需要を支える広域周遊型の宿泊インフラが広域に形成されつつある。次章では、宿泊費グレード別の構成に着目し、関西ホテル市場がどのように推移しているのかを示す。
3. 宿泊料金別にみた新築大型ホテルの特徴:高価格帯グレードに広がる選択肢
まず新築開業する大型ホテルの1泊あたりの宿泊料金に着目して特徴を整理しよう。
図表6をみれば、2016~30年累計で、Aグレード(3万円〜/泊・室)が37軒(約4割)と最も多数を占め、次いでHグレード(10万円〜/泊・室)が25軒(約2.5割)を占める(図表6)。2016〜23年(前期)に新築開業した61軒の内訳を見ると、1〜3万円台/泊・室の比較的リーズナブルな価格帯(B・Aグレード)が77%(47/61軒)を占め、関西の新築ホテル市場は低〜中価格帯が中心であった。一方、5万円台〜10万円台/泊・室の高価格帯(S・Hグレード)は14軒にとどまり、供給は限定的であった。

しかし、2024〜30年(後期)において供給構造が大きく変化し、1〜3万円台/泊・室の比較的リーズナブルな価格帯(B・Aグレード)は27.5%(11/40軒)と前期から大幅に減少し、特にBグレードは後期ではわずか2軒にとどまっている。一方で、S・Hグレードは72.5%(29/40軒)へと急増し、前期の約2倍に拡大した。特にHグレード(10万円前後〜/泊・室)の増加が顕著で、高価格帯(S・Hグレード)が新築ホテル供給の中心的な位置を占めるようになった。こうした供給構造の変化の背景には、ハイエンドビジネス客や富裕層の、長期滞在やMICE参加滞在等の需要の拡大を予想し、事業者の投資が進んだものと考えられる。
また供給客室をみると、2019年4,899室、2023年3,707室、2024年5,024室、そして2030年は3,506室と顕著に増加している(図表7)。1,000室規模の物件をみれば、19年は
「ホテル阪急レスパイア大阪」(1,030室)、「アパホテル&リゾート御堂筋本町駅タワー」(913室)、23年は「アパホテル&リゾート大阪梅田駅タワー」(1,704室)、2024年は「アパホテル&リゾート大阪難波駅タワー」(2,055室)がそれぞれ開業している。これらの宿泊施設は比較的低価格帯のBグレード(1万円前後〜/泊・室)であり、主に都市型エコノミーホテルとしての側面が強い。

一方、2030年に見込まれる3,506室は構造が大きく異なる。大阪IRにおいて開業予定の「MGM大阪・MGM大阪ヴィラ」(1,840室)をはじめ、都心再開発によるラグジュアリーホテル群(大阪マルビル建替プロジェクトなど)が中心となる。これらの物件は約95%が高価格帯(S・Hグレード)に属し、2030年の供給は「量」「質」とも高付加価値物件への投資の構造が転換しつつある。
なお、京都市では、前掲の図表2で示した2022年に「上質宿泊施設誘致制度」の計画選定を受け、24年着工を予定していた事業者の物件が、地域環境への影響への配慮等を理由として、地元住民との調整や合意形成が難航し、未着工となっている事例もみられる。こうした経緯を踏まえると、ホテル整備を進めるうえでは、地域との合意形成と共生が最重要の要件となる。
では、この高価格帯の中でも最上位に位置づけられるラグジュアリーホテルは、関西圏でどのように拡大してきたのか。次章では、1997年以降の長期的な開業動向を網羅的に整理し、その推移と規模を示す。
4. 高価格帯ホテルの市場拡大と多様性の深化:2026年供給物件の特性
図表8は、関西で営業または今後開業する、宿泊費が概ね1室10万円以上のラグジュアリーホテル[2]を、1997年から2030年にかけて網羅的に整理したものである。宿泊費が1室10万以上のホテルは2010年時点でわずか累計2軒(総室数451室)にすぎなかったが、2030年には26軒(5,472室)へと拡大しており、20年間で12倍以上の規模に増加する見通しである。
2026年は、全26軒のうち最多となる5軒が開業する年であり、その供給物件の特性も際立っている。開業地別では、京都市内では、3月に「帝国ホテル京都」が祇園の弥栄会館を再生して開業し、またシンガポールの「カペラ京都」が花街・宮川町の伝統と静寂に調和した施設として誕生し、さらに秋には「シャングリラ京都二条城」が開業を控えている。3ブランドは、立地環境の特性を生かした建築空間と情緒性、そして最高級のホスピタリティを競い合う。
6月に奈良市では「星のや奈良監獄」が、日本で初めて重要文化財の旧監獄を活用した、重厚な歴史が息づく建築空間の宿泊施設として唯一無二の滞在を提供する。また淡路市では「THE PASONA」が、長期滞在型未病ウェルネス・リトリート施設として、心身を整える多様なプログラムを提供する。さらに特筆すべきは、これら両物件が複数泊を前提とした滞在型の集客営業を開始している点である。
