ABSTRACT
【ポイント】
・JNTO訪日外客統計によれば、6月の訪日外客総数(推計値)は337万7,800人、前年同月比+7.6%と伸びは1桁にとどまった。SNSによる誤情報の影響もあり、香港からの訪日外客数が減少した影響が表れた。
・目的別訪日外客総数(暫定値)をみれば、4月は390万9,128人。うち、観光客は358万7,187人と過去最高を更新した。
・大阪・関西万博の累計一般来場者数(8月17日時点)は1,467万1,170人となり、1,500万人に迫る水準となった。万博閉幕(10月13日)が近づく中、関西自治体は、万博来場者を自府県へ一層誘客するための施策に取り組んでいる。今回は福井県のインバウンド向けの旅行商品の事例を取り上げ、その内容を紹介した。
【トピックス1】
・関西6月の輸出額は9カ月連続で、輸入額は2カ月ぶりにそれぞれ増加した。結果、関西の貿易収支は5カ月連続の黒字となり、黒字幅は2カ月連続で拡大した。
・6月の関空への訪日外客数は95万3,902人となり、6月として過去最高値を更新した。
・6月の第3次産業活動指数は3カ月連続で上昇した。また、対面型サービス業指数は「運輸業、郵便業」や「医療、福祉」が上昇に寄与し、2カ月連続の上昇となった。また、観光関連指数は「劇場・興行団」や「宿泊業、飲食サービス業」等が低下した影響で、2カ月ぶりの低下となった。
【トピックス2】
・4月の関西2府8県の延べ宿泊者数は12,069.4千人泊。前年同月比でみると2021年11月以降プラスを記録しており、増加幅は前月から拡大した。
・うち、日本人延べ宿泊者数は2カ月ぶりに前年を下回ったが、外国人延べ宿泊者数は37カ月連続で前年を上回った。
【トピックス3】
・2025年4-6月期の訪日外国人消費額(速報、全目的ベース)は2兆5,250億円となり、過去最高値を更新。訪日外客数が着実に増加していることに加え、消費単価が20万円超の水準を維持していることが影響した。正常化した24年以降をみれば前年同期比2桁の伸びが続いているが、増加幅は前期から縮小した。
・一般客1人1泊当たり旅行支出(全目的)は2万5,350円となった。前年同期比-9.7%と、なり、正常化した2024年以降、初めてのマイナスである。国・地域別では、香港が最も高く、次いで、米国、シンガポール、台湾、中国と続いている。コロナ禍以降、着実に上昇してきた消費単価だが、4-6月期は多くの国・地域において減少しており、変化の兆しがみられる。
・1人1泊当たり旅行支出を費目別にみれば、宿泊費を除いて、すべての費目で減少がみられた。
DETAIL
ポイント
7月発表のデータのレビュー:JNTO 訪日外客数
▶JNTO訪日外客統計によれば(図1及び表4)、6月の訪日外客総数(推計値)は337万7,800人であった。前年同月比+7.6%と前月(同+21.5%)から縮小し、伸びは1桁にとどまった。SNSによる誤情報の影響もあり、香港からの訪日外客数が減少した影響が表れた。また、同月の出国日本人数は105万4,000人であった(同+13.3%)。なお、2019年同月比では-30.7%と、減少幅は前月(同-25.1%)から拡大。結果、1-6月累計の訪日外客数は2,151万8,100人(前年同期比+21.0%)となり、過去最速で2,000万人を超えた。一方、同期の出国日本人数は660万8,951人(同+14.0%)であった。
▶訪日外客数のトップ5を国・地域別にみると(図2及び表4)、6月は中国が79万7,900人(前年同月比+19.9%)と最多であった。次いで韓国が72万9,800人(同+3.8%)、台湾が58万5,000人(同+1.8%)、米国が34万5,100人(同+16.4%)、香港が16万6,800人(同-33.4%)と続く。香港は前述した誤情報の影響もあり、前月(同-11.2%)から減少幅が拡大した。
▶目的別訪日外客総数(暫定値)をみれば(図3及び表5)、4月は390万9,128人(前年同月比+28.5%)。うち、観光客は358万7,187人(同+29.8%)となり、過去最高値を更新。その他客は21万7,869人(同+20.4%)、商用客は10万4,072人(同+5.5%)であった。
▶大阪・関西万博の累計一般来場者数(8月17日時点)は1,467万1,170人となり、1,500万人に迫る水準となった。万博閉幕(10月13日)が近づく中、関西自治体は、来場者を自府県へ一層誘客するために積極的な施策を実施している。今回は、奈良県、和歌山県、徳島県、三重県、滋賀県に続き、福井県の事例を取り上げてみよう。
