ABSTRACT
【ポイント】
・JNTO訪日外客統計によれば、9月の訪日外客総数(推計値)は326万6,800人、前年同月比+13.7%と増加幅は前月から縮小するも、2カ月連続で2桁の伸びを維持した。結果、1-9月期累計の訪日外客数は3,165万493人となり、過去最速で3,000万人を突破した。
・目的別訪日外客総数(暫定値)をみれば、7月は343万7,118人。うち、観光客は316万1,501人と7月として過去最高値を更新した。
・大阪・関西万博の閉幕から約1カ月が経過。本レポートではこれまで万博開幕を契機に、関西各自治体が行った観光誘客策を紹介してきたが(詳細はNo.68~74)、今回は万博閉幕後に実施されている鳥取県の誘客策の事例を取り上げ、その特徴をみた。
【トピックス1】
・関西9月の輸出額は12カ月連続の増加だが、輸入額は3カ月連続の減少となった。結果、関西の貿易収支は8カ月連続の黒字となり、黒字幅は5カ月連続で拡大した。
・9月の関空への訪日外客数は83万6,526人で、2カ月連続で2桁の伸びとなった。
・9月の第3次産業活動指数は小幅ながら3カ月連続の上昇となった。また、対面型サービス業指数は「運輸業、郵便業」などが上昇に寄与し、2カ月連続の上昇。一方、観光関連指数は「宿泊業、飲食サービス業」等が低下した影響で、2カ月ぶりに低下した。
【トピックス2】
・7月の関西2府8県の延べ宿泊者数は11,324.1千人泊。前年同月比-3.3%と2021年10月以来のマイナスに転じた。
・うち、日本人延べ宿泊者数は小幅だが3カ月連続で前年を上回った一方、外国人延べ宿泊者数はSNS等を通じた誤情報の影響もあり、2022年3月以来の前年比マイナスに転じた。
【トピックス3】
・2025年7-9月期の訪日外国人消費額(速報、全目的ベース)は2兆1,310億円。正常化した24年以降をみれば前年同期比2桁の伸びが続いているが、増加幅は前期から縮小した。
・一般客1人1泊当たり旅行支出(全目的)は1万9,036円となった。前年同期比-18.8%と、2四半期連続のマイナスとなり、減少幅は4-6月期から拡大。コロナ禍以降、着実に上昇してきた消費単価だが、7-9月期は多くの国・地域において減少しており、訪日外客の消費動向に変化の兆しがみられる。
DETAIL
ポイント
●10月発表データのレビュー:JNTO 訪日外客数
▶JNTO訪日外客統計によれば(図1及び表4)、9月の訪日外客総数(推計値)は326万6,800人であった。前年同月比+13.7%と増加幅は前月の同+16.9%から縮小するも、2カ月連続で2桁台の伸びを維持した。また、同月の出国日本人数は139万4,500人であった(同+15.0%)。なお、2019年同月比では-20.4%と、減少幅は前月の同-21.9%から小幅縮小した。結果、1-9月期累計の訪日外客数は3,165万493人(前年同期比+17.7%)となり、過去最速で3,000万人を突破した。一方、同期の出国日本人数は1,085万7,210人であった(同+14.3%)。


▶訪日外客数のトップ5を国・地域別にみると(図2及び表4)、9月は中国が77万5,500人(前年同月比+18.9%)と最多であった。次いで韓国が67万500人(同+2.1%)、台湾が52万7,000人(同+12.0%)、米国が22万4,700人(同+17.1%)、香港が14万9,500人(同-12.2%)と続く。なお、SNS等による誤情報の影響から、香港は5カ月連続の減少となった。

▶目的別訪日外客総数(暫定値)をみれば(図3及び表5)、7月は343万7,118人(前年同月比+4.4%)。うち、観光客は316万1,501人(同+3.5%)、7月として過去最高値を更新した。その他客は17万7,111人(同+25.3%)、商用客は9万8,506人(同+2.6%)であった。



