ABSTRACT
【ポイント】
- JNTO訪日外客統計によれば、12月の訪日外客総数(推計値)は273万4,000人、2019年同月比+8.2%と2カ月ぶりのプラス。2023年通年では年後半の回復が影響し、2,506万5,862人となり、コロナ禍前の8割程度(19年比-21.4%)を回復した。
- 目的別訪日外客総数(暫定値)をみれば10月は251万6,623人。観光客は224万5,892人でコロナ禍前(19年同月比+3.1%)を回復した。
- 訪日外客の先行きについては、回復が遅れている訪日中国人客の動向が気になるところである。2月は10日から春節が始まり、中国人客の増加が期待されている。一方で、中国経済減速の影響もあるため、大幅な増加は見込めず、緩やかな回復にとどまる可能性が高い。
【トピックス1】
- 関西12月の輸出は8カ月連続で前年比減少。また、輸入は9カ月連続で減少し、8カ月連続で2桁のマイナスであった。結果、輸入の減少幅が輸出のそれを大きく上回ったため、貿易収支は11カ月連続の黒字となった。
- 12月の関西国際空港への72万1,677人となり、12月単月で過去最高を記録。2023年通年では652万5,158人となり、コロナ禍前の8割弱(19年比-22.1%)を回復した。
- 11月のサービス業の活動は悪化傾向が続く。第3次産業活動指数は3カ月連続の前月比低下。また、対面型サービス業指数は2カ月ぶりに同低下した。観光関連指数も飲食店、飲食サービス業や宿泊業が低下に寄与し、3カ月連続の同低下となった。
【トピックス2】
- 10月の関西2府8県の延べ宿泊者数は11,417.1千人泊、2019年同月比では+10.1%となった。前月に引き続き外国人宿泊者の増加が延べ宿泊者全体の増加に寄与した。
- うち、日本人延べ宿泊者数は7,709.1千人泊、2019年同月比+4.7%と2カ月連続の増加。また、外国人延べ宿泊者数は3,708.0千人泊となり、同+23.1%と3カ月連続で増加した。
【トピックス3】
- 2023年10-12月期における訪日外国人消費額(1次速報、全目的ベース)は1兆6,688億円、19年同期比+37.6%と2四半期連続のプラス。23年通年では5兆2,923億円となり、過去最高額を更新した。
- 2023年10-12月期の1人当たり旅行支出(全目的)は21万201円となった。2019年同期比+28.0%と、4四半期連続のプラス。1人1泊当たり旅行支出でみれば、2万5,493円となり、2019年同期比+30.5%増加した。費目別では、宿泊費、飲食費、交通費、娯楽等サービス費、買物代いずれも増加した。
DETAIL
ポイント
1月発表データのレビュー:JNTO 訪日外客数
▶JNTO訪日外客統計によれば(図1及び表4)、12月の訪日外客総数(推計値)は273万4,000人であった(前月:244万800人)。2019年同月比+8.2%と2カ月ぶりのプラス(前月:同-0.0%)。また、同月の出国日本人数は94万7,900人であった(前月:102万7,110人)。19年同月比では-44.6%と前月(同-37.5%)からマイナス幅は拡大した。
▶2023年通年の訪日外客数は年後半の回復が影響し、2,506万5,862人と、前年(383万2,110人)から大幅増加し、コロナ禍前の8割程度(19年比-21.4%)を回復した。一方、日本人出国者数は926万4,464人と、前年(271万1,381人)から大幅増加したものの、コロナ禍前の5割程度(同-52.1%)にとどまった。インバウンド需要に比してアウトバウンド需要の回復は依然遅れている。長引く円安と実質所得の回復の遅れが影響しているようである。
図1 訪日外客数及び出国日本人数の推移
出所:日本政府観光局(JNTO)「訪日外客数」より筆者作成
注) 2022年まで確定値、23年1-10月は暫定値、23年11-12月は推計値
▶訪日外客数のトップ5を国・地域別にみると、12月は韓国が78万2,700人(2019年同月比+215.7%)と最多であった。次いで台湾が39万9,500人(同+14.7%)、中国が31万2,400人(同-56.0%)、香港が25万1,100人(同+0.6%)、米国が18万3,200人(同+26.8%)と続く(図2及び表4)。
図2 国・地域別のコロナ禍前回復比較:2023年12月
出所:日本政府観光局(JNTO)「訪日外客数」より筆者作成。
注) 韓国の大幅増加は19年同月の日韓関係悪化の影響が含まれる。
▶目的別訪日外客総数(暫定値)をみれば、10月は251万6,623人となった(2019年同月比+0.8%)(図3及び表5)。うち、観光客は224万5,892人(同+3.1%)、商用客は11万9,327人(同-26.4%)、その他客は15万1,404人(同-3.7%)であった。19年同月比をみれば、観光客はコロナ禍前を回復した一方、その他客は9割超、商用客は7割程度の回復となっている。
図 3 目的別訪日外客数推移