▶福井県では、JR西日本と連携しインバウンド向けの旅行商品を造成している。具体的には、1)個人向けのフリープランと2)エスコート付のツアーの旅行商品が万博開幕期間中に販売されている(詳細はURLを参照https://www.fuku-e.com/topics/detail_3147.html)。1)については、1泊2日の旅程を通じて県の観光名所を自由に巡るプランであり、2)については、ガイド付きのツアーで、人気スポット(永平寺、恐竜博物館、レインボーライン山頂公園)とナイトコンテンツを楽しむプランである。特徴的なのは、大阪駅からのJRきっぷと県内での宿泊、観光、体験等がセットとなっていることである。これらの旅行商品によって、大阪に集中している訪日外客を自県へ誘客することができれば、より一層地域の経済効果が高まることに繋がろう。
トピックス1
6月関西の財貨・サービス貿易及びサービス産業動向
▶関西 6 月の輸出額は前年同月比+1.4%と 9 カ月連続で増加した(前月:同+0.8%)。また、輸入額は同+1.1%と2カ月ぶりの増加となった(前月:同-2.5%)。関西の貿易収支は+2,975億円と5カ月連続の黒字となり、黒字幅は同+2.9%と2カ月連続で拡大した(前月:同+50.3%%)(図4)。結果、4-6月期の貿易収支は+6,240億円と11四半期連続の黒字となり、黒字幅は前年同期比+7.7%2四半期ぶりに拡大した(1-3月期:同-14.8%)。
▶対中貿易動向をみると(図5)、関西6月の対中輸出は前年同月比2.9%と2カ月連続で減少した(前月:同-4.6%)。輸出減に寄与したのは半導体等製造装置や映像機器等であった。また、対中輸入は同-0.6%と 4 カ月ぶりの減少(前月:同+2.0%)。輸入減に寄与したのは通信機や金属製品等であった。4-6月期の対中輸出は前年同期比+1.2%と2四半ぶりに増加(1-3月期:同-1.1%)。また、対中輸入は同+9.5%と4四半期連続で増加した(1-3月期:同+6.0%)。
▶6月の関西国際空港(以下、関空)への訪日外客数は89万2,931人となり、6月として過去最高値を更新した(前年同月比+9.9%)。同月の日本人出国者数は 19 万 4,766 人であった。増加幅(同+13.3%)は前月(同+15.6%)から幾分縮小した。なお、2019 年同月比では-34.1%となり、アウトバウンド需要の回復ペースは依然低調である。
▶サービス業の生産活動を示す第3次産業活動指数(季節調整済み:2019-20 年平均=100)をみれば(図 7)、6 月は 105.0 で前月比+0.5%と3カ月連続のプラスとなった(前月:同+0.3%)。このため経産省は基調判断を「一部に足踏みがみられるものの、持ち直しの動き」と上方修正した。また、対面型サービス業指数*は106.6で同+0.8%と、2カ月連続のプラス(前月:同+0.9%)。うち、運輸業、郵便業(同+3.3%、2カ月連続)や医療、福祉(同+0.5%、2カ月ぶり)が上昇に寄与した。4-6 月期の第3次産業活動指数は前期比+0.4%、2 四半期連続で上昇した(1-3月期:同+1.4%)。一方、対面型サービス業指数は同-0.5%、3四半期ぶりに低下した(13 月期:同+1.8%)。
▶6 月の観光関連指数**(季節調整済み:2019-20 年平均=100)は(図 7)、112.3 と前月比-1.2%低下し、2 カ月ぶりのマイナス(前月:同+3.0%)。うち、宿泊業、飲食サービス業(同-1.9%、2カ月ぶり)や劇場・興行団(同-5.9%、2カ月ぶり)が低下に寄与した。結果、4-6月期の観光関連指数は前期比-1.8%、4四半期ぶりに低下した(1-3月期:同+3.5%)。
*対面型サービス業は、「運輸業、郵便業」、「宿泊業、飲食サービス業」、「生活関連サービス業、娯楽業」、「学習支援業」及び「医療、福祉」を指す。
**観光関連指数は第3次産業活動指数のうち、「旅客運送業」、「宿泊業、飲食サービス業」、「旅行業」、「映画館」、「劇場・興行団」及び「公園、遊園地・テーマパーク」の各指数の加重平均。
トピックス2
4月延べ宿泊者数の動向:関西2府8県
▶観光庁によれば、4月の関西2府8県の延べ宿泊者数(全体)は12,069.4千人泊であった(表1)。前年同月比+4.4%と2021年11月以降プラスを記録し、増加幅は前月(同+4.0%)から小幅拡大。
