都道府県別訪日外客数と訪問率:7月レポート No.50

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ABSTRACT

【ポイント】

  • JNTO訪日外客統計によれば、7月の訪日外客総数(推計値)は232万600人となり、2カ月連続で200万人を超え、コロナ禍前の8割に迫る水準まで回復。なお、中国人客を除いた総数ではコロナ禍前を回復した。
  • 目的別訪日外客総数(暫定値)をみれば5月は189万9,176人。うち、観光客は165万6,118人、商用客は9万5,468人、その他客は14万7,590人であった。
  • 訪日外客の先行きについては、中国人客がどの程度回復するかが気になるところである。中国人客の団体旅行が解禁されたものの、日中関係の変化や中国経済の減速などのリスク要因で回復のペースが緩慢となる可能性がある。今後の課題は、団体旅行解禁による消費単価の低下を避けるとともに、急増するインバウンド需要に対して日本の労働供給制約をいかに解消するかである。

 

【トピックス1】

  • 関西7月の輸出は3カ月連続の前年比減少。また、輸入は4カ月連続で同減少し、3カ月連続で2桁のマイナスとなった。輸入の減少幅が輸出のそれを大きく上回ったため、貿易収支は6カ月連続の黒字となった。
  • 7月の関西国際空港への60万1,246人となり、コロナ禍前の8割に迫る水準まで回復。
  • 6月のサービス業の活動は前月から悪化したが、持ち直し傾向は維持。第3次産業活動指数、観光関連指数はいずれも3カ月ぶりの前月比低。一方、対面型サービス業指数は2カ月ぶりに同上昇した。

 

【トピックス2】

  • 5月の関西2府8県の延べ宿泊者数は10,486千人泊。2019年同月比では5カ月連続の減少だが、前月から減少幅は縮小。
  • うち、日本人延べ宿泊者数は7,818.9千人泊と2カ月連続で2019年同月の水準を下回った。一方、外外国人延べ宿泊者数は2,667千人泊で、2019年同月比-8.6%と減少幅は前月から縮小。日本人延べ宿泊者の回復は停滞した一方で、外国人延べ宿泊者数は回復しているようである。

 

【トピックス3】

  • 2023年4-6月期の関西の国内旅行消費額は1兆2,052億円であった。2019年同期比-15.7%と3四半期ぶりのマイナス。4-6月期の観光関連指数が示すように、低調な国内旅行消費と指数の動きとは整合的である。うち、宿泊旅行消費額は8,389億円と3四半期ぶりにコロナ禍前を下回った。また、日帰り旅行額は2,109億円となり、19年同期比で減少幅が1-3月期から拡大した。

DETAIL

ポイント

8 月発表データのレビュー:JNTO 訪日外客数

 

▶JNTO 訪日外客統計によれば(図 1 及び表 3)、7 月の訪日外客総数(推計値)は 232 万 600 人となり、2 カ月連続で 200 万人を超えた(6 月:207 万 3,300 人)。2019 年同月比では-22.4%とコロナ禍前の 8 割に迫る水準まで回復。なお、中国人客を除いた総数は 200 万 7,300 人とコロナ禍前(同+3.4%)を上回った。欧米地域などで夏季休暇の時期に入ったこともあり、日本へ訪れる人が増加したようである。また、同月の出国日本人数は 89 万 1,600 人となり、前月(70 万 3,259 人)から増加。19年同月比では-46.3%とコロナ禍前の 5 割超を回復し、アウトバウンド需要は持ち直しつつある。

 

 

▶訪日外客数のトップ 5 を国・地域別にみると、韓国が 62 万 6,800 人(2019 年同月比+11.6%)と最多であり、次いで台湾が 42 万 2,300 人(同-8.0%)、中国が 31 万 3,300 人(同70.2%)、香港が 21 万 6,400 人(同-0.2%)、米国が 19 万 8,800 人(同+26.7%)と続く。19 年同月比でみれば、韓国や米国に加え、フィリピン、カナダなどがコロナ禍前の水準を上回った(図 2 及び表 3)。

 

 

▶目的別訪日外客総数(暫定値)をみれば、5 月は 189 万 9,176 人となった(2019 年同月比-31.5%)(図 3 及び表 4)。うち、観光客は 165 万 6,118 人となった(同-32.6%)。商用客は 9 万 5,468 人(同-39.4%)、その他客は 14 万 7,590 人(同-7.5%)であった。

 

 

 

