ABSTRACT
【ポイント】
・JNTO訪日外客統計によれば、7月の訪日外客総数(推計値)は343万7,000人、前年同月比+4.4%と伸びは2カ月連続で1桁にとどまった。SNSによる誤情報の影響もあり、香港や韓国の訪日外客数が減少した影響が表れた。
・目的別訪日外客総数(暫定値)をみれば、5月は369万3,587人。うち、観光客は3336万8,573人と5月として過去最高値を更新した。
・大阪・関西万博の累計一般来場者数(9月15日時点)は11,942万7,523人となり、2,000万人に迫る水準となった。万博閉幕(10月13日)まで1カ月を切り、関西自治体は、来場者を自府県へ誘客するために積極的な施策を実施している。今回は大阪府が行っている府内への誘客策の事例を取り上げ、その内容を紹介した。
【トピックス1】
・関西7月の輸出額は10カ月連続の増加だが、輸入額は2カ月ぶりの減少となった。結果、関西の貿易収支は6カ月連続の黒字となり、黒字幅は3カ月連続で拡大した。
・7月の関空への訪日外客数は89万4,516人。前年同月比+7.6%と増加幅は前月から縮小し、2カ月連続で1桁の伸びにとどまった。
・7月の第3次産業活動指数は2カ月ぶりの上昇となった。また、対面型サービス業指数は「運輸業、郵便業」が上昇に寄与し、2カ月ぶりの上昇。一方、観光関連指数は「劇場・興行団」や「宿泊業、飲食サービス業」等が低下した影響で、2カ月連続で低下した。
【トピックス2】
・5月の関西2府8県の延べ宿泊者数は12,664.1千人泊。前年同月比でみると2021年11月以降プラスを記録しており、増加幅は前月から小幅拡大した。
・うち、日本人延べ宿泊者数は4カ月ぶりに前年を上回った。また、外国人延べ宿泊者数は38カ月連続で前年を上回ったものの、増加幅は幾分縮小した。
【トピックス3】
・2025年4-6月期関西(2府8県ベース)の国内旅行消費額(速報)は1兆4,078億円。6四半期連続で前年を上回ったが、伸びは3四半期連続で1桁台にとどまった。
・国内旅行消費額のうち、宿泊旅行消費額は1兆981億円と5四半期連続で、日帰り旅行消費額は3,097億円億円と2四半期ぶりにそれぞれ前年を上回った。
・日帰り消費額をみれば、大阪府と和歌山県を除き、すべての府県が前年の水準を下回る中、特に大阪府は4月13日に開幕した大阪・関西万博の影響もあり、消費額は過去最高値を更新した。
DETAIL
ポイント
8月発表データのレビュー:JNTO 訪日外客数
▶JNTO訪日外客統計によれば(図1及び表4)、7月の訪日外客総数(推計値)は343万7,000人であった。前年同月比+4.4%と前月(同+7.6%)から縮小し、伸びは2カ月連続で1桁にとどまった。SNSによる誤情報の影響が続き、香港や韓国からの訪日外客数が減少した影響が表れた。また、同月の出国日本人数は120万5,500人であった(同+14.9%)。なお、2019年同月比では-27.3%と、減少幅は前月(同-30.7%)から小幅縮小した。
▶訪日外客数のトップ5を国・地域別にみると(図2及び表4)、7月は中国が97万4,500人(前年同月比+25.5%)と最多であった。次いで韓国が67万8,600人(同-10.4%)、台湾が60万4,200人(同+5.7%)、米国が27万7,100人(同+10.3%)、香港が17万6,000人(同-36.9%)と続く。前述した誤情報の影響もあり、香港は3カ月連続で、韓国は2022年1月(同-50.1%)以来の減少となった。
▶目的別訪日外客総数(暫定値)をみれば(図3及び表5)、5月は369万3,587人(前年同月比+21.5%)。うち、観光客は336万8,573人(同+22.1%)となり、5月として過去最高値を更新した。その他客は21万2,049人(同+20.8%)、商用客は11万2,965人(同+6.1%)であった。
▶大阪・関西万博の累計一般来場者数(9月15日時点)は1,942万7,523人となり、2,000万人に迫る水準となった。万博閉幕(10月13日)まで1カ月を切り、関西自治体は、来場者を自府県へ誘客するために積極的な施策を実施している。今回は、奈良県、和歌山県、徳島県、鳥取県、三重県、滋賀県、福井県に続き、大阪府の事例を取り上げてみよう。