▶日本人延べ宿泊者数は6,946.0千人泊となった。前年同月比4.4%と2カ月ぶりに減少した(前月:同+2.1%)(表1及び図8)。府県別に延べ宿泊者数を降順にみれば、大阪府2,517.0千人泊、兵庫県1,091.1千人泊、京都府1,072.4千人泊、三重県683.1千人泊、滋賀県375.8千人泊、福井県309.2千人泊、和歌山県297.0千人泊、奈良県217.6千人泊、徳島県209.6千人泊、鳥取県173.4千人泊であった。関西4月の前年同月比(-4.4%)に対する寄与度をみれば、京都府(同-4.1%ポイント)、兵庫県(同-0.7%ポイント)や鳥取県(同-0.7%ポイント)等、4府県が減少に寄与した。特に京都府では2025年1月を除けば23年9月以降、2桁減少が続いており、日本人宿泊者数は依然低迷している。一方、増加に寄与したのは、福井県(同+0.4%ポイント)、奈良県(同+0.3%ポイント)、大阪府(同+0.2%ポイント)等、6府県であった。
▶外国人延べ宿泊者数は5,123.3千人泊となり、過去最高値を更新した(表1及び図9)。前年同月比+19.2%と37カ月連続のプラス、増加幅は前月(同+8.2%)から拡大した。府県別に延べ宿泊者数を降順にみれば、大阪府2,476.2千人泊、京都府2,144.4千人泊、兵庫県183.8千人泊、和歌山県97.6千人泊、奈良県62.8千人泊、三重県57.2千人泊、滋賀県43.4千人泊、徳島県27.3千人泊、鳥取県18.1千人泊、福井県12.6千人泊であった。なお、京都府、兵庫県、徳島県の延べ宿泊者数は単月過去最高値を更新。前年同月比(+19.2%)への寄与度をみれば、京都府(同+9.6%ポイント)、大阪府(同+6.7%ポイント)、兵庫県(同+1.0%ポイント)等10府県すべてで外国人延べ宿泊者の増加に寄与した。
▶なお、宿泊料金と賃金との交易条件(現金給与総額/宿泊料金:2019年=100)をみれば、2025年6月は70.5となった。前年同月比4.0%と27カ月連続の悪化。依然として日本人宿泊者にとっては厳しい状況が依然続いている(図10)。
トピックス3
2025年4-6月期訪日外国人消費の動向
▶観光庁によれば、2025年4-6月期の訪日外国人消費額(速報、全目的ベース)は2兆5,250億円となり(図11)、過去最高値を更新した(13月期:2兆2,720億円)。訪日外客数が着実に増加していることに加え、消費単価が20万円超の水準を維持していることが影響した。前年同期比+18.0%と正常化した24年以降をみれば2桁の伸びが続いているが、増加幅は前期(同+28.4%)から縮小した。
▶4-6月期の訪日外国人消費のトップ5を国・地域別にみれば(図12)、中国が5,160億円(前年同期比+16.7%)と最多であった。次いで、米国が3,566億円(同+28.2%)、台湾が2,915億円(同+10.5%)、韓国が2,312億円(同+3.6%)、香港が1,358億円(同-22.1%)と続く。誤情報の影響を受けた香港は2四半期連続で減少した。
▶一般客1人1泊当たり旅行支出(全目的)は2万5,350円となり、前年同期比-9.7%減少した(1-3月期:同+10.2%)。24年以降、初めてのマイナスである。国・地域別にみれば、香港が3万5,872円(同-8.2%)と最も高い。次いで、米国が3万678円(同+5.3%)、シンガポールが3万210円(同-13.2%)、台湾が3万115円(同-13.6%)、中国が3万13円(同-9.8%)となっている(表2)。コロナ禍以降、着実に上昇してきた消費単価だが、4-6月期は多くの国・地域において減少しており、変化の兆しがみられる。
▶4-6月期の1人1泊当たり旅行支出を費目別でみれば(表3)、宿泊費が9,794円(同+4.9%)と最も多く、次いで買物代が6,579円(同23.5%)、飲食費が5,347円(同-13.1%)、交通費が2,572円(同12.6%)、娯楽等サービス費が1,034円(同-1.2%)と続いている。宿泊費を除いて、すべての費目で減少がみられた。日銀大阪支店によれば、同期の百貨店免税売上高は前年同期比-38.2%減少し、買物代の減少幅と整合的である。なお、平均泊数は9.4泊と、前年同期差+0.9泊増加した。
*トピックス3は四半期ごとの掲載である。
**「全目的」とは、観光・レジャー目的以外に、業務、留学、親族・知人訪問等の目的の旅行者を含む。ただし、1年未満の滞在者が対象である。