都道府県別訪日外客数と訪問率:2月レポート No.69

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ABSTRACT

【ポイント】

・JNTO訪日外客統計によれば、2月の訪日外客総数(推計値)は325万8,100人となり、2月として初めて300万人を超えた。春節に伴う大型連休(1月28日から2月4日) 2月初旬まで続いたことやウィンタースポーツ需要の高まりもあり、前月に引き続きアジアや欧米豪を中心に訪日外客数が増加した。

・目的別訪日外客総数(暫定値)をみれば12月は348万9,888人。うち、うち、観光客は328万13人(同+28.6%)と、2カ月ぶりに300万人超の水準となった。

・大阪・関西万博が4月13日に開幕し、自治体による観光誘客政策が積極的に行われつつある。今月号では徳島県の「徳島ワンコインキャンペーン」の事例を取り上げ、その内容を紹介したこのような万博開催を契機とした誘客促進策は、都市部のみならず地域においても国内及びインバウンド消費拡大につながることが期待できよう。

 

【トピックス1】

・関西1月の輸出は5カ月連続の前年比増加。一方、輸入は3カ月ぶりに減少となった。春節の影響が剥落したこともあり、関西の貿易収支は2カ月ぶりの黒字となり、黒字幅は拡大した。

・2月の関西国際空港の訪日外客数は79万9,576人で、2月初旬まで続いた春節に伴う大型連休の影響もあり、2月として過去最高値を更新した。

・1月のサービス業の活動は一進一退の動きが続く。第3次産業活動指数は2カ月ぶりの前月比低下。また、対面型サービス業指も3カ月ぶりに低下した。一方、観光関連指数は宿泊業や旅客運送業等が上昇に寄与し、2カ月連続の同上昇となった。

 

【トピックス2】

・12月の関西2府8県の延べ宿泊者数は11,830.4千人泊。前年同月比で2021年11月以降増加が続いており、増加幅は前月から拡大した。

・うち、日本人延べ宿泊者数は7,943.2千人泊、2カ月ぶりの前年同月比増加。また、外国人延べ宿泊者数は3,887.2千人泊、前年同月比の増加幅は2カ月連続で縮小した。

 

【トピックス3】

・2024年10-12月期における関西各府県の訪問率をみれば、大阪府40.1%が最も高く、次いで京都府30.0%、奈良県9.0%、兵庫県5.6%、和歌山県1.4%、三重県0.7%、滋賀県0.6%、徳島県0.3%、鳥取県0.3%、福井県0.2%と続く。

・2024年10-12月期の関西2府4県の訪日外国人消費単価(旅行者1人1回当たりの旅行消費金額)は前年同期比-0.9%小幅縮小。費目別では、娯楽サービス費、飲食費や宿泊費が減少となった。

・2024年10-12月期の関西2府4県の訪日外客消費額は5,753億円、前年同期比+39.2%増加した。

DETAIL

ポイント

3月発表データのレビュー:JNTO 訪日外客数

▶JNTO訪日外客統計によれば(図1及び表4)、2月の訪日外客総数(推計値)は325万8,100人となり、2月として初めて300万人を超えた(前年同月比+16.9%)。春節に伴う大型連休(1月28日から2月4日)が2月初旬まで続いたことやウィンタースポーツ需要の高まりもあり、アジアや欧米豪を中心に訪日外客数が増加した。一方、出国日本人数は118万1,100人と、2カ月ぶりに100万人を超えた(同+20.7%)。なお、2019年同月比-23.0%となり、減少幅は前月(同-37.2%)から縮小したが、アウトバウンド需要の回復は依然緩慢である。

 

 

 

▶訪日外客数のトップ5を国・地域別にみると(図2及び表4)、2月は韓国が84万7,300人(前年同月比+3.5%)で最多となった。次いで中国が72万2,700人(同+57.3%)、台湾が50万7,300人(同+1.0%)、香港が19万5,500人(同-5.0%)、米国が19万1,500人(同+28.8%)と続く。

 

 

▶目的別訪日外客総数(暫定値)をみれば(図3及び表5)、12月は348万9,888人であった(前年同月比+27.6%)。うち、観光客は328万13人(同+28.6%)と、2カ月ぶりに300万人超の水準となった。また、商用客は8万8,582人(同+9.8%)、その他客は12万1,293人(同+18.8%)であった。

 

 

 

▶2024年通年の目的別訪日外客総数(暫定値)は、3,687万148人、前年比+47.1%となった。うち、観光客は3,361万1,553人、前年(2,237万9,962人)から大幅増加した(同+50.2%)。また、商用客は119万8,602人(同+12.3%)、その他客は205万9,993人(同+27.3%)。なお、2019年比でみると、観光客(同+18.9%)やその他客(同+10.3%)などは既にコロナ禍前を上回ったが、商用客(同-31.8%)は依然回復が遅れている。