▶大阪府では、国内外の観光客を府内へ誘客するため、1)「大阪デスティネーションキャンペーン(4月1日~6月30日)」、2)「大阪ウィーク(5月9~11日、7月28~30日、9月13~15日)」や3)「大阪来てな!キャンペーン」を展開している。1)については、府内の観光資源をめぐるモデルコース(例えば堺市の百舌鳥・古市古墳群の特別ガイドツアーなど)やイベントの紹介、2)については、万博会場内にて大阪府の各市町村の歴史・伝統文化、産業・技術等を体験できる参加型イベントの開催である。また3)については、大阪府内で行われるイベントと連携することで大阪への集客や府内周遊の促進を目指している。いずれの施策も国内外の旅行者を府内へ誘客するのみならず、府内での周遊を促進するものとなっているのが特徴的である。このような取り組みによって府内の周遊が促進されれば、万博開幕の効果がより一層均霑されよう。
トピックス1
7月関西の財貨・サービス貿易及びサービス産業動向
▶関西7月の輸出額は前年同月比+1.3%と10カ月連続で増加した(前月:同+1.4%)。一方、輸入額は同-6.4%と2カ月ぶりの減少となった(前月:同+1.1%)。このため、関西の貿易収支は+2,502 億円と6カ月連続の黒字となり、黒字幅は同+128.2%と3カ月連続で拡大した(前月:同+2.9%)(図4)。
▶対中貿易動向をみると(図5)、関西7月の対中輸出は前年同月比+0.1%と小幅ながら3カ月ぶりに増加した(前月:同-2.9%)。輸出増に寄与したのは半導体等電子部品、繊維機械等であった。一方、対中輸入は同-2.7%と2カ月連続の減少(前月:同-0.6%)。輸入減に寄与したのは通信機、衣類及び同附属品等であった。
▶7月の関西国際空港(以下、関空)への訪日外客数は89万4,516人であった(図 6)。前年同月比+7.6%と増加幅は前月(同+9.9%)から縮小し、2 カ月連続で 1 桁の伸びにとどまった。前述したように、SNS等を通じた誤情報が広まったこともあり、香港や韓国からの入国者が減少した影響が表れたようである。同月の日本人出国者数は22万6,966人であった。前年同月比+17.5%と増加幅は前月(同+13.3%)から拡大。なお、2019年同月比では-28.7%となり、アウトバウンド需要は依然低迷している。
▶サービス業の生産活動を示す第 3 次産業活動指数(季節調整済み:2019-20 年平均=100)をみれば(図7)、7月は105.0で前月比+0.5%と 2 カ月ぶりのプラスとなった(前月:同-0.2%)。経産省は基調判断を「一部に足踏みがみられるものの、持ち直しの動き」と前月から据え置いた。また、同月の対面型サービス業指数*は 106.2 で同+0.5%と、2 カ月ぶりのプラス(前月:同0.7%)。うち、運輸業、郵便業(同+3.4%、2カ月ぶり)が上昇に寄与した。7月を4-6月平均と比較すると、第3次産業活動指数は+0.5%(4-6月期:前期比+0.4%)、対面型サービス業指数は+0.6%(4-6月期:前期比-0.5%)、それぞれ上昇した。
▶7月の観光関連指数**(季節調整済み:2019-20年平均=100)は(図7)、110.6 と前月比-2.5%低下し、2カ月連続のマイナス(前月:同-0.9%)。うち、宿泊業、飲食サービス業(同-2.0%、2カ月連続)や劇場・興行団(同-6.6%、2 カ月連続)等が低下に寄与した。7 月の観光関連指数は4-6 月平均比-1.9%低下した(4-6月期:前期比-1.2%)。
*対面型サービス業は、「運輸業、郵便業」、「宿泊業、飲食サービス業」、「生活関連サービス業、娯楽業」、「学習支援業」及び「医療、福祉」を指す。
**観光関連指数は第3次産業活動指数のうち、「旅客運送業」、「宿泊業、飲食サービス業」、「旅行業」、「映画館」、「劇場・興行団」及び「公園、遊園地・テーマパーク」の各指数の加重平均。
トピックス2
5月延べ宿泊者数の動向:関西2府8県
▶観光庁によれば、5月の関西2府8県の延べ宿泊者数(全体)は12,664.1千人泊であった(表1)。前年同月比+5.0%と2021年11月以降プラスを記録し、増加幅は前月(同+4.3%)から小幅拡大。