大阪市におけるラグジュアリーホテルの供給は2024年までは、「ザ・リッツ・カールトン大阪」(1997年)を含む4軒(887室)に限られていた。2024〜25年にかけて4軒が大阪・関西万博に合わせて開業し、累計は8軒へと拡大した。さらに30年には、大阪IRにおいて開業予定の「MGM大阪・MGMヴィラ」(1,840室)が加わり、累計10軒(4,039室)へと拡大する。各物件は、大型開発の中核施設であり、またビジネスや観光目的地へのアクセスにも優れ、高層階の眺望性、多客室数、MICE機能を活かした、“大都市複合型ラグジュアリー”を形成しており、ハイエンドの客層を中心とした需要拡大を見込む。
京都市では、2028年までに累計12軒(1,149室)が開業され、件数では大阪市を上回る。国内外6カ国(米国、英国、シンガポール、香港、タイ、日本)のハイエンドブランドが集積しており、関西圏において国際的なラグジュアリー宿泊市場を形成している。特に、歴史的文化資源と景観ロケーションを重視した比較的小規模・高単価のブティック型が中心であり、京都の歴史や文化と融合した個性を重視する“古都文化の体験型ラグジュアリー”が形成され、スペシャル(特別)な体験を求めるハイエンド層に対し、滞在の選択肢を拡大させる。

神戸市では、2030年に県内初となるラグジュアリークラスの「コンラッド神戸」が開業を迎える。また、JR三宮駅南側で開発中の2物件も高付加価値帯ブランドとして整備が進められており、30年前後の開業が見込まれる。これら3軒はいずれも利便性の高い都心部に位置し、大型複合再開発ビルの高層階に立地することで、眺望性を活かした集客が期待されている。国際貿易都市としての歴史に加え、新幹線・港湾・空港が近距離で結節する都市特性を活かし、国際チャーター便の発着やスーパーヨット(大型艇)マリーナ整備を背景に、人・文化・情報が交わる“交流結節型ラグジュアリー”が形成される。そこに集う新たなビジネス層・クリエーター層やハイエンドの旅行者が滞在する空間として、新たなラグジュアリーホテルへの期待が広がっている。
大阪夢洲エリアでは、2030年に開業する大阪IRは、エンターテインメント・アートに加え、ラグジュアリーブランドや文化体験型ショップなどの高付加価値リテールと国際水準のカジノを有している。ここでは多様な価値観や人々が交流し、新たな体験が生まれる“協創発信型ラグジュアリー”として、関西全域への送客ハブ機能を担う。
こうした地域別の多様性は、関西圏のラグジュアリー市場が単一都市ではなく、複数の価値軸が共存する広域的な高付加価値市場へと進化しつつあることを示している。ラグジュアリーホテルの供給は関西圏において量的にも質的にも急速に拡大し、宿泊インフラの上位層を担う重要な役割を果たしており、関西の国際競争力を高める基盤として位置づけられる。
以上で整理した新築大型ホテルの開業が、実際にどのような資金計画と時間軸を前提に構築されているのかは、外部からは見えにくい。そこで次章では、典型的な資金計画モデルを示し、事業者がどのような長期視点で投資を行っているのかを明らかにする。
5. 大型ホテル投資の資金計画と長期的な事業構造
大型ホテル開業の動向を分析するにあたり、事業者がどのような資金計画と収益見通しを前提に事業を構築しているのかを示すため、2025年開業を想定したモデルケース(図表9)を提示する[3]。本ケースは、同年に開催された大阪・関西万博の前後、すなわち2024〜26年に開業または開業予定の24軒の大型ホテル群をイメージしたものである(参考図表1)。
《ホテル事業:開業からキャッシュフロー黒字化までの資金計画モデル》
初期投資として200億円(借入金、内訳:土地取得費50億円、建物建設費150億円)を投じてホテルを建設し、2025年に開業する。開業後は毎年10億円の安定的な利益剰余金を借入金返済に充当することで、22年後の2046年に完済し、翌年からキャッシュフロー黒字化を達成できるモデルの試算である。また、営業開始後10年目と20年目には、それぞれ10億円規模の大規模改修工事を実施する。大型ホテルは建設投資が巨額であり、黒字化まで20〜30年を要する事業特性を持つ。このため、投資判断は短期的な需要変動ではなく、都市の長期的な成長性を前提として行われる。
事業構想の起点は、2018年の「IR実施法」国会可決および同年の国際博覧会事務局(BIE)総会における大阪の開催国(都市)選出の時期と重なっており、2024年の大阪IR開業と、2025年の大阪・関西万博開催が投資判断を後押しした可能性がある。