出所:日本政府観光局(JNTO)「訪日外客数」より筆者作成
注) 目的別訪日外客数については訪日外客数(推計値)から2カ月遅れて発表される。「観光客」とは、短期滞在の入国者から「商用客」を引いた入国外国人で、親族友人訪問を含んでいる。「その他客」とは、観光、商用目的を除く入国外国人で、留学、研修、外交・公用などが含まれる。
▶観光客のTOP5を国・地域別にみれば、10月は韓国が60万998人(2019年同月比+285.3%)と最多であった。次いで台湾が41万414人(同+3.9%)、米国が19万3,998人(同+52.2%)、中国が18万8,541人(同-70.8%)、香港が17万5,511人(同-0.3%)と続く(表5)。
▶訪日外客の先行きについては、回復が遅れている訪日中国人客の動向が気になるところである。2月は10日から春節が始まり、中国人客の増加が期待されている。一方で、中国経済減速の影響もあるため、大幅な増加は見込めず、緩やかな回復にとどまる可能性が高い。
トピックス1
12月関西の財貨・サービス貿易及び11月のサービス産業動向
▶関西12月の輸出額は前年同月比-1.9%と8カ月連続で減少した(前月:同-7.1%)。また、輸入額は同-11.4%と9カ月連続で減少し、8カ月連続で2桁のマイナスとなった(前月:同-12.5%)。輸出入いずれも減少したが、輸入の減少幅が輸出のそれを大きく上回ったため、12月の貿易収支は+3,661億円と、11カ月連続の黒字。黒字幅は同+77.7%拡大した(図4)。2023年通年では、輸出は前年比-3.2%(前年:同+16.3%)、輸入は同-9.8%(前年:同+34.3%)といずれも3年ぶりのマイナス。結果、貿易収支は9年連続の黒字(+2兆1,684億円)となり、黒字幅は同+170.8%と2年ぶりに拡大した(前年:同-74.1%)。
図4 関西 対世界貿易の推移
▶対中貿易動向をみると(図5)、関西12月の対中輸出は前年同月比+3.3%と8カ月ぶりに増加した(前月:同-4.7%)。一方、対中輸入は同-6.6%と8カ月連続の減少(前月:同-9.6%)。2023年通年では、輸出は前年比-4.9%と4年ぶりの減少に転じた(22年:同+7.7%)。また、輸入も同-6.1%と3年ぶりの減少(前年:同22.4%)。23年5月以降、対中貿易は停滞している。
図5 関西 対中貿易の推移
出所:「大阪税関貿易速報資料:近畿圏」より筆者作成
▶12月の関西国際空港(以下、関空)への訪日外客数は72万1,677人となり、12月単月で過去最高を記録した(前月:66万3,795人)。2019年同月比では+11.9%と、2カ月ぶりのプラス(前月:同-0.8%)。また、12月の日本人出国者数は17万7,085人であった。2019年同月比では-48.6%と、前月(同-42.3%)からマイナス幅は拡大(図6)。23年通年の訪日外客数は652万5,158人となり、コロナ禍前の8割弱(19年比-22.1%)を回復。一方、日本人出国者数は166万1,869人でコロナ禍前の4割程度(同-58.2%)の回復にとどまった。
図6 関西国際空港 訪日外客入国者数推移
出所:出入国管理統計より筆者作成。2023年12月値は速報値
▶11月のサービス業の活動は悪化傾向が続く。サービス業の生産活動を示す第3次産業活動指数(季節調整済み:2015年平均=100)をみれば(図7)、11月は100.2、前月比-0.7%低下し、3カ月連続のマイナスとなった(前月:同-0.2%)。また、対面型サービス業指数*は95.3、同-2.6%低下し、2カ月ぶりのマイナス(前月:同+2.2%)。うち、運輸業(同-1.7%、2カ月ぶり)が低下に寄与した。
▶観光関連指数**(2015年平均=100)は、11月は89.5と前月比-1.3%低下し、3カ月連続のマイナス(前月:同-1.2%)(図7)。うち、飲食店、飲食サービス業(同-4.7%、3カ月連続)や宿泊業(同-5.3%、2カ月連続)が低下に寄与した。
図7 観光関連 対面型サービス 第3次産業:2015年=100
出所:経済産業省「第3次産業活動指数」より筆者作成
*対面型サービス業は、運輸業、宿泊業、飲食店、飲食サービス業、その他の生活関連サービス業及び娯楽業を指す。
**観光関連指数は第3次産業活動指数のうち、観光庁「旅行・観光サテライト勘定」の分類に対応する、鉄道旅客運送業、道路旅客運送業、水運旅客運送業、航空旅客運送業、旅客運送業、その他のレンタル、自動車賃貸業、宿泊業、飲食店,飲食サービス業、旅行業、映画館、劇場・興行団の各指数の加重平均。
トピックス2
10月延べ宿泊者数の動向:関西2府8県
▶観光庁によれば、10月の関西2府8県の延べ宿泊者数(全体)は11,417.1千人泊であった(表1)。2019年同月比+10.1%と2カ月連続で増加し、前月(同+5.7%)から増加幅は拡大した。前月に引き続き外国人宿泊者の増加が延べ宿泊者全体の増加に寄与した。