▶うち、観光客の TOP5 を国・地域別にみれば、5 月は韓国が 48 万 6,223 人(2019 年同月比-12.0%)と最多であった。次いで台湾が 29 万 1,185 人(同-28.5%)、米国が 16 万 7,934 人(同+29.2%)、香港が 15 万 1,318 人(同-17.9%)、中国が 7 万 8,769 人(同-88.2%)と続く(表 4)。

▶訪日外客の先行きについては、中国人客がどの程度回復するかが気になるところである。8 月 10 日から、中国人客の団体旅行が解禁されたものの、日中関係の変化や中国経済の減速などのリスク要因で回復のペースが緩慢となる可能性がある。一方、中国人客を除く訪日外客は着実に回復しており、1 人当たりの消費単価も上昇している。今後の課題は、団体旅行解禁による消費単価の低下を避けるとともに、急増するインバウンド需要に対して日本の労働供給制約をいかに解消するかである(中国人客の回復についての詳細な分析は APIR Trend Watch No.88 参照)。

 

トピックス1

7 月関西の財貨・サービス貿易及び 6 月のサービス産業動向

▶関西 7 月の輸出額は前年同月比-5.0%と 3 カ月連続で減少した(前月:同-7.1%)。また、輸入額は同-17.0%と 4 カ月連続で減少し、3 カ月連続で 2 桁のマイナスとなった(前月:同15.5%)。結果、貿易収支は+1,931 億円となり、6 カ月連続の黒字となった(前年同月差+2,274 億円)。輸出入ともに減少したが、輸入の減少幅が輸出のそれを大きく上回ったためである(図4)。

 

 

▶うち、対中貿易動向をみると(図 5)、関西 7 月の対中輸出は前年同月比-15.8%と 3 カ月連続で減少し、減少幅は前月(同9.2%)から拡大。輸出減に寄与したのは半導体等電子部品や鉄鋼等であった。また、対中輸入は同-16.4%と 3 カ月連続の減少(前月:同-16.9%)。輸入減に寄与したのは事務用機器及び加熱用・冷却用機器等であった。

 

 

▶7月の関西国際空港(以下、関空)への訪日外客数は60万1,246人と前月(55万2,492人)から増加し、コロナ禍前の8割(2019年同月比-21.5%)に迫る水準まで回復した。また、日本人出国者数は 15 万 4,563 人であった。2019 年同月比では-51.5%と、前月(同-59.6%)からマイナス幅は縮小した(図 6)。

 

 

▶6 月のサービス業の活動は前月から悪化したが、持ち直し傾向は維持している。サービス業の生産活動を示す第 3 次産業活動指数(季節調整済み:2015 年平均=100)をみれば(図 7)、6 月は101.3 で前月比-0.4%低下し、3 カ月ぶりのマイナスとなった(前月:同+1.0%)。一方、対面型サービス業指数*は 94.1 で、同+0.1%小幅上昇し、2 カ月ぶりのプラス(前月:同-0.9%)。うち、運輸業(同+2.6%、2カ月ぶり)や宿泊業(同+8.2%、2カ月ぶり)が上昇に寄与した。結果、4-6 月期の第 3 次産業活動指数は 101.2 で、前期比+0.8%上昇し、2 四半期連続のプラス(1-3月期:同+1.0%)。また、対面型サービス業は94.3で、同+0.5%上昇し、7 四半期連続のプラスとなった(1-3 月期:同+2.6%)。

 

 

▶観光関連指数**(2015 年平均=100)は、89.4 と前月比-2.6%低下し、3 カ月ぶりのマイナス(前月:同+3.1%)(図 7)。うち、飲食店、飲食サービス業(同-9.5%、2カ月ぶり)や道路旅客運送業(同-4.6%、2 カ月ぶり)が低下に寄与した。結果、4-6月期は 90.1 で、前期比-0.8%低下し、5 四半期ぶりのマイナスとなった(1-3 月期:同+7.6%)。

 

*対面型サービス業は、運輸業、宿泊業、飲食店、飲食サービス業、その他の生活関連サービス業及び娯楽業を指す。

 

**観光関連指数は第 3 次産業活動指数のうち、観光庁「旅行・観光サテライト勘定」の分類に対応する、鉄道旅客運送業、道路旅客運送業、水運旅客運送業、航空旅客運送業、旅客運送業、その他のレンタル、自動車賃貸業、宿泊業、飲食店,飲食サービス業、旅行業、映画館、劇場・興行団の各指数の加重平均。

 