このモデルから、大型ホテル事業者は構想段階からキャッシュフロー黒字化に至るまで、約30年という長期的なスパンで関西地域の経済発展を見据え、事業計画を立案・実行していることが伺える。これは単なる宿泊施設の整備にとどまらず、地域産業振興や都市開発と連携した、長期的かつ戦略的な投資判断が必要と言える。
その間、大阪市内では2031年になにわ筋線(大阪駅(うめきた⇔JR難波駅・南海本線新今宮駅)がJR線と南海本線とを結節し、2032年頃には阪神高速道路の淀川左岸線の全線開通が見込まれている。またJR桜島線の夢洲延伸が2030年代の開通を目指して計画されており、大阪都心部と関西国際空港や大阪湾岸部を結ぶ交通機能の強化が期待される。
さらに、2040年代以降には北陸新幹線およびリニア中央新幹線の大阪延伸が開業し、関西の広域交通ネットワークを根本から変える国家的交通インフラ整備の転換点を迎えることになる。
こうした主要インフラ整備の進展は、ホテル事業者にとって構想段階から投資判断に織り込まれていたと考えられ、関西圏への長期的な投資を正当化する前提条件として機能してきたと推察される。
小括
これまでに行った分析内容を整理し、得られた含意は以下のとおりである[4]。
- 2016年以降、新築大型ホテルの開業件数と客室数は、大阪・京都を中心に2019年・2024年・2030年の3つのピークを形成しながら拡大してきたが、2026年以降では三宮再開発や神戸空港国際化を背景に兵庫でも開業が増え、供給が3府県へ広がりが確認される。
- 新規供給される客室のグレードは、2016〜23年では低〜中価格帯が中心であった。しかし24〜30年には高価格帯が増し、客室供給の中心も低価格帯の大規模物件から、都心再開発に立地する高価格帯の物件中心へと移行している。供給構造は、高価格帯ニーズの拡大傾向に量・質ともに呼応しつつ、選択肢の幅を広げている。
- 関西のラグジュアリーホテル市場は、2026年にかけて室数と規模では大阪市の複合開発物件が、件数や物件の個性・ブランド数では京都市が大きく拡大してきた。さらに2030年にかけては、神戸市や大阪夢洲で新たな市場が形成されている。関西各都市の価値軸が共存する広域的な高付加価値市場へと進化しつつある。またこうした開発が、旅行者の滞在の選択肢の拡大のみならず、都市の景観向上やにぎわい創出に寄与することが期待されよう。
- 大型ホテル事業は数百億円規模の初期投資を要し、黒字化まで20年超を見込む長期事業であり、事業者は構想段階から長期(約30年スパン)で事業を計画する。大阪IR開業などの国家プロジェクトやリニア新幹線開業といった国家的インフラ整備計画を投資判断の前提とし、都市の長期的成長性を見据えた事業展開が図られている。
参考文献
アジア太平洋研究所(2025),『アジア太平洋と関西 関西経済白書2025』,EXPO 2025 Chronology,日経印刷株式会社,2025年10月
井上建治・野村亮輔・稲田義久(2023),『コロナ禍と関西のホテル建設-コロナ禍に宿泊事業者はどのように対応したのか-』,(https://www.apir.or.jp/research/post15621/),APIR Trend Watch No.87,2023年8月9日。
井上建治・野村亮輔・稲田義久(2024),『関西観光客の急回復とホテル業 -外国事業者の積極的な展開と国内事業者の対応-』,(https://www.apir.or.jp/research/post17995/),APIR Trend Watch No.97,2024年9月17日。
[1] 本調査では、関西2府4県(大阪府・京都府・兵庫県・奈良県・滋賀県・和歌山県)に所在し、延床面積3,000坪以上または試算事業費40億円以上の大型ホテルを対象に、2016〜2025年の開業物件と2030年までの開業予定物件を網羅的に収集した。なお、同様の分析事例として井上ほか(2023)がある。
[2] 本稿では、分析の一貫性と比較可能性を確保するため、客室数40室未満の小規模物件、会員制リゾート物件、ならびにブランド名称等が未公表の物件は、ラグジュアリー区分の選定対象外とした。
[3] 本ケースは、井上ほか(2024)で示されているホテル事業の運営方式のうち「所有直営方式(自社による一体運営)」を前提として作成。
[4] 本稿の作成にあたり、アジア太平洋研究所の稲田 義久研究統括よりご指導賜り、また猪木 武徳研究顧問から大変有益な助言をいただいた。記して感謝申し上げる。なお、本稿における誤りは全て筆者の責任である。
