研究者紹介
関 和広2022年4月現在
甲南大学教授
テキストアナリティクス、データサイエンス、機械学習
学歴
- 2000年3月 図書館情報大学 図書館情報学部 卒業
- 2002年3月 図書館情報大学大学院 情報メディア研究科 博士前期課程 修了
- 2006年9月 Indiana University, Bloomington博士課程 修了
- Ph.D. in Information Science (Indiana University, Bloomington)
職歴
- 2014年4月 甲南大学 知能情報学部 准教授
- 2021年4月 甲南大学 知能情報学部 教授(現職)
主な著作物
- “Measuring Social Change Using Text Data: A Simple Distributional Approach.”
- Reconstruction of the Public Sphere in the Socially Mediated Age. Springer, pp. 139-164, November 2017. (共著)
- “Statistical Anaphora Resolution for Japanese Zero Pronouns. ”
- Readings in Japanese Natural Language Processing. CSLI Publications, pp. 108-128, June 2016. (共著)
主な論文
- “News-based Business Sentiment and its Properties as an Economic Index. ”
- Information Processing & Management (IP&M), Vol. 59, No. 2, 102795, March 2022.
- (with Yusuke Ikuta and Yoichi Matsubayashi)
- “Cross-Lingual Text Similarity Exploiting Neural Machine Translation Models. ”
- Journal of Information Science, Vol. 47, No. 3, pp. 404-418, June 2021.
- 「経済ニュースによる景況感指数の足元予測.」(生田祐介と共著)情報処理学会論文誌, Vol. 62, No. 5, pp. 1288-1297, May 2021.
所属学会
- 情報処理学会
- 人工知能学会
論文一覧
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テキストデータを利用したS-APIR指数の実用化
研究プロジェクト
研究プロジェクト » 2022年度 » 経済予測・分析軸
ABSTRACT
リサーチリーダー
APIR主席研究員 関 和広 甲南大学知能情報学部教授
研究目的
従来、マクロ経済の動向を把握するには、集計データを用いることが一般的である。しかし、集計データは、リアルアイム性に欠けており、ミクロの経済要因を知るには不十分という課題がある。一方、昨今の情報技術の急速な進展により、国内外の経済活動において生成される大規模なデータ(ビッグデータ)が様々な形で利用可能になり始めている。きわめて豊富な情報を内包しているビッグデータの活用は、マクロ経済のより精緻な情勢判断と予測において、有効であると考えられる。このため、本研究ではビッグデータの一つであるテキストデータを利用して、経済の動向を把握することを試みる。
研究内容
S-APIR指数(景気関連指数)を推定するため、リカレント・ニューラル・ネットワーク(Recurrent Neural Network,以下RNN)に加え、Google社が開発した最新の学習モデルであるBERT(Bidirectional Encoder Representations from Transformers)を用いる。BERTは、RNNのように単語の順序を考慮した上では学習することはせず、文中の全ての単語同士の依存関係を学習する。その処理を基本として、S-APIR指数を推定するモデルの精度向上を図る。
<研究体制>
研究統括
稲田 義久 APIR研究統括兼数量経済分析センター長、甲南大学名誉教授リサーチリーダー
関 和広 APIR主席研究員、甲南大学知能情報学部教授リサーチャー
松林 洋一 APIR上席研究員、神戸大学大学院経済学研究科教授生田 祐介 大阪産業大学経営学部准教授期待される成果と社会還元のイメージ
新聞記事のテキストデータから景況感を推定するモデルを構築し、その出力値をS-APIR指数と称している。これを政府による既存の景況感指数と比較することで、我々のモデルが有する特徴を明らかにする。その結果を踏まえて、「S-APIR指数」を一般に公表していく。
景気動向を代理する「S-APIR指数」を見ることで、企業の経営判断を行う際の議論に使えるようにする。そして、国や自治体に対しても、政策決定に活用して頂くことを検討する。具体的に、本研究の成果の一つとして期待できる「単語のデモ・システム」を、ユーザーへ公開する。ユーザー自身が、デモ・システムへ興味ある単語を入力すると、その単語がS-APIR指数にどのような影響を与えているのか知ることができる。例えば、「東京五輪」という単語を入力した場合、ミクロの波及メカニズム(例、建設需要)までは見ることができないが、東京五輪が最終的に景気動向へ正の影響を及ぼすのかどうかを調べるための、きっかけとなる。
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テキストデータを利用した新しい景況感指標の開発と応用(下)― 応用編:深層学習を利用したテキスト分析 ―
ディスカッションペーパー
ディスカッションペーパー
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ABSTRACT
本稿では、テキストマイニングに基づいて、新聞や雑誌の文字情報から景況感指数の計測を行う際の実践的な手続きについて解説していきます。テキストマイニングの基本的概念については、入門編において紹介しました。文字情報から景気動向を抽出するという試みは、魅力的ですが、基本的なテキストマイニングの手法には限界もあります。最も重要な問題点は、新聞記事等の文章に含まれている単語を単体として取り出して、その単語のみで景気の良し悪しを判定することは適当ではないということです。ここでは、深層学習の代表的な手法であるニューラルネットワークと呼ばれるモデル(およびその修正版)について丁寧に解説を行います。あわせて上巻で紹介した内閣府「景気ウォッチャー調査」をもとに、こうした新たな手法を用いた景況感指数の計測を紹介し、その特性を見ていくことにします。