 

▶大阪・関西万博が4月13日に開幕し、自治体による観光誘客政策が積極的に行われつつある。今月号では徳島県の事例を取り上げ、その内容を紹介する。徳島県では4月13日より「徳島ワンコインキャンペーン」を実施している。具体的な施策内容については、(1)万博会場の徳島県ブースを訪れた徳島県在住者以外(外国人旅行者含む)に対し、(2)関西を出発する高速バスやフェリーが片道500円で利用できるクーポンの配布である。本プログラムの特徴は日本人旅行者のみならず外国人旅行者をも対象としていることである。このような万博開催を契機とした誘客促進策は、都市部のみならず地域においても国内及びインバウンド消費拡大につながることが期待できよう。

 

トピックス1

2月関西の財貨・サービス貿易及び1月のサービス産業動向

▶関西2月の輸出額は前年同月比+10.7%と5カ月連続で増加した(前月:同+3.5%)。一方、輸入額は同-4.3%と3カ月ぶりに減少。春節の影響が剥落したこともあり、関西の貿易収支は+4,314 億円と2カ月ぶりの黒字、黒字幅は同+123.3%拡大した(図4)。

 

 

▶対中貿易動向をみると(図5)、関西2月の対中輸出は前年同月比+18.0%と3カ月ぶりの増加となった(前月:同-12.0%)。輸出増に寄与したのは電気回路等の機器や非鉄金属などであった。一方、対中輸入は同-10.9%と 3 カ月ぶりの減少(前月:同+19.6%)。輸入減に寄与したのは衣類及び同付属品や音響・映像機器(含部品)などであった。春節の影響が剥落したため、輸出は大幅増加し、輸入は大幅減少となった。

 

 

▶2月の関西国際空港(以下、関空)の訪日外客数は79万9,576人と、2月として過去最高値を更新した(2024年2月:71万5,170人)。2月初旬まで続いた春節に伴う大型連休の影響もあり、外国人入国者数は堅調に推移している。前年同月比+11.8%増加した(前月:同+40.4%)。同月の日本人出国者数は 23 万 557 人であった。同+26.0%と増加幅は前月(同+11.0%)から拡大。なお、2019 年同月比では-24.6%と、減少幅は 3 カ月ぶりに縮小したが、依然アウトバウンド需要の回復は緩慢である。

 

 

▶1 月のサービス業の活動は一進一退の動きが続く(図 7)。サービス業の生産活動を示す第3次産業活動指数(季節調整済み:2015年平均=100)をみれば、1月は101.6で前月比-0.3%低下し、2カ月ぶりのマイナスとなった(前月:同+0.4%)。1月を10-12月平均と比較すると、-0.2%低下した(10-12月期:前期比-0.8%)。また、対面型サービス業指数*は98.1 で同-0.8%と 3 カ月ぶりのマイナス(前月:同+2.8%)。うち、飲食店、飲食サービス業(同-5.0%、3カ月ぶり)や娯楽業(同-3.4%、3カ月ぶり)が低下に寄与した。1 月の対面型サービス業指数は 10-12 月平均比+1.1%上昇した(10-12月期:前期比-0.4%)。

 

 

▶観光関連指数**(2015年平均=100)は、96.3と前月比+1.3%上昇し、2 カ月連続のプラス(前月:同+1.3%)。うち、宿泊業(同+9.7%、2 カ月連続)や旅客運送業(同+3.2%、2 カ月連続)等が上昇に寄与した。1月の観光関連指数を10-12月平均と比較すると+1.8%上昇した(10-12月期:前期比+0.6%)。

 

*対面型サービス業は、運輸業、宿泊業、飲食店、飲食サービス業、その他の生活関連サービス業及び娯楽業を指す。

**観光関連指数は第 3 次産業活動指数のうち、観光庁「旅行・観光サテライト勘定」の分類に対応する、鉄道旅客運送業、道路旅客運送業、水運旅客運送業、航空旅客運送業、旅客運送業、その他のレンタル、自動車賃貸業、宿泊業、飲食店,飲食サービス業、旅行業、映画館、劇場・興行団の各指数の加重平均。

 

トピックス2

12月延べ宿泊者数の動向:関西2府8県

▶観光庁によれば、12月の関西2府8県の延べ宿泊者数(全体)は11,830.4千人泊であった(表1)。前年同月比+4.4%と2021年11月以降増加しており、増加幅は前月(同+3.6%)から拡大した。

 

 