トピックス2

5 月延べ宿泊者数の動向:関西 2 府 8 県

▶観光庁によれば、5 月の関西 2 府 8 県の延べ宿泊者数(全体)は 10,486 千人泊であった(表 1)。2019 年同月比4.6%と 5 カ月連続の減少だが、前月(同-14.6%)から減少幅は縮小した。日本人延べ宿泊者の回復は停滞した一方で、外国人延べ宿泊者数は回復しているようである。

 

 

▶日本人延べ宿泊者数は 7,818.9 千人泊となった。2019 年同月比-3.1%と 2 カ 月 連 続 で 減 少 し た(前 月 : 同11.2%)(表 1 及び図 8)。府県別に延べ宿泊者数を降順にみれば、大阪府 2,649.7 千人泊、京都府 1,850.9 千人泊、兵庫県 1,197.6 千人泊、三重県 555.4 千人泊、滋賀県 350.0 千人泊、和歌山県 334.5 千人泊、福井県 254.6 千人泊、奈良県 217.9 千人泊、徳島県 215.9 千人泊、鳥取県 192.6 千人泊であった 。2019 年 同 月 比 を み れ ば 、 大 阪 府(同+8.3%)と兵庫県(同+8.9%)はプラスに転じたが、その他府県ではマイナスとなった。

 

 

▶外国人延べ宿泊者数は 2,667 千人泊となった。2019 年同月比-8.6%と減少幅は前月(同-22.0%)から縮小し、コロナ禍前の 9 割超を回復した(表 1 及び図 9)。府県別に延べ宿泊者数を降順にみれば、大阪府 1,470.2 千人泊、京都府 990.3 千人泊、兵庫県 92.0 千人泊、和歌山県 38.6 千人泊、奈良県 28.7 千人泊、滋賀県 13.8 千人泊、三重県 12.8 千人泊、徳島県 10.7 千人泊、福井県 6.5 千人泊、鳥取県 3.5 千人泊であった。2019 年同月比でみると、大阪府(同+4.4%)や京都府(同-4.2%)は前月から減少幅が大きく縮小した。一方、徳島県は 3 カ月ぶりにマイナスに転じた。

 

 

▶関西 2 府 8 県延べ宿泊者を居住地別でみると(図 10)、県内の延べ宿泊者数は 1,518.2 千人泊、県外は 8,774.0 千人泊であった。2019 年同月比をみれば、県内は同+4.7%と 20 カ月連続のプラスで、前月(同+2.7%)から増加幅は拡大。また、県外は同-2.8%と前月(同-14.5%)から減少幅は縮小した。

 

 

 

トピックス3

2023 年 4-6 月期国内旅行消費の動向:関西 2 府 8 県

▶観光庁によれば、2023 年 4-6 月期関西(2 府 8 県ベース)の国内旅行消費額(速報)は1兆497億円であった(表2)。2019年同期比-15.7%と 3 四半期ぶりのマイナスに転じた(1-3 月期:同+8.2%)。4-6 月期の観光関連指数(トピックス 2 参照)が示したように、低調な国内旅行消費と指数の動きとは整合的である。

 

▶うち、宿泊旅行消費額は 8,389 億円で、2019 年同期比0.3%と 3 四半期ぶりのマイナス(1-3 月期:同+19.5%)(図 11 及び表 2)。消費額のトップ 5 を府県別にみれば、大阪府が 2,437 億円(同-17.8%)と最も多く、次いで京都府が 1,378 億円(同+7.9%)、兵庫県が 1,141 億円(同-30.7%)、奈良県が 717 億円(同+72.6%)、和歌山県が 687 億円(同+25.0%)と続く。19 年同期比をみれば、大阪府と兵庫県がマイナスとなり、宿泊旅行消費の減少に寄与した。一方、その他府県ではプラスとなり、うち奈良県や徳島県が大幅増加した。

 

 

▶うち、日帰り旅行消費額は 2,109 億円、2019 年同期比47.7%と 1-3 月期(同-22.8%)からマイナス幅は拡大した(図 12 及び表 2)。消費額のトップ 5 を府県別にみれば、大阪府が 268 億円(同-53.1%)と最も多く、次いで兵庫県が 426 億円(同-42.9%)、三重県が 298 億円(同-37.4%)、京都府が268億円(同-68.7%)、奈良県が180億円(同+1.6%)と続く。19 年同期比でみれば、福井県(同+106.9%)や奈良県はそれぞれプラスとなったが、その他府県ではマイナスとなった。

 

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