▶日本人延べ宿泊者数は8,063.8千人泊となった。前年同月比+1.1%と4カ月ぶりに増加した(前月:同-5.6%)(表1及び図8)。府県別に延べ宿泊者数を降順にみれば、大阪府2,890.4千人泊、京都府1,384.2千人泊、兵庫県1,192.7千人泊、三重県806.0千人泊、滋賀県414.1千人泊、和歌山県372.6千人泊、福井県317.1千人泊、奈良県273.8千人泊、徳島県222.9千人泊、鳥取県190.0千人泊であった。関西5月の前年同月比(+1.1%)に対する寄与度をみれば、大阪府(同+2.1%ポイント)、三重県(同+1.7%ポイント)や奈良県(同+0.4%ポイント)等、6府県が増加に寄与した。一方、減少に寄与したのは、京都府(同-2.9%ポイント)、鳥取県(同-0.4%ポイント)、滋賀県(同-0.2%ポイント)等、4府県であった。なお、京都府は2023年6月以降、前年割れが続いている。
▶外国人延べ宿泊者数は4,600.3千人泊であった(表1及び図9)。前年同月比+12.6%と38カ月連続のプラスだが、増加幅は前月(同+21.4%)から縮小した。府県別に延べ宿泊者数を降順にみれば、大阪府2,277.0千人泊、京都府1,869.8千人泊、兵庫県196.5千人泊、和歌山県89.8千人泊、奈良県51.8千人泊、三重県34.2千人泊、滋賀県28.4千人泊、鳥取県22.0千人泊、徳島県20.3千人泊、福井県10.6千人泊であった。なお、大阪府と京都府に比して、水準は低いが兵庫県の延べ宿泊者数が単月過去最高値を更新した。前年同月比(+12.6%)への寄与度をみれば、京都府(同+5.9%ポイント)、大阪府(同+3.9%ポイント)、兵庫県(同+1.2%ポイント)等、9府県が外国人延べ宿泊者の増加に寄与した。
▶なお、宿泊料金と賃金との交易条件(現金給与総額/宿泊料金:2019年=100)をみれば、2025年7月は66.2となった。前年同月比-1.7%と28カ月連続の悪化だが、前月(同-3.4%)から悪化幅は縮小した。依然として宿泊料の高止まりが続き、所得環境の改善ペースが緩慢であるため、日本人宿泊者にとっては厳しい状況が続いている(図10)。
トピックス3
2025年4-6月期国内旅行消費の動向:関西2府8県*
▶観光庁によれば、2025年4-6月期関西(2府8県ベース)の国内旅行消費額(速報)は1兆4,078億円となった(表2)。前年同期比+8.9%と6四半期連続のプラスだが、伸びは3四半期連続で1桁台にとどまっている(2024年10-12月期:同+6.5%、25年1-3月期:同8.5%)。
▶国内旅行消費額のうち、4-6月期の宿泊旅行消費額は1兆981億円であった。前年同期比+9.9%と6四半期連続のプラスだが、1-3月期(同+15.5%)から増加幅は縮小した(図11及び表2)。府県別に消費額を降順にみれば、大阪府4,220億円(同+40.0%)、京都府1,865億円(同+5.1%)、三重県1,498億円(同+20.8%)、兵庫県1,477億円(同-13.0%)、和歌山県815億円(同+62.3%)、奈良県576億円(同+19.1%)、鳥取県211億円(同+39.8%)、滋賀県132億円(同-54.8%)、福井県111億円(同-83.8%)、徳島県76億円(同-48.9%)であった。
▶国内旅行消費額のうち、4-6月期の日帰り旅行消費額は3,097億円であった。前年同期比+5.6%と2四半期ぶりのプラスとなった(1-3月期:同-16.7%)(図12及び表2)。府県別に消費額を降順にみれば、大阪府1,525億円(同+86.5%)、兵庫県417億円(同-12.6%)、京都府386億円(同-16.1%)、和歌山県252億円(同+2.3%)、三重県215億円(同-34.0%)、奈良県107億円(同-9.5%)、滋賀県106億円(同-55.6%)、福井県55億円(同61.0%)、徳島県17億円(同-60.1%)、鳥取県17億円(同-74.6%)であった。大阪府と和歌山県を除き、すべての府県で減少した。中でも、大阪府は4月13日に開幕した大阪・関西万博の影響もあり、過去最高値を更新した**。
*トピックス3は四半期ごとの掲載である。
**なお、万博前半の経済効果についてはTrend Watch No.102を参照のこと。