▶大阪・関西万博の閉幕から約1カ月が経過した。本レポートではこれまで万博開幕を契機に、関西各自治体が行った観光誘客策を紹介してきた(詳細はNo.68~74)。今回は万博閉幕後に実施されている鳥取県の誘客策の事例を取り上げ、その特徴をみよう。
▶鳥取県では、アフター万博を鳥取県で楽しんでもらうために「万博ロスは鳥取で」をテーマに、1)「アフター万博ウェルカニキャンペーン(10月14日~3月19日)」、2)「アフター万博砂ンプラリー(11月1日~3月31日)」などを実施している(詳細はURL参照:https://www.pref.tottori.lg.jp/325693.htm)。具体的には、1)では鳥取県に宿泊した人に対して、抽選で県の特産品(蟹)がプレゼントされる。2)では、県内の観光施設に関西パビリオンで設置されていた鳥取県の公式スタンプに加え、海外パビリオンのヨルダン館のスタンプが設置される。特徴的なのは、県内の特産品のみならず万博の展示内容(レガシー)をも活用し、県内周遊を図っていることである。こうした取組を国内客のみならず海外客に訴求することができれば、関西広域観光がより一層促進されることに繋がろう。
トピックス1
●9月関西の財貨・サービス貿易及びサービス産業動向
▶関西9月の輸出額は前年同月比+3.9%と 12 カ月連続で増加し、増加幅は前月の同+0.7%から拡大した。一方、輸入額は同-1.0%と 3 カ月連続の減少(前月:同-8.9%)。このため、関西の貿易収支は+2,830億円と8カ月連続の黒字(図 4)、黒字幅は同+45.3%と 5 カ月連続で拡大した(前月:同+101.2%)。

▶対中国貿易動向をみると(図5)、関西9月の対中国輸出は前年同月比+3.8%と2カ月ぶりに増加した(前月:同-0.2%)。輸出増に寄与したのは、半導体等電子部品や原料品等であった。また、対中国輸入は同+0.2%と 2 カ月連続の小幅増加(前月:同+0.8%)。輸入増に寄与したのは事務用機器、がん具及び遊戯用具等であった。

▶9月の関西国際空港(以下、関空)への訪日外客数は83万6,526人であった。前年同月比+13.3%と増加幅は前月(同+20.3%)から縮小したが、2カ月連続で2桁の伸びとなった。同月の日本人出国者数は27万411人で、前年同月比+18.4%と増加幅は3カ月連続で拡大した(前月:同+17.9%)。なお、2019 年同月比では-19.8%と、依然コロナ禍前の水準は下回っているが、減少幅は3カ月連続で縮小した。今般の日中関係の悪化による中国人客の訪日旅行への影響は無視できない。1-8月累計の関空への訪日外客総数に占める中国人客数のシェアは35.5%と、同期間の全国シェア(23.6%)に比して+11.8%ポイント高く、関西への影響が強めに出よう。また参考となるのが、2012年9月の尖閣諸島国有化の事例である。中国人客は12年1012 月期から4四半期連続で前年同期比減少しており、影響が出尽くすのに1 年かかっている。このため、今回の日中関係悪化の影響については比較的長めの時間視野での注視が必要である(Kansai Economic Insight Quarterly No.76 のトピックスにて取り上げる予定である)。

▶サービス業の生産活動を示す第3次産業活動指数(季節調整済み:2019-20年平均=100)をみれば(図7)、9月は105.1で前月比+0.3%と小幅ながら3カ月連続のプラスとなった(前月:同+0.1%)。経済産業省は基調判断を「一部に足踏みがみられるものの、持ち直しの動き」と前月から据え置いた。また、同月の対面型サービス業指数*は106.2で同+0.8%と、2カ月連続のプラス(前月:同+0.2%)。うち、運輸業、郵便業(同+4.7%、4カ月ぶり)や学習支援業(同+0.0%、2カ月ぶり)等が上昇に寄与した。結果、7-9月期の第3次産業活動指数は前期比+0.4%と3四半期連続のプラス(4-6月期:前期比+0.4%)。一方、対面型サービス業指数は同+0.0%とほぼ横ばいであった。

▶9 月の観光関連指数**(季節調整済み:2019-20 年平均=100)は(図 7)、112.0 と前月比-3.3%低下し、2カ月ぶりのマイナス(前月:同+5.0%)。うち、宿泊業、飲食サービス業(同-3.1%、2 カ月ぶり)や劇場・興行団(同11.4%、2カ月ぶり)等が低下に寄与した。7-9月期のでは前期比-0.1%と2四半期連続で低下した(4-6月期:同-1.1%)。 *対面型サービス業は、「運輸業、郵便業」、「宿泊業、飲食サービス業」、「生活関連サービス業、娯楽業」、「学習支援業」及び「医療、福祉」を指す。 **観光関連指数は第3次産業活動指数のうち、「旅客運送業」、「宿泊業、飲食サービス業」、「旅行業」、「映画館」、「劇場・興行団」及び「公園、遊園地・テーマパーク」の各指数の加重平均。
トピックス2
●7月延べ宿泊者数の動向:関西2府8県
▶観光庁によれば、7月の関西2府8県の延べ宿泊者数(全体)は11,324.1千人泊(表1)。前年同月比-3.3%と2021年10月(同-4.2%)以来のマイナスに転じた。