▶10月の日本人延べ宿泊者数は7,709.1千人泊となった(表1及び図8)。2019年同月比+4.7%と2カ月連続の増加(前月:同+1.0)。府県別に延べ宿泊者数を降順にみれば、大阪府2,706.9千人泊、京都府1,714.3千人泊、兵庫県1,151.3千人泊、三重県618.2千人泊、滋賀県352.4千人泊、和歌山県31.7千人泊、福井県263.6千人泊、奈良県214.7千人泊、鳥取県195.0千人泊、徳島県175.0千人泊であった。2019年同月比をみれば、京都府が5カ月連続、大阪府、兵庫県、奈良県はそれぞれ2か月連続でプラスとなった。
図8 府県別日本人延べ宿泊者数 推移
▶10月の外国人延べ宿泊者数は3,708.0千人泊となった。2019年同月比+23.1%と3カ月連続で増加し、増加幅は前月(同+19.8%)から拡大した(表1及び図9)。府県別に延べ宿泊者数を降順にみれば、大阪府2,001.5千人泊、京都府1,417.9千人泊、兵庫県111.6千人泊、和歌山県48.1千人泊、奈良県32.9千人泊、滋賀県32.1千人泊、三重県30.0千人泊、徳島県16.8千人泊、福井県8.7千人泊、鳥取県8.3千人泊であった。2019年同月比でみると、大阪府(同+33.7%)、京都府(同+20.3%)はいずれも4カ月連続で、徳島県(同+20.9%)は2カ月連続で、それぞれプラスとなった。また、福井県も同+8.2%と20年1月(同+32.8%)以来のプラスに転じた。
図9 府県別外国人延べ宿泊者数の推移
▶関西2府8県延べ宿泊者を居住地別でみると(図10)、10月の県内の延べ宿泊者数は1,436.7千人泊、県外は9,712.1千人泊であった。2019年同月比をみれば、県内は同+18.0%と25カ月連続で増加し、前月(同+16.3%)から増加幅は拡大。また、県外は同+13.5%と2カ月連続で増加した(前月:同+7.6%)。
図10 関西 居住地別延べ宿泊者比率の推移
表1 関西 延べ宿泊者数伸び率:10月
出所:観光庁「宿泊旅行統計調査」より筆者作成(図8~10及び表1)
トピックス3
2023年10-12月期訪日外国人消費の動向
▶観光庁によれば、2023年10-12月期の訪日外国人消費額(1次速報、全目的ベース)は1兆6,688億円であった(7-9月期:1兆3,801億円)(図11)。2019年同期比+37.6%と2四半期連続のプラスとなった(7-9月期:同+16.8%)。2023年通年では5兆2,923億円(速報、全目的ベース)となり、過去最高額を更新した(19年:4兆8,135億円)。
図11 訪日外国人消費額の推移
▶10-12月期の訪日外国人消費額のトップ5を国・地域別(その他を除く)にみれば(図12)、台湾が2,325億円(2019年同期比+90.3%)で最も多かった。次いで中国が2,322億円(同-40.4%)、韓国が2,145億円(同+288.6%)、米国が1,879億円(同+113.8%)、香港が1,448億円(同+51.5%)と続く。
図12 訪日外国人消費額の上位5か国・地域:2023年10-12月期
(注) 「訪日外国人」には、観光・レジャー目的に加えビジネス目的や親族・知人訪問目的などで日本を訪れた外国人が含まれる。日本に居住している外国人は含まれない。「クルーズ客」は船舶観光上陸許可者。2019年は確報、23年10-12月期は速報。
出所:観光庁『訪日外国人消費動向調査』より作成(上図も同様)
▶10-12月期の1人当たり旅行支出(全目的)は21万201円となった。2019年同期比+28.0%と、4四半期連続のプラス(7-9月期:20万9,228円、同+28.5%)。国・地域別にみれば、スペインが39万2,819円(同+55.5%)と最も高い。次いで、英国が38万6,526円(同+18.1%)、イタリアが36万8,783円(同+76.5%)、オーストラリアが35万3,678円(同+24.6%)、ドイツが35万3,437円(同+55.3%)であった(表2)。
▶10-12月期の1人1泊当たり旅行支出をみれば、2万5,493円となり、2019年同期比+30.5%増加した。費目別では、宿泊費、飲食費、交通費、娯楽等サービス費、買物代いずれも増加した。一方、その他は減少となった(表3)。なお、7-9月期の2次速報ベースでは買物代がこれまでのマイナスから小幅のプラスに転じていることに注意。
表2 国・地域別一般客1人当たり旅行支出(全目的):2023年10-12月期
表3 一般客1人1泊当たり旅行支出(全目的):2023年10-12月期
*トピックス3は四半期ごとの掲載である。
**「全目的」とは、観光・レジャー目的以外に、業務、留学、親族・知人訪問等の目的の旅行者を含む。ただし、1年未満の滞在者が対象である。
表4 2023年12月 訪日外客数 (JNTO推計値) (対2019年比)
表5 2023年10月 目的別訪日外客数 (JNTO暫定値) (対2019年比)
注) 目的別訪日外客数の定義については、図3注参照。
出所: 日本政府観光局(JNTO)、2024年1月17日付より筆者加工