▶日本人延べ宿泊者数は7,943.2千人泊となった(表1及び図8)。前年同月比+1.9%と2カ月ぶりに増加した(前月:同-0.9%)。府県別に延べ宿泊者数を降順にみれば、大阪府2,730.9千人泊、京都府1,510.2千人泊、兵庫県1,327.0千人泊、三重県776.0千人泊、滋賀県362.3千人泊、和歌山県327.6千人泊、福井県277.3千人泊、鳥取県226.0千人泊、徳島県211.0千人泊、奈良県194.9千人泊であった。前年同月比でみると、三重県(同+26.0%、9カ月連続)、兵庫県(同+11.2%、7カ月連続)や鳥取県(同+49.7%、12カ月連続)等が、日本人延べ宿泊者の増加に寄与した。なお、京都府は同-17.9%と19カ月連続で減少しており、日本人宿泊者数は依然低迷している。

 

 

▶外国人延べ宿泊者数は3,887.2千人泊となった(表1及び図9)。前年同月比+9.8%と増加幅は2カ月連続で縮小し(10月:同+20.8%、11月:同+13.5%)、1桁の伸びとなった。府県別に延べ宿泊者数を降順にみれば、大阪府2,209.9千人泊、京都府1,377.3千人泊、兵庫県131.2千人泊、和歌山県55.0千人泊、奈良県28.9千人泊、滋賀県26.4千人泊、三重県21.3千人泊、徳島県15.6千人泊、鳥取県15.1千人泊、福井県6.6千人泊であった。前年同月比をみれば、京都府(同+26.5%、33カ月連続)、兵庫県(同+25.2%、29カ月連続)や和歌山県(同+32.1%、31カ月連続)等、8府県が外国人延べ宿泊者の増加に寄与した。

 

 

▶2024年関西の延べ宿泊者数は1億3,635万人泊となった。前年比+8.9%と3年連続で増加したが、前年(同+43.5%)より増加幅は縮小した。うち、日本人延べ宿泊者数は9,068万人泊で、同-1.1%と4年ぶりに減少。一方、外国人延べ宿泊者数は4,567万人泊で、同+36.3%と3年連続で増加した。宿泊料金の高騰に対して賃金上昇が追いついていないこともあり(図10)、日本人宿泊者数にとっては厳しい状況が続いている。

 

 

トピックス3

2024年10-12月期訪日外国人訪問率と消費単価:関西

▶2024年10-12月期における関西各府県の訪問率をみると(図11)、大阪府40.1%が最も高く、次いで京都府30.0%、奈良県9.0%、兵庫県5.6%、和歌山県1.4%、三重県0.7%、滋賀県0.6%、徳島県0.3%、鳥取県0.3%、福井県0.2%と続く。前年同期と比較すると(表2)、奈良県は+2.3%ポイント、京都府は+1.1%ポイント、大阪府は+0.8%ポイント、和歌山県は+0.2%ポイント、兵庫県は+0.1%ポイント、鳥取県は+0.1%ポイント、滋賀県は+0.0%ポイント、徳島県は+0.0%ポイントはいずれも上昇。一方、三重県は-0.1%ポイント、福井県は-0.0%ポイントとそれぞれ低下した。

 

 

▶当該期間の各府県の訪問率に訪日外客数を乗じて推計した関西における訪日外客数をみよう。2024年10-12月期の訪問者数を降順にみれば(表2)、大阪府が400万7,894人(前年同期比+32.6%)と最も多く、次いで京都府が300万546人(同+34.8%)、奈良県が90万2,491人(同+73.1%)、兵庫県が56万2,190人(同+33.3%)、和歌山県が13万6,372人(同+46.1%)、三重県が6万8,486人(同+17.1%)、滋賀県が6万1,833人(同+36.7%)、鳥取県が3万3,334人(同+62.3%)、徳島県が2万6,272人(同+39.2%)、福井県が2万88人(同+22.7%)と続く。

 

▶2024年10-12月期の関西における訪日外国人消費単価(旅行者1人1回当たりの旅行消費金額)をみると(表3)、関西2府4県では前年同期比-0.9%小幅減少した。費目別にみれば、娯楽等サービス費(同-16.0%)、飲食費(同-5.2%)、宿泊費(同-1.9%)は減少した一方、交通費(同+8.9%)や買物代(同+5.8%)は増加した。

 

 

▶観光庁によれば、2024年10-12月期の関西における訪日外客消費額は5,753億円となり(表3)、前年同期比+39.2%増加した(7-9月期:同+30.6%)。同期の全国の消費額*は2兆2,969億円、同+36.5%となり(7-9月期:同+39.0%)、関西は全国の伸びを幾分上回った。

 

*全国の消費額については本レポートNo.67を参照。

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