▶日本人延べ宿泊者数は7,507.6千人泊となった。前年同月比+0.1%と3カ月連続の増加だが、小幅伸びにとどまった(前月:同+1.1%)(表1及び図8)。府県別に延べ宿泊者数を降順にみれば、大阪府2,680.4千人泊、兵庫県1,170.8千人泊、京都府1,159.7千人泊、三重県795.2千人泊、滋賀県369.6千人泊、和歌山県362.7千人泊、福井県333.8千人泊、奈良県214.1千人泊、徳島県212.5千人泊、鳥取県208.8千人泊であった。関西7月の前年同月比(+1.1%)に対する寄与度をみれば、三重県(同+1.4%ポイント)、大阪府(同+1.2%ポイント)や徳島県(同+0.4%ポイント)等、5府県が増加に寄与した。一方、減少に寄与したのは、兵庫県(同-1.3%ポイント)、京都府(同-0.7%ポイント)や福井県(同-0.6%ポイント)等、5府県であった。

▶外国人延べ宿泊者数は3,816.5千人泊であった(表1及び図9)。前年同月比-9.5%と2022年3月(同-2.8%)以来のマイナスに転じた。SNS等を通じた誤情報の影響が表れた。府県別に延べ宿泊者数を降順にみれば、大阪府1,935.2千人泊、京都府1,508.9千人泊、兵庫県159.0千人泊、和歌山県74.8千人泊、奈良県49.2千人泊、三重県23.2千人泊、鳥取県22.9千人泊、滋賀県20.9千人泊、徳島県16.2千人泊、福井県12.8千人泊であった。前年同月比(-9.5%)への寄与度をみれば、大阪府(同-11.5%ポイント)、滋賀県(同-0.0%ポイント)、徳島県(同0.0%ポイント)等、3府県が外国人延べ宿泊者の増加に寄与した。

▶なお、宿泊料金と賃金との交易条件(現金給与総額/宿泊料金:2019年=100)をみれば、2025年9月は65.8となった。前年同月比-3.7%と30カ月連続で悪化した。依然として日本人宿泊者にとっては厳しい状況が続いている(図10)。

トピックス3
●2025年7-9月期訪日外国人消費の動向
▶観光庁によれば、2025年7-9月期の訪日外国人消費額(速報、全目的ベース)は2兆1,310億円であった(図11)(4-6月期:2兆5,043億円)。前年同期比+11.1%と経済活動が正常化した24年以降をみれば2桁の伸びが続いているが、増加幅は前期(同+17.0%)から縮小した。

▶7-9月期の訪日外国人消費のトップ5を国・地域別にみれば(図12)、中国が5,901億円(前年同期比+18.0%)と最多であった。次いで、台湾が3,020億円(同+10.7%)、米国が2,215億円(同+19.9%)、韓国が2,070億円(同-10.5%)、香港が1,139億円(同-31.6%)と続く。誤情報の影響を受けた香港は3四半期連続で、韓国は8四半期ぶりにそれぞれ減少した。


▶一般客1人1泊当たり旅行支出(全目的)は1万9,036円となった。前年同期比-18.8%と2四半期連続のマイナスとなり、減少幅は4-6月期(同-9.7%)から拡大。国・地域別にみれば、香港が3万2,559円(同+0.9%)と最も高い。次いで、米国が3万678円(同+5.3%)、シンガポールが3万210円(同-13.2%)、台湾が3万115円(同-13.6%)、中国が3万13円(同-9.8%)となっている(表2)。コロナ禍以降、着実に上昇してきた消費単価だが、7-9月期は多くの国・地域において減少しており、訪日外客の消費動向に変化の兆しがみられる。
▶7-9月期の1人1泊当たり旅行支出を費目別でみれば(表3)、すべての費目が前年同期から減少した。宿泊費が7,025円(前年同期比-12.3%)と最も多く、次いで買物代が4,739円(同-28.0%)、飲食費が4,391円(同-15.2%)、交通費が1,896円(同-26.3%)、娯楽等サービス費が981円(同-11.5%)と続く。なお、平均泊数は11.5泊と、前年同期差+2.2泊増加した。 *トピックス3は四半期ごとの掲載である。 **「全目的」とは、観光・レジャー目的以外に、業務、留学、親族・知人訪問等の目的の旅行者を含む。ただし、1年未満の滞在者が